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特許7018235微分変換型スペクトル光電検知器及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-02
(45)【発行日】2022-02-10
(54)【発明の名称】微分変換型スペクトル光電検知器及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 31/0264 20060101AFI20220203BHJP
   G01J 1/02 20060101ALI20220203BHJP
【FI】
H01L31/08 M
G01J1/02 B
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021139970
(22)【出願日】2021-08-30
【審査請求日】2021-08-30
(31)【優先権主張番号】202110116422.5
(32)【優先日】2021-01-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】519295166
【氏名又は名称】▲広▼州大学
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】特許業務法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】潘 書生
(72)【発明者】
【氏名】范 梓豪
(72)【発明者】
【氏名】葛 軍
(72)【発明者】
【氏名】劉 志宇
【審査官】吉岡 一也
(56)【参考文献】
【文献】特開平02-237171(JP,A)
【文献】国際公開第2010/013748(WO,A1)
【文献】特開平07-318419(JP,A)
【文献】特開昭60-169724(JP,A)
【文献】特開2002-310793(JP,A)
【文献】国際公開第2018/012076(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 31/02-31/0392,31/08-31/119
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上から下に順次配置された基板、半導体薄膜及び電極を含み、電極は半導体薄膜の下表面の両端に配置されている、
基板はシリコンであり、半導体薄膜は酸化チタン薄膜、酸化銅薄膜、酸化亜鉛薄膜、酸化スズ薄膜の一種であり、電極は金薄膜である、ことを特徴とする微分変換型スペクトル光電検知器。
【請求項2】
請求項1に記載の微分変換型スペクトル光電検知器に基づくスペクトル光電検知システムであって、光スペクトル光電検知素子、変調光源、信号発生器及びソースメータを含み、
ソースメータの両端はそれぞれ光スペクトル光電検知素子両端の電極に接続されており、変調光源は光スペクトル光電検知素子の半導体薄膜に正対しており、信号発生器は変調光源に接続されている、ことを特徴とするスペクトル光電検知システム。
【請求項3】
変調光源はLED、レーザダイオード及びキセノン灯のうちの一種である、ことを特徴とする請求項2に記載のスペクトル光電検知システム。
【請求項4】
請求項1に記載の微分変換型スペクトル光電検知器の製造方法は、
S1、高周波マグネトロンスパッタリング法を用いて基板の上に半導体薄膜をめっきする工程と、
S2、半導体薄膜表面の両端に電極として金属を堆積する工程とを含む、ことを特徴とする製造方法。
【請求項5】
ステップS1は、基板を洗浄し、基板表面の有機汚染物を除去する工程と、
基板をマグネトロンスパッタリング装置の真空キャビティに入れる工程と、
金属をターゲット材料とし、アルゴンガスでターゲット面を予備清掃する工程と、
中間周波数マグネトロンスパッタリング方法を用いて、基板に半導体薄膜を堆積成長する工程とを含む、ことを特徴とする請求項4に記載の製造方法。
【請求項6】
半導体薄膜が酸化銅薄膜であり、抵抗値が0.001~0.1Ω・cmであるp型Siを成長基板とする場合、ステップS1は、
基板をそれぞれエタノール、アセント溶媒に入れ、超音波で3~10分間洗浄し、基板表面の有機汚染物を除去する工程と、
洗浄した基板をプラズマ洗浄機に入れて洗浄する工程と、
基板をマグネトロンスパッタリング装置の真空キャビティに入れ、バックグラウンド真空が10-3~10-6Paとする工程と、
