(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-02
(45)【発行日】2022-02-10
(54)【発明の名称】アオリ板昇降装置
(51)【国際特許分類】
B62D 33/027 20060101AFI20220203BHJP
【FI】
B62D33/027 Z
B62D33/027 J
(21)【出願番号】P 2019228901
(22)【出願日】2019-12-19
【審査請求日】2020-09-15
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 2019年JKアイデア作品展、令和1年11月25日開催
(73)【特許権者】
【識別番号】595120954
【氏名又は名称】三栄工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076406
【氏名又は名称】杉本 勝徳
(72)【発明者】
【氏名】石角 行弘
(72)【発明者】
【氏名】石角 光弘
(72)【発明者】
【氏名】石角 孝男
【審査官】塚本 英隆
(56)【参考文献】
【文献】実公平06-029165(JP,Y2)
【文献】米国特許第05419602(US,A)
【文献】登録実用新案第3041809(JP,U)
【文献】韓国公開特許第10-2005-0105078(KR,A)
【文献】中国特許出願公開第106915387(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第107804380(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第110435523(CN,A)
【文献】実開昭59-149575(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 33/02
B62D 33/023
B62D 33/027
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の荷台の側辺に配備された側アオリ板の前端部を上下昇降自在に案内する前側案内機構が、前記荷台の前角部の近傍に配備され、前記荷台の後辺に配備された後アオリ板の左右端部と前記側アオリ板の後端部を上下昇降自在に案内する後側案内機構が、前記荷台の後角部の近傍に配備されるとともに、前記側アオリ板を昇降させる側板昇降駆動部と、前記後アオリ板を昇降させる後板昇降駆動部と、を有するアオリ板昇降装置において、
前記前側案内機構が、前記荷台の前角部の近傍に固定配備されて上下方向に延びる第1案内部材と、前記側アオリ板の前端部に設けられていて前記第1案内部材
が上下摺動自在に
隙間を有して装着される
第1収容空間を有する第2案内部材とから構成され、
前記第1案内部材とつながれていて上下に延びる第1連結条は、前記第2案内部材に上下に沿って形成されるとともに前記第1案内部材よりも狭い溝幅に形成された第1案内溝に隙間を有して収容されて上下方向に案内されるようになっており、
前記後側案内機構が、前記側アオリ板の後端部に設けられて上下方向に延びる第3案内部材と、前記後アオリ板の左右端部に設けられていて前記側アオリ板の第3案内部材に
形成された第2収容空間内に隙間を有して上下摺動自在に装着される第4案内部材とから構成され、
前記第4案内部材は、上下に延びる第2連結条を介して前記後アオリ板の左右端部に連結され、前記第2連結条は、前記第3案内部材に上下に沿って形成されるとともに前記第4案内部材よりも狭い溝幅に形成された第2案内溝に隙間を有して収容されて上下方向に案内されるようになっており、
前記側板昇降駆動部および前記後板昇降駆動部の駆動により前記側アオリ板および前記後アオリ板の双方が前記荷台よりも下方に移動したときに、前記後側案内機構も前記荷台よりも下方に移動していることを特徴とするアオリ板昇降装置。
【請求項2】
前記側板昇降駆動部および前記後板昇降駆動部が、モータと、前記側アオリ板および前記後アオリ板と前記モータの間に介設される電動シリンダと、を含んで成ることを特徴とする請求項1に記載のアオリ板昇降装置。
【請求項3】
