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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-02
(45)【発行日】2022-02-10
(54)【発明の名称】防音箱装置
(51)【国際特許分類】
   G10K 11/16 20060101AFI20220203BHJP
   A47G 5/00 20060101ALI20220203BHJP
【FI】
G10K11/16 140
A47G5/00 C
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020191106
(22)【出願日】2020-11-17
【審査請求日】2020-12-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000213231
【氏名又は名称】株式会社中部コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100155099
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 裕輔
(74)【代理人】
【識別番号】100147625
【弁理士】
【氏名又は名称】澤田 高志
(74)【代理人】
【識別番号】100190333
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 群司
(72)【発明者】
【氏名】近藤 充博
(72)【発明者】
【氏名】黒田 靖規
【審査官】辻 勇貴
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-020628(JP,A)
【文献】実開平04-060244(JP,U)
【文献】特開平10-219889(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0005974(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G10K 11/16
A47G 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
起立するまたは椅子に着席する作業者の周囲に設置される基台部と、
前記基台部に立設する支柱部と、
前記支柱部の上部に取り付けられて、内側に設けた吸音材により前記作業者の頭部を防音状態で覆う防音箱とを備え
前記防音箱は前記作業者の頭部の左側を覆う左半部と、前記作業者の頭部の右側を覆う右半部とから構成され、前記左半部と右半部とを合わせることによって前記作業者の頭部を開閉自在に覆うようにしたことを特徴とする防音箱装置。
【請求項2】
請求項に記載の防音箱装置において、
前記防音箱の左半部と右半部は前記作業者の頭部の後側で前記支柱部の上部に鉛直軸線回りに回動可能に軸支されたことを特徴とする防音箱装置。
【請求項3】
請求項に記載の防音箱装置において、
前記防音箱の左半部と右半部を前記支柱部の上部にて鉛直軸線回りに角度調節可能な状態で回動可能に軸支することで、前記防音箱を開度調節可能に開放可能としたことを特徴とする防音箱装置。
【請求項4】
請求項1~の何れか1項に記載の防音箱装置において、
前記防音箱は、内部に前記作業者の頭部を収容する収容空間が形成されるように上面及び水平方向の周面を覆う防音箱本体部と、前記防音箱本体部の底部にて前記作業者の頭部より少なくとも前側に配置される底部前側防音部と、前記防音箱本体部の前記底部前側防音部より後側に前記作業者の首部を通す首用開口部とを備えたことを特徴とする防音箱装置。
【請求項5】
請求項1~の何れか1項に記載の防音箱装置において、
前記防音箱の前面には前記作業者の視界を確保するための窓部を設けたことを特徴とする防音箱装置。
【請求項6】
請求項1~の何れか1項に記載の防音箱装置において、
前記支柱部の高さ、または、前記防音箱の前記支柱部に対する取り付け位置を変更可能とすることにより、前記防音箱の高さ位置を変更可能としたことを特徴とする防音箱装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業者の周囲の音や視界が遮られるようにして個室感を生み出すための防音箱装置に関する。
【背景技術】
【0002】
