IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 上海▲優▼加利健康管理有限公司の特許一覧

特許7018133人工知能に基づく心電図心拍自動識別分類方法
<>
  • 特許-人工知能に基づく心電図心拍自動識別分類方法 図1
  • 特許-人工知能に基づく心電図心拍自動識別分類方法 図2
  • 特許-人工知能に基づく心電図心拍自動識別分類方法 図3
  • 特許-人工知能に基づく心電図心拍自動識別分類方法 図4
  • 特許-人工知能に基づく心電図心拍自動識別分類方法 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-01
(45)【発行日】2022-02-09
(54)【発明の名称】人工知能に基づく心電図心拍自動識別分類方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/346 20210101AFI20220202BHJP
【FI】
A61B5/346
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020518512
(86)(22)【出願日】2018-01-12
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-12-10
(86)【国際出願番号】 CN2018072350
(87)【国際公開番号】W WO2019100562
(87)【国際公開日】2019-05-31
【審査請求日】2020-03-30
(31)【優先権主張番号】201711203546.7
(32)【優先日】2017-11-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】520363498
【氏名又は名称】上海▲楽▼普云智科技股▲分▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】Shanghai Lepu CloudMed Co., LTD
【住所又は居所原語表記】16F Block A, No. 668 Xinzhuan Road, Songjiang District, Shanghai People’s Republic of China
(74)【代理人】
【識別番号】100140822
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 光広
(72)【発明者】
【氏名】胡 ▲傳▼言
(72)【発明者】
【氏名】▲張▼ 雪
(72)【発明者】
【氏名】田 亮
(72)【発明者】
【氏名】▲劉▼ 涛
(72)【発明者】
【氏名】曹 君
(72)【発明者】
【氏名】▲劉▼ ▲暢▼
【審査官】門田 宏
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第106725420(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0117207(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第105902266(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第104161510(CN,A)
【文献】特表2007-527266(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0167846(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/318 - 5/367
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
人工知能に基づく心電図心拍自動識別分類方法であって、
受信したオリジナル心電図デジタル信号を処理して、心拍時系列データ及びリード心拍データを生成することと、
心拍時系列データに基づいて、設定データ量でリード心拍データをカッティングしてリド心拍解析データを生成することと、
リード心拍解析データをデータ結合して、1次元心拍解析配列を取得することと、
1次元心拍解析配列に基づいて、データ次元増幅変換を行って、4次元テンソルデータを取得することと、
4次元テンソルデータをトレーニング済みのLepuEcgCatNet心拍分類モデルに入力し、前記心拍解析データに対応する心拍分類情報を取得することをと含み、
前記受信したオリジナル心電図デジタル信号を処理して、心拍時系列データ及びリード心拍データを生成することは、
