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特許7018147相変化冷却モジュール及びこれを用いるバッテリーパック
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-01
(45)【発行日】2022-02-09
(54)【発明の名称】相変化冷却モジュール及びこれを用いるバッテリーパック
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/6569 20140101AFI20220202BHJP
   H01L 23/427 20060101ALI20220202BHJP
   H01M 10/613 20140101ALI20220202BHJP
   H01M 10/6556 20140101ALI20220202BHJP
   H01M 10/651 20140101ALI20220202BHJP
   H01M 10/625 20140101ALI20220202BHJP
   H01M 10/617 20140101ALI20220202BHJP
   H01M 50/204 20210101ALI20220202BHJP
【FI】
H01M10/6569
H01L23/46 A
H01M10/613
H01M10/6556
H01M10/651
H01M10/625
H01M10/617
H01M50/204 401H
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020566567
(86)(22)【出願日】2019-05-28
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-10-14
(86)【国際出願番号】 KR2019006352
(87)【国際公開番号】W WO2019231202
(87)【国際公開日】2019-12-05
【審査請求日】2020-12-10
(31)【優先権主張番号】10-2018-0060602
(32)【優先日】2018-05-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】304059937
【氏名又は名称】コリア・インスティテュート・オブ・マシナリー・アンド・マテリアルズ
【氏名又は名称原語表記】KOREA INSTITUTE OF MACHINERY & MATERIALS
【住所又は居所原語表記】156,GAJEONGBUK-RO,YUSEONG-GU,DAEJEON,REPUBLIC OF KOREA
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100188307
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 昌宏
(72)【発明者】
【氏名】李 政昊
(72)【発明者】
【氏名】金 ▲填▼渉
(72)【発明者】
【氏名】申 東桓
【審査官】佐藤 卓馬
(56)【参考文献】
【文献】特開平02-058296(JP,A)
【文献】国際公開第2018/070115(WO,A1)
【文献】特開2010-277863(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/6569
H01L 23/427
H01M 10/613
H01M 10/6556
H01M 10/651
H01M 10/625
H01M 10/617
H01M 50/204
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に一定経路に沿って貫通形成される冷却チャンネルを備え、被冷却体に付着されて 前記被冷却体の熱を前記冷却チャンネルに伝達するボディー部;
前記冷却チャンネルの壁面に一定厚さで形成され、表面に多数の孔隙を備える多孔層;及び
前記多孔層と接触した状態で前記冷却チャンネルの内部を流動しながら前記被冷却体から熱を吸収して沸騰(boiling)することに必要な潜熱に用いる冷却媒体;を含む、相変化冷却モジュール。
【請求項2】
前記冷却チャンネルは、前記冷却媒体が第1圧力で流動する第1区間と、前記冷却媒体が前記第1圧力より低い第2圧力で流動する第2区間を備え、
