(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-02
(45)【発行日】2022-02-10
(54)【発明の名称】空気浄化装置
(51)【国際特許分類】
F24F 8/22 20210101AFI20220203BHJP
F24F 8/80 20210101ALI20220203BHJP
B01D 46/42 20060101ALI20220203BHJP
A61L 9/16 20060101ALI20220203BHJP
A61L 9/20 20060101ALI20220203BHJP
【FI】
F24F8/22
F24F8/80 218
F24F8/80 238
F24F8/80 135
B01D46/42 Z
A61L9/16 Z
A61L9/20
A61L9/16 F
(21)【出願番号】P 2020199057
(22)【出願日】2020-11-30
【審査請求日】2020-12-16
(31)【優先権主張番号】P 2020102748
(32)【優先日】2020-06-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】592141765
【氏名又は名称】株式会社久保製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100134979
【氏名又は名称】中井 博
(74)【代理人】
【識別番号】100167427
【氏名又は名称】岡本 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】久保 真由巳
(72)【発明者】
【氏名】中村 守
【審査官】渡邉 聡
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-021760(JP,A)
【文献】特開平07-124238(JP,A)
【文献】特開平09-026151(JP,A)
【文献】特開2004-108685(JP,A)
【文献】特表2014-511718(JP,A)
【文献】特開2004-061078(JP,A)
【文献】特開2000-060955(JP,A)
【文献】実開平06-075502(JP,U)
【文献】特開2003-322370(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 8/80
A61L 9/16
F24F 7/003
B01D 46/42
A61L 9/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
気体を吸引し浄化して排出する空気浄化装置であって、
気体を吸引する吸引部と、
該吸引部と外部との間を連通する連通通路を有し、該連通通路内に収容されたフィルタによって該吸引部によって吸引される気体を浄化する浄化部と、
該浄化部によって浄化された気体を排出する排気部と、を備えており、
前記浄化部には、
前記連通通路と前記吸引部との間を連通する連通孔が形成されており、
前記吸引部は、
中空であって前記連通孔を通して前記連通通路に連通された、内部に前記連通通路を通して気体を吸引する吸引手段が設けられた吸引手段収容部を有しており、
前記吸引部の吸引手段収容部内には、
前記連通孔を通して前記浄化部の連通通路内のフィルタに紫外線を照射する紫外線照射部が設けられており、
該紫外線照射部は、
前記連通孔と、前記吸引手段において空気を吸引する吸引口との間に位置するように設けられており、
前記紫外線照射部は、
前記吸引手段の吸引口を覆うように取り付けられ
る基板と
、
紫外線を照射する紫外線LEDと、を有しており、
前記基板には、
前記吸引手段の吸引口に吸引される気体が該基板を通過するように貫通孔が設けられており、
該貫通孔は、
該基板を前記吸引手段の吸引口を覆うように取り付けたときに、該吸引手段の吸引口と対応する位置に設けられており、
前記紫外線LEDは、
前記基板の貫通孔の近傍に設けられている
ことを特徴とする空気浄化装置。
【請求項2】
気体を吸引し浄化して排出する空気浄化装置であって、
気体を吸引する吸引部と、
該吸引部と外部との間を連通する連通通路を有し、該連通通路内に収容されたフィルタによって該吸引部によって吸引される気体を浄化する浄化部と、
該浄化部によって浄化された気体を排出する排気部と、を備えており、
前記浄化部には、
前記連通通路と前記吸引部との間を連通する連通孔が形成されており、
前記吸引部は、
中空であって前記連通孔を通して前記連通通路に連通された、内部に前記連通通路を通して気体を吸引する吸引手段が設けられた吸引手段収容部を有しており、
前記吸引部の吸引手段収容部内には、
前記連通孔を通して前記浄化部の連通通路内のフィルタに紫外線を照射する紫外線照射部が設けられており、
該紫外線照射部は、
前記連通孔
と前記吸引手段において空気を吸引する吸引口との間に位置するように設けられた、紫外線を照射する複数の紫外線LEDを備えており、
該複数の紫外線LEDは、
順次点灯し、前記浄化部の連通通路内のフィルタに対して常時紫外線が照射された状態を維持するように制御されている
ことを特徴とする空気浄化装置。
【請求項3】
前記複数の紫外線LEDは、
前記吸引手段において空気を吸引する吸引口の近傍に設けられている
ことを特徴とする請求項2記載の空気浄化装置。
【請求項4】
前記吸引手段収容部には、
該吸引手段収容部内と外部とを分離する紫外線を透過する分離壁によって囲まれた前記紫外線照射部が収容される紫外線照射部配置空間が設けられており、
該紫外線照射部配置空間は外部と連通された着脱開口を有しており、
前記紫外線照射部は、
前記着脱開口を通して前記紫外線照射部配置空間内に挿入離脱可能に配設されている
ことを特徴とする
請求項2記載の空気浄化装置。
【請求項5】
前記吸引手段収容部内には、前記連通通路を通して気体を吸引する吸引手段を備えており、
前記排気部が、
一端が前記吸引手段収容部と連通された、該吸引手段収容部と外部との間を連通する排気通路を備えており、
前記排気通路には、
気体を浄化する浄化液が含侵された浄化部材を有する浄化槽が連通されている
ことを特徴とする
請求項1から4のいずれか一項に記載の空気浄化装置。
【請求項6】
前記浄化槽内には浄化液が収容されており、該浄化液の上部に気体が通過する流路が設けられており、
前記浄化部材は、
下部が前記浄化槽内の浄化液に浸漬された状態で、前記浄化槽内の流路を通過する気体が該浄化部材を通過することなく外部に排出されないように設けられている
ことを特徴とする
請求項5記載の空気浄化装置
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸引した空気を浄化して排出することができる空気浄化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
室内に設置され、簡易的に室内の空気を浄化する装置が開発されている(特許文献1)。
特許文献1の空気清浄機は、空気を吸い込むための吸い込み口と清浄化された空気を吹き出すための吹き出し口を有するケーシングとを備えている。このケーシング内には、互いに隔離された第1室、第2室および第3室が設けられており、2室に設けられたファンによって、この順に空気が流れるようになっている。
そして、特許文献1の空気清浄機では、第1室に濾過機能を持つプレフィルタと高性能濾過機能を持つフィルタが設けられているので、循環用のファンを作動させれば、室内の空気をプレフィルタ等に通すことによって浄化できる。
しかも、特許文献1の空気清浄機は、第3室内の空気の一部を室外に排気する室内陰圧保持用のファンが設けられており、室内に戻す空気を少なくできるから、室内を陰圧に保つことができる。
【0003】
しかるに、特許文献1の空気清浄機では、フィルタを交換する際には、吸い込み口が形成されているケーシングの下部外板パネルを取り外して、第1室から各フィルタを取りださなければならない。すると、第1室では、フィルタは被覆されていないので、かかる交換の際に、フィルタに付着しているウイルス等が飛散する可能性があり、飛散したウイルスに作業者が感染する可能性が高くなる。
【0004】