前記側板昇降駆動部および前記後板昇降駆動部の駆動を制御する駆動制御部と、前記駆動制御部に設けられていて制御指令無線信号を受信する受信部と、前記受信部に向けて前記制御指令無線信号を発するリモート入力部と、を備えて成ることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のアオリ板昇降装置。
【請求項4】
前記側アオリ板および/または前記後アオリ板の下方位置にある障害物を検知する障害物センサと、前記障害物センサが前記障害物を検知したとき
に前記側板昇降駆動部および/または前記後板昇降駆動部を制御して前記側アオリ板および/または前記後アオリ板の下降を停止させる下降停止制御部と、を備えていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のアオリ板昇降装置。
【請求項5】
前記荷台の側辺および後辺にそれぞれ垂下板部が垂設され、前記側アオリ板および後アオリ板のそれぞれの下辺に、前記荷台の垂下板部と係脱自在に係合して前記荷台の側辺および後辺からの前記側アオリ板および後アオリ板の離間を抑止する係止爪部が設けられていることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のアオリ板昇降装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トラックなどの車両の荷台に配備された側アオリ板と後アオリ板を上下に昇降させるアオリ板昇降装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従前一般の車両として、平ボディーと称されるトラックには、側アオリ板が荷台の左右の側辺に蝶番で回転自在に軸支され、後アオリ板が荷台の後辺に蝶番で回転自在に軸支さ
れている。この場合、荷台の左右から荷物を積み下ろす際に側アオリ板が左右の外方に回されて荷台の左右辺が開かれ、荷台の後から荷物を積み下ろす際に後アオリ板が後方に回されて荷台の後辺が開かれるようになっている。この平ボディートラックは、積み下ろしの際に荷台の左右側方や後方にアオリ板展開用のスペースを必要とするので、狭い場所での積み下ろしが難しく、他車、自転車あるいは人の通行の邪魔になりやすいという問題があった。
【0003】
そこで、下記の特許文献1に記載されているような従来のアオリ板昇降装置が提案されている。このアオリ板昇降装置は、車両の荷台の左右に配備された側アオリ板の前端部を上下昇降自在に案内する前側案内機構が荷台の前角部に立設され、側アオリ板の後端部と後アオリ板の左右端部を上下昇降自在に案内する後側案内機構が荷台の後角部に立設されていて、左右の側アオリ板と後アオリ板を板昇降駆動部の駆動により昇降させるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、前記文献記載のアオリ板昇降装置では、側アオリ板および後アオリ板がそれぞれの最下位置まで下がったとしても、後側案内機構は荷台上に立ったままになっているので、荷台に対して貨物を積み降ろしする上で、後側案内機構が作業の邪魔になり、フォークリフトによる積み降ろし操作もスムースに行なえないという問題があった。また、利用者が側アオリ板や後アオリ板の下方にある障害物の存在に気付かずに、側アオリ板や後アオリ板を下降させると、各アオリ板が障害物に当接して損傷を招くおそれもあった。一方で、後アオリ板が下降すると車両後部のハザードランプは後アオリ板で隠されるので、ハザードランプから放射された点滅光は後アオリ板の側方から洩れる弱い光となる。そのために、後方から来る他車や自転車に対して停車中であることをしっかりと知らせられないという問題もあった。
【0006】
本発明は、上記した従来の問題点に鑑みてなされたものであって、側アオリ板および後アオリ板の双方を下降させたときの荷台に対する貨物の積み降ろしを容易に行なうことのできるアオリ板昇降装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明に係るアオリ板昇降装置は、車両の荷台の側辺に配備された側アオリ板の前端部を上下昇降自在に案内する前側案内機構が、荷台の前角部の近傍に配備され、荷台の後辺に配備された後アオリ板の左右端部と側アオリ板の後端部を上下昇降自在に案内する後側案内機構が、荷台の後角部の近傍に配備されるとともに、側アオリ板を昇降させる側板昇降駆動部と、後アオリ板を昇降させる後板昇降駆動部と、を有するアオリ板昇降装置において、