前記第2区間の断面積が前記第1区間の断面積より大きく形成されることを特徴とする、請求項1に記載の相変化冷却モジュール。
【請求項3】
前記ボディー部は、前記被冷却体が付着される付着領域と、前記被冷却体が付着されない未付着領域を備え、
前記未付着領域に沿って設けられて前記冷却媒体が流入し、前記冷却チャンネルと連結される過冷チャンネル;をさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の相変化冷却モジュール。
【請求項4】
前記冷却媒体は、前記冷却媒体の沸騰点(boiling point)未満の温度で前記過冷チャンネルの入口に供給され、前記冷却チャンネルの内部を流動する過程で前記ボディー部から熱を吸収して前記冷却媒体の沸騰点に温度が上昇することを特徴とする、請求項3に記載の相変化冷却モジュール。
【請求項5】
前記冷却媒体は、前記多孔層の厚さまたは前記孔隙のサイズによって熱流速(heatflux)が増加してから減少する臨界点を有し、
前記多孔層は、前記臨界点に対応する前記多孔層の厚さまたは前記孔隙のサイズに形成されることを特徴とする、請求項1に記載の相変化冷却モジュール。
【請求項6】
前記冷却チャンネルは、前記冷却媒体が流入する入口と、前記冷却媒体が排出される出口を備え、
前記冷却チャンネルの入口と連結されて前記冷却媒体を前記冷却チャンネルに供給する供給ラインと、前記冷却チャンネルの出口と連結されて前記冷却チャンネルから排出される冷却媒体が流入する流入ラインと、前記供給ラインに供給される冷却媒体と前記流入ラインに流入する冷却媒体が互いに熱交換される熱交換領域を備える熱交換部;をさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の相変化冷却モジュール。
【請求項7】
相変化冷却モジュールが設置されたバッテリーパックにおいて、
前記相変化冷却モジュールは、
内部に一定経路に沿って貫通形成される冷却チャンネルを備え、被冷却体に付着されて 前記被冷却体の熱を前記冷却チャンネルに伝達するボディー部;
前記冷却チャンネルの壁面に一定厚さで形成され、表面に多数の孔隙を備える多孔層;及び
前記多孔層と接触した状態で前記冷却チャンネルの内部を流動しながら前記被冷却体から熱を吸収して沸騰(boiling)することに必要な潜熱に用いる冷却媒体;を含むことを特徴とする、バッテリーパック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は相変化冷却モジュール及びこれを用いるバッテリーパックに関し、より詳しくは、冷却媒体の潜熱を用いて被冷却体を均一に冷却する相変化冷却モジュール及びこれを用いるバッテリーパックに関する。
【背景技術】
【0002】
いろいろな電子製品に収容される半導体、素子などの部品、電気自動車に用いられるバッテリーパックなどは使用する過程で熱が発生するようになる。この場合に発生する熱を適切な冷却措置を行なって冷却及び放熱しなければ、部品、バッテリーパックの性能の低下は勿論、激しい場合、部品、バッテリーパックなどが過熱して破損されることが発生することがある。
【0003】
このような部品、バッテリーパック、即ち被冷却体の過熱を防止するための冷却手段として、冷却器を取り付けて過熱を防止するが、冷却器の作動方式は一般的に2種類に大別される。
【0004】
1つは、ファンを用いて部品の表面に空気を循環させることによって、冷却及び放熱を行う空冷式冷却器であり、他の1つは、冷媒役割をする流体を被冷却体の表面に流動させて冷却及び放熱を行う水冷式冷却器がある。
【0005】
前述した各冷却方式には長短所が各々あるが、空冷式冷却の場合、取付費用は低廉であるが、水冷式に比べて冷却効率が落ちて、水冷式の場合は、冷却効率は非常に良いが、取付費用が空冷式に比べて高いということが短所である。したがって、水冷式冷却器は主に高い冷却効率を必要とする被冷却体に適用されている。
【0006】
このような水冷式冷却器の代表的な例に、冷却ジャケットがある。従来の冷却ジャケットは一般的に冷却流路が曲がった形態に設けられ、冷却液が冷却流路の内部を流動しながら被冷却体の熱を吸収する。これは、ジャケットの内部の冷却流路の長さをできる限り長くすることによって、冷却液とジャケットの内部の壁面の接触面積を増やして被冷却体からの熱を効率よく冷却液に伝達させようとする方法である。
【0007】