一方、フィルタの交換を安全に実施できる空気浄化装置として、特許文献2に開示された技術がある。特許文献2の空気浄化装置は、ウイルスや細菌を捕捉して浄化する浄化部が、本体部と、本体部に着脱可能に設けられるフィルタが収容されたフィルタケースと、を備えており、フィルタケースが浄化部の本体部に着脱可能になっている。このため、フィルタをフィルタケースに収容したままを交換することができるから、フィルタ交換の際に、フィルタに付着しているウイルス等が飛散して飛散したウイルスに作業者が感染する可能性を低くすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2003-185204号公報
【文献】特許第5258930号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献2の空気浄化装置を使用すれば、フィルタ交換の安全性は高くできるが、ウイルスはフィルタに捕捉されているだけであるので、より安全性を高めた装置が求められている。
【0007】
本発明は上記事情に鑑み、空気を浄化する機能を高くでき、しかも、フィルタ交換を安全に実施することができる空気浄化装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1発明の空気浄化装置は、気体を吸引し浄化して排出する空気浄化装置であって、気体を吸引する吸引部と、該吸引部と外部との間を連通する連通通路を有し、該連通通路内に収容されたフィルタによって該吸引部によって吸引される気体を浄化する浄化部と、該浄化部によって浄化された気体を排出する排気部と、を備えており、前記浄化部には、前記連通通路と前記吸引部との間を連通する連通孔が形成されており、前記吸引部は、中空であって前記連通孔を通して前記連通通路に連通された、内部に前記連通通路を通して気体を吸引する吸引手段が設けられた吸引手段収容部を有しており、前記吸引部の吸引手段収容部内には、前記連通孔を通して前記浄化部の連通通路内のフィルタに紫外線を照射する紫外線照射部が設けられており、該紫外線照射部は、前記連通孔と、前記吸引手段において空気を吸引する吸引口との間に位置するように設けられており、前記紫外線照射部は、前記吸引手段の吸引口を覆うように取り付けられる基板と、紫外線を照射する紫外線LEDと、を有しており、前記基板には、前記吸引手段の吸引口に吸引される気体が該基板を通過するように貫通孔が設けられており、該貫通孔は、該基板を前記吸引手段の吸引口を覆うように取り付けたときに、該吸引手段の吸引口と対応する位置に設けられており、前記紫外線LEDは、
前記基板の貫通孔の近傍に設けられていることを特徴とする。
第2発明の空気浄化装置は、気体を吸引し浄化して排出する空気浄化装置であって、気体を吸引する吸引部と、該吸引部と外部との間を連通する連通通路を有し、該連通通路内に収容されたフィルタによって該吸引部によって吸引される気体を浄化する浄化部と、該浄化部によって浄化された気体を排出する排気部と、を備えており、前記浄化部には、前記連通通路と前記吸引部との間を連通する連通孔が形成されており、前記吸引部は、中空であって前記連通孔を通して前記連通通路に連通された、内部に前記連通通路を通して気体を吸引する吸引手段が設けられた吸引手段収容部を有しており、前記吸引部の吸引手段収容部内には、前記連通孔を通して前記浄化部の連通通路内のフィルタに紫外線を照射する紫外線照射部が設けられており、該紫外線照射部は、前記連通孔と前記吸引手段において空気を吸引する吸引口との間に位置するように設けられた、紫外線を照射する複数の紫外線LEDを備えており、該複数の紫外線LEDは、順次点灯し、前記浄化部の連通通路内のフィルタに対して常時紫外線が照射された状態を維持するように制御されていることを特徴とする。
第3発明の空気浄化装置は、第2発明において、前記複数の紫外線LEDは、前記吸引手段において空気を吸引する吸引口の近傍に設けられていることを特徴とする。
第4発明の空気浄化装置は、第2発明において、前記吸引手段収容部には、該吸引手段収容部内と外部とを分離する紫外線を透過する分離壁によって囲まれた前記紫外線照射部が収容される紫外線照射部配置空間が設けられており、該紫外線照射部配置空間は外部と連通された着脱開口を有しており、前記紫外線照射部は、前記着脱開口を通して前記紫外線照射部配置空間内に挿入離脱可能に配設されていることを特徴とする。
第5発明の空気浄化装置は、第1から第4発明のいずれかにおいて、前記吸引手段収容部内には、前記連通通路を通して気体を吸引する吸引手段を備えており、前記排気部が、一端が前記吸引手段収容部と連通された、該吸引手段収容部と外部との間を連通する排気通路を備えており、前記排気通路には、気体を浄化する浄化液が含侵された浄化部材を有する浄化槽が連通されていることを特徴とする。
第6発明の空気浄化装置は、第5発明において、前記浄化槽内には浄化液が収容されており、該浄化液の上部に気体が通過する流路が設けられており、前記浄化部材は、下部が前記浄化槽内の浄化液に浸漬された状態で、前記浄化槽内の流路を通過する気体が該浄化部材を通過することなく外部に排出されないように設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
第1発明によれば、吸引部によって気体を吸引すれば、浄化部のフィルタによって空気を浄化して、排気部から排出することができる。また、浄化部のフィルタには、紫外線照射部から紫外線が照射されているので、フィルタに捕捉しているウイルスを死滅させることができる。紫外線によってフィルタに捕捉しているウイルスを死滅させることができるから、フィルタを安全に交換することができる。しかも、紫外線照射部が連通孔と吸引手段の吸引口との間に位置するように設けられているので、吸引手段の吸引口に吸い込まれる気流により紫外線照射部を冷却することができる。また、基板に紫外線照射部が設けられているので、紫外線照射部の設置を容易にできるし、吸引手段の吸引口に吸い込まれる気流による紫外線LEDを冷却することができる。さらに、紫外線照射部が照射される紫外線によるフィルタの殺菌効果を高めることができる。
第2発明によれば、吸引部によって気体を吸引すれば、浄化部のフィルタによって空気を浄化して、排気部から排出することができる。また、浄化部のフィルタには、紫外線照射部から紫外線が照射されているので、フィルタに捕捉しているウイルスを死滅させることができる。紫外線によってフィルタに捕捉しているウイルスを死滅させることができるから、フィルタを安全に交換することができる。しかも、紫外線照射部が連通孔と吸引手段の吸引口との間に位置するように設けられているので、吸引手段の吸引口に吸い込まれる気流により紫外線照射部を冷却することができる。また、フィルタに常時紫外線が照射された状態を維持しつつ、紫外線照射部の発熱量を抑制することができる。
第3発明によれば、基板に紫外線照射部を設けても、吸引手段の吸引口に吸い込まれる気流による紫外線LEDを冷却する効果を高めることができる。
第4発明によれば、紫外線照射部を簡単に交換できるし、紫外線照射部の汚損を防止できる。
第5、第6発明によれば、気体を浄化液に接触させてから外部に排出するので、空気をより浄化した状態で外部に排出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】(A)は本実施形態の空気浄化装置1の概略斜視図であり、(B)、(C)は本実施形態の空気浄化装置1の使用状況の説明図である。
【
図2】本実施形態の空気浄化装置1の概略縦断面図である。
【
図4】(A)は
図3のIVA-IVA断面矢視図であり、(B)は
図3のIVB-IVB断面矢視図である。
【
図5】他の実施形態の空気浄化装置1の概略縦断面図である。
【
図7】(A)は
図6のVIIA-VIIA断面矢視図であり、(B)は
図6のVIIB-VIIB断面矢視図である。
【
図8】本実施形態の空気浄化装置1の使用状態の概略説明図である。
【
図9】本実施形態の空気浄化装置1の使用状況の説明図である。
【
図10】浄化槽50の概略説明図であり、(A)は(B)のA-A線断面矢視図であり、(B)は(A)のB-B線断面矢視図である。
【
図11】
図9(B)のカバーC1の他の例であってカバーC1のみを示した概略説明図であって、ボトムプレートBPの背もたれおよび足置きが上昇した状態における斜視図である。
【
図12】(A)は(B)のA-A線断面図であり、(B)はボトムプレートBPの背もたれおよび足置きが上昇した状態におけるカバーC1を足元側から見た図である。
