(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-02
(45)【発行日】2022-02-10
(54)【発明の名称】抗体産生のためにB細胞を拡張及び分化する方法
(51)【国際特許分類】
C12N 5/0781 20100101AFI20220203BHJP
C12P 21/08 20060101ALI20220203BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20220203BHJP
C12N 5/071 20100101ALN20220203BHJP
C12N 15/13 20060101ALN20220203BHJP
C12N 15/12 20060101ALN20220203BHJP
C12N 15/24 20060101ALN20220203BHJP
【FI】
C12N5/0781 ZNA
C12P21/08
C12N5/10
C12N5/071
C12N15/13
C12N15/12
C12N15/24
(21)【出願番号】P 2018543365
(86)(22)【出願日】2017-02-16
(86)【国際出願番号】 US2017018155
(87)【国際公開番号】W WO2017143052
(87)【国際公開日】2017-08-24
【審査請求日】2020-02-17
(32)【優先日】2016-02-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】507189666
【氏名又は名称】デューク ユニバーシティ
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100084663
【氏名又は名称】箱田 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100093300
【氏名又は名称】浅井 賢治
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100212509
【氏名又は名称】太田 知子
(72)【発明者】
【氏名】管 析
(72)【発明者】
【氏名】カンダンド キャスリーン エム
(72)【発明者】
【氏名】コウンチコフ エフゲニー
(72)【発明者】
【氏名】鎌田 昌洋
(72)【発明者】
【氏名】テダー トマス エフ
(72)【発明者】
【氏名】吉崎 歩
(72)【発明者】
【氏名】宮垣 朝光
【審査官】鈴木 崇之
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-529084(JP,A)
【文献】特開2011-092142(JP,A)
【文献】国際公開第2005/037218(WO,A2)
【文献】特表2013-516194(JP,A)
【文献】特表2014-533514(JP,A)
【文献】J. Immunol.,2015年,Vol. 194,pp. 1480-1488
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 1/00-7/08
C12N 15/00-15/90
C12P 1/00-41/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インビトロでB細胞を拡張する方法であって、
(a)
1つの
単離されたB細胞を
用いるステップと、
(b)ステップ(a)からの
1つのB細胞を、CD154ポリペプチド(又はCD40アゴニスト)及びBLySポリペプチド(又はB細胞生存因子)を発現するよう改変された
胸腺上皮細胞系を含むフィーダー細胞系とともに、IL-21と組合せて、かつ外因的なIL-4を添加すること
及び抗原の添加を行うことなしに培養するステップであって、該B細胞をフィーダー細胞系と、ヒトB細胞を数において拡張させるのに十分な条件の下、かつ十分な時間、培養するステップを含む、方法。
【請求項2】
前記B細胞がヒトB細胞である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記IL-21が外因的に培養物に添加される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記フィーダー細胞がIL-21ポリペプチドを発現するように改変される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項5】
前記B細胞が、数において少なくとも平均10
4倍に拡張される、請求項1から4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
ステップ(b)における少なくとも1つのB細胞のフィーダー細胞系との培養が、2週間未満行われる、請求項1から5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
1つのB細胞がステップ(a)
の前に抗原にさらされる、請求項1から
6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
1つのB細胞が、抗原に結合することによって単離される、請求項1から
7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
ステップ(b)の後に、少なくとも10%の拡張されたB細胞がIgGを発現する、請求項1から
8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
ステップ(b)の後に、少なくとも2.5%の拡張されたB細胞がIgAを発現する、請求項1から
9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記フィーダー細胞が
下記(1)から(6)のいずれか1
に記載のフィーダー細胞である、請求項1から
10のいずれか1項に記載の方法。
(1)フィーダー細胞系が、CD154ポリペプチド、BLySポリペプチド、及び場合によってはIL-21ポリペプチド、を発現するよう改変された胸腺上皮細胞系を含む、フィーダー細胞系;
(2)フィーダー細胞系が、培養物中で2週間未満の間に、ヒトB細胞を数において少なくとも平均10
4
倍に拡張することができる、前記(1)に記載のフィーダー細胞系;
(3)胸腺上皮細胞系がTEC-84細胞系を含む、前記(1)又は(2)のいずれかに記載のフィーダー細胞系;
(4)前記CD154ポリペプチドが、配列番号68を含む、前記(1)から(3)のいずれか1に記載のフィーダー細胞系;
(5)前記BLySポリペプチドが配列番号69を含む、前記(1)から(4)のいずれか1に記載のフィーダー細胞系;又は
(6)前記IL-21ポリペプチドが配列番号70を含む、前記(1)から(5)のいずれか1に記載のフィーダー細胞系。
【請求項12】
モノクロナール抗体を産生する方法であって、
(a)
単離されたB細胞を
用いるステップと、
(b)ステップ(a)からのB細胞を単一のB細胞に分離するステップと、
(c)複数のB細胞クローンを生成するため、単一のB細胞を、CD154ポリペプチド(又はCD40アゴニスト)及びBLySポリペプチド(又はB細胞生存因子)を発現するよう改変され
た胸腺上皮細胞系を含むフィーダー細胞系とともに、IL-21と組合せて、かつ外因的なIL-4を添加すること
及び抗原の添加を行うことなしに培養するステップであって、該
単一のB細胞をフィーダー細胞系と、
該単一のB細胞を数において拡張させ、モノクロナール抗体を産生するB細胞クローンに分化するのに十分な条件の下かつ十分な時間、培養するステップを含む、方法。
【請求項13】
さらに(d)複数のB細胞クローンにより産生された少なくとも1つのモノクロナール抗体の抗原特異性を評価するステップを含む、請求項
12に記載の方法。
【請求項14】
さらに(e)複数のB細胞クローンにより産生された少なくとも1つのモノクロナール抗体を精製するステップを含む、請求項
12又は
13に記載の方法。
【請求項15】
前記B細胞がステップ(a)の
前に抗原にさらされる、請求項
12から
14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記B細胞がヒトB細胞である、請求項
12から
15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記B細胞がマウスB細胞又はマウスB細胞の部分集合である、請求項
12から
15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
ステップ(c)の後に、少なくとも10%の拡張されたB細胞がIgGを発現する、請求項
12から
17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
ステップ(c)の後に、少なくとも2.5%の拡張されたB細胞がIgAを発現する、請求項
12から
18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
前記フィーダー細胞が
下記(1)から(6)のいずれか1
に記載のフィーダー細胞である、請求項
12から
19のいずれか1項に記載の方法。
(1)フィーダー細胞系が、CD154ポリペプチド、BLySポリペプチド、及び場合によってはIL-21ポリペプチド、を発現するよう改変された胸腺上皮細胞系を含む、フィーダー細胞系;
(2)フィーダー細胞系が、培養物中で2週間未満の間に、ヒトB細胞を数において少なくとも平均10
4
倍に拡張することができる、前記(1)に記載のフィーダー細胞系;
(3)胸腺上皮細胞系がTEC-84細胞系を含む、前記(1)又は(2)のいずれかに記載のフィーダー細胞系;
(4)前記CD154ポリペプチドが、配列番号68を含む、前記(1)から(3)のいずれか1に記載のフィーダー細胞系;
(5)前記BLySポリペプチドが配列番号69を含む、前記(1)から(4)のいずれか1に記載のフィーダー細胞系;又は
(6)前記IL-21ポリペプチドが配列番号70を含む、前記(1)から(5)のいずれか1に記載のフィーダー細胞系。
【請求項21】
フィーダー細胞系が、CD154ポリペプチド、BLySポリペプチド、及び場合によっては、IL-21ポリペプチドを発現するよう改変され
