(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-02
(45)【発行日】2022-02-10
(54)【発明の名称】繊維工具モジュール及び繊維工具モジュールを有する繊維加工機
(51)【国際特許分類】
D04B 27/24 20060101AFI20220203BHJP
【FI】
D04B27/24
(21)【出願番号】P 2018556846
(86)(22)【出願日】2017-04-26
(86)【国際出願番号】 EP2017059886
(87)【国際公開番号】W WO2017191002
(87)【国際公開日】2017-11-09
【審査請求日】2020-04-21
(32)【優先日】2016-05-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】598132646
【氏名又は名称】グロツ・ベッケルト コマンディートゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100123342
【氏名又は名称】中村 承平
(72)【発明者】
【氏名】ダニエル グシュヴィンド
(72)【発明者】
【氏名】トーマス ツィンドリッチ
(72)【発明者】
【氏名】トーマス シュミット
【審査官】▲桑▼原 恭雄
(56)【参考文献】
【文献】特公昭47-000783(JP,B1)
【文献】特開昭57-038680(JP,A)
【文献】特開2014-066306(JP,A)
【文献】特開平11-222752(JP,A)
【文献】実公昭39-001835(JP,Y1)
【文献】米国特許第02562939(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D04B 27/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維加工機(33)の繊維工具モジュール(15)であって、
それぞれが保持部(18)と、ワーク部(19)とを有する幾つかの同一の繊維工具(17)と、
前記繊維工具(17)の前記保持部(18)が互いに動かないように装着されたモジュール体(16)であって、前記保持部(18)は前記モジュール体(16)を始点に長手方向(L)に延びている、前記モジュール体(16)と
を備え、
前記モジュール体(16)は、第1の側面(26)と、前記第1の側面(26)とは反対側に第2の側面(27)と、を有する装着部(25)を備え、
前記装着部(25)を貫通して装着孔(34)が延び、前記第1の側面(26)及び前記第2の側面(27)にそれぞれ開口(35、36)を有し、
前記2つの側面(26、27)の少なくとも1つは装着領域(30)を有し、前記開口(35、36)は前記装着領域(30)に配置され、長手方向(L)と直角な横断方向(Q)に前記装着部(25)の縁(37)にまで広がり、
前記装着領域(30)には
1つの環状の接触面(48)
のみを有す
る1つの接触突出部(47)が存在し、前記装着領域(30)に存在する
前記1つの環状の接触面(48)は共通の接触平面(E1、E2)で広がり、前記装着領域(30)には前記接触平面(E1、E2)を通じて延びる前記モジュール体(16)の構成要素が存在せず、
前記
1つの環状の接触面(48)は
、前記装着領域(30)で前記開口(35、36)を完全に囲
む、
繊維加工機(33)の繊維工具モジュール(15)。
【請求項2】
前記1つの
環状の接触面(48)が前記開口(35、36)に直接に、隙間無しで隣接する、ことを特徴とする請求項
1に記載の繊維工具モジュール。
【請求項3】
各前記側面(26、27)は、前記
1つの環状の接触面(48)を有す
る1つの前記接触突出部(47)が存在する前記装着領域(30)を有する、ことを特徴とする請求項1
又は2に記載の繊維工具モジュール。
【請求項4】
前記装着領域(30)における少なくとも1つの前記接触突出部(47)の配置が同一である、ことを特徴とする請求項
3に記載の繊維工具モジュール。
【請求項5】
少なくとも1つの前記装着領域(30)が長手方向(L)に少なくとも1つの止め面(42)により区切られる、ことを特徴とする請求項1乃至
4のいずれか1つに記載の繊維工具モジュール。
【請求項6】
少なくとも1つの前記止め面(42)が繊維工具(17)が位置する側で長手方向(L)に前記装着領域(30)を区切る、ことを特徴とする請求項
