(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-02
(45)【発行日】2022-02-10
(54)【発明の名称】ルーメンバイパス塩化コリンマイクロカプセル及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
A23K 40/30 20160101AFI20220203BHJP
A23K 50/10 20160101ALI20220203BHJP
【FI】
A23K40/30
A23K50/10
(21)【出願番号】P 2021513799
(86)(22)【出願日】2019-09-25
(86)【国際出願番号】 CN2019107649
(87)【国際公開番号】W WO2020073800
(87)【国際公開日】2020-04-16
【審査請求日】2021-03-08
(31)【優先権主張番号】201811168661.X
(32)【優先日】2018-10-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】521098205
【氏名又は名称】杭州康徳権飼料有限公司
【氏名又は名称原語表記】HANGZHOU KINGTECHINA FEED CO., LTD
【住所又は居所原語表記】No. 8, YinXing Road, Renhe Street Yuhang District Hangzhou, Zhejiang 311107, China
(74)【代理人】
【識別番号】100146374
【氏名又は名称】有馬 百子
(72)【発明者】
【氏名】徐 二華
(72)【発明者】
【氏名】李 浙烽
(72)【発明者】
【氏名】張 倩雲
【審査官】坂田 誠
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/154532(WO,A1)
【文献】特表2007-518391(JP,A)
【文献】特表2008-514583(JP,A)
【文献】国際公開第2018/079748(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23K 10/00 - 50/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
塩化コリン及び担体からなる芯材、内層被膜及び外層被膜を含む
ルーメンバイパス塩化コリンマイクロカプセルの製造方法であって、
融点が60℃以上である1種以上の植物油脂を含む内層被膜原料を準備する工程と、
ライスワックス、酸化亜鉛粉末及び成膜材料を含む外層被膜原料を準備する工程と、を有し、
マイクロカプセル全体に対して、ライスワックスの含有量は、5~10質量%であり、
ライスワックス、酸化亜鉛粉末及び成膜材料の質量比が1~5:0.1~1:0.1~1であり、
前記成膜材料は、フタル酸グルコース、ポリエチレングリコールまたはアルギン酸ナトリウムであることを特徴とする、ルーメンバイパス塩化コリンマイクロカプセル
の製造方法。
【請求項2】
マイクロカプセル全体に対する、前記塩化コリンの有効含有量は、20~75質量%であることを特徴とする、
請求項1に記載のルーメンバイパス塩化コリンマイクロカプセル
の製造方法。
【請求項3】
前記担体は、二酸化ケイ素であることを特徴とする、
請求項2に記載のルーメンバイパス塩化コリンマイクロカプセル
の製造方法。
【請求項4】
前記塩化コリンと担体の質量比は、1~2:0.2~1であることを特徴とする、
請求項2に記載のルーメンバイパス塩化コリンマイクロカプセル
の製造方法。
【請求項5】
マイクロカプセル全体に対して、前記内層被膜は、5~30質量%を占めることを特徴とする、
請求項4に記載のルーメンバイパス塩化コリンマイクロカプセル
の製造方法。
【請求項6】
前記ライスワックスの含有量は、5~10質量%であり、酸化亜鉛粉末の含有量は、1~10質量%であり、
成膜材料がフタル酸グルコースであって、含有量は、1~10質量%であることを特徴とする、
請求項1に記載のルーメンバイパス塩化コリンマイクロカプセル
の製造方法。
【請求項7】
塩化コリンと担体を混合し、さらに液体状態の
前記内層被膜原料と混合して均一に撹拌した後、凍結噴霧乾燥法により造粒し、一次被膜顆粒を得る工程(1)と、