テレワークの普及によりオフィス等の職場や自宅でパソコン等の端末を使用したウェブ会議を行う機会が多くなっている。ウェブ会議をするときには、作業者の周囲の人の声や物音が気になって会議に集中することができないことや、作業者自らが発する声が周囲の作業者に影響を与えることがある。特許文献1には卓上防音スクリーンの発明が開示されている。この卓上防音スクリーンは、卓上にて作業者の前側に設置される支持パネルと、支持パネルの上部にて作業者側となる後方に延出するL字形金属棒よりなる2本の支持部材と、2本の支持部材の各々に固定されて作業者の両側を覆うように設置される防音パネルとを備えている。支持パネルと防音パネルはベニヤ板よりなる板部材の間に吸音部材を介装したものであり、支持パネルは作業者の前方の視界と音を遮り、防音パネルは作業者の側方の視界と音を遮るようにしている。
【0003】
特許文献2には卓上防音衝立の発明が開示されている。この卓上防音衝立は、防音構造を有するとともに卓上で使用可能な大きさを持つ3枚のパネルを備え、3枚のパネルは互いに折りたたみ自在にヒンジによって連結されている。この卓上防音衝立は、パネルを卓上で適度に広げることにより卓上にて立てた状態で設置することができる。また、卓上防音衝立の各パネルは合板と、合板に接着された遮音シートと、遮音シートに接着された吸音材と、吸音材に接着されたクロス材とから構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】実用新案登録第3220560号公報
【文献】特開平9-098867号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の卓上防音スクリーンや特許文献2の卓上防音衝立はデスク等の机の上に設置して使用するものであるため、作業者はデスク等の机で行う作業でしかこれらの卓上防音スクリーンや卓上防音衝立を用いることができなかった。また、特許文献1の卓上防音スクリーンは作業者の前側に支持パネルが設置され、作業者の両側に防音パネルが設置されているが、支持パネルの上側と左右両側、防音パネルの上下及び左右両側を遮っているわけでないので、周囲の作業者の声や音が作業者に伝わりやすくなっているだけでなく、作業者の声が他の作業者にも伝わりやすく、充分に遮音できていなかった。また、特許文献2の卓上防音衝立も卓上に設置した3枚のパネルを用いて周囲の音を遮るようにしているが、3枚のパネルの上側が開放されているだけでなく、作業者の直ぐ側方を覆っていないので、周囲の作業者の声や音がパネルの上側や側方から作業者に伝わりやすくなっているだけでなく、作業者の声がパネルの上側や側方から他の作業者にも伝わりやすく、充分に遮音できていなかった。本発明は、オフィス等の職場や自宅でも簡易な装置で、作業者の声や音が外側に漏れるのを防ぐとともに、作業者の周囲の音や視界が遮断されるようにして個室感を感じることができるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は上記課題を解決するため、起立するまたは椅子に着席する作業者の周囲に設置される基台部と、基台部に立設する支柱部と、支柱部の上部に取り付けられて、内側に設けた吸音材により作業者の頭部を防音状態で覆う防音箱とを備え、防音箱は作業者の頭部の左側を覆う左半部と、作業者の頭部の右側を覆う右半部とから構成され、左半部と右半部とを合わせることによって作業者の頭部を開閉自在に覆うようにしたことを特徴とする防音箱装置を提供するものである。
【0007】
上記のように構成した防音箱装置は、起立するまたは椅子に着席する作業者の周囲に設置される基台部と、基台部に立設する支柱部と、支柱部の上部に取り付けられて、内側に設けた吸音材により作業者の頭部を防音状態で覆う防音箱とを備えているので、基台部を作業者の周囲に設置して、作業者の頭部を防音箱により覆うようにすれば、デスク等の机の上側に限らずに作業者の周囲に防音環境が作られて個室感を感じることができる。また、作業者の頭部を防音箱によって防音状態で覆うことができるので、周囲の音が作業者に伝わりにくくなるだけでなく、作業者の声が周囲の作業者にも伝わりにくくなり、作業者及び周囲の作業者の作業環境を良好とすることができる。さらに、防音箱は作業者の頭部の左側を覆う左半部と、作業者の頭部の右側を覆う右半部とから構成され、左半部と右半部とを合わせることによって作業者の頭部を開閉自在に覆うようにしているので、防音箱の左半部と右半部を作業者の左右両側から頭部を覆うように移動させることで、防音箱により作業者の頭部を覆うようにすることができ、防音箱の左半部と右半部を作業者の両側に離間させることで防音箱を作業者の頭部から取り外すことができ、防音箱の着脱作業を容易とすることができる。
【0009】
