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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-01
(45)【発行日】2022-02-09
(54)【発明の名称】副飛行アセンブリを備えた航空機
(51)【国際特許分類】
   B64C 39/02 20060101AFI20220202BHJP
   B64C 27/08 20060101ALI20220202BHJP
   B64C 31/02 20060101ALI20220202BHJP
   B64C 31/028 20060101ALI20220202BHJP
   B64D 17/00 20060101ALI20220202BHJP
   B64D 25/00 20060101ALI20220202BHJP
   B64D 45/00 20060101ALI20220202BHJP
【FI】
B64C39/02
B64C27/08
B64C31/02
B64C31/028
B64D17/00
B64D25/00
B64D45/00 Z
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2019545998
(86)(22)【出願日】2018-02-27
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-03-26
(86)【国際出願番号】 IB2018051236
(87)【国際公開番号】W WO2018158686
(87)【国際公開日】2018-09-07
【審査請求日】2020-11-05
(31)【優先権主張番号】102017000022745
(32)【優先日】2017-03-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】519300862
【氏名又は名称】エルレピエッセ アエロスペース エッセ.エルレ.エルレ.
【氏名又は名称原語表記】RPS AEROSPACE S.R.L.
(74)【代理人】
【識別番号】110001368
【氏名又は名称】清流国際特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】100129252
【弁理士】
【氏名又は名称】昼間 孝良
(74)【代理人】
【識別番号】100155033
【弁理士】
【氏名又は名称】境澤 正夫
(72)【発明者】
【氏名】ルネルティ、ジアコモ
(72)【発明者】
【氏名】ヴェゾリ、ナウシカ アジア
(72)【発明者】
【氏名】ベルナ、アンドレア
【審査官】志水 裕司
(56)【参考文献】
【文献】欧州特許出願公開第03093239(EP,A1)
【文献】国際公開第2016/204803(WO,A1)
【文献】米国特許第06416019(US,B1)
【文献】特開2009-208674(JP,A)
【文献】国際公開第2016/170321(WO,A1)
【文献】米国特許第05878979(US,A)
【文献】米国特許第03796398(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B64C 31/00
B64C 39/00
B64D 17/00
B64D 25/00
B64D 45/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のプロペラ(3)を回転する少なくとも1つのエンジンを有する主推進部(23)と、遠隔操作部からコマンドを受信するように構成されている少なくとも1つの受信器を有する主制御部と、を備える遠隔操縦航空機(1)において、
前記航空機(1)は、前記航空機(1)の故障又は緊急事態の際に介入する副飛行アセンブリ(4)を備え、
前記副飛行アセンブリ(4)は、飛行に関連するデータを処理するように構成されている追加制御部(5)と、更なる遠隔制御部(70)からコマンドを受信するように構成されている追加受信器(27)とを備えており、
故障又は緊急事態の際に、前記追加制御部(5)は、応答として、前記航空機(1)の第1区画(12)に配置された上翼(9)を放出し、前記航空機(1) の第2区画(25)に収容された下翼(17)を膨張するための第1装置(8) を作動させる作動コマンド(S1)を生成するとともに、前記主推進部(23)の停止コマンド(S2)を生成し、
前記上翼(9)は、前記更なる遠隔制御部(70)を介して操縦可能であり、前記下翼(17)は、航空機の安定性のために前記上翼(9)と協働するように形成されることを特徴とする遠隔操縦航空機(1)。
【請求項2】