【
図13】キャリーケースタイプの本実施形態の空気浄化装置1の使用状態の概略説明図である。
【
図14】紫外線照射部40Bを設けた本実施形態の空気浄化装置1の概略縦断面図である。
【
図15】(A)は
図14のA-A断面矢視図であり、(B)は
図14のB-B断面矢視図である。
【
図16】(A)は
図14のA-A断面矢視図であり、(B)は紫外線照射部40Bの概略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
つぎに、本発明の実施形態を図面に基づき説明する。
本発明の空気浄化装置は、フィルタによって空気などの気体を浄化する装置であって、気体を浄化する機能を高くでき、フィルタ交換を安全に実施することができるようにしたことに特徴を有している。
本発明の空気浄化装置によって浄化する気体は空気に限られないが、以下では、空気を浄化する場合を説明する。
【0012】
まず、本発明の空気浄化装置の詳細を説明する前に、本発明の空気浄化装置の使用状況を説明する。
【0013】
図1(A)に示すように、本実施形態の空気浄化装置1は、吸引した空気を浄化する浄化部10と、この浄化部10で浄化された空気を排出する排気部20とを備えている。
なお、空気浄化装置1は、浄化部10内に空気を吸引しその空気を、排気部20を通して外部に排出させる、例えば、ポンプやブロア等の吸引手段15(
図2参照)も備えている。
【0014】
図1(B)、(C)において、符号Rは隔離室を示している。この隔離室Rは、外部と気密に隔離された空間を内部に有しており、この空間内に、ウイルス等に感染した患者を隔離したり、逆に、抵抗力の弱った人を隔離したりしておくために使用されるものである。
【0015】
図1(B)では、ウイルス等に感染した患者を隔離しておく隔離室R、つまり、外部に空気を排出させない陰圧室として使用した例を示している。かかる用途で隔離室Rを使用する場合には、配管P等を介して浄化部10に設けられている吸引口10aと隔離室R内の空間とが連通される一方、吸引した空気が排気部20の排出口20bから隔離室R外に排出されるように、本実施形態の空気浄化装置1を設置する。すると、吸引手段15によって隔離室R内の空気を吸引すれば、隔離室R内を陰圧にすることができる。しかも、隔離室Rから吸引した空気は、浄化部10のフィルタ12によって浄化されてから外部に排出されるので、ウイルス等が隔離室R外に排出されることを防ぐことができる。
【0016】
ウイルス等に感染した患者を隔離しておく場合、以下の
図9(B)に示すように、患者のベッドを包むようにカバーC1を設けてもよい。例えば、ベッドの周囲にフレームを設けて、ベッドの上方に天板シートを設ける。この天板シートからベッドの側方に垂れるように天板シートと連結された側方シートを設ける。つまり、側方シートによってベッドが囲われた状態となるように、側端縁同士を連結した状態の側方シートを設ける。また、側方シートの下端縁を繋ぐようにベースシートを設ける。このベースシートをベッドの床板上に配置すれば、ベッドの上方に、天板シート、側方シート、ベースシートで囲まれた空間が形成される。この空間内にマットや布団を設ければ、空間内に患者を収容することができる。かかるカバーC1を設ければ、個室としなくても、患者を他の患者や、部屋の他の領域から隔離することができる。なお、カバーC1の一部に、カバーC1内と外部との間を連通遮断できる連通部を設けておけば、連通部を通して、医師などが患者の状態を確認することができる。また、図示しないが、カバーC1と遮断連通可能な前室を設けてもよい。その場合には、前室は、連通部に連通されるように設けられる。前室は、配管等を介してカバーC1内とは別の浄化部10に連通されていることが望ましい。この場合、カバーC1内と前室内とを別々に浄化できる。
【0017】
また、ベッドが背もたれや足のリクライニング機能を有するボトムプレートBPを有している場合には、カバーC1は、
図11、
図12のような構造としてもよい。
【0018】
図11、
図12に示すように、カバーC1は、天板シートS1および側方シートS2と、ベースシートS3と、を有しているが、ベースシートS3は、ボトムプレートBPの形状が変化してもその変化に追従できるように形成されている。言い換えれば、ベースシートS3は、ボトムプレートBPが変形した際に、側方シートS2との間に外部と連通する開口が形成されない構造を有している。
【0019】
具体的には、ベースシートS3には、ボトムプレートBPを収容できる開口Shが形成されている。この開口Shは、ボトムプレートBPを通すことができる大きさに形成される。
【0020】
なお、開口Shの周囲には、側方シートS2と連結された連結部Saが設けられる。
また、連結部Saを設けず、後述する上面シートSb、側面シートScおよび頭部側シートSdが直接側方シートS2と連結されてもよい。この場合、開口Shは、側方シートS2の下端縁によって形成されることになる。
【0021】
開口Shには、上面シートSbと、側面シートScと、頭部側シートSdと、が設けられる。
【0022】
上面シートSbは、開口Shとほぼ同じ大きさ同じ形状に形成されたシートであり、ボトムプレートBPが伸びた状態になると、開口Shにほぼ重なる大きさ・形状に設けられている。
【0023】
側面シートScは、上面シートSbの両側端(
図12(B)では左右の端縁)と連結部Saとの間を繋ぐように設けられるシートである。つまり、ボトムプレートBPの形状が変化した際に、上面シートSbは連結部Saの位置から上昇するが、その際に上面シートSbの両側端と、両側端の側方に位置する連結部Saとの間にできる隙間を塞ぐように側面シートScは設けられている。
【0024】
頭部側シートSdは、上面シートSbの頭部側の端縁(
図12(A)では左側の端縁)と頭部側に位置する連結部Saとの間を繋ぐように設けられるシートである。つまり、ボトムプレートBPの背もたれが昇降した際に、上面シートSbの頭部側の端縁は連結部Saの位置から上昇するが、その際に上面シートSbの頭部側の端縁と頭部側に位置する連結部Saとの間にできる隙間を塞ぐように頭部側シートSdが設けられている。なお、上面シートSbの足元側の端縁(
図12(A)では右側の端縁)は、足元側に位置する連結部Saと隙間ができないように連結されている。
【0025】
カバーC1は、以上のような構造を有しているので、ボトムプレートBPの形状が変化するベッドに設けても、ボトムプレートBP上に上面シートSbを配置すれば、カバーC1内の空間を外部から気密に遮断した状態に維持できる。つまり、ボトムプレートBPの形状の変化に合わせてベースシートS3の上面シートSbや側面シートScが追従して変形できるので、ボトムプレートBPの形状が変化しても、カバーC1内の空間を外部から気密に遮断した状態に維持できる。
【0026】
なお、ボトムプレートBPが下降して平坦になった場合には、側面シートScや頭部側シートSdは、折り畳まれるなどして、ボトムプレートBPの下方や連結部Saの領域に収容される。
【0027】
また、
図9(C),(D)に示すように、カバーC1内に患者の上半身を覆うことができる可動カバーC2を設けてもよい。具体的には、プラスチックなどの天板を設け、その一端(
図9(C)では左端)を側方シートS2に上下方向揺動可能に連結する。なお、この天板には、外部から引っ張ることによって、天板を側方シートS2に連結された一端を支点として揺動させるひもLを設けておく。また、天板において、側方シートS2と連結されている端縁以外の3つの端縁にカバーシートを垂らすように設ける。すると、3枚のカバーシートと天板と側方シートS2とによって囲まれた、下端が開口した空間を有する可動カバーC2を形成することができる。この可動カバーC2は、天板を下方に揺動すると、可動カバーC2の空間に患者の上半身が入る位置に配設する。そして、空気浄化装置1の浄化部10と連通された配管Pを、その開口が可動カバーC2の空間内に位置するように設ける(
図9(D)参照)。すると、可動カバーC2内の空気がカバーC1内に漏れないので、ウイルス等が隔離室R外に排出される可能性を低くできる。また、カバーC2を降ろせば患者の上半身をカバーC1内から隔離できるし、カバーC2を上げれば患者の上半身をカバーC1内に露出させることができるので、カバーC2を設けても医師などが患者の状態を確認しやすくなる。
