(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-01
(45)【発行日】2022-02-09
(54)【発明の名称】サンルーフユニット
(51)【国際特許分類】
B60J 7/02 20060101AFI20220202BHJP
【FI】
B60J7/02 Z
(21)【出願番号】P 2021542054
(86)(22)【出願日】2020-06-25
(86)【国際出願番号】 JP2020024984
(87)【国際公開番号】W WO2021039082
(87)【国際公開日】2021-03-04
【審査請求日】2021-12-16
(31)【優先権主張番号】P 2019154292
(32)【優先日】2019-08-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】390023917
【氏名又は名称】八千代工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001379
【氏名又は名称】特許業務法人 大島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高橋 裕也
(72)【発明者】
【氏名】中村 圭一朗
【審査官】西田 侑以
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/079159(WO,A1)
【文献】特開2012-96765(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0151617(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60J 7/00 - 7/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のルーフに形成された開口を少なくとも部分的に開閉するためのサンルーフユニットであって、
前記開口に整合するように前記ルーフの下方に配置されるフレームと、
前記開口の後部を閉じるように前記フレームに固定されたリヤパネルと、
側部から垂下するステーを有し、前記開口の前部を閉じる閉位置と前記リヤパネルの上側に重なって前記開口の前部を開く開位置との間を、前記ステーを介してスライド可能に前記フレームに支持されたフロントパネルとを備え、
前記リヤパネルが、リヤパネル本体部と、前記リヤパネル本体部の外周縁に設けられるリヤモール部とを有し、且つリヤシール部を介して前記開口の縁部に当接し、
前記リヤシール部が、前記開口の後部において前記リヤモール部に取り付けられた第1シール部材と、前記開口の側部において前記リヤモール部との間に前記ステーのための走路を形成するべく、前後方向に延在する支持ブラケットを介して前記フレームに支持された第2シール部材とを含み、
前記フレームが、前記開口の側縁部よりも車内側に配置され、前記ステーを支持するスライダを前記走路の下方にて前後方向に摺動可能にガイドする1対のガイド壁と、前記開口の前記側縁部よりも車外側に立設された縦壁とを含み、前記開口の前記側縁部から下方に垂下するフランジ部を車外側の前記ガイド壁と前記縦壁との間に受容するように前記ルーフに固定され、
前記支持ブラケットが、上向きに開くU字状の断面形状を有し、前記フランジ部を受容するように配置され、車内側にて前記第2シール部材を支持し、車外側にて前記縦壁に取り付けられていることを特徴とするサンルーフユニット。
【請求項2】
前記縦壁に上下方向に延在する長孔が形成され、前記支持ブラケットが前記長孔を貫通する締結部材によって前記縦壁に高さ調整可能に締結されることを特徴とする請求項1に記載のサンルーフユニット。
【請求項3】
前記フレームは、車外側の前記ガイド壁と前記縦壁とにより前記開口の前記側縁部の下方に排水溝を形成し、
前記支持ブラケットの下部が前記排水溝内に配置されていることを特徴とする請求項2に記載のサンルーフユニット。
【請求項4】
前記支持ブラケットが、前記縦壁に取り付けられる外側縦壁と、前記第2シール部材を支持する内側縦壁と、前記内側縦壁の下端及び前記外側縦壁の下端を連結する連結壁とを有し、
前記支持ブラケットが最下位置にて前記縦壁に取り付けられた状態で前記連結壁が前記フレームから上方へ離間するように、前記長孔の下端位置が設定されていることを特徴とする請求項3に記載のサンルーフユニット。
【請求項5】
前記連結壁が、幅方向に延在する複数の横リブと、前記横リブ間に形成された複数の排水孔とを備えていることを特徴とする請求項4に記載のサンルーフユニット。