前記追加制御部(5)は、少なくとも前記航空機(1)が受ける直線加速度及び角加速度と周囲圧力の一連のレベルを検出するための複数のセンサ(6)を備え、
前記追加制御部(5)は、航空機(1)の故障状態を認識するために、前記レベルと前記航空機(1)の故障状態を特定するそれぞれの限界値とを比較し、応答として、前記作動コマンド(S1)及び前記停止コマンド(S2)を生成するように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の遠隔操縦航空機(1)。
【請求項3】
前記追加制御部(5)は、前記航空機(1)を前記更なる遠隔制御部(70)に接続する無線信号のパワーをモニターし、前記無線信号のパワーと緊急状態を特定する限界値とを比較し、応答として前記作動コマンド(S1)及び前記停止コマンド(S2)を生成するように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の遠隔操縦航空機(1)。
【請求項4】
前記追加制御部(5)は、前記更なる遠隔制御部(70)による緊急コマンド、前記複数のセンサ(6)の故障、又は、所定の安全限界を超える航空機速度を認識し、応答として前記作動コマンド(S1)及び前記停止コマンド(S2)を生成するように構成されていることを特徴とする請求項2に記載の遠隔操縦航空機(1)。
【請求項5】
前記第1装置(8)は、前記航空機(1)の前記第1区画(12)の内部で蛇腹に折り畳まれ、高圧の圧縮流体を収容するタンク(10)に接続された展開チャンバ(11)を備え、
前記タンク(10)は、前記追加制御部(5)により生成された前記作動コマンド(S1)により電気機械的に作動されるクイック排気弁を備え、
前記弁が、前記航空機(1)の故障又は緊急事態の場合、前記タンク(10)に収容された前記圧縮流体を前記展開チャンバ(11)に放出するように構成されており、
前記展開チャンバ(11)は、前記タンク(10)から内部に導入された高圧により急速に膨張して、前記上翼(9)を放出及び展開するための円錐又は円柱形状をなすことを特徴とする請求項1に記載の遠隔操縦航空機(1)。
【請求項6】
前記上翼(9)は、柔軟性を有する材料で作られており、互いに接続された2つの半円錐台形状面(14)を有し、
前記上翼(9)は、前記上翼(9)にその周囲に沿って接続された複数のケーブル(16)に枝分かれする一対のケーブル(15)を介して前記航空機(1)のフレーム(2)に接続され、
前記上翼(9)は、また、前記上翼(9)の周囲の少なくとも一点を制御手段に接続する方向ケーブル(19)を供することを特徴とする請求項1に記載の遠隔操縦航空機(1)。
【請求項7】
前記上翼(9)は、前記追加制御部(5)に接続された前記制御手段により操縦可能であり、
前記制御手段は、前記更なる遠隔制御部(70)から受信した遠隔コマンドにより前記方向ケーブル(19)を牽引して、前記上翼(9)の構造を変形することを特徴とする請求項6に記載の遠隔操縦航空機(1)。
【請求項8】
膨張可能な前記下翼(17)は、出口通路(18)を介して前記展開チャンバ(11)と流体連通しており、
前記下翼(17)が、前記展開チャンバ(11)を膨張するために既に使用された流体によって膨張されることを特徴とする請求項5に記載の遠隔操縦航空機(1)。
【請求項9】
前記下翼(17)は、米国連邦政府機関NACAによって定義された標準化された翼型形状タイプを有することを特徴とする請求項1に記載の遠隔操縦航空機(1)。
【請求項10】
前記下翼(17)は、前記航空機(1)の最も有害となる部分を物体又は人との衝突から保護するエアバッグとして機能することを特徴とする請求項1~9いずれか一項に記載の遠隔操縦航空機(1)。
【請求項11】
前記上翼(9)と前記下翼(17)は、前記航空機(1)の右または左への連続的な旋回をもたらす一方、遠隔からの前記方向ケーブル(19)の牽引によって、直線軌道状態、又は、上翼(9)により課されるものと比べて反対方向の旋回状態をもたらすことが可能となるように形成されることを特徴とする請求項6に記載の遠隔操縦航空機(1)。
【請求項12】
前記副飛行アセンブリ(4)は、更に前記遠隔制御部(70)により制御され、前記航空機(1)のロール軸に垂直な平面上で動作する更なる推進プロペラ(20)を有し、
追加の前記更なる推進プロペラ(20)は揚力の増加をもたらすことを特徴とする請求項1~11いずれか一項に記載の遠隔操縦航空機(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、副飛行アセンブリを備えた航空機に関する。
【背景技術】
【0002】