上記のように構成した防音箱装置においては、防音箱の左半部と右半部は作業者の頭部の後側で支柱部の上部に鉛直軸線回りに回動可能に軸支されるのが好ましい。このようにしたときには、防音箱の左半部と右半部を作業者の頭部の後側から前方に回動させることで防音箱により作業者の頭部を覆うようにすることができ、防音箱の左半部と右半部を作業者の後方に回動させることで防音箱を作業者の頭部から取り外すことができ、防音箱の着脱作業を容易とすることができる。また、この防音箱装置においては、防音箱の左半部と右半部を支柱部の上部にて鉛直軸線回りに角度調節可能な状態で回動可能に軸支することで、防音箱を開度調節可能に開放可能とするのが好ましい。このようにしたときには、作業者の所望の開度で防音箱を開放することで、作業者の所望の防音環境を作り出すことができる。例えば、作業者の頭部の後側と左右両側とが覆われる開度にて防音箱の左半部と右半部を開放したときには、作業者は前方の十分な視界を確保したうえで左右両側及び後側からの音が遮られて一定の個室感を感じて作業することができ、作業者の頭部の後側だけが覆われる開度にて防音箱の左半部と右半部をさらに開放したときには、作業者は前方の十分な視界を確保したうえで後側からの音が遮られて作業することができ、防音箱により作業者の頭部を完全に覆うようにしていなくても、作業者は後側からの音が遮断されるようになる。
【0010】
上記のように構成した防音箱装置においては、防音箱は、内部に作業者の頭部を収容する収容空間が形成されるように上面及び水平方向の周面を覆う防音箱本体部と、防音箱本体部の底部にて作業者の頭部より少なくとも前側に配置される底部前側防音部と、防音箱本体部の底部前側防音部より後側に作業者の首部を通す首用開口部とを備えるのが好ましい。作業者が発する声は口部から上下を含めた前方に伝搬するが、作業者の頭部の前側の下方には底部前側防音部が設けられているので、作業者が発する声が防音箱の下側から漏れ出にくくなる。
【0011】
上記のように構成した防音箱装置においては、防音箱の前面には作業者の視界を確保するための窓部を設けるのが好ましい。このようにしたときには、作業者の頭部に防音箱を装着したときでも、作業者の前方の視界を確保することができるようになる。
【0012】
上記のように構成した防音箱装置においては、支柱部の高さ、または、防音箱の支柱部に対する取付位置を変更可能とすることにより、防音箱の高さ位置を変更可能とするのが好ましい。このようにしたときには、防音箱を作業者の頭部の高さに応じた高さに変更することができ、作業者の座高や身長だけでなく、起立した状態や椅子に着席状態等の使用状態の変化に対応して使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の防音箱装置の前方から見た斜視図である。
図2図1の後方から見た斜視図である。
図3図1の防音箱を略半分の開放状態としたときの前方から見た斜視図である。
図4図1の防音箱を図3よりもさらに開いたときの前方から見た斜視図である。
図5】防音箱装置の防音箱により作業者の頭部を覆うようにしたときの前方から見た斜視図である。
図6図5の左側面図である。
図7図5の状態から防音箱を略半分の開放状態としたときの前方から見た斜視図である。
図8】防音箱を図7の略半分の開放状態から全開放の開放状態としたときの前方から見た斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明の防音箱装置の一実施形態を図面を参照して説明する。図1図3に示したように、本発明の防音箱装置10は、基台部20と、基台部20に立設する支柱部30と、支柱部30の上部に設けられて作業者側に突出する腕部40と、腕部40に取り付けられて作業者の頭部を防音状態で覆う防音箱50とを備えている。
【0015】
図1図3に示したように、基台部20は作業者の後側にて左右に延びる中空の金属製の角パイプを用いた基礎部材21と、基礎部材21の左右両端から斜め前方と斜め後方に延びる脚部材22とを備えている。基礎部材21の左右方向の中央部には支柱部30が固定されており、支柱部30は基礎部材21の左右方向の中央から上方に立設している。基礎部材21の左右両側にて斜め前方及び斜め後方に延びる各脚部材22は基礎部材21に立設している支柱部30及び支柱部30の上部の防音箱50が前後左右に傾倒するのを防ぐ機能を有している。各脚部材22の先端部にはキャスター23が設けられており、基台部20はこれらのキャスター23によって容易に移動可能となっている。
【0016】
支柱部30は基台部20の基礎部材21の左右方向の中央部から上方に立設しており、この実施形態では、支柱部30は伸縮自在となるために、基台部20に立設するように固定された下側支柱部材31と、下側支柱部材31にて上下方向に移動可能に支持された上側支柱部材32とを備えている。下側支柱部材31と上側支柱部材32は中空の金属製の角パイプを用いたものである。上側支柱部材32の外径は下側支柱部材31の内径より小さくなっており、上側支柱部材32は下側支柱部材31の内部に挿通可能となっている。基台部20に起立した状態で固定された下側支柱部材31の内部には上側支柱部材32が上下に移動可能に挿通されており、支柱部30は上側支柱部材32を下側支柱部材31に対して上下に移動させることで高さ変更可能となっている。上側支柱部材32の後面下部には複数の雌ねじ孔が上下に互いに離間して設けられており、図2に示したように、上側支柱部材32の雌ねじ孔には下側支柱部材31の後面上部に形成した貫通孔から挿通されたねじ部材33が係合している。上側支柱部材32を所望の高さに調節した状態でねじ部材33を上側支柱部材32の雌ねじ部に締め付けることにより、上側支柱部材32は所望の高さに調節された状態で下側支柱部材31に支持される。
