(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-01
(45)【発行日】2022-02-09
(54)【発明の名称】反応装置及び方法
(51)【国際特許分類】
B01J 19/18 20060101AFI20220202BHJP
B01J 19/00 20060101ALI20220202BHJP
B01F 27/80 20220101ALI20220202BHJP
C01G 53/00 20060101ALI20220202BHJP
H01M 4/525 20100101ALI20220202BHJP
H01M 4/505 20100101ALI20220202BHJP
H01M 4/36 20060101ALI20220202BHJP
【FI】
B01J19/18
B01J19/00 D
B01F7/16 G
B01J19/00 B
C01G53/00 A
H01M4/525
H01M4/505
H01M4/36 C
(21)【出願番号】P 2019565541
(86)(22)【出願日】2018-01-12
(86)【国際出願番号】 KR2018000639
(87)【国際公開番号】W WO2018221822
(87)【国際公開日】2018-12-06
【審査請求日】2019-12-11
(31)【優先権主張番号】10-2017-0066103
(32)【優先日】2017-05-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】592000691
【氏名又は名称】ポスコ
【氏名又は名称原語表記】POSCO
(73)【特許権者】
【識別番号】592000705
【氏名又は名称】リサーチ インスティチュート オブ インダストリアル サイエンス アンド テクノロジー
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【氏名又は名称】原 裕子
(72)【発明者】
【氏名】ユ、 ギ-ソン
【審査官】壷内 信吾
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2008/043559(WO,A1)
【文献】実開昭54-003673(JP,U)
【文献】特開2007-136432(JP,A)
【文献】実開昭49-110864(JP,U)
【文献】特開平02-009839(JP,A)
【文献】実開昭51-137763(JP,U)
【文献】中国特許出願公開第106058237(CN,A)
【文献】韓国登録特許第10-1355183(KR,B1)
【文献】米国特許第6250796(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 10/00-12/02,14/00-19/32
B01F 7/00-7/32
C01G 25/00-47/00,49/10-99/00
H01M 4/00-4/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応容器と、
前記反応容器の内部に提供され、多段のインペラーを備えた撹拌手段と、
前記反応容器に連携され、少なくとも前記インペラー間の空間に原料を投入する少なくとも一つ以上の投入ノズルを含む原料投入手段と、
を含み、
前記原料は金属溶液(metal solution)と第1及び第2溶液とを含み、
前記原料投入手段は、
前記反応容器の外部に配置される金属溶液混合手段と連携され、前記金属溶液
を前記インペラー間の空間に投入する第1原料投入手段と、
前記インペラー間の空間に前記第1及び第2溶液を投入する第2及び第3原料投入手段と、
を含み、
前記第1~第3原料投入手段は
、前記インペラー間の空間に加えて、前記反応容器の底及び最下段のインペラー間の空間に原料を投入する投入ノズルをさらに含み、
前記反応容器の外側に提供される容器重量感知手段をさらに含むことで、少なくともインペラー間の空間に投入される金属溶液と第1及び第2溶液は反応容器内の溶液レベルが高くなるほど、最下段の投入ノズルから順に上に位置された投入ノズルを介して反応容器の内部に投入される、反応装置。
【請求項2】
前記原料投入手段の投入ノズルは混合手段と連結される金属溶液供給管と、前記第1及び第2溶液を供給する溶液供給管の端部に一体に提供されるか、または分解可能に組み立てられる、請求項1に記載の反応装置。
【請求項3】
前記供給管の下端部が折り曲げられて前記投入ノズルを形
成する、請求項2に記載の反応装置。
【請求項4】
前記投入ノズルは複数の原料投入孔を含む、請求項1に記載の反応装置。
【請求項5】
前記投入ノズルはコイル型投入ノズルとして提供される、請求項1に記載の反応装置。
【請求項6】
前記下端部に投入ノズルが提供される供給管は、前記反応容器を通過して上下移動可能な移動型供給管として提供される、請求項
3に記載の反応装置。
【請求項7】
前記反応容器の内部に提供される少なくとも一つ以上の多孔性バッフルをさらに含む、請求項1に記載の反応装置。
【請求項8】
前記多孔性バッフルに備えられる孔は、円状、楕円状、及び多角形のうち少なくとも一つで提供される、請求項7に記載の反応装置。
【請求項9】
前記多孔性バッフルに提供された少なくとも一つ以上の開口部に挿入され、孔が形成された挿入固定体をさらに含む、請求項7に記載の反応装置。
【請求項10】
前記多孔性バッフルに備えられた孔は、断面上、入口よりも出口が狭くなる傾斜孔として提供される、請求項7に記載の反応装置。
【請求項11】
前記多孔性バッフルは、反応容器に備えられた撹拌手段の最下段のインペラーに近接して伸張する、請求項7に記載の反応装置。
【請求項12】
前記混合手段は、
混合タンクと、