前側案内機構が、荷台の前角部の近傍に固定配備されて上下方向に延びる第1案内部材と、側アオリ板の前端部に設けられていて第1案内部材が上下摺動自在に隙間を有して装着される第1収容空間を有する第2案内部材とから構成され、第1案内部材とつながれていて上下に延びる第1連結条は、第2案内部材に上下に沿って形成されるとともに第1案内部材よりも狭い溝幅に形成された第1案内溝に隙間を有して収容されて上下方向に案内されるようになっており、後側案内機構が、側アオリ板の後端部に設けられて上下方向に延びる第3案内部材と、後アオリ板の左右端部に設けられていて側アオリ板の第3案内部材に形成された第2収容空間内に隙間を有して上下摺動自在に装着される第4案内部材とから構成され、第4案内部材は、上下に延びる第2連結条を介して後アオリ板の左右端部に連結され、第2連結条は、第3案内部材に上下に沿って形成されるとともに第4案内部材よりも狭い溝幅に形成された第2案内溝に隙間を有して収容されて上下方向に案内されるようになっており、側板昇降駆動部および後板昇降駆動部の駆動により側アオリ板および後アオリ板の双方が荷台よりも下方に移動したときに、後側案内機構も荷台よりも下方に移動していることを特徴とするものである。尚、前記の「荷台よりも下方に移動する」とは、側アオリ板、後アオリ板または後側案内機構のそれぞれの上面が、荷台の上面よりも低い位置に下がることはもとより、荷台の上面に対して面一になることも含むものである。
【0008】
また、前記構成において、側板昇降駆動部および後板昇降駆動部が、モータと、前記側アオリ板および前記後アオリ板と前記モータの間に介設される電動シリンダと、を含んで成ることを特徴とするものである。
【0009】
そして、前記した各構成において、側板昇降駆動部および後板昇降駆動部の駆動を制御する駆動制御部と、駆動制御部に設けられていて制御指令無線信号を受信する受信部と、受信部に向けて制御指令無線信号を発するリモート入力部と、を備えて成ることを特徴とするものである。
【0010】
更に、前記した各構成において、側アオリ板および/または後アオリ板の下方位置にある障害物を検知する障害物センサと、障害物センサが障害物を検知したときに側板昇降駆動部および/または後板昇降駆動部を制御して側アオリ板および/または後アオリ板の下降を停止させる下降停止制御部と、を備えていることを特徴とするものである。
【0011】
また、前記構成において、荷台の側辺および後辺にそれぞれ垂下板部が垂設され、側アオリ板および後アオリ板のそれぞれの下辺に、荷台の垂下板部と係脱自在に係合して荷台の側辺および後辺からの側アオリ板および後アオリ板の離間を抑止する係止爪部が設けられていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係るアオリ板昇降装置によれば、側板昇降駆動部および後板昇降駆動部の駆動により側アオリ板および後アオリ板の双方が下降して荷台から没すると、第3案内部材および第4案内部材も側アオリ板および後アオリ板に同伴して下降し荷台よりも下方に移動する。すなわち、荷台の後角部近傍にある後側案内機構が荷台よりも下方に移動するのである、従って、側アオリ板および後アオリ板をそれぞれの最下位置まで下げた状態において、公報記載車両のように後側案内機構が荷台上に立ったままになっているといったことがないから、荷台に対して貨物を積み降ろしする上で、作業の邪魔にならず、フォークリフトによる積み降ろし操作もスムースに行なうことができる。無論、側アオリ板および後アオリ板は上下に昇降して荷台の周囲を開閉するので、従前車両のように側アオリ板と後アオリ板が側方と後方に展開するといったことがないから、側方と後方に余分な展開スペースを必要とすることもない。
【0013】
また、側板昇降駆動部および後板昇降駆動部が、モータと、前記側アオリ板および前記後アオリ板と前記モータの間に介設される電動シリンダと、を含んで成るものでは、汎用の電動シリンダが備えるボールネジおよびボールネジナットの作用により、モータ回転が止まると、電動シリンダのピストンピンはその位置で停止して動かないので、側アオリ板および後アオリ板はそのときの高さ位置に停止固定される。すなわち、側アオリ板および後アオリ板を固定するための部品や治具を別途必要にしないという効果がある。
【0014】