た胸腺上皮細胞系を含む、細胞系。
【請求項22】
前記改変され
た胸腺上皮細胞系が
TEC-84細胞系を含む、請求項
21に記載のフィーダー細胞系。
【請求項23】
前記CD154ポリペプチドが、配列番号68
を含む、請求項
21又は22のいずれか1項に記載のフィーダー細胞系。
【請求項24】
前記BLySポリペプチドが配列番号69
を含む、請求項
21から
23のいずれか1項に記載のフィーダー細胞系。
【請求項25】
前記IL-21ポリペプチドが配列番号70
を含む、請求項
21から
24のいずれか1項に記載のフィーダー細胞系。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2016年2月16日に出願された米国仮特許出願第62/295,728号の優先権の利益を請求するものであり、その内容の全体が参照により本明細書に組み込まれる。
(配列表)
配列表が本出願に伴い、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。配列表は本出願とともにテキストファイルとして提出された。
(技術分野)
本発明は、ヒトB細胞を含む、B細胞を産生及びサポートする方法に関連し、抗原特異的抗体、より具体的には、モノクロナール抗体を産生するために用いることができる。より具体的には本発明は、ハイブリドーマ技術又はEBV-形質転換B細胞を用いることなくモノクロナール抗体を産生するためB細胞を培養することに関連する。
【0002】
(背景技術)
モノクロナール抗体は、例えば、抗体ベースの生物学的又は薬学的発展を通じて、特に医学において有用性を見出されてきた。モノクロナール抗体を産生する現在の方法は、マウスハイブリドーマ法(すなわち、抗体産生細胞を骨髄腫細胞と融合させること)を含む。その他の方法としては、EBV-形質転換B細胞系及びファージディスプレイが挙げられる。ヒトモノクロナール抗体を産生するために用いられるそれぞれの異なる方法は、それを使いにくくしている技術的な限界に苦しんでいる。例えば、ハイブリドーマ技術については、モノクロナール抗体の非ヒト部分に対する免疫反応を促進する頻度を下げるため、抗体を「ヒト化」する必要がある。加えて、特異の抗原又はエピトープに対する免疫反応は、種に特異的であり得る。その他の方法には、ヒトの治療及び診断に用いるためのモノクロナール抗体の開発に用いるためそれらを広く適用することに制約を与える欠点がある。
【0003】
(発明の概要)
本発明は、培養中のB細胞を拡張及び分化するための高度に効率的な方法の発見にも基づいており、B細胞の単一細胞クローニングを可能とする。ある態様において、本発見は、培養中のB細胞を拡張及び分化するための高度に効率的な方法に関連し、ヒトB細胞の単一細胞クローニング及び抗体の産生を可能とする。
本発明は、培養中のB細胞を拡張及び分化するための高度に効率的な方法の発見に基づいており、それは、B細胞の単一細胞クローニング(単一B細胞を播種し、そのB細胞をB細胞のクローンに拡張すること)を一定量及びモノクロナール抗体を一定量生成するのに十分な時間であって、産生されたモノクロナール抗体の特徴づけを円滑化する時間内で可能とする。本方法のある態様において、ヒトB細胞は、単一細胞クローンとして拡張及び分化され、ヒトモノクロナール抗体を産生する。これらの方法の別の態様においては、本方法は培養を拡張するために抗原を必要としない及び/又は添加しない。また別の態様においては、B細胞の抗原特異性は知られていない。また別の態様において、B細胞はインビトロで抗原に曝されない。
【0004】
本発明の別の態様において、モノクロナール抗体、特にIgGタイプのもの、を産生するためのインビトロの方法が提供される。
本発明の別の態様において、フィーダー細胞系が提供され、それは改変された間葉系間質細胞又は改変された胸腺上皮細胞を含み、それらは効率的に培養中の多くの数のB細胞を促進及びサポートすることができ、それによって、改変マウス3T3細胞とともにB細胞を培養する過去の試みにおいて観察されたよりも高いレベルでのモノクロナール抗体産生を可能とする。この態様に関連して、フィーダー細胞系は、間葉系間質細胞又は胸腺上皮細胞を含み、それらは、CD154(また、CD40L又はCD40リガンドとしても知られている)及びBLyS(Bリンパ球刺激因子、またBAFF(B細胞活性化因子)としても知られている)を含む組合せ、又はCD154、BLyS、及びIL-21を含む組合せを発現するよう改変される。本発明のフィーダー細胞は、ヒトB細胞及びマウスB細胞を含む哺乳類のB細胞の著しい繁殖及び分化をサポートし、B細胞が改変されたフィーダー細胞の存在下でインビトロで培養される場合、外因性の抗原又は外因性のIL-4を加える必要がない(すなわち、無しでよい)。
【0005】
ある態様において、特異の抗原、典型的には公知の抗原に結合するモノクロナール抗体を産生する方法が提供される。該方法は、抗原に未経験又は抗原に(例えば、インビトロ又はインビボ曝露のいずれかによって)曝されたことのある、いずれかのB細胞を単離するステップ;単離されたB細胞を単一細胞に分離するステップ;単離されたB細胞(単一B細胞)を、改変されたフィーダー細胞(すなわち、CD154又は別のCD40アゴニスト及びBLyS又は比較可能なB細胞活性因子を発現しているフィーダー細胞)の存在下で、本発明にしたがってインビトロで少なくとも数において平均104倍の拡張を達成するための条件の下、十分な時間(例えば、単一細胞から10,000細胞への拡張、マルチウェルプレート、例えば96ウェルプレートの平均テイクオーバーウェル)を2週間未満、培養中で、培養するステップ;を含む。モノクロナール抗体は拡張された培養B細胞クローンから産生する。更なるステップとして、モノクロナール抗体の特徴づけ、例えば、1つ以上の(a)モノクロナール抗体の抗原特異性を当該技術分野で公知の方法を用いて決定すること、及び(b)モノクロナール抗体を単離することであって、(i)当該技術分野で公知の方法を用いて培養培地からのモノクロナール抗体を精製すること、及び/又は、(ii)B細胞クローンから、全RNAを単離し、抗体の可変部重鎖(VH)をコードしているcDNA及び抗体の可変部軽鎖(VL)をコードしているcDNAを生成し、それらは、公知の方法を用いて、モノクロナール抗体の遺伝子組み換え産生のため、真核細胞発現ベクターにクローンすることができることを含むステップを含んでもよい。代替的には、抗原特異的モノクロナール抗体を産生する選ばれたB細胞クローンは、ハイブリドーマ技術、EBV-形質転換、PA317 LXSN 16E6E7細胞系によって産生される両種指向性レトロウィルスLXSN16E6E7(米国培養細胞系統委保存機関、CRL-2203(登録商標))又はその他の公知の方法によって不死化することができる。
【0006】
本発明の別の態様では、培養中の哺乳類B細胞を拡張及び分化するキットを提供する。該キットはまた、該キットを用いて拡張されたB細胞からモノクロナール抗体を産生するために用いてもよい。該キットは、本発明の改変されたフィーダー細胞、生体試料からB細胞を単離するための試薬、及び改変されたフィーダー細胞及び試薬を保持するためのパッケージングを含む。該キットは更に、改変されたフィーダー細胞及びB細胞を培養するために必要な1つ以上の試薬、及びキットを用いて改変されたフィーダー細胞と共に共培養されたB細胞から産生されたモノクロナール抗体の特徴づけを含んでもよい。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1A】
図1はB細胞の拡張を示す一連のグラフである。
図1Aは、ヒトB細胞の拡張を示すグラフであり、培養日数に対する拡張倍によって測定しており、ヒトBLyS及びCD154(添加されたIL-21とともに)を発現する間質細胞(“MS5
DUO”)、BLyS、CD154及びIL-21を発現する間質細胞(“MS5
TRIO”)を含むいずれかの本発明の改変されたフィーダー細胞とともに培養した結果を、BLyS及びCD154(添加されたIL-21とともに)を発現するNIH-3T3細胞(“NIH-3T3-m154/hBLyS)を含むフィーダー細胞と比較したものである。これらの結果は、3回以上の実験で得られたもののうち代表的なものである。
【
図1B】
図1Bは、外因性ヒトサイトカインのヒトB細胞拡張に対する効果を示すグラフである。値は、MS5
Duo 細胞単分子膜上で6日及び10日培養された複製(duplicate)からの平均B細胞数を表しており、示されたサイトカインの組合せ(a-h)が、所与の期間中存在した。全てのサイトカインは、IL-4(10ng/mL)を除いて、20ng/mL存在した。適切なサイトカインを含む追加的な培地が、第4日及び第8日に培養に添加された。値は、2つの独立した実験からの6サンプルの平均(+標準誤差)を表す。(a)と他の培養の間、又は培養(e)と(g)の間で有意に平均値が異なるものは印を付している;
#p<0.05。
【
図2A】
図2は一連のFACSヒストグラムであり、示されたセル表面マーカーのレベルを表している。
図2Aは、末梢血から単離された後で本発明の方法による拡張の前のCD19
+ヒトB細胞のセル表面表現型(IgM、IgG、CD38及びCD138)を示すグラフである。象限儀中の、IgM、IgG、CD38又はCD138を発現する生存CD20
+又はCD19
+B細胞の平均頻度を、類似の結果が得られた2つの独立した実験から示す。
【
図2B】
図2Bは、MS5
Trio細胞の単分子膜上で6から7日間培養した後の結果としてエクスビボで拡張中のヒトB細胞のセル表面表現型(IgM、IgG、CD38及びCD138)を示すグラフである。これらの結果は、3以上の実験から得られた結果の代表的なものである。象限儀中の、IgM、IgG、CD38又はCD138を発現する生存CD20
+又はCD19
+B細胞の平均頻度を、類似の結果が得られた2つの独立した実験から示す。
【
図2C】
図2Cは、MS5
Trio細胞単分子膜上で14日間培養した結果としてエクスビボで拡張中のヒトB細胞のセル表面表現型(IgM、IgG、CD38及びCD138)を示すグラフである。象限儀中の、IgM、IgG、CD38又はCD138を発現する生存CD20
+又はCD19
+B細胞の平均頻度を、類似の結果が得られた2つの独立した実験から示す。