金属銅をターゲット材料とし、まず、アルゴンガスでターゲット面を予備清掃してから、酸素に切り替え、圧力強度が0.1~5Paとする工程と、
中間周波数マグネトロンスパッタリング方法を用いて、基板に酸化銅薄膜を堆積成長する工程とを含み、
堆積温度は30~150℃であり、スパッタリング出力は30~150Wであり、薄膜厚さは10~200nmである、ことを特徴とする請求項5に記載の製造方法。
【請求項7】
半導体薄膜が酸化亜鉛薄膜であり、真性Siを成長基板とする場合、ステップS1は、
基板をそれぞれエタノール、アセント溶媒に入れ、超音波で3~10分間洗浄し、基板表面の有機汚染物を除去する工程と、
洗浄した基板をプラズマ洗浄機に入れて洗浄する工程と、
基板をマグネトロンスパッタリング装置の真空キャビティに入れ、バックグラウンド真空が10-3~10-6Paとする工程と、
金属亜鉛をターゲット材料とし、まず、アルゴンガスでターゲット面を予備清掃してから、酸素に切り替え、圧力強度が0.1~5Paとする工程と、
中間周波数マグネトロンスパッタリング方法を用いて、基板にZnO2薄膜を堆積成長する工程とを含み、
堆積温度は30~150℃であり、スパッタリング出力は30~150Wであり、薄膜厚さは10~500nmである、ことを特徴とする請求項5に記載の製造方法。
【請求項8】
半導体薄膜が酸化スズ薄膜であり、真性Siを成長基板とする場合、ステップS1は、
基板をそれぞれエタノール、アセント溶媒に入れ、超音波で3~10分間洗浄し、基板表面の有機汚染物を除去する工程と、
洗浄した基板をプラズマ洗浄機に入れて洗浄する工程と、
基板をマグネトロンスパッタリング装置の真空キャビティに入れ、バックグラウンド真空が10-3~10-6Paとする工程と、
金属スズをターゲット材料とし、まず、アルゴンガスでターゲット面を予備清掃してから、酸素に切り替え、圧力強度が0.1~5Paとする工程と、
中間周波数マグネトロンスパッタリング方法を用いて、基板に酸化スズ薄膜を堆積成長する工程とを含み、
堆積温度は30~150℃であり、スパッタリング出力は30~120Wであり、薄膜厚さは10~200nmである、ことを特徴とする請求項5に記載の製造方法。
【請求項9】
半導体薄膜が酸化チタン薄膜であり、真性Siを成長基板とする場合、ステップS1は、
基板をそれぞれエタノール、アセント溶媒に入れ、超音波で3~10分間洗浄し、基板表面の有機汚染物を除去する工程と、
洗浄した基板をプラズマ洗浄機に入れて洗浄する工程と、
基板をマグネトロンスパッタリング装置の真空キャビティに入れ、バックグラウンド真空が10-3~10-6Paとする工程と、
金属チタンをターゲット材料とし、まず、アルゴンガスでターゲット面を予備清掃してから、酸素を注入し、酸素とアルゴンガスとの比例を1:5~1:30に調整し、圧力強度が0.1~5Paとする工程と、
中間周波数マグネトロンスパッタリング方法を用いて、基板に酸化チタン薄膜を堆積成長する工程とを含み、
堆積温度は30~150℃であり、スパッタリング出力は30~150Wであり、薄膜厚さは10~100nmである、ことを特徴とする請求項5に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学的検出器技術分野に関し、具体的には、微分変換型広域スペクトル光電検知器及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
伝統的な光電検知器は、光信号を電気信号に変換できる光電素子であり、通信、医療、熱画像形成、環境監視及び国防科学技術分野で広く使用されている。無人運転、宇宙配備武器システムなどの発展に伴い、市場は、高応答特性、高検知感度、応答迅速などの伝統的な特性を有する以外、昼間(強いバックグラウンド雑音下)で使用できる広域スペクトル光電検知器を得ることが切望される。
【0003】
