(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-02
(45)【発行日】2022-02-10
(54)【発明の名称】同調フレーム構造
(51)【国際特許分類】
E04H 9/02 20060101AFI20220203BHJP
F16F 15/04 20060101ALI20220203BHJP
【FI】
E04H9/02 301
E04H9/02 351
F16F15/04 D
(21)【出願番号】P 2021150700
(22)【出願日】2021-09-16
【審査請求日】2021-09-16
(31)【優先権主張番号】202110453889.9
(32)【優先日】2021-04-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】519295166
【氏名又は名称】▲広▼州大学
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】特許業務法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】傳 継陽
(72)【発明者】
【氏名】叶 茂
(72)【発明者】
【氏名】劉 愛栄
(72)【発明者】
【氏名】呉 玖栄
【審査官】須永 聡
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-081464(JP,A)
【文献】特開2009-249973(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04H 9/00-9/16
F16F 15/00-15/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
同調フレーム構造であって、
地面基礎と、
前記地面基礎に固定して接続される本体構造と、
前記本体構造内に設けられる同調構造体であって、前記同調構造体の周囲がいずれもダンパを介して前記本体構造に接続され、且つ前記ダンパの両端がそれぞれ前記本体構造及び前記同調構造体と球面対偶を構成する同調構造体とを含
み、
前記ダンパは、
軸方向に沿って摺動可能な摩擦エネルギー消費部、及び前記ダンパの内部に設けられる粘着弾性層を含み、前記粘着弾性層が少なくとも一部の前記摩擦エネルギー消費部と接触してエネルギーを消費し、
前記ダンパは、第1摺動部材と第2摺動部材を含み、前記第1摺動部材と前記第2摺動部材は、上下に積層して設けられ且つ相対摺動可能であり、前記第1摺動部材の一端と前記本体構造は、球面対偶を構成し、前記第2摺動部材の他端と前記同調構造体は、球面対偶を構成し、前記粘着弾性層が前記第1摺動部材と前記第2摺動部材との間に設けられる、
ことを特徴とする同調フレーム構造。
【請求項2】
同調フレーム構造であって、
地面基礎と、
前記地面基礎に固定して接続される本体構造と、
前記本体構造内に設けられる同調構造体であって、前記同調構造体の周囲がいずれもダンパを介して前記本体構造に接続され、且つ前記ダンパの両端がそれぞれ前記本体構造及び前記同調構造体と球面対偶を構成する同調構造体とを含み、
前記同調構造体は、階段構造、フロア構造又はパイプ構造のうちの少なくとも1つとして設けられ、
前記同調構造体の底部が前記地面基礎にスライド可能に接続され、
前記地面基礎に複数の突出が設けられ、各前記突出が前記同調構造体の底部と接触する、ことを特徴とする同調フレーム構造。
【請求項3】
前記第1摺動部材と前記第2摺動部材は、「コ」字形のビーム構造として設けられ、前記第1摺動部材と前記第2摺動部材が互いに接触する部分は、囲んでストリップ状の空きスロット構造をなし、前記粘着弾性層が前記空きスロット構造内に設けられる、ことを特徴とする
請求項1に記載の同調フレーム構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建筑構造系の技術分野に関し、特に同調フレーム構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の同調質量ダンパは、ほとんど、屋根に取り付けられ、屋根における消火水タンクを用い又はさらなるマスを取り付けることで同調を実現するが、このようにすると、構成が増加され、且つ同調質量ダンパの吸振効果がその質量に緊密に関連しており、屋根における消火水タンク又はさらなるマスを取り付けると、大きい質量を実現することが困難であり、従来の同調質量ダンパは、ほとんど、風で制御される高層ビルに取り付けられており、主に風による振動を制御する。さらなるマスは、製造コストが増加するため、地震及びより多くの低層構造に適用することができない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、従来技術に存在する技術課題の1つを少なくとも解決するために、さらなるマスを設けたり建築したりしなくても、自己リセット能力を有する同調フレーム構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の第1態様の実施例によれば、同調フレーム構造が提供され、同調フレーム構造は、
地面基礎と、
前記地面基礎に固定して接続される本体構造と、