しかしながら、従来の冷却ジャケットは冷却液が被冷却体の熱を吸収しながら温度が変わるようになる。冷却液が冷却流路の内部を流動する間、温度が次第に上昇するのである。したがって、冷却流路の入口側に近い被冷却体の一側面と冷却ジャケットとの温度差より冷却流路の出口側に近い被冷却体の他側面と冷却ジャケットとの温度差がより低くなる。
【0008】
これによって、被冷却体の一側面が他側面より冷却される程度がより大きくなって被冷却体が全体的に不均一に冷却されざるを得なかった。
【0009】
また、従来の冷却ジャケットは冷却液の状態変化無しで単相流動により熱伝逹がなされるので、熱伝逹係数を向上させるためには流量を増大させなければならない。なぜならば、冷却媒体が二相(two phase)に沸騰する過程での熱伝逹係数に比べて単相(single phase)の冷却媒体が有する熱伝逹係数が1/5乃至1/10位低いためである。
【0010】
結局、被冷却体の熱流速(単位面積当たりまたは単位時間当り熱伝達量、heat flux)を高めるためには、冷却流量が増大しなければならないので、ポンプを始めとする全体冷却システムが大型化される問題点があった。
【0011】
関連先行技術文献には、大韓民国登録特許公報第10-0610293号(2006.08.09.登録公告、発明の名称:液体冷却ジャケット)がある。
【技術的課題】
【0012】
したがって、本発明が解決しようとする課題は、このような従来の問題点を解決するためのものであって、被冷却体を均一に冷却させることができ、より向上した熱流速を有する相変化冷却モジュール及びこれを用いるバッテリーパックを提供することにある。
【課題解決手段】
【0013】
前記のような目的を達成するために本発明の相変化冷却モジュールは、内部に一定経路に沿って貫通形成される冷却チャンネルを備え、被冷却体に付着されて前記被冷却体の熱を前記冷却チャンネルに伝達するボディー部;前記冷却チャンネルの壁面に一定厚さで形成され、表面に多数の孔隙を備える多孔層;及び前記多孔層と接触した状態で前記冷却チャンネルの内部を流動しながら前記被冷却体から熱を吸収して沸騰(boiling)することに必要な潜熱に用いる冷却媒体;を含むことを特徴とする。
【0014】
本発明の相変化冷却モジュールにおいて、前記冷却チャンネルは、前記冷却媒体が第1圧力で流動する第1区間と、前記冷却媒体が前記第1圧力より低い第2圧力で流動する第2区間を備え、前記第2区間の断面積が第1区間の断面積より大きく形成できる。
【0015】
本発明の相変化冷却モジュールにおいて、前記ボディー部は、前記被冷却体が付着される付着領域と、前記被冷却体が付着されない未付着領域を備え、前記未付着領域に沿って設けられて前記冷却媒体が流入され、前記冷却チャンネルと連結される過冷チャンネル;をさらに含むことができる。
【0016】
本発明の相変化冷却モジュールにおいて、前記冷却媒体は、前記冷却媒体の沸騰点(boiling point)未満の温度に前記過冷チャンネルの入口に供給され、前記冷却チャンネルの内部を流動する過程で前記ボディー部から熱を吸収して前記冷却媒体の沸騰点に温度が上昇できる。
【0017】
本発明の相変化冷却モジュールにおいて、前記冷却媒体は、前記多孔層の厚さまたは前記孔隙のサイズによって熱流速(heat flux)が増加してから減少する臨界点を有し、前記多孔層は、前記臨界点に対応する前記多孔層の厚さまたは前記孔隙のサイズに形成できる。
【0018】
本発明の相変化冷却モジュールにおいて、前記冷却チャンネルは、前記冷却媒体が流入する入口と、前記冷却媒体が排出される出口を備え、前記冷却チャンネルの入口と連結されて前記冷却媒体を前記冷却チャンネルに供給する供給ラインと、前記冷却チャンネルの出口と連結されて前記冷却チャンネルから排出される冷却媒体が流入する流入ラインと、前記供給ラインに供給される冷却媒体と前記流入ラインに流入する冷却媒体が互いに熱交換される熱交換領域を備える熱交換部;をさらに含むことができる。
【0019】
前記のような目的を達成するために、本発明のバッテリーパックは、請求項1乃至5のうち、いずれか一項に記載された相変化冷却モジュールが取り付けられたことを特徴とする。
[発明の効果]
【0020】
本発明の相変化冷却モジュール及びこれを用いるバッテリーパックによると、被冷却体で発生した熱を冷却媒体が相変化することに必要な潜熱に用いることによって、被冷却体を全体的に均一に冷却させることができる。