【請求項6】
前記外側縦壁が、前部及び後部に配置された2つの締結部と、2つの前記締結部の間にて車内側に膨出する膨出部と、車内側に膨出し且つ上下方向に延在するように前記膨出部に形成された複数の縦リブとを備えていることを特徴とする請求項4又は請求項5に記載のサンルーフユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両のルーフに設けられ、フロントパネルがリヤパネルの上側をスライドするように構成されたアウタスライド式のサンルーフユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
車両のルーフの一部を構成するフロントカバー及びリヤカバーを有し、フロントカバーがリヤカバーの上側をスライドするアウタスライド式のサンルーフ装置が知られている(特許文献1)。このサンルーフ装置では、ルーフシールがルーフの開口の周囲を縁取るようにルーフに取り付けられ、カバーシールがルーフシールに接触するようにリヤカバーの側縁に取り付けられることにより、ルーフとリヤカバーとの隙間がシールされる。フロントカバーがリヤカバーの上方を通って後方へスライドする際には、フロントカバーの取付具のレバー(支持部材)がルーフシールとカバーシールとの間に進入することにより、フロントカバーが後方へ大きくスライドすることができる。
【0003】
このような構成のサンルーフ装置では、サンルーフユニットをルーフに搭載する際にルーフシールを車体側のルーフに取り付ける必要があり、搭載作業が煩雑である。言い換えれば、全てのシールがサンルーフユニット側に設けられる構成が望ましい。そのような構成のアウタスライド式のサンルーフユニットとして、可動パネル(フロントパネル)又は固定パネル(リヤパネル)の外周縁に弾発的に当接する第1シール部と、ルーフの開口縁に弾発的に当接する第2シール部とを有するウェザーストリップ(シール部材)が、サンルーフユニットの一部であるガイドレールやフロントハウジング等に立設された縦壁に嵌着されたものが知られている(特許文献2)。このサンルーフユニットでは、フロントパネルを支持するリンク部材が、第1シール部を弾性変形させ、縦壁とリヤパネルとの間を通って前後に移動する。
【0004】
特許文献2に記載のサンルーフユニットでは、シール部材及びそれを支持する縦壁を、フロントパネル及びリヤパネルを取り囲むように両パネルの全周にわたって設けなければならず、シール構造が複雑である。また、ルーフに製造誤差がある場合には、固定パネルやシール部材の高さをルーフに揃えるように調整する必要があるが、特許文献2に記載のサンルーフユニットでは、シール部材の高さ調整を行うことができない。
【0005】
そこで、本出願人は、リヤパネルのリヤシール部が、リヤモール部の側縁に取り付けられる第1シール部材と、リヤモール部の後縁に取り付けられる第2シール部材と、第1シール部材の車外側に設けられる第3シール部材とを有し、第3シール部材が、後端にて第2シール部材の側端部に結合され、ルーフの開口の内縁に弾発的に当接する第1部分と、第1シール部材の外側に弾発的に当接し、第1シール部材と協働してフロントパネルを支持するステーのための走路を形成する第2部分とを有するサンルーフユニットを提案している(特許文献3)。このサンルーフユニットでは、第3シール部材が支持ブラケットを介してサンルーフユニットのフレームに支持され、且つ支持ブラケットがリヤパネルの車外側(即ち、ルーフの下方)にてフレームに固定されることで、スライダがリヤパネルの側縁の下方を支持ブラケットにより阻害されることなく移動することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】米国特許第9114689号明細書
【文献】米国特許出願公開第2013/0307296号明細書
【文献】国際公開第2018/079159号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献3に記載のサンルーフユニットでは、車両のルーフの開口の側縁部にて垂下するフランジ部の高さが大きい場合、その高さに応じて支持ブラケットの高さ寸法も大きくなる。その結果、サンルーフユニットの全体の厚みが厚くなる。
【0008】
本発明は、このような背景に鑑み、ルーフの開口の側縁部にて垂下するフランジ部の高さが大きい場合であっても、全体の厚みの増大を抑制できるサンルーフユニットを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