生データを所定のデータサンプリング周波数でリサンプリングし、新しいサンプリング周波数条件下での各データ点の、心電図データ信号の時間軸上の各データ点の時間情報を表す時間特徴データを取得するステップと、
リサンプリングされたデータをデジタル信号フィルタリングして、高周波数、低周波数のノイズ干渉及びベースラインシフトを除去するステップと、
フィルタリングされたデータを、予め定められた標準データフォーマットに従ってデータフォーマット変換するステップと、
変換後データに対して心拍検出処理を行い、各リードの複数の心拍データを識別してリード心拍データを形成するステップと、
リード心拍データに対して干渉識別を行うステップと、
リード心拍データを干渉識別結果及び時間規則に基づいて統合し、統一された心拍時系列データを生成するステップと、を含み、
前記1次元心拍解析配列に基づいて、データ次元増幅変換を行い、4次元テンソルデータを得ることは、具体的には、
前記1次元心拍解析配列を特定の変換方式で前記トレーニングして得られた心拍分類モデルの要求する一つの4次元テンソル入力フォーマットに変換し、前記4次元テンソルデータは、それぞれ高さデータ、幅データ、チャネルデータ及びバッチデータという4つの因子を有することを含み、
前記特定の変換方式は、具体的には、
入力されたサンプルの長さに応じて高さデータと幅データを決定し、前記高さデータ又は幅データ又はチャネルデータに基づいて融合データを生成し、チャネルデータはリードの数であり、
バッチデータ及び融合データに基づいて1つの4次元テンソルデータを生成し、前記バッチデータは入力サンプル数であるということであることを特徴とする心電図心拍自動識別分類方法。
【請求項2】
前記心拍時系列データに基づいて、設定データ量でリード心拍データをカッティングしてリード心拍解析データを生成することは、具体的には、
前記心拍時系列データに基づいて、前記リード心拍データの中間サンプリング点を決定することと、
前記リード中間サンプリング点を中心として、時間特徴データと予め設定されたデータサンプリング周波数に従って、設定データ量で前記リード心拍データを両側へとデータサンプリングして、前記リード心拍解析データを得ることとを含む、ことを特徴とする請求項1に記載の心電図心拍自動識別分類方法。
【請求項3】
前記リード心拍解析データは、シングルリード心拍解析データであり、
前記リード心拍解析データをデータ結合して、1次元心拍解析配列を得ることは、具体的には、
前記シングルリード心拍解析データを、心拍時系列に従って1次元心拍解析配列として結合することを含む、ことを特徴とする請求項1に記載の心電図心拍自動識別分類方法。
【請求項4】
前記リード心拍解析データは、マルチリード心拍解析データであり、
前記リード心拍解析データをデータ結合して、1次元心拍解析配列を得ることは、具体的には、
前記マルチリード心拍解析データを、リードパラメータ及び心拍時系列に従って1次元心拍解析配列として結合することを含む、請求項1に記載の心電図心拍自動識別分類方法。
【請求項5】
前記4次元テンソルデータをトレーニングして得られたLepuEcgCatNet心拍分類モデルに入力して、前記心拍解析データに対応する心拍分類情報を得ることは、具体的には、
LepuEcgCatNet心拍分類モデルに基づいて、入力された4次元テンソルのデータを1層ずつ畳み込んで特徴を抽出して、推論演算により前記心拍解析データに対応する心拍分類情報を得ることを含む、ことを特徴とする請求項1に記載の心電図心拍自動識別分類方法。
【請求項6】
前記LepuEcgCatNet心拍分類モデルを構築してトレーニングすることを更に含む、ことを特徴とする請求項に記載の心電図心拍自動識別分類方法。
【請求項7】
前記LepuEcgCatNet心拍分類モデルを構築してトレーニングすることは、具体的には、
深層畳み込みニューラルネットワークAlexNet、Vgg16、ResNet、及びInceptionなどのディープラーニングモデルに基づいて、心電心拍分類識別用LepuEcgCatNet多層畳み込みニューラルネットワークのエンドツーエンドでマルチラベルのディープラーニングモデルを構築することと、
LepuEcgCatNet心拍分類モデルをトレーニングし、モデル構造データ及びパラメータデータを得て、モデル構造データ及びパラメータデータを記憶して暗号化することとを含む、ことを特徴とする請求項に記載の心電図心拍自動識別分類方法。
【請求項8】
前記トレーニングは、具体的には、
トレーニングサンプルを選択することと、
トレーニングサンプルを予め設定された標準データ形式に変換して記憶することと、