高感度光電検知器は極めて飽和しやすく、即ち、光電流は光強度の増大に従って増大しないため、昼間の使用時に光電検知器の高感度を維持できるために、一般的に、素子は相応なフィルタ片を組み合わせて使用し、信号光とバックグラウンド雑音を分離させ、このように、必然的に検知器の広域スペクトル検知特性の損失を招き、素子の応用シーンを大幅に制限する。また、現在、多くの研究チームは、ドーピング工程、トポロジー構造構築、量子ドット修飾などの形式を介して光電検知材料の感度を向上させ、暗室にて微弱光の励起下で相当な光電流を得るようにしており、このような向上は非常に限られている一方で、昼間での動作を飽和させやすくし、さらに応用シーンを制限する。これに対して、微分演算における脱直流(安定バックグラウンド光)の特性を利用して、微分変換型光電検知素子は昼間でも極めて高感度を保つことが可能になる。また、時間に対する微分特性を利用して、素子が発生する光電流の大きさは信号光強度の影響を受ける以外、信号光変化速度の影響を受け、これは素子性能の向上のために別の一つの次元を提供する。
【0004】
国内外では、微分変換型光電検知素子を研究するチームが非常に少なく、三明学院の崔積適らは『新規静電容量式光電検知器』(特許出願番号CN 111668327 A)で、電極板を伝統的な光電変換素子の両側に配置する静電容量式光電検知器を提供し、デンマークコペンハーゲン大学Patrick J Windpassingerらは『測定の科学と技術』(Measurement Science and Technology、2009、20巻、55301ページ)で微分回路を伝統的な光電検知素子の後段とし、超低ノイズ差分交流結合光電検知器を実現したことを報告した。しかし、上記報告では、依然として以下の問題が存在する:(1)光検知器に電気学演算素子を加える結合方式は、素子の構造が比較的複雑である。(2)強いバックグラウンド光条件下での検知器の飽和特性を本質的に変化させず、依然として昼間使用の欠点から抜け出すことができない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、上記従来技術が存在する不足を克服するために、素子構造が簡単で、昼間で使用可能な微分変換型広域スペクトル光電検知器及びその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の目的は、以下の技術案によって実現される。
微分変換型広域スペクトル光電検知器は、上から下に順次配置された基板、半導体薄膜及び電極を含み、電極は半導体薄膜の上表面の両端に配置されている。
【0007】
好ましくは、基板はシリコンであり、半導体薄膜は酸化チタン薄膜、酸化銅薄膜、酸化亜鉛薄膜、酸化スズ薄膜の一種であり、電極は金薄膜である。
【0008】
上記微分変換型広域スペクトル光電検知器に基づく広域スペクトル光電検知システムは、光スペクトル光電検知素子、変調光源、信号発生器及びソースメーを含み、ソースメータの両端はそれぞれ光スペクトル光電検知素子両端の電極に接続されており、変調光源は光スペクトル光電検知素子の半導体薄膜に正対しており、信号発生器は変調光源に接続されている。
【0009】
好ましくは、変調光源はLED、レーザダイオード及びキセノン灯のうちの一種であり、キセノン灯はモノクロメーターに合わせて使用される。
【0010】
上記微分変換型広域スペクトル光電検知器の製造方法は、
S1、高周波マグネトロンスパッタリング法を用いて基板の上に半導体薄膜をめっきする工程と、
S2、半導体薄膜表面の両端に電極として金属を堆積する工程とを含む。
【0011】
好ましくは、ステップS1は、基板を洗浄し、基板表面の有機汚染物を除去する工程と、基板をマグネトロンスパッタリング装置の真空キャビティに入れる工程と、金属をターゲット材料とし、アルゴンガスでターゲット面を予備清掃する工程と、中間周波数マグネトロンスパッタリング方法を用いて、基板に半導体薄膜を堆積成長する工程とを含む。
【0012】
好ましくは、半導体薄膜が酸化銅薄膜であり、抵抗値が0.001~0.1Ω・cmであるp型Siを成長基板とする場合、ステップS1は、基板をそれぞれエタノール、アセント溶媒に入れ、超音波で3~10分間洗浄し、基板表面の有機汚染物を除去する工程と、洗浄した基板をプラズマ洗浄機に入れて洗浄する工程と、基板をマグネトロンスパッタリング装置の真空キャビティに入れ、バックグラウンド真空が10-3~10-6Paとする工程と、金属銅をターゲット材料とし、まず、アルゴンガスでターゲット面を予備清掃してから、酸素に切り替え、圧力強度が0.1~5Paとする工程と、中間周波数マグネトロンスパッタリング方法を用いて、基板に酸化銅薄膜を堆積成長する工程とを含み、堆積温度は30~150℃であり、スパッタリング出力は30~150Wであり、薄膜厚さは10~200nmである。
【0013】
