IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ アクソンデータマシン株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-非水電解質2次電池の異常検出装置 図1
  • 特許-非水電解質2次電池の異常検出装置 図2
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-02
(45)【発行日】2022-02-10
(54)【発明の名称】非水電解質2次電池の異常検出装置
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/48 20060101AFI20220203BHJP
   H01M 10/44 20060101ALI20220203BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20220203BHJP
【FI】
H01M10/48 301
H01M10/44 Q
H02J7/00 Y
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018020692
(22)【出願日】2018-02-08
(65)【公開番号】P2019139895
(43)【公開日】2019-08-22
【審査請求日】2020-10-09
(73)【特許権者】
【識別番号】591198364
【氏名又は名称】アクソンデータマシン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001922
【氏名又は名称】特許業務法人 日峯国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山崎 努
【審査官】赤穂 嘉紀
(56)【参考文献】
【文献】特表2020-523968(JP,A)
【文献】特開2014-022282(JP,A)
【文献】特開2015-035299(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/42-10/48
H02J 7/00-7/12
H02J 7/34-7/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
非水電解質2次電池を配置するための空間を内部に有するケースと、
上記非水電解質2次電池を充電するために、上記ケース内に設けられた充電制御回路と、
上記非水電解質2次電池に充電された電力を上記ケースから電力供給先へ出力するために設けられた出力用接続端子と、
上記電力供給先へ上記出力用接続端子を介して電力を供給するために上記出力用接続端子から出力する電流を制御する、上記ケースの内部に設けられた出力制御回路と、
上記ケースの内部に設けられており、上記非水電解質2次電池を配置するための空間の側面に、上記非水電解質2次電池の側面に対応するようにして配置された回路基板と、
上記回路基板に設けられ、上記非水電解質2次電池の上記側面の温度を計測するための複数の温度センサと
上記ケースの内部に設けられた異常検出回路と、
を有し、
上記出力制御回路は、上記複数の温度センサが設けられている上記回路基板に対して、空間を介して隔てられた位置に配置されており、
上記異常検出回路は上記複数の温度センサの出力に基づいて、上記空間に配置される上記非水電解質2次電池の上記側面の温度を計測し、
上記異常検出回路は、計測した上記温度が予め設定した所定レベルTを超えたことにより上記非水電解質2次電池の異常を検知する、
ことを特徴とする非水電解質2次電池の異常検出装置。
【請求項2】
請求項1に記載の非水電解質2次電池の異常検出装置において、上記充電制御回路は、上記複数の温度センサを有する上記回路基板に対して、空間を介して隔てられた位置に設けられている、ことを特徴とする非水電解質2次電池の異常検出装置。
【請求項3】
請求項1あるいは請求項2の内の一に記載の非水電解質2次電池の異常検出装置において、上記異常検出回路は、上記複数の温度センサの出力に基づいて異常発生位置を推定する、ことを特徴とする非水電解質2次電池の異常検出装置。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3の内の一に記載の非水電解質2次電池の異常検出装置において、
上記非水電解質2次電池の上記側面は四角形の形状をなし、
上記回路基板に設けられた上記複数の温度センサは、上記非水電解質2次電池の上記側面の上記四角形の各四隅および上記四角形の中央部に対応する位置に設けられている、ことを特徴とする非水電解質2次電池の異常検出装置。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4の内の一に記載の非水電解質2次電池の異常検出装置において、