遠隔操縦航空機(RPA:Remotely Piloted Aircraft)が知られており、より一般的にはドローンとして知られている。英語では他の頭字語も知られており、RPA(遠隔操縦航空機)に加えて、UAV(Unmanned Aerial Vehicle(無人航空機))、RPV(Remotely Piloted Vehicle(遠隔操縦機))、ROA(Remotely Operated Aircraft(遠隔操作航空機))、又は、UVS(Unmanned Vehicle System(無人機システム))として知られている。
【0003】
これらは、人間のパイロットが搭乗していないことに特徴がある。その飛行は、地上のナビゲーター又はパイロットによる遠隔制御の下、航空機に搭載されたコンピュータによって制御される。これらの使用は、今や軍事目的で強化されているだけでなく、民生用にも増加してきている。例えば、防火や緊急事態への対処、非軍事的セキュリティ対策、パイプライン監視、及び、リモートセンシングや研究目的において使用されており、概括すると、このようなシステムが「単調な、汚い、そして危険な」任務の遂行を可能とする全ての場合において使用されており、コストが従来の航空機よりもはるかに低くなる場合が多い。
【0004】
ドローンは、故障の際にその機体を回収するためのレスキュー装置を備えることが多い。例えば、米国特許第6416019号には、ドローンを損傷なく回収し、ドローンを所望の位置に非破壊的に着地可能とするためのパラシュート付きレスキュー装置が記載されている。パラシュート付き回収装置は、パラシュートと、サーボシステムと、電気誘導制御システムとを備える。長方形のパラシュートは、複数の制御ケーブルによってサーボシステムに接続されており、サーボシステムは、電気制御システムにより制御される。電気制御システムとサーボシステムとは、ドローンの誘導経路を制御し、安全な非破壊着地を提供するために使用される。特に、サーボシステムは、パラシュートを制御して速度と方向を調整するために、パラシュートに接続された上記の複数の制御ケーブルの各ケーブルの長さを調整するように適合されている。
【0005】
しかしながら、そのようなパラシュート付き回収装置は、パラシュートが自身の多くの制御ケーブルを用いて動作することや、任務を完了するためにパイロットがドローンを継続して制御することを許容もしないことから、その実装において煩雑である。更に、障害物との衝突による損傷を受けないという確証はなく、地上の人々に危険を及ぼさないという確証もない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、実装が簡易で、ドローンと地上の人々の両方にとって安全な着地を可能にし、パイロットが進行中の任務を継続することを可能とする回収装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によると、そのような目的は、請求項1に記載の遠隔制御航空機により達成される。
【0008】
上翼と下翼が、航空機の故障や緊急事態の際にプロペラに代わって航空機の飛行を確保する。
【0009】
本発明のこれら及びその他の特徴は、下記の図面において非制限的な一例として示され、以下に詳細に記載されたその実施の形態からより明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明に係る遠隔制御航空機の第1の不等角投影図を示す。
図2図1の航空機の第2の不等角投影図を示す。
図3図1の航空機のフレームの一部又は複数部分を除いた図を示す。
図4図1の航空機のフレームの一部又は複数部分を除いた図を示す。
図5】故障の際に想定される構造における図1の航空機の不等角投影の部分断面図を示す。
図6】航空機の故障又は緊急事態の際に想定される構造における図1の航空機の図を示す。
図7】航空機の故障又は緊急事態の際に想定される構造における図1の航空機の図を示す。
図8】航空機の故障又は緊急事態の際に想定される構造における図1の航空機の図を示す。
図9】推進プロペラを備えた本発明に係る遠隔制御航空機の側面図を示す。
図10図1の航空機が備える副飛行アセンブリのブロック図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は、本発明に係る遠隔操縦航空機(RPA)1を示す。
【0012】
航空機1は、支持構造であるフレーム2を備えており、フレーム2は、プラスチック、アルミニウム又はカーボンといった様々な材料から作成することが可能である。周知の通り、フレーム2の構造は、航空機1の強度や、重量つまり飛行時間を決定する決定要因である。同様に、フレーム2の大きさ、つまり、その直径もまた、航空機1の航空性能に影響を及ぼす。すなわち、より大きな直径は、より高い飛行安定的を確保するが、同時に、重量がより重くなり、エネルギー消費がより多くなることを意味する。好適な実施形態においては、フレーム2は、中央本体21を備えており、互いに等間隔に配置された複数の分枝部22が中央本体21から放射状に延出している。