好ましくは、半導体薄膜が酸化亜鉛薄膜であり、真性Siを成長基板とする場合、ステップS1は、基板をそれぞれエタノール、アセント溶媒に入れ、超音波で3~10分間洗浄し、基板表面の有機汚染物を除去する工程と、洗浄した基板をプラズマ洗浄機に入れて洗浄する工程と、基板をマグネトロンスパッタリング装置の真空キャビティに入れ、バックグラウンド真空が10-3~10-6Paとする工程と、金属亜鉛をターゲット材料とし、まず、アルゴンガスでターゲット面を予備清掃してから、酸素に切り替え、圧力強度が0.1~5Paとする工程と、中間周波数マグネトロンスパッタリング方法を用いて、基板にZnO2薄膜を堆積成長する工程とを含み、堆積温度は30~150℃であり、スパッタリング出力は30~150Wであり、薄膜厚さは10~500nmである。
【0014】
好ましくは、半導体薄膜が酸化スズ薄膜であり、真性Siを成長基板とする場合、ステップS1は、基板をそれぞれエタノール、アセント溶媒に入れ、超音波で3~10分間洗浄し、基板表面の有機汚染物を除去する工程と、洗浄した基板をプラズマ洗浄機に入れて洗浄する工程と、基板をマグネトロンスパッタリング装置の真空キャビティに入れ、バックグラウンド真空が10-3~10-6Paとする工程と、金属スズをターゲット材料とし、まず、アルゴンガスでターゲット面を予備清掃してから、酸素に切り替え、圧力強度が0.1~5Paとする工程と、中間周波数マグネトロンスパッタリング方法を用いて、基板に酸化スズ薄膜を堆積成長する工程とを含み、堆積温度は30~150℃であり、スパッタリング出力は30~120Wであり、薄膜厚さは10~200nmである。
【0015】
好ましくは、半導体薄膜が酸化チタン薄膜であり、真性Siを成長基板とする場合、ステップS1は、基板をそれぞれエタノール、アセント溶媒に入れ、超音波で3~10分間洗浄し、基板表面の有機汚染物を除去する工程と、洗浄した基板をプラズマ洗浄機に入れて洗浄する工程と、基板をマグネトロンスパッタリング装置の真空キャビティに入れ、バックグラウンド真空が10-3~10-6Paとする工程と、金属チタンをターゲット材料とし、まず、アルゴンガスでターゲット面を予備清掃してから、酸素を注入し、酸素とアルゴンガスとの比例を1:5~1:30に調整し、圧力強度が0.1~5Paとする工程と、中間周波数マグネトロンスパッタリング方法を用いて、基板に酸化チタン薄膜を堆積成長する工程とを含み、堆積温度は30~150℃であり、スパッタリング出力は30~150Wであり、薄膜厚さは10~100nmである。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、従来技術に対して、以下の利点を有する。
【0017】
本発明は、Si/TiOx、p-Si/CuO、Si/ZnO、Si/SnO2、Si/TiOx,x=0.52ヘテロ接合微分変換型光検知素子を製造し、そのうち、P型SiとP型CuO薄膜はヘテロ接合を形成し、真性型Siとn型ZnO、SnO2、TiOx,x=0.52薄膜はヘテロ接合を形成する。得られたSi/TiOx、p-Si/CuO、Si/ZnO、Si/SnO2、Si/TiOx,x=0.52ヘテロ接合(電圧-電流曲線が非線形から得られる可能)微分変換型光検知素子は、280~1150nm、特に650~940nm波長範囲に対して、高感度、迅速検知を実現することができ、感度高い特性を有するほか、紫外線、可視光線及び赤外線波長広域スペクトル範囲内でも応答でき、光強度信号の微分形式を電流信号の方式で出力することを実現する。この素子の制作が簡単で、コストが安価で、性能に優れており、光学通信、昼間レーザレーダ、動き検出、振動監視などの分野への応用が期待される。
【0018】
本出願の一部を構成する添付図面は、本発明を更なる理解するために提供するものであり、本発明の例示的な実施例及びその説明は、本発明を解釈するためのものであり、本発明の不適切な限定を構成しない。図中:
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の微分変換型広域スペクトル光電検知器の側面図である。
図2】本発明の広域スペクトル光電検知システムの構造図である。
図3a】本発明のp-Si/CuOヘテロ接合微分変換型広域スペクトル光電検知器の電流-電圧曲線図である。
図3b】本発明のSi/ZnOヘテロ接合微分変換型広域スペクトル光電検知器の電流-電圧曲線図である。
図3c】本発明のSi/SnO2ヘテロ接合微分変換型広域スペクトル光電検知器の電流-電圧曲線図である。