前記外層被膜原料のうち、ライスワックスと成膜材料を有機溶媒に溶解し、さらに酸化亜鉛粉末を添加して混合溶液を形成し、一次被膜顆粒に対してボトムスプレーによるコーティングを行い、ルーメンバイパス塩化コリンマイクロカプセルを得る工程(2)を含むことを特徴とする、
請求項1~
6のいずれか一項に記載のルーメンバイパス塩化コリンマイクロカプセルの製造方法。
【請求項8】
前記工程(2)において、前記ボトムスプレーによるコーティングの流速が0.1~1L/minであり、
送風温度が50~90℃であり、
送風時間が3~4hであることを特徴とする、
請求項
7に記載のルーメンバイパス塩化コリンマイクロカプセルの製造方法。
【請求項9】
前記内層被膜原料は、カルナウバワックス、サラシミツロウまたはライスワックスのうちの少なくとも1種であることを特徴とする、
請求項
1~8のいずれか一項に記載のルーメンバイパス塩化コリンマイクロカプセルの製造方法。
【請求項10】
原料は、塩化コリン20~75質量%、担体10~20質量%、内層被膜
原料5~30質量%、並びに外層被膜原料であるライスワックス5~10質量%、成膜材料1~10質量%、及び酸化亜鉛粉末1~10質量%を含むことを特徴とする、
請求項
1のいずれか一項に記載のルーメンバイパス塩化コリンマイクロカプセルの製造方法。
【請求項11】
原料は、塩化コリン20~75質量%、二酸化ケイ素10~20質量%、カルナウバワックス5~30質量%、ライスワックス5~10質量%、フタル酸グルコース1~10質量%、及び酸化亜鉛粉末1~10質量%を含むことを特徴とする、
請求項
10のいずれか一項に記載のルーメンバイパス塩化コリンマイクロカプセルの製造方法。
【請求項12】
原料は、塩化コリン75質量%、二酸化ケイ素10質量%、カルナウバワックス5質量%、ライスワックス5質量%、フタル酸グルコース2.5質量%、及び酸化亜鉛粉末2.5質量%を含むことを特徴とする、
請求項
11のいずれか一項に記載のルーメンバイパス塩化コリンマイクロカプセルの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は飼料添加剤の技術分野に関し、特にルーメンバイパス塩化コリンマイクロカプセル及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コリンはビタミンB群であり、化学名はヒドロキシエチルトリメチルアンモニウムである。その生物学的機能は数多くあり、リン脂質の組成の一部として、レシチン及びスフィンゴミエリン等の構成に関与すること、不安定なメチル基のドナーとなること、肝臓における脂肪代謝の調節において重要な役割を果たすこと、アセチルコリンを合成する主な成分であること、などが挙げられる。現在、コリンは飼料添加剤として豚、家禽の配合飼料及び反芻動物の精製飼料に使用されており、必須の添加剤材料であり、家畜・家禽の成長、発育及び機能の向上に顕著な効果を有するとともに、家畜・家禽の体質及び病気への抵抗力を強化することができる。
【0003】
コリンは常温では無色の液体であり、吸湿性、アルカリ吸収性及び粘性を有する。塩化コリンはコリンの塩酸塩であり、その分子は極性傾向を有しているので、空気中の水分を容易に吸収し潮解する。飼料産業においては、一般的にコリンの代わりに塩化コリンを使用しており、塩化コリンはコリンに比べて安定性が高く、その水溶液が中性を呈することから、動物の体組織に対する刺激が少ない。しかしながら、塩化コリン結晶は吸水性が非常に強く凝集しやすいため、飼料の加工、輸送及び保管は容易ではない。塩化コリンは他のビタミンに対して破壊作用があり、特に金属元素が存在する場合、ビタミンA、D3、E、K3に対する破壊作用があるため、ビタミンプレミックスとの混合には適していない。しかし、濃縮飼料または配合飼料中に直接加えることで、塩化コリンとその他の活性成分が接触する機会をできるだけ減少させることができる。
【0004】
反芻動物の体内ではコリンの合成が可能であることから、動物の必要量は満たされている。そのため通常コリンは不足しないが、妊娠及び泌乳期には、体内のコリンだけで動物の必要量を満たすことができない。このため、十分なコリンを補充することにより、コリンの合成に用いられるメチオニンの消費を節約することができ、より多くのメチオニンが乳の産生に利用されるようになる。また、反芻動物のルーメン内で、コリンはルーメン微生物によりアセトアルデヒド及びトリメチルアミンに分解され、更にメタンに分解されて、動物のゲップに伴って排出される。コリンの分解率は非常に高く、中でも塩化コリンの分解率は98.6%に達するため、保護されていない塩化コリンがルーメンを通過するのは困難である。