前記本体構造内に設けられる同調構造体であって、前記同調構造体の周囲がいずれもダンパを介して前記本体構造に接続され、且つ前記ダンパの両端がそれぞれ前記本体構造及び前記同調構造体と球面対偶を構成する同調構造体とを含む。
【0005】
有益な効果は、以下のとおりである。この同調フレーム構造は、同調構造体が本体構造に内蔵され、同調構造体と本体構造は、階段、エレベータ、パイプなどが統合された基礎構造を構成し、同調フレームを用い、それらの本来の機能を果たし、その振動周波数を本体構造周波数ほど調整し、構造の共鳴特性を変え、吸振作用を実現し、ダンパで接続され、同調構造体が自己リセット能力を有し、最終的に、地面に接続される全方位の同調質量構造系を形成し、さらなるマスを設けたり建築したりしなくても、同調及び吸振の機能を実現できる。
【0006】
本発明の第1態様の実施例に記載の同調フレーム構造であって、前記ダンパは、軸方向に沿って摺動可能な摩擦エネルギー消費部、及び前記ダンパの内部に設けられる粘着弾性層を含み、前記粘着弾性層が少なくとも一部の前記摩擦エネルギー消費部と接触してエネルギーを消費する。
【0007】
本発明の第1態様の実施例に記載の同調フレーム構造であって、前記ダンパは、第1摺動部材及び第2摺動部材を含み、前記第1摺動部材と前記第2摺動部材は、上下に積層して設けられ且つ相対摺動可能であり、前記第1摺動部材の一端と前記本体構造は、球面対偶を構成し、前記第2摺動部材の他端と前記同調構造体は、球面対偶を構成し、前記粘着弾性層が前記第1摺動部材と前記第2摺動部材との間に設けられる。
【0008】
本発明の第1態様の実施例に記載の同調フレーム構造であって、前記第1摺動部材と前記第2摺動部材は、「コ」字形のビーム構造として設けられ、前記第1摺動部材と前記第2摺動部材が互いに接触する部分は、囲んでストリップ状の空きスロット構造をなし、前記粘着弾性層が前記空きスロット構造内に設けられる。
【0009】
本発明の第1態様の実施例に記載の同調フレーム構造であって、前記同調構造体は、階段構造、フロア構造又はパイプ構造のうちの少なくとも1つとして設けられる。
【0010】
本発明の第1態様の実施例に記載の同調フレーム構造であって、前記本体構造は、複数のフロアを含み、前記同調構造体の底部がそのうちの1つの前記フロアにスライド可能に接続される。
【0011】
本発明の第1態様の実施例に記載の同調フレーム構造であって、前記同調構造体の底部が前記地面基礎にスライド可能に接続される。
【0012】
本発明の第1態様の実施例に記載の同調フレーム構造であって、前記地面基礎に複数の突出が設けられ、各前記突出が前記同調構造体の底部と接触する。
【0013】
本発明の実施例の技術的な解決策をより明確に説明するため、以下、実施例の説明の記述において必要な図面について簡単に説明する。明らかに、説明される図面は、本発明のいくつかの実施例だけであり、全ての実施例ではない。当業者であれば、創造的な労力を要することなく、これらの図面に基づいて他の設計案及び他の図面を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の実施例の第1実施例の構造模式図である。
【
図2】本発明の実施例の第2実施例の構造模式図である。
【
図3】本発明の実施例のダンパの構造模式図である。
【
図4】本発明の実施例の地面基礎の構造模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本部分では、本発明の具体的な実施例について詳細に説明する。本発明の好適な実施例は、図面に示され、図面の作用は、図形で明細書の文字部分の説明を補充することであり、人が本発明の各技術的特徴及び技術的解決手段全体を直感的かつ視覚的に理解できるが、本発明の保護範囲に対する限定として理解してはいけない。
【0016】
本発明の説明において、方位についての説明、例えば、上、下、前、後、左、右などにより指示される方位又は位置関係は、図面に示される方位又は位置関係に基づくものであり、本発明の説明及び説明の簡単化のために過ぎず、示される装置又は要素が特定方位を有したり、特定方位で構成又は操作されたりすることを指示又は示唆するものではなく、よって、本発明に対する限定としては理解されないことを理解すべきである。
【0017】
本発明の説明において、「複数」は、1つ以上を意味し、「複数」は、2つ以上を意味し、「より大きい」、「未満」、「超える」などは、端点値を含まないとして理解され、「以上」、「以下」、「以内」などは、端点値を含むとして理解される。「第1」、「第2」が記述されると、技術的特徴を区別するためのものに過ぎず、相対的な重要性を指示や示唆するもの、或いは指示される技術的特徴の数を暗示的に表示するもの、或いは指示される技術的特徴の順番関係を暗示的に表示するものとして理解すべきではない。
【0018】
本発明の説明において、明確に限定しない限り、設置、取り付け、接続などの用語は、広義で理解すべきであり、当業者であれば、技術的解決手段の具体的な内容を組み合わせて上記用語の本発明における具体的な意味を理解し得る。
【0019】
図1~