このような課題を解決するために、本発明のある実施形態は、車両(1)のルーフ(2)に形成された開口(3)を少なくとも部分的に開閉するためのサンルーフユニット(10)であって、前記開口に整合するように前記ルーフの下方に配置されるフレーム(20)と、前記開口の後部を閉じるように前記フレームに固定されたリヤパネル(12)と、側部から垂下するステー(63)を有し、前記開口の前部を閉じる閉位置と前記リヤパネルの上側に重なって前記開口の前部を開く開位置との間を、前記ステーを介してスライド可能に前記フレームに支持されたフロントパネル(11)とを備える。前記リヤパネルは、リヤパネル本体部(16)と、前記リヤパネル本体部の外周縁に設けられるリヤモール部(17)とを有し、リヤシール部(18)を介して前記開口の縁部に当接する。前記リヤシール部は、前記開口の後部において前記リヤモール部に取り付けられた第1シール部材(31)と、前記開口の側部において前記リヤモール部との間に前記ステーのための走路(64)を形成するべく、前後方向に延在する支持ブラケット(33)を介して前記フレームに支持された第2シール部材(32)とを含む。前記フレームは、前記開口の側縁部よりも車内側に配置され、前記ステーを支持するスライダ(40)を前記走路の下方にて前後方向に摺動可能にガイドする1対のガイド壁(41A,41B)と、前記開口の前記側縁部よりも車外側に立設された縦壁(43)とを含み、前記開口の前記側縁部から下方に垂下するフランジ部(4)を車外側の前記ガイド壁(41A)と前記縦壁との間に受容するように前記ルーフに固定される。前記支持ブラケットは、上向きに開くU字状の断面形状を有し、前記フランジ部を受容するように配置され、車内側にて前記第2シール部材を支持し、車外側にて前記縦壁に取り付けられている。
【0010】
この構成によれば、第1シール部材が開口の後部においてリヤモール部に取り付けられるため、第1シール部材を支持するために開口の後部にて縦壁をフレームに形成する必要がない。また、第2シール部材は、開口の側部において支持ブラケットを介してフレームに支持される。そのため、全てのシール部材が簡単な構成でサンルーフユニット側に設けられる。更に、支持ブラケットがフランジ部を受容するように配置されることで、支持ブラケットをルーフのフランジ部やスライダに干渉することなく配置することができるうえ、フランジ部の高さが大きい場合であっても、サンルーフユニットの全体の厚みの増大を抑制ことができる。
【0011】
好ましくは、前記縦壁(43)に上下方向に延在する長孔(61)が形成され、前記支持ブラケット(33)が前記長孔を貫通する締結部材(62)によって前記縦壁に高さ調整可能に締結される。
【0012】
この構成によれば、フレームの縦壁に長孔を形成する簡単な構成によって支持ブラケットを無段階に高さ調整可能に縦壁に取り付けることができる。従って、開口の側部においてルーフに対して段差が無くなるように第2シール部材の高さを調整することができる。
【0013】
好ましくは、前記フレーム(20)は、車外側の前記ガイド壁(41A)と前記縦壁(43)とにより前記開口の前記側縁部の下方に排水溝(44)を形成し、前記支持ブラケット(33)の下部が前記排水溝内に配置されている。
【0014】
この構成によれば、スライダが摺動する部分の車外側且つフランジ部の下方に排水溝が形成され、第2シール部材と開口の側縁部との間から水が侵入しても、この水が排水溝により前方又は後方へ排水処理される。そのため、スライダが摺動する部分に水が溜まることを抑制することができる。
【0015】
好ましくは、前記支持ブラケット(33)が、前記縦壁(43)に取り付けられる外側縦壁(56)と、前記第2シール部材を支持する内側縦壁(57)と、前記内側縦壁の下端及び前記外側縦壁の下端を連結する連結壁(58)とを有し、前記支持ブラケットが最下位置にて前記縦壁に取り付けられた状態で前記連結壁が前記フレーム(20)から上方へ離間するように、前記長孔(61)の下端位置が設定されている。
【0016】
この構成によれば、支持ブラケットが最下位置にて縦壁に取り付けられた状態であっても、支持ブラケットの下方に空間が形成され、この空間が排水溝として機能する。従って、排水処理が支持ブラケットによって阻害されることなく円滑に行われる。
【0017】
好ましくは、前記連結壁(58)が、幅方向に延在する複数の横リブ(66)と、前記横リブ間に形成された複数の排水孔(67)とを備えている。
【0018】