上記異常検出回路は、上記複数の温度センサにより計測された温度の内の高い温度と低い温度との温度差が、予め設定した所定レベルBを超えている場合に、警戒すべき状態であると判断して警告する、ことを特徴とする非水電解質2次電池の異常検出装置。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5の内の一に記載の非水電解質2次電池の異常検出装置において、上記異常検出回路は、上記複数の温度センサにより計測された温度および過去に計測された温度から温度上昇の変化率を算出し、温度上昇の変化率が予め設定した所定レベルFに達している場合に、異常状態と判定する、ことを特徴とする非水電解質2次電池の異常検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウムイオン2次電池等の非水電解質2次電池の異常状態を検出する異常検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン2次電池等を含む非水電解質2次電池は体積当たりの充電量に関して優れた特性を有している。しかし非水系電解質を使用しているために、異常な温度上昇を抑制することが難しく、温度が異常に高くなり、さらに発火に至る恐れがある。例えばこのような技術は特開2015-222653号特許公開公報に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-222653号公報
【文献】特開2017-224552号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1には、非水電解質2次電池が発熱して高温になった状態で容器の一部が溶解することにより、それ以上に高温になることを抑制する非水電解質2次電池が開示されている。また特許文献2には、リチウムイオン2次電池の吸熱材を設け、高温になるのを阻止する構成が開示されている。これらの特許文献に開示されている技術は、非水電解質2次電池そのものが高温になるのを抑制する構造を有している。このように非水電解質2次電池そのものが高温になるのを抑制する構造を有していても良いが、世の中の一般的な非水電解質2次電池はそのような構造を有していない。従って非水電解質2次電池を使用する電源装置が非水電解質2次電池の異常をより早い段階で検知し、対応することが必要である。
【0005】
高い安全性を確保するには、重大な異常状態を検知するだけでなく、異常の初期段階、すなわち重大な異常状態を引き起こす兆候をより早い段階で検知できることが必要である。
【0006】
本発明の目的は、異常状態をより早い段階で捉え、初期段階の異常を検知することができる非水電解質2次電池の異常検出装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の発明は、非水電解質2次電池を配置するための空間を有し、該非水電解質2次電池を充電するための充電制御回路と、該非水電解質2次電池から電力供給先へ供給する電力を制御する出力制御回路、上記非水電解質2次電池を配置するための空間の側面に上記非水電解質2次電池の側面に対応するようにして配置された複数の温度センサと、異常検出回路と、を有し、上記異常検出回路は上記複数の温度センサの出力に基づいて、上記空間に配置される上記非水電解質2次電池の温度を検知し、該温度が予め設定した所定レベルTを超えたことにより上記非水電解質2次電池の異常を検知する、ことを特徴とする非水電解質2次電池の異常検出装置である。
【0008】
第2の発明は、第1の発明の非水電解質2次電池の異常検出装置において、上記非水電解質2次電池は四角形の側面を有しており、該四角形の側面の各角に対応するようにしてその近傍に上記温度センサをそれぞれ配置した、ことを特徴とする非水電解質2次電池の異常検出装置である。
【0009】
第3の発飯は、第2の発明の非水電解質2次電池の異常検出装置において、上記温度センサの出力に基づいて異常発生位置を推定する、ことを特徴とする非水電解質2次電池の異常検出装置である。
【0010】
第4の発明は、第2の発明の非水電解質2次電池の異常検出装置において、上記非水電解質2次電池の上記四角形の側面の中央部に、さらに温度センサを配置した、ことを特徴とする非水電解質2次電池の異常検出装置である。
【0011】