そして、前記した各構成において、駆動制御部と、受信部と、リモート入力部とを備えて成るものでは、リモート入力部から発せられた制御指令無線信号を受信部が受信し、受信された制御指令無線信号の内容に基づいて、駆動制御部が側板昇降駆動部および後板昇降駆動部の駆動を制御する。従って、側アオリ板および後アオリ板の昇降動作、高さ位置の調整、および停止動作を離れた位置から、危険性なく、利便性良く、迅速に行なわせる
ことができる。
【0015】
更に、前記した各構成において、障害物センサと、下降停止制御部とを備えているものでは、障害物センサがアオリ板下方の障害物を検知すると、下降停止制御部が板昇降駆動部を制御してアオリ板の下降を停止させるから、利用者が障害物の存在に気付かずに側アオリ板や後アオリ板を下降させて障害物を損傷させるといったことを未然に防ぐことができる。
【0016】
また、荷台の側辺および後辺にそれぞれ垂設された垂下板部と、側アオリ板および後アオリ板のそれぞれの下辺に設けられた係止爪部とを備えるものでは、側アオリ板および後アオリ板が最上位置に上がったときに、係止爪部が荷台の垂下板部と係合する。従って、荷台上の貨物が多い場合や重量物である場合に、貨物が外向きに移動しようと側アオリ板や後アオリ板の内面を押圧しても、係止爪部の役割により側アオリ板および後アオリ板が荷台の側辺および後辺から離れることがなく、貨物の横動による側アオリ板および後アオリ板の破損を防ぎ、貨物の荷崩れを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の一実施形態に係るアオリ板昇降装置が配備された車両を示す側面図である。
【
図2】前記車両を示した図であって、(a)は背面図、(b)は左右の側アオリ板および後アオリ板のすべてを最下位置まで下降させた状態を示す背面図である。
【
図3】前記車両を模式的に示す一部破断した平面図である。
【
図4】前記側アオリ板を示した図であって、(a)は側面図、(b)は(a)におけるA-A線矢視図である。
【
図5】前記後アオリ板を示した図であって、(a)は背面図、(b)は(a)におけるB-B線矢視図である。
【
図6】前記側アオリ板用の側板昇降駆動部の一方を示す部分側面図である。
【
図7】前記側板昇降駆動部による側アオリ板の動作を示す図であって、(a)は側アオリ板が最上位置にあるときの部分側面図、(b)は側アオリ板が最下位置にあるときの部分側面図である。
【
図8】前記後アオリ板用の後板昇降駆動部による後アオリ板の動作を示す図であって、(a)は後アオリ板が最上位置にあるときの部分側面図、(b)は後アオリ板が最下位置にあるときの部分側面図である。
【
図9】前記後板昇降駆動部の一部分を示す部分斜視図である。
【
図10】前記側アオリ板または後アオリ板の下端に設けた係止爪部の態様を示す説明図である。
【
図11】前記アオリ板昇降装置の主な制御系統を示すブロック構成図である。
【
図12】本実施形態に係るアオリ板昇降装置による車両の動作を示す斜視説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。尚、以下に述べる実施形態は本発明を具体化した一例に過ぎず、本発明の技術的範囲を限定するものでない。ここに、
図1は本発明の一実施形態に係るアオリ板昇降装置が配備された車両を示す側面図、
図2は前記車両を示した図であって、(a)は背面図、(b)は左右の側アオリ板および後アオリ板のすべてを最下位置まで下降させた状態を示す背面図、
図3は前記車両を模式的に示す一部破断した平面図、
図4は前記側アオリ板を示した図であって、(a)は側面図、(b)は(a)におけるA-A線矢視図、
図5は前記後アオリ板を示した図であって、(a)は背面図、(b)は(a)におけるB-B線矢視図である。
各図において、この実施形態に係るアオリ板昇降装置1は、オープンで水平な荷台3が運転席2の後ろに設けられた所謂平ボディートラックなどの車両Tに適用される。このような車両Tは、荷台3の左右の側辺3C,3Cに配備されて荷台3の側方を開閉する側アオリ板5,5と、荷台3の後辺3Dに配備されて荷台3の後方を開閉する後アオリ板6とを備えており、荷台3は車両基台32の上面に設置されている。
【0019】