【0028】
図1(C)では、抵抗力の弱った人を隔離しておく隔離室R、つまり、外部から空気が入らない陽圧室として使用した例を示している。かかる用途で隔離室Rを使用する場合には、配管P等を介して排気部20の排出口20bと隔離室R内の空間とを連通する一方、浄化部10の吸引口10aから外部の空気が吸引されるように、本実施形態の空気浄化装置1を設置する。すると、吸引手段15によって外部の空気を吸引すれば、この空気を浄化してから隔離室R内に供給することができるし、隔離室R内が外部よりも高い圧力となるから隔離室R内に外気が入らないようにすることができる。
【0029】
つまり、本実施形態の空気浄化装置1は、空気を吸引する吸引手段15と、吸引した空気をフィルタ12によって浄化する浄化部10を備えているので、本実施形態の空気浄化装置1を隔離室Rに接続すれば、隔離室Rを、ウイルス等に感染した患者を隔離する陰圧室や、抵抗力の弱った人を隔離したりしておく陽圧室として機能させることができるのである。
【0030】
また、本実施形態の空気浄化装置1の大きさはとくに限定されないが、例えば、本実施形態の空気浄化装置1を、そのサイズが、縦200~300mm程度、横150~200mm程度、奥行き80~120mm程度、となるように形成すれば、人が背負って使用することも可能になるので好ましい。
【0031】
例えば、ウイルス等が蔓延している地域やその他の有害な物質が存在する領域で作業を行う場合には、作業者が外気を直接吸わないように、または、作業者が外気と直接接触しないようにしなければならない。すると、
図8に示すように全身を覆う防護服Wを着用するか、頭部を覆うマスクを着用することが必要になる。この場合、防護服W内やマスク内に空気を供給しなければならないが、本実施形態の空気浄化装置1を背負える大きさとすれば、本実施形態の空気浄化装置1から、防護服W内やマスク内に外気を浄化した空気を供給することができる。そして、本実施形態の空気浄化装置1の場合、外気を浄化して防護服W内やマスク内に供給しているので、ボンベなどから防護服W内やマスク内に酸素を含む空気を供給する場合に比べて長時間使用することが可能になる。すると、防護服Wやマスクを着用した状態で作業できる時間の制限を少なくすることができるので、作業効率を向上させることができる。
【0032】
なお、本実施形態の空気浄化装置1を背負える状態にする場合、空気浄化装置1をポリウレタンなどで形成されたカバー内に密封した状態で収容しておくことが好ましい。そして、防水性を有するファスナーなどによって、空気浄化装置1を入れるための開口を閉じることができるようにしておけば、作業後に防護服Wなどとともにカバーも消毒液等で殺菌することが可能となる。
【0033】
また、
図13に示すように、本実施形態の空気浄化装置1は、人が引っ張るなどして移動させることができる、一般的なキャリーケース程度の大きさに形成してもよい。例えば、本実施形態の空気浄化装置1は、そのサイズを、幅200~300mm程度、奥行き300~500mm程度、高さ400~900mm程度としてもよい。この場合、重量が重くなっても、人力で本実施形態の空気浄化装置1を移動することができるので、大型の吸引手段15や電源を空気浄化装置1内に収容することができる。すると、吸引手段15を大型化できるので吸引力を強くすることができるから、圧力損失の大きいフィルタ、つまり、ウイルス等の捕捉性能が高いフィルタでも使用することが可能となる。また、吸引手段15等を作動するための電源を大型化することができるので、長時間の使用も可能となる。
【0034】
また、本実施形態の空気浄化装置1は、後述する浄化部10の吸引口10aや排気部20の排出口20bに、ホースや配管などを取り付けることができる取付管PA,PBを設けてもよい(
図2、
図5参照)。すると、ホースや配管などを空気浄化装置1に着脱することが容易になる。かかる取付管PA,PBは、その一端に雄ネジを形成し、浄化部10の吸引口10aや排気部20の排出口20bに形成された雌ネジに螺合するようにしておけば、取付管PA,PBを確実に取り付けておくことができるし、取付管PA,PB自体の着脱も容易になるので、好ましい。
【0035】
<本実施形態の空気浄化装置1の説明>
つぎに、本実施形態の空気浄化装置1の構造を説明する。
図2に示すように、本実施形態の空気浄化装置1は、浄化部10と、排気部20と、吸引手段15と、を備えている。
【0036】
<排気部20の説明>
図2に示すように、排気部20は、筒状に形成された中空な本体21を備えている。この本体21は、その軸方向の両端が閉じられている。具体的には、本体21の他端(
図2および
図4(B)では下端、以下、本体21の下端という)は、板状の底板16によって閉じられており、この底板16は本体21の側面から外方まで延びているが、その理由は後述する。
この本体21の内部は、その軸方向に沿って伸びた分割プレート20dによって、空間20hと空間20sに気密に分割されている(
図3および
図4(B))。空間20hと空間20sのうち、空間20sは、後述する吸引手段15や紫外線照射部40を制御する制御機器や電源などが収容される空間である。
【0037】
一方、本体21内において、分割プレート20dによって分割された一方の空間20hは、浄化部10から供給される空気を外部に排出するための流路である。この空間20h、本体21の軸方向の一端(
図2および
図4(B)では上端、以下、上端という)に形成された排出口20bによって、外部と連通されている。
また、この空間20hは、流入口20aによって浄化部10と連通されている。流入口20aは、本体21の下端において、底板16が外方まで延びている側面に形成されている(
図4(B)参照)。
つまり、本体21内には、空間20hによって流入口20aから排出口20bまで連通する流路が形成されており、この流路を通して浄化部10から流入口20aに供給される空気を排出口20bから外部に排出することができる。
【0038】
なお、空間20h内には、空間20hの3面、つまり、浄化部10側の側面以外の側面には消音材22が配置されている(
図3参照)。
また、空間20hの下端部には、傾斜壁23が設けられている(
図2参照)。この傾斜壁23は、浄化部10側の側面から浄化部10側の側面と対向する側面に向かって上傾するように配設されている。この傾斜壁23は、必ずしも設けなくてもよいが、かかる傾斜壁23を設けておけば、流入口20aを通して浄化部10から空間20hに流入した空気をスムースに排出口20bに向かって流すことができるという効果が得られるので、好ましい。
【0039】
<浄化部10の説明>
図2および
図4(A)に示すように、底板16において本体21の側面から外方まで延びている部分の上面には、筒状に形成された中空な浄化部10の本体11が着脱可能に取り付けられている。
【0040】
この本体11は、排気部20の本体21とは異なり、その軸方向の一端(
図2および
図4(A)では上端、以下、上端という)は閉じられているが、その軸方向の他端(
図2および
図4(A)では下端、以下、下端という)は開放されている。
この本体21の下端は、底板16において本体21の側面から外方まで延びている部分と嵌りあう形状に形成されており、その下端を底板16に固定すると、下端の開口が底板16によって閉じられ、かつ、その一の側面(
図2では右方の側面)が排気部20の浄化部10側の側面(
図2では左側の側面)における流入口20aが形成された面と面接触するような形状に形成されている。
しかも、本体11における排気部20と密着する側面には、排気部20の本体21の流入口20aと対応する位置に開口10sが形成されている(
図4(A)参照)。この開口10sの上端縁と側端縁(
図4(A)では左方の端縁)にのみ挿入壁10cが形成されている。つまり、挿入壁10cは、略L字状に形成されているのである(
図4(A)参照)。
この挿入壁10cは、本体11内および本体11外にいずれも突出する部分を備えている。そして、本体11外に突出している部分は、本体21の下端を底板16に取り付けたときに、排気部20の本体21の流入口20aに挿入でき、しかも、流入口20aの内端縁と接触する程度の大きさに形成されている。
【0041】