前記トレーニングサンプルに対してデータのカッティング、結合及び変換を行って、トレーニングサンプルが入力されたLepuEcgCatNet心拍分類モデルに対してトレーニングし、トレーニング済みのモデル構造データ及びパラメータデータをGoogle Protocol Buffersデータプロトコルに従って記憶するとともに、対称暗号アルゴリズムを用いてモデル構造データ及びパラメータデータに暗号保護を与えることとを含む、ことを特徴とする請求項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2017年11月27日に中国特許庁に提出された出願番号が201711203546.7であり、発明の名称が「人工知能に基づく心電図心拍自動識別分類方法」である中国特許出願の優先権を主張するものである。
【0002】
本発明は、人工知能支援データ解析処理の技術分野に関し、特に人工知能に基づく心電図心拍自動識別分類方法に関する。
【背景技術】
【0003】
心血管疾患は、人類の健康を脅かす主要な疾患の1つであり、心血管疾患を効果的な手段で検出することは、現在、世界的に関心が集まっている重要な課題である。心電図( ECG )は現代医学における心血管疾患の診断の主な方法であり、ECGを利用して種々の心血管疾患を診断するが、本質的にはECGの特徴データを抽出してECGを分類する過程である。専門家の医師は、心電図を読み取って解析する際に、各リード(シングルルードデータを除く)の信号の時系列における前の変化、リード間の関連性(空間的な関係)及び変動を同時に比較してはじめて、比較的正確な判断を出すことができる。一方、医師の経験に依存するこの方式では、正確さが保障されない。
【0004】
科学技術の進歩に伴い、コンピュータを用いたECGへの自動的かつ正確な解析が急速に進展している。しかし、市場では多くの心電図解析ソフトがデータを自動的に解析することが可能であるが、心電図信号自体の複雑性やばらつきにより、現在の自動解析ソフトの精度は十分ではなく、臨床解析用途としての要求に応えることはできない。
【発明の開示】
【0005】
本発明は、シングルリードによる単独解析のみで結果を集計して統計することが比較的に分類し間違いやすいという従来の方法の欠点を改善し、心電図心拍分類の精確率を大幅に向上させる人工知能に基づく心電図心拍自動識別分類方法を提供することを目的とする。
【0006】
上記目的を達成するために、本発明は、人工知能に基づく心電図心拍自動識別分類方法を提供する。すなわち、
受信したオリジナル心電図デジタル信号を処理して、心拍時系列データ及びリード心拍データを生成することと、
心拍時系列データに基づいて、設定データ量でリード心拍データをカッティングしてリード心拍解析データを生成することと、
リード心拍解析データをデータ結合して、1次元心拍解析配列を取得することと、
1次元心拍解析配列に基づいて、データ次元増幅変換を行って、4次元テンソルデータを取得することと、
4次元テンソルデータをトレーニング済みLepuEcgCatNet心拍分類モデルに入力して、前記心拍解析データに対応する心拍分類情報を取得することとを含む。
【0007】
好ましくは、前記心拍時系列データに基づいて、設定データ量でリード心拍データをカッティングしてリード心拍解析データを生成することは、具体的には、
前記心拍時系列データに基づいて、前記リード心拍データの中間サンプリング点を決定することと、
前記リード中間サンプリング点を中心として、時間特徴データと予め設定されたデータサンプリング周波数に従って、設定データ量で前記リード心拍データを両側へとデータサンプリングし、前記リード心拍解析データを得ることとを含む。
【0008】
好ましくは、前記リード心拍解析データは、シングルリード心拍解析データであり、前記リード心拍解析データをデータ結合して、1次元心拍解析配列を得ることは、具体的には、
前記シングルリード心拍解析データを、心拍時系列に従って1次元心拍解析配列として結合することを含む。
【0009】
好ましくは、前記リード心拍解析データは、マルチリード心拍解析データであり、前記リード心拍解析データをデータ結合して、1次元心拍解析配列を得ることは、具体的には、
前記マルチリード心拍解析データを、リードパラメータ及び心拍時系列に従って1次元心拍解析配列として結合することを含む。
【0010】
好ましくは、前記1次元心拍解析配列に基づいて、データ次元増幅変換を行い、4次元テンソルデータを得ることは、具体的には、
前記1次元心拍解析配列を特定の変換方式で前記トレーニングして得られた心拍分類モデルの要求する一つの4次元テンソル入力フォーマットに変換し、前記4次元テンソルデータは、それぞれ高さデータ、幅データ、チャネルデータ及びバッチデータという4つの因子を有することを含み、