そして、荷台3の左右の前角部3A,3Aの近傍には鳥居部4がかけ渡されて立設されている。この鳥居部4の一方の柱部には、アオリ板昇降装置1の制御主体である制御装置10と、制御指令信号を手動入力するためのキーボードなどで構成される有線入力部11と、が取り付けられている。また、鳥居部4の左右の柱部には、側アオリ板5の前端部5C,5Cを上下昇降自在に案内する前側案内機構7,7が配備されている。荷台3の左右の後角部3B,3Bの近傍には、後アオリ板6の左端部6Cおよび右端部6Dと側アオリ板5,5の後端部5D,5Dを上下昇降自在(矢印U方向)に案内する後側案内機構8,8、が配備されている。そして、この車両Tは、側アオリ板5,5を昇降駆動させる側板昇降駆動部9,9,9,9と、後アオリ板6を昇降駆動させる後板昇降駆動部18,18とを有している。
【0020】
前記した左右の前側案内機構7,7は、鳥居部4の左右の柱部に連結条24,24を介して接続固定されていて上下方向に延びる平面視正方形状の第1案内部材23,23と、側アオリ板5,5の前端部5c、5cに固設されていて第1案内部材23,23が上下摺動自在に装着される収容空間22,22を有する第2案内部材20,20と、を備えて構成されている。個々の第1案内部材23とつながれた連結条24は側アオリ板5側の第2案内部材20に上下に沿って形成された案内溝21に収容されて上下方向に案内される。
【0021】
前記した後側案内機構8,8は、側アオリ板5,5の後端部5D,5Dに固設されていて上下方向に延びる第3案内部材25,25と、後アオリ板6の左端部6Cおよび右端部6Dに固設されていて側アオリ板5,5の第3案内部材25,25の収容空間27,27内に上下摺動自在に装着される平面視正方形状の第4案内部材28,28と、を備えて構成されている。個々の第4案内部材28は、上下に延びる連結条29を介して後アオリ板6の端部6C,6Dに連結され、連結条29は側アオリ板5側の第3案内部材25に上下に沿って形成された案内溝26に収容されて上下方向に案内される。
【0022】
側アオリ板5の下方位置で第2案内部材20と第3案内部材25の下端部近傍には、
図4に示すように、レーザ光線Bを前後水平方向に発するレーザ照射器13と、レーザ照射器13からのレーザ光線Bを検知する障害物センサ14と、が配備されている。この障害物センサ14は、後で詳述する駆動制御部76の入力側に通信接続されている。そして、駆動制御部76の機能は、側アオリ板5の下方位置にある障害物Rがレーザ照射器13からのレーザ光線Bを遮ったときに、その障害物Rの存在を検知するものである。
【0023】
一方、後アオリ板6の下方位置で左右の第3案内部材25,25の下端部近傍には、
図5に示すように、レーザ光線Bを左右水平方向に発するレーザ照射器30と、レーザ照射器30からのレーザ光線Bを検知する障害物センサ31と、が配備されている。この障害物センサ31も駆動制御部76の入力側に通信接続されている。この駆動制御部76の機能も、前述と同様に、後アオリ板6の下方位置にある障害物Rがレーザ照射器31からのレーザ光線Bを遮ったときに、その障害物Rの存在を検知するものである。また、後アオリ板6は、
図2および
図5に示すように、車両Tの後部のハザードランプ16から放射された点滅光Eを通過させる貫通孔17が、荷台3の上面よりも下方に移動した位置にあるときの後アオリ板6におけるハザードランプ16の対面位置に形成されている。
【0024】
そして、左右各々の側アオリ板5の下方位置の前後には、
図6および
図7に示すように、既述した側板昇降駆動部9,9が前後一対で配備されている。各側板昇降駆動部9では、車両基台32の下面32Aに垂設して固定された固定用杆35に固定板36が固設され、固定板36に連結杆37が枢軸38を介して上下揺動自在に軸支されている。連結杆37にはクランク杆39の一端が上下揺動自在に接続され、クランク杆39の他端に連結杆40が接続されている。連結杆40にはクランク機構34が接続されている。クランク機構34は、枢軸41を介して上下揺動自在に連結杆40に連結されたアーム42と、枢軸43を介して上下揺動自在にアーム42に連結されたアーム44と、から構成されている。アーム44は、側アオリ板5の下辺5Bに固着された基台部46に固定部45を介して取り付けられている。
【0025】