【0013】
航空機1は、主推進部23(図10)を備え、主推進部23は、複数のプロペラ3を回転するように構成されている少なくとも1つのモータを備える。例えば、航空機1は、それぞれが前記分枝部22のうちの1つに配置された複数のモータを備えていてもよく、これらの前記モータがプロペラ3をそれぞれ回転し、航空機1を離陸可能としてもよい。ドローンに搭載されるモータは電気モータであり、通常は「ブラシレス」タイプである。或いは、航空機1は、それぞれの機械的伝達要素を介して前記複数のプロペラ3を回転するように構成されている単一のモータを備えていてもよい。
【0014】
添付の図面は、6枚のプロペラ3を備える航空機1(ヘキサコプター)を示しているが、3つのモータを有する航空機1(トリコプター)、4つのモータを有する航空機1(クワッドコプター)、8つのモータを有する航空機1(オクトコプター)などでもよい。
【0015】
航空機1は、遠隔制御部からコマンドを受信し、自身が備えるハードウェア及びソフトウェアから得られる情報に従って自動的に動作することにより、航空機1の飛行中のバランスの維持を特に行うように構成されているコントローラから成る主制御部を備える。遠隔制御部は遠隔制御送信器であり、これを介して遠隔地のパイロットが主推進部23を制御することができ、それゆえ、航空機1の飛行を制御することができる。或いは、遠隔制御部は、陸上ステーションや自動飛行をプログラミング可能な装置であってもよい。
【0016】
主制御部は、GPSアンテナや気圧計などの一組の電子部品群と、ジャイロスコープや加速度計などの慣性測定機器とからなる慣性測定部(IMU:Inertial Measurement Unit)にインターフェース接続し、これらにより、制御部は記録されている各要素の突然の変化に対する応答性を改善することが可能となる。
【0017】
主制御部は、前記慣性測定部から、慣性測定部自身による測定から得られた複数の飛行関連データを受信し、それらを処理することにより航空機1における1つ又は複数の動作の実施を決定するように構成されている。
【0018】
主制御部は、更に、主推進部23の遠隔制御部から航空機1の飛行を制御するコマンドの入力を受信するように構成されている少なくとも1つの受信器を有する。
【0019】
更に、航空機1は、航空機1の故障の際又は緊急事態の場合に介入するように適合されている副飛行アセンブリ4を有する。
【0020】
副飛行アセンブリ4は、自律制御部によって構成される追加制御部5(図10)を備える。追加制御部5もまた、少なくとも航空機1が受ける加速度(直線加速度及び角加速度)及び周囲圧力、特に航空機1の急激な標高変化の結果として発生しうる圧力差の一連のレベルを検出するように適合されている複数のセンサ6を含む追加慣性測定部を備え、飛行関連データを処理するように構成されている。この点に関し、追加制御部5は、航空機1の故障状態を認識するために、追加慣性測定部から受け取った上記の量を航空機1の故障状態を特定するそれぞれの限界値と比較するように構成されている。
【0021】
そして、副飛行アセンブリ4は、追加遠隔制御部70から航空機1の飛行に関するコマンドの入力を受信するように構成されている追加受信器27を備える。ここで、追加遠隔制御部70もまた、無線制御送信器、陸上ステーション、又は自動飛行をプログラミング可能な装置であってよい。無線制御の場合には、例えば、追加遠隔制御部70は、遠隔制御部と共に装置に一体化されていてもよい。
【0022】
追加制御部5はまた、航空機1と遠隔制御部70、即ち、地上制御局(GCS:Ground Control Station)との通信における無線信号の強度をモニターし、前記無線信号の強度と緊急状態を特定する閾値とを比較するように構成されている。
【0023】
更に、追加制御部5は、前記遠隔制御部70による緊急コマンドを認識するように構成される。緊急コマンドとしては、無線制御部70に設けられている緊急ボタンが押されたことや、追加慣性測定部のセンサ6の故障、所定の安全限界を超えたプロペラ3の回転速度(所謂「ロータークラフト・オーバーリミット」)などが例示できる。
【0024】
以下に更に詳細に説明するように、航空機1の故障の際又は緊急事態の際には、追加制御部5は、応答として、作動コマンドS1を生成し、同時に主推進部23を停止する停止コマンドS2を生成する。
【0025】