【
図3A】
図3は、アイソタイプによる抗体産生を示す一連のグラフである。
図3Aは、MS5
Trio細胞単分子膜上で6、10、及び14日間培養した結果としてエクスビボで拡張中のヒトB細胞の組織培養上清液中のIgMの産生を示すグラフである。棒は、2つの独立した実験からELISAによって決定された4サンプル中の平均(+標準誤差)抗体濃度を表す。
【
図3B】
図3Bは、MS5
Trio細胞単分子膜上で6、10、及び14日間培養した結果としてエクスビボで拡張中のヒトB細胞の組織培養上清液中のIgG産生を示すグラフである。棒は、2つの独立した実験からELISAによって決定された4サンプル中の平均(+標準誤差)抗体濃度を表す。
【
図3C】
図3Cは、MS5
Trio細胞単分子膜上で6、10、及び14日間培養した結果としてエクスビボで拡張中のヒトB細胞の組織培養上清液中のIgA産生を示すグラフである。棒は、2つの独立した実験からELISAによって決定された4サンプル中の平均(+標準誤差)抗体濃度を表す。
【
図4A】
図4は、拡張した細胞及び抗体の様々なアイソタイプの産生を示した一連のグラフである。
図4Aは、単一ヒトB細胞クローン(各点は個々のクローンを表す)及びそれらの拡張を数でMS5
Trio細胞単分子膜とともに培養した12日目に対して表すグラフである。これらの結果は2つの独立した実験からの代表的な結果である。
【
図4B】
図4Bは、ELISAで測定され、培養10日及び12日における
図4A中に示されたヒトB細胞クローンの組織培養上清液中のIgM及びIgG濃度を描いたグラフである。これらの結果は2つの独立した実験からの代表的な結果である。
【
図4C】
図4Cは、ELISAで測定され、培養12日における
図4A中に示されたヒトB細胞クローンの組織培養上清液中のIgMとIgGの濃度間の相関関係又は、単一B細胞クローン拡張とIgM又はIgG(n=69)の間の相関関係を描いたグラフである。これらの結果は2つの独立した実験からの代表的な結果である。
【
図5A】
図5は、特異の抗体の産生を示す一連のグラフである。
図5Aは、ELISAによる抗デスモグレイン1(DSG1)IgG抗体の測定(「吸収」)を、96ウェルプレートのウェル数(「プレートウェル数」)に対して示す代表的なグラフである。該プレートは、落葉性天疱瘡患者又は健康な対照から単離されたB細胞であり、MS5
Trio細胞とともに共培養されたものを含む。水平な実線は、該プレートの全96ウェルの平均吸光値を示す。水平な点線は、該プレートの全96ウェルの平均+2標準偏差の値を示す。1つのウェルは、その吸光値が点線を超えた場合に陽性と考えられる。
【
図5B】
図5Bは、抗原特異的B細胞(DSG1又はデスモグレイン3(DSG3)に対する特異性を有する)の頻度を示す棒グラフであり、尋常性天疱瘡に罹患している2個体から(PV1及びPV2)又は落葉性天疱瘡に罹患している2個体から(PF1及びPF2)の循環系B細胞(circulating B cells)から計算され、測定可能な抗DSG血清自己抗体を持たない健康な個体からの循環系B細胞(「健康な対照」、HC)と比較したものである。示された数値は、各個体について、DSG1-又はDSG3-特異的なIgG抗体に陽性なウェルの平均頻度を表す。11の個別の96ウェルELISAプレートが、各個体の各アッセイについて評価された。
【発明を実施するための形態】
【0008】
(発明の詳細な説明)
本発明は、培養中のB細胞を拡張及び分化するための効率的な方法の発見に基づいており、単細胞クローンから一定量のB細胞へ、最初のクローン及び免疫グロブリン遺伝子の発現に頼ることなく更に特徴づけることを可能とするだけの十分な量のモノクロナール抗体を産生する。更なる特徴づけは、当該技術分野で公知の、1つ以上のハイスループットスクリーニングアッセイを用いた、1つ以上の抗原特異性、機能、結合及び/又は中和の特徴づけを含んでもよい。本発明は、例えば、NIH-3T3細胞系(マウス繊維芽細胞系)のような、以前マウスB細胞を拡張及び分化するため用いられたフィーダー細胞系の、培養中でヒトB細胞を拡張する際の、特にモノクロナール抗体の産生に有用な量及び分化の状態における、欠点を克服している。
【0009】
定義-下記用語はバイオテクノロジー分野の当業者には十分よく理解されているものと思われるが、下記の定義は、本発明の説明を円滑化するため記載する。
「B細胞」という用語は、本明細書において用いられる場合、ヒトB細胞及びマウスB細胞などの哺乳類のBリンパ球を意味するが、これらに限定されるものではない。任意のB細胞を本発明の方法により拡張することができ、本発明の方法は、例えば、(a)B細胞の発達中にDNAの再配置によって生成する様々な抗体レパートリーを含むナイーブB細胞、及び(b)特異の抗原に対して曝されている、又は曝された記憶のあるB細胞のような抗体産生を含む。B細胞は、B細胞個体群、サブ個体群、又はその部分集合を含み、ナイーブB細胞、メモリーB細胞、活性化B細胞、B1細胞、胚中心B細胞、辺縁帯B細胞、制御性B細胞及び濾胞B細胞が挙げられるが、これらに限定されるものではないが、。
「モノクロナール抗体」という用語は、本明細書で用いられる場合、抗原のエピトープへの単一結合特異性及び親和性を示す抗体を意味する。「組換えモノクロナール抗体」は、モノクロナール抗体であって、組換え手法、例えば免疫グロブリン遺伝子配列を含有する組換え発現ベクター(例えば、VH及びVL cDNA)を用い、ホスト細胞に形質移入することによって産生されるものを指す。そのような組換え発現ベクターは、ヒト免疫グロブリン遺伝子配列を含んでもよく(例えば、ヒトVH及びヒトVL cDNA)、それらは次いでホスト細胞に形質移入される。組換えモノクロナール抗体はまた、マウスVH及びVL cDNAを含み、「ヒト化」抗体を産生するために操作され、それは、ヒトにおける治療、診断、又はセラノスティックスへの適用に用いることができる。
「抗原」という用語は、本明細書で用いられる場合、抗体の産生を刺激し、物質に特異的な抗体に結合することができる物質を意味する(すなわち、抗体は、結合特異性を有する抗原に対して特異的に結合することができる)。抗原は、タンパク質、ペプチド、脂質、炭水化物、核酸及び小分子(無機又は有機)の1つ以上を含む物質を含んでよい。抗原は、ヒトの体にとって異質な物質、ウィルス抗原、バクテリア抗原、寄生虫抗原、腫瘍抗原、毒素抗原、真菌性抗原、自己抗原、変容自己抗原(病気状態の結果として変容又は改変された自己抗原)、改変された抗原(病気状態の結果、健康な又は非病気状態の抗原に比較して、ミスフォールド、又は酸化、又は変容グリコシル化を伴う、又は過剰発現、又は変異したもの)を含んでもよい。
【0010】
「改変されたフィーダー細胞」及び「フィーダー細胞」という用語は、本明細書で用いられる場合、間葉系間質細胞又は胸腺上皮細胞が改変されて、例えばCD154(CD40L又はCD40リガンドとしても知られている)のようなCD40アゴニスト、及び例えばBlyS(Bリンパ球刺激因子、BAFF(B細胞活性化因子)としても知られている)のようなB細胞生存プロモーターを含む組合せ、又は、CD154、BLyS及びIL-21を含む組合せを発現するものを意味する。そのような改変されたフィーダー細胞の特定の例としては、改変された間葉系間質細胞系(例えば、MS-5細胞、ドイツ微生物細胞培養コレクション(DSMZ)、ブラウンシュヴァイク、ドイツ連邦共和国、よりカタログ番号ACC441で入手可能)及び改変された胸腺上皮細胞系(例えばTEC細胞)がある。例示としては、MS-5は、マウス間葉系間質細胞系であり、商業的に入手可能である。間葉系間質細胞系は、線維芽細胞系、例えばNIH/3T3細胞系(マウス線維芽細胞系NIH-3T3、ATCC CRL-1658として示されている)とは明確に区別され、間葉系間質細胞系は、線維芽細胞系とは異なる因子を分泌し、異なる機能(脈管形成、血管形成を含む)をサポートすることができることを注記する。例えば、MS-5細胞は、NIH 3T3細胞よりも著しく高いレベルのCXCL12(SDF-1)、CXCL-16、アンジオポエチン-1、MCP-1(単球化学吸引性タンパク質-1、CCL2としてもまた知られている)、NOV(過剰発現腎芽腫、CCN3としてもまた知られている)及びHGF(肝細胞増殖因子)を分泌する(Zhou et al., 2012, Br. J. Haematology, 157:297-311)。TEC又は 胸腺上皮細胞系(例えば、TEC-84、TEC-D11)はヒトリンパ球新生をサポートする(Beaudette-Ziatanovo, Exp. Hematol., 39(5): 570-579)。胸腺上皮細胞系は、生物学的変化を経験して間葉系細胞表現型をとるよう(上皮間葉転換)、例えば培養中で成長因子を変形させる処置により、誘発することができる。間葉系間質細胞又は胸腺上皮細胞は、CD154ポリペプチドのようなCD40アゴニスト、及び例えばBLySのようなB細胞生存プロモーターを含む組み合わせ、又はこれら2つのポリペプチドとIL-21を含む組合せを、発現するように、本発明の改変されたフィーダー細胞を形成する中で操作される。もしフィーダー細胞が、IL-21を発現するように操作できなかった場合は、IL-21は外因的に培養培地に培養期間中に添加されなければならない。培養期間は、適切には3週間未満、適切には2週間未満である。培養期間は、5、6、7、8、9、10、11、12またはそれより多い日数であってもよい。
【0011】
BLySは、表面で発現してもよく、又は、細胞表面から裂けた後、溶解性であってよい。代替的に、BLySは他の因子によって置き換えられ、該因子は、培養中のB細胞生存を促進し、BLyS断片、APRIL、CD22リガンド、CD22モノクロナール抗体、又はその断片が含まれる。BLySは、配列番号:01又は同じアミノ酸をコードしている類似のヌクレオチド配列を含む核酸配列によってコードされた285アミノ酸の糖タンパク質(配列番号:69)である。BLySは、本発明の改変されたフィーダー細胞によって組換えで産生され、BLySレセプターに結合し、シグナルをし、ヒトB細胞の拡張を促進することができる限りにおいて、その長さが異なってよい。その観点から、BLySは、膜結合タイプ又は溶解性の形態で産生することができる。例えば、アミノ酸136-285を含む溶解性の形態は、機能的に活性であることが認められている。
