(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-02
(45)【発行日】2022-02-10
(54)【発明の名称】樹脂フィルム用の切削バイトを用いた切削方法
(51)【国際特許分類】
B23B 27/00 20060101AFI20220203BHJP
B23B 5/00 20060101ALI20220203BHJP
B23Q 11/00 20060101ALI20220203BHJP
【FI】
B23B27/00 B
B23B5/00 Z
B23Q11/00 M
(21)【出願番号】P 2017093106
(22)【出願日】2017-05-09
【審査請求日】2020-02-14
(73)【特許権者】
【識別番号】516084088
【氏名又は名称】株式会社城山
(74)【代理人】
【識別番号】110000648
【氏名又は名称】特許業務法人あいち国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】柴田 隆
(72)【発明者】
【氏名】松下 強
【審査官】中川 康文
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第04515193(US,A)
【文献】特開2003-266214(JP,A)
【文献】特開2001-162581(JP,A)
【文献】実開昭59-012504(JP,U)
【文献】実開昭57-177602(JP,U)
【文献】特開昭62-088542(JP,A)
【文献】特開昭64-071644(JP,A)
【文献】特開2002-126903(JP,A)
【文献】特開2006-075962(JP,A)
【文献】特開2008-194777(JP,A)
【文献】特開2010-120156(JP,A)
【文献】特開2010-276888(JP,A)
【文献】特開2013-035103(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23B 1/00-25/06
B23B 27/00-29/34
B23D 1/00-13/06
B23D 37/00-43/08
B23D 67/00-81/00
B23Q 11/00-13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方向に長い形状に形成されて刃物台に取り付けられる本体部と、前記本体部から突出して、
中心軸線の周りに巻かれた樹脂フィルムのロール体の端面に対向して配置される筒形状又は屈曲板形状の刃先部と、前記筒形状又は屈曲板形状の刃先部の内側に形成され、前記ロール体の端面が切削されるときに生じる前記樹脂フィルムの切屑を通過させる穴状又は溝状の切屑ガイド部と、を備える、樹脂フィルム用の切削バイトを用い、
前記ロール体における、前記樹脂フィルムの不揃いな端面を切削して、前記樹脂フィルムの端面を揃える切削方法であって、
前記刃先部は、前記本体部の前記一方向に対して直交又は傾斜する方向に、前記切屑ガイド部が伸びる状態で形成されており、
回転可能なシャフトに支持された前記ロール体を、前記中心軸線を中心に回転させるとともに、前記切屑ガイド部の中心軸線が前記ロール体の端面における接線方向又は前記接線方向に対して傾斜する方向に配置された状態で、前記ロール体の前記不揃いな端面に前記切削バイトの前記刃先部を接触させて、前記不揃いな端面を前記刃先部によって切削し、
かつ、前記切屑ガイド部に対向する位置から前記切屑ガイド部の内側へエアを吹き付けることによって、前記不揃いな端面が切削されるときに生じる前記樹脂フィルムの切屑が、前記切削バイトと前記ロール体の端面とが擦れ合うときに生じる摩擦による静電気によって前記シャフトへ引き寄せられないように、前記樹脂フィルムの切屑を前記切屑ガイド部の内側を前記接線方向又は前記接線方向に対して傾斜する方向に通過させて排出する、樹脂フィルム用の切削バイトを用いた切削方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂フィルムのロール体の端面を切削する切削バイトを用いた切削方法に関する。
【背景技術】
【0002】
表面保護フィルムとして用いられる樹脂フィルムは、種々の製品としての金属板、機械部品、ハウジング等の表面を覆って、種々の製品に傷が入ることを防止するために用いられる。樹脂フィルムは、円筒状に巻かれたロール体(原反とも呼ばれる。)として管理される。このロール体は、その中心軸線に対して直交する方向に、切断刃によって適宜切断され、必要とされる長さに小分けされる。