【0021】
また、本発明の相変化冷却モジュール及びこれを用いるバッテリーパックによれば、多孔層を通じて冷却媒体を速く沸騰させることができ、より多い気泡を発生させることによって、冷却効率を高めることができる。
【0022】
また、本発明の相変化冷却モジュール及びこれを用いるバッテリーパックによれば、冷却媒体が沸騰して発生した気泡を通じて冷却効率をより向上させることができる。
【0023】
また、本発明の相変化冷却モジュール及びこれを用いるバッテリーパックによれば、多孔層の厚さまたは孔隙のサイズを調節することによって、沸騰による冷却効率を極大化させることができる。
【0024】
また、本発明の相変化冷却モジュール及びこれを用いるバッテリーパックによれば、同一の冷却媒体の量で相対的に多い熱を吸収することができ、これを通じて冷却モジュールを小型化、軽量化させることができ、全体冷却システムの駆動効率を向上させることができる。
【0025】
また、本発明の相変化冷却モジュール及びこれを用いるバッテリーパックによれば、冷却チャンネルを流れる冷却媒体の圧力を一定に維持させることによって、被冷却体を均一に冷却させることができる。
【0026】
また、本発明の相変化冷却モジュール及びこれを用いるバッテリーパックによれば、過冷チャンネルを介して冷却媒体を沸騰点まで予め予熱するか、または熱交換部を通じて過冷状態の冷却媒体を予め予熱することによって、追加的な設備無しで被冷却体を均一に冷却させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明の第1実施形態に従う相変化冷却モジュールを概略的に示す斜視図である。
図2図1のII-II'線による断面図である。
図3図2の“A”部分を拡大して示す部分拡大図である。
図4図3のIV-IV'線による断面図である。
図5】多孔層の有無に従う熱流速の差を示すグラフである。
図6図1の相変化冷却モジュールに形成された多孔層の厚さまたは孔隙のサイズによって熱流速が変わることを示すグラフである。
図7図7a及び図7bは、本発明の第2実施形態に従う相変化冷却モジュールに構成された冷却チャンネルを示す図面である。
図8】本発明の第3実施形態に従う相変化冷却モジュールに構成された過冷チャンネルの機能を説明するための図面である。
図9】本発明の第4実施形態に従う相変化冷却モジュールを概略的に示す図面である。
【0028】
[符号の説明]
100:ボディー部
110:冷却チャンネル
200:多孔層
300:冷却媒体
H:被冷却体
B:気泡
【発明の実施のための形態】
【0029】
以下、本発明に従う相変化冷却モジュール及びこれを用いるバッテリーパックの実施形態を添付の図面を参照して詳細に説明する。
【0030】
図1は本発明の第1実施形態に従う相変化冷却モジュールを概略的に示す斜視図であり、図2図1のII-II'線による断面図であり、図3図2の“A”部分を拡大して示す部分拡大図であり、図4図3のIV-IV'線による断面図であり、図5は多孔層の有無に従う熱流速の差を示すグラフであり、図6図1の相変化冷却モジュールに形成された多孔層の厚さまたは孔隙のサイズによって熱流速が変わることを示すグラフである。
【0031】
図1乃至図6を参照すると、本発明の第1実施形態に従う相変化冷却モジュール1は、冷却媒体300の潜熱を用いて被冷却体Hを均一に冷却する相変化冷却モジュールに関するものであって、ボディー部100と、多孔層200と、冷却媒体300を含む。
【0032】
図1を参照すると、前記ボディー部100は内部に一定経路に沿って貫通形成される冷却チャンネル110を備え、被冷却体Hに付着されて被冷却体Hの熱を冷却チャンネル110に伝達する。ボディー部100は耐久性と熱伝導性に優れる銅、ステンレス鋼、セラミックス、タングステンなどが使われることができる。
【0033】
ボディー部100の一面は被冷却体Hと接触しながら熱の伝達を受けるか、または少なくとも被冷却体Hからの熱の伝達を受けることができるように設置されなければならない。ここで、被冷却体Hは、例えばPCに内蔵されるCPU、グラフィックチップセット、電気自動車に取り付けられ、複数のリチウムイオンバッテリーセルを結合したバッテリーパックのように熱を発生する発熱体を意味することができる。
【0034】