CD154ポリペプチドは任意のCD40アゴニストで置き換えられてよく、CD40抗体及びその断片、CD40リガンド、CD154ポリペプチド及びそのポリペプチド断片、小分子、合成薬、ペプチド(環状ペプチドを含む)、ポリペプチド、タンパク質、核酸、アプタマー、合成又は天然無機分子、模倣剤、及び合成又は天然有機分子であって、CD40を活性化することができるものが挙げられるがこれらに限定されるものではないが、。ある実施形態では、CD40アゴニストはCD40抗体である。CD40抗体は任意の形式であることが可能である。CD40に対する抗体は当該技術分野で公知である(例えば、Buhtoiarov et al., 2005, J. Immunol. 174:6013-22; Francisco et al., 2000, Cancer Res. 60:3225-31; Schwulst et al., 2006, 177:557-65を参照。これらは参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)。CD40アゴニストは、CD154ポリペプチドであってよく、フィーダー細胞の表面で発現しても、溶解性の形態で発現してもよい。ヒトCD154ポリペプチドが実施例において用いられ、261アミノ膜結合タンパク質(配列番号:68)または149アミノ酸溶解性タンパク質として認められ、配列番号:02又は配列番号:03を含むヌクレオチド配列、又は類似のヌクレオチド配列であって、同じアミノ酸をコードしているものを含むヌクレオチド配列によってコードされることができる。この観点から、CD154は、様々な長さの膜結合タイプ又は溶解性形式として産生することができる。CD40LとCD40の相互作用のために重要なアミノ酸は、アミノ酸128から258を含むことが示されている。
【0012】
ヒトIL-21(成熟ポリペプチド)は131アミノ酸(配列番号:70)を含み、配列番号:04を含むヌクレオチド配列、または類似のヌクレオチド配列であって同じアミノ酸をコードしているものによってコードされることができる。この点について、IL-21は、IL-21レセプターを通じた結合及びシグナリングの誘発が維持される限り、様々な長さで産生することができ、IL-21の結合及び機能的相互作用に重要なアミノ酸として、アミノ酸33、145、及び148が挙げられるがこれらに限定されるものではないことが示されている。フィーダー細胞は、IL-21を発現するように操作することができ、又はIL-21は外因的に培養に添加することができる。IL-21は、2ng/mLと1000ng/mLの間の量、適切には5ng/mL及び500ng/mLの間の量、適切には10ng/mL及び100ng/mLの間の量を添加することができる。
【0013】
「抗原にさらされた」という用語は本明細書において用いられる場合、抗原がB細胞に十分な濃度で、抗原(例えば、B細胞レセプター(BCR)に、又はB細胞がトリガー抗原(「特異の抗原」)に特異的な抗体を産生できるようにB細胞の分化を誘発するために結合する)によってB細胞が活性化されるために十分な時間、接触することを意味する。B細胞がインビボで抗原に曝される方法は数多くあり、以下に限られるものではないが、感染、注射、予防接種、免疫化、及び循環(例えば、腫瘍抗原、変容した自己抗原、自己抗原)が挙げられる。別の実施形態においては、B細胞はインビトロで特異の抗原に曝され、活性化されてもよい。例えば、米国特許出願公開US2015/0299655は、特異の(例えば公知の)抗原によるヒトB細胞のインビトロ免疫化のための方法を開示しており、該方法はヒト末梢血単核球の全個体群を抗原性組成物の存在下で培養することを含み、該抗原性組成物は、Tatタンパク質と結合する少なくとも1つの公知の抗原と抗原提示細胞のレセプターへのリガンド(後者は、C型レクチンレセプターに結合する糖類、免疫グロブリン又はそのフラグメント(例えば、Fc部分を含有するもの)であってFcレセプターに結合するもの)を含み、該方法は十分な時間及び十分な条件でB細胞がヒト末梢血単核球に存在し、抗原組成物によって免疫化される。
【0014】
抗原にインビボでさらされたB細胞は、末梢血又はその他の体液(例えば、滑液、又は浸出液)を含む生体試料、又は組織(例えば、個体の身体からの任意の組織であって、以下に限られるものではないが、骨髄、心臓組織、神経組織、腫瘍組織、患部組織、結合組織、脾臓組織、リンパ節組織、結合組織、胸腺組織及びその他のリンパ節組織が挙げられる)から、公知の方法を用いて単離してもよい。そのような方法としては、抗体で覆われた磁気ビーズを用いる分画と蛍光活性した細胞選別が挙げられる。免疫磁気選別において、陽性及び/又は陰性の選別をB細胞を単離するために行ってもよい。B細胞を単離するための試薬としては、B細胞単離のための1つ以上の抗体調製物を含む。B細胞上の細胞表面マーカーに特異的な(結合することができる)抗体としては、IgM、IgD、IgG、IgA、IgE、CD19、CD20、CD21、CD22、CD24、CD40、CD72、CD79a、CD79b又はこれらの組合せ(特にB細胞を単離するためのサブ個体群又は部分集合)、又は、例えばCD5、CD9、CD10、CD23、CD38、CD48、CD80、CD86、CD138又はCD148のような追加的な細胞表面分子を含む組合せに特異的な抗体が挙げられる。B細胞を免疫磁気分離又は選別によって単離するための試薬を形成するにあたり、抗体または抗体の組合せを、磁気ビーズに結合してよい。抗体は、当該技術分野で公知の蛍光ラベルに結合してよく、蛍光活性細胞選別によりB細胞を単離するための試薬を形成する。単一B細胞培養物を播種するためのB細胞の単離は、当該技術分野で公知の方法を用いて行うことが可能であり、該方法としては、限界希釈又は希釈クローニング及び蛍光活性細胞選別が挙げられるがこれらに限定されるものではない。
【0015】
本明細書で提供されるB細胞をインビトロ又はエクスビボで拡張する方法は、少なくとも1つのB細胞を対象から単離することを含む。該方法で用いられるB細胞は、対象の様々な領域から採取してよく、血液、脾臓、腹腔、リンパ節、骨髄、自己免疫疾患の箇所、炎症箇所又は対象中で移植拒絶が進行している組織が挙げられるがこれらに限定されるものではない。該細胞は、対象から当業者にとって用い得る任意の方法によって採取されてよい。採取された細胞個体群は、B細胞を含むべきであるが、混合細胞個体群であってもよい。対象は、Bリンパ球を有する任意の動物であってよいが、適切には哺乳類、適切には、馬、牛、豚、ネコ、イヌ又はニワトリのような家畜、又は適切にはヒトである。代替的には、該細胞は幹細胞由来であってよく、B細胞幹細胞、骨髄幹細胞、胚性幹細胞及び誘発された多能性幹細胞であって、インビトロでB細胞又はB細胞前駆体に発達するよう、本明細書に記載された方法において用いる前に適切に分化されたものが挙げられるがこれらに限定されるものではない。例えば、Carpenter et al., 2011, Blood 117: 4008-4011を参照。該B細胞はナイーブであっても、抗原にさらされた細胞であってもよい。
【0016】
B細胞は上述の単離及び選択方法又は当業者に公知のその他の方法を用いて単離されてよく、陽性及び陰性選択工程の両方を含んでよい。B細胞は100%B細胞未満であってよい。単離は、一群の細胞がインキュベーション培地、フィーダー細胞又はその他の非B細胞から分離されることを示すために、用いられる。単離とは、結果として単離された細胞が一定のレベルの純度又は均一性を有することを意味しない。該細胞は、当業者に用いることができる任意の方法により採取され、単離され、又は選択されてよい。例えば、B細胞は、適切なインキュベーションの後に付着細胞から非付着細胞を選択することによって採取されてもよい。細胞はまた、細胞表面マーカーの発現のためFACSソーティング又は抗体で覆われた磁気ビーズに結合する能力の違いによって選択されてもよい。混合個体群中の細胞選択の方法は、当業者には公知である。
【0017】
単離されたB細胞は、続いてフィーダー細胞系とともに培養され、該細胞系は、CD40アゴニスト、B細胞生存プロモーター及び場合によってはIL-21を発現するように改変された間質細胞系を含む。IL-21は外因的に培養培地に添加してよい。培養工程は、追加的な外因的のIL-4を添加することなく行われる。「追加的な外因的のIL-4抜きで」という用語は、培養物が、200pg/ml未満のIL-4、100pg/ml未満のIL-4、50pg/ml未満のIL-4、又は適切には5pg/ml未満が外因的に培養物に添加されることを含むことを示す。これは、米国特許第8,815,543号又は米国特許公開第2014/0065118号のいずれかによって報告されたマウスB細胞拡張方法と明確に異なっており、両方とも本明細書に参照により組み込まれる。本明細書で用いられる場合、B細胞の拡張は、細胞増殖の刺激のみならず、アポトーシス又はその他の細胞死の阻害を含む。本明細書で用いられる場合、「培養(culturing)」及び「インキュベーション(incubation)」は、細胞が細胞培養培地中に37℃及びCO25%で一定期間、示された添加剤(フィーダー細胞、サイトカイン、アゴニスト、その他の刺激分子又は培地であって、緩衝液、塩、糖、血清又は様々なその他の成分を含んでよい)とともに維持されることを意味するために用いられる。適切には、本明細書で用いられる場合のインキュベーション又は培養期間は、少なくとも48時間であるが、8日又はそれより多い日数までの任意の時間であってもよい。当業者は、培養またはインキュベーション時間が、適切な拡張を許容し、個々の部分集合の異なる細胞密度又は頻度を調整し、及び調査者が細胞の使用にあたり適切に時間を見計らうことを許容するため、変わり得ることを理解するであろう。このように、正確な培養期間は、当業者により経験的に決められてよい。培養期間はまた、フィーダー細胞がIL-21を発現するように改変されている場合、如何なる外因的なサイトカインも添加することなく行ってよく、又はIL-21が培養物に添加される唯一の外因的なサイトカインであってよい。
【0018】