つまり、浄化部10は、挿入壁10cを流入口20aに挿入するように移動させれば、浄化部10を底板16、つまり、排気部20の本体21に取り付けることができるのである。
また、浄化部10を排気部20から取り外す際には、挿入壁10cが流入口20aから抜けるように本体11を移動させた後、本体11が底板16から離間するように、言い換えれば、本体11を上方に引き抜くように移動させれば、本体11を排気部20から取り外すことができるようになっているのである。
【0042】
また、
図4(A)に示すように、本体11の上端には、本体11内部の空間と外部との間を連通する吸引口10aが形成されている。
一方、本体11の上端と下端との間には、開口10sよりも上端側に、本体11を上部空間(空間10h)と下部空間(後述する吸引手段収容部15h)とに分割する支持プレート13が設けられている。この支持プレート13には、その表裏を貫通する貫通孔13hが形成されており、この貫通孔13hによって支持プレート13の上流側と下流側との間、つまり、空間10hと吸引手段収容部15hとが連通されている。
なお、支持プレート13は、本体11の空間10hと吸引手段収容部15hとに分割するように設けられていればよく、その形状や構造はとくに限定されない。例えば、単なる板状の部材で形成してもよいし、
図2および
図4(A)に示すように、その側端縁から下方に延びる壁状部を有していてもよい。つまり、後述する吸引手段15の側方の4面(または排気部20側の面を除く3面)を囲うような壁状部を有していてもよい。この場合、壁状部の長さはとくに限定されず、底板16上面や吸引手段15の上面と接触する位置まで延びていてもよい。
【0043】
図2および
図4(A)に示すように、本体11の空間10hには、フィルタ12が収容されている。つまり、本体11の軸方向に沿って空間10h内を空気が流れるときにはその空気が必ずフィルタ12を通過するように、本体11の空間10hにフィルタ12が
収容されている。
【0044】
フィルタ12は、目の比較的荒い埃等を捕捉する除塵用フィルタと、HEPAフィルタやセミHEPAフィルタ、ULPAフィルタ等のように埃等に加えて細菌等も捕捉できる細菌等捕捉用フィルタとを備えており、吸引口10aから貫通孔13hにむかって、除塵用フィルタ、細菌等捕捉用フィルタの順に配置されている。
なお、フィルタ12は上記のごとき構成に限られず、使用する環境に合わせて最適な構成とすればよく、その組み合わせや並べる順番もとくに限定されない。
【0045】
<吸引手段15の説明>
そして、
図2および
図4(A)に示すように、浄化部10の本体11を排気部20の本体21の底板16を取り付けると、本体11と排気部20の本体21の底板16と支持プレート13によって囲まれた吸引手段収容部15hが形成される。例えば、吸引手段収容部15hは、その高さが、約50~60mmとなるように設けられている。この吸引手段収容部15h内には、底板16の上面に吸引手段15が設けられている。この吸引手段15は、例えば、ブロア等の吸気口から吸引した空気を排気口に排出する機能を有するものである。この吸引手段15の排気口には、配管15aが接続されており、この配管15aは、開口10sを通して、言い換えれば、排気部20の本体21の流入口20aを通して、排気部20の本体21の空間20h内に挿入されている。つまり、吸引手段15から排出された空気は、排気部20の本体21の空間20h内に流入するようになっているのである。なお、吸引手段15自体が空気を排出する排気ダクト等を有していれば、その排気ダクト等を配管15aとして使用してもよい。
【0046】
<紫外線照射部40の説明>
この吸引手段15は、吸引手段収容部15h内に配置されると、支持プレート13との間に隙間ができる程度の大きさを有している。この隙間はとくに限定されないが、例えば、吸引手段収容部15hの高さが約50~60mmであれば、吸引手段15は、その高さが約30~40mmのものが使用される。そして、吸引手段15と支持プレート13との間の隙間には、紫外線照射部40が配置されている。この紫外線照射部40は、紫外線を外部に放出できる機能を有するものであり、支持プレート13の貫通孔13hからフィルタ12に紫外線を照射できる位置に設けられている。
【0047】
以上のごとき構造であるので、浄化部10の本体11を底板16に固定した状態で吸引手段15を作動させれば、浄化部10の吸引口10aから本体11の空間10h内に空気を吸引することができる。
すると、吸引された空気は、空間10h内のフィルタ12を通過するので、フィルタ12を通過する間に、空気中に含まれる埃等に加えてウイルスなどが捕捉されて吸引した空気は浄化される。
しかも、吸引手段収容部15h内には紫外線照射部40が設けられているので、吸引手段収容部15hにウイルスが漏れた場合でも、そのウイルスを紫外線によって死滅させることができる。
そして、フィルタ12および紫外線によって浄化された空気は、吸引手段15の排気口から排出され、配管15aを通って排気部20の本体21の空間20h内に流入し、排出口20bから外部に排出される。
つまり、本実施形態の空気浄化装置1を作動させれば、吸引した空気をフィルタ12やに紫外線照射部40よって浄化して、外部に排出することができるのである。
【0048】
そして、本実施形態の空気浄化装置1では、浄化部10はその本体11が、底板16および排気部20に対して着脱可能である。つまり、本体11内にフィルタ12を収容したまま、本体11ごとフィルタ12を底板16および排気部20から着脱することができる。
すると、フィルタ12を交換するときでも、フィルタ12は吸引口10aと貫通孔13hを通してしか外気と触れることがない。
よって、フィルタ12を交換する際に、フィルタ12に付着しているウイルス等が飛散して飛散したウイルスに作業者が感染する可能性を低くすることができる。
しかも、浄化部10のフィルタ12には、紫外線照射部40から紫外線が照射されているので、フィルタ12に捕捉しているウイルスを死滅させることができる。したがって、フィルタ12を交換する際に、ウイルスに作業者が感染する可能性をより低くすることができる。
【0049】
しかも、本実施形態の空気浄化装置1では、浄化部10の本体11を取り外せば、吸引手段15が露出することになる。すると、吸引手段15を装置内に封入している場合に比べて、吸引手段15のメンテナンス作業を容易かつ迅速に行うことができる。
なお、吸引手段15が露出したときに、吸引手段15が収容されていた空間の空気が外部に漏れることになるが、この空気はフィルタ12を通過した浄化された空気であり、しかも、紫外線照射部40から紫外線が照射されているので、外気を汚染することはない。同様に、吸引手段15は浄化された空気のみを吸引しているので、吸引手段15を外部に露出させても、外気を汚染することは無い。
【0050】
上述した、浄化部10の本体11の空間10hにおいて、本体11の上端と支持プレート13との間の部分が、特許請求の範囲にいう連通通路に相当する。
また、上述した、排気部20の本体21の空間20hが、特許請求の範囲にいう排気通路に相当する。
さらに、上述した、吸引手段15および底板16が、特許請求の範囲にいう吸引部に相当する。
【0051】
なお、
図1、
図2、
図4に示すように、浄化部10の本体11の上端と排気部20の本体21の上端とを連結する蓋部材1aを設けておけば、両者の確実に固定できるが、この蓋部材1aは設けなくてもよいのは、いうまでもない。
【0052】
また、浄化部10の本体11を排気部20の本体21に対して着脱可能としたので、両者間の接続部分、つまり、流入口20aと挿入壁10cとの隙間から空気の漏れが生じる可能性がある。
しかし、上述したように、この隙間から漏れる空気は、フィルタ12や紫外線によって浄化された空気であるので、漏れても外気を汚染する可能性はすくない。
しかも、挿入壁10cは、その本体11外に突出している部分が排気部20の本体21の流入口20aに挿入されており、しかも、この部分の外面は流入口20aの内端縁と接触するように形成されている。このため、流入口20aと挿入壁10cとの隙間から空気の漏れは極力少なくすることができる。
なお、浄化部10の本体11の側面と排気部20の本体21の側面との間に、シール部材などを配置すれば、流入口20aと挿入壁10cとの隙間から外部に空気が漏れることをより確実に防ぐことができるので、より好ましい。
