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  • 特許-気密封止構造 図1
  • 特許-気密封止構造 図2
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  • 特許-気密封止構造 図5
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-02
(45)【発行日】2022-02-10
(54)【発明の名称】気密封止構造
(51)【国際特許分類】
   H05K 7/00 20060101AFI20220203BHJP
   H01R 13/52 20060101ALI20220203BHJP
【FI】
H05K7/00 M
H01R13/52 301E
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2019161594
(22)【出願日】2019-08-19
(65)【公開番号】P2020036014
(43)【公開日】2020-03-05
【審査請求日】2020-08-21
(31)【優先権主張番号】P 2018168318
(32)【優先日】2018-08-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】508061941
【氏名又は名称】株式会社アイテクノ
(72)【発明者】
【氏名】笠原 尚英
【審査官】小林 大介
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-223067(JP,A)
【文献】国際公開第2017/035050(WO,A1)
【文献】特開2017-136331(JP,A)
【文献】特開2000-037018(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 7/00
H01R 13/52
A61F 2/02- 2/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
気密性が保持される電子部品を収納したケースに挿通孔を形成し、前記ケースにケーブルを封止状態で挿通する気密封止構造であって、
前記ケースは、柔軟性を有する合成樹脂により形成され、外側から内側に向けて内径を小さく形成したテーパー状のケーブル挿通孔が形成され、前記ケーブル挿通孔には、略円錐台状に形成された圧入ピンが圧入状態で嵌められ、前記圧入ピンは、剛性を有する半田付け可能な金属により形成され、軸方向中心には、リード線を挿通するリード線挿入孔と電極ケーブルを挿通するケーブル挿入孔が形成され、前記リード線挿入孔にはリード線を挿通してリード線挿入孔の開口を半田付けにより封止し、前記ケーブル挿入孔には、前記電極ケーブルを挿通してケーブル挿入孔の開口を半田付けにより封止し、
前記ケースの前記ケーブル挿通孔に前記圧入ピンを圧入したとき、塑性変形により前記ケーブル挿通孔を拡径して密接させて気密封止したことを特徴とする気密封止構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケースにケーブルを封止状態で挿通する気密封止構造に関する。
【背景技術】
【0002】
液体あるいは気体の気密には、ゴム製の0リングか、あるいは酢酸ビニルなどの樹脂成形によって、気密保持剤を選択し、それに電気的信号を機密保持構造内部に送り込むための加圧や充填加工方法が選択される。電気信号を扱う場合には、材質や加工方法の選択が必要とされている。
【0003】
実用例として、例えば、薬の効果を確認するために、動物実験において心電図記録が行われている。一般に、対象の動物には心電図記録用の装置を背負わせ、心電図電極等は動物に記録装置などと一緒に動物が破損できないようにチョッキなどに内蔵させて記録を行う。
【0004】
ところが、最初の実験を行う動物としては、ラットやマウスを用いているが、心電図記録の心電図電極、コード、心電図記録計などはかみ切るなどして破損されてしまう。そこで現在は主に手術により体内皮下に埋込まれた心電図送信機で、心臓のまわりに心電図電極ケーブルを配置し、その先端での検出が行なわれている。
【0005】