この構成によれば、複数の横リブによって連結壁の剛性低下を抑制しつつ、連結壁に複数の排水孔を形成することができる。複数の排水孔が連結壁に形成されることにより、開口の側縁部から侵入した水は、U字断面形状の支持ブラケット内をその全長にわたって流れることなく排水孔から排出され、下方の排水溝にて円滑に処理される。
【0019】
好ましくは、前記外側縦壁(56)が、前部及び後部に配置された2つの締結部(68)と、2つの前記締結部の間にて車内側に膨出する膨出部(69)と、車内側に膨出し且つ上下方向に延在するように前記膨出部に形成された複数の縦リブ(70)とを備えている。
【0020】
この構成によれば、外側縦壁が2つの締結部のみにおいてフレームの縦壁に接触する。これにより、車両の振動時に、締結部以外の部分が縦壁との接触或いは摺動によって異音を発することが抑制される。また、膨出部に複数の縦リブが形成されることにより、2つの締結部にて縦壁に締結される外側縦壁の剛性低下が抑制される。
【発明の効果】
【0021】
このように本構成によれば、ルーフの開口の側縁部にて垂下するフランジ部の高さが大きい場合であっても、全体の厚みの増大を抑制できるサンルーフユニットを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】ルーフに搭載されたサンルーフユニットの閉状態を示す斜視図
【
図2】
図1に示されるサンルーフユニットのチルトアップ状態を示す斜視図
【
図3】
図1に示されるサンルーフユニットの開状態を示す斜視図
【
図6】
図1中のV-V線に沿って破断したルーフの要部斜視図
【
図7】
図6に対応する破断したサンルーフユニットの要部斜視図
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0024】
図1は、自動車1のルーフ2に搭載されたサンルーフユニット10の閉状態を示す斜視図である。自動車1のルーフ2には矩形状の開口3が形成されており、この開口3を塞ぐようにサンルーフユニット10がルーフ2に搭載される。以下、サンルーフユニット10がルーフ2に搭載された自動車1を基準として、前後、左右、上下の方向を定める。左右方向に沿う自動車1の車幅方向については、自動車1の中心側を車内側と呼び、自動車1の外側を車外側と呼ぶことがある。サンルーフユニット10は、概ね左右対称とされており、左右対称の構造の詳細については左側を図示して説明する。
【0025】
サンルーフユニット10は、開口3の前部を閉じるフロントパネル11と、開口3の後部を閉じるリヤパネル12とを有している。フロントパネル11及びリヤパネル12は、それらの上面がルーフ2の上面に整合するようにルーフ2に沿って配置される。フロントパネル11は、ルーフ2に対して移動可能な可動パネルであり、リヤパネル12は、ルーフ2に対して移動不能な固定パネルである。
【0026】
フロントパネル11は、ガラス板からなるフロントパネル本体部13と、フロントパネル本体部13の外周縁に設けられた樹脂製の環状のフロントモール部14と、フロントモール部14の外周縁に設けられる弾性材からなるフロントシール部15とを有している。リヤパネル12は、ガラス板からなるリヤパネル本体部16と、リヤパネル本体部16の外周縁に設けられた樹脂製の環状のリヤモール部17とを有し、リヤモール部17の外周縁に設けられる弾性材からなるリヤシール部18を介して開口3の縁部に当接する。フロントシール部15とリヤシール部18とは、協働して、フロントパネル11及びリヤパネル12の外周部に環状のシール部を形成すると共に、フロントパネル11とリヤパネル12との間にシール部を形成する。
【0027】
本実施形態では、フロントシール部15は、フロントモール部14の外周縁の全周にわたって矩形環状に設けられている。一方、リヤシール部18は、リヤモール部17の外周縁の一部である後部と両側部とにU字状に設けられている。即ち、フロントパネル11とリヤパネル12との間のシール部は、フロントシール部15の一部として形成されている。他の実施形態では、フロントパネル11とリヤパネル12との間のシール部がリヤシール部18の一部として形成されてもよい。
【0028】
フロントパネル11は、公知のスライド機構によって開方向に駆動されることにより、
図1に示される開口3の前部を閉じる閉位置から、
図2に示される後部を跳ね上げたチルトアップ位置を経由して、リヤパネル12の上側を後方へスライドし、
図3に示される、リヤパネル12の上側に重なって開口3の前部を開く開位置へ移動する。一方、フロントパネル11は、スライド機構によって閉方向へ駆動されると、
図3に示される開位置から、リヤパネル12の上側を前方へスライドし、