前記特定の変換方式は、具体的には、
入力されたサンプルの長さに応じて高さデータと幅データを決定し、前記高さデータ又は幅データ又はチャネルデータに基づいて融合データを生成し、チャネルデータはリードの数であり、
バッチデータ及び融合データに基づいて1つの4次元テンソルデータを生成し、前記バッチデータは入力サンプル数であるということである。
【0011】
好ましくは、前記4次元テンソルデータをトレーニングして得られたLepuEcgCatNet心拍分類モデルに入力して、前記心拍解析データに対応する心拍分類情報を得ることは、具体的には、
LepuEcgCatNet心拍分類モデルに基づいて、入力された4次元テンソルのデータを1層ずつ畳み込んで特徴を抽出して、推論演算により前記心拍解析データに対応する心拍分類情報を得ることを含む。
【0012】
さらに好ましくは、前記LepuEcgCatNet心拍分類モデルを構築してトレーニングすることを更に含む。
【0013】
さらに好ましくは、前記LepuEcgCatNet心拍分類モデルを構築してトレーニングすることは、具体的には、
深層畳み込みニューラルネットワークAlexNet、Vgg16、ResNet、及びInceptionなど成熟型のディープラーニングモデルに基づいて、心電心拍分類識別用LepuEcgCatNet多層畳み込みニューラルネットワークのエンドツーエンドでマルチラベルのディープラーニングモデルを構築することと、
LepuEcgCatNet心拍分類モデルをトレーニングし、モデル構造データ及びパラメータデータを得て、モデル構造データ及びパラメータデータを記憶して暗号化することとを含む。
【0014】
さらに好ましくは、前記トレーニングは、具体的には、
トレーニングサンプルを選択することと、
トレーニングサンプルを予め設定された標準データ形式に変換して記憶することと、
前記トレーニングサンプルに対してデータのカッティング、結合及び変換を行い、トレーニングサンプルが入力されたLepuEcgCatNet心拍分類モデルに対してトレーニングし、トレーニング済みのモデル構造データ及びパラメータデータをGoogle Protocol Buffersデータプロトコルに従って記憶するとともに、対称暗号アルゴリズムを用いてモデル構造データ及びパラメータデータに暗号保護を与えることとを含む。
【0015】
本発明の実施形態に係る人工知能に基づく自己学習型心電図心拍自動識別分類方法は、受信したオリジナル心電図デジタル信号を処理して、心拍時系列データ及びリード心拍データを取得することと、心拍時系列データに基づいて、リード心拍データをカッティングしてリード心拍解析データを生成することと、リード心拍解析データをデータ結合して、1次元心拍解析配列を取得することと、1次元心拍解析配列に基づいて、データ次元増幅変換を行って4次元テンソルデータを取得することと、4次元テンソルデータを、トレーニングして得られたLepuEcgCatNet心拍分類モデルに入力して心拍分類情報を取得することとを含む人工知能に基づく心電心拍の自動識別分類方法である。本発明による人工知能に基づく心電心拍の自動識別分類方法は、シングルリードによる単独解析のみで結果を集計して統計することが比較的に分類し間違いやすいという従来の方法の欠点を改善し、心電図心拍分類の精確率を大幅に向上させるものである。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、本発明の実施例に係る人工知能に基づく自己学習型心電図心拍自動識別分類方法のフローチャートである。
図2図2は、本発明の実施例に係るLepuEcgCatNet心拍分類モデルの概略図である。
図3図3は、本発明の実施例に係るシングルリード心拍データ分類方法の過程を示す概略図である。
図4図4は、本発明の実施例に係るマルチリード投票決定分類方法の過程を示す概略図である。
図5図5は、本発明の実施例に係るリード同期関連分類方法の過程を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面及び実施例を参照しながら、本発明の技術案について、詳細に説明する。
【0018】
本発明の実施例に係る人工知能に基づく自己学習型心電図心拍自動識別分類方法のフローチャートは、図1を参照してください。主に以下のステップを含む。
【0019】
ステップ110:受信したオリジナル心電図デジタル信号を処理して、心拍時系列データ及びリード心拍データを生成する。
【0020】