前記混合タンクに連結される供給管、ならびに前記供給管に備えられた流量調整器と、を含む、請求項1に記載の反応装置。
【請求項13】
請求項1から12のいずれかの1項に記載の反応装置を用いる反応方法であって、
金属溶液(metal solution)を反応容器に設定された流量で投入する金属溶液投入段階と、
他の溶液を設定された流量で反応容器に投入する溶液投入段階と、
前記反応容器に投入された金属溶液と他の溶液とを攪拌して、リチウム二次電池用正極活物質を製造する共沈反応段階と、
を含み、前記金属溶液と他の溶液は、反応容器内の溶液レベルが高くなるほど、最下段の投入ノズルから順に上に位置された投入ノズルを介して反応容器の内部に投入される、反応方法。
【請求項14】
前記金属溶液と他の溶液は、前記反応容器に備えられた撹拌手段のインペラー間の空間、前記反応容器の底及びインペラー間の空間のうち少なくとも一つの空間に投入される、請求項13に記載の反応方法。
【請求項15】
前記共沈反応段階において、Ni:Co:MnまたはNi:Co:Alの組成を有する前記金属溶液とNaOH及びNH4OHの前記他の溶液とを反応させて、少なくとも中心距離に応じた濃度勾配(Gradient)を有するニッケル-コバルト-マンガン前駆体(Ni
xCo
yMn
1-x-y(OH)
2)またはニッケル-コバルト-アルミニウム前駆体(Ni
xCo
yA
l
-x-y1
(OH)2)を製造する、請求項13に記載の反応方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、反応装置及び方法に関し、より詳細には、触媒あるいはリチウム二次電池用正極活物質の製造のための共沈反応時に、容器内のレベルに対応して少なくともインペラー間の空間に原料(溶液)を投入し、攪拌速度を均一にしながら、特に溶液間の濃度差を最小限に抑えるようにした反応装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
最近、スマートフォンやラップトップなどのモバイル機器に対する需要が増加し、ハイブリッド車や電気自動車の市場が大きくなるにつれて、エネルギー源として二次電池の需要が急激に増加しつつある。かかる二次電池の中でも高エネルギー密度及び動作電位を示し、サイクル寿命が長く、自己放電率の低いリチウム二次電池が広く用いられている。
【0003】
このようなリチウム二次電池の正極活物質としては、リチウム含有コバルト酸化物(LiCoO2)が主に用いられており、その他に層状結晶構造のLiMnO2、スピネル結晶構造のLiMn2O4などのリチウム含有マンガン酸化物と、リチウム含有ニッケル酸化物(LiNiO2)、三成分系のLiNixMnyCo(1-x-y)O2の使用も研究されている。
【0004】
一般に、リチウム二次電池の正極活物質は、700℃以上の高温で固相反応法(solid state reaction)により製造される。このような固相反応法により正極活物質を製造する場合には、物理的な混合及び粉砕を経るため混合状態が不均一であることから、複数回の混合及び粉砕過程を経る必要があり、結果として、製造に必要な時間が大幅に増え、製造コストも上昇するようになるという問題がある。
【0005】
そこで、加水分解(hydrolysis)と縮合反応(condensation)からなるゾル-ゲル(sol-gel)法、及び共沈法(co-precipitation)に代表される湿式製造法が開発された。
【0006】
一方、リチウム二次電池において、リチウムと混合されて焼成などの段階を経た後に正極活物質として用いられるニッケル-コバルト-マンガン前駆体(NixCoyMn1-x-y(OH)2)、またはニッケル-コバルト-アルミニウム前駆体(NixCoy
Al
1-x-y(OH)2)の製造には、連続攪拌タンク反応器(CSTR、Continuous Stirred Tank Reactor)、クエットテイラー反応器、またはバッチ式反応器などを用いる共沈法が多く活用されている。
【0007】
かかる共沈法は、原料を含有した塩化物、窒化物、または硫化物などを塩基性溶液で水酸化物にして沈殿させ、粒度を成長させるものであって、溶液のpH、温度、撹拌条件に応じて正極活物質前駆体の形状や粒度、形態(morphology)が変わる。
【0008】
ところが、従来の共沈法によるリチウム二次電池用正極活物質前駆体の製造時には主に大量生産が可能な連続攪拌タンク反応器(CSTR)を用いるが、かかる連続攪拌タンク反応器の場合には、反応規模を拡大(Scale-up)すると、内部インペラーによる攪拌速度の不均一が増大し、結果として、反応時間に遅延が生じ、一定以上の品質で製造されるまでの安定化コストが大きくなるため、生産性や経済性を確保することが難しいという問題があった。
【0009】
一方、このような周知の連続攪拌タンク反応器(CSTR)の問題点を解決するために、テイラー渦(Taylor vortex)を利用した反応器を用いると撹拌速度の不均一は解消されるが、安定化コストにより、例えば、7μm以下の小粒径の場合にのみ適用可能となり、反応規模を拡大した場合には、反応器の直径が大きくなるにつれて、均一な渦(Taylor vortex)の形成が困難となった。
【0010】