図2に示されるチルトアップ位置を経由して、
図1に示される閉位置へ移動する。このように、フロントパネル11は、
図1に示される閉位置と
図3に示される開位置との間をスライド可能とされており、サンルーフユニット10は開口3の前部を部分的に開閉することができる。
【0029】
図3に示されるように、ルーフ2の下方には、フロントパネル11やリヤパネル12を支持するフレーム20がルーフ2の開口3に整合するように取り付けられている。フレーム20は、開口3に沿う矩形環状とされており、開口3の側縁部に沿って前後方向に延在する左右のサイドフレーム21と、左右のサイドフレーム21の前端同士及び後端同士を連結するフロントフレーム22及びリヤフレーム23(
図4)とを有している。各サイドフレーム21には、前後方向に延在するガイドレール24が一体形成されている。
【0030】
リヤフレーム23の左右方向の中間部には、電気モータ及び減速機構を有する駆動源が取り付けられている。駆動源の出力端には、フロントパネル11を駆動するための左右のプッシュプルケーブル25(
図5)が係合している。プッシュプルケーブル25は、駆動源の出力端からリヤフレーム23を車外方向へ延び、左右のガイドパイプを通って前方へ湾曲した後、左右のガイドレール24内を前方へ延びている。
【0031】
図1及び
図2に示されるように、リヤパネル本体部16は、後側の左右の角部が丸められた略矩形を呈している。リヤモール部17は、リヤパネル本体部16の左右の外側縁に沿って前後方向に延びる左右のモール側部26と、左右のモール側部26の前端同士を連結するモール前部27と、左右のモール側部26の後端同士を、湾曲した左右のモール隅部28を介して連結するモール後部29とを有している。
【0032】
各モール側部26は、関連するモール隅部28の前端よりも小さい幅を有し、モール隅部28の前端の車内側に接続している(
図6も参照)。言い換えれば、各モール側部26には、前後方向に延び、関連するモール隅部28の前端からリヤモール部17の前縁に至る切欠30が形成されている。切欠30の前後方向に延びる車内側の縁部がリヤモール部17の側縁となる。
【0033】
リヤシール部18は、リヤモール部17の後縁に沿って設けられ、且つリヤモール部17のモール隅部28に沿って前方に湾曲する第1シール部材31と、リヤモール部17の各側縁に沿って延在する1対の第2シール部材32とを有している。
【0034】
第1シール部材31は左右1対の側端部31A(
図6)を有している。各側端部31Aは、リヤモール部17の関連するモール隅部28の前端、即ち、関連するリヤモール部17の切欠30の後端を覆うように設けられて前方を向いている。言い換えれば、各切欠30は、第1シール部材31の関連する側端部31Aからリヤモール部17の前縁に至るように形成されている。
【0035】
各第2シール部材32は、第1シール部材31の関連する側端部31Aに対して外縁同士及び内縁同士が整合するようにフレーム20側に設けられる。具体的には、各第2シール部材32は、左右のサイドフレーム21に取り付けられた左右の支持ブラケット33(
図5)のうち関連するものを介してフレーム20に取り付けられ、内側部分(後述する第2シール本体部37)のみが切欠30内で前後方向に延在するように配置されている。第2シール部材32及び支持ブラケット33の詳細な構成については後に説明する。
【0036】
図4は、
図1中のIV-IV断面図である。
図4に示されるように、第1シール部材31は、弾性材の押出成形品であり、一定の断面形状を有している。第1シール部材31は、車外側に凸となるD字形のシール本体部34と、シール本体部34の車内側に一体形成され、リヤモール部17の周縁に形成された取付溝17Aに嵌合する嵌合部35とを有している。第1シール部材31のシール本体部34は、ルーフ2の開口3の後縁部に弾発的に当接する。
【0037】
図5は、
図1中のV-V断面図であり、
図6は、
図1中のV-V線に沿って破断したルーフ2の要部斜視図である。
図4~
図6に示されるように、ルーフ2は、アウタパネル2Aとインナパネル2Bとによって構成されている。アウタパネル2Aは、開口3の周縁に沿って下方に垂下するアウタフランジ部4Aを有している。インナパネル2Bは、アウタパネル2Aを補強するべくビード形状とされており、適所でアウタパネル2Aに溶接される。インナパネル2Bは、アウタフランジ部4Aに沿って下方に垂下するインナフランジ部4Bを有しており、インナフランジ部4Bはアウタフランジ部4Aにスポット溶接により接合される。アウタフランジ部4A及びインナフランジ部4Bにより、開口3の周縁から下方に垂下するフランジ部4がルーフ2に形成されている。