該方法は、2倍から5×106倍を超えるB細胞の拡張を許容し得る。B細胞は2週間未満に培養中で少なくとも平均103、104又は105倍に拡張する。細胞は培養期間ののち、如何なる非B細胞も除く、又は陽性的にB細胞又は特異のB細胞の部分集合を選ぶために選択されてよい。培養工程は、抗原を含んでよく、又は、抗原を添加することなく完了してもよい。抗原を添加することなくとは、上記定義のとおりIL-4を添加することなくと同様である。拡張されたB細胞は、培養期間中にクラススイッチを経てよい。ある実施形態では、単離されたB細胞はIgMに陽性であり、本明細書に記載の方法によって拡張後、少なくとも、10%、15%、20%、25%の拡張されたB細胞がIgGを発現する。ある実施形態では、少なくとも、1%、2%、3%、4%、5%、7%、10%またはそれより多くの拡張されたB細胞がIgAを発現する。培養工程の前に細胞が単一B細胞に分離された場合は、得られた拡張されたB細胞は、モノクロナール抗体を産生及び単離するために用いてよい。モノクロナール抗原特異性は当業者に用いることができる方法を用いて決定することが可能であり、モノクロナール抗体はB細胞から精製することができる。
【0019】
本件開示は、本明細書に記載の特定の詳細な構造、構成の配置、又は方法の工程に限定されるものではない。本明細書に開示される構成及び方法は、続いての開示に照らして当業者に明らかである、様々なやり方で作り、実施し、用い、実行し及び/又は形成することが可能である。本明細書で用いられる語法及び用語は、記述の目的のためだけであり、特許請求の範囲を限定するものとみなされるべきではない。例えば、第一に、第二に、及び第三に、のような通常の指示語は、本明細書及び特許請求の範囲において様々な構造、又は方法の工程を指すために用いられ、何ら特定の構造又は工程、又はそのような構造又は工程のいかなる特定の順番又は配置を示すものと解釈することを意図するものではない。本明細書に記載の全ての方法は、別途本明細書において示される又は明らかに文脈と矛盾しない限り、任意の適切な順番で実施することが可能である。本明細書における任意の及び全ての実施例、又は例示的な言葉(例えば、「例えば...のような」)の使用は、単に開示を円滑にすることを意図したものであり、特許請求されていない限り何ら本開示の範囲を限定することを含意するものではない。本明細書のいかなる言葉、及び図面に示される如何なる構造も、特許請求されていない任意の要素が、開示された内容の実施のために不可欠であることを示していると解釈されるべきではない。本明細書で用いる場合、「含む(including)」、「含む(comprising)」又は、「有する(having)」及びその変化形は、その後に列記された要素及びそれと等価なものに加えて、追加的な要素も包含することを意味する。特定の要素を「含む(including)」、「含む(comprising)」又は、「有する(having)」として再掲された実施形態はまた、それら特定の要素「から成る」及び「実質的に...から成る」とも解釈される。
【0020】
本明細書における数値範囲の列挙は、本明細書において別途示されない限り、単に該範囲内の各分離した値を個々に参照する簡略な方法として用いることを意図するものであり、各分離した値は、あたかもそれが本明細書に個別に列挙されたかのように本明細書に組み込まれる。例えば、濃度範囲が1%から50%と述べられている場合、それは、例えば、2%から40%、10%から30%、又は1%から3%等のような値が本明細書中に明確に挙げられていることを意図している。これらは、何が具体的に意図されているかの例示に過ぎず、全ての可能な数値の組み合わせの間の値、列挙された最小値及び最大値を含め、明確に本件開示において述べられているものと考えられる。特に挙げられた量又は量の範囲を記載するための「約」という言葉の使用は、挙げられた量に非常に近い値、例えば、製作公差、測定における機器及び人による誤差等により説明することができる、あるいは自然と説明される値、がその量に含まれることを示すことを意味する。全ての百分率で示される量は、別途示されない限り、質量によるものである。
【0021】
本明細書中で引用される非特許又は特許文献を含む如何なる参照も先行技術を構成するとは認められない。特に、別途述べられない限り、本明細書におけるいかなる文献の参照も、それら文献のいかなるものも米国又はその他の国における当該技術分野における通常の一般的な知識の一部を形成するものとは認められないことが理解されるであろう。参照文献において著者が主張するものとして述べられる如何なる議論も、本明細書において引用される如何なる文献について、出願人はその正確性及び関連性について異議を唱える権利を留保する。本明細書において引用される全ての参考文献は、明示的に別途示されない限り、参照によりその全体が本明細書に完全組み込まれる。引用した参考文献に認められるいかなる定義及び/又は記述との間で不一致が生じた場合は、本件開示が管理する。
別途特定又は分脈上示されない限り、「1つの(a)」、「1つの(an)」及び「その(the)」という用語は、「1つ以上」を意味する。例えば、「タンパク質( a protein)」、又は「RNA(an RNA)」は「1つ以上のタンパク質」又は「1つ以上のRNA」をそれぞれ意味すると理解されるべきである。
以下の実施例は、例示とすることのみを意図するものであり、本発明または付属する特許請求の範囲のスコープを制限することを意図するものではない。
【実施例】
【0022】
(実施例1)
本実施例において、本発明によるヒトB細胞のインビトロ拡張のための方法が提供される。ヘパリン処置された血液を健康な大人のヒトドナーから収集した。血液単核細胞は、Sepmate50チューブ中のフィコール-メトリゾ酸ナトリウムの層上で300xgで10分間遠心分離により単離された。末梢血単核球(PBMCs)を緩衝液(PBS)で2倍に希釈し、続いて遠心分離し(300×g、10分)、MACS緩衝液(0.5%ウシ血清アルブミン(BSA、w/v)、2.5mM PBS中ETDA)の中で~3×107細胞/mlに再懸濁した。CD19+B細胞が、製造者の指示に従いCD19磁気ビーズを用いた陽性選択によって単離された。簡潔に述べると、単離された単核細胞は、CD19モノクロナール抗体で覆われたマイクロビーズ(60μLマイクロビーズ/mLのPBMC)と共に4℃で15分間培養され、10倍に希釈され、遠心分離により再ペレット化され、1mLのMACS緩衝液中で再懸濁された。細胞はあらかじめ湿らせたLSカラム(速やかで優しく細胞を分離することを可能とするコーティングで覆われた強磁性の球体で構成されるマトリックスを含むカラム)に磁場の下で搭載された。続いてカラムは、追加的な6mLのMACS緩衝液と共に洗浄された。CD19+細胞は、カラムを磁場から外し、10%FCS(ウシ胎児血清)を含む3mLのRPMI1640培地をカラムに添加し、別のコニカルチューブに溶出液を収集することにより溶出された。生存細胞の濃度を、顕微鏡下で死細胞のトリパン青染色とともに血球計算盤を用いて決定した。B細胞純度は、免疫蛍光染色及びフローサイトメトリー分析により、98%以上のCD19+細胞頻度とともに決定された。追加的な選択の繰り返しを、純度を高めるために用いることができる。
【0023】
ヒトB細胞をインビトロで拡張することは、最初、マウスB細胞拡張を誘発した培養条件を用いて試みられた。精製されたヒトB細胞は、BLyS及びCD154(NIH-3T3-m154/hBLyS)を発現するNIH-3T3細胞を含む間質細胞単分子膜上で、ヒトIL-21を添加して、マウスB細胞培養を模した培養条件下(米国特許出願番号US20140065118号)で培養された。精製されたヒトB細胞をインビトロで拡張することは、続いて、3T3-CD154
EAT又は3T3-CD154
BEAT細胞を用いて、マウスB細胞培養を模した培養条件下で、IL-2、IL-4、IL-21、IL-10及びAPRILを含む外因的な組換えサイトカイン混合物の存在の下で、試みられた。簡潔に述べると、NIH-3T3-m154/hBLyS細胞は、NIH-3T3-CD154
EAT 細胞を生成するためにマウスCD154及びマウスBlySをコードしたcDNA、又はNIH-3T3-CD154
BEAT細胞を生成するためにマウスCD154、マウスBlyS、及びマウスIL-21をコードしたcDNAとともにスーパー形質移入された。これらcDNAを発現する間質細胞系が単離され、サブクローンされ、マウス及びヒトB細胞の拡張をサポートするそれらの能力についてアッセイされた。間質細胞は、24-ウェルプレートに、1mLの培養培地中3x10
5細胞/ウェルの密度で、培養物に精製されたヒトB細胞(3×10
3/ウェル)を添加する少なくとも12時間前に播種された。ヒトB細胞が培養物に添加された時、各ウェルからの培地は、IL-4(10ng/mL)を含む新鮮な培養培地と交換された。培養4日後、各ウェルに、IL-4(10ng/mL)を含む追加的な培地(0.7mL)が添加された。培養6日目、B細胞と間質細胞が、0.4mLのトリプシン-EDTA処理の後、収集された。細胞懸濁液は遠心分離によりペレット化され、2mLの培養培地中で再懸濁された。B細胞数が顕微鏡検査(血球計数器)により定量され、B細胞の頻度が、フローサイトメトリー分析を伴う免疫蛍光染色によって決定された。しかしながら、これらの条件下で著しいマウスB細胞拡張が観察された一方で、ヒトB細胞の著しい生存又は拡張はこれらの試みにおいて観察されなかった(例えば、拡張は130倍未満であった)。したがって、NIH-3T3細胞がヒトBLyS及びヒトCD154のcDNAとともに形質移入され、CD154
+BLyS
+細胞と共に単離され、拡張され、引き続きサブクローニングされた。 これらの条件下で、9~12日間の培養期間中の最大ヒトB細胞拡張は、NIH-3T3-mCD154/hBLyS細胞単分子膜を用いて観察されたもの(米国特許出願US20140065118)を超えて著しく増加しなかった。何故なら、12日間でのヒトB細胞拡張はたったの130±17倍(平均±標準誤差;
図1A)であったからである。ヒトB細胞拡張は、外因的に、IL-2、IL-4、IL-21、IL-10及びAPRILを含むヒト組換えサイトカイン混合物を添加することにより著しくは改善されなかった。したがって、一連の追加的なヒト及びマウス間質細胞がそのヒトB細胞拡張をサポートする能力について評価された。
【0024】