さらに、リチウム二次電池用正極活物質の高容量特性及び熱的安定性を高めるために、前駆体の組成が前駆体の中心距離に応じた濃度勾配(Gradient)を有する前駆体の製造に関連する技術が韓国公開特許第2005-0083869号公報などに開示されているが、連続攪拌タンク反応器(CSTR)とテイラー渦(Taylor vortex)反応器ではなくバッチ(Batch)式でのみ製造が可能であるという限界があり、かかるバッチ式の場合には、反応時間が多くかかり、攪拌速度の不均一などにより反応規模が拡大しにくくなり、連続攪拌タンク反応器(CSTR)に比べて製造コストが多くかかり、生産性が低下し、前駆体の球形度が低下するという問題があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、上述のような従来の問題点を解消するために提案されたものであって、その目的は、触媒あるいはリチウム二次電池用正極活物質の製造のための共沈反応時に、容器内のレベルに対応して少なくともインペラー間の空間に原料(溶液)を投入し、攪拌速度を均一にするとともに、特に溶液間の濃度差を最小限に抑えるようにした反応装置及び方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記のような目的を達成するための技術的な一側面として、本発明は、反応容器と、上記反応容器の内部に提供され、多段のインペラーを備えた撹拌手段と、上記反応容器に連携され、少なくとも上記インペラー間の空間に原料を投入する少なくとも一つ以上の投入ノズルを含む原料投入手段と、を含む。
【0013】
また、技術的な他の側面として、本発明は、コア溶液とシェル溶液を設定された割合で混合した金属溶液を反応容器に設定された流量で投入する金属溶液投入段階と、他の溶液を設定された流量で反応容器に投入する溶液投入段階と、上記反応容器に投入された金属溶液と他の溶液とを攪拌して、少なくともリチウム二次電池用正極活物質を製造する共沈反応段階と、を含む。
【発明の効果】
【0014】
このような本発明によると、反応容器内の原料(溶液)の濃度差を著しく減少させるか、または抑制することを可能にするという効果を提供する。
【0015】
特に、均一攪拌を実現し、濃度差を除去することにより、同一の工程条件でリチウム二次電池用正極活物質前駆体の成長速度を向上させるとともに、前駆体の球形度も向上させる他の効果を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明による(共沈)反応装置を示す全体構成図である。
【
図3】
図1の本発明の反応装置の一部を示す分解斜視図である。
【
図4】本発明の原料投入手段の投入ノズルを示す要部図である。
【
図5a】
図4の投入ノズルの他の実施例を示す要部図である。
【
図5b】
図4の投入ノズルの他の実施例を示す要部図である。
【
図5c】
図4の投入ノズルの他の実施例を示す要部図である。
【
図6】本発明の投入ノズルのさらに他の実施例を示す斜視図である。
【
図7】本発明の投入ノズルのさらに他の実施例を示す斜視図である。
【
図8】本発明の投入ノズルの設置環境を示す概略平面図である。
【
図9】本発明の投入ノズルのさらに他の実施例を示す斜視図である。
【
図10】本発明の投入ノズルが連携される供給管の移動型の構成を示す構成図である。
【
図11a】本発明の多孔性バッフルを示す拡大図である。
【
図11b】本発明の多孔性バッフルを示す要部図である。
【
図11c】本発明の多孔性バッフルを示す要部図である。
【
図11d】本発明の多孔性バッフルを示す要部図である。
【
図11e】本発明の多孔性バッフルを示す要部図である。
【
図11f】本発明の多孔性バッフルを示す要部図である。
【
図12】本発明の多孔性バッフルの他の実施例を示す要部斜視図である。
【
図13】本発明の多孔性バッフルのさらに他の実施例を示す構成図である。
【
図14a】中心距離に応じた濃度勾配(Gradient)を有する正極活物質(ニッケル-コバルト-マンガン前駆体(Ni
xCo
yMn
1-x-y(OH)
2)を示す写真である。
【
図14b】中心距離に応じた濃度勾配(Gradient)を有する正極活物質(ニッケル-コバルト-マンガン前駆体(Ni
xCo
yMn
1-x-y(OH)
2)を示すグラフである。
【
図15a】容器内の溶液レベルに応じた流動流れと濃度差を比較したシミュレーション画像である。
【
図15b】容器内の溶液レベルに応じた流動流れと濃度差を比較したシミュレーション画像である。
【
図15c】容器内の溶液レベルに応じた流動流れと濃度差を比較したシミュレーション画像である。
【
図16a】本発明及び従来の投入ノズルの位置に応じた濃度差を示すシミュレーション画像である。
【
図16b】本発明及び従来の投入ノズルの位置に応じた濃度差を示すグラフである。
【
図17】インペラーの位置別流速を示すグラフである。
【
図18】本発明及び従来のニッケル-コバルト-マンガン前駆体(Ni
xCo
yMn
1-x-y(OH)
2)の反応時間に応じた粒度の成長を示すグラフである。
【
図19a】本発明による濃度勾配(Gradient)を有するニッケル-コバルト-マンガン前駆体(Ni
xCo
yMn
1-x-y(OH)
2)を示す写真である。
【
図19b】本発明による濃度勾配(Gradient)を有するニッケル-コバルト-マンガン前駆体(Ni
xCo
yMn
1-x-y(OH)
2)を示す濃度勾配のグラフである。
【
図20】本発明によるニッケル-コバルト-マンガン前駆体(Ni
xCo
yMn
1-x-y(OH)
2)の粒度及びタップ密度(tap density)を示す比較表である。
【
図21a】バッフルの有無による流動状態を示すシミュレーション画像である。
【
図21b】バッフルの有無による流動状態を示すシミュレーション画像である。
【
図22a】バッフルの多孔有無による流動状態を示すシミュレーション画像である。
【
図22b】バッフルの多孔有無による流動状態を示すシミュレーション画像である。
【
図23a】バッフルの下端の伸張構造による流動状態を示すシミュレーション画像である。
【