【0003】
樹脂フィルムのロール体が切断刃によって切断されるときには、切断刃とロール体の切断面とが擦れ合う。そのため、ロール体の切断面が加熱され、ロール体における樹脂フィルム同士が溶着されたりして、切断後のロール体の端面は、樹脂フィルムの端面の位置が揃っていない不揃いな端面となる。そこで、ロール体をその中心軸線の回りに回転させるとともに、このロール体の不揃いな端面に、旋盤等に使用される切削バイトの刃先を接触させて、切削バイトによって不揃いな端面を切削して揃えることが行われている。
【0004】
また、樹脂フィルムのロール体の端面を切削するものではないが、例えば、特許文献1には、金属材料の被工作物を切削する際に用いる丸バイトについて記載されている。この丸バイトは、円柱形状の工具本体の外周面に、螺旋状の切屑誘導溝を有しており、切削の際に生じる切屑を連続した状態で切屑誘導溝に沿って排出するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、樹脂フィルムのロール体の不揃いな端面を、旋盤等に用いられる切削バイトによって切削する際には、次の問題が生じている。具体的には、ロール体の切削によって発生する切屑が、摩擦によって生じた静電気等によってロール体の回転を支持するシャフトに吸い寄せられ、このシャフトに巻き付いてしまうといった問題が生じている。そのため、作業者が、エアによってシャフトに巻き付いた切屑を吹き飛ばす作業、あるいは手作業によってこの切屑を除去するといった作業が必要になっている。特に、手作業によって切屑を除去する場合には、回転するロール体の周辺において切屑を引っ張り出す必要があり、作業の安全上好ましくない。
【0007】
なお、特許文献1の丸バイト等によって切削する金属材料の被工作物においては、切屑に静電気等が帯電しにくく、樹脂フィルムのロール体の端面を切削する際に生じる問題は生じない。
【0008】
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたもので、切屑の排出を円滑にし、樹脂フィルムのロール体の端面を切削する作業の安全性を高めることができる樹脂フィルム用の切削バイトを用いた切削方法を提供しようとして得られたものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様は、一方向に長い形状に形成されて刃物台に取り付けられる本体部と、前記本体部から突出して、中心軸線の周りに巻かれた樹脂フィルムのロール体の端面に対向して配置される筒形状又は屈曲板形状の刃先部と、前記筒形状又は屈曲板形状の刃先部の内側に形成され、前記ロール体の端面が切削されるときに生じる前記樹脂フィルムの切屑を通過させる穴状又は溝状の切屑ガイド部と、を備える、樹脂フィルム用の切削バイトを用い、
前記ロール体における、前記樹脂フィルムの不揃いな端面を切削して、前記樹脂フィルムの端面を揃える切削方法であって、
前記刃先部は、前記本体部の前記一方向に対して直交又は傾斜する方向に、前記切屑ガイド部が伸びる状態で形成されており、
回転可能なシャフトに支持された前記ロール体を、前記中心軸線を中心に回転させるとともに、前記切屑ガイド部の中心軸線が前記ロール体の端面における接線方向又は前記接線方向に対して傾斜する方向に配置された状態で、前記ロール体の前記不揃いな端面に前記切削バイトの前記刃先部を接触させて、前記不揃いな端面を前記刃先部によって切削し、
かつ、前記切屑ガイド部に対向する位置から前記切屑ガイド部の内側へエアを吹き付けることによって、前記不揃いな端面が切削されるときに生じる前記樹脂フィルムの切屑が、前記切削バイトと前記ロール体の端面とが擦れ合うときに生じる摩擦による静電気によって前記シャフトへ引き寄せられないように、前記樹脂フィルムの切屑を前記切屑ガイド部の内側を前記接線方向又は前記接線方向に対して傾斜する方向に通過させて排出する、樹脂フィルム用の切削バイトを用いた切削方法にある。
【発明の効果】
【0011】
(一態様)
前記一態様の樹脂フィルム用の切削バイトを用いた切削方法において、切削バイトは、樹脂フィルムのロール体の端面を切削する際に生じる切屑を排出するために適した形状を有する。