5に記載の繊維工具モジュール。
【請求項7】
存在する各前記止め面(42)に隣接して各側面(26、27)に凹部(44)が配置される、ことを特徴とする請求項
5又は
6に記載の繊維工具モジュール。
【請求項8】
前記繊維工具(17)は動かないように前記モジュール体(16)に装着されている、ことを特徴とする請求項1乃至
7のいずれか1つに記載の繊維工具モジュール。
【請求項9】
前記繊維工具(17)の前記ワーク部(19)は横断方向(Q)に整列するよう配置される、ことを特徴とする請求項1乃至
8のいずれか1つに記載の繊維工具モジュール。
【請求項10】
請求項1乃至
9に記載の前記少なくとも1つの繊維工具モジュール(15)が取り外し可能に組み込まれる、装着面(31)を有するバー(32)を備えた繊維加工機(33)。
【請求項11】
前記装着面(31)は、装着平面(M)内に延びる、ことを特徴とする請求項
10に記載の繊維加工機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維工具モジュール及びかかる繊維工具モジュールを少なくとも1つ有する繊維加工機に関する。
【0002】
かかる繊維工具モジュールは幾つかの繊維工具を備える。この繊維工具モジュールにより、例えば、繊維工具を繊維加工機のバー又はその他のキャリアに所望の位置で配置又は装着することができる。
【背景技術】
【0003】
これまでにかかる繊維工具モジュールの様々な形態が知られている。例えば、特許文献1は編み機の繊維工具モジュールを記載している。ここでは、幾つかのシンカがプラスチック材料の共通のキャリアに鋳込み形成されている。特許文献2は縫目形成繊維加工機用の類似の繊維工具モジュールを記載している。
【0004】
特許文献3は案内針を有する繊維工具モジュールを記載している。この繊維工具モジュールは、装着領域にある装着孔が貫通する装着部を備えたモジュール体を有する。この装着部は繊維加工機の適切なキャリアにモジュール体を装着するために使用することができる。かかる繊維工具モジュールは特許文献4から知られている。
【0005】
さらにラッシェル機用の案内針を備えた繊維工具モジュールが特許文献5に記載されている。繊維工具モジュールは、案内針が設けられたモジュール体を有する。このモジュール体は、完全に平らな第1の側面を備えた装着部を有し、その第1の側面はラッシェル機の適切なキャリアに装着するための接触面として機能する。反対側の第2の側面には、モジュール体を安定させる補強リブ及び凹部が配置されている。装着孔がこのモジュール体を通して延び、2つの側面を接続している。装着孔の開口の周りの補強が第2の側面に設けられ、繊維工具モジュールがラッシェル機のキャリアに装着される場合に、ねじ頭がその補強に当接する。
【0006】
既知の繊維工具モジュールにおいて、接触面として機能するモジュール体の側面は1つの接触平面内で広がる。通常モジュール体は鋳込み形成又は射出成型により製造される。その際、側面の1つを平面接触面として構成することが困難且つ高価となる。しわ又はその他の凹凸が発生すると、繊維加工機において繊維工具モジュールの位置を正確に決めることができなくなり、製造される繊維が不規則になり得る。百分の一ミリメートルの繊維工具の小さな位置のずれでさえ、繊維で目立ってしまうことが判明している。
【0007】
実用的用途として、装着孔の2つの対向する側に、1つの接触面を有する1つの装着突出部をそれぞれ有する繊維工具モジュールも知られている突出部。この形態では、モジュール体の2つの互いに離れて設けられた接触面が繊維加工機のバー又はキャリアに当接する。その際、取付ねじの締付力が特定の範囲内に設定されていないと、接触面間の領域でモジュール体の変形及び特に撓みが発生し得る。組立に不正確さ又は欠陥がある場合、繊維加工機における繊維工具の整列又は位置決めに欠陥が生じ得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】独国特許出願公開第102009019316号明細書
【文献】独国特許出願公開第10227532号明細書
【文献】英国特許出願公開第1225935号明細書
【文献】独国特許出願公開第19618368号明細書