具体的には、心電検出装置は、心電図アナログ信号をデジタル信号に変換して出力するが、データベース又は他のファイル方式で取得した心電図データに対して、データ記憶送信手段により生データであるオリジナル心電図デジタル信号への記憶を行い、WIFI、ブルートゥース(登録商標)、USB、3G/4G/5G移動体通信ネットワーク、モノのインターネットなどの方式で解析システムのハードウェアモジュールに送信し、入力信号として解析システムの実行モジュールに入力することもできる。
【0021】
心電図波形を記録するオリジナル心電図デジタル信号は、異なる機器メーカーの心電図装置のアナログ回路、フィルタ、サンプリングレートなどの違いにより、生成する心電図時系列データが、リードマーク、データ符号化形式、ゲイン、精度、1秒当たりのデータ長、ベースライン位置などにおいて大きく異なるため、入力される心電図時系列データの全てを本発明の解析プロセスの要求に従って一括処理するデータ前処理が必要となる。具体的なデータ処理受信プロセスは、以下のステップを含む。
【0022】
1. 生データを所定のデータサンプリング周波数でリサンプリングし、新しいサンプリング周波数条件下での各データ点の時間特徴データを取得する。時間特徴データは、心電図データ信号の時間軸上の各データ点の時間情報を表すものである。
【0023】
2. リサンプリングされたデータをデジタル信号フィルタリングして、高周波数、低周波数のノイズ干渉及びベースラインシフトを除去する。
【0024】
3. フィルタリングされたデータを、予め定められた標準データフォーマットに従ってデータフォーマット変換する。
【0025】
4. 変換後データに対して心拍検出処理を行い、各リードの複数の心拍データを識別してリード心拍データを形成する。
【0026】
5. リード心拍データに対して干渉識別を行う。
【0027】
6. リード心拍データを干渉識別結果及び時間規則に基づいて統合し、統一された心拍時系列データを生成する。
【0028】
ステップ120:心拍時系列データに基づいて、設定データ量でリード心拍データをカッティングしてリード心拍解析データを生成する。
【0029】
リード心拍データをカッティングする前に、まず、リード心拍データの中間サンプリング点を決定する必要がある。中間サンプリング点として、リード心拍データのP波位置、QRS波群のR波位置及びT波位置などの位置を選択することができる。心拍データの中間サンプリング点の選択は、心拍分類モデルのトレーニングサンプルの中間サンプリング点の選択と一致する必要がある。
【0030】
次に、リード心拍データの中間サンプリング点を中心として、時間特徴データと予め設定されたデータサンプリング周波数に従って、設定データ量でリード心拍動データを両側へとデータサンプリングし、リード心拍解析データを得る。設定データ量及び所定のデータサンプリング周波数は、トレーニングして得られたLepuEcgCatNet心拍分類モデルの入力データの関連パラメータとマッチングしなければならない。
【0031】
ステップ130:リード心拍解析データをデータ結合し、1次元心拍解析配列を得る。
【0032】
具体的には、リード心拍解析データは、シングルリード心拍解析データとマルチリード心拍解析データを含んでもよく、両者の具体的な処理はそれぞれ以下の通りとなる。
【0033】
シングルリード心拍解析データは、心拍時系列データに従って1次元の心拍解析配列として結合される。ここで、1次元心拍解析配列の長さは、心拍時系列の長さ×設定データ量でなるものであり、1次元心拍解析配列の内容は、心拍解析データが時系列に配列されたものである。
【0034】
マルチリード心拍解析データをデータ結合して1次元心拍解析配列を得ることは、以下のステップを含む。
【0035】
a. 心拍時系列データに基づいて各時間特徴データを取得する。
【0036】
b. 前記時間特徴データに基づいて全てのリード心拍解析データを取得するとともに、分類モデルによって定義されたリード順序パラメータでソートする。
【0037】
c. 前記時間特徴データに基づいて各リード対応位置の干渉フラグを取得し、分類モデルによって定義されたリード順序パラメータでソートする。
【0038】
d. 対応するリード位置の干渉フラグをチェックし、干渉であれば、設定データサイズの標準干渉データで置き換える。前記標準干渉データは、オール0値、オール1値、又は他のプリセット値を採用することができる。
【0039】
e. 前記配列された各リード心拍解析データを1つのサンプルデータとして1つの1次元心拍解析配列に順次に加える。
【0040】
f.心拍時系列データに対応するリード心拍解析データを全てサンプルデータに変換して前記1次元心拍解析配列に加入し、1次元心拍解析配列のサンプルデータの結合を終了するまで、a~eの動作を繰り返す。