【0038】
図5及び
図6に示されるように、各第2シール部材32は、車外側に凸となるD字形の第1シール本体部36と、連結部38を介して第1シール本体部36の上部に連結し、車内側に凸となる略D字形の第2シール本体部37とを有している。第1シール本体部36、第2シール本体部37及び連結部38は一体形成されている。第1シール本体部36は、第1シール部材31(
図4)のシール本体部34と略同じ断面形状を有している。第1シール本体部36の後端は、本実施形態では第1シール部材31の側端部31Aに弾発的に当接している。他の実施形態では、第1シール本体部36の後端が第1シール部材31の側端部31Aに溶着により結合されてもよい。第2シール本体部37は第1シール本体部36よりも大きな幅寸法を有し、第1シール本体部36よりも大きく弾性変形可能とされている。各第2シール部材32の連結部38には、第2シール部材32の下面に開放される支持溝39が形成されている。
【0039】
図7は、
図6に対応する破断したサンルーフユニット10の要部斜視図である。
図5及び
図7に示されるように、各サイドフレーム21は、アルミニウム合金の押出成形品であり、ガイドレール24を構成するべく関連するスライダ40(
図8)を左右両側から挟んで前後方向に摺動可能にガイドする1対のガイド壁41(41A、41B)を有する。1対のガイド壁41は、車外側に配置された外側ガイド壁41Aと、車内側に配置された内側ガイド壁41Bとにより構成される。内側ガイド壁41Bには、プッシュプルケーブル25を案内するケーブルガイド溝42が形成されている。1対のガイド壁41は、開口3の側縁部よりも車内側に配置されている。
【0040】
各サイドフレーム21の1対のガイド壁41の車外側には、上方へ延出するように立設された縦壁43が一体形成されている。各縦壁43は、開口3の側縁部よりも車外側に配置されており、外側ガイド壁41Aとの間に排水溝44が形成されている。従って、排水溝44は開口3の各側縁部の下方に形成されており、第2シール部材32とルーフ2(開口3の側縁部)との間から水が侵入しても、この水が関連する排水溝44により捕捉される。排水溝44に捕捉された水は、排水溝44により前方又は後方へ排水処理される。これにより、1対のガイド壁41の間のスライダ40が摺動する部分に水が溜まることが抑制される。
【0041】
各縦壁43の高さ方向の中間位置には、ルーフ2に取り付けられるべく車外側へ延出する取付延出部45が一体形成されている。各サイドフレーム21は、取付延出部45がルーフ2のインナパネル2Bに下方から締結されることにより、ルーフ2のフランジ部4が排水溝44に上方から突入する高さ位置でルーフ2に固定される。
【0042】
各サイドフレーム21の1対のガイド壁41の車内側には、リヤパネル12を支持するべく上方へ延出するように立設された支持壁46が一体形成されている。各支持壁46の下端には、サンシェード47(
図5)をガイドするシェードガイドレール48が一体形成されている。各支持壁46の高さ方向の中間位置から車内側に延出したサイドフレーム21の内縁には、サイドフレーム21とリヤパネル本体部16との隙間を塞いて目隠しするための遮蔽部材49が取り付けられている。遮蔽部材49は、弾性部材からなり、リヤパネル本体部16の下面(図示例では、当該下面に接着された樹脂製のモール50の下面)に弾発的に当接する。
【0043】
図5に示されるように、リヤパネル12は、リヤモール部17の四隅から垂下する鋼板製の支持柱51によりサイドフレーム21の支持壁46に高さ調整可能に固定されている。具体的には、支持柱51には車幅方向に貫通するボルト挿通孔が形成され、その車外側の側面におけるボルト挿通孔に対応する位置にナット53が溶接により固着されている。支持壁46には上下方向に延在する長孔54が形成されている。支持柱51は支持壁46の車外側に配置され、支持壁46の車内側から長孔54に挿入されるボルト55がナット53に螺合することにより、長孔54の長さの範囲で無段階に高さ調整可能に支持壁46に固定される。
【0044】
なお、遮蔽部材49は、サンルーフユニット10をルーフ2に搭載する際に、リヤパネル12がルーフ2に整合するようにリヤパネル12のフレーム20に対する高さを調整してボルト55を締結した後に、サイドフレーム21に装着される。そのため、遮蔽部材49がリヤパネル12の高さ調整の邪魔になることはない。
【0045】