【文献】欧州特許出願公開第0227018号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、繊維工具の繊維加工機における簡素な組立、位置決め、及び整列を可能にする繊維工具モジュールを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この目的は、請求項1の技術的特徴を有する繊維工具モジュールにより達成される。
【0011】
繊維工具モジュールは、繊維加工機、特に編み機又は縦編機といった編目形成繊維加工機での使用のために配置される。かかるモジュールは、複数の同一の繊維工具を備える。繊維工具は、例えば、編み目の形成又は編み目の形成中に糸を供給するために設けられる。
【0012】
繊維工具は、保持部とワーク部とを有する。繊維工具モジュールはモジュール体を有し、モジュール体では各保持部に繊維工具が動かないように装着されていることが好ましい。各保持部又はモジュール体を始点として、各繊維工具は長手方向にワーク部の各自由端まで延びる。繊維工具は、互いに動かないようにモジュール体に装着される。例えば、それらは、形状同士の噛み合いによる係合及び/又は部材同士の溶着による係止でモジュール体に装着され得る。
【0013】
モジュール体は、例えば、プラスチック材料又は複合材料から成る。モジュール体は、継ぎ目も接続部もない一体型の単体できていることが好ましい。それは、鋳込み形成(インサート成型)又は射出成型で製造することが好ましい。その際、繊維工具は製造中に、例えば、保持部の再鋳込み又は押出コーティングにより、モジュール体に装着してよい。繊維工具は、金属又は金属合金から成ることが好ましい。
【0014】
モジュール体は装着部を有し、装着部は繊維加工機のバー又はその他の適切なキャリアに接続されるよう設けられている。装着部は、第1の側面と、第1の側面と反対側の第2の側面とを有する。装着孔が装着部を通じて延び、第1の側面及び第2の側面で終わる。2つの側面の少なくとも1つが装着領域を形成する。装着領域は、装着孔の開口が完全に領域内に収まるような領域と定義される。装着領域は、長手方向と直角な横断方向において、完全に装着部の縁まで広がっている。そのため、横断方向において、装着領域は各側面内の区分に限定されない。
【0015】
少なくとも1つの装着領域に、接触面を有する少なくとも1つの接触突出部が存在する。共通の装着領域内に存在する全ての接触面は、共通の接触平面内で広がる。装着領域には、接触平面を通じて広がるモジュール体の構成要素は存在しない。そのため、接触突出部は装着部の構成要素であり、この構成要素は装着領域内の長手方向及び横断方向と直角の高さ方向において最も遠くに突出する。結果として、装着部の他の構成要素で、繊維加工機のバー又はキャリア上で、少なくとも1つの接触面と装着面との面接触を妨げる構成要素はないことが確実となる。
【0016】
本発明の1つの態様において、接触面は装着領域の開口を完全に取囲む。この結果として、環状、例えば円環状の接触面が開口の周りに形成される。
【0017】
本発明の他の態様において、少なくとも1つの接触面は開口の周りの周方向で1つ又はそれ以上の間隙を有し、共通の接触面又は異なる接触面の面縁部は開口の周りの周方向で互いに離れるように配置されてよい。これら2つの面縁部はお互いの距離が最大距離になるように離れており、その距離は装着領域の開口の直径よりは小さい。
【0018】
これらの態様は、開口の周りの周方向において、密着面又は1つ又はそれ以上の接触面の隣接する面縁部の間の十分に小さな距離が装着部の弾性変形、特に湾曲を防ぐことを確実にする。さらに、少なくとも1つの接触面の表面積は、装着領域の表面積よりも小さい。少なくとも1つの接触面は、このようにして十分に平坦になるように構成することができる。繊維加工機のバー又はその他のキャリアへの装着部の装着、特にねじ止めは、キャリア又はバーに対する取り付ねじの締付力又は装着部の押圧力は、変形を避けるためにそれほど精密ではなく調整しなければならないので、同様に簡素化される。この結果として、繊維工具の繊維加工機における整列及び位置決めが改善され、失敗のないものとなる。
【0019】
1つだけの密着接触面が各装着領域に配置され、その面が開口の周りの周方向で全体的に又は部分的に広がっていると都合がよい。例えば、1つの環状、特に円環上の接触面が、各装着領域に配置され得る。
【0020】