図23b】バッフルの下端の伸張構造による流動状態を示すシミュレーション画像である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付図面を参照して本発明の実施例について説明する。しかし、添付の各図面の構成要素に参照符号を付けるに際し、同一の構成要素に対してはたとえ他の図面上に表されていてもできるだけ同一の符号を有するようにしている点に留意すべきである。また、本発明を説明するに際し、関連の公知の構成又は機能に関する具体的な説明が本発明の要旨を不明瞭にし得ると判断された場合には、その詳細な説明は省略する。
【0018】
まず、以下の本実施例で説明する本発明による反応装置1は、連続攪拌反応器(CSTR)をベースに、触媒あるいはリチウム二次電池用正極活物質を製造する共沈反応装置であることができる。
【0019】
もちろん、本発明の反応装置が必ずしも正極活物質の製造環境でのみの使用に限定されるものではなく、例えば、原料(溶液)に投入し、インペラーを有する攪拌手段をベースに攪拌して反応を実現する他の物質の反応(製造)にも適用可能であることは言うまでもない。
【0020】
また、本発明の好ましい一実施例として、本発明は、中心距離に応じた濃度勾配(Gradient)を有するリチウム二次電池用正極活物質前駆体、例えば、ニッケル-コバルト-マンガン前駆体(NixCoyMn1-x-y(OH)2)、またはニッケル-コバルト-アルミニウム前駆体(NixCoy
Al
1-x-y(OH)2)の製造のための共沈反応に関するものであることができる。
【0021】
例えば、
図14a及び
図14bには、正極活物質の高容量特性及び熱的安定性を高めるために、中心距離に応じた濃度勾配(Gradient)を有するニッケル-コバルト-マンガン前駆体(Ni
xCo
yMn
1-x-y(OH)
2)の写真及びグラフが示されているが、中心ではニッケル(Ni)の濃度が高く、中心から離れるほど相対的にコバルト(Co)及びマンガン(Mn)の濃度が高くなる濃度勾配を有することが分かる。
【0022】
そして、本実施例では、NH4OH(第2溶液、アンモニア)を一定量投入し、NaOH(第1溶液、水酸化ナトリウム)で目標pHを合わせた後、金属溶液(Metal Solution:NCMの場合にはNi:Co:Mnの組成、NCAの場合にはNi:Co:Alの組成)とNaOH(第1溶液)及びNH4OH(第2溶液)を投入して共沈反応を実現する。以下、本実施例の説明では、原料を金属溶液と第1溶液(NaOH)及び第2溶液(NH4OH)に限定して説明する。但し、必ずしもこれに限定されるものではないことは言うまでもない。
【0023】
以下、本発明の実施例を詳細に説明する。
【0024】
まず、
図1~
図3に示すように、本発明による反応装置1は、反応容器10と、上記反応容器10の内部に提供され、多段のインペラー32を備えた撹拌手段30と、上記反応容器に連携され、少なくとも上記インペラー間の空間A1に原料を投入する少なくとも一つ以上の投入ノズルを含む原料投入手段と、を含んで提供されることができる。
【0025】
すなわち、本発明の反応装置1は、基本的に、インペラー32間の空間A1に、上記で具体的に説明した金属溶液と第1及び第2溶液を投入するものである。このように、インペラー間の空間A1に溶液を投入した場合、反応の効果を高めることができる。
【0026】
そして、本発明の反応装置1における反応容器10は、図面には概略的に示されているが、中央の円筒本体(符号なし)、底12、及び上部カバー(符号なし)の部分がフランジ構造を媒介に組み立てられる構造体で提供されることができる。尚、上部カバーは、内部に攪拌手段30が配置されるため、円筒体に容易に分解及び組み立てられる構造で提供されることができる。
【0027】
また、
図1及び
図3に示すように、本発明の反応装置1における上記攪拌手段30は、多段のインペラー32、好ましくは、少なくとも4段のインペラー32を含むことことができる。
【0028】
すなわち、上記インペラーは、カップリング36及びシール部材38を介して反応容器10の外部上側に提供されたモータ34と連携され、反応容器10を垂直貫通する。尚、下端部がベアリング42に支持される回転軸40により、その円周方向に4つのインペラー32が少なくとも垂直方向に4段に提供されることができる。
【0029】
このとき、上記インペラー32は、回転軸40に水平に提供されるものではなく、攪拌効果のために斜めに提供されることができる。
【0030】
次に、
図1及び
図3に示すように、本発明の反応装置1における上記原料投入手段は、基本的に、金属溶液を少なくともインペラー間の空間A1に投入する第1原料投入手段50を含む。
【0031】
特に、本発明の第1原料投入手段50は、反応容器10の外側に配置され、上記金属溶液のコア(core)溶液とシェル(shell)溶液を予め設定された割合で混合して供給する金属溶液の混合手段90と連結される。
【0032】
つまり、本発明の反応装置1の場合には、金属溶液のコア溶液とシェル溶液を予め適正な割合で混合した後、第1原料投入手段50に供給するため、例えば、中心距離に応じた濃度勾配(Gradient)を有する正極活物質前駆体(NixCoyMn1-x-y(OH)2、またはNixCoy
Al
1-x-y(OH)2)の製造を容易にするとともに、共沈反応の効率も向上させることができる。
【0033】
例えば、別に図面には示さなかったが、従来は、反応容器10にコア溶液とシェル溶液を経験に頼って、事実上、手作業で供給していたことから、ロット(Lot)別の偏差を誘発するという問題があった。
【0034】
このとき、
図1に示すように、本発明の上記混合手段90は、コア溶液供給管94及びシェル溶液供給管96がそれぞれ分離されて連結される混合タンク92を含み、上記コア溶液供給管94及びシェル溶液供給管96にはそれぞれ、溶液の供給量を調整する流量調整器Lが備えられる。