図4を参照すると、同調フレーム構造であって、地面基礎4、本体構造1及び同調構造体2を含み、本体構造1は、地面基礎4に固定して接続され、地面基礎4は、基礎である受力載置プラットフォームであり、本体構造1及び同調構造体2を載置するためのものであり、同調構造体2は、本体構造1内に設けられ、好適には、同調構造体の最上部が本体構造1の最上部以下設けられ、同調構造体2の周囲がいずれもダンパ3を介して本体構造1に接続され、且つダンパ3の両端は、それぞれ本体構造1及び同調構造体2と球面対偶を構成し、360°回転する機能を有するボールジョイントを介して接続され、剛性が調整可能であり、力を伝達しやすく、同調及び吸振効率を向上させる。この同調フレーム構造は、同調構造体2が本体構造1内に内蔵され、同調構造体2と本体構造1は、階段、エレベータ、パイプなどが統合された基礎構造を構成し、同調フレームを用い、それらの本来の機能を果たし、それらの振動周波数を本体構造1の周波数ほど調整し、構造の共鳴特性を変え、吸振作用を実現し、ダンパ3で接続され、同調構造体2が自己リセット能力を有し、最終的に、地面に接続される全方位の同調質量構造系を形成し、さらなるマスを設けたり建築したりしなくても、同調及び吸振の機能を実現できる。
【0020】
好適には、ダンパ3は、軸方向に沿って摺動可能な摩擦エネルギー消費部及びダンパ3の内部に設けられる粘着弾性層を含み、粘着弾性層が少なくとも一部の摩擦エネルギー消費部と接触してエネルギーを消費し、このダンパ3は、摩擦エネルギー消費と粘着弾性エネルギー消費の2つのエネルギー消費方式を両立させ、それにより、同調質量ダンパを完全に形成する。
【0021】
好適には、ダンパ3は、第1摺動部材と第2摺動部材を含み、第1摺動部材と第2摺動部材は、上下に積層して設けられ且つ相対摺動可能であり、第1摺動部材の一端と本体構造1は、球面対偶を構成し、第2摺動部材の他端と同調構造体2は、球面対偶を構成し、粘着弾性層が第1摺動部材と第2摺動部材との間に設けられる。具体的には、粘着弾性層は、第1摺動部材又は第2摺動部材にボルトを介して接合固定され、第1摺動部材と第2摺動部材が相対摺動するとき、第1摺動部材と第2摺動部材が互いに接触する部分は、摩擦するためエネルギーを消費し、同時に、粘着弾性層も相対摺動し、粘着弾性のため、エネルギーを消費する。
【0022】
好適には、第1摺動部材と第2摺動部材は、「コ」字形のビーム構造として設けられ、第1摺動部材と第2摺動部材が互いに接触する部分は、囲んでストリップ状の空きスロット構造をなし、粘着弾性層が空きスロット構造内に設けられる。第1摺動部材と第2摺動部材は、上下に積層して設けられ且つ相対摺動可能であり、軸方向に自在伸縮可能であり、ビーム構造の本来の特性を用いることで、ビームにおける荷重作用で優れた耐折能力を有することを保証し、曲げ剛性を有する自在伸縮を実現し、つまり、曲げ載置力と軸方向載置力をデカップリングする。ダンパ3の曲げ載置力は、正常な縦作用で建筑構造の使用機能を確保するためのものである。
【0023】
好適には、同調構造体2は、階段構造、フロア構造又はパイプ構造のうちの少なくとも1つとして設けられ、同調構造体2を階段、エレベータ、フロア構造及びパイプなどに統合し、単独なTMDマスではなく、TMD構造体を形成し、それにより、TMD-フレームの構造系を構成する。
【0024】
好適な第1実施例では、具体的には
図1を参照すると、同調構造体2の底部が地面基礎4にスライド可能に接続される。好適には、
図4を参照すると、地面基礎4に複数の突出が設けられ、各突出が同調構造体2の底部と接触することによって、同調構造体2と地面基礎4との間の摩擦力を効果的に減少させ、同調構造体2がより摺動しやすくなる。
【0025】
好適な第2実施例では、具体的には
図2を参照すると、本体構造1は、複数のフロア11を含み、同調構造体2の底部がそのうちの1つのフロア11にスライド可能に接続される。第1実施例に比べて、実際な設置形態はほぼ同じであり、相違点は、この場合、同調構造体2がより小さく、実際のニーズに応じて選択できることのみである。
【0026】
同調構造体2は、地面基礎4又は本体構造1のあるフロア11に滑らかに摺動接続され、同調構造体2の底部が自在に摺動可能であり、同調構造体2は、本体フレームにダンパ3を介して接続され、ダンパ3の両端は、いずれも、360°回転する機能を有するボールジョイント構造であり、剛性を有し、それにより、同調及び吸振機能を実現する。同調及び吸振用の同調構造体2は、構造の一部であり、さらなるマスを設けたり建築したりしなくても、自己リセット能力を有し、最終的に360度のTMD構造系を実現する。
【0027】
以上、図面を組み合わせて本発明の実施例について詳細に説明したが、本発明は、上記実施例に限られず、当業者が持った知識範囲内において、本発明の要旨から逸脱することなく、様々な変化を行うことができる。
【要約】 (修正有)
【課題】さらなるマスを設けたり建築したりしなくても、自己リセット能力を有する同調フレーム構造を提供する。
【解決手段】地面基礎4と、地面基礎4に固定して接続される本体構造1と、本体構造1内に設けられる同調構造体2であって、同調構造体2の周囲がいずれもダンパを介して本体構造1に接続され、且つダンパ3の両端がそれぞれ本体構造1及び同調構造体2と球面対偶を構成する同調構造体2とを含む。この同調フレーム構造は、同調構造体2が本体構造1内に内蔵され、同調構造体2と本体構造1は、階段、エレベータ、パイプなどが統合された基礎構造を構成し、同調フレームを用い、それらの本来の機能を発揮し、振動周波数を本体構造周波数ほど調整し、構造の共鳴特性を変え、吸振作用を実現し、ダンパ3で接続する。
【選択図】
図1