また、開口10sには、上端縁と一方の側端縁だけでなく、上端縁と両側端縁や、上端縁と下端縁および両側端縁に挿入壁10cを形成してもよい。挿入壁10cを設ける数が多くなれば、流入口20aと挿入壁10cとの隙間から外部に空気が漏れることをより防ぎやすくなる。
【0053】
<空気浄化装置1の他の実施形態>
上述した例では、浄化部10の本体11として、吸引手段15を囲う部分も取り外しできるように構成しているものを説明したが、もちろん、吸引手段15を囲う部分は底板16に固定されていてもよい。
【0054】
例えば、
図5~7に示すように、浄化部10の本体部11を、下端が底板16に気密に固定された中空空間11hを有する筒状のケースとする。
そして、本体部11の中空空間11hに挿入離脱できるフィルタケース14を設け、このフィルタケース14内にフィルタ12を収容しておく。すると、フィルタケース14を着脱するだけで、フィルタ12を交換することができる。
【0055】
この場合、本体部11の中空空間11h内に、中空空間11hを、吸引手段15を収容する吸引手段収容部15hとフィルタケース14を配置する空間11aとに分割する分離プレート11dを設ける。そして、分離プレート11dに両空間を連通する連通孔を形成する。なお、この分離プレート11dは、実質的に上述した支持プレート13と同様の構造としてもよい。
一方、フィルタケース14には、その下端に分離プレート11dの連通孔に挿入し得る筒状の挿入部14bを設ける。この挿入部14bは、フィルタケース14の下端から突出しており、その断面形状が連通孔の形状と相似形に形成されている。そして、挿入部14bは、連通孔に挿入すれば、吸引手段収容部15hと空間11aとを気密に隔離できるような構造に形成されている。
例えば、挿入部14bを連通孔に挿入すると、挿入部14bの外面が連通孔の内面と密着するように、挿入部14bの外面および/または連通孔の内面に弾性を有するシール部材を設ければ、吸引手段収容部15hと空間11aとを気密に隔離できる。
また、吸引手段収容部15h内に、パッキンを設けても、吸引手段収容部15h内と空間11aとを気密に隔離できる。具体的には、
図5に示すように、本体11の内面と挿入部14bの外面との間を埋めるパッキン14pを設け、挿入部14bの先端部が連通孔に挿入されると、その挿入部14bの先端部が挿入される孔をパッキン14pに形成しておく。この孔を、挿入部14bの先端部と略相似形であるが若干小さいものとすれば、挿入部14bの先端部にパッキン14pが密着するので、吸引手段収容部15hと空間11aとをより確実に気密に隔離できる。
【0056】
一方、フィルタケース14の上面には吸引口10aとなる貫通孔を設ける。そして、この貫通孔の構造を、チューブなどが接続されるパイプPAと着脱できる構造とする。具体的には、パイプPAの一端(挿入端)に雄ネジを形成しておき、貫通孔の内面にこの雄ネジと螺合する雌ネジを形成しておく。
【0057】
また、排気部20の本体21の排出口20bの内面にも雌ネジを形成し、排出口20bに取り付けられるパイプPBの一端(挿入端)にも雄ネジを形成しておく。
【0058】
かかる構造とすれば、蓋部材1aを被せて、パイプPAの一端を蓋部材1aの孔に挿通しパイプPAの一端をフィルタケース14の貫通孔に螺合すれば、パイプPAとフィルタケース14によって蓋部材1aを挟んで、蓋部材1aと浄化部10の本体11とを固定することができる。同様に、パイプPBの一端を蓋部材1aの孔に挿通しパイプPBの一端を排気部20の本体21の排出口20bに螺合すれば、パイプPBと排気部20の本体21によって蓋部材1aを挟んで、蓋部材1aに排気部20の本体21に固定することができる。つまり、蓋部材1aを介して、フィルタケース14を排気部20の本体21に固定することができる。
【0059】
しかも、パイプPA,PBを、フィルタケース14の貫通孔や排気部20の本体21の排出口20bに螺合しているだけであるので、蓋部材1aやフィルタケース14を、浄化部10の本体11や排気部20の本体21に簡単に着脱することができる。
【0060】
なお、
図5~
図7に示すように、浄化部10の本体11および排気部20の本体21全体を収容しておくケースCを設けておいてもよい。かかる構造とすれば、蓋部材1aを、浄化部10の本体11および排気部20の本体21の上端に取り付け、樹脂製バンドなどを蓋部材1aとケースCに巻きかけるように取り付ければ、蓋部材1aとケースCをしっかりと固定しておくことができる。つまり、フィルタケース14が浄化部10の本体11から脱落しないように、フィルタケース14を浄化部10の本体11内に確実に保持させておくことができる。
【0061】
<空気浄化装置1の他の実施形態>
また、空気浄化装置1は、
図14および
図15に示すような構成としてもよい。
図14および
図15に示すように、浄化部10の本体11と排気部20の本体21とを一体で形成してもよい。例えば、一つの中空なケースCS内を壁によって仕切って、浄化部10の本体11のフィルタ12が収容される空間10hと、排気部20の本体21の空間20hおよび空間20sを形成してもよい。
この場合、中空なケースCSにおいて、排気部20の本体21の空間20hおよび空間20sには天板を設けるが、浄化部10の本体11の空間10hには天板を設けずに、空間10hが上部に開口を有する状態とし、蓋部材1aによって開口を塞ぐようにすることが望ましい。この場合、ケースCSから蓋部材1aを取り外せば、開口を通してフィルタ12を空間10hから着脱できるので、フィルタ12の交換も可能になる。とくに、フィルタ12として、ケース12c内にフィルタ材12fが収容されたものを使用すれば、フィルタ12の交換が容易になる。
【0062】
上記の構成とした場合、フィルタ12を空間10h一杯に収容してもよいし、蓋部材1aとフィルタ12との間に、中空な固定部材11fを設けてもよい。固定部材11fを設ければ、蓋部材1aを取り付けたときに、フィルタ12を支持プレート13にしっかりと密着させやすくなる。また、フィルタ12の大きさ(高さ)にあわせた固定部材11fを使用すれば、使用するフィルタ12の自由度を高くできる。
また、固定部材11f内にプレフィルタPFを設ければ、粗い粒子や埃をプレフィルタPFで除去できる。すると、粉じんなどの多い環境の悪い場所で本実施形態の空気浄化装置1を使用した場合でも、フィルタ12の損傷を抑制することができる。
【0063】
上記構成とした場合には、蓋部材1aをケースCSに取り付けた状態において空間10hと外部とを連通する吸引口10aとなる貫通孔が蓋部材1aに設けられる。この場合、蓋部材1aの貫通孔の内面に上述したパイプPAの雄ネジと螺合する雌ネジを形成しておけば、蓋部材1aにパイプPAを取り付けることができる。
また、蓋部材1aの貫通孔には雌ネジを形成せず、固定部材11fの上端に蓋部材1aの貫通孔と対応する貫通孔を形成しておき、この貫通孔に雌ネジを形成してもよい。すると、蓋部材1aを、パイプPAと固定部材11fによって挟んだ状態で、固定部材11fにパイプPAを取り付けることができる。
なお、フィルタ12を交換する際に蓋部材1a全体を取り外すようにした場合、パイプPAだけでなく、天板において排気部20の本体21の空間20hと対応する位置に設けられた貫通孔に取り付けられているパイプPBも取り外す必要が生じる。そこで、フィルタ12交換を容易にするために、蓋部材1aに、空間10hの開口を開閉するプレートを設けてもよい。例えば、蓋部材1aに空間10hの開口と対応する窓を設けておき、この窓を開閉することができるプレートを設ける。例えば、蓋部材1aの表面に沿ってスライド移動するプレートを設ける。そして、このプレートに固定部材11fの上述した貫通孔を設ければ、パイプPBを取り外さなくても、パイプPAを着脱するだけで、フィルタ12を交換することができるようになる。
【0064】
また、上記構成とした場合には、浄化部10の本体11および排気部20の本体21とから、底板16を着脱できるようにする。かかる構成とすれば、底板16を取り外せば、吸引手段15や紫外線照射部40も底板16とともに浄化部10の本体11から取り外すことができるので、吸引手段15や紫外線照射部40のメンテナンス性が向上する。この場合、空間20sに収容されている制御機器と、吸引手段15や紫外線照射部40とがコネクタによって簡単に着脱できるようにしておけば、メンテナンス性はより向上する。とくに、吸引手段15と制御機器を繋ぐ配線や、紫外線照射部40と制御機器を繋ぐ配線と、をまとめておけば、メンテナンス性はさらに向上する。