図3d】本発明のSi/TiOx,x=0.52ヘテロ接合微分変換型広域スペクトル光電検知器の電流-電圧曲線図である。
図4】スイッチング変調LED(453nm)を用いて照射し、本発明のp-Si/CuOヘテロ接合微分変換型広域スペクトル光電検知器(0Vバイアス電圧)から発生する両極性パルス式光電流図である。
図5】スイッチング変調LED(453nm)を用いて照射し、本発明のSi/ZnOヘテロ接合微分変換型広域スペクトル光電検知器(0Vバイアス電圧)から発生する両極性パルス式光電流図である。
図6】スイッチング変調LED(453nm)を用いて照射し、本発明のSi/SnO2ヘテロ接合微分変換型広域スペクトル光電検知器(0Vバイアス電圧)から発生する両極性パルス式光電流図である。
図7】スイッチング変調LED(453nm)を用いて照射し、本発明のSi/TiOx,x=0.52ヘテロ接合微分変換型広域スペクトル光電検知器(0Vバイアス電圧)から発生する両極性パルス式光電流図である。
図8】本発明のp-Si/CuO、Si/ZnO、Si/SnO2、Si/TiOx,x=0.52ヘテロ接合微分変換型光検知素子が同じ起動速度下で異なる波長の応答度図である。
図9a】正弦波変調LED光(453nm)照射下で、本発明のp-Si/CuOヘテロ接合微分変換型光検知素子(0Vバイアス電圧)から発生する光電流と変調光強微分形式対比図である。
図9b】三角波変調のLED光(453nm)照射下で、本発明のp-Si/CuOヘテロ接合微分変換型光検知素子(0Vバイアス電圧)から発生する光電流と変調光強度微分形式対比図である。
図9c】準正弦波変調のLED光(453nm)照射下で、本発明のp-Si/CuOヘテロ接合微分変換型光検知素子(0Vバイアス電圧)から発生する光電流と変調光強度微分形式対比図である。
図10】異なる周波数の正弦波変調のLED光(453nm)を用いて照射し、本発明のp-Si/CuOヘテロ接合微分変換型光検知素子(0Vバイアス電圧)から発生する電流ピーク値と周波数との線形関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面と実施例を結び付けながら、本発明をさらに説明する。
【0021】
実施例1:
図1を参照して、微分変換型広域スペクトル光電検知器は、上から下に順次配置された基板1、半導体薄膜2及び電極3を含み、電極3は半導体薄膜2の上表面の両端に配置されている。
【0022】
そのうち、、基板1は商用シリコンであり、電極3は金薄膜であり、本発明の微分変換型広域スペクトル光電検知器は、強いバックグラウンド光状況下で、紫外線-可視光-近赤外光に対する敏感検出を実現することができ、且つ光強度信号の微分形式を電流信号として出力する自己作動型シリコン系金属酸化物薄膜微分変換型広域スペクトル光電検知器である。
【0023】
本実施例では、半導体薄膜2は酸化銅(CuO)薄膜であり、抵抗値が0.001~0.1Ω・cmであるp型Siを成長基板1とする場合、p-Si/CuO微分変換型光電検知器の製造方法は、以下に示すとおりである。
【0024】
基板1をそれぞれエタノール、アセント溶媒に入れ、超音波で5分間洗浄し、基板1表面の有機汚染物を除去する。洗浄した基板1をプラズマ洗浄機(出力120W、2分間)に入れて洗浄し、基板1をマグネトロンスパッタリング装置の真空キャビティに入れ、バックグラウンド真空が2×10-4Paとし、金属銅をターゲット材料とし、アルゴンガスでターゲット面を清掃してから、酸素に切り替え、圧力強度が0.4Paとし、中間周波数マグネトロンスパッタリング方法を用いて、CuO薄膜を堆積成長する。堆積温度は95℃であり、スパッタリング出力は75Wであり、薄膜平均厚さは34.3nmである。CuO薄膜を成長させた後、素子を真空キャビティに入れ、バックグラウンド真空が3×10-3Paとし、熱蒸発技法を用いて、マスク版を補助する方法で、CuO薄膜表面に電極3としての二つの厚さ50nmの金(Au)を堆積させる。0Vバイアス電圧時、素子の暗電流は4.44nAであり、入射光出力密度は16.4μW/cm2であり、光照射面積は0.12cm2であり、光電流ピーク値は26.55uAである。
【0025】