本発明の1つの態様において、少なくとも1つの装着面は、開口に隣接して配置された1つの径方向内面縁部と、反対側に配置された1つの径方向外面縁部とを有する。径方向内面縁部及び/又は径方向外面縁部は、円の弧に沿って延びる。例えば、少なくとも1つの面区分は、特定の角度の範囲で広がる円環の区分を形成してよい。
【0021】
さらに、少なくとも1つの接触面が隙間無しで開口と直接隣接すると好ましい。本実施例において、装着孔の内面は縁及び/又は段差なしで接触突出部へとつながる。
【0022】
さらに、少なくとも1つの接触突出部の断面が一定で、接触面の形状に対応すると都合がよい。
【0023】
1つの態様において、少なくとも1つの接触突出部の高さは、長手方向及び横断方向と直角となる1つの高さ方向で0.3mm未満、好ましくは0.1mmである。
【0024】
少なくとも1つの接触面の装着領域での配置では、装着孔の孔軸に沿って広がる少なくとも1つ、特に幾つかの対称平面が存在する。この結果として、ねじ頭経由でモジュール体の装着部に対して働くねじの押圧力又は締付力は、一様に支持され得る。
【0025】
繊維工具モジュールは転回可能なモジュールとして構成でき、2つの側面のそれぞれが1つの装着領域を有する。接触突出部又は接触面の数及び配置は、両方の装着領域で同じであることが好ましい。2つの装着領域が同一の構成であることが好ましい。
【0026】
さらに、繊維工具が延びる少なくとも1つの装着領域が少なくとも1つの止め面により区切られていると都合がよい。繊維工具モジュールが繊維加工機に装着する際、止め面を相手止め面に当接するように配置して、繊維工具の長手方向での繊維工具モジュールの位置決めを確定する。長手方向からみて、少なくとも1つの止め面が繊維工具の配置された装着領域に位置していると好ましい。そのため、止め面の法線ベクトルは繊維工具のワーク領域又はその自由端と反対向きである。
【0027】
さらに、各側面内の凹部が既存の各接触面に隣接すると都合がよい。この結果として、接触面が各側面へとつながる縁領域により、確実に接触面が対応する相手止め面と面接触することを可能にすることができる。縁領域は、たとえ小さくても、半径を常に形成する。凹部によりこの半径が、少なくとも部分的にでも、凹部内に形成される。半径はさらに大きくてよい。
【0028】
各止め面に隣接する凹部は、各装着領域内に完全に収まることが好ましい。
【0029】
繊維工具のワーク部及び、特に好ましくは保持部も、横断方向に互いに離れて配置されていることが好ましい。繊維工具のワーク部又は自由端は、横断方向に整列するよう配置される。
【0030】
上述の繊維工具モジュールは、繊維加工機に装着され得る。この目的のため、繊維加工機は、キャリアと、特に装着面を有するバーとを備える。装着面は、装着平面内に広がることが好ましい。組み立てた状態で、装着領域の少なくとも1つの接触面が装着面に接触する。繊維工具モジュールは、例えば、ねじ止めにより、キャリア又はバーに取り外し可能に装着される。
【0031】
本発明の優れた実施例は、以下に記述する従属項、発明の詳細な説明及び図面から理解できるであろう。以下では、本発明の実施例を、添付の図を参照しながら説明する。図は以下の通りである。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】装着部の第1の側面で見た、繊維工具モジュールの実施例の斜視図である。
【
図2】装着部の第2の側面で見た、
図1の繊維工具モジュールの実施例のもう1つの斜視図である。
【
図3】第2の側面で見た、
図1及び
図2の繊維工具モジュールの実施例の平面図である。
【
図4】第2の側面で見た、
図1乃至
図3の繊維工具モジュールの実施例の平面図である。
【
図5】
図4の区画線A-Aに沿った、
図1乃至
図4の繊維工具モジュールの実施例の断面図である。
【
図7】
図3の区画線C-Cに沿った、
図1乃至
図6の繊維工具モジュールの実施例の装着部を部分的に示す断面図である。
【
図8】縦編機である繊維ワーク機の大幅な概略図である。
【
図9】
図8の矢印Pに沿った、
図8の繊維ワーク機のバーロッドの装着部を部分的に示す平面図である。
【
図10】第2の側面の平面図で見た、繊維工具モジュールのもう1つの実施例である。
【
図11】第2の側面の平面図で見た、繊維工具モジュールのもう1つの実施例である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