冷却チャンネル110は冷却媒体300が流入する入口110aと、冷却媒体300が排出される出口110bを備え、冷却媒体300が貯蔵された貯蔵空間(図示せず)にチューブなどの連結管120を媒介にして連結できる。連結管120には流量が調節できる流量調節バルブ(図示せず)が追加で具備できる。
【0035】
図2乃至図4を参照すると、前記多孔層200は冷却チャンネル110の壁面に一定厚さで形成され、表面に多数の孔隙(図示せず)を備える。多孔層200は多様な方法により形成できる。代表的に、一定サイズの粒度を有する金属粒子を冷却チャンネル110の壁面に溶かして付けるハンダ付け(soldering)方法またはブレージング(brazing)方法が用いられることができ、金属粒子自体を高温で加熱して表面のみ溶融させて冷却チャンネル110の壁面に付ける焼結(sintering)方法などが用いられることができる。
【0036】
孔隙(図示せず)の形態は表面で突出した突起が表面に沿って一定間隔で反復される凹凸形態や、玄武岩のように微細なサイズの気孔が表面と内部に無数に形成された形態など、多様に形成できる。
【0037】
図3を参照すると、前記冷却媒体300は多孔層200と接触した状態で冷却チャンネル110の内部を流動しながら被冷却体Hから伝達された熱を吸収する。冷却媒体300に吸収された熱は冷却媒体300が沸騰(boiling)することに必要な潜熱(latentheat)に用いられる。
【0038】
沸騰は冷却媒体300が冷却媒体300の飽和点より高い温度に維持される面と接している時、その境界面で気泡Bが発生する現象である。この過程で多孔層の表面に分布した熱が冷却媒体300が相変化(気泡発生)するのに必要な潜熱に用いられる。
【0039】
図3または図4に図示したように、気泡Bが多孔層200の表面から落ちながら冷却チャンネル110に従って流動するようになる。即ち、冷却媒体300が液体から気体に状態が変化しながら被冷却体Hで発生した熱を奪って冷却媒体300の流動方向(F)に沿って流れるのである。したがって、冷却チャンネル110の入口110aから出口110b側に行くほど冷却媒体300の乾度(dryness)、即ち冷却媒体300の気泡含有割合が高まるようになる。
【0040】
結局、冷却チャンネル110に供給された液体状態の冷却媒体300が冷却チャンネル110に沿って流動しながら次第に気体状態に変わり、この過程で冷却媒体300の温度変化はほとんどない状態に被冷却体Hが冷却される。したがって、本実施形態では、図1に図示したように、冷却チャンネル110の一地点(W1)での温度と他地点(W2)での温度が同一であるので、被冷却体Hを全体的に均一に冷却させることができる。
【0041】
従来には被冷却体Hから冷却モジュールに伝達された熱が冷却媒体300の温度を増加させる顯熱(sensible heat)に用いられた。このため、冷却モジュールの各領域毎に被冷却体Hとの温度勾配が異なるように形成されるので、被冷却体Hを均一に冷却させることができなかった。
【0042】
参考に、CPU、GPUのように、高集積チップセット、電気自動車に取り付けられるバッテリーパックは冷却無しで使用が不可能な部品であって、部品のある一領域でも正しく冷めなくて限界温度まで上昇するようになれば、部品の駆動に不安定をもたらすことは勿論、熱により部品の形状が変形されることもある。
【0043】
冷却媒体300は、相変化物質(Phase Change Material)と呼ばれることもあり、状態変化が起こる飽和点の温度が低く、比体積が小さな物質、即ち、同一の質量に多い熱が吸収できる物質が有利である。冷却媒体300はn-パラフィン系、一般有機物系、無機物系などの相変化物質が使用することができ、要求される飽和点と比熱を考慮して適宜に選択して使用することができるのである。具体的に、水、フロンガス、過フッ化炭素液(Perfluoro carbon liquid)などが使われることができる。
【0044】
このような冷却媒体300は多孔層200に形成された孔隙により迅速に沸騰条件に進入するようになる。冷却チャンネル110で流動する冷却媒体300が冷却媒体300の飽和点より低い過冷状態(sub-cooled condition)であっても多孔層200に形成された孔隙(図示せず)が活性点(active point)の役割をして、この活性点で気泡Bの発生が促進される。
【0045】