【0005】
登録番号CN101269051Bの特許には、ルーメンバイパス塩化コリンマイクロカプセル及びその製造方法が開示されている。該マイクロカプセルは、質量パーセントで35~45%の塩化コリンを主な有効成分とする芯材と、アクリル樹脂IVを芯材とする内層コーティングと、キトサンからなる外層コーティングとを含み、前記内、外層コーティングの質量はいずれも芯材質量の3~5%を占める。
【0006】
登録番号CN102630817Bの特許には、コリンルーメンバイパスマイクロカプセル添加剤及びその製造方法が開示されている。該マイクロカプセル添加剤はコア及び前記コアの表面に被覆された表面層を含む。前記コアの成分はコリンベースの混合物であり、前記コリンベースの混合物はその重量パーセントで、83%~98.9%の二酸化ケイ素を担体とする塩化コリン、1%~10%のポリアクリル樹脂IV及び0.1%~10%のヒドロキシプロピルメチルセルロースを含む。
【0007】
上記文献ではルーメンバイパス塩化コリン顆粒/マイクロカプセルの様々な製造プロセスが提供されている。しかしながら、上記製造プロセスにより得られたルーメンバイパス塩化コリン顆粒/マイクロカプセルは有効成分が少なく、又は、ルーメンにおけるルーメンバイパス率が85%~90%(24h)であり、小腸での最も高い放出率は95%未満であり、且つ長期間保管すると吸湿現象が生じ、長期保管が困難である。
【0008】
従って、製造しやすく、ルーメンバイパス効果がより優れた塩化コリン被膜の製造技術をさらに研究し、これにより有効成分が多く、ルーメンバイパス効果が高く、使用中に吸湿せず、腸管に達した後に速やかに放出され、安全な成分からなる塩化コリン被膜製品を業界に提供することが必要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】中国特許CN101269051B号公報
【文献】中国特許CN102630817B公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、ルーメンバイパス塩化コリンマイクロカプセル及びその製造方法を提供する。該ルーメンバイパス塩化コリンマイクロカプセル中の塩化コリンの含有量は75%に達し、且つ製品のルーメンバイパス率(90%以上に達する)及び放出率(95%以上に達する)はいずれも高く、塩化コリンを小腸内まで効果的に運び且つすぐに放出することができ、反芻動物の塩化コリンの利用効率を顕著に向上させることができる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
具体的な技術的解決手段は以下の通りである。
ルーメンバイパス塩化コリンマイクロカプセルであって、塩化コリン及び担体からなる芯材、内層被膜及び外層被膜を含み、
前記内層被膜の原料は、融点が60℃以上である1種以上の植物油脂を含み、
前記外層被膜の原料は、ライスワックス、酸化亜鉛粉末及び成膜材料を含み、
前記成膜材料はフタル酸グルコース、ポリエチレングリコールまたはアルギン酸ナトリウムであり、
【0012】
マイクロカプセル全体の質量に対する、前記ライスワックスの含有量は5~10%であり、ライスワックス、酸化亜鉛粉末及び成膜材料の質量比は1~5:0.1~1:0.1~1である。
【0013】
本発明のキーポイント(技術的特徴)は内層被膜及び外層被膜の組成であり、使用する塩化コリンの純度に厳格な規定はないものの、当然ながら使用する塩化コリンが純度≧99.5%であれば、反芻動物の塩化コリンの利用効率の向上に有利である。担体は二酸化ケイ素、トウモロコシデンプン、デキストリンなどの一般的な各種担体を使用することができる。本発明に記載の融点が60℃以上である植物油脂とは≧60℃という意味である。
【0014】
ライスワックスは良好な可塑性を有し、マイクロカプセルの成形に有利である。ライスワックスは融点が高く、ルーメン微生物による分解及び造粒加工の過程における機械的圧力及び温度による破壊に耐えるだけでなく、活性物質の放出または排出を遅らせることができる。成膜材料とはフタル酸グルコース、ポリエチレングリコール及びアルギン酸ナトリウムなど、塩化コリンの吸湿を防止し、有効成分のルーメンバイパス率を向上させる材料のことである。