第5の発明は、第1の発明乃至第4の発明のそれぞれに記載の非水電解質2次電池の異常検出装置において、上記異常検出回路は、計測した高温度部と低温度部との温度差が、予め設定した所定レベルBを超えている場合に、警戒すべき状態であると判断して警告する、ことを特徴とする非水電解質2次電池の異常検出装置である。
【0012】
第6の発明は、第1の発明乃至第4の発明のそれぞれに記載の非水電解質2次電池の異常検出装置において、上記異常検出回路は、計測した高温度部の温度上昇率が、予め設定した所定レベルEを超えている場合に、異常状態と判定して警告する、ことを特徴とする非水電解質2次電池の異常検出装置である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、重大な異常状態につながる兆候をより早い段階で検知することができる異常検出装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明を適用した異常検出装置である、非水電解質2次電池を備えた電源装置の概念を説明する説明図である。
図2】本発明を適用した異常検出装置の検知動作および検知結果に基づく対応動作を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
1.異常検出装置10の基本構成
1.1 図1に記載の異常検出装置10の特長
図1に記載の異常検出装置10の構成については以下で詳述するが、次に記載の特長を備えている。
【0016】
(1)非水電解質2次電池の一例であるリチウムイオン2次電池50の異常を正確に検知できる位置関係に、複数の温度センサが配置されている。(2)この結果、温度センサの数が比較的少ないにもかかわらず、正確に非水電解質2次電池の異常を検知することができる。(3)またリチウムイオン2次電池50の重大な異常だけでなく、重大な異常につながる恐れのある前兆をも正確に検知することができる。(4)さらにリチウムイオン2次電池50の側面に対応して設けられた温度センサS1から温度センサS4により計測された温度情報、例えば所定の温度変化が現れる時間差から、その熱源となっている部分、すなわち異常状態が発生した位置、を推定することができる。この異常発生位置の推定は、異常検出回路70によって行われ、その結果が通信回路71を介してセンタ的な働きをする管理装置(図示せず)に送られる。送られた情報は、他の類似の製品であるリチウムイオン2次電池50の安全性に関するメンテナンスの情報として使用される。また新たに製造されるリチウムイオン2次電池50の安全性の向上のための重要な情報としても使用される。以下の実施例では温度センサS1から温度センサS4に加えて、さらに温度センサS5が設けられているので、異常状態が発生した位置の推定精度を更に向上させることができる。
【0017】
(5)また上記位置関係に配置された複数の温度センサを備える検出部は、同一基板に上記各温度センサを設けており、このような構造とすることにより生産性が向上する。(6)各センサの特性の調整や評価が容易である。(7)また実際の使用状態においては、使用される環境における温度条件による特性のばらつきを抑制でき、低減できる。(8)しかも異常検出装置10への組付けが容易であり、(9)また長期間の使用に十分に耐えられるより信頼性の高い構造を備えている。以下上記異常検出装置10の構成について具体的に説明する。
【0018】
1.2 異常検出装置10の基本構成の説明
図1に、本発明が適用された一実施形態である異常検出装置10の構成を示す。異常検出装置10は、ケース22と、ケース22の内部に設けられる破線で示すリチウムイオン2次電池50を配置するための空間と、リチウムイオン2次電池50に充電用電力を供給するための充電用接続端子26と、充電用接続端子26から供給された電力に基づいてリチウムイオン2次電池50へ供給ライン30を介して充電用直流電流を供給すると共に充電状態を制御する充電制御回路28と、リチウムイオン2次電池50に蓄えられた電力を供給先へ供給するための出力用接続端子32と、出力ライン36を介して供給されるリチウムイオン2次電池50に蓄えられた電力を受けて出力用接続端子32から出力する電流を制御する出力制御回路34と、を有している。リチウムイオン2次電池50は破線で示す正極54と負極52を備えている。
【0019】
充電用接続端子26から供給される電力は交流電力であっても直流電力であっても良く、交流電力が供給された場合には充電制御回路28によりリチウムイオン2次電池50に適応した電圧の直流電力に変換されてリチウムイオン2次電池50へ供給される。また出力用接続端子32から出力される電力は、電力の供給先の要求に応じて、交流あるいは直流の状態で出力される。交流の状態で出力される場合には、直流電力から交流電力への変換動作は出力制御回路34で行われ、さらに出力される電流値は出力制御回路34により制御される。