図2を参照して、上記微分変換型広域スペクトル光電検知器の広域スペクトル光電検知システムは、光スペクトル光電検知素子、変調光源4、信号発生器及びソースメータ5を含み、ソースメータ5の両端はそれぞれ光スペクトル光電検知素子両端の電極3に接続されており、変調光源4は光スペクトル光電検知素子の半導体薄膜2に正対しており、信号発生器は変調光源4に接続されている。波形変調の光源によって出力される光強度信号照射を決定する下で、素子によって光電流が出力することは、すべて光強度微分形式(例えば、酸化銅を用いて半導体薄膜2とする場合、素子の相関係数が0.95より大きい)に従う。ビームスイッチ変調方式を用いて、光照射がオンにする瞬間に、素子は正方向パルス形式光電流を発生することができ、光照射がオフする瞬間に、素子は負方向パルス形式電流を発生することができる。特定設計された電極3では、光照射がオン・オフする瞬間に、同一方向パルス形式電流を発生することができる。
【0026】
本実施例では、発光LEDを光源とし、中心波長はファイバ光学分光器(Ocean-200~850nm)によって標定される。光出力はレーザパワーメータ(Thorlabs-PM100A)によって標定される。光源は上記ステップで得られた光検知器上に照射される。キーサイト・テクノロジー(KeySight-B2902A)デジタルソースメータ5を用いて素子が発生する電流を記録し、素子のバイアス電圧は0Vとする。信号発生器を用いて発光LEDを駆動し、入射光の周期的オン/オフ及び波形変調を実現する。
【0027】
実験データ:
p-Si/CuOヘテロ接合微分変換型広域スペクトル光電検知器の電流-電圧曲線は図3aに示すとおりである。
【0028】
850nm近赤外光に対するp-Si/CuO微分変換型光電検知器の応答度は1.34mA/Wであった。
【0029】
広域スペクトル光電検知システムでは、p-Si/CuO微分変換型光電検知器のオン/オフ変調LED光源に対する応答:中心波長が453nmであり、半値全幅が24nmであるLED光源を用いて、スイッチング変調のLED(453nm)を用いて照射し、p-Si/CuOヘテロ接合微分変換型光検知素子(0Vバイアス電圧)から発生する両極性パルス式光電流は図4に示すとおりであり、光照射がオンにする瞬間(0mW/cm2から7mW/cm2まで、オン時間69ms)0Vバイアス電圧下で、検知器から0.2uAパルス式光電流を発生した。同じ動作環境下で、光照射がオンにする瞬間(0mW/cm2から28nW/cm2まで、オン時間30ms)に、検知器から1.5uAパルス式光電流を発生した。
【0030】
異なる周波数の正弦波変調のLED(453nm)を用いて照射し、p-Si/CuOヘテロ接合微分変換型光検知素子(0Vバイアス電圧)から発生する電流ピーク値と周波数との線形関係は図10に示すとおりである。
【0031】
広域スペクトル光電検知システムでは、p-Si/CuO微分変換型光電検知器の正弦波変調LED光源に対する応答:中心波長が453nmであり、半値全幅が24nmであるLED光源を用いて、図9aを参照して、1Hz正弦波信号を用いて変調し、ピーク値光出力密度が1.2mW/cm2であり、0Vバイアス電圧下で、検知器から出力する光電流形式とレーザパワーメータにより取得された光強度信号の微分形式との相関係数が0.964であった。2Hz正弦波信号を用いて変調し、ピーク値光出力密度が1.2mW/cm2であり、検知器から出力する光電流形式とレーザパワーメータにより取得された光強度信号の微分形式との相関係数が0.985であった。
【0032】
広域スペクトル光電検知システムでは、p-Si/CuO微分変換型光電検知器の三角波変調LED光源に対する応答:中心波長が453nmであり、半値全幅が24nmであるLED光源を用いて、図9bを参照して、1Hz三角波信号を用いて変調し、ピーク値光出力密度が1.2mW/cm2であり、0Vバイアス電圧下で、検知器から出力する光電流形式とレーザパワーメータにより取得された光強度信号の微分形式との相関係数が0.982であった。
【0033】
広域スペクトル光電検知システムでは、p-Si/CuO微分変換型光電検知器の準正弦波変調LED光源に対する応答:中心波長が453nmであり、半値全幅が24nmであるLED光源を用いて、図9cを参照して、1Hz準正弦波信号を用いて変調し、ピーク値光出力密度が1.2mW/cm2であり、0Vバイアス電圧下で、検知器から出力する光電流形式とレーザパワーメータにより取得された光強度信号の微分形式との相関係数が0.969であった。
【0034】
実施例2:
実施例2は、半導体薄膜2が酸化亜鉛(ZnO)薄膜であるという点で、実施例1とは異なる
【0035】