【0015】
実験によると、酸化亜鉛粉末とライスワックスとの間に緊密な薄膜が形成され、酸化亜鉛粉末がライスワックスにより形成された薄膜内に嵌入する(埋め込まれる)。これにより酸化亜鉛粉末はアルカリ性環境のルーメン内で安定性を保つことができ、ライスワックスをサポートして機械的損傷を減少させ、ルーメン微生物による分解に抵抗し、さらに外層被膜のルーメン内での安定性を向上させることができる。一方で、小腸に達した後、酸化亜鉛粉末は酸性の小腸液と迅速に反応して、ライスワックスにより形成された薄膜の表面に無数の細孔を形成し、有効成分である塩化コリンの迅速な放出を促進する。従って、酸化亜鉛粉末とライスワックスを併用することで、有効成分が保管中及び使用中に吸湿しないようにするだけでなく、ルーメンのような特殊な環境での安定性を保持し、マイクロカプセルが小腸に達すると、小腸内で直ちに放出されるようにすることができる。
【0016】
外層被膜(原料)中に酸化亜鉛がない場合、ルーメンバイパス塩化コリンマイクロカプセルのルーメンバイパス率が影響を受けるだけでなく、腸液による溶出率にも影響を及ぼす。
【0017】
さらに、前記酸化亜鉛粉末の粒径は200~600メッシュの篩を通過するものである。酸化亜鉛粉末の粒径が小さいと、比表面積が大きくなり、酸化亜鉛と小腸液の接触表面積を増加させ、酸化亜鉛粉末と小腸液の反応速度を加速することができる。しかしながら、粒径は適切にすべきであり、酸化亜鉛粉末がナノ酸化亜鉛のように細かすぎると、ルーメン及び小腸などの臓器内に分散しやすくなり、牛の成長に不利である。一方、酸化亜鉛粉末が大きすぎると、酸化亜鉛粉末とライスワックスが形成する薄膜はルーメン内で容易に破壊され、製品のルーメンバイパス率に影響を及ぼす。従って、酸化亜鉛粉末の粒径は300~500メッシュの篩を通過するものであるのが好ましい。
【0018】
さらに、マイクロカプセルに全体に対する質量パーセントで、前記塩化コリンの有効含有量は20~75%であることが好ましい。本発明は特定の内、外層被膜原料を使用することにより、塩化コリンの有効包埋含有量を顕著に向上させ、塩化コリンの有効含有量が75%に達してもマイクロカプセルが破裂せず、これにより反芻動物の塩化コリンの利用効率を向上させる。好ましくは、前記塩化コリンの有効含有量は30~75%である。さらに好ましくは、前記塩化コリンの有効含有量は50~75%であり、該有効含有量におけるマイクロカプセルの安定性が最もよい。
【0019】
好ましくは、前記担体は二酸化ケイ素であり、前記塩化コリンと担体との質量比は1~2:0.2~1である。二酸化ケイ素は良好な流動性及び吸着性を有し、活性物質を十分に吸着できる。
【0020】
内層被膜材料は、融点がルーメンにおける発酵温度より高く、常温下では固体であり、ルーメン内で溶解しない植物油脂を採用する必要がある。前記内層被膜の原料はカルナウバワックス、サラシミツロウまたはライスワックスのうち少なくとも1種であることが好ましい。
【0021】
内層被膜が一定の硬度を保持するように、カルナウバワックスを採用することが好ましい。その理由は、カルナウバワックスは融点が80~86℃であり、硬度が非常に高く、一次被膜顆粒の硬度を保持して、マイクロカプセルの破裂を防止することができるためである。また、カルナウバワックスは無毒無害であり、防湿、酸化防止の機能を有し、乳化性能及び成形性能に優れているという長所を有する。
【0022】
マイクロカプセル全体に対する質量パーセントで、前記内層被膜の含有量は5~30%であることが好ましい。マイクロカプセル全体に対する質量パーセントで、前記内層被膜の含有量は15~30%であることがより好ましい。
【0023】
マイクロカプセル全体に対する質量パーセントで、前記塩化コリンの有効含有量は20~75%であり、前記塩化コリンと担体との質量比は1~2:0.2~1であり、前記内層被膜の含有量は5~30%で、残りは外層被膜であることが好ましい。
【0024】
前記ライスワックスの含有量は5~10%であり、酸化亜鉛粉末の含有量は1~10%であり、成膜材料はフタル酸グルコースで、その含有量は1~10%であることが好ましい。
【0025】
フタル酸グルコースはフタル酸の糖類誘導体であり、水及びアルカリ液に不溶であり、複数のオレフィン酸の被膜材料を溶解させ、外層被膜において膜の成膜作用を果たし、ルーメンにおけるアルカリ性条件下で活性物質を安定化させ、小腸に達してから完全に放出するのを助ける。実験によると、複数の成膜材料のうちフタル酸グルコースがより適している。