多様なヒト間質細胞及びマウス間質細胞は、以下のベクター及びクローン選択方法を用いて、ヒトBLyS及びヒトCD154とともに形質移入された。ヒトBLySをコードしているcDNAが、BLyS-IRES-eGFP DNA構造を生成するために用いられ、CD154発現のための免疫蛍光染色から独立した(GFP-緑色蛍光タンパク質)選択マーカーを提供した。ヒトCD154 cDNA及びヒトBLyS-IRES-eGFP DNAは独立して、LTRをプロモーターとして有するレトロウィルスベースの発現ベクター(pMSCVpuroベクター)にクローンされ、商業的に入手可能なレトロウィルスパッケージング細胞系を用いたレトロウィルスの形質導入によって間質細胞系に形質移入された。形質移入の後、安定なピューロマイシン(5μg/mL)-抵抗細胞が続いて培養中に選択された。CD154を発現し、BLySを分泌する細胞は、間質細胞の細胞表面を、APC(アロフィコシアニン)-接合CD154モノクロナール抗体、 APC+GFP+(CD154+BLyS+)細胞で蛍光活性細胞選別を用いて単離されたものとともに染色することによって可視化された。単離されたCD154+BLyS+細胞は培養中で拡張され、サブクローンされ、ヒトB細胞をインビトロでサポートし、拡張する能力について試験された。間質細胞でヒトB細胞をサポートし、拡張する能力を試験されたものとしては、マウスMS-5細胞、骨髄間質細胞系;AFT024細胞、マウス胎児肝臓間質細胞系;OP9細胞、マウス骨髄間質細胞系;ヒトA549細胞、肺胞基底上皮腺癌細胞系;ヒトEA-Hy926細胞、ヒト血管内皮細胞系;HS-5細胞、ヒト線維芽細胞様間質細胞系;TEC-84細胞、ヒト胸腺間質細胞系;ヒト包皮線維芽細胞であって、PA317 LXSN 16E6E7細胞系(米国培養細胞系統保存機関、CRL-2203(登録商標))によって生成された両種指向性レトロウィルスLXSN16E6E7を用いて不死化されたもの;及び同様に変形されたヒト臍帯静脈内皮細胞が挙げられる。結果は、ほとんどの間質細胞系でヒトBLyS及びCD154を発現するものは、B細胞生存又は拡張をサポートすることができないか、形質移入されたマウスNIH-3T3細胞よりもヒトB細胞の拡張をサポートする効率が低かったかのいずれかであった。驚くべきことに、また予期せずして、MS-5細胞及びTEC-84細胞は、培養中でヒトB細胞をサポート及び拡張する能力があり、それに続くMS-5細胞クローンも、細胞分裂を妨げるため細胞をマイトマイシンCと共に処置することによって間質細胞の繁殖を阻む著しい必要性なしにヒトB細胞の拡張をサポートするために最適な成長特徴を有することが証明された。
【0025】
ヒトCD154及びBLySを発現するよう改変されたMS-5細胞及びTEC-84細胞は、さらにIL-21を発現するよう同様に改変された。ヒトIL-21cDNAが青色蛍光タンパク質(mBFP2)を開裂可能な2Aペプチド配列を経由して発現できるようにするIL-21-2A-ペプチド-mBFP2 DNA構造を生成するため用いられた。IL-21-2A-ペプチド-mBFP2 DNAはpMSCVピューロベクターのピューロマイシン遺伝子に代わって挿入された。安定なピューロマイシン(5μg/mL)-耐性細胞が続いて培養中に選択された。改変されたフィーダー細胞であってAPC+GFP+BFP+(CD154+BLyS+IL-21+)であったものが蛍光活性細胞選別を用いて単離され、各間質細胞系の単一細胞クローンが続いて単離され、ヒトB細胞繁殖をサポートする能力について試験された。
【0026】
本発明による改変されたフィーダー細胞はヒトBLyS及びマウスCD154cDNA(NIH-3T3-mCD154/hBLyS)とともに形質移入されたNIH-3T3細胞と、血液から単離されたヒトB細胞の拡張をサポートし、誘発するフィーダー細胞としての能力を比較された。この比較において、生存ヒトCD19
+B細胞は、新鮮なフィーダー細胞の単分子膜の培養物それぞれに添加された。ヒトB細胞はNIH-3T3-mCD154/hBLyS細胞単分子膜上で外因的なヒトIL-4(2ng/ml)とともに7日間培養された。IL-4(2ng/ml)を含む追加的な培地が培養物に第2日及び第4日に添加された。B細胞は第7日に単離され、新鮮なNIH-3T3-mCD154/hBLyS細胞単分子膜上に外因的なヒトIL-21(10ng/ml)とともに5日間移された。ヒトCD154及びBLyS(MS5
Duo細胞)を形質移入されたMS-5細胞を用いた培養物中、B細胞はMS5
Duo細胞上で追加的なIL-4及びIL-21を添加して6日間培養され、続いて外因的なIL-21とともに14日まで培養された。ヒトCD154、BLyS及びIL-21(MS5
Trio細胞)を形質移入されたMS-5細胞を用いた培養物中、B細胞はMS5
Trio細胞上で、IL-4を添加して6日間培養され、続いて外因的なサイトカイン抜きで14日目まで培養された。第12日又は14日に、B細胞及び間質細胞はそれぞれウェルから収集され分析された。
図1は、ヒトCD154及びBLyS(MS5
Duo)を発現したMS-5クローン、またはヒトCD154、BLyS及びIL-21(MS5
Trio)をNIH-3T3-mCD154/hBLyS細胞と共に発現したMS-5クローンを含む改変されたフィーダー細胞の比較を、インビトロのヒトCD19
+B細胞の拡張との関連において示す(拡張倍は、培養の開始時に培養物中に存在したB細胞数に対する比である)。改変されたフィーダー細胞がMS5
Duo細胞又はMS5
Trio細胞である場合、ヒトB細胞は、第10日に12,018±5,523-及び21,611±3,576-倍に、第12日までに61,547±16,134-及び80,761±28,979-倍にそれぞれ拡張した(
図1A)。NIH-3T3-mCD154/hBLySフィーダー細胞との場合、ヒトB細胞は、第7日までに3.4-倍に、第12日までに~130-倍に拡張した。また、MS5
Duo細胞又はMS5
Trio細胞のいずれかと一緒のB細胞の培養物は、IL-4が存在しなくても、同様又はより良い結果を増幅及び分化において発揮することができることは注目すべきである(
図1B及び2B-C)。したがって、本発明の改変されたフィーダー細胞は、ヒトB細胞の拡張を、NIH-3T3-mCD154/hBLyS細胞をフィーダー細胞とする場合に比べて著しく促進することができる。本発明の改変されたフィーダー細胞は、この能力を試験された大多数のマウス及びヒト細胞系に比べて、著しくより最適的なヒトB細胞の拡張のための間質細胞単分子膜を提供する。
【0027】
(実施例2)
本実施例で例示されるのは、本発明の改変されたフィーダー細胞の、インビトロで拡張されたヒトB細胞の分化を誘発する能力である。インビトロ、MS5
Duo又はMS5
Trio培養システム中で拡張されたヒトB細胞を、分化の表示であるマーカーについて分析した。ヒトB細胞表現型は、PerCP-、FITC-、PE/Cy7、FITC、及びPE/Cy7-接合CD19(HIB19)、IgM(MHM-88)、IgG(HP6017)、CD38(HIT2)、及びCD138(MI15)モノクロナール抗体を用いて評価された。生存細胞はフローサイトメトリーによって分析された。MS5
Duo又はMS5
Trio培養システム中で拡張されたヒトB細胞は、CD19
+及びCD20
+のままであり、それらがB細胞起源であることが確認された(
図2)。概ね80%の新たに単離されたヒト血液B細胞は、改変されたフィーダー細胞とともに培養される前に、IgMを発現し、~4%がIgGをともに発現した(
図2A)。改変されたフィーダー細胞単分子膜とともに培養して第7日に、B細胞の半分がIgMを発現し、~16%がIgGを発現した(
図2B)。培養の終わりまでに、MS5
Trio培養システム中で拡張されたほとんどのB細胞は、細胞表面IgMを発現したが、IgM
-IgG
-IgA
+CD19
+B細胞の頻度は拡張した(
図2B-C)。10%未満の新たに分離されたB細胞がCD38又はCD138を、改変されたフィーダー細胞と共に培養される前に発現し(
図2A)、これは活性化B細胞上に発現した活性化マーカーであり、プラズマ細胞上に高い密度で発現した。培養第6-7日までには、16%のB細胞がMS5
Trio培養システム中で拡張し、CD38活性化マーカーを発現した(
図2B)。培養第14日までに、56%までのこれらB細胞がCD38を発現し、23%のB細胞がCD38とCD138の両方を発現した(
図2C)。全く同じではないにしても類似の結果が、MS5
Duo培養システム中で拡張されたB細胞について得られた。本発明の改変されたフィーダー細胞とともに培養されたヒトB細胞のいくつかは、それらの抗体分泌プラズマブラストへの活性化及び分化と整合的な表現型を獲得した。
【0028】
(実施例3)
本実施例で例示されるのは、本発明の改変されたフィーダー細胞の、インビトロで拡張されたヒトB細胞の抗体産生を誘発する能力である。インビトロ、MS5Duo又はMS5Trio培養システム中で拡張されたヒトB細胞を、抗体産生について分析した。ヒトIgG、IgM及びIgA抗体レベルは、酵素結合免疫アッセイ(ELISA)によって決定された。プレートは、細胞培養上清液(バルクB細胞培養由来であれば1:10に希釈されたもの、又は単一B細胞培養由来であれば希釈されていないもの)がプレートに添加される前に、1%のBSAを含むトリス-緩衝生理食塩水でブロックした。抗IgG1抗体と接合したアルカリ性ホスファターゼが、結合した抗体を検出するために用いられ、1Mジエタノールアミン/0.5M MgCl2が4-ニトロフェニルホスファート二ナトリウム塩六水和物とともに検出試薬として用いられた。405nmでの吸収を読み取った。対照プレートは、リン酸緩衝食塩水(PBS)中1%BSAを用いてコートし、上述のとおり、培養上清液及び検出試薬を添加する前にブロックした。抗体濃度は、商業的に入手できるヒトIgM、IgG及びIgA標準を用いて各ELISAから得られた検量線に基づいて定量した。
【0029】
本明細書の実施例2に記載されたインビトロ拡張中のヒトB細胞の表現型の変化と整合するように、第6日までインビトロ、MS5
Trio培養システム中で拡張されたヒトB細胞の組織培養上清液中で、分泌されたIgMは検出されなかった(
図3A)。しかしながら、IgM濃度は第10日までには7.8μg/mLに、第14日には92μg/mLに増加した。同様に、IgGレベルは、第14日までには、2.4μg/mLまで著しく増加した(