心電図検出には、心臓を横切るように電極を配置し、心電図検出をしなければならない。手術により心電図送信機を皮下に埋込、シリコンチューブでカバーした電極ケーブルが心臓を横切るように、首部近くと尾の近くに埋込み、心電図を検出する。心電図を検出するため、心電図送信機からの心電図電極ケーブルを出すが、これには直径0.5mm程度のコイル状のバネケーブルが使用されている。これは、柔軟性を保つようにするためである。
【0006】
現在、心電図送信機は、図1のような基本的形状をしており、送信機本体1において、心電図ケーブルは送信機のケーブル口2の部分よりシリコンチューブ3にて覆われ、心電図電極ケーブル4が出ている。心電図電極は心臓を横切る方向等に一本ずつ埋込、使用者の目的の位置に固定される。
【0007】
ところが、このケーブル口2の部分から体液が心電図送信機内に浸入し、電子回路を破損してしまうことから、従来から各種の体液の浸入防止対策が行われている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
動物の体液は、多種多様な成分が含まれており、心電図送信機のケースにはプラスチック成形樹脂が使われ、内部電気回路を保護している。
【0009】
現在は、ケーブルの出口を樹脂や接着材などで固定し、体液の浸入による電気回路の破損対策を行っているが、十分な厚さが必要なことから、体液対策のために心電図送信機自体に大きな防護部を備えることになり、結果的に送信機が大型化してしまう。この結果、ラットやマウスなどの小動物には埋め込むことが困難になり、適正な心電図を記録できない問題が生じている。
【0010】
本発明の課題は、簡単確実な方式で、動物の体液の侵入を防止でき、かつ侵入防止構造が体積的に小さく確実に侵入防止ができる気密保持構造を提供することである。
【課題を解決する手段】
【0011】
本発明による気密保持構造は、気密性が保持される電子部品を収納したケースに挿通孔を形成し、前記ケースにケーブルを封止状態で挿通する気密封止構造であって、前記ケースは、柔軟性を有する合成樹脂により形成され、外側から内側に向けて内径を小さく形成したテーパー状のケーブル挿通孔が形成され、前記ケーブル挿通孔には、略円錐台状に形成された圧入ピンが圧入状態で嵌められ、前記圧入ピンは、剛性を有する半田付け可能な金属により形成され、軸方向中心には、リード線を挿通するリード線挿入孔と電極ケーブルを挿通するケーブル挿入孔が形成され、前記リード線挿入孔にはリード線を挿通してリード線挿入孔の開口を半田付けにより封止し、前記ケーブル挿入孔には、前記電極ケーブルを挿通してケーブル挿入孔の開口を半田付けにより封止し、前記ケースの前記ケーブル挿通孔に前記圧入ピンを圧入したとき、塑性変形により前記ケーブル挿通孔を拡径して密接させて気密封止しことを要旨としている。
【発明の効果】
【0014】
本発明による気密保持構造によれば、気密性が保持される電子部品を収納したケースに外側から内側に向けて内径を小さく形成したテーパー状の挿通孔を形成し、この挿通孔にケーブルを挿通する貫通孔を形成した圧入ピンを圧入するので、圧入ピンとケースのテーパー状の挿通孔との間が密着されることにより気密封止することができる。この結果、体液がケース内に侵入することが防止できる。また、圧入ピンをケーブルの貫通孔に圧入する簡易な構成により気密封止することができることから、封止部を小さくすることが可能となり、小型化ができる。
【0015】
また、ケースとして柔軟性を有する合成樹脂により形成し、圧入ピンを剛性を有する金属により形成しているので、ケースの挿通孔に圧入ピンを圧入したとき、塑性変形により挿通孔が拡径するので、ケースと圧入ピンが密接することにより一層気密封止することができる。
【0016】
さらに、圧入ピンの貫通孔に挿通されたリード線及びケーブルを半田等の封止手段により封止するので、ケースと圧入ピンの間に加え、リード線及びケーブルと圧入ピンの間も封止されることから、さらに気密封止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】(A)は心電図送信機を示す平面図 (B)は心電図送信機の側面図である。
図2】挿通孔を形成したケースを示す要部断面図である。
図3】圧入ピン、ケーブルとリード線の関係を示す構成図である。
図4】圧入ピンにケーブルとリード線を組み立てた状態を示す断面図である。