副飛行アセンブリ4は、航空機1の中央本体21の上部の第1区画12(図3)の内側に配置された上翼9を射出するように適合されている第1装置8を含む。前記上翼9は、前記追加制御部5に接続され、前記遠隔制御部70により制御される制御手段により操縦することができる。
【0026】
例えば、第1装置8は、欧州特許第0716015号に記載されたような、緊急パラシュート空気圧発射装置であってよい。そのような装置では、クイック排気弁がコマンドによって開かれ、圧力計が取り付けられた小さなタンクに収容された圧縮ガスを解放する。タンクには、空気、窒素又は不燃性ガスが含まれる。ガスの排出が瞬間的に展開チャンバを膨らまし、展開チャンバは拡張することでパラシュートに可変加速度の直線運動を与え、パラシュートは複数のケーブルによって航空機構造に拘束されたままであるにもかかわらず取り外される。
【0027】
同様に、第1装置8は、その内部に圧縮流体を高圧(例えば、160バールを超える空気圧)で収容するタンク10(図4)を有する。タンク10は、航空機1の故障の際又は緊急事態の際に、追加制御部5によって生成された前記作動コマンドS1により電気機械的に作動するように適合されているクイック排気弁を備える。
【0028】
航空機1の故障の際又は緊急事態の際に、前記弁は、発生される圧力に耐え得るパイプ24を介して、航空機1の第1区画12の内部で蛇腹状に折り畳まれた展開チャンバ11の内部に、タンク10に含まれる前記圧縮流体を放出するように構成されている。蛇腹状の展開チャンバ11は、タンク10によってその内部に導入される高圧により急速に膨張し、上翼9を排出及び展開するための円錐(又はタンク)形状を呈するように適合されている(図5)。第1区画12は、航空機1の上部に配置されており、航空機1のフレーム2にヒンジ結合された閉鎖カバー13(図1)を含み、前記カバー13は、展開チャンバ11の内側からの瞬間的なスラストバイアスの下で開くように適合されている。
【0029】
特に、前記上翼9は、柔軟性を有する布地又は他の材料で作られており、主に、その2つの頂点同士が接合された2つの半円錐台形状面14からなる(図6図8)。この種の翼は、「ロガロ翼」という名前で知られている。前記上翼9は、上翼9にその周囲に沿って接続された複数のケーブル16へと枝分かれする一対のケーブル15によって航空機1のフレーム2に拘束されている。前記上翼9はまた、上翼9の周囲の少なくとも一点を前記制御手段に接続するように適合されている方向ケーブル19を想定している。制御手段は、以下により詳細に説明するように、追加遠隔制御部70から受信した遠隔コマンドによって前記方向ケーブル19に牽引力を加えて上翼9の構造を変形することにより、上翼9を操縦するように適合されている。
【0030】
副飛行アセンブリ4は、更に、航空機1の第2区画25内に収容され、また航空機1の故障の場合に使用されるように適合されている膨張可能な下翼17(図5)を備える。下翼17は、出口通路18を介して展開チャンバ11と流体連通する。第2の区画25は、航空機1の中央本体21の下方に位置し、また閉鎖カバー26を備える(図2)。下翼17は、展開チャンバ11を膨張するために既に使用した流体によって膨張される。上翼9を排出した後の展開チャンバ11には、タンク10と同じ体積の流体が低圧(例えば2バールの空気圧)で膨張した状態で含まれる。前記流体は前記出口通路18に向かって流れ、下翼17を膨張させる。下翼17は、獲得した容積により閉鎖カバー26を開き、航空機1の下方に位置した状態となる(図5)。
【0031】
下翼17は、航空機の安定性のために上翼9と協働するよう形成される。このようにして、パイロットは操縦を適切に管理することができる。言い換えれば、下翼は、航空機の飛行を安定させるように上翼9と協働するように形成される。例えば、下翼17は、アメリカ航空諮問委員会NACA(National Advisory Committee for Aeronautics)によって定義された標準化された翼型(エーロフォイル)形状タイプを有していてもよい。更に、下翼17はまた、エアバッグとして機能し、航空機1の最も有害となる部分を物体又は人との衝突から保護することができる。
【0032】
このように、航空機1の故障の際又は緊急事態の際、副飛行アセンブリ4は、前記第1装置8を作動して上翼9を排出し、前記下翼17を膨張するように適合されている。特に、追加制御部5は、追加慣性測定部から受信したデータ(少なくとも直線加速度と角加速度と周囲圧力)をこれらの限界値と比較した後に故障状態を認識した時に、或いは、航空機1が追加遠隔制御部70と通信する無線信号の強度が緊急状態を特定する限界値を下回った時に、前記作動コマンドS1を生成するように構成されている。前記作動コマンドS1は、追加慣性測定部の故障が検出された時、又は、プロペラ3の回転速度が所定の安全限界を超えた時にも生成される。追加制御部5は、遠隔制御部70から緊急コマンドを受け取った時にも前記作動コマンドS1を生成するように構成されている。