前記ルーメンバイパス塩化コリンマイクロカプセルは、塩化コリン及び担体からなる芯材、内層被膜及び外層被膜から構成され、
前記内層被膜の原料は少なくとも1種の融点が60℃以上の植物油脂であり、
【0026】
前記外層被膜の原料はライスワックス、酸化亜鉛粉末及び成膜材料であり、前記成膜材料はフタル酸グルコース、ポリエチレングリコールまたはアルギン酸ナトリウムであることが好ましい。
【0027】
マイクロカプセル全体に対する質量パーセントで、前記ライスワックスの含有量は5~10%であり、ライスワックス、酸化亜鉛粉末及び成膜材料の質量比は1~5:0.1~1:0.1~1である。
前記ルーメンバイパス塩化コリンマイクロカプセルは、質量パーセントで、以下の原料:
塩化コリン 20~75%
担体 10~20%
内層被膜の原料 5~30%
ライスワックス 5~10%
成膜材料 1~10%
酸化亜鉛粉末 1~10%
【0028】
を含み、前記内層被膜の原料は1種以上の融点が60℃以上の植物油脂であり、前記成膜材料はフタル酸グルコース、ポリエチレングリコールまたはアルギン酸ナトリウムである。
【0029】
前記ルーメンバイパス塩化コリンマイクロカプセルは、質量パーセントで、以下の原料:
塩化コリン 20~75%
二酸化ケイ素 10~20%
カルナウバワックス 5~30%
ライスワックス 5~10%
フタル酸グルコース 1~10%
酸化亜鉛粉末 1~10%
を含むことが好ましい。
前記ルーメンバイパス塩化コリンマイクロカプセルは、質量パーセントで、以下の原料:
塩化コリン 75%
二酸化ケイ素 10%
カルナウバワックス 5%
ライスワックス 5%
フタル酸グルコース 2.5%
酸化亜鉛粉末 2.5%
または、
塩化コリン 50%
二酸化ケイ素 25%
カルナウバワックス 15%
ライスワックス 5%
フタル酸グルコース 2.5%
酸化亜鉛粉末 2.5%
【0030】
または、
塩化コリン 25%
二酸化ケイ素 25%
カルナウバワックス 30%
ライスワックス 10%
フタル酸グルコース 5%
酸化亜鉛粉末 5%
を含むことがより好ましい。
本発明はさらに、前記ルーメンバイパス塩化コリンマイクロカプセルの製造方法を提供する。該製造方法は、以下の工程を含む。
(1)塩化コリンと担体を混合し、さらに液体状態の内層被膜原料と混合して均一に撹拌した後、凍結噴霧乾燥法により造粒し、一次被膜顆粒を得る。
【0031】
(2)ライスワックスと成膜材料を有機溶媒に溶解し、さらに酸化亜鉛粉末を添加して混合溶液を形成し、一次被膜顆粒に対してボトムスプレーによるコーティングを行い、ルーメンバイパス塩化コリンマイクロカプセルを得る。
【0032】
前記有機溶媒は無水エタノール、イソプロパノールなどの脂肪類を溶解できる有機溶媒であってもよく、製造過程の有機溶媒を回収することで、環境中に揮発することを防止し、且つ動物、特に牛の成長と生産に影響を与えない。具体的には、前記有機溶媒は体積分率が75~85%のエタノールである。有機溶媒でライスワックス、成膜材料及び酸化亜鉛粉末を溶解または分散してから、ボトムスプレーによるコーティングを行い、ボトムスプレーによるコーティングのパラメータは、流速0.1~1L/min、送風温度50~90℃、送風時間3~4hである。
【発明の効果】
【0033】
従来技術に比べ、本発明は以下の有益な効果を有する。
【0034】
(1)本発明は、ライスワックス、酸化亜鉛粉末及び成膜材料を外層被膜の原料とし、ルーメンバイパス塩化コリンマイクロカプセルの反芻動物のルーメンにおけるルーメンバイパス率及び小腸での放出率を顕著に向上させ、且つ、製品の保管中及び使用中の吸湿性を低下させ、これにより反芻動物の塩化コリンの利用効率を効果的に向上させた。
【0035】
(2)本発明は、特定の外層被膜原料を採用し、それをもとに適切な内層被膜原料を組み合わせることで、製品のルーメンバイパス率及び放出率の向上と、吸湿性の低下をさらに促進している。
【0036】
(3)本発明は特定の内、外層被膜原料を採用し、且つ相応の製造プロセス条件を組み合わせて製造した製品であり、ルーメンバイパス塩化コリン製品における塩化コリンの有効含有量を顕著に向上させ、さらに反芻動物の塩化コリンの利用効率を向上させた。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、具体的な実施例と合わせて本発明についてさらに説明する。以下に例示したのは本発明の具体的な実施例に過ぎず、本発明の保護範囲はこれらに限定されない。