【0035】
そして、上記混合手段90の混合タンク92は、連結管98を介して本発明の金属溶液を反応容器の内部に投入する第1原料投入手段50の金属溶液供給管100と連結される。尚、上記連結管98にも、上述の流量調整器Lが備えられる。
【0036】
したがって、
図1に示すように、金属溶液を、反応容器10の内部、特に少なくともインペラー32間の空間A1に投入する場合には、まず、流量調整器Lを介して予め設定された流量の分だけコア溶液とシェル溶液が混合タンク92に供給されると、混合タンクから混合され、コア溶液とシェル溶液が予め設定された割合で混合された金属溶液が連結管98を介して第1原料投入手段50の投入ノズルに供給される。
【0037】
このとき、上記連結管98に提供された流量調整器Lにより、第1原料投入手段50に供給される金属溶液も予め設定された流量に調整されることができる。
【0038】
上述の、そして
図1~
図3に示すように、上記原料は、リチウム二次電池用正極活物質前駆体の製造のための第1及び第2溶液をさらに含むことができる。これにより、金属溶液を反応容器10内に投入する第1原料投入手段50に加えて、本発明の原料投入手段は、少なくとも上記インペラー間の空間A1に、上記で具体的に説明した第1及び第2溶液を投入する第2及び第3原料投入手段60、70をさらに含むことができる。
【0039】
より好ましくは、本発明の反応装置1における上記第1~第3原料投入手段50、60、70は、上記インペラー間の空間A1に加えて、反応容器10の底12及び最下段のインペラー間の空間A2に原料(金属溶液と第1及び第2溶液)を投入する投入ノズル52、54、56、62、64、66、72、74、76を含むことができる。
【0040】
すなわち、4段のインペラーにおいて、上側を1段とすると、2段及び3段インペラー間の空間、3段及び4段インペラー間の空間、ならびに4段インペラー及び容器底間の空間A2に、金属溶液と第1及び第2原料を投入するために、第1~第3原料投入手段50、60、70は、3段の投入ノズル52、54、56、62、64、66、72、74、76を含むことができる。
【0041】
このとき、1段及び2段インペラー間の空間に溶液を投入するための投入ノズルを含んでもよいことは言うまでもない。
【0042】
さらに、好ましくは、
図2に示すように、金属溶液を反応容器の内部に投入する本発明の第1原料投入手段50と、第1及び第2溶液をそれぞれ反応容器に投入する第2及び第3原料投入手段60、70は、反応容器の平面上に反時計回り、すなわち、左から右にそれぞれ90度の間隔で分離されて配置されることができる。
【0043】
より具体的には、上記第1原料投入手段50の投入ノズル52、54、56は、連結管98を介して連結される混合手段90と連結されている3つの金属溶液供給管100とそれぞれ連結されることができる。
【0044】
そして、上記3つの金属溶液供給管100は、
図3のように、反応容器10の上部カバー(符号なし)の部分に貫通設置された支持具102にそれぞれ離隔して垂直に設置されることができる。
【0045】
同様に、第1及び第2溶液を投入する第2及び第3原料投入手段60、70の投入ノズル62、64、66、72、74、76は、反応容器10を貫通して垂直設置された支持具112に垂直に固定される3つの溶液供給管110の下部に提供されることができる。
【0046】
そして、上記それぞれの投入ノズルを介して溶液をそれぞれ選択的に投入することを可能にするために、
図3のように、3つの金属溶液供給管及び溶液供給管100、110は、分配器104、106に連結され、供給管には供給を制御する開閉弁Vが備えられることから、金属溶液と溶液がそれぞれの投入ノズルを介して選択的に、または全体のノズルを介して反応容器の内部、すなわち、上記空間A1、A2に投入されることができる。
【0047】
そして、上記分配器104、106には、混合タンク92と連結される金属溶液の連結管98、及び図面には具体的に示さなかったが、第1及び第2溶液タンクと連結された連結管99が連結されることができる。尚、第1及び第2溶液も、図示していない流量調整器Lを備えて供給流量が調整され得ることは言うまでもない。
【0048】
このとき、より好ましくは、本発明の反応容器10の外側に、容器重量感知手段130がさらに提供される。例えば、
図1のように、反応容器10の外側に付着される受け構造物132のうちいずれかの下部に提供されたロードセルなどの重量感知センサー134が提供されることができる。
【0049】
そして、
図1には1つの容器重量感知手段130が示されているが、反応容器の外側の少なくとも両側に提供されてもよいことは言うまでもない。
【0050】
したがって、本発明の反応装置1は、反応容器10の内部に投入された溶液レベルが高くなるほど反応容器10の重量が増加するため、本発明の第1~第3原料手段50、60、70の投入ノズル52、54、56、62、64、66、72、74、76を介して反応容器内の投入位置を調整することができる。
【0051】
すなわち、
図1及び
図3のように、可動初期の金属溶液、第1及び第2溶液、ならびに水(water)は、最下段のインペラー32及び容器底12間の空間A2に位置する最下段の投入ノズル56、66、76を介して投入される。尚、反応容器内の溶液レベルが上昇すると、順に3段及び4段インペラー間の空間A1、及び2段及び3段インペラー間の空間A1に配置される投入ノズル52、54、62、64、72、74を介して反応容器の内部に投入されることができる。
【0052】
結果として、本発明の反応装置1における上記第1~第3原料投入手段50、60、70を介した金属溶液と第1及び第2溶液は、反応容器の内部におけるインペラー間の空間に投入され、且つ反応容器の内部の溶液レベルに対応して順に投入ノズルの位置ごとに投入されることができる。