図1乃至
図7は縦編機の案内針モジュールとして構成される繊維工具モジュール15の実施例を示す。繊維工具モジュール15は、モジュール体16を有する。このモジュール体16には、モジュール体16に対して動かせず且つ互いに対しても動かない、幾つかの繊維工具17が保持されている。本件において、これらの繊維工具17は案内針である。各繊維工具17は保持部18を有し、その保持部18によってモジュール体16に装着されている。例えば、保持部18は、噛み合いによる係止及び/又は物質相互の溶着による係止によりモジュール体16に接続されている。実施例において、モジュール体はプラスチック材料又は複合材料から成り、保持部18の回りを囲むように鋳込み(インサート成型)又は射出成形により製造され、結果として繊維工具17はモジュール体16に結合される。
【0034】
繊維工具17は、金属又は金属合金でできていることが好ましい。例えば、それらは、編み目の形成又は編み目の形成のための糸の供給に使用される。
【0035】
さらに、各繊維工具17は、モジュール体16の外部に位置するワーク部19を有する。保持部18を始点として、繊維工具17は、モジュール体16から自由端20へと、長手方向Lにワーク部19沿いに延びる。繊維工具17の自由端20は、作業端としてもよい。繊維工具17の少なくともワーク部19の領域又はその自由端20は、長手方向Lと直角になる横断方向Qに互いに離れて配置されている。横断方向Qにおいて、繊維工具は整列するよう配置されている。実施例において、案内針の孔は横断方向と同軸に延びる直線に沿って配置されるため、横断方向Qに沿って整列する。長手方向Lと直角及び横断方向Wと直角な方向は、高さ方向Hとする。
【0036】
モジュール体16は、第1の側面26と、第1の側面26と反対側の第2の側面27とを備えた装着部25を有する。2つの側面26、27は、長手方向L及び横断方向Qにより画定される平面の少なくとも幾つかの領域で広がる。繊維工具17は、モジュール体16の前部29に装着されている。長手方向Lにおいて、モジュール体16は、前部29の反対側に後側28を有する。装着部25は、横断方向Qの幅を有する。この幅は、少なくとも1つの区分において、モジュール体16の後側28から広くなる。幅が広い区分において、モジュール体16の形状は台形でよい。
【0037】
2つの側面26、27の少なくとも1つの、その少なくとも一部が装着領域20を形成する。実施例においては、2つの側面26、27が装着領域30を形成する。装着領域30内では、モジュール体16の装着部25が配置され、繊維加工機33のキャリア又はバー32の装着面31と接触し、取り外し可能にバー32に装着することができる(
図8及び
図9)。
【0038】
取り外し可能に装着するため、装着孔34は装着部25全体に延びている。装着孔34は、第1の側面26上の第1の開口35と、第2の側面27上の第2の開口36とを有する。第1の開口35は第1の直径D1を有し、第2の開口は第2の直径D2を有する(
図3及び
図4)。第1の直径D1と第2の直径D2は同じ大きさでよい。この実施例において装着孔34は円錐形であり、円錐角αを有する(
図5)。そのため、この実施例において第1の直径D1は第2の直径D2より小さい。変形実施例では、直径は同じでもよく、又は第2の直径D2は第1の直径D1より大きくてもよい。実施例において円錐角は約5°でよい。第1の直径D1は約7mmである。
【0039】
開口35、36はそれぞれ、各装着領域30内に完全に収まるよう配置される。横断方向Qにおいても、装着領域30に制限はなく、装着部25の各縁37又は各側面26、27までも広がっている。長手方向Lにおいても、装着領域30に制限はなく、装着部の縁28又は各側面26、27にまで広がっている。前部29すなわち繊維工具17に向かう長手方向において、装着領域30は少なくとも1つの止め面により制限され、実施例では2つの止め面42により制限されている。横断方向Qにおいて、2つの止め面42は互いに離れて配置されている。2つの止め面42は、横断方向Qと高さ方向Hにより画定される共通平面に延びている。各止め面42の法線ベクトルは、繊維工具17と反対向きである。各止め面42は、前部29に接続する止め用突起43に設けられる。実施例においては、モジュール体16の前部29につながる4つの止め用突起43が配置されている。
【0040】