【0033】
追加制御部5は、排出された上翼9がプロペラ3自体に絡むことを確実に防止するために、プロペラ3の回転を中断するように適合されている主推進部23の停止コマンドS2を作動コマンドS1と同時に生成するように構成されている。
【0034】
上翼9と下翼17は、航空機1の連続的な旋回(右方向又は左方向)をもたらす一方で、前記方向ケーブル19の遠隔牽引によって、直線軌道状態、又は、上翼9により課されるものと比べて反対方向の旋回状態をもたらすことが可能となるように形成されており、これにより上翼9自体の形状を変更可能な構成になっている。前記制御手段は単一のケーブル(方向ケーブル19)に作用するものであるため、該制御手段の実現がいかに容易であるかが簡単に理解される。これはまた、単一のケーブルであれば、上翼9が開いた時に上翼9の構造の他の部分とより絡まり難いことから、安全性がより高いことを意味する。
【0035】
副飛行アセンブリ4は、更にまた遠隔制御部70によって制御され、航空機1のロール軸に垂直な平面上で動作する更なる推進プロペラ20(図9)を含んでいてもよい。前記追加推進プロペラ20は揚力の増加をもたらし、航空機1が任務を継続できるようにする。また、この推力の増加の作用により、航空機1の操縦安定性がさらに向上し、強い向かい風や横風がある軌道においても飛行することが可能となる。
【0036】
動作中に、制御部が航空機1の故障状態又は緊急事態を検出すると、上翼9を排出させ、下翼17を膨張させる前記第1装置8を作動させるように適合されている作動コマンドS1が生成され、同時に、航空機1の主推進部23を停止させるように適合されている停止コマンドS2が生成される。
【0037】
既に述べたように、故障状態は、飛行データ、特に、少なくとも加速度(直線加速度及び角加速度)と周囲圧力等のレベルと、故障状態を特定するそれぞれの限界値とを比較することにより検出され、緊急状態は、追加遠隔制御部70との間の無線信号の強度と、緊急状態を特定する限界値とを比較することにより検出される。更に、緊急コマンドの場合や、追加慣性測定部の故障又はロータークラフト・オーバーリミット状態が検出された場合にもまた、作動コマンドS1と停止コマンドS2は追加制御部5により生成される。
【0038】
上翼9は、弁の開放により排出される。すなわち、弁の開放によるタンク10の急速な排気により、初期状態では第1区画12内で折り畳まれている展開チャンバ11の内部に圧縮流体が放出され、展開チャンバ11が拡張して第1区画12のカバー13を開き、上翼9に直線運動を与えると、上翼9は一対のケーブル15及びそれらの延長部(ケーブル16)によって航空機1に拘束されたまま空中で展開する。
【0039】
主翼の放出後、前記出口通路18によって、展開チャンバ11の内部に収容されている流体の体積がより低い圧力で下翼17の内部へと流れ込み、下翼17を膨張させる(図5)。
【0040】
副飛行アセンブリ4が作動すると、上翼9は下翼17と共に航空機1の連続的な旋回(右方向又は左方向)をもたらす一方、遠隔制御部70により、直線軌道状態や、上翼9により課されるものとは反対方向の旋回状態をもたらすことが可能であり、上翼9の形状を調整することが可能である。これは、方向ケーブル19に牽引力を加えて、上翼9の構造を変形させる制御手段によるものであり、その結果、故障や緊急状態にもかかわらず、航空機1は継続して操縦され、着手した任務を継続することができる。
【0041】
追加推進プロペラ20の場合は、更にまた追加遠隔制御部70を介して、航空機1の推進力を増加することができ、副飛行アセンブリ4によりその操縦性を向上させることができる。
【0042】
航空機1は、前記上翼9と前記下翼17との相乗作用によって完全に操縦可能な状態が維持される。これにより、航空機1自体を完全に制御可能な状態に維持でき、航空機1に起こり得る故障や緊急事態に対して、航空機1の下にいる人々が全く被害を受けない制御方法で対処することが可能となる。
【符号の説明】
【0043】
1 遠隔操縦航空機
3 プロペラ
4 副飛行アセンブリ
5 追加制御部
6 センサ
8 第1装置
9 上翼
10 タンク
11 展開チャンバ
12 第1区画
14 半円錐台形状面
17 下翼
18 出口通路
19 方向ケーブル
20 追加推進プロペラ
23 主推進部
25 第2区画
27 追加受信器
70 追加遠隔制御部
図1
図2
図3
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図10