【0053】
すなわち、かかる反応容器の内部の溶液レベルに合わせて、少なくともインペラー間の空間に多段の投入ノズルを介して金属溶液と第1及び第2溶液を投入する本発明の投入方法によると、濃度差を減少させる効率を最大化する。
【0054】
一方、
図15a~
図15cには、反応容器内の溶液レベルに応じた流動流れと溶液の濃度差を比較したシミュレーション結果が示されている。投入された溶液レベルが低い場合には比較的濃度差が大きくないが、投入された溶液レベルが高くなるほど、溶液の下側及び上側領域の濃度差が徐々に増加することが分かる。
【0055】
一般に、正極活物質前駆体の成長段階において、前駆体の形態(Morphology)はpHによって決定される。ここで、
図15のように、投入ノズルが反応容器の下部にのみ存在する従来の場合には、反応容器内の溶液レベルが高くなるにもかかわらず、容器下部にのみ溶液が投入されるため、溶液レベルが高くなるほど、上側及び下側の領域においてpH差が発生し、金属溶液(metal solution)とNH
4OH(アンモニア、第2溶液)の濃度が不均一になる原因となりうる。
【0056】
そして、ニッケル-コバルト-マンガン前駆体(NixCoyMn1-x-y(OH)2)の場合には、着イオンを形成するための試薬(chelating agent)、すなわち、NH4OH(第2溶液)を投入して共沈反応を促進させる。かかる着イオン試薬の濃度変化は、初期の共沈反応時における核とコアの生成、及び前駆体の成長時における成長速度に影響を及ぼす。そこで、濃度差が発生すると、前駆体は均一な形態の形成が難しくなり、球形度が不良となり、成長速度も鈍化し、一部区間では核が生成され、微粉が発生するという問題が発生した。
【0057】
これに対し、本発明の場合には、溶液レベルに対応してインペラー間の空間に、反応容器の垂直方向に少なくとも3段に配置された投入ノズルを介して金属溶液と第1及び第2溶液が投入されるため、特に溶液のレベル差による濃度差が抑制され、その分だけ共沈反応の効率を高めるとともに、正極活物質の製造性も向上させる。
【0058】
次に、
図16a及び
図16bには、金属溶液(Metal Solution)と第1及び第2溶液(NaOH、NH
4OH)をインペラー32の半径方向に投入ノズルの投入位置に応じた濃度差をシミュレーションした結果が示されている。また、
図17には、インペラー32の位置別流速がグラフとして示されている。
【0059】
すなわち、
図16から見ると、金属溶液と第1及び第2溶液の投入位置が、従来の反応容器の壁面近くである「A」領域の場合よりも、本発明のインペラー間の空間である「B」領域の場合に投入溶液の濃度差が小さいことが分かる。
【0060】
そして、
図17のように、インペラーの半径方向への位置別流速を見ると、インペラーの中心、すなわち、回転軸40を起点に、インペラーの半径方向に一定の程度離隔された位置で流速が最も高いことが分かる。これにより、流速が最も高い位置に投入ノズルを配置して溶液を投入することが好ましい。
【0061】
例えば、
図17を見ると、インペラーの半径方向に回転軸から0.4m程度離隔された位置に本発明の投入ノズルを配置して溶液を投入することが最も好ましい。つまり、インペラー全長さの半径方向の中央付近に投入ノズルを位置させることが好ましい。
【0062】
すなわち、本発明の場合には、少なくともインペラー間の空間(
図16aの「B」領域)に溶液を投入するため、インペラーの半径方向の流速がある程度高い空間(領域)に投入する。
【0063】
したがって、本発明の場合には、少なくとも反応容器壁面の近くではなく、インペラー間の空間A1においてインペラーの半径方向に回転軸40と設定された間隔で離隔された位置に投入ノズルを介して金属溶液と第1及び第2溶液が投入されるため、特に中心距離に応じた濃度勾配を有するニッケル-コバルト-マンガン前駆体(NixCoyMn1-x-y(OH)2)、またはニッケル-コバルト-アルミニウム前駆体(NixCoy
Al
1-x-y(OH)2)の製造品質を向上させる。
【0064】
次に、
図18には、本発明の反応装置1を介して製造されたニッケル-コバルト-マンガン前駆体(Ni
xCo
yMn
1-x-y(OH)
2)の反応時間による粒成長サイズが示されている。
図18からは、同一の工程条件で投入ノズルの投入位置が容器壁面に沿って位置固定され、反応容器の下端部にのみ溶液を投入する従来(青色)の場合よりも、本発明のように溶液レベルに応じて投入ノズルの溶液投入位置を調整する場合(赤色)に前駆体の粒成長速度がより速いことが分かる。尚、本発明の場合には、従来に比べて相対的に前駆体の粒成長速度はより速くなるが、
図19に示すように、前駆体の内部にポア(Pore)が発生することなく、濃度勾配(Gradient)が十分に形成されることが分かる。ここで、
図19a及び
図19bは、本発明による中心距離に応じた濃度勾配(Gradient)を有するニッケル-コバルト-マンガン前駆体(Ni
xCo
yMn
1-x-y(OH)
2)を示す写真及び濃度勾配のグラフである。
【0065】
次に、
図20は、本発明による反応装置及び方法を介して製造された5μm程度の小粒径であるニッケル-コバルト-マンガン前駆体(Ni
xCo
yMn
1-x-y(OH)
2)の粒度及びタップ密度(tap density)を比較した表を示したものであって、同一の工程条件で投入ノズルの投入位置を反応容器の下端部に固定した従来よりも溶液レベルに応じて投入ノズルの投入位置を可変する本発明の反応時間及びタップ密度(tap density)が向上することが分かる。