また、固定用杆35の上部には、固定板47が固設され、固定板47に連結杆37が枢軸38を介して上下揺動自在に軸支されている。動力伝達機構50に固定された固定板48は枢軸49を介して上下揺動自在に固定板47に接続されている。動力伝達機構50は歯車列などで構成され、モータ51と電動シリンダ52の間に介設されてモータ51の回動駆動力を調整し電動シリンダ52に動力伝達を行なう。電動シリンダ52は汎用の構成であり、例えばシリンダケーシング内に回転自在に配備されたボールネジと、シリンダケーシング内に配備されてボールネジと螺合しケーシング芯方向に移動するボールネジナットと、ボールネジナットに取り付けられていてシリンダケーシングから出没するピストンピン53と、から構成されている。ピストンピン53の先端は、クランク杆39の途中に固定された固定板55に枢軸54を介して上下揺動自在に接続されている。
【0026】
この側板昇降駆動部9では、モータ51が例えば正転駆動すると、その正転駆動が電動シリンダ52に伝わってピストンピン53をシリンダケーシングから進出させる。これにより、ピストンピン53がクランク杆39を矢印L(
図7(b))のように押し下げて側アオリ板5を下降(矢印U1方向)させる。反対に、側アオリ板5を上昇(矢印U2方向(
図10参照))させる際にはモータ51を逆転駆動させる。これにより、ピストンピン53がシリンダケーシング内に縮退し、クランク杆39を引き上げて側アオリ板5を上昇させるようになっている。
【0027】
後アオリ板6の下方位置には、
図8および
図9に示すように、既述した後板昇降駆動部18が左右一対で配備されている。一対の後板昇降駆動部18,18を用いたのは、昇降する後アオリ板6を安定して支持するためであり、後アオリ板6が不安定にならなければ1つの後板昇降駆動部18でも構わない。各後板昇降駆動部18では、車両基台32の下面32Aに垂設して固定された固定用杆56の下部に固定板57が固設され、固定板57に連結杆58が枢軸59を介して上下揺動自在に軸支されている。連結杆58にはクランク杆60の一端が上下揺動自在に接続され、クランク杆60の他端に連結杆61が接続されている。連結杆61にはクランク機構67が接続されている。クランク機構67は、枢軸62を介して上下揺動自在に連結杆61に連結されたアーム63と、枢軸64を介して上下揺動自在にアーム63に連結されたアーム65と、から構成されている。アーム65は、後アオリ板6の下辺6Bに固定部66を介して取り付けられている。
【0028】
また、固定用杆56の途中には固定板68が固設されている。既述した側板昇降駆動部9と同様構成の動力伝達機構50に固定された固定板69は、枢軸70を介して上下揺動自在に固定板68に接続されている。動力伝達機構50は、既述したと同様構成のモータ51および電動シリンダ52と一体的に構成されている。電動シリンダ52のピストンピン53の先端は、クランク杆60の途中に固定された固定板72に枢軸71を介して上下揺動自在に接続されている。尚、一対の後板昇降駆動部18,18のクランク杆60,60の間は、連結杆73(
図9参照)で連結されて同じ動きをさせるようになっている。
この後板昇降駆動部18は、既述した側板昇降駆動部9と同様に、モータ51の正転駆動によりクランク杆60を矢印K(
図8(b))のように押し下げて後アオリ板6を下降(矢印U1方向)させたり、またはモータ51の逆転駆動によりクランク杆60を引き上げて側アオリ板5を上昇(矢印U2方向)させたりする。
【0029】
他方で、
図10に示すように、荷台3の側辺3Cおよび後辺3Dの下方位置の車両基台32の下面32Aには、それぞれ垂下板部74が垂設されている。そして、側アオリ板5の下辺5Bおよび後アオリ板6の下辺6Bに、荷台3の垂下板部74と係脱自在に係合する係止爪部15が複数固設されている。これらの係止爪部15,15,15,・・・は横から見て略Jの字フック状に形成されており、側アオリ板5および後アオリ板6がそれぞれの最上位置まで上昇(矢印U2方向)したときに荷台3の垂下板部74と係合するから、貨物からの外向きの力が矢印Nのようにかかっても、側アオリ板5および後アオリ板6が荷台3の側辺3Cおよび後辺3Dから離間することを抑止するようになっている。
【0030】
そして、このアオリ板昇降装置1では、