具体的には、切削バイトは、筒形状又は屈曲板形状の刃先部と、刃先部の内側に形成された穴状又は溝状の切屑ガイド部とを有する。そして、回転するロール体の端面を切削バイトによって切削する際には、ロール体の端面に対向して配置した刃先部を、ロール体の端面に接触させる。このとき、刃先部によって切削されて、ロール体の端面から生じる樹脂フィルムの切屑は、穴状又は溝状の切屑ガイド部へと導かれ、この切屑ガイド部を通過する。
【0012】
これにより、切屑が、切削バイトとロール体の端面とが擦れ合うときに生じる摩擦による静電気によって、ロール体の回転を支持するシャフトへ引き寄せられることを阻止し、切屑がシャフトに巻き付かないようにすることができる。そのため、切屑の排出を円滑にすることができ、特に、作業者の手作業による切屑の除去作業を廃止することが可能になる。
【0015】
それ故、前記一態様の樹脂フィルム用の切削バイトを用いた切削方法によれば、切屑の排出を円滑にし、樹脂フィルムのロール体の端面を切削する作業の安全性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】実施形態1にかかる、切削バイトを示す説明図。
【
図2】実施形態1にかかる、切削バイトが取り付けられた切削加工装置を、側方から見た状態で示す説明図。
【
図3】実施形態1にかかる、切削バイトが取り付けられた切削加工装置を、前方から見た状態で示す説明図。
【
図4】実施形態2にかかる、切削バイトを示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
前述した樹脂フィルム用の切削バイト及びこれを用いた切削方法にかかる好ましい実施形態について、図面を参照して説明する。
<実施形態1>
本形態の切削バイト1は、
図1~
図3に示すように、中心軸線C1の周りに巻かれた樹脂フィルム3のロール体31の端面32を、ロール体31が中心軸線C1を中心に回転するときに切削するものである。切削バイト1は、本体部11、刃先部12及び切屑ガイド部13を有する。本体部11は、刃物台23に取り付けられる部分である。刃先部12は、筒形状を有するとともに本体部11から突出して形成されており、ロール体31の端面32に対向して配置される部分である。切屑ガイド部13は、筒形状の刃先部12の内側に穴状に形成されており、ロール体31の端面32が切削されるときに生じる樹脂フィルム3の切屑34を通過させる部分である。
【0018】
以下に、本形態の樹脂フィルム3用の切削バイト1及びこれを用いた切削方法について詳説する。
(樹脂フィルム3)
図2及び
図3に示すように、樹脂フィルム3のロール体31は、フィルム原反とも呼ばれ、木材原料等から作られた円筒状の中芯33の周りに樹脂フィルム3を円筒状に巻くことによって形成されている。樹脂フィルム3は、必要とされる大きさに適宜切断され、種々の製品としての金属板、機械部品、ハウジング等の表面に張り付けられて、この表面を保護する表面保護フィルム(表面保護シートとも呼ばれる。)として用いられる。樹脂フィルム3は、透明、半透明又は不透明である種々の樹脂から形成される。
【0019】
樹脂フィルム3のロール体31は、例えば、その中心軸線C1の方向に1~2mの横幅を有する長尺状に製造され、切断刃によって必要とする長さに切断される。ここでいうロール体31の横幅とは、樹脂フィルム3が展開されたときには横幅となる寸法のことである。また、樹脂フィルム3が展開されたときの長さは、例えば、50~3000mとなる。また、樹脂フィルム3の厚みは、例えば、30~200μmとすることができる。
切削バイト1及び切削方法は、切断刃によって必要とする長さに切断された後の樹脂フィルム3のロール体31の端面32を加工するものである。
【0020】
(切削加工装置2)
図2及び
図3に示すように、切削バイト1は、切削加工装置2、言い換えれば特殊な旋盤装置に装着して使用される。切削加工装置2は、シャフト21、回転機構22及び刃物台23を有する。シャフト21は、樹脂フィルム3のロール体31の中芯33内に挿入して、このロール体31を回転可能に支持するものである。回転機構22は、シャフト21に支持されたロール体31の端部を把持して、このロール体31を回転させるものである。刃物台23は、シャフト21に対して対向する位置に配置されており、シャフト21に対して相対的に接近及び離隔が可能である。切削バイト1は、シャフト21の中心軸線C1に対して垂直になる状態で、刃物台23における装着部231に装着される。
【0021】