以下の実施例で使用した酸化亜鉛粉末の粒径は400メッシュの篩を通過したものであり、以下の材料はいずれも一般的な市販品である。
【実施例1】
【0038】
ルーメンバイパス塩化コリンマイクロカプセルであって、原料組成は、塩化コリン25%、二酸化ケイ素25%、カルナウバワックス30%、ライスワックス10%、フタル酸グルコース5%、酸化亜鉛粉末5%である。
具体的な製造プロセスは以下の通りである:
(1)250kgの塩化コリンを量り取って粉砕した後、250kgの二酸化ケイ素と均一に混合して混合物Iを得る。
【0039】
(2)300kgのカルナウバワックスを量り取って反応器に入れ融解し、その融点より20℃高い温度で保温し、次いで融解後のカルナウバワックスを混合物Iと混合し、十分に撹拌して均一にしてから、冷凍室で噴霧して低温(-8℃)凍結乾燥を行って一次被膜顆粒を得る。
【0040】
(3)100kgのライスワックス、50kgのフタル酸グルコースを500Lの75%(体積分率)エタノール溶液に溶解してから、50kgの酸化亜鉛粉末を加えて混合溶液IIを得て、次いで一次被膜顆粒をサイクロン流動床に置き、同時に混合溶液IIを噴霧して、得られた製品を20メッシュの分析用ふるいにかけて、塩化コリンの有効含有量が25%(質量分率)のルーメンバイパス塩化コリンを得る。
【0041】
ナイロンバッグ法により本実施例の製品のルーメンバイパス率、腸液溶出率を測定し、観察法を採用して製品の吸湿防止効果を評価した。
実験内容:
【0042】
分解時間に応じて6つに分けた。それぞれの処理時間を2h、4h、6h、12h、24h及び48hとし、ルーメン処理してないものを対照群(0h)とした。各処理は2つに繰り返し、各繰り返しは各時点での2つの並行サンプル袋に行い、各袋のサンプルは5gであり、各時点での塩化コリンの残留含有量を測定した。同時に乳牛小腸液凍結乾燥粉末(FDI)法で腸液中での溶出度を測定した。適量のFDIを取って30mLの緩衝液を含有する酵素分解チューブに入れ、5gのサンプルを秤量して小さいナイロン袋に入れた後、酵素分解チューブに入れ、酵素分解チューブを39℃の恒温水浴シェーカー上で振盪させ、それぞれ0、2、4、6、12、24、48h培養した時点で各サンプルを取出し測定した。異なる時点でのサンプルの塩化コリン含有量を測定した。測定方法は、中華人民共和国化工業界基準《飼料添加剤-塩化コリン》(HB2941~1999)に規定された方法を参照した。外部の室温雰囲気下で静置し、それぞれ12、24h後にサンプリングして、観察法で製品の吸湿防止性能を評価した。
【0043】
実験結果:
表1.ルーメンバイパス塩化コリンのルーメンバイパス率
【0044】
表1から分かるように、ルーメンバイパス処理を行った処理時間の延長に伴って分解率は次第に上昇する傾向を呈した。ルーメン処理48hでは損失は14.40%に達し、その他の各処理時間における乾燥重量損失はそれぞれ0.40%、1.40%、1.40%、1.20%及び1.00%であった。これは48h処理のサンプルに比べて明らかに低く、マイクロカプセル化コーティング処理することで、ルーメン内での塩化コリンの放出が効果的に緩和され、ルーメンバイパス保護の作用を果たしていることを示している。
一方で、48h後に分解率が明らかに上昇している。このことは後続の様々な消化段階においてコーティングされた塩化コリンが徐々に放出され、動物が十分に利用し吸収できるようになることを示している。ルーメン処理24h以内では、塩化コリンのルーメンバイパス率はいずれも98%以上であり、処理48hでは塩化コリンのルーメンバイパス率は85.50%であった。乳牛の生理特徴から見ると、精製飼料のルーメンバイパスの時間は通常48hを超えることはない。このことは本研究で採用したルーメンバイパス塩化コリンのルーメンバイパス効果は、乳牛の生理的条件を十分に満足できることを示している。
【0045】
【0046】