図11に示すように、制御装置10が、側板昇降駆動部9,9および後板昇降駆動部18,18の駆動を制御する駆動制御部76の構成を含んでいる。駆動制御部76は例えば汎用のマイクロコンピュータなどで実現され、このマイクロコンピュータは、中央演算処理ユニットCPU、検出データや算出データを一時的に格納したり制御プログラムデータを予め格納したりするメモリM、および検出データや出力駆動データを入出力するデータバスDBなどで構成されている。データバスDBの入力ポートIPには、有線入力部11と、リモート入力部12からの制御指令無線信号を受信する受信部77と、左右の障害物センサ14,14と、後部の障害物センサ31と、がデータ通信可能に接続されている。データバスDBの出力ポートOPには、側板昇降駆動部9および後板昇降駆動部18のモータ51,51,51,51,51,51を回転駆動させるためのドライバD1~D6、レーザ照射器13,13,30を駆動させるためのドライバD7~D9、および有線入力部11やリモート入力部12からの手動入力によりハザードランプ16を点滅させるためのドライバD10が通信接続されている。
【0031】
上記のように構成されたアオリ板昇降装置1の作用を次に説明する。車両Tの側アオリ板5および後アオリ板6の双方が、
図1および
図2(a)のようにそれぞれの最上位置にあるときから説明を始める。例えば、車両左側の側アオリ板5を下げたい場合、利用者は有線入力部11またはリモート入力部12のキーボード中にある左側板用の下降ボタンを押す。すると、下降に係る制御指令信号が駆動制御部76のデータバスDBに取り込まれて中央演算処理ユニットCPUで処理される。そして、中央演算処理ユニットCPUはドライバD1、D2を作動させて左側の側板昇降駆動部9,9のモータ51,51を正転駆動させる。これにより、側アオリ板5が矢印U1のように下降していき、予め設定されている最下位置で自動停止する。このとき、側アオリ板5の上面5Aは荷台3の上面よりも下方に移動しており、荷台3の左側が開放される(
図7(b)参照)。同時に、第2案内部材20および第3案内部材25の上面も荷台3の上面よりも下方に移動している。この場合、リモート入力部12を用いて無線で所望動作を入力すると、側アオリ板5および後アオリ板6の昇降動作、高さ位置の調整、および停止動作などを離れた位置から、危険性なく、利便性良く、迅速に行なわせることができる。
【0032】
このように、側アオリ板5は、従前車両の側アオリ板のように側方に展開するといったことがないから、荷台3の左右側方に余分な展開スペースを必要とせず、狭い積み降ろしエリアであっても支障を生じにくく、受け渡し台に極力近づけて車両Tを停車させることができる。尚、側アオリ板5の下降にあたり側アオリ板5の直下位置に障害物Rがあると、電源ON後に起動されたドライバD7により作動しているレーザ照射器13からのレーザ光線Bが、障害物Rに当たって左側の障害物センサ14に届かないことから、障害物Rの存在が検知される。これにより、中央演算処理ユニットCPUの持つ下降停止制御部75の機能が、側板昇降駆動部9,9を緊急停止させる。この下降停止制御部75の機能は、後アオリ板6側の障害物センサ31により後板昇降駆動部18,18を緊急停止させる機能も併有しており、例えばプログラムデータとしてメモリMに予め格納されている。
【0033】
引き続き、後アオリ板6を下げたい場合、利用者は有線入力部11またはリモート入力部12のキーボード中にある後板用の下降ボタンを押す。すると、下降に係る制御指令信号が中央演算処理ユニットCPUで処理される。そして、中央演算処理ユニットCPUはドライバD5、D6を作動させて後板昇降駆動部18,18のモータ51,51を正転駆動させる。これにより、後アオリ板6が矢印U1のように下降していき、予め設定されている最下位置で自動停止する。このとき、後アオリ板6の上面6Aは荷台3の上面よりも下方に移動しており、荷台3の後方が開放される(
図2(b)および
図8(b)参照)。同時に、後アオリ板6に随伴して、左右の第4案内部材28,28の上面も荷台3の上面より下方に移動する。すなわち、車両Tの左側後部の後側案内機構8は、
図12に示すように、荷台3の上面よりも下方に移動しているのである。このような特徴的な動作は、車両右側の側アオリ板5および後アオリ板6の双方をそれぞれの最下位置まで下げたときも、左側の後側案内機構8と同様になされる。すなわち、車両Tの右側後部の後側案内機構8も荷台3の上面よりも下方に移動するのである。
【0034】