上記のように各第2シール部材32は支持ブラケット33を介して関連するサイドフレーム21に取り付けられる。各支持ブラケット33は、鋼板をプレス成形してなるプレス成形品であり、上向きに開くU字状の断面形状をしており、第2シール部材32と概ね同じ前後方向長さを有している。支持ブラケット33は、上下方向に延在し、サイドフレーム21の縦壁43に取り付けられる外側縦壁56と、上下方向に延在し、リヤモール部17の側縁とリヤモール部17の側縁に対向するルーフ2の開口3の側縁部との間で第2シール部材32を支持する内側縦壁57と、左右方向に延在し、外側縦壁56の下端及び内側縦壁57の下端を連結する連結壁58とを有している。
【0046】
支持ブラケット33は、下部が排水溝44内に配置されるようにサイドフレーム21に取り付けられる。サンルーフユニット10は、支持ブラケット33がルーフ2のフランジ部4を受容するようにルーフ2に固定される。これにより、ルーフ2のフランジ部4や1対のガイド壁41に干渉することなく支持ブラケット33を配置することが可能になっている。また、フランジ部4の高さが大きい場合であっても、サンルーフユニット10の全体の厚みの増大が抑制されている。
【0047】
各第2シール部材32は、内側縦壁57が支持溝39に進入するように関連する支持ブラケット33に取り付けられ、接着剤により第1シール本体部36及び連結部38が内側縦壁57に接着されることで関連する支持ブラケット33に固定される。第2シール部材32の前端及び後端は端部材32A(
図9)によって塞がれており、支持ブラケット33の内側縦壁57は第2シール部材32よりも若干短くなっている。第2シール部材32が支持ブラケット33に取り付けられた状態で、第1シール本体部36はルーフ2の開口3の側縁に弾発的に当接し、第2シール本体部37は関連するリヤモール部17の側縁に弾発的に当接する。
【0048】
各第2シール部材32は、支持ブラケット33によりサイドフレーム21の縦壁43に高さ調整可能に固定されている。具体的には、支持ブラケット33の外側縦壁56には車幅方向に貫通するボルト挿通孔が形成され、その車内側の側面におけるボルト挿通孔に対応する位置にナット60が溶接により固着されている。縦壁43には上下方向に延在する長孔61が形成されている。外側縦壁56は縦壁43の車内側に配置され、縦壁43の車外側から長孔61に挿入されるボルト62がナット60に螺合することにより、長孔61の長さの範囲で無段階に高さ調整可能に縦壁43に固定される。
【0049】
このようにフレーム20の縦壁43に長孔61を形成する簡単な構成により、支持ブラケット33を無段階に高さ調整可能に縦壁43に取り付ける高さ調整機構が実現される。また、縦壁43の車内側に配置される支持ブラケット33が車内側の側面に固着されたナット60を備え、ナット60に螺合するボルト62(締結部材)によって縦壁43に締結されるため、ボルト62の締結作業を1対のガイド壁41に干渉することなく行うことができる。従って、開口3の側部に配置される第2シール部材32の高さ調整が容易である。
【0050】
長孔61の下端位置は、支持ブラケット33が最下位置にて縦壁43に取り付けられた状態、即ち、ボルト62が長孔61の下端に当接した状態で、連結壁58がフレーム20から上方へ離間するように設定されている。そのため、支持ブラケット33が最下位置にて縦壁43に取り付けられても、支持ブラケット33の下方に空間が形成され、この空間が排水溝44の排水路として機能する。従って、排水処理が支持ブラケット33によって阻害されることなく円滑に行われる。
【0051】
図8は、
図3中のVIII-VIII断面図であり、開状態にあるサンルーフユニット10の
図5に相当する断面図である。
図8に示されるように、フロントパネル11は、左右の側部から垂下する1対のステー63を有しており、ステー63を支持する1対のスライダ40を介してガイドレール24によりガイドされ、ステー63及びスライダ40を介してフレーム20にスライド可能に支持される。フロントパネル11が
図2に示されるチルトアップ位置から
図3に示される開位置へ移動する際には、フロントパネル11の後部をリフトアップした各ステー63が、サンルーフユニット10の同じ側の側部においてリヤモール部17の側縁と第2シール部材32の第2シール本体部37との間に進入する。即ち、第2シール部材32の第2シール本体部37は、リヤモール部17と協働してステー63のための走路64を形成する。
【0052】
図9は、支持ブラケット33及び第2シール部材32の斜視図である。