【0017】
図2に示したように、腕部40は支柱部30の上側支柱部材32の上部に固定されており、腕部40は作業者側となる前側に突出している。腕部40は板金部材を略矩形状の枠形に加工したものであり、腕部40の後部が上側支柱部材32に固定され、腕部40の前部には防音箱50が固定されている。
【0018】
図1図3に示したように、防音箱50は、内側に設けた防音材54により作業者の頭部を防音状態で覆うものであり、腕部40を介して支柱部30の上部に取り付けられている。図3に示したように、防音箱50は、内部に作業者の頭部を収容する収容空間が形成されるように上面及び水平方向の周面(前面、後面、左側面及び右側面)を覆う防音箱本体部50aと、防音箱本体部50aの底部前側に作業者の頭部の前側に配置される底部前側防音部50bと、防音箱本体部50aの底部前側防音部50bより後側に作業者の首部を通す首用開口部50cとを備えている。防音箱50内に作業者の頭部を収容した状態で、作業者の頭部は防音箱本体部50aによって上面と、水平方向の周面として前面、後面、左側面及び右側面が覆われているだけでなく、底部前側防音部50bによって頭部の前側の下方が覆われている。作業者が声を発したとしても、作業者の頭部は防音箱本体部50aによって上面と水平方向の周面が覆われているだけでなく、底部前側防音部50bによって前側の下方が覆われているので、発した声が防音箱50から漏れ出にくくなっている。
【0019】
また、防音箱50は、略直方体形状の箱本体51と、箱本体51の内周面に設けた吸音材54とを備えている。箱本体51は、作業者の頭部の左側を覆う左半部52と、作業者の頭部の右側を覆う右半部53とを備え、左半部52と右半部53とを合わせることによって作業者の頭部を覆う箱形状となる。防音箱50の内周面には吸音材54が設けられており、この実施形態では吸音材54は多孔質のスポンジ材として厚さ50mmのウレタンスポンジが用いられている。
【0020】
図2に示したように、箱本体51の左半部52と右半部53の後部は蝶番55により腕部40に鉛直軸線回りに回動可能に支持されており、左半部52の前部と右半部53の前部を前後に回動させることにより、箱本体51は作業者の頭部を開閉可能に覆うことができる。また、箱本体51の左半部52と右半部53は角度調節可能な状態で回動可能に支持されており、左半部52と右半部53の各々の角度を調節した状態で回動させることにより、箱本体51の開度を調節可能に開放させることができる。
【0021】
左半部52の前部及び右半部53の前部を前側に回動させると、左半部52と右半部53との互いの開口側が塞がれ、箱本体51は左半部52と右半部53とが合わさって閉塞状態となる(図1及び図2に示した)。これに対し、図3に示したように、左半部52の前部及び右半部53の前部を後側に回動させると、左半部52と右半部53との開口側が開放され、箱本体51は左半部52と右半部53が半分程度で開かれた開放状態となる。箱本体51の左半部52と右半部53とを半分程度で開かれた開放状態としたときに、左半部52と右半部53は作業者の頭部の左右両側と後側で壁状に配置されることになり、箱本体51は防音壁として機能するようになる。さらに、図4に示したように、左半部52と右半部53を最も開くようにした開放状態にあるときには、左半部52と右半部53は作業者の頭部の後側で壁状に配置されることになり、箱本体51は防音壁として機能するようになる。
【0022】
箱本体51の前面には作業者の視界を確保するための窓部56が設けられている。窓部56は箱本体51の前面に形成した開口部にアクリル板等の透明板を取り付けたものである。なお、窓部56には視界を確保するために吸音材54が設けられていない。
【0023】