ここで、前部29は装着部25から長手方向Lに先細り、その寸法は高さ方向Hで小さくなる。前部29の横断方向Qの幅は、この実施例においては一定である。
【0041】
各止め面42に直接隣接する凹部44は深さがTであり、装着部25に配置されている。実施例において、凹部44は略長方形の輪郭を有し、その凹部44の横断方向Qの寸法は止め面42の寸法に対応する。実施例において、深さTは0.1mm未満である。
【0042】
各装着領域30は少なくとも1つの接触突出部47を有し、この接触突出部47は少なくとも1つの接触面48、及び実施例に従うと、1つのみの接触面48を有する。共通の装着領域30内の全ての接触面48は、共通の接触平面内に広がる。
図1乃至
図7の繊維工具モジュール15の実施例において、各側面26、27は装着領域30を形成し、この場合、実施例に従うと、1つの密着接触面48を有する唯一の接触突出部7がそれぞれ配置されている。接触面48は、開口35、36を環状に回る周方向Uに各開口35、36を囲む。そのため、接触面48は円環形状である。接触面48の外径は、第1の直径D1及び/又は第2の直径D2より1.5乃至2.5倍大きいことが好ましい。実施例において、外径DAは第1の直径D1より約2倍大きい。接触面48は直接各開口35、36に隣接する。結果として、装着孔の内面が段差無しで、実施例通りに、接触突出部47に縁無しでつながっている。
【0043】
円環形状の代わりに、接触面47は環状の閉曲線、例えば多角形環を有する。少なくとも1つの接触面48は少なくとも1つの装着領域30内に完全に収まるよう配置されることが好ましい。
【0044】
接触突出部47は、各側面26、27の直接隣接区分から高さ方向Hに隆起し、外部高さ方向Hに高さSの段差を自らの外部曲線に沿って形成する(
図6)。接触突出部48の高さSは凹部44の深さTより大きい。接触突出部の高さSは、例えば、約0.1mmである。
【0045】
上述の繊維工具モジュール15の実施例では、転回可能なモジュールとして構成されている。繊維加工機33のバーに面して、第1の側面26と同様に第2の側面27を装着してよい。代替として、2つの側面24、27の何れか1方に、少なくとも1つの接触突出部47と、少なくとも1つの接触突出部48とを有する装着領域30を設けてもよい。
【0046】
各装着領域30の少なくとも1つの接触面48が接触平面内で広がる場合、接触面48は、実施例によれば、第1の接触平面E1の第1の側面26の装着領域30内で延び、接触面48は第2の接触平面E2の第2の側面27の装着領域30内で延びる。2つの接触平面E1、E2は、互いに平行に配置され、高さ方向Hで互いに離れている。幾つかの接触面48が装着領域30に存在する場合、それらはそれぞれ共通の接触平面E1又はE2で広がる。接触平面E1、E2は、
図6に示されている。各装着領域30内において、モジュール体16の装着部25は、接触平面E1、E2を通じて延びる構成要素を有していない。そのため、少なくとも1つの接触面48は、高さ方向Hの最も遠くに突出する箇所を示す。
【0047】
繊維工具モジュール15をバー32に装着するために、装着手段及び、実施例によれば、取り付けねじ52が設けられている(
図8)。取り付けねじ52は、ねじ頭53と、ねじ山部分54とを有する。ねじ山部分54は、バー32のねじ孔55の対応するねじ山に装着するために設けられる。そのために、装着部25の装着領域30の少なくとも1つの接触面48は、装着面31に設置される。装着面31は、装着平面M内に延びる(
図8)。対応する接触面48と面接触した状態で、装着平面Mと各接触平面E1、E2は一致する。面接触は、各接触面48と装着面31との間で発生する。そのため、繊維工具モジュール15は、装着平面Mに対して直角な1つの方向(繊維工具モジュールの座標系の高さ方向H)においてバーに位置決め及び整列され得る。
【0048】
長手方向Lに位置決めするため、バー32は装着面31に隣接して相手止め面56を有する。相手止め面56は、装着面31に対して直角になるように整列し、横断方向Q及び高さ方向Hにより画定される平面から見て、バーに装着された繊維工具モジュール15の座標系に延びる。長手方向Lで位置決めするために、各装着領域30を区切る少なくとも1つの止め面42が相手止め面56に当接される。
【0049】