シャフト21は、回転機構22が配置されたシャフト台(図示略)に、水平方向に取り付けられている。回転機構22は、ロール体31を把持するチャック部221を有し、モータによって駆動されて、シャフト21に対してロール体31を回転させるものである。刃物台23とシャフト台とは、シャフト21の径方向Rに相対的に接近及び離隔が可能である。刃物台23の相対的な移動によって、シャフト21に支持されたロール体31の端面32の径方向Rに、所定の速度で切削バイト1の刃先部12を送ることができる。刃物台23とシャフト台とは、いずれが移動してもよい。また、刃物台23の周辺には、装着部231に装着された切削バイト1の切屑ガイド部13へエアAを吹き付けるためのエア吹出機構24が配置されている。エア吹出機構24には、切削バイト1の切屑ガイド部13へエアAを吹き付けて、切屑ガイド部13を通過するエアAの流れを形成するためのエア吹出口241が形成されている。
【0022】
(切削バイト1)
図1及び
図2に示すように、本形態の切削バイト1は、樹脂フィルム3のロール体31の端面32を切削するために特化したものである。切削バイト1の本体部11は、刃物台23に取り付けやすいように、矩形状の断面を有し、一方向Dに長い形状に形成されている。本形態の切削バイト1の刃先部12は、円筒形状に形成されており、刃先部12の外周面の一部が本体部11に接合されている。言い換えれば、刃先部12は、板形状体が円筒状に加工され、板形状体の両端が本体部11に接合された形状を有する。
【0023】
円筒形状の刃先部12は、本体部11の一方向Dに対して直交又は傾斜する方向に、穴状の切屑ガイド部13が伸びる状態で形成されている。言い換えれば、円筒形状の刃先部12の中心を通る中心軸線C2は、本体部11の一方向Dに対して直交又は傾斜する方向に向けられている。そして、切削バイト1を刃物台23に取り付けたときに、円筒形状の刃先部12の中心軸線C2が、樹脂フィルム3のロール体31の端面32の面方向に略平行に配置される。また、このときには、円筒形状の刃先部12の中心軸線C2が、樹脂フィルム3のロール体31の端面32における接線方向Sに沿って、あるいは接線方向Sに近い傾斜角度で配置される。
【0024】
刃先部12の切刃先端121は、円筒形状の刃先部12の先端部における径方向Rの厚みを薄く加工することによって形成されている。刃先部12は、超硬合金によって形成されている。切削バイト1は、その作製を容易にするために、本体部11を形成するための角材に、刃先部12を形成するためのパイプ材を接合して形成されている。刃先部12の切刃先端121は、パイプ材に適宜加工を行って形成される。
【0025】
円筒形状の刃先部12は、金属等に比べて柔らかい樹脂フィルム3を切削するため、金属の旋削を行う旋盤等に用いられる切削チップ等の剛性は不要である。円筒形状又は板形状の刃先部12の厚みは、例えば、1~3mmとすることができる。また、切屑ガイド部13の穴径は、例えば、φ10~40mmとすることができ、好ましくはφ15~20mmとすることができる。
【0026】
(切削方法)
本形態の樹脂フィルム3のロール体31の切削方法においては、切削加工装置2及び切削バイト1を用いる。切削方法においては、中心軸線C1の周りに巻かれた樹脂フィルム3のロール体31における、樹脂フィルム3の不揃いな端面32Aを切削して、樹脂フィルム3の端面32を揃える加工を行う。
【0027】
まず、
図2及び
図3に示すように、切削加工装置2のシャフト21に対して、切断後の樹脂フィルム3のロール体31を装着する。このとき、ロール体31における円筒状の中芯33の中心側にシャフト21を挿入する。そして、ロール体31の端部を、回転機構22のチャック部221によって把持する。また、刃物台23の装着部231に切削バイト1を装着しておく。
シャフト21及び回転機構22のチャック部221によって支持されたロール体31の露出側の端面32は、円筒状に巻かれた樹脂フィルム3の端面32が揃っていない不揃いな端面32Aとなっている。
【0028】
次いで、回転機構22によってロール体31を、シャフト21の中心軸線C1を中心に回転させ、刃物台23の切削バイト1をロール体31の端面32に接近させる。このとき、ロール体31の不揃いな端面32Aにおける接線方向Sに沿うように、刃先部12の中心軸線C2が向けられる。また、エア吹出機構24のエア吹出口241からエアAを吹き出し、このエアAを刃先部12の内側に形成された穴状の切屑ガイド部13を通過させるようにする。
【0029】