この防音箱装置10を使用するときには、ねじ部材33を緩めてから、防音箱50が作業者の頭部と同じ高さ位置となるように上側支柱部材32の高さ位置を調節し、再びねじ部材33を締め付けることにより、上側支柱部材32を高さ調節した状態で下側支柱部材31に固定する。作業者は開放状態にある箱本体51の前側にて椅子に着席して(起立した状態であってもよい)、作業者の頭部の前側で箱本体51の左半部52と右半部53の前部を前方に回動させると、図5に示したように作業者の頭部は箱本体51に覆われるようになる。この状態では、作業者は周囲の音が防音箱50によって遮られるとともに、作業者が発する声が防音箱50によって周囲の作業者に伝わりにくくなるので、作業者は周囲から音が遮断された個室感を感じて作業をすることができる。特に、図6に示したように、防音箱50は底部の前側にて作業者の頭部の前側下方を覆う底部前側防音部50bを備えているので、作業者が発する声は防音箱50の下側から外側に漏れ出にくくなる。さらに、防音箱50の前面には作業者の視界を確保するための窓部56が設けられているので、作業者の頭部が防音箱50内に覆われているときでも、作業者は窓部56から外側の視界を確保することができる。
【0024】
図7に示したように、防音箱51の左半部52と右半部53の前部を後方に回動させて、左半部52と右半部53の各々を約45°の角度で開放させると、防音箱51は全開放(略180°で開放された)の略半分程度で開放された(略90°で開放された)開放状態となる。この状態では、作業者の頭部は左右両側と後側が略半分程度の開放状態の防音箱51により覆われ、作業者は後側と左右両側からの音が防音箱50によって遮られるとともに、作業者が発する声が略半分程度の開放状態の防音箱51によって後側と左右両側に伝わりにくくなる。また、閉塞状態の防音箱51を装着したときよりは劣るものの、作業者の頭部は前側以外の左右両側と後側が略半分程度の開放状態の防音箱51により覆われているので、一定の個室感を感じて作業をすることができる。
【0025】
また、作業者がこの防音箱装置10により個室感を感じて作業する必要がないときには、箱本体51の左半部52と右半部53の前部を図7よりもさらに後方に回動させると、図8に示したように箱本体51の左半部52と右半部53が作業者の頭部の後側に配置され、作業者の頭部は箱本体51に覆われないようになる。作業者は頭部が箱本体51に覆われないようになって個室感を感じなくなるものの、箱本体51の左半部52と右半部53が作業者の頭部の後側に配置されているので、作業者には後側からの音が伝わりにくくなっている。このように、箱本体51を開放状態としたときでも、箱本体51の左半部52と右半部53が作業者の頭部の後側で壁状に配置されるので、作業者には後側からの音が伝わりにくくすることができる。
【0026】
上記のように構成した防音箱装置10は、起立するまたは椅子に着席する作業者の周囲に設置される基台部20と、基台部20に立設する支柱部30と、支柱部30の上部に設けられて作業者側に突出する腕部40と、支柱部30の上部に腕部40を介して取り付けられて、内側に設けた吸音材54により作業者の頭部を防音状態で覆う防音箱50とを備えている。この防音箱装置10においては、基台部20を作業者の周囲に設置して、作業者の頭部を防音箱50により覆うようにすれば、デスク等の机の上側に限らずに作業者の周囲に防音環境が作られて個室感を感じることができる。また、作業者の頭部を防音箱50によって防音状態で覆うことができるので、周囲の音が作業者に伝わりにくくなるだけでなく、作業者の声が周囲の作業者にも伝わりにくくなり、作業者及び周囲の作業者の作業環境を良好とすることができる。
【0027】
また、防音箱50は作業者の頭部の左側を覆う左半部52と、作業者の頭部の右側を覆う右半部53とから構成され、左半部52と右半部53とを合わせることによって作業者の頭部を開閉自在に覆うようにしている。防音箱50の左半部52と右半部53を作業者の左右両側から頭部を覆うように移動させることで、防音箱50を作業者の頭部を覆うようにすることができ、防音箱50の左半部52と右半部53を作業者の両側に離間させることで、防音箱50を作業者の頭部から取り外すことができ、防音箱50の着脱作業を容易とすることができる。この実施形態では、防音箱50を左半部52と右半部53とから構成するようにしたが、これに限られるものでなく、防音箱50を左右で分割せずに一体としたものであってもよい。この場合には、作業者の頭部の後側で上下に延びるガイドバーを設け、防音箱50をガイドバーに上下に移動可能に支持するようにすることで、防音箱50を作業者の頭部に上側から装着することができる。
【0028】
この実施形態の防音箱装置10においては、防音箱50の左半部52と右半部53は作業者の頭部の後側で腕部40を介して支柱部30の上部に鉛直軸線回りに回動可能に軸支されている。防音箱50の左半部52と右半部53を作業者の頭部の後側から前方に回動させることで、防音箱50により作業者の頭部を覆うようにすることができ、防音箱50の左半部52と右半部53を作業者の後方に回動させることで、防音箱50を作業者の頭部から取り外すことができ、防音箱50の着脱作業を容易とすることができる。
【0029】