【0041】
ステップ140:1次元心拍解析配列に基づいて、データ次元増幅変換を行い、4次元テンソルデータを得る。
【0042】
入力データフォーマットに対するLepuEcgCatNet心拍分類モデルの要求は、4次元テンソルデータ( b,h,w,d )であり、ここで、bはバッチデータであり、hは高さデータであり、wは幅データであり、dはチャネルデータである。具体的には、バッチデータは、入力サンプルのサンプル数であり、高さデータ×幅データ=1サンプル当たりの長さ、つまり設定データ量であり、チャンネルデータ=リード数である。
【0043】
まず、リード心拍データをカッティングする際に用いた設定データ量とコンピュータソースに基づいて、適切なバッチデータ値を決定する。具体的には、コンピュータリソースとは、深層学習に使用可能なコンピュータにおけるグラフィックカードのメモリを含むメモリの大きさを意味する。同時に、LepuEcgCatNet心拍分類モデルは、マルチリードのサンプルデータ入力時のリード順序付けのための規範的処理に用いられるリード順序パラメータをさらに定義する。
【0044】
バッチデータ値とリード数に基づいて、1次元心拍解析配列から、数がバッチデータ値であり、長さが設定データ量×リード数となる1次元心拍解析配列データを順次に取り出し、次に該データを、バッチデータ値を1次元目の値、設定データ量×リード数を2次元目の値とした2次元テンソルデータに変換する。言い換えれば、前工程で結合された1次元心拍解析配列は、複数の前記サイズの2次元テンソルデータに変換することができ、2次元テンソルデータの各行は1つのサンプルデータである。
【0045】
2次元テンソルデータの各行は、それぞれ高さ、幅、及びチャネルという三つの次元を有する3次元テンソルデータにさらに変換する必要がある。言い換えれば、2次元テンソルデータを4次元テンソルデータに変換するということである。
【0046】
具体的には、高度融合、幅融合又はチャネル融合の方法によって変換することができる。
【0047】
高度融合によって、2次元テンソルデータの各行を3次元テンソルデータに変換できる。具体的には、設定データ量×リード数の各行のデータを、高度値がリード数であり、幅値が設定データ量であり、チャンネル値が1である3次元テンソルデータに変換する。言い換えれば、2次元テンソルデータは、(バッチデータ値、リード数、設定データ量、1 )というLepuEcgCatNet心拍分類モデルの入力フォーマットの要求に適合する4次元テンソルデータに変換される。
【0048】
幅融合によって、2次元テンソルデータの各行を3次元テンソルデータに変換できる。具体的には、設定データ量×リード数の各行のデータを、高度値が1であり、幅値が設定データ量×リード数であり、チャンネル値が1である3次元テンソルデータに変換する。言い換えれば、2次元テンソルデータは、(バッチデータ値、1、設定データ量×リード数)というLepuEcgCatNet心拍分類モデルの入力フォーマットの要求に適合する4次元テンソルデータに変換される。
【0049】
チャンネル融合によって、2次元テンソルデータの各行を3次元テンソルデータに変換できる。具体的には、設定データ量×リード数の各行のデータを、高度値が1であり、幅値が設定データ量であり、チャンネル値がリード数である3次元テンソルデータに変換する。言い換えれば、2次元テンソルデータは、(バッチデータ値、1、設定データ量、リード数)というLepuEcgCatNet心拍分類モデルの入力フォーマットの要求に適合する4次元テンソルデータに変換される。
【0050】
異なる融合方式は、元の心拍解析データの時間的又は空間的尺度における情報特徴の融合を可能にし、モデル分類の精度を高めるのに役立つ。
【0051】
ステップ150:トレーニングして得られたLepuEcgCatNet心拍分類モデルに4次元テンソルデータを入力し、心拍解析データに対応する心拍分類情報を得る。
【0052】
具体的には、トレーニングして得られたLepuEcgCatNet心拍分類モデルに4次元テンソルデータを入力して推論演算を行い、心拍解析データに対応する心拍分類情報を得る過程は、以下のステップを含む。
【0053】
ステップ1:Google Protocol Buffersデータプロトコルに従って、トレーニング済みのLepuEcgCatNet心拍分類モデルのモデル構造データ及びパラメータデータを読み出す。モデル構造データ及びパラメータデータは対称暗号アルゴリズムによって保護されているので、使用前に解読操作も行わなければならない。
【0054】