図3B)。IgAレベルはまた、第10日及び14日に増加したが、0.3μg/mL未満に留まった(
図3C)。全く同じではないにしても類似の結果が、MS5
Duo培養システム中で拡張されたB細胞について得られた。インビトロ、MS5
Duo又はMS5
Trio培養システム中で拡張されたヒトB細胞とは対照的に、NIH-3T3-mCD154/hBLyS、NIH-3T3-CD154
EAT、又は3T3-CD154
BEAT間質細胞単分子膜上で同様の条件下で培養されたヒトB細胞は、計測可能な抗体を組織培養上清液に分泌しなかった。したがって、本発明の改変されたフィーダー細胞上で拡張した結果として、いくつかのヒトB細胞は、エクスビボ拡張中に分化し、主にIgM及びIgG抗体を分泌する。
【0030】
本発明のある態様において、特異の抗原、典型的には公知の抗原に結合するヒトモノクロナール抗体を製造する方法が提供される。該方法は、ヒトB細胞を単離するステップ、単離されたB細胞を単一細胞に分離するステップ、単離されたB細胞(単一細胞)を本発明の改変されたフィーダー細胞の存在下で、少なくとも数において104倍の拡張を2週間未満で培養中で達成するための条件の下、十分な時間培養するステップ(例えば、単一細胞から10,000細胞への拡張。マルチウェルプレートのマルチプルウェル上の平均拡張数)であって、培養物中の拡張されたB細胞クローンから産生されたものがモノクロナール抗体であるものを含む。この態様は、抗原選択の誘導又は更なる抗原感作を誘発する試みにおいて、単離されたB細胞と本発明の改変されたフィーダー細胞の共培養物に、抗原を直接添加することを排除する(すなわち、単離されたB細胞が改変されたフィーダー細胞の存在下で培養される時に、本発明の方法によればモノクロナール抗体を産生するために不必要であるため、外因的な抗原が存在しない)。
【0031】
この態様を例示するため、単一ヒトB細胞がMS5
Trio間質細胞単分子膜上で、96ウェルプレート中、外因的にサイトカインを添加することなく培養された。これらの限界希釈アッセイにおいて、ヒトB細胞コロニーが60から70%のウェルで観察され、これはクローン効率が60%から70%であることを反映している。これらのB細胞コロニーを含むウェル中で、単一B細胞は12日後に平均46,689±4,105-倍に拡張した(
図4A)。培養第10日及び第12日における組織培養上清液のIgM濃度は、それぞれ5.5±1.2μg/mL及び9.3±1.4μg/mLであった(
図4B)。培養第10日及び第12日におけるIgG濃度は、それぞれ3.5±0.5μg/mL及び10.5±0.8μg/mLであった。個々のB細胞クローン中でのIgM及びIgG分泌の間に何ら相関はなく、IgM分泌とB細胞拡張との間にも相関はなかったが、IgG分泌とB細胞拡張との間には著しい正の相関が認められた(
図4C)。したがって、個々のウェル中のいくつかのB細胞は、アイソタイプスイッチを経験し、いくつかのB細胞はまた、抗体分泌細胞に分化した。各B細胞クローンについて産生された著しい抗体濃度は、それによってそれらのBCR特異性の決定を可能とする。
【0032】
(実施例4)
本発明の方法の更なる工程は、各B細胞クローンから産生したモノクロナール抗体の特徴づけ、例えば、当該技術分野で公知の方法を用いて、モノクロナール抗体の抗原に対する特異性を決定することを含んでもよい。本発明の方法に従って産生したモノクロナール抗体の特異性を決定するため、当該技術分野で公知のいくつかの方法のうち任意の1つを用いてよい。例えば、抗原アレイが今では入手可能であり、これは少量の希釈されていないB細胞クローンからの細胞培養上清液とともに100までの異なる抗原のスクリーニングを可能とし、モノクロナール抗体が特異性を有する抗原を確認する効率を、抗体産生数と並行的に著しく増加させる。簡潔に述べると、精製されたビオチン化した抗原は、ストレプトアビジンで覆われた96ウェルマイクロタイタープレートに、0.2又は0.4mmのベタ印刷ピンを用いて直接接触印刷によって滴下される。印刷されたプレートは、洗浄せずに置かれ、プレートは使用準備ができるまで4℃で保管される。スクリーニングのため、B細胞クローン上清液が直接ウェルに添加され、もし望むのであれば、場合によってはブロッキング工程を行う(例えばBSA)。印刷されたアレイ中で抗原に特異的なビオチン化されたヒト抗体が、陽性対照及び位置決めマーカーとして用いられる。B細胞クローン上清液は抗原アレイに添加され、一晩4℃で培養された。緩衝液(PBS+0.1%ツイン)で洗浄した後、アレイは2時間、抗ヒト抗体(ヒト抗体を検出するために)又は抗マウス抗体(マウス抗体を検出するために)とともに培養され、蛍光検出のため蛍光体、又は比色検出のため酵素(例えば、アルカリホスファターゼ)及び非色基質でラベルされた。抗原アレイは、最適化及び定量検出のためイメージキャプチャ及び画像化ソフトウェアを使用してハイスループット顕微鏡で分析することが可能である。
【0033】
同様にハイスループット抗原マイクロアレイが記載され、それによれば、25,000を超える抗原-抗体反応テストを1週間未満で実施することができる。あるシステムにおいて、タンパク質抗原のアレイが、アルデヒドでコートされたガラススライドに共有結合される。アルデヒドガラススライドへの抗原の結合は、安定化するのに24時間必要とし、少なくとも6カ月間は安定性が証明された。抗原マイクロアレイチップは、ガラススライドの上に、固体ピン成膜技術及び商業的に入手可能なロボティックシステムを用いて印刷された。このシステムを用いると、20μl程度の少ない培養上清液をアレイ表面上で抗原と共に培養することができる。モノクロナール抗体の免疫グロブリンクラスの決定が、抗原特異性の決定と同時に望まれる場合、アレイに結合したヒト抗体の存在は、二つの異なる及び区別できる検出分子に接合した抗ヒトIgG及び抗ヒトIgM抗体の混合物により行うことが可能である(例えば、アレイ読み取り機によるレーザースキャンは、3から4つの異なるレーザーを異なる検出のために組み込むことができる)。
【0034】
本発明の方法の更なる工程は、モノクロナール抗体の特徴づけを含んでもよく、例えば、モノクロナール抗体の単離であって(i)公知技術を用いて培養培地からのモノクロナール抗体を精製すること、及び/又は(ii)公知技術を用いてモノクロナール抗体の組換え産生のため真核生物発現ベクターにクローンすることができる、可変部重(VH)抗体鎖をコードするcDNA及び可変部軽(VL)抗体鎖をコードするcDNAを生成するために全RNAをB細胞クローンから単離することを含む。その観点から、本発明の方法を用いて拡張し、分化されたヒトB細胞クローンは採取され、B細胞クローンの細胞から全RNAの抽出が続いてもよい。全RNAを単離するため当該技術分野において公知の数多くの方法のうち任意の1つを用いてよく、例えば、商業的に入手可能なミニプレップキットを用いる方法がある。ヒトVH及びVL鎖遺伝子は、当該技術分野で公知のプライマー(例えば、配列番号:5-12を参照)及び逆転写ポリメラーゼ連鎖反応を用いて各cDNA分子を作るため選択的に増幅されてよい。ヒト免疫グロブリン(Ig)重(H)及び軽(L)鎖の転写物は、外側PCRプライマーを用いて増幅することができる。免疫グロブリン-特異cDNAは、続いて外側PCR増幅における鋳型として用いられる。簡潔に述べると、各モノクロナールB細胞拡張からの1-2μlのcDNAが、外側VHPCRプライマー及び適切な定常領域プライマー(例えば、配列番号:42-67参照)と共にアイソタイプ特異的BCR転写物を増幅するために鋳型として用いられる。必要であれば、外部増幅からのPCR生成物を第二ラウンドの内部増幅の鋳型として用いることができる(例えば、配列番号:13-41参照)。いずれの場合でも、プラスミド特異的配列を、フォワード又はリバースプライマーに、再発現分析のため選んだベクターに簡単にクローンできる抗体転写物を生成するため、添加することができる。生産的なIg再構成は、生殖系Ig配列に対して、公に入手可能なソフトウェアを用いて比較することができ、V(D)J遺伝子ファミリーの用途を決定するため商業的に入手可能なソフトウェアを用いて分析した。生殖細胞系列V、D及びJ配列を用いて、変異頻度を決定することができた。VH-D-JH、VK-JK及びVλ-Jλ転写配列及び系統樹を、平均パーセント同一性に基づいて、商業的に入手可能なソフトウェアを用いて構築することができた。一度特徴づけられたら、VH及びVL配列は、必要に応じて適切なアイソタイプのヒト又はマウスモノクロナール抗体の組換え体を、その後の真核生物細胞中で発現及びモノクロナール抗体タンパク質の産生とともに、産生するために用いることができた。例えば、VH鎖cDNA及びVLcDNAは、発現のために用いられるホスト細胞のため選択された発現ベクターにクローンすることができ、発現ベクターはホスト細胞中に共形質移入される。任意の数のホスト細胞を、組換えヒト又はマウスモノクロナール抗体を産生するために用いてよく、哺乳類細胞(例えば、293T細胞、チャイニーズハムスター卵巣細胞等)、バキュロウィルス、昆虫細胞、バクテリア細胞、及び植物細胞が挙げられるが、これらに限られるわけではない。形質移入されたホスト細胞は、続いてクローンされ、抗体を産生するため十分な条件の下、十分な時間、成長させられる。産生プロセスは、大量の抗体を作るため、当該技術分野で公知の方法及び標準的な産業システムを用いてスケールアップすることができる。モノクロナール抗体は続いて、当該技術分野で公知の、例えば、タンパク質A及び/又はタンパク質Gクロマトグラフィー(IgGのため)を用いて、又は、所望のIgA、IgM、又はIgDに特異的な抗免疫グロブリン抗体を用いるような、標準的な免疫精製技術を用いて精製してもよい。
【0035】
(実施例5)