図5】ケースに圧入ピン、ケーブルとリード線を組み立てた状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明による気密保持構造は、気密性が保持される電子部品を収納したケースに挿通孔を形成し、前記ケースにケーブルを封止状態で挿通する気密封止構造であって、前記ケースには外側から内側に向けて内径を小さく形成したテーパー状の挿通孔と、先端側を前記挿通孔の内側の内径よりも微小寸法大きい外径とし、前記ケーブルを挿通するように軸方向に貫通孔を形成した圧入ピンと、前記圧入ピンの貫通孔と前記ケーブルを封止する封止手段とを有し、前記挿通孔に前記圧入ピンを圧入することにより気密封止している。
【0019】
以下、本発明による気密保持構造について詳細に説明する。図1は、気密保持構造を使用した心電図送信機を示している。心電図送信機のケース1には、ラットやマウスなどの動物から計測した心電図の信号を外部に送信するための電子回路が内蔵されている。このケース1は、水や、生体の体液などの液体中で、内蔵された電子回路をに周囲の液体の進入を防ぐために気密性を保持するようにABS樹脂などで覆われた収納ケース1が用いられる。また、内部の電子回路には、電源や信号などの電気信号を送り込むための電線が必要となる。このため、ケース1には、図2に示すように、テーパーのついた電線が挿通されるケーブル挿入口6が設けられる。
【0020】
ケース1に設けたケーブル挿入口6には、圧入ピン11が圧入される。ケース1は、圧入ピン11が圧入されたときに、若干拡張する必要であることから、例えば、ABS樹脂等のような柔軟性を有する樹脂を使用することが望ましい。そして、ケーブル挿入口6は、図示右方のケース1の外方側は内径が大きく、内方側の内径を小さく形成され、内方側にはリード線9が挿通可能なリード線挿通孔8が形成された仕切り部が形成されている。
【0021】
ケーブル挿入口6に圧入される圧入ピン11は、半田付け可能な例えば真鍮等の金属材によって略円錐台状に形成され、外径は、テーパーのついたケーブル挿入口6に圧入状態で嵌まるように形成されている。さらに、軸方向中心には、左方側にリード線9を挿通するリード線挿入孔10が形成され、右方側にはケーブル挿入孔12が形成されている。
【0022】
ケーブル挿入孔12に挿入される電極ケーブル4は、ステンレスのコイルでできた電線で、中央部はコイルの空洞になっていて、自在に屈曲可能に形成されている。そして、電極ケーブル4は、図4に示すように、圧入ピン11に挿入され、圧入ピン11の開口と電極ケーブル4の外周とを半田付けした半田付け部13を形成して封止される。
【0023】
一方、圧入ピン11の左方側のリード線挿入孔10にはリード線9が挿入され、リード線9の先端は電極ケーブル4の空洞内に挿入されている、そして、リード線9とリード線挿入孔10の開口は、半田付けされた半田付け部13が形成され、開口が封止される。なお、リード線9の先端は、電極ケーブル4の空洞内に挿入された状態で半田付けされる。
【0024】
このように、圧入ピン11にリード線9と電極ケーブル4を挿入して半田付けにより封止した後、図5に示すように、圧入ピン11を圧入方向16に示す方向からケース1のケーブル挿入口6に圧入する。圧入ピン11外面は、圧入によってケーブル挿入口6の内面と密接状態となり、ケース1は内部と外部が遮断された封止状態となる。なお、コイル状の電極ケーブル4には、絶縁チューブ3が被せられ、この絶縁チューブ3の先端はケース1のケーブル挿入口6に挿入している。なお、絶縁チューブ3とケーブル挿入口6との間の接着剤塗布部17に接着剤を注入し、絶縁チューブ3を固定している。このように構成した結果、電子部品を収納したケース1内には、ラットやマウスなどの動物の水や、生体の体液などの液体の進入が阻止され、機密性が保持される。この結果、心電図送信機から正確は心電図信号は送信され、正確なデータを得ることが可能になる。
【符号の説明】
【0025】
1 ケース
3 絶縁チューブ
4 電極ケーブル
5 送信機側面
6 ケーブル挿入孔
7 ケーブル挿入口
8 リード線挿入孔
9 リード線
10 リード線挿入孔
11 圧入ピン
12 ケーブル挿入孔
13 半田付け部
14 圧入ピンと送信機ケースの加圧による体液の侵入防止部
16 圧入ピン加圧方向
17 心電図電極絶縁チューブの接着材塗布部
図1
図2
図3
図4
図5