【0020】
破線で示す非水電解質2次電池の一例として以下リチウムイオン2次電池50の例で説明する。リチウムイオン2次電池50と言ってもいろいろなタイプのリチウムイオン2次電池があるが、いろいろなタイプのリチウムイオン2次電池が適用可能である。リチウムイオン2次電池50は例えばその内部に、正極と負極およびそれらの間に、非水電解質を含むセパレータが設けられている。該セパレータは正極と負極の間の絶縁を維持する作用をしているが、例えば絶縁特性を有すべきセパレータの一部の抵抗値が低下すると、抵抗値が低下した部分に電流が集中的に流れ、セパレータの抵抗値が低下した部分の温度が急上昇する。この現象がさらに進むと高温となり発火につながる。また上記セパレータの上記異常が急速に全体に広がる恐れがあるので、異常現象の発生をできるだけ早い段階で検知することが望ましい。
【0021】
2.リチウムイオン2次電池50の異常状態検知の概要
2.1 図2に記載の異常状態あるいはその兆候である初期異常状態の検知動作、回避動作の特長
以下に詳述する図2に示す異常検出装置10の動作では、次に記載の特長を有している。
【0022】
(1)リチウムイオン2次電池50の重大な異常状態だけでなく、その兆候としての異常をより早い段階で、より正確に検知できる。(2)このようなより正確な検知を可能とするために、複数の温度センサが以下に説明するように配置される。(3)以下で説明するステップST15で異常状態を正確に検知することができる。(4)さらにそれに加えステップST16で異常状態をより早い段階で検知することができる。(5)以下で説明するステップST18で、異常状態につながる兆候をより早い段階で検知することができる。(6)またそれに加えステップST20の実行により、異常状態につながる兆候をより正確に検知することができる。(7)さらにまたステップST22の実行により、より早い段階で異常状態につながる兆候を検知することができる。(8)以下で説明する実施例では、重大な異常状態と、兆候を検知した警戒状態である早い段階の異常と、に分けてそれぞれ適切に対応することができる。
【0023】
2.2 異常状態あるいはその兆候の検知するための温度センサの配置の説明
上記異常現象を早い段階で検知して対応するために、図1に記載の実施例では、破線で示すリチウムイオン2次電池50の片側側面に、または該リチウムイオン2次電池50を挟むようにしてその両側側面に、温度センサS1~S5を有する回路基板60が設けられている。回路基板60に設けられた各温度センサは回路基板60に設けられている配線62に接続され、さらに図示しないコネクタを介して異常検出回路70に接続されている。回路基板60をケース22の内側に固定することにより各温度センサはリチウムイオン2次電池50の対応する位置に配置され、上述の図示しないコネクタを介して配線62は異常検出回路70と接続することができる。このような構造にすることにより、リチウムイオン2次電池50の適切な位置の温度を正確に計測することができる。また異常検出装置10の構成が簡素化され、生産性が向上する。
【0024】
回路基板60に温度センサS1~温度センサS5が固定された構成の部分は、異常検出装置10のセンサ部として動作する。センサ部は、ケース22に組み込む前に、独立した状態で事前に検出精度の確認や調整を行うことができる。また回路基板60を樹脂基板とすることにより、熱伝導を抑えることができ、リチウムイオン2次電池50の各部の温度を正確に測定でき、また異常位置の推定制度の向上につながる。センサ部について特性試験を行った後にケース22に組み込むことができ、精度向上や信頼性向上につながる。
【0025】
なお図1では温度センサS1から温度センサS5の配置の状態を分かりやすくするためにリチウムイオン2次電池50を破線で記載しているが、通常はこの破線のようにリチウムイオン2次電池50が配置される。またリチウムイオン2次電池50の近傍に、内部に消火剤24を有する消火装置25が設けられている。
【0026】
なおこの実施例では一例として温度センサS1~S5の五個のセンサを用いているが、温度センサS1と温度センサS4、あるいは温度センサS2と温度センサS3、のように、リチウムイオン2次電池50の四角形の側面に対して対角線上に2個の温度センサを配置してもよい。あるいは温度センサS1と温度センサS4と温度センサS5、あるいは温度センサS2と温度センサS3と温度センサS5のように、リチウムイオン2次電池50の四角形の側面に対して対角線上に3個の温度センサを配置してもよい。あるいはリチウムイオン2次電池50の各角に対応するその近傍にそれぞれ位置するように温度センサS1から温度センサS4の4個の温度センサを配置しても良い。さらに本実施例のように5個の温度センサを設けてもよい。