スッテプ2:実行環境において受信処理された後のリード心データを、カッティング、結合及び変換し、LepuEcgCatNet心拍分類モデル入力データフォーマットの要件を満たす4次元テンポデータを生成する。
【0055】
ステップ3:読み出されたLepuEcgCatNet心拍分類モデルに4次元テンソルデータを入力し、1層ずつ畳み込みによって特徴を抽出し、全連結層、softmax回帰分類などの計算を順次に経て、最終的に心拍解析データに対応する心拍分類情報を得る。
【0056】
LepuEcgCatNet心拍分類モデルは、具体的には、シングルリード心拍分類モデルとマルチリード心拍分類モデルという二種類に分けられる。
【0057】
シングルリード心拍データの心拍分類について、LepuEcgCatNetシングルリード心拍分類モデルを用いる。
【0058】
マルチリード心拍データの心拍分類について、一般的にLepuEcgCatNetマルチリード心拍分類モデルを用いる。この方法は、マルチリード同期相関解析方法と呼ばれる。しかし、特定の場合には、シングルリード心拍分類モデルを使用し、マルチリード心拍データの一部又は全部リード心拍データをそれぞれ独立に分類してから、各リードの分類結果とリード重み値参照係数とに基づいて分類投票決定を行い、最終的な分類結果を得ることもできる。この方法は、マルチリード投票決定方法と呼ばれる。具体的には、リード重み値参照係数は、心電図データを基にベイズ統計解析を行って得られた異なる心拍分類に対する各リードの投票重み係数である。
【0059】
具体的には、図3は、シングルリード型心拍データ分類方法の手順を示している。
【0060】
心拍時系列データに基づいて、第1のデータ量でシングルリード心拍データをカッティングしてシングルリードの心拍解析データを生成して、トレーニングして得られた該リードに対応するLepuEcgCatNetシングルリード心拍分類モデルに入力し、振幅及び時間特徴データの特徴抽出及び解析を行い、シングルリード心拍データの分類情報を取得する。
【0061】
具体的には、図4は、リード投票決定法を用いたマルチリード心拍データ分類方法の手順を示している。
【0062】
ステップ1:心拍時系列データに基づいて、第2のデータ量で各リード心拍データをカッティングすることにより、各リードの心拍解析データを生成する。
【0063】
スッテプ2:トレーニングして得られた各リードに対応するLepuEcgCatNetシングルリード心拍分類モデルに基づいて、各リードの心拍解析データに対して振幅及び時間特徴データの特徴抽出及び解析を行って、各リードの分類情報を得る。
【0064】
ステップ3:各リードの分類情報とリード重み値参照係数とに基づいて分類投票決定計算を行い、一次分類情報を得る。
【0065】
具体的には、図5は、リード同期関連分類を使用したマルチリード心拍データ分類方法の手順を示している。
【0066】
ステップ1:心拍時系列データに基づいて、第3のデータ量で各リード心拍データをカッティングすることにより、各リードの心拍解析データを生成する。
【0067】
スッテプ2:トレーニングして得られた各リードに対応するLepuEcgCatNetマルチリード心拍分類モデルに基づいて、各リードの心拍解析データに対して振幅及び時間特徴データの特徴抽出及び解析を行い、各リードの分類情報を得る。
【0068】
LepuEcgCatNet心拍分類モデル構造は、図2に示すように、人工知能深層学習に基づく畳み込みニューラルネットワークAlexNet、VGG16、Inceptionなどの成熟型のモデルを基に構築されたエンドツーエンドのマルチラベル深度畳み込みニューラルネットワーク分類モデルであり、心電図解析要件とデータ特徴に特化した深度学習モデルである。具体的には、該モデルのネットワークは、7層の畳み込みネットワークであり、各畳み込みの直後に活性化関数が続く。第1の層は、2つの異なる寸法のロールラミネーションであり、続いて6つのロールラミネーションがある。7層畳み込みのコンボリューションカーネルは、それぞれ96、256、256、384、384、384、256である。第1層コンボリューションカーネルにそれぞれ5と11というスケールがある以外、他の層のコンボリューションカーネルのスケールは5である。3、5、6、7層目は積層後にプール層となる。最後に、2つの完全結合層が続く。具体的には、LepuEcgCatNet心拍分類モデルのトレーニング過程は、以下のステップを含む。
【0069】