図9に示されるように、内側縦壁57には、車外側へ膨出し、上下方向に延在する複数の内側縦リブ65が形成されている。連結壁58には、上方へ膨出し、幅方向に延在する複数の横リブ66が形成されている。複数の横リブ66は複数の内側縦リブ65に連続するように形成されている。また連結壁58には、横リブ66間に複数の排水孔67が形成されている。このように、複数の横リブ66によって連結壁58の剛性低下が抑制されつつ、連結壁58に複数の排水孔67が形成されている。これにより、
図5に示されるように、開口3の側縁部から侵入した水は、U字断面形状の支持ブラケット33内をその全長にわたって流れることなく排水孔67から排出され、下方の排水溝44にて円滑に処理される。
【0053】
図9に示されるように、外側縦壁56には、前部及び後部に配置された2つの締結部68と、2つの締結部68の間にて車内側に膨出する膨出部69と、車内側に膨出し且つ上下方向に延在するように膨出部69に形成された複数の縦リブ70とが形成されている。従って、外側縦壁56は2つの締結部68のみにおいて、フレーム20の縦壁43に締結され、縦壁43に接触する。これにより、自動車1の振動時に、締結部68以外の部分が縦壁43との接触或いは摺動によって異音を発することが抑制される。また、膨出部69に複数の縦リブ70が形成されることにより、2つの締結部68にて縦壁43に締結される外側縦壁56の剛性低下が抑制される。
【0054】
サンルーフユニット10は以上のように構成されている。
図1に示されるように、第1シール部材31が開口3の後部においてリヤモール部17に取り付けられるため、第1シール部材31を支持するために開口3の後部にて縦壁43をフレーム20に形成する必要がない。従って、シール構造が簡素である。また
図5に併せて示されるように、第2シール部材32は、開口3の側部において支持ブラケット33を介してフレーム20に支持される。そのため、全てのシール部材が簡単な構成でサンルーフユニット10側に設けられる。
【0055】
第1シール部材31の高さ位置は高さ調整可能なリヤパネル12の高さによってリヤパネル12と共に調整可能であり、第2シール部材32の高さ位置は支持ブラケット33の高さによって無段階に調整可能である。従って、開口3の側部においてルーフ2に対して段差が無くなるように第2シール部材32の高さを調整することができる。
【0056】
図5を参照して説明したように、支持ブラケット33がルーフ2のフランジ部4を受容するように配置されることで、支持ブラケット33をフランジ部4やスライダ40に干渉することなく配置することが可能である。また、フランジ部4の高さが大きい場合であっても、サンルーフユニット10の全体の厚みの増大が抑制される。
【0057】
以上で具体的実施形態の説明を終えるが、本発明は上記実施形態に限定されることなく幅広く変形実施することができる。例えば、上記実施形態では、長孔61がフレーム20の縦壁43に形成されているが、長孔61が支持ブラケット33の外側縦壁56に形成されてもよい。また、支持ブラケット33を縦壁43に取り付ける締結部材はボルト62に限られず、リベットや楔等であってもよい。更に、リヤモール部17の側縁に第1シール部材31と同様のシール部材が取り付けられ、第2シール部材32の第2シール本体部37がこのシール部材に弾発的に当接し、このシール部材と協働してステー63のための走路64を形成してもよい。この他、各部材や部位の具体的構成や配置、数量、素材等は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲であれば適宜変更可能である。一方、上記実施形態に示した各構成要素は必ずしも全てが必須ではなく、適宜選択することができる。例えば、上記実施形態では、ガイドレール24やステー63、第2シール部材32等がサンルーフユニット10の左右に対称的に設けられたが、これらは左右の一方に設けられてもよい。
【符号の説明】
【0058】
1 自動車
2 ルーフ
3 開口
4 フランジ部
10 サンルーフユニット
11 フロントパネル
12 リヤパネル
16 リヤパネル本体部
17 リヤモール部
18 リヤシール部
20 フレーム
21 サイドフレーム
31 第1シール部材
32 第2シール部材
33 支持ブラケット
40 スライダ
41 ガイド壁
41A 外側ガイド壁
41B 内側ガイド壁
43 縦壁
44 排水溝
56 外側縦壁
57 内側縦壁
58 連結壁
60 ナット
61 長孔
62 ボルト(締結部材)
63 ステー
64 走路
66 横リブ
67 排水孔
68 締結部
69 膨出部
70 縦リブ