次いで、ロール体31の不揃いな端面32Aに切削バイト1の刃先部12が接触し、不揃いな端面32Aが刃先部12によって切削される。このとき、ロール体31の不揃いな端面32Aから生じる樹脂フィルム3の切屑34は、エア吹出口241からのエアAの流れを受けて、切屑ガイド部13の内側へ導かれる。そして、切屑34は、シャフト21及びロール体31から離れた位置において、切屑ガイド部13の内側を円滑に流れるようにして排出される。
【0030】
こうして、ロール体31の不揃いな端面32Aは、円筒状に巻かれた樹脂フィルム3の端面32が揃った揃い端面32に加工される。また、ロール体31の両端面32に切削バイト1による切削加工を行った後には、ロール体31の横幅が、ロール体31の製品として必要とされる寸法に加工される。
【0031】
(作用効果)
本形態の樹脂フィルム3用の切削バイト1は、樹脂フィルム3のロール体31の端面32を切削する際に生じる切屑34を排出するために適した形状を有する。
具体的には、切削バイト1は、円筒形状の刃先部12と、刃先部12の内側に形成された穴状の切屑ガイド部13とを有する。そして、回転するロール体31の不揃いな端面32Aを切削バイト1によって切削する際には、ロール体31の端面32から生じる樹脂フィルム3の切屑34が、穴状の切屑ガイド部13へと導かれ、この切屑ガイド部13を通過する。
【0032】
これにより、切屑34が、切削バイト1とロール体31の端面32とが擦れ合うときに生じる摩擦による静電気によって、ロール体31の回転を支持するシャフト21へ引き寄せられることを阻止し、切屑34がシャフト21に巻き付かないようにすることができる。そのため、切屑34の排出を円滑にすることができ、特に、作業者の手作業による切屑34の除去作業を廃止することが可能になる。
【0033】
それ故、本形態の樹脂フィルム3用の切削バイト1によれば、切屑34の排出を円滑にし、樹脂フィルム3のロール体31の端面32を切削する作業の安全性を高めることができる。
【0034】
切削バイト1の刃先部12の円筒形状の断面は、真円である必要はなく、楕円、長円(オーバル)等の断面であってもよい。また、刃先部12は、断面が四角形等の多角形である筒形状に形成することもできる。
【0035】
<実施形態2>
本形態の切削バイト1の刃先部12は、
図4に示すように、平板が屈曲して形成された屈曲板形状に形成されている。また、屈曲板形状の刃先部12は、J形状の断面を有する形状に形成されている。本形態の刃先部12は、曲面状に折り曲げられている。
【0036】
切削バイト1は、屈曲板形状の刃先部12の屈曲先端部122がロール体31の端面32に接触する状態で使用される。切刃先端121は、屈曲先端部122の付近に形成されている。屈曲先端部122とは、本体部11に繋がる、刃先部12の基端部とは反対側に位置する端部のことをいう。刃先部12は、その折り曲げ起点となる折り曲げ基準線が、本体部11の一方向Dに対して傾斜する方向に向けられて形成されている。
【0037】
なお、切削バイト1は、屈曲板形状の刃先部12の基端部側の部位が、ロール体31の端面32に接触する状態で使用することも可能である。この場合、切刃先端121は、屈曲板形状の刃先部12の基端部側の部位に形成することができる。
【0038】
切屑ガイド部13は、刃先部12の内側に溝状に形成されている。ここでいう溝状は、屈曲板形状の刃先部12による屈曲によって形成された状態のことをいう。
切削バイト1の刃先部12の屈曲板形状の断面は、J形状とする以外にも、種々の折返し形状とすることができる。刃先部12は、ロール体31の端面32を切削するとともに、この端面32から発生する切屑34をガイドする形状であれば、いかなる形状に形成することもできる。
【0039】
本形態においても、切削バイト1のその他の構成、切削加工装置2及び切削加工方法については、実施形態1と同様である。そして、実施形態1に示した符号と同一の符号が示す構成要素は、実施形態1と同様であり、実施形態1と同様の作用効果を得ることができる。
【0040】
なお、本発明は、各実施形態のみに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲においてさらに異なる実施形態を構成することが可能である。
【符号の説明】
【0041】
1 切削バイト
11 本体部
12 刃先部
13 切屑ガイド部
21 シャフト
23 刃物台
3 樹脂フィルム
31 ロール体
32 端面
34 切屑