表2から分かるように、腸液処理を行った処理時間の延長に伴って、ルーメンバイパス塩化コリンの乾燥重量は急速に低下した。4hまでにルーメンバイパス塩化コリンの損失は80%以上に達し、6h以後では実質的にすべて腸液により分解され、有意差はなかった。腸液処理の溶出率から見ると、ルーメンバイパス塩化コリンの消化溶出の傾向と乾燥重量の低下傾向は一致しており、処理時間の延長に伴って、ルーメンバイパス保護された塩化コリンが急速に分解して溶出し、動物に必要な栄養を提供する。以上の結果は、ルーメンバイパス処理された塩化コリンが、腸管での塩化コリンの放出及び乳牛の塩化コリンの栄養に対するニーズに影響しないことを示している。腸液で4h処理した時の溶出率は83.10%であり、6hの時の溶出率は94.23%であった。これは本発明で採用したルーメンバイパス塩化コリンが腸管において4~6hで90%以上放出され、塩化コリンの消化吸収に対する乳牛の条件を十分に満たすことを示している。
また、製品を開口して室内に静置し24h経過しても、製品に粘着現象が発生せず、流動性も影響を受けなかった。
【実施例2】
【0047】
ルーメンバイパス塩化コリンマイクロカプセルの原料組成は以下の通りとした。
塩化コリン50%、二酸化ケイ素25%、カルナウバワックス15%、ライスワックス5%、フタル酸グルコース2.5%、酸化亜鉛粉末2.5%。
【0048】
具体的な製造プロセスは以下の通りである。
(1)500kgの塩化コリンを量り取って粉砕した後、250kgの二酸化ケイ素と均一に混合して混合物Iを得る。
【0049】
(2)150kgのカルナウバワックスを量り取って反応器に入れ融解し、その融点より20℃高い温度で保温し、次いで融解後のカルナウバワックスを混合物Iと混合し、十分に撹拌して均一にしてから、冷凍室に噴霧して低温(-8℃)凍結乾燥を行って一次被膜顆粒を得る。
【0050】
(3)50kgのライスワックス、25kgのフタル酸グルコースを500Lの75%(体積分率)エタノール溶液に溶解してから、25kgの酸化亜鉛粉末を加えて混合溶液IIを得た。次いで一次被膜顆粒をサイクロン流動床に置き、同時に混合溶液IIを噴霧して、得られた製品を20メッシュの分析用ふるいにかけて、塩化コリンの有効含有量が50%(質量分率)のルーメンバイパス塩化コリンを得る。
【0051】
該製品を測定した結果、24hにおけるルーメンバイパス率は96.43%で、腸管での6hにおける放出率は94.33%であり、開口して24h静置しても、吸湿がなく、流動性が良好であった。
【実施例3】
【0052】
ルーメンバイパス塩化コリンマイクロカプセルの原料組成は以下の通りとした。
塩化コリン75%、二酸化ケイ素10%、カルナウバワックス5%、ライスワックス5%、フタル酸グルコース2.5%、酸化亜鉛粉末2.5%。
具体的な製造プロセスは以下の通りである:
(1)750kgの塩化コリンを量り取って粉砕した後、100kgの二酸化ケイ素と均一に混合して混合物Iを得る。
【0053】
(2)50kgのカルナウバワックスを量り取って反応器に入れ融解し、その融点より20℃高い温度で保温し、次いで融解後のカルナウバワックスを混合物Iと混合し、十分に撹拌して均一にしてから、冷凍室に噴霧して低温(-8℃)凍結乾燥を行って一次被膜顆粒を得る。
【0054】
(3)50kgのライスワックス、25kgのフタル酸グルコースを500Lの75%(体積分率)エタノール溶液に溶解してから、25kgの酸化亜鉛粉末を加えて混合溶液IIを得て、次いで一次被膜顆粒をサイクロン流動床に置き、同時に混合溶液IIを噴霧して、得られた製品を20メッシュの分析用ふるいにかけて、塩化コリンの有効含有量が75%(質量分率)のルーメンバイパス塩化コリンを得る。
【0055】
該製品を測定した結果、24hにおけるルーメンバイパス率は95.90%で、腸管での6hにおける放出率は94.95%であり、開口して24h静置しても、吸湿はなく、流動性は良好であった。
【比較例1】
【0056】
本比較例は、外層被膜原料中に酸化亜鉛粉末を含まず、ライスワックスが125kgで、フタル酸グルコースが75kgである他は、原料及び製造プロセスとも実施例1と同じである。
【0057】
該製品を測定した結果、24hにおけるルーメンバイパス率は79.33%で、腸管での6hにおける放出率は72.35%であり、開口して24h静置しても、吸湿はなく、流動性は良好であった。
【比較例2】
【0058】
本比較例は、外層被膜原料中にライスワックスを含まず、酸化亜鉛が100kgで、フタル酸グルコースが100kgである他は、原料及び製造プロセスとも実施例1と同じである。
【0059】