【0027】
リチウムイオン2次電池50の各角の近傍にそれぞれ位置するように温度センサS1から温度センサS4を配置する構成では、リチウムイオン2次電池50の側面全体の温度変化の状態を正確に把握でき、高い精度で異常状態を検知することができる。また図2に示す実施例では、リチウムイオン2次電池50の4つの角A1、A2、A3、A4の近傍に温度センサS1から温度センサS4を配置し、さらにチウムイオン2次電池50の側面のほぼ中央の位置に温度センサS5を配置している。このようにすることによりさらに高い精度で、重大な異常だけでなく前兆となる異常をより正確に検知することができる。
【0028】
上述した温度センサS1から温度センサS5の配置で、各温度センサS1~温度センサS5はリチウムイオン2次電池50の側面に近接する位置に配置されている。もちろんリチウムイオン2次電池50の側面に接するように配置してもよい。
【0029】
異常検出回路70は、各温度センサS1~温度センサS5からの温度に関する情報に基づいて前兆となる異常を検知し、充電制御回路28に指令を送りリチウムイオン2次電池50への電流の供給を停止したり、あるいは出力制御回路34へ指令を送りリチウムイオン2次電池50からの電力の供給を停止したりする。さらに異常状態の検知の結果、発火の危険性がある重大な異常の場合には、消火装置25を動作させて消火剤24を噴出させ、発火を防止したり、発火を初期段階で鎮火させたりする。
【0030】
また温度変化が温度センサS1から温度センサS4によって測定され、計測された温度変化の時間差から異常位置が推定可能となり、最高温度の推定も可能となる。更に温度センサS5も加えたことにより、異常位置の推定制度や最高温度の推定制度が向上する。これらの情報は、通信回路71を介して外部の装置に送信される。この情報は上述したように類するリチウムイオン2次電池50の異常に関するメンテナンスにすぐに使用可能となる。このことにより、異常の発生を低減でき、安全性を向上することができる。
【0031】
2.3 異常状態の検知動作および危険回避動作
図2は異常検出回路70の検知動作及び危険回避制御を示すフローチャートである。ステップST10で異常検出回路70の実行が開始されると、異常検出回路70はステップST11で温度センサS1乃至温度センサS5のそれぞれの温度情報である各センサ出力を取り込み、ステップST12で温度センサS1から温度センサS5が配置されている近傍のリチウムイオン2次電池50の各部分の温度を算出して、算出した各部分の温度を図示しない記憶部に記憶維持する。
【0032】
ステップST13で、リチウムイオン2次電池50の各温度計測部分の温度差を求める。例えば最も温度の高い位置と最も温度の低い位置との温度差を求める。あるいは最も温度の高い位置とそれ以外の位置の温度の平均値との差を求めてもよい。しかし実際に最も高い温度や最も低い温度を正確に計測することは、なかなか難しいことが多い。最も高い温度や最も低い温度にこだわる必要性は低く、温度の高い領域と温度の低い領域とを定め、温度の高い領域と温度の低い領域との間の温度差を求めることで、以下に説明する重大な異常の状態や兆候としての初期の異常状態を正確に検知することができる。
【0033】
ステップST14で、最も温度の高い位置を推定して位置情報を上記図示しない記憶部に記憶する。最も温度の高い位置の算出は、例えば所定の温度変化の各温度センサS1~温度センサS5における計測時間差から求める。求めた最も高温の位置情報は、ステップST30あるいはステップST32で通信回路71を介して外部の管理装置に送信される。
【0034】
ステップST15で、異常検出回路70は計測した高い領域の温度が危険温度Tを超えているかどうかを判断する。もし計測した温度が危険温度Tを超えている場合には、発火に至る危険な状態であると判断し、ステップST23およびステップST24を実行する。ステップST23の実行では、音声を含む警報音を発して異常の発生を警報する。更にステップST24で消火装置25を起動し、消火剤を噴出すると共に充電制御回路28や出力制御回路34へ異常検出回路70から制御線72を介して指令を送り、リチウムイオン2次電池50への充電やリチウムイオン2次電池50から外部への電力の供給を停止する。このようにすることで発火を防止したり、あるいは発火しても早い状態で鎮火させたり、することができる。ステップST15で計測した最も高い温度が危険レベルTを超えていない場合には、ステップST16に実行が移る。
【0035】