【0066】
結果として、本発明の反応装置1の場合には、反応容器10内の濃度差が抑制されることにより、同一の工程条件で前駆体の成長速度を向上させるとともに、前駆体の球形度を向上させることができ、均一攪拌によって目標粒度よりも過度な粒子の発生の抑制を可能にする。
【0067】
例えば、一般に、前駆体の1次粒子の形態(Morphology)はpHに応じて変わるが、ニッケル-コバルト-マンガン前駆体(NixCoyMn1-x-y(OH)2)におけるNi含有量が80%を超えると、pH11では針状(Needle shape)、pH12ではフレーク状(Flake shape)となる。通常、pHの制御のために、NaOHを投入するが、投入されるノズル近くでの流動が停滞すると、ノズル近くでは相対的に高いpHが維持され、ノズルから遠く離れたところでは共沈反応によりOH-が消費され、pHが低く維持される。このような現象は、前駆体の成長時に、形態の均一性を低下する現象として現れるものであり、共沈反応器の容量が大きくなるほどこのような現象は激しくなる。
【0068】
すなわち、本発明の反応装置1は、このような形態の面からも、反応容器の内部の濃度差を克服することができるため有利である。
【0069】
次に、
図4~
図9には、本発明の反応装置1における投入ノズルの様々な実施例が示されている(但し、図面には、投入ノズルの図面符号52、62、72のみが表記されているが、他の投入ノズル54、56、64、66、74、76も適用可能であることは言うまでもない)。
【0070】
例えば、
図4及び
図5に示すように、本発明の第1~第3原料投入手段50、60、70の投入ノズル52、62、72は、上述した供給管100、110の下端部に、少なくとも90度以上折り曲げられている(鋭角)の形で反応容器の底12及びインペラー間の空間
A1、ならびにインペラー間の空間
A2に提供されることができる。
【0071】
すなわち、本発明の投入ノズルは90度以上折り曲げられている構造で提供されるため、ノズル内部の残留溶液が残らず、反応容器10の内部で垂直な供給管100、110の下部から折り曲げられて伸張するノズルの形を有することから、溶液攪拌時におけるノズル自体にも衝突が発生し、攪拌効率を高めることができる。
【0072】
例えば、
図5a及び
図5cに示すノズル先端のさらなる突出(折り曲げられている)部分Xは、溶液との攪拌時における衝突により攪拌効果をさらに高めることができる。
【0073】
次に、
図3及び
図6に示すように、本発明の投入ノズル52、62、72は、金属溶液供給管100と第1及び第2溶液供給管110の下部に、一体に折り曲げられて提供されるか、または分解状態でネジSを介した締結方式により供給管に組み立てられることも可能である。
【0074】
図6に示す組み立て可能な投入ノズルは別の組立段階を必要とするが、投入ノズルの形状変更や維持管理の面から利点を提供する。
【0075】
次に、
図7に示すように、本発明の投入ノズルは、コイル型投入ノズルCとして提供されることができる。この場合、コイル型投入ノズルCは、攪拌時の溶液との衝突効果を最大限にすることで、攪拌効果をより高めることを可能にする。
【0076】
次に、
図8に示すように、本発明の投入ノズルは、平面上、攪拌手段30であるインペラー32の回転方向に角度を有しながら斜めに配置されることができる。この場合、インペラーの回転方向に対して斜めに溶液が投入されるため、攪拌効果をより高めることができる。
【0077】
次に、
図9に示すように、本発明の投入ノズルは、多数の原料投入孔Hが適正な勾配を有して提供されることができる。この場合、溶液が、少なくともインペラー間の空間、インペラー及び容器底間の空間により分散して投入されるため、撹拌効果及び反応効果を高めることができる。
【0078】
次に、
図10に示すように、下端部に投入ノズル52、62、72が提供される本発明の金属溶液供給管と第1及び第2溶液供給管は、上記反応容器10を貫通して垂直方向に移動可能な移動型供給管120として提供されることができる。
【0079】
すなわち、
図10に示すように、反応容器10の上部カバー(符号なし)の開口に設置されたガイド126の内側に、一側にラック124が長く備えられた移動供給管122が提供され、上記反応容器10の外部に上部カバー上に提供されるモータ128として駆動される駆動ピニオン129が上記移動供給管のラック124に締結されて提供される。これにより、モータの駆動方向に応じてガイド126に支持される移動供給管122は、反応容器10を貫通して垂直に移動可能に提供されることができる。
【0080】
このとき、上記移動供給管122は、インペラーの回転半径を離脱し、且つその下端の折り曲げられた投入ノズル52、62、72が少なくともインペラー間の空間A1、またはインペラー及び反応容器の底12間の空間A2に金属溶液と第1及び第2溶液を噴出投入することができるように提供されることが好ましい。
【0081】
そして、かかる本発明の移動型供給管120は、
図2のように、反応容器の反時計回りに90度間隔で配置され、金属溶液と第1及び第2溶液を反応容器の内部に投入可能にすることができる。但し、
図10のように、移動供給管122は、金属溶液と第1及び第2溶液を供給する
図3の連結管ではなく、移動供給管の垂直方向への移動を補償するフレキシブル管127と連結されることができる。
【0082】
したがって、本発明の移動型供給管120は、反応容器の内部の溶液レベルに対応して垂直移動しながら、金属溶液と第1及び第2溶液を所望の空間A1、A2に適正に投入することができる。
【0083】
次に、
図1~
図3に示すように、本発明の反応装置1は、上記反応容器10の内部に提供される少なくとも一つ以上の多孔性バッフル150をさらに含むことができる。