【0065】
<紫外線照射部40の他の例>
上記例では、吸引手段収容部15h内に紫外線照射部40を設けた例を示した。この場合、紫外線照射部40の交換やメンテナンスをする場合には、浄化部10の本体11を取り外す必要がある。
【0066】
一方、吸引手段収容部15h内と分離され、外部と連通された紫外線照射部配置空間41hを設け、この紫外線照射部配置空間41h内に紫外線照射部40を設ければ、紫外線照射部40の交換やメンテナンスが容易になる。
【0067】
例えば、
図5および
図7に示すように、吸引手段収容部15hに、吸引手段収容部15hを貫通するように断面矩形の分離壁41hを設ける。具体的には、内部に浄化部10の本体11の側面間(
図6の上下方向の側面)を貫通する紫外線照射部配置空間41hを有する分離壁41hを設ける。この分離壁41hを、紫外線を透過する材料によって形成する。
【0068】
かかる構造とすれば、紫外線照射部配置空間41h内に、紫外線照射部配置空間41hと外部とを連通する着脱開口41aを通して、紫外線照射部40を挿入離脱可能に収容することができる。そして、分離壁41hを透過した紫外線によって、フィルタ12や空気を浄化することができる。すると、浄化部10の本体11を取り外さなくても、開口を通して紫外線照射部配置空間41hに対して紫外線照射部40を挿入離脱させれば、紫外線照射部40を取り外したり、取り付けたりできるので、紫外線照射部40の交換やメンテナンスが容易になる。
【0069】
<紫外線照射部40Bの他の例>
また、紫外線照射部40は、以下のような構成にしてもよい(
図14~
図16参照)。
図14~
図16に示すように、紫外線照射部40Bは、吸引手段15の上面、つまり、吸引手段15において支持プレート13の下面と対向する面に設けられている。この吸引手段15の上面には、空気を吸引する吸引口15bが設けられており、吸引口15bを覆うように紫外線照射部40Bが設けられている。具体的には、紫外線照射部40Bは、基板41Bを備えている。この基板41Bには貫通孔41hが設けられており、吸引手段15の吸引口15bを覆うように紫外線照射部40Bを吸引手段15の上面に設置すると、貫通孔41hを通して、吸引手段15が空気を吸引できるように形成されている。例えば、貫通孔41hは、吸引手段15の吸引口15bと同じ形状に形成されている。
【0070】
この基板41Bには、複数の紫外線LED42Bが設けられている。例えば、
図16であれば、3つの紫外線LED42Bが基板41Bの上面に取り付けられている。この複数の紫外線LED42Bは、上記のように紫外線照射部40Bを吸引手段15の上面に設置すると、各紫外線LED42Bから放射される紫外線が支持プレート13の貫通孔13hを通してフィルタ12に照射されるように設置されている。複数の紫外線LED42Bの配列はとくに限定されない。例えば、吸引手段15がシロッコファンの場合であれば、シロッコファンの回転軸を中心とする円周上に等角度間隔で並ぶように配設することができる。
【0071】
以上のように紫外線照射部40Bを形成し、吸引手段15の上面に設置すれば、紫外線LED42Bを効果的に冷却することができる。つまり、吸引手段15の作動によって吸引口15bに吸引される空気によって複数の紫外線LED42Bや基板41Bを冷却することができる。すると、紫外線照射部40Bの紫外線LED42Bが発光した際に発生する熱により基板41B等が損傷することを防止できる。そして、紫外線照射部40Bを冷却するための冷却器などを設けなくてもよいので、装置をコンパクトにすることができる。
【0072】
なお、紫外線照射部40Bの複数の紫外線LED42Bは、全て点灯させてもよいが、複数の紫外線LED42Bを順次点灯させるようにすることが望ましい。例えば、3つの紫外線LED42Bを設けた場合には、3つの紫外線LED42Bを順次点灯させれば、フィルタ12に対して常時紫外線が照射された状態を維持しつつ、紫外線照射部40Bの発熱量を抑制することができる。具体的には、1つ目の紫外線LED42Bを約20秒間点灯し、1つ目の紫外線を消灯する前に2つ目の紫外線LED42Bを点灯させる。ついで、2つ目の紫外線LED42Bを約20秒間点灯し、2つ目の紫外線を消灯する前に3つ目の紫外線を点灯させる。そして、3つ目の紫外線を約20秒間点灯し、3つ目の紫外線を消灯する前に再び1つ目の紫外線を点灯させる。そして、1つ目の紫外線LED42Bを約20秒間点灯した後、1つ目の紫外線を消灯する前に再び2つ目の紫外線LED42Bを点灯させる。そして、2つ目の紫外線LED42Bを約20秒間点灯した後、2つ目の紫外線を消灯する前に再び3つ目の紫外線LED42Bを点灯させる。
【0073】
上記のように順次3つの紫外線LED42Bの点灯と消灯を繰り返せば、フィルタ12に対して常時紫外線が照射された状態を維持しつつ、紫外線照射部40Bの発熱量を抑制することができる。
【0074】
また、紫外線照射部40Bは、吸引手段15を作動させたときに、吸引手段15が吸引する空気が流れる流路に複数の紫外線LED42Bが位置するように設ければよく、その配置はとくに限定されない。
また、紫外線照射部40Bに基板41Bは必ずしも設けなくてもよい。その場合には、複数の紫外線LED42Bを吸引手段15の表面であって、吸引手段15が吸引する空気が流れる流路(例えば吸引口15bの周囲に複数の紫外線LED42Bを設置してもよい。
【0075】
<浄化槽50>
排出される空気をより高度に浄化した状態にする上では、外部に空気を排気する前に、浄化液に空気を接触させることが望ましい。例えば、
図10に示すように、浄化液を含侵させた浄化部材51を内蔵する浄化槽50を設けて、配管P2を介して浄化部10から排気された空気を浄化槽50に供給すれば、排出される空気を浄化することができる。
【0076】
図10に示すように、浄化槽50の一方の側面には、流入口50aが設けられており、その他方の側面に空気の流出口50bが設けられている。この浄化槽50の内部には、流入口50aと流出口50bとを連通する空間50hが設けられている。この空間50h内には、複数の仕切り板50sが設けられており、この複数の仕切り板50sによって流入口50aと流出口50bとの間を空気が蛇行して通過する流路が形成されるようになっている(
図10(B)参照)。しかも、隣接する仕切り板50s間には、不織布等の液体を含侵できる浄化部材51がそれぞれ配置されており、この浄化部材51には浄化液が含侵されている。そして、浄化部材51は、流入口50aから流入した空気の全てまたは大部分が浄化部材51と透過した後、流出口50bから排出されるように設けられている。したがって、流入口50aから流入した空気を、浄化部材51を透過する際に、浄化部材51に含侵されている浄化液と接触させることができる。すると、浄化液によっても空気を浄化できるので、空気をより浄化した状態で外部に排出することができる。
【0077】
また、浄化部材51に含侵している浄化液が蒸発して、浄化部材51に乾燥した部分ができると、その部分を通過した空気は浄化液で浄化されない状態で排出されることになる。この様な状態を防ぐ上では、浄化部材51を適宜交換する必要がある。かかる問題を解消する上では、浄化部材51に浄化液を供給する機構を浄化槽50に設けておくことが望ましい。
【0078】
例えば、浄化槽50の内部に、浄化液を貯留することができる貯留空間(
図10(A)のハッチングされている空間)を設けておき、この貯留空間内に浄化液を貯留し、貯留空間内の浄化液に浄化部材51の下端が浸漬された状態とする。この場合、浄化液が存在している間は、浄化部材51に浄化液が含侵された状態を維持できるので、長期間、浄化部材51を交換しないでも空気を浄化する機能を維持できる。この場合、流入口50aから流入した空気が通過する流路は浄化液の無い空間、つまり、浄化液よりも上方の空間になる。したがって、浄化部材51は、その下端部は浄化液が含侵されているが、浄化液から露出している部分が流入口50aから流入した空気の全てまたは大部分が浄化部材51を透過した後、流出口50bから排出されるように設けられる。
【0079】