該製品を測定した結果、24hにおけるルーメンバイパス率は70.07%で、腸管での6hにおける放出率は85.00%であり、開口して24h静置しても、吸湿はなく、流動性は良好であった。
【比較例3】
【0060】
本比較例は、外層被膜原料中にライスワックスの代わりにルーメンバイパス脂肪粉末(用量は100kg)を使用し、酸化亜鉛粉末が50kgで、フタル酸グルコースが50kgである他は、原料及び製造プロセスとも実施例1と同じである。
【0061】
該製品を測定した結果、24hにおけるルーメンバイパス率は75.37%で、腸管での6hにおける放出率は94.86%であり、開口して24h静置しても、吸湿はなく、流動性は良好であった。
【比較例4】
【0062】
本比較例は、外層被膜原料中にライスワックスの代わりにパーム極度硬化油(用量は100kg)を使用し、酸化亜鉛粉末が50kgで、フタル酸グルコースが50kgである他は、原料及び製造プロセスとも実施例1と同じである。
【0063】
該製品を測定した結果、24hにおけるルーメンバイパス率は82.65%で、腸管での6hにおける放出率は94.75%であり、開口して24h静置しても、吸湿はなく、流動性は良好であった。
【実施例4】
【0064】
本実施例は、外層被膜原料中にフタル酸グルコースの代わりにポリエチレングリコールを用いた他は、原料及び製造プロセスとも実施例1と同じである。
【0065】
該製品を測定した結果、24hにおけるルーメンバイパス率は95.32%で、腸管での6hにおける放出率は95.47%であり、開口して24h静置すると、吸湿現象があり、顆粒が粘着し、流動性は悪かった。
【実施例5】
【0066】
本実施例は、外層被膜原料中にフタル酸グルコースの代わりにアルギン酸ナトリウムを用いた他は、原料及び製造プロセスとも実施例1と同じである。
【0067】
該製品を測定した結果、24hにおけるルーメンバイパス率は94.73%で、腸管での6hにおける放出率は93.53%であり、開口して24h静置すると、吸湿現象があり、顆粒が粘着し、流動性は悪かった。
【比較例5】
【0068】
ルーメンバイパス塩化コリンマイクロカプセルの原料組成は以下の通りとした。
塩化コリン50%、二酸化ケイ素10%、カルナウバワックス5%、ライスワックス10%、フタル酸グルコース5%、酸化亜鉛粉末20%。
具体的な製造プロセスは以下の通りである。
(1)500kgの塩化コリンを量り取って粉砕した後、100kgの二酸化ケイ素と均一に混合して混合物Iを得る。
【0069】
(2)50kgのカルナウバワックスを量り取って反応器に入れ融解し、その融点より20℃高い温度で保温し、次いで融解後のカルナウバワックスを混合物Iと混合し、十分に撹拌して均一にしてから、冷凍室に噴霧して低温(-8℃)凍結乾燥を行って一次被膜顆粒を得る。
【0070】
(3)100kgのライスワックス、50kgのフタル酸グルコースを500Lの75%(体積分率)エタノール溶液に溶解してから、200kgの酸化亜鉛粉末を加えて混合溶液IIを得て、次いで一次被膜顆粒をサイクロン流動床に置き、同時に混合溶液IIを噴霧して、得られた製品を20メッシュの分析用ふるいにかけて、塩化コリンの有効含有量が50%(質量分率)のルーメンバイパス塩化コリンを得る。
【0071】
該製品を測定した結果、24hにおけるルーメンバイパス率は85.17%で、腸管での6hにおける放出率は96.65%であり、開口して24h静置すると、吸湿現象があり、顆粒が粘着し、流動性は悪かった。
【実施例6】
【0072】
本実施例は、内層被膜原料中にカルナウバワックスの代わりにサラシミツロウを用いた他は、原料及び製造プロセスはいずれも実施例1と同じである。
【0073】
該製品を測定した結果、24hにおけるルーメンバイパス率は90.11%で、腸管での6hにおける放出率は94.97%であり、開口して24h静置しても、吸湿はなく、流動性は良好であった。
【実施例7】
【0074】
本実施例は、内層被膜原料にカルナウバワックスの代わりにライスワックスを用いた他は、原料及び製造プロセスとも実施例1と同じである。
【0075】
該製品を測定した結果、24hにおけるルーメンバイパス率は92.97%で、腸管での6hにおける放出率は90.45%であり、開口して24h静置しても、吸湿はなく、流動性は良好であった。
実施例8~10
【0076】
実施例1をもとに、原料の種類及び用量を調整し、以下に示す実施例の製品を得、各種測定を行った結果(表3)を示す。
表3.