この場合、Si/ZnO微分変換型光電検知器の製造方法は、以下に示すとおりである。
【0036】
電気抵抗が3000Ω・cmより大きい真性Siを成長基板1とし、洗浄処理ステップは実施例1と同じである。基板1をマグネトロンスパッタリング装置の真空キャビティに入れ、バックグラウンド真空が2×10-4Paとし、金属亜鉛をターゲット材料とし、まず、アルゴンガスでターゲット面を清掃してから、酸素に切り替え、圧力強度が0.7Paとし、中間周波数マグネトロンスパッタリング方法を用いて、ZnO薄膜を堆積成長した。堆積温度は95℃であり、スパッタリング出力は70Wであり、薄膜平均厚さは30.4nmであった。ZnO薄膜を成長した後、素子を真空キャビティに入れ、バックグラウンド真空が3×10-3Paとし、熱蒸発技法を用いて、マスク版を補助する方法で、ZnO薄膜表面に電極3としての二つの厚さ50nmの金(Au)を堆積させた。0Vバイアス電圧時、素子の暗電流は0.18nAであり、入射光出力密度は16.4μW/cm2であり、光照射面積は0.12cm2であり、光電流ピーク値は1.32nAであった。
【0037】
実験データ:
Si/ZnOヘテロ接合微分変換型広域スペクトル光電検知器の電流-電圧曲線は図3bに示すとおりである。
【0038】
850nm近赤外光に対するSi/ZnO微分変換型光電検知器の応答度は0.07mA/Wであった。
【0039】
広域スペクトル光電検知システムでは、Si/ZnO微分変換型光電検知器のオン/オフ変調LED光源に対する応答:中心波長が453nmであり、半値全幅が24nmであるLED光源を用いて、スイッチング変調のLED(453nm)を用いて照射し、Si/ZnOヘテロ接合微分変換型光検知素子(0Vバイアス電圧)から発生する両極性パルス式光電流は図5に示すとおりであり、光照射がオンにする瞬間(0mW/cm2から7mW/cm2まで、オン時間70ms)0Vバイアス電圧下で、検知器から2.7nAパルス式光電流を発生した。
【0040】
実施例3:
実施例3は、半導体薄膜2が酸化スズ(SnO)薄膜であるという点で、実施例1とは異なる
【0041】
この場合、Si/SnO微分変換型光電検知器の製造方法は、以下に示すとおりである。
【0042】
電気抵抗が3000Ω・cmより大きい真性Siを成長基板1とし、洗浄処理ステップは実施例1と同じである。基板1をマグネトロンスパッタリング装置の真空キャビティに入れ、バックグラウンド真空が2×10-4Paとし、金属スズをターゲット材料とし、まず、アルゴンガスでターゲット面を清掃してから、酸素に切り替え、圧力強度が0.3Paとし、中間周波数マグネトロンスパッタリング方法を用いて、SnO2薄膜を堆積成長した。堆積温度は95℃であり、スパッタリング出力は42Wであり、薄膜平均厚さは20.2nmであった。SnO2薄膜を成長した後、素子を真空キャビティに入れ、バックグラウンド真空が3×10-3Paとし、熱蒸発技法を用いて、マスク版を補助する方法で、SnO2薄膜表面に電極3としての二つの厚さ50nmの金(Au)を堆積させた。0Vバイアス電圧時、素子の暗電流は0.09nAであり、入射光出力密度は16.4μW/cm2であり、光照射面積は0.12cm2であり、光電流ピーク値は3.88nAであった。
【0043】
実験データ:
Si/SnOヘテロ接合微分変換型広域スペクトル光電検知器の電流-電圧曲線は図3cに示すとおりである。
【0044】
850nm近赤外光に対するSi/SnO微分変換型光電検知器の応答度は0.23mA/Wであった。
【0045】
広域スペクトル光電検知システムでは、Si/SnO微分変換型光電検知器の正弦波変調LED光源に対する応答:中心波長が453nmであり、半値全幅が24nmであるLED光源を用いて、Si/SnOヘテロ接合微分変換型光検知素子(0Vバイアス電圧)から発生する両極性パルス式光電流は図6に示すとおりであり、光照射がオンにする瞬間(0mW/cm2から7mW/cm2まで、オン時間67ms)0Vバイアス電圧下で、検知器から0.19uAパルス式光電流を発生した。
【0046】
実施例4:
実施例4は、半導体薄膜2が酸化チタン(TiO)薄膜であるという点で、実施例1とは異なる
【0047】
この場合、Si/TiOx,x=0.52微分変換型光電検知器の製造方法は、以下に示すとおりである。
【0048】