ステップST16では、ステップST14で算出した温度差が予め記憶部に記憶していた危険レベルである温度差Aより大きいかどうかを判断する。温度差Aは発火現象を起こしかねない危険性のある温度差であり、予め実験等で求めて記憶部に記憶しておく。算出した温度差が上記温度差Aより大きい場合には、発火につながる危険性があるので、上述のステップST23が実行される。更に上述のステップST24が実行される。このようにすることで発火を防止したり、あるいは発火しても早い状態で鎮火させたり、することができる。
【0036】
算出した温度差が予め定めた温度差Aより小さい場合はステップST18を実行する。ステップST18では算出した温度差が、温度差Aより小さい値であるが、重大な異常につながる兆候の可能性がある温度差Bより大きいかどうかを判断する。上記温度差Bは予め実験等で求めて記憶部に記憶しておく。算出した温度差が温度差Bより大きい場合には、ステップST20を実行し、重大な異常が高い確率で引き起こされる危険性の有無を判断する。
【0037】
ステップST20では、ステップST13で記憶していた過去の温度の計測値を読みだして比較し、温度の高い部分の温度上昇の上昇率が予め設定している危険レベルEより大きいかどうかを判断する。急速な温度上昇は発火につながり大変危険である。従って絶対温度が低い状態であっても急速な温度上昇が検知されると上述したステップST23およびステップST24を実行し、発火を防止したり、あるいは発火しても早い状態で鎮火させたり、する。
【0038】
ステップST20で、温度上昇率が危険レベルEより小さいと判断されると、警戒すべき状態の異常であると判断して、ステップST26を実行する。ステップST26では、充電用接続端子26からリチウムイオン2次電池50に充電電流を供給している充電状態であれば制御線72を介して充電制御回路28へ指令を送り、充電制御回路28からリチウムイオン2次電池50への充電電流の供給を停止する。またリチウムイオン2次電池50から電力供給先へ出力制御回路34を介して電力を供給している状態であれば、異常検出回路70から制御線72を介して指令を送り、リチウムイオン2次電池50からの電力の供給を停止する。さらにステップST28を実行して音声あるいは音あるいは表示により警告を発する。
【0039】
ステップST18で、算出された温度差が警戒レベルである温度差Bに達していないと判断された場合には、ステップST22に実行が移り、過去に記憶していた温度を読み出し、温度上昇の変化率を算出する。算出された温度変化率が警戒レベルFに達していてこれより大きい場合には、異常検出回路70は警戒レベルに相当する異常と判断し、上述したステップST26及びステップST28を実行する。また算出された温度変化率が警戒レベルFに達していない場合には、重大な異常状態ではないし、さらに警戒状態に相当する異常状態でもないと、異常検出回路70は判断する。そして、再び上述したステップST12に実行が移る。
【0040】
ステップST28の実行の後も、再び上述したステップST12に異常検出回路70の実行が移る。この場合は警戒に相当する異常状態であると判断されているが、再び上述したステップST12に実行が移ることにより、重大な異常状態の発生を監視することができる。さらに該重大な異常状態の発生が検知されると、ステップST23やステップST24に、異常検出回路70の実行が移り、火災の発生を抑制したり、火災の規模を抑制したり、することが可能となる。
【0041】
3.実施例の効果
図1図2に記載の実施例によれば、非水電解質2次電池の一例であるリチウムイオン2次電池50の異常を正確に検知できる位置関係に、複数の温度センサが配置されている。また重大な異常だけでなく、その前兆となる異常を正確に検知できる位置関係に、複数の温度センサが配置されている。さらに上記位置関係に配置された複数の温度センサを備える検出部は、生産が容易であり、しかも異常検出装置10への組付けが容易であり、長年にわたる使用に十分に耐えられる高い信頼性が得られる。
【0042】
上述したように、重大な異常状態を正確に検知できる。それに加えその兆候となる早い段階の異常を正確に検知することができる。また重大な異常状態を検知した場合と兆候状態の異常を検知した場合とに分けて対応することができ、より適切な対策が可能となる。
【符号の説明】
【0043】
10・・・異常検出装置、22・・・ケース、24・・・消火剤、25・・・消火装置、26・・・充電用接続端子、28・・・充電制御回路、30・・・供給ライン、32・・・出力用接続端子、34・・・出力制御回路、36・・・出力ライン、50・・・リチウムイオン2次電池、60・・・回路基板、62・・・配線、70・・・異常検出回路、S1・・・温度センサ、S2・・・温度センサ、S3・・・温度センサ、S4・・・温度センサ。
図1
図2