例えば、とても滑らかなガラスでは水が沸く点以上でもよく沸かないことは、この活性点が少ないためであるが、本実施形態は多孔層200に無数にある活性点(孔隙)が存在するので、冷却チャンネル110に流入した冷却媒体300を速く沸騰させることができ、より多い気泡Bを発生させることができる。
【0046】
即ち、図5に図示したように、被冷却体Hと冷却媒体300との間の温度差(T)によって冷却媒体300の熱流速(Q)も増加することにおいて、多孔層200が形成された場合(G1)がそうでない場合(G2)に比べて相対的に低い温度差(T)で沸騰が発生して冷却が始まり、温度差(T)によって熱流速(Q)が増加する割合も相対的に高い。
【0047】
本実施例のように、多孔層200が形成された場合には、沸騰による冷却が相対的に早く始まるので、被冷却体Hが比較的低い温度を維持することができ、熱流速(Q)の増加率も相対的に高いので、それだけに冷却効率も向上するのである。
【0048】
また、冷却チャンネル110の壁面に形成された多孔層200により冷却チャンネル110の内部を流動する冷却媒体300の圧力降下を減らすこともできる。
【0049】
多孔層200が形成されないプレーン(plain)チャンネルでは気泡のサイズが大きくて冷却チャンネルの長手方向に冷却媒体300が進行するにつれて気泡が凝集してバブリー流動(bubbly flow)でプラグ流動(plug flow)を過ぎて環形流動(annular flow)の様相まで見えるようになるが、このようにプラグ流動や環形流動は圧力降下を大きく発生する虞がある。一方、多孔層200が形成された冷却チャンネル110では気泡のサイズが遥かに小さくなるので、容易に凝集できなくて、冷却チャンネル110の長手方向に進行しながらプラグ流動を形成せず、終わりまでバブリー流動(bubbly flow)様相を示し、これによって圧力降下を小さくすることができる。
【0050】
一方、図6を参照すると、多孔層200により促進される沸騰現象は多孔層200の厚さまたは孔隙(図示せず)のサイズによって熱流速(heat flux)が増加してから減少する臨界点(CP)を有する。即ち、多孔層200の厚さが厚くなるにつれて、または孔隙のサイズが大きくなるにつれて、熱流速(Q)が次第に増加しながら最大熱流速(Qmax)を示し、一定厚さまたは一定サイズ以上からは熱流速(Q)が減少する。
【0051】
なぜならば、孔隙のサイズが小さ過ぎれば、気泡Bが成長できず、孔隙内部に停滞するようになり、反対に、孔隙のサイズが大き過ぎれば孔隙の中に液体状態の冷却媒体300が侵入して気泡Bをなくすためであり、これと同様に、多孔層200の厚さが薄過ぎれば、孔隙の数が充分でなくて、沸騰の促進が制約的にならざるを得ず、反対に、多孔層200の厚さが厚過ぎれば、孔隙の数は充分で、沸騰は促進されるが、厚い多孔層200が被冷却体Hと冷却媒体300との間の熱伝逹を妨害する抵抗層として作用するためである。
【0052】
したがって、沸騰による冷却効率が極大化されるように多孔層200の厚さまたは孔隙のサイズは臨界点(CP)に対応する一定厚さまたは一定サイズに形成することが好ましい。
【0053】
これに加えて、気泡Bが冷却チャンネル110の内部を流動する過程で互いに合わせられるか、または自体的に砕けて、あたかも水を棒で掻き回すように冷却媒体300を混ぜる作用をする。したがって、冷却媒体300が単純に温度差により対流されることより相対的に高い熱流速(Q)を得ることができる。即ち、単位時間の間冷却させることができる程度(冷却効率)が高まるのである。
【0054】
また、冷却媒体300の沸騰過程での比熱が冷却媒体300の温度上昇過程での比熱より普通5~10倍位高い。即ち、本実施形態は同一の冷却媒体300の量で相対的に多い熱を吸収することができる。これは、冷却媒体300の量を相対的に少なく循環させて同一の冷却効果を得ることができるということと同一である。したがって、冷却モジュールを小型化、軽量化させることができ、冷却媒体300の循環流量が減るにつれて、ポンプを含んだ全体冷却システムの駆動効率を向上させることができる。
【0055】
次に、本発明の第2実施形態に従う相変化冷却モジュール2に対して説明する。本発明の第2実施形態に従う相変化冷却モジュール2に対して本発明の第1実施形態に従う相変化冷却モジュール1と同一の構成は同一の図面符号を与えて、これに対する説明は省略する。
【0056】
図7a及び図7bは、本発明の第2実施形態に従う相変化冷却モジュールに構成された冷却チャンネルを示す図面である。