電気抵抗が3000Ω・cmより大きい真性Siを成長基板1とし、洗浄処理ステップは実施例1と同じである。基板1をマグネトロンスパッタリング装置の真空キャビティに入れ、バックグラウンド真空が2×10-4Paとし、金属チタンをターゲット材料とし、まず、アルゴンガスでターゲット面を清掃してから、酸素を注入し、酸素とアルゴンガスとの比例を1:15に調整し、圧力強度が0.3Paとし、中間周波数マグネトロンスパッタリング方法を用いて、Si/TiOx,x=0.52薄膜を堆積成長した。堆積温度は93℃であり、スパッタリング出力は75Wであり、薄膜平均厚さは20.4nmであった。Si/TiOx,x=0.52薄膜を成長した後、素子を真空キャビティに入れ、バックグラウンド真空が3×10-3Paとし、熱蒸発技法を用いて、マスク版を補助する方法で、Si/TiOx,x=0.52薄膜表面に電極3としての二つの厚さ50nmの金(Au)を堆積させた。0Vバイアス電圧時、素子の暗電流は0.06nAであり、入射光出力密度は103μW/cm2であり、光照射面積は0.2cm2であり、光電流ピーク値は0.95nAであった。
【0049】
実験データ:
Si/TiOx,x=0.52ヘテロ接合微分変換型広域スペクトル光電検知器の電流-電圧曲線は図3dに示すとおりである。
【0050】
850nm近赤外光に対するSi/TiOx,x=0.52微分変換型光電検知器の応答度は0.43mA/Wであった。
【0051】
広域スペクトル光電検知システムでは、Si/TiOx,x=0.52微分変換型光電検知器のオン/オフ変調LED光源に対する応答:中心波長が453nmであり、半値全幅が24nmであるLED光源を用いて、Si/TiOx,x=0.52ヘテロ接合微分変換型光検知素子(0Vバイアス電圧)から発生する両極性パルス式光電流は図7に示すとおりであり、光照射がオンにする瞬間(0mW/cm2から6.8mW/cm2まで、オン時間71ms)0Vバイアス電圧下で、検知器から0.26nAパルス式光電流を発生した。
【0052】
同じ起動速度下で、異なる波長p-Si/CuO、Si/ZnO、Si/SnO2、Si/TiOx,x=0.52ヘテロ接合微分変換型光検知素子の応答度(キセノン照射、0Vバイアス電圧、パルス電流はピーク値特徴付けを取る)は図8に示すとおりである。
【0053】
得られたSi/TiOx、p-Si/CuO、Si/ZnO、Si/SnO2、Si/TiOx,x=0.52ヘテロ接合(電圧-電流曲線が非線形から得られる可能)微分変換型光検知素子は、280~1150nm、特に650~940nm波長範囲に対して、高感度、迅速検知を実現することができる。この素子は、光に対して一定の応答を有する半導体シリコン及び電気容量特性を有する金属酸化物を組み合わせてヘテロ接合を形成するため、図8に示すように、素子のスペクトル応答はシリコン素子と類似しており、また、コンデンサ端はそれぞれコンデンサ容量、電圧の時間に対する微分と正比例になるため、素子は光強度信号を時間に対する微分の電流形式に変換して出力することができ、且つ光強度変化が速いほど、電圧の時間に対する微分量が大きいほど、素子が出力する光電流も大きくなり、それにより高感度、迅速検知などの機能を実現する。したがって、本技術案による微分変換型広域スペクトル光電検知器は、感度高い特性を有するほか、紫外線、可視光線及び赤外線波長広域スペクトル範囲内でも応答でき、光強度信号の微分形式を電流信号の方式で出力することを実現する。この素子の制作が簡単で、コストが安価で、性能に優れており、光学通信、昼間レーザレーダ、動き検出、振動監視などの分野への応用が期待される。
【0054】
上記具体的な実施形態は、本発明の好適な実施例にすぎないが、本発明を限定するものではない。本発明の技術案を逸脱しない任意の変更又は他の同等代替、いずれも本発明の保護範囲内に含まれる。
【要約】      (修正有)
【課題】素子構造が簡単で、昼間で使用可能な微分変換型広域スペクトル光電検知器及びその製造方法を提供する。
【解決手段】微分変換型広域スペクトル光電検知器は、上から下に順次配置された基板1、半導体薄膜2及び電極3を含み、電極3は半導体薄膜2の上表面の両端に配置されている。微分変換型広域スペクトル光電検知器の製造方法は、高周波マグネトロンスパッタリング法を用いて基板の上に半導体薄膜をめっきする工程と、半導体薄膜表面の両端に電極として金属を堆積する工程とを含む。
【選択図】図1
図1
図2
図3a
図3b
図3c
図3d
図4
図5
図6
図7
図8
図9a
図9b
図9c
図10