この実施形態の防音箱装置10においては、防音箱51の左半部52と右半部53を支柱部30の上部にて鉛直軸線回りに角度調節可能な状態で回動可能に軸支することで、防音箱51を開度調節可能に開放可能としている。このようにしたことで、作業者の所望の開度で防音箱51を開放することで、作業者の所望の防音環境を作り出すことができる。例えば、図7に示したように、作業者の頭部の後側と左右両側とが覆われる開度として防音箱51の左半部52と右半部53を略90°(略30°~150°であってもよい)で開放したときには、作業者は前方の十分な視界を確保したうえで左右両側及び後側からの音と視界が遮られて一定の個室感を感じて作業することができる。また、図8に示したように、作業者の頭部の後側だけが覆われる開度にて防音箱51の左半部52と右半部53をさらに略180°(略150°~180°であってもよい)で開放したときには、作業者は前方の十分な視界を確保したうえで後側からの音が遮られて作業することができ、防音箱51により作業者の頭部を完全に覆うようにしていなくても、作業者は後側からの音と視界が遮断されるようになる。なお、この実施形態では、防音箱50の左半部52と右半部53の後部を作業者の頭部の後側で腕部40を介して支柱部30の上部に鉛直軸線回りに回動可能に軸支したが、これに限られるものでなく、支柱部30の上部または腕部40に左右方向に延びるガイドバーを設け、防音箱50の左半部52と右半部53を作業者の頭部の後側でガイドバーに沿って左右方向に移動可能に支持するようにしたものであってもよい。
【0030】
この実施形態の防音箱装置10においては、防音箱50は、内部に作業者の頭部を収容する収容空間が形成されるように上面及び水平方向の周面を覆う防音箱本体部50aと、防音箱本体部50aの底部にて作業者の頭部より前側に配置される底部前側防音部50bと、防音箱本体部50aの底部前側防音部50bより後側に作業者の首部を通す首用開口部50cとを備えている。作業者が発する声は口部から上下を含めた前方に伝搬するが、作業者の頭部の下側前方には底部前側防音部50bが設けられているので、作業者が発する声が防音箱50の下側から漏れ出にくくなる。底部前側防音部50bは作業者の頭部の前側に配置されるものであるが、頭部の顎部より下側から前側に配置されるものであればよい。
【0031】
この実施形態の防音箱装置10においては、防音箱50の前面には作業者の視界を確保するための窓部56が設けられている。このようにしたことで、作業者の頭部に防音箱50を装着したときでも、作業者の前方の視界を確保することができるようになる。
【0032】
この実施形態の防音箱装置10においては、支柱部30の高さを変更可能とすることにより、防音箱50の高さ位置を変更可能としている。すなわち、支柱部30は上側支柱部材32が下側支柱部材31に上下に移動可能に支持されているので、上側支柱部材32の上部に腕部40を介して取り付けられた防音箱50は上側支柱部材32の下側支柱部材31に対する支持位置を変えることによって高さ位置が変更可能となっている。これによって、防音箱50を作業者の頭部の高さに応じた高さに変更することができ、作業者の座高や身長だけでなく、起立した状態や椅子に着席状態等の使用状態の変化に対応して使用することができる。なお、この実施形態では、支柱部30の高さを変更可能とすることで、、防音箱50の高さ位置を変更可能としているが、これに限られるものでなく、腕部40の支柱部30に対する取付位置を変更可能とすることで、防音箱50の高さ位置を変更可能としたものであってもよい。
【0033】
この実施形態では、防音箱50を腕部40を介して支柱部30に取り付けるようにしているが、これに限られるものでなく、支柱部30の上部を作業者側となる前側に屈曲させて防音箱50を支柱部30の上部に直接取り付けるようにしてもよいし、防音箱50の後部を後側に延出させて防音箱50を支柱部30の上部に直接取り付けるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0034】
10…防音箱装置、20…基台部、30…支柱部、40…腕部、50…防音箱、50a…防音箱本体部、50b…底部前側防音部、50c…首用開口部、52…左半部、53…右半部、54…吸音材、56…窓部。
【要約】
【課題】オフィス等の職場や自宅でも簡易な装置で作業者の周囲の音や視野が遮断されるようにして個室感を感じることができるようにする。
【解決手段】防音箱装置10は、起立するまたは椅子に着席する作業者の周囲に設置される基台部20と、基台部20に立設する支柱部30と、支柱部30の上部に設けられて作業者側に突出する腕部40と、腕部40を介して支柱部30の上部に取り付けられて、内側に設けた吸音材54により作業者の頭部を防音状態で覆う防音箱50とを備えた。
【選択図】図2
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図8