この場合、最下位置にある後アオリ板6の貫通孔17,17はハザードランプ16,16の対面位置に位置するので、ハザードランプ16,16から放射された点滅光Eは貫通孔17,17を直に通過して後方へ発せられる。この点滅光Eにより、後アオリ板6を下げたにも拘わらず、後方から来る他車や自転車に停車中であることを確実に知らせることができる。
【0035】
上記したように、この実施形態のアオリ板昇降装置1によれば、側板昇降駆動部9および後板昇降駆動部18の駆動により側アオリ板5および後アオリ板6の双方が下降すると、第3案内部材25および第4案内部材28も側アオリ板5および後アオリ板6に同伴して下降し荷台3の上面よりも下方に移動する。すなわち、荷台3の後角部3Bの近傍にある後側案内機構8が荷台3の上面よりも下方に移動するのである、従って、側アオリ板および後アオリ板をそれぞれの最下位置まで下げた状態で、公報記載車両のように後側案内機構が荷台上に立ったままになっているといったことがないから、荷台3に貨物を積み降ろしする上で、作業の邪魔にならず、フォークリフトによる積み降ろし操作もスムースに行なうことができる。
【0036】
また、電動シリンダ52が備えるボールネジおよびボールネジナットの作用により、モータ51の回転が止まると、電動シリンダ52のピストンピン53はその位置で停止して動かないので、側アオリ板5および後アオリ板6はそのときの高さ位置に停止固定される。すなわち、側アオリ板5および後アオリ板6を固定するための部品や治具を別途必要としない。
【0037】
そして、側アオリ板5および後アオリ板6が最上位置に上がったときに、係止爪部15が荷台3の垂下板部74と係合するので、荷台3上の貨物が多い場合などに側アオリ板5や後アオリ板6の内面を貨物が押圧しても、係止爪部15の役割により側アオリ板5および後アオリ板6が荷台3の側辺3Cおよび後辺3Dから離れることがなく、貨物の横動による側アオリ板5および後アオリ板6の破損を防ぎ、貨物の荷崩れを未然に防止できるという効果がある。
【0038】
尚、上記の実施形態では、左右の側アオリ板のいずれも上下昇降可能に構成し、左右それぞれに側板昇降駆動部を配備した例を示したが、本発明のアオリ板昇降装置はそれに限定されるものでない。例えば、左側の側アオリ板だけまたは右側の側アオリ板だけを上下昇降可能に構成して、後アオリ板の上下昇降構成に加えたものも本発明に含まれる。そのような構成であっても、ひとつの側アオリ板と後アオリ板の双方を下降させると、それらの間の後側案内機構を荷台の上面よりも下方に移動させることができる。
【0039】
また、上記の実施形態では、第1案内部材および第4案内部材として柱状のものを用いるとともに、第2案内部材および第3案内部材として筒状のものを用いたが、本発明はそれらに限られない。例えば、第1案内部材と第4案内部材として筒状のものを用いるとともに、第2案内部材と第3案内部材として柱状のものを用いるものも、本発明に含まれる。その場合、柱状物および筒状物として平面視で四角形状のものを例示したが、平面視で例えば四角形以外の多角形状、星形状、円形状あるいは楕円形状などのものも用いることが可能である。
【0040】
そして、本発明は、上記した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の分野における通常の知識を有する者であれば想到し得る、各種変形、修正を含む、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更があっても、本発明に含まれることは勿論である。
【符号の説明】
【0041】
1 アオリ板昇降装置
3 荷台
3A 前角部
3B 後角部
3C 側辺
3D 後辺
5 側アオリ板
5B 下辺
5C 前端部
5D 後端部
6 後アオリ板
6B 下辺
6C 左端部
6D 右端部
7 前側案内機構
8 後側案内機構
9 側板昇降駆動部
12 リモート入力部
14 障害物センサ
15 係止爪部
18 後板昇降駆動部
20 第2案内部材
21 案内溝(第1案内溝)
22 収容空間(第1収容空間)
23 第1案内部材
24 連結条(第1連結条)
25 第3案内部材
26 案内溝(第2案内溝)
27 収容空間(第2収容空間)
28 第4案内部材
29 連結条(第2連結条)
31 障害物センサ
51 モータ
52 電動シリンダ
53 ピストンピン
74 垂下板部
75 下降停止制御部
76 駆動制御部
77 受信部
E 点滅光
N 矢印
R 障害物
T 車両
U,U1,U2 矢印