本実施例では、特異の抗原、典型的には公知の抗原、に結合するヒトモノクロナール抗体を産生するための方法が例示され、そこでは、抗原への曝露がインビボで起こり、インビボでのこの抗原への曝露の結果、ヒト個体がこの抗原に対する結合特異性を有する抗体を産生することができるB細胞を有する。ある例示されたこの方法の適用においては、個体は病態、不調、又は病気の過程を有していてよく、その結果、その個体のB細胞が病態、不調、又は病気の過程と関連又はこれらによって引き起こされる1つ以上の抗原に対し曝露されていてもよい。そのような曝露によって産生される抗体は、状態、不調、又は病気の過程の発達又は進行のいずれかに貢献してもよく(「病理的抗体」)、又はその逆に、状態又は病気の発達を阻害又は妨害する試みにおいて産生されていてもよい(「治療的抗体」)。該方法は、B細胞をそのようなヒト個体から単離し、単離されたB細胞を単一細胞に分離し、インビトロで単離されたB細胞(単一細胞)を、本発明の改変されたフィーダー細胞の存在下で、培養中で2週間未満の間に少なくとも数において104倍の拡張を達成するための条件及び十分な時間、培養する工程を含み、培養中の拡張されたB細胞クローンから産生されたものはモノクロナール抗体である。この共培養から産生した各モノクロナール抗体は、次に抗原特異性を評価してよい。
【0036】
本方法の例示として、尋常性天疱瘡(PV)又は落葉性天疱瘡(PF)を有する個体から単離されたB細胞からモノクロナール抗体が産生された。いずれかのこれら病気を有する個体は、臨床症状、組織学、及び直接免疫蛍光検査による発見から診断された。この研究は、治験審査委員会の許可のとともに行われ、書面による告知に基づく同意を得ていた。この調査に関与した個体は、天疱瘡患者であって、天疱瘡以外の如何なる体内又は炎症性傷害の治療も受けていなかった。本明細書に記載の方法を用いて、単離されたB細胞及び改変されたフィーダー細胞をインビトロで共培養した。簡潔に述べると、天疱瘡を有する患者からの循環系血液B細胞が単離された。MS5
Trio細胞を96ウェルプレートで少なくとも12時間、単離及び精製された天疱瘡患者からの血液B細胞を添加する前に培養した。限界希釈のため、0.2mlの新鮮な組織培養培地でB細胞(10細胞/mL)を含むものが各ウェルに、如何なる外因的なサイトカインも添加することなく添加された。培養培地の半分は第6日及び第9日に新鮮な培地と交換した。各ウェルから第12日に培養上清液を収集し、上清液について、天疱瘡と関連する自己抗体の存在を評価した。その観点から、天疱瘡の両方の形態(PV及びPF)が自己抗体によって、重層上皮又は粘膜及び皮膚の細胞表面抗原を引き起こした。典型的には、これらの病理的抗体は細胞表面デスモソーム上のカルシウム依存付着分子、とりわけPFではデスモグレイン1(DSG1)、PVではデスモグレイン3(DSG3)及び/又はデスモグレイン1に結合する。したがって、上清液はヒト抗DSG1及びヒト抗DSG3抗体の存在を、酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)によって試験した。
図5Aに示すように、シングル96ウェルプレートの試験において、平均して3から4ウェルがELISAで決定されたところヒト抗DSG1抗体を産生したB細胞クローンを含んだ。11の96ウェルプレートが各患者サンプルに用いられ、理論的には10,560個のB細胞が播種された。全ての11プレートからの陽性ウェルの数、及び単一B細胞培養システムのクローニング効率に基づき、抗原特異的血液B細胞の割合が計算された。
図5Bに示すように、約0.3%から0.5%の循環系B細胞が、天疱瘡患者中でDSG1又はDSG3に対する抗原特異性を有する(
図5B、PV及びPF)。ELISAにおいてDSG1及びDSG3と反応性であるB細胞クローンはまた、天疱瘡を有さず、測定可能な抗DSG血清抗体を有さない健康な個体(「健康な対照」HC)から単離された(
図5B)。したがって、単一B細胞を拡張するため及びB細胞を測定可能な、特異の抗原、典型的には公知の抗原に結合し、抗原への曝露がインビボで起こるヒトモノクロナール抗体を産生するよう誘発するためのインビトロの方法が証明された。代替的に、ナイーブB細胞であって、前記抗原に結合する能力を有するものを確認し、それらのモノクロナール抗体産生物を単離することができる。
本発明のまた別の態様は、以下のとおりであってもよい。
〔1〕インビトロでB細胞を拡張する方法であって、
(a)少なくとも1つのB細胞を単離するステップと、
(b)ステップ(a)からの少なくとも1つのB細胞を、CD154ポリペプチド(又はCD40アゴニスト)及びBLySポリペプチド(又はB細胞生存因子)を発現するよう改変された間質細胞系を含むフィーダー細胞系とともに、IL-21と組合せて、かつ外因的なIL-4を添加することなしに培養するステップであって、該B細胞をフィーダー細胞系と、ヒトB細胞を数において拡張させるのに十分な条件の下、かつ十分な時間、培養するステップを含む、方法。
〔2〕前記B細胞がヒトB細胞である、前記〔1〕に記載の方法。
〔3〕前記IL-21が外因的に培養物に添加される、前記〔1〕又は〔2〕に記載の方法。
〔4〕前記フィーダー細胞がIL-21ポリペプチドを発現するように改変される、前記〔1〕又は〔2〕に記載の方法。
〔5〕前記B細胞が、数において少なくとも平均10
4
倍に拡張される、前記〔1〕から〔4〕のいずれか1項に記載の方法。
〔6〕ステップ(b)における少なくとも1つのB細胞のフィーダー細胞系との培養が、2週間未満行われる、前記〔1〕から〔5〕のいずれか1項に記載の方法。
〔7〕1つのB細胞が単離される、前記〔1〕から〔6〕のいずれか1項に記載の方法。
〔8〕少なくとも1つのB細胞がステップ(a)の単離の前に抗原にさらされる、前記〔1〕から〔7〕のいずれか1項に記載の方法。
〔9〕ステップ(b)における少なくとも1つのB細胞のフィーダー細胞系との培養が、抗原の存在下で行われる、前記〔1〕から〔8〕のいずれか1項に記載の方法。
〔10〕ステップ(b)の培養が、抗原の添加を行うことなく行われる、前記〔1〕から〔9〕のいずれか1項に記載の方法。
〔11〕少なくとも1つのB細胞が、抗原に結合することによって単離される、前記〔1〕から〔10〕のいずれか1項に記載の方法。
〔12〕ステップ(b)の後に、少なくとも10%の拡張されたB細胞がIgGを発現する、前記〔1〕から〔11〕のいずれか1項に記載の方法。
〔13〕ステップ(b)の後に、少なくとも2.5%の拡張されたB細胞がIgAを発現する、前記〔1〕から〔12〕のいずれか1項に記載の方法。
〔14〕前記フィーダー細胞が前記〔28〕から〔35〕のいずれか1項に記載のフィーダー細胞である、前記〔1〕から〔13〕のいずれか1項に記載の方法。
〔15〕モノクロナール抗体を産生する方法であって、
(a)B細胞を単離するステップと、
(b)ステップ(a)からのB細胞を単一のB細胞に分離するステップと、
(c)複数のB細胞クローンを生成するため、単一のB細胞を、CD154ポリペプチド(又はCD40アゴニスト)及びBLySポリペプチド(又はB細胞生存因子)を発現するよう改変される間質細胞系を含むフィーダー細胞系とともに、IL-21と組合せて、かつ外因的なIL-4を添加することなしに培養するステップであって、該B細胞をフィーダー細胞系と、ヒトB細胞を数において拡張させ、モノクロナール抗体を産生するB細胞クローンに分化するのに十分な条件の下かつ十分な時間、培養するステップを含む、方法。
〔16〕さらに(d)複数のB細胞クローンにより産生された少なくとも1つのモノクロナール抗体の抗原特異性を評価するステップを含む、前記〔15〕に記載の方法。
〔17〕さらに(e)複数のB細胞クローンにより産生された少なくとも1つのモノクロナール抗体を精製するステップを含む、前記〔15〕又は〔16〕に記載の方法。
〔18〕前記B細胞がステップ(a)の単離の前に抗原にさらされる、前記〔15〕から〔17〕のいずれか1項に記載の方法。
〔19〕前記B細胞がヒトB細胞である、前記〔15〕から〔18〕のいずれか1項に記載の方法。
〔20〕前記B細胞がマウスB細胞又はマウスB細胞の部分集合である、前記〔15〕から〔18〕のいずれか1項に記載の方法。
〔21〕抗原がステップ(c)に含まれていない、前記〔15〕から〔20〕のいずれか1項に記載の方法。
〔22〕ステップ(c)の後に、少なくとも10%の拡張されたB細胞がIgGを発現する、前記〔15〕から〔21〕のいずれか1項に記載の方法。
〔23〕ステップ(c)の後に、少なくとも2.5%の拡張されたB細胞がIgAを発現する、前記〔15〕から〔21〕のいずれか1項に記載の方法。
〔24〕前記フィーダー細胞が前記〔28〕から〔35〕のいずれか1項に記載のフィーダー細胞である、前記〔15〕から〔23〕のいずれか1項に記載の方法。
〔25〕哺乳類B細胞をインビトロで拡張及び分化するためのキットであって、フィーダー細胞、生体試料からB細胞を単離するための少なくとも1つの抗体、及びB細胞を末梢血試料から収集するための試薬を含み、該フィーダー細胞が前記〔28〕から〔35〕のいずれか1項に記載のフィーダー細胞であり、該抗体がCD19抗体であってよい、キット。
〔26〕改変されたフィーダー細胞と単離されたB細胞を培養するために必要な、1つ以上の試薬、場合によりIL-21、を更に含む、前記〔25〕に記載のキット。
〔27〕B細胞から産生されるモノクロナール抗体を特徴づけるためであって、1つ以上の試薬、場合によりIgM、IgG、IgA又はIgEに特異的な抗体、を更に含む、前記〔25〕又は〔26〕に記載のキット。
〔28〕フィーダー細胞系が、CD154ポリペプチド、BLySポリペプチド、及び場合によっては、IL-21ポリペプチドを発現するよう改変される間質細胞系を含む、細胞系。
〔29〕前記改変される間質細胞系が間葉系間質細胞系を含む、前記〔28〕に記載のフィーダー細胞系。
〔30〕前記改変される間質細胞系が線維芽細胞系を含む、前記〔28〕に記載のフィーダー細胞系。
〔31〕フィーダー細胞系が、培養物中で2週間未満の間に、ヒトB細胞を数において少なくとも平均10
4
倍に拡張することができる、前記〔28〕から〔30〕のいずれか1項に記載のフィーダー細胞系。
〔32〕間質細胞系がMS-5細胞系を含む、前記〔28〕から〔31〕のいずれか1項に記載のフィーダー細胞系。
〔33〕前記CD154ポリペプチドが、配列番号68又はその機能的断片若しくは変種を含む、前記〔28〕から〔31〕のいずれか1項に記載のフィーダー細胞系。
〔34〕前記BLySポリペプチドが配列番号69又はその機能的断片若しくは変種を含む、前記〔28〕から〔33〕のいずれか1項に記載のフィーダー細胞系。
〔35〕前記IL-21ポリペプチドが配列番号70又はその機能的断片若しくは変種を含む、前記〔28〕から〔33〕のいずれか1項に記載のフィーダー細胞系。
【配列表】