【0057】
本発明の第2実施形態に従う相変化冷却モジュール2において、冷却チャンネル111は図8に図示したように冷却媒体300が第1圧力(P1)で流動する第1区間(L1)と、冷却媒体300が第1圧力(P1)より低い第2圧力(P2)で流動する第2区間(L2)を備え、第2区間の断面積(A2)が第1区間の断面積(A1)より大きく形成される。
【0058】
図7aに図示したように,冷却媒体300が冷却チャンネル111の第1区間(L1)から第2区間(L2)に流れる過程で冷却媒体300が冷却チャンネル111の内壁面に摩擦しながら冷却媒体300の圧力が次第に減って第2区間の圧力(P2)が第1区間の圧力(P1)より落ちることがあり、図7bに図示したように冷却媒体300が冷却チャンネル111が直線形態に繋がった第1区間(L1)で曲線形態に曲がる第2区間(L2)に流れる過程で第2区間(L2)の曲率に比例して圧力が減って第2区間の圧力(P2)が第1区間の圧力(P1)より落ちることがある。
【0059】
このように、区間別に圧力が異なるようになれば、山で水を沸かせば速く沸くように、冷却媒体300の圧力差によって冷却媒体300が沸騰する程度が異なる。これによって、熱流速(Q)にも差が発生して冷却チャンネル111に沿って不均一に冷却できる。したがって、第1区間(L1)と第2区間(L2)の圧力が互いに対等に形成されるように第2区間の断面積(A2)を第1区間の断面積(A1)より大きく形成することが好ましい。
【0060】
次に、本発明の第3実施形態に従う相変化冷却モジュール3について説明する。本発明の第3実施形態に従う相変化冷却モジュール3に対して本発明の第1実施形態に従う相変化冷却モジュール1と同一の構成は同一の図面符号を与えて、これに対する説明は省略する。
【0061】
図8は、本発明の第3実施形態に従う相変化冷却モジュールに構成された過冷チャンネルの機能を説明するための図面である。
【0062】
図8を参照すると、ボディー部100は被冷却体Hが付着される付着領域(S1)と、被冷却体Hが付着されない未付着領域(S2)を備え、未付着領域(S2)に沿って設けられて冷却媒体300が流入され、冷却チャンネル110と連結される過冷チャンネル400をさらに含む。
【0063】
冷却媒体300は冷却媒体300の沸騰点(boiling point)未満の温度で過冷チャンネル400の入口400aに供給され、冷却チャンネル110の内部を流動する過程でボディー部100から熱を吸収して冷却媒体300の沸騰点(T’)に温度が上昇する。
【0064】
例えば、冷却媒体300の一種である過フッ化炭素液の場合、大気圧で沸騰点(T’)が56であり、冷却チャンネル110の内部圧力が低くなるほど沸騰点(T’)は下がる。仮に、過フッ化炭素液の温度を沸騰点(T’)に近く予め高めなければ、冷却チャンネル110の入口110aから一定区間は被冷却体Hからボディー部100に伝達された熱が冷却媒体300の温度を増加させる顯熱(sensible heat)に用いられることができる。冷却チャンネル110の入口110aに近いほど気泡Bが発生する程度が落ちるか、または気泡Bが発生しないので、冷却効率が低くならざるをえない。即ち、被冷却体Hが全体的に均一に冷却されないことがある。
【0065】
これを防止するために、本実施形態は過冷チャンネル400を介して冷却媒体300を沸騰点(T’)に近く予め予熱することによって、冷却チャンネル110の入口100aから活発に沸騰が起こるように構成される。これを通じて被冷却体Hを均一に冷却させることができることは勿論、冷却媒体300を加熱するための加熱手段や、沸騰点(T’)を低めるための真空手段を別途に備えなくてもよいので、設備面でも有利である。
【0066】
ここで、沸騰点(T’)は任意の気圧での冷却媒体300の飽和温度である。
【0067】
次に、本発明の第4実施形態に従う相変化冷却モジュール4に対して説明する。本発明の第4実施形態に従う相変化冷却モジュール4に対して本発明の第1実施形態に従う相変化冷却モジュール1と同一の構成は同一の図面符号を与えて、これに対する説明は省略する。
【0068】
図9は、本発明の第4実施形態に従う相変化冷却モジュールを概略的に示す図面である。
【0069】
図9を参照すると、本実施形態に従う相変化冷却モジュール4は熱交換部500をさらに含んで構成される。
【0070】