横断方向Qでの位置決めは、関連するバー32のねじ孔55と装着孔34とを通じたねじ接続を形成する取り付けねじ53により実現し、装着面31と取り付けねじ52のねじ頭53との間の装着部25には締付力が作用する。
【0050】
図1乃至
図7の繊維工具モジュール15の実施例において、装着面31と接触する接触面48は装着孔34を取り囲み、環状に閉鎖し、ねじ頭によって装着部45に加わる圧力又は締付力は周方向Uで一様に支持される。この結果、弾性変形を防ぐことができる。結果として、操作者が取り付けねじ52を必要以上又は規定以上の力で締めた場合でも繊維工具部17は互いに正確に整列する。
【0051】
ここまで述べた実施例において、各装着領域30は円環状の接触面48が1つだけ存在するように構成されている。
【0052】
図10及び
図11は、各装着領域30を例として、大幅に概略化したさらなる実施例の可能性を示す。装着領域30は、第1の側面26及び第2の側面27により形成してよい。これらの実施例において、各装着領域30は、1つの接触面48をそれぞれ有する2つ以上の接触突出部47を備える。装着孔34の周りの周方向Uから見て、直接隣接面縁部60は、互いに最大距離dmax離れている。この最大距離dmaxは、各装着孔34の開口35又は36の第1の直径D1又はD2よりも小さい。直線Gに沿って測定される箇所で最大距離dmaxが測定され、そこでは面縁部60が周方向Uで最大の距離となる。
【0053】
図10に示す実施例において、接触面48は区分された円環により形成される。その区分された円環は、装着孔34の周りの周方向Uに180°未満の角度の範囲で延びる。その変形例において、3つ以上の円環区分を装着孔34の周りの周方向Uに配置することができる。
【0054】
図11は、接触面48のその他の外形を示す。長方形の接触面48は実施例としてのみ示されている。さらに、接触面48として、その他の多角形若しくは円形又は部分的に円形若しくは部分的に多角形の曲線を選択してよい。
図11において、接触面48は、装着孔34の周りの周方向Uで一様に分布していることが好ましい。
【0055】
図10及び
図11の実施例の接触突出部47又は接触面48の配置は、少なくとも2つの対称平面が存在するよう選択され、これらの対称平面は、示す通り、装着孔34の孔軸X(
図5)を備え、径方向平面を形成する。
図1乃至
図7の実施例において、示す通り、非常に多数の対称平面が存在する。この対称性により、取付ねじにより加わる力の一様な吸収及び支持を実現することができる。
【0056】
全ての実施例において、各接触突出部47の高さ方向Hにおいて、断面は長方形で一定であり、各接触面48の外形に対応する。そこから外れると、接触突出部47の断面が接触面48から徐々に小さくなり、そして接触面48に向かって先細ることも可能となろう。
【0057】
本発明は、モジュール体16と、それに装着された繊維工具17とを備えた繊維工具モジュール15に関する。モジュール体16は、第1の側面26と第2の側面27とを有する装着部25を備える。少なくとも1つの側面26及び/又は27には、少なくとも1つの接触突出部47と、少なくとも1つの接触面48とを有する装着領域30が形成される。1つの実施例において、接触面48は環状の装着孔34の回りに広がり、その装着孔34は装着部25を通って両側面26、27に延びる。複数の接触突出部47及び複数の接触面48を1つの装着領域30に配置してもよい。1つ又はそれ以上の接触面48は、装着孔34の周りの周方向Uでお互い直接隣接して配置された面縁部60を形成し得る。これらの面縁部60の最大距離dmaxは、装着孔34の最小直径D1、D2より小さい。
【符号の説明】
【0058】
15 繊維工具モジュール
16 モジュール体
17 繊維工具
18 保持部
19 ワーク部
25 装着部
26 第1の側面
27 第2の側面
28 後側
29 前部
30 装着領域
31 装着面
32 バー
33 繊維加工機
34 装着孔
35 第1の開口
36 第2の開口
37 縁
42 止め面
43 止め用突起
44 凹部
47 接触突出部
48 接触面
52 取り付けねじ
53 ねじ頭
54 取り付けねじのねじ山部分
55 ねじ孔
56 相手止め面
60 面縁部
D1 第1の直径
D2 第2の直径
DA 接触面の外径
dmax 最大距離
E 接触平面
H 高さ方向
L 長手方向
M 装着平面
P 矢印
Q 横断方向
S 接触突出部の高さ
T 凹部の深さ
U 周方向
X 孔軸