なお、浄化部材51に含侵させる浄化液はとくに限定されないが、ウイルスなどを死滅させたり活性を弱めたりすることができるものが望ましい。
【0080】
また、上記例では、浄化槽50の流入口50aと排気部20の排出口20bとを配管P2によって連通した場合を説明したが、浄化槽50を排気部20の本体21の空間20h内に配置してもよい。
【0081】
<空気浄化装置の素材について>
上述した空気浄化装置の各部を構成する素材はとくに限定されないが、装置各部の構造物(壁を形成する部材など)を段ボールなどのように焼却処理することができる素材で形成されていれば、使用した空気浄化装置の処理が容易になるので好ましい。具体的には、使用した空気浄化装置からフィルタケース14と吸引手段15を取り外せは、そのまま焼却処理できるので、処理が容易になる
なお、フィルタケース14は、処理する際にフィルタ12ごとアルコールなどに浸漬して殺菌処理をすることが好ましい。すると、アルコール浸漬処理を行っている間もフィルタ12を確実に保持しておけるものが望ましい。したがって、フィルタケース14は、樹脂やアルミなどのように軽量かつある程度強度を保てる素材によって形成しておくことが好ましく、この場合には、フィルタ12を安全に殺菌処理できるから、殺菌処理後のフィルタ12およびフィルタケース14の廃棄も容易になる。
【実施例】
【0082】
<実施例1>
本発明の空気浄化装置において、紫外線照射部の発熱の影響を確認した。
【0083】
実験では、実質的に
図14、
図15に示す構造を有する空気浄化装置を使用した。
【0084】
実験に使用した空気浄化装置は、外形が高さ273mm、幅179mm、奥行114mmの略長方形状である。
【0085】
空気浄化装置の浄化部において、フィルタが収容されている空間(
図14の空間10h)の断面形状は、幅113mm 奥行113mmの略矩形であり、吸引口は直径41mmの円形であって、内径32mmのパイプが接続されている。
排気部の流路(
図13の空間20h)の断面形状は、幅59mm、奥行68mmの略矩形であり、排出口は直径41mmの円形であって、内径32mmのパイプが接続されている。
【0086】
浄化部のフィルタには、HEPAフィルタ(日本無機株式会社製 型番:ATML-Z-E38BK)とHEPAフィルタ(日本無機株式会社製 型番:ATML-Z-E38)とを2段に重ねて使用した。各HEPAフィルタの圧力損失は115Paであり、2段に重ねた状態での圧力損失は約230Paである。
【0087】
ファンが収容されている吸引手段収容部(
図14の15h)の高さは73mmであり、吸引手段収容部とフィルタが収容されている空間とを分離する壁(
図14、
図15の符号13)には、両者を連通する貫通孔(
図14、
図15の符号13h)が形成されており、この貫通孔は、幅70mm、奥行70mmの略矩形である。
吸引手段収容部と排気部の流路とを分離する壁には、両者を連通する貫通孔(
図15の符号10s)が形成されており、この貫通孔は、幅58mm、高さ31mmの略矩形である。
吸引手段には、上面に吸引口を有するファン(山洋電機株式会製 型番:SanAceB97 9BMB12S201)を使用した。
【0088】
紫外線照射部には、ファンの吸引口と同じ形状の貫通孔が形成されたアルミ基板上に、3つの紫外線LED(日亜化学製 型番:NCSC334A)が直径20mmの円周上に位置するように設けた(
図16参照)。この3つの紫外線LEDが取り付けられたアルミ基板を、その貫通孔とファンの吸引口とが一致するようにファンに取り付けた。その状態では、アルミ基板は、吸引手段収容部とフィルタが収容されている空間とを分離する壁に形成された貫通孔を通して、3つの紫外線LEDからフィルタに紫外線が照射されるように配置している。
なお、ファンの高さが33mmであるので、アルミ基板をファンの上面に取り付けた状態において、吸引手段収容部とフィルタが収容されている空間とを分離する壁から紫外線LEDの上面までの距離(
図14、
図15の上下方向の距離)は30mmである。
【0089】
実験は、恒温室内(室温26.5℃)と、一般的な実験室内と、で実施し、吸引手段収容部内の温度としてファンの上流側(ファンの吸引口から15mmの位置)の温度を測定し、排気温度として排気部の流路に連結されているパイプの出口の温度を測定した。なお、実験室内での実験は、エアコンディショナーの設定温度が25℃の条件で実施した。
【0090】
ファンは、浄化部に接続されたパイプ入口の流速が約4.2~4.5m/s、排気部の流路に接続されたパイプ出口の流速が約5.5~6.0m/s、となるように作動させた。
【0091】
実験では、3つの紫外線LEDの点灯を順次切り替えて、少なくとも一つの各紫外線LEDからフィルタに紫外線が照射されている状態を維持するように制御した。なお、各紫外線LEDの点灯時間は約20秒とした。
【0092】
実験結果を
図17(A)、(B)に示す。
図17(A)に示すように、恒温室内で、空気浄化装置のファンの作動と紫外線LEDの点灯を開始することによって、吸引手段収容部内部の温度が上昇し、排気温度も上昇することが確認できる。この温度上昇は、紫外線LEDの点灯に起因するものであると考えられる。しかし、ファンの作動と紫外線LEDの点灯を開始してから約30分経過すると、吸引手段収容部の内部の温度が約32度、排気温度が約31.6度になり、その後は温度がほぼ一定に維持されることが確認された。
【0093】
図17(B)に示すように、実験室内で、空気浄化装置のファンの作動と紫外線LEDの点灯を開始した場合でも、最初は吸引手段収容部の内部の温度および排気温度がともに上昇することが確認できる。この温度上昇は、紫外線LEDの点灯に起因するものであると考えられる。しかし、ファンの作動と紫外線LEDの点灯を開始してから約30分経過すると、恒温室内の実験と同様に、吸引手段収容部の内部の温度および排気温度はほぼ一定に維持されることが確認された。
【0094】
つまり、紫外線LEDの点灯を制御しそのレイアウトを調整すれば、紫外線が常時フィルタに照射される条件とした場合でも、空気浄化装置内の温度が高くなりすぎない状態を維持できることが確認された。
【0095】
<実施例2>
上記実験1で使用した紫外線LED(日亜化学製 型番:NCSC334A)によって、フィルタに捕捉したウイルスを不活化させることができることを確認した。
【0096】
実験は以下の表1のように実施した。
まず、ウイルス(鳥インフルエンザウイルス A/whistling swan/Shimane/499/83(H5N3)(4.2×10
8EID
50/0.1mL)、2014.11.4)を10
6.0EID
50/0.1mLに希釈した。
【表1】
つぎに、希釈したウイルス液1.0mLを、6cmのシャーレ(21cm
2)に入れる。
そのシャーレを紫外線LEDの直下(約3cm)に置いて、所定の時間、紫外線LEDから紫外線を照射する。
その後、シャーレのウイルス液を回収して、10倍階段希釈した後、10日齢発育鶏卵の漿尿膜腔内に0.1mLずつ接種した。
ウイルス液を接種した発育鶏卵を、37℃で2日間培養した後、赤血球凝集(HA)試験により漿尿膜腔でのウイルス増殖の有無を確認し、試料中のウイルス力価を、Reed and Muenchの方法により算出する。
【0097】
実験結果を以下の表2に示す。
表2に示すように、15秒以上紫外線LEDから紫外線を照射すれば、ウイルスを不活化させることができることが確認された。
したがって、紫外線LED(日亜化学製 型番:NCSC334A)から15秒以上の間フィルタに紫外線を照射すれば、フィルタに捕捉されたウイルスを不活化させることができる可能性が確認された。
【表2】
【産業上の利用可能性】
【0098】
本発明の空気浄化装置は、例えば老人福祉施設や病院、企業や大学などの研究施設や養鶏場・養豚場・牛の飼育場等において、室内の空気を浄化する装置や、ウイルス等が蔓延している場所で作業を行う作業者が使用する空気浄化装置に適している。また、大規模地震が大都会で発生した場合など、劣悪な環境で作業する人々を危険な粉じんから守ることができる。
【符号の説明】
【0099】
1 空気浄化装置
10 浄化部
12 フィルタ
15 吸引手段
20 排気部
30 気流形成部
40 紫外線照射部
41 分離壁
41h 紫外線照射部配置空間
41a 着脱開口
50 浄化槽
51 浄化部材