ステップ1:トレーニングデータを選択する。トレインセットが30万人の患者を含む1700万のデータサンプルを用いてトレーニングを行った。これらのサンプルは、心電図解析診断の要求に応じてデータを正確にラベル付けて生成されたものである。ラベル付けは、主に、一般的な不整脈、伝導遅延特性、並びにSTセグメント及びT波の変化に対するものであり、異なる応用シチュエーションに関するモデル訓練を満たすことができる。具体的には、予め設定された標準データ形式でラベル付け情報を保存する。トレーニングデータの前処理において、モデルの包括力を増加させるために、サンプル量の少ない分類に対して小さなスライドを行ってデータを増幅する。具体的には、1心拍ごとに一定のステップ幅(例えば10~50個データ点)で2回移動させることにより、2倍のデータを増加させることができ、データ量が比較的に少ないというこれらの分類サンプルに対する識別の正確度を向上させることができる。実際の結果によると、汎化能も改善されることが実証された。
【0070】
ステップ2:トレーニングサンプルを予め設定された標準データ形式に変換して記憶する。
【0071】
ステップ3:トレーニングサンプルに対してデータのカッティング、結合、及び変換を行い、変換後のデータが入力データフォーマットに対するLepuEcgCatNet心拍分類モデルの要件に適合し、モデルのトレーニングに使用できる。
【0072】
ステップ4:実際のトレーニング過程で2台のGPUサーバーを用いて数十回のトレーニングサイクルを行い、トレーニングが収束した後、一定データ量の独立したテストデータを用いて異なる反復回数でトレーニングされたモデルをテストし、最もテスト精度の高いモデルをLepuEcgCatNet心拍分類モデルとして抽出する。さらに、モデルとパラメータデータをGoogle Protocol Buffersデータプロトコルに従って記憶し、対称暗号アルゴリズムを用いて保護する。
【0073】
ここで、切り出されたトレーニングデータの長さは、1秒から10秒であってもよい。例えば、サンプリングレートが200 Hzで、サンプリング長が2.5 sで、取得した設定データサイズが500心電図電圧値(ミリボルト)の1セグメントD [ 500 ]を、バッチデータとリード個数Nとに基づいてデータ変換することにより、最終的に4次元テンソルデータ、すなわち、高度融合方式による4次元テンソルデータInputdata (バッチデータ、N、500、1 )又は幅融合方式による4次元テンソルデータInputdata (バッチデータ、1,500 xN、1 )又はチャンネル融合方式による4次元テンソルデータInputdata (バッチデータ、1,500、N )を得ることができる。入力データがすべてランダムに散逸されて初めてトレーニングが開始するので、トレーニング過程が収束することが保証される。同時に、同じ患者の心電図データからのサンプルの収集を抑え、モデルの一般化能力、つまり実際の状況での正確度を高める。
【0074】
本発明の人工知能に基づく心電図心拍自動識別分類方法は、シングルリードによる単独解析のみで結果を集計して統計することが比較的に分類し間違いやすいという従来の方法の欠点を改善し、心電図心拍分類の精確率を大幅に向上させるものである。
【0075】
当業者は、本明細書に開示される実施例に記載の各例のユニット及びアルゴリズムに関するステップが、電子ハードウェア、コンピュータソフトウェア又はその両方の組合せで実現でき、ハードウェアとソフトウェアの互換性を明確に示すために、上述の記載では、機能に応じて各例の構成及び手順を包括的に説明したことをさらに分かる。これらの機能がハードウェア又はソフトウェアのいずれで実行されるかは、技術案の特定の応用例や設計上の制約によって決められる。当業者は、特定の応用に対して異なる方法によって上述の機能を実施することができるが、そのような実施は、本発明の範囲から逸脱するものと認定すべきではない。
【0076】
本明細書で開示される実施例に記載の方法又はアルゴリズムに関するステップは、ハードウェア、プロセッサによって実行されるソフトウェアモジュール、または両方の組合せで実施されることができる。ソフトウェアモジュールは、ランダムアクセスメモリ( RAM )、メモリ、リードオンリーメモリ( ROM )、電気的なプログラマブルROM、電気的に消去可能なプログラマブルROM、レジスタ、ハードディスク、リムーバブルディスク、CD-ROM、又は当技術分野で知られている任意の他の形態の記憶媒体に置かれることができる。
【0077】
上述の具体的な実施形態に基づいて、本発明の目的、技術案及び有益な効果について詳しく説明してきた。なお、上述のものは本発明の具体的な実施の形態に過ぎず、本発明の権利範囲を制限するものではなく、本発明の精神及び権利範囲内で行われた如何なる変更、均等な置き換え、改良などはいずれも本発明の権利範囲に含まれるものであると理解しなければならない。
図1
図2
図3
図4
図5