【0084】
一方、
図21a及び
図21bには、バッフルの有無による流動シミュレーション結果が示されている。ここで、
図21aのバッフルが存在しない場合よりも、
図21bのバッフルがある場合に流動がさらに活発であることが分かる。
【0085】
さらに、
図22a及び
図22bには、孔がないバッフル150’と、本発明の多孔性バッフル150とを適用した場合の流動シミュレーション結果が示されているが、孔152が形成された多孔性バッフル150の場合に流動性が改善されることが分かる。
【0086】
このとき、
図2に示すように、本発明による多孔性バッフル150は、反応容器10の内壁に支持台151を介して垂直に90度間隔で合計4個が提供されることができる。
【0087】
特に、本発明の多孔性バッフル150は、従来のバッフルとは異なって、孔152が形成されるため、反応装置の稼働時に投入された溶液の流動性をより向上させることで反応の効果を高める。
【0088】
一方、
図11a~
図13には、このような本発明の多孔性バッフル150のいくつかの実施例が示されている。
【0089】
すなわち、
図11a~
図11fに示すように、本発明の上記多孔性バッフル150に提供される複数の孔152は、好ましくは円状152a、楕円状152b、正方形152c及び長方形152d、
152eなどの様々な形で形成されることができる。
【0090】
または、
図12に示すように、本発明の上記多孔性バッフル150に提供された複数の開口部154に挿入され、上記孔152が形成された挿入固定体156をさらに含むことができる。
【0091】
この場合、複数の挿入固定体156に所望の形状の孔152を形成させ、反応装置の稼動環境に応じて適宜用いることができる。
【0092】
または、
図13に示すように、上記多孔性バッフル150の孔152は、断面上、入口152’aよりも出口152’bが狭くなる傾斜孔152’として提供されることができる。尚、かかる傾斜孔152’も、別の挿入固定体156を介してバッフルの開口部154に提供されることができる。ここで、傾斜孔では溶液の衝突後に行われる排出によって流動性がより高まり、反応の効果を高める。
【0093】
次に、
図1及び
図11aに示すように、本発明の上記多孔性バッフル150は、上記攪拌手段30の最下段のインペラー32の少なくとも水平線上Yの周辺まで伸張する構造で提供されることが好ましい。
【0094】
例えば、
図23a及び
図23bには、本発明のように最下段のインペラー32の少なくとも水平線上Yの周辺までバッフルが伸張する場合と、最下段のインペラーを通過して反応容器の底まで伸張する場合の流動シミュレーション結果が示されている。ここで、
図23aの場合には流動不均一が少ないことが分かり、
図23bの場合にはデッドゾーン(dead zone)が発生することが分かる。
【0095】
そして、本発明の反応装置1の場合には、
図2に概略的に示されているが、反応容器の内部パージのための窒素パージ用ノズル190やDi-waterノズル210などが備えられることができ、
図1のように反応容器10の外縁には、容器内の溶液の温度を制御するためのヒータ230がさらに備えられることができる。尚、
図1~
図3のように、反応容器10の上部一側には、循環ポンプを用いることで反応器の下部から溶液を吐出して循環させるセンシング用タンク170がさらに備えられることができる。
【0096】
一方、これまでに説明した本発明の反応装置1をベースにする本発明の反応方法をまとめると、
図1~
図3のように、コア溶液とシェル溶液を予め設定された割合で混合した金属溶液を反応容器に設定された流量で投入する金属溶液投入段階と、他の溶液を設定された流量で反応容器に投入する溶液投入段階と、上記反応容器に投入された金属溶液と他の溶液とを攪拌して、少なくとも中心距離に応じた濃度勾配(Gradient)を有するリチウム二次電池用正極活物質を製造する共沈反応段階と、を含むことができる。
【0097】
このとき、前で十分に説明したように、本発明の反応方法において、上記金属溶液と他の溶液は、少なくとも上記反応容器に備えられた撹拌手段のインペラー間の空間A1、これに加えて反応容器の底12及び最下段のインペラー間の空間A2に投入され、特に上記金属溶液と他の溶液は、容器重量感知手段130を介して感知される反応容器10内の溶液レベルに対応して反応容器に投入される。
【0098】
すなわち、本発明の場合、上記共沈反応段階において、Ni:Co:MnまたはNi:Co:Alの組成を有する上記金属溶液と、NaOH及びNH4OHという上記他の溶液とを反応させて、少なくとも中心距離に応じた濃度勾配(Gradient)を有するニッケル-コバルト-マンガン前駆体(NixCoyMn1-x-y(OH)2)またはニッケル-コバルト-アルミニウム前駆体(NixCoy
Al
1-x-y(OH)2)を製造する。
【0099】
以上の説明は、本発明の技術思想を例示的に説明したものに過ぎないものであり、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者であれば、本発明の本質的な特性から逸脱しない範囲で様々な修正及び変形が可能である。したがって、本明細書及び図面に開示された実施例は、本発明の技術思想を限定するためのものではなく説明するためのものであり、このような実施例によって本発明の技術思想の範囲が限定されるものではない。本発明の保護範囲は、特許請求の範囲によって解釈されるべきであり、それと同等の範囲内にあるすべての技術思想は、本発明の権利範囲に含まれるものと解釈されるべきである。
【産業上の利用可能性】
【0100】
上述のように、本発明は、触媒あるいはリチウム二次電池用正極活物質の製造に有用である。