前記熱交換部500は冷却チャンネル110の入口110aと連結されて冷却媒体300を冷却チャンネル110に供給する供給ライン510と、冷却チャンネル110の出口110bと連結されて冷却チャンネル110から排出される冷却媒体300が流入する流入ライン520と、供給ライン510に供給される冷却媒体300と流入ライン520に流入する冷却媒体300が互いに熱交換される熱交換領域530を備える。
【0071】
冷却チャンネル110に供給される冷却媒体が沸騰点より低い過冷(sub-cooling)状態の場合、第3実施形態と同様に被冷却体Hが全体的に均一に冷却されないことがある。
【0072】
これを防止するために、本実施形態では冷却チャンネル110の出口110bから排出されて沸騰点に近い飽和状態(または、沸騰点より高い過熱状態)である冷却媒体を過冷状態である冷却媒体と互いに熱交換させることによって、冷却チャンネル110に供給される冷却媒体300の温度を沸騰点(T’、図8参照)に近く予め上昇させる。
【0073】
このように、冷却媒体を沸騰点付近まで予熱することによって、追加的な設備無しで被冷却体Hを均一に冷却させることができる。
【0074】
本実施形態で、冷却媒体300の間の熱交換方式は流入ライン520に流入する高温媒体が既に低温媒体が貯蔵された貯蔵空間(図示せず)に混合されて自体的な対流及び伝導を通じて熱交換が起こる方式、熱伝逹壁体を挟んで両媒体の間で熱交換するようにすることで換熱方式、貯蔵空間に高温媒体と低温媒体を時間的に交互に送り、高温媒体が熱媒介体にくれた顯熱により次に通過される低温流体を加熱する蓄熱方式など、多様な公知の熱交換方式が適用できる。
【0075】
前述したように構成された本発明の相変化冷却モジュール及びこれを用いるバッテリーパックは、被冷却体で発生した熱を冷却媒体が相変化することに必要な潜熱に用いることによって、被冷却体を全体的に均一に冷却させることができる効果を得ることができる。
【0076】
また、前述したように構成された本発明の相変化冷却モジュール及びこれを用いるバッテリーパックは、冷却チャンネルに多数の孔隙を有する多孔層が形成されているので、冷却媒体を速く沸騰させることができ、より多い気泡を発生させることによって、冷却効率を高めることができる効果を得ることができる。
【0077】
また、前述したように構成された本発明の相変化冷却モジュール及びこれを用いるバッテリーパックは、気泡が冷却チャンネルの内部で互いに合わせられるか、または自体的に砕けて冷却媒体を混ぜる作用をすることで、冷却効率をより向上させることができる効果を得ることができる。
【0078】
また、前述したように構成された本発明の相変化冷却モジュール及びこれを用いるバッテリーパック は、多孔層の厚さまたは孔隙のサイズを調節することによって、沸騰による冷却効率を極大化させることができる効果を得ることができる。
【0079】
また、前述したように構成された本発明の相変化冷却モジュール及びこれを用いるバッテリーパックは、冷却媒体の沸騰を用いて冷却させることによって、同一の冷却媒体の量で相対的に多い熱を吸収することができ、これを通じて冷却モジュールを小型化軽量化させることができ、全体冷却システムの駆動効率を向上させることができる効果を得ることができる。
【0080】
また、前述したように構成された本発明の相変化冷却モジュール及びこれを用いるバッテリーパックは、冷却チャンネルを流れる冷却媒体の圧力を一定に維持させることによって、被冷却体を均一に冷却させることができる効果を得ることができる。
【0081】
また、前述したように構成された本発明の相変化冷却モジュール及びこれを用いるバッテリーパックは、過冷チャンネルを介して冷却媒体を沸騰点まで予め予熱するか、または熱交換部を通じて過冷状態の冷却媒体を予め予熱することによって、追加的な設備無しで被冷却体を均一に冷却させることができる効果を得ることができる。
【0082】
本発明の権利範囲は前述した実施形態及び変形例に限定されるのでなく、添付した特許請求範囲内で多様な形態の実施形態に具現できる。特許請求範囲で請求する本発明の要旨を逸脱することなく当該発明が属する技術分野で通常の知識を有する者であれば、誰でも変形可能な多様な範囲まで本発明の請求範囲の記載の範囲内にあると見なす。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7a
図7b
図8
図9