(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-02
(45)【発行日】2022-02-10
(54)【発明の名称】アミデート化合物の製造方法
(51)【国際特許分類】
C07D 233/90 20060101AFI20220203BHJP
【FI】
C07D233/90 C
(21)【出願番号】P 2017072942
(22)【出願日】2017-03-31
【審査請求日】2020-03-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000167646
【氏名又は名称】広栄化学株式会社
(72)【発明者】
【氏名】坪井 ひとみ
(72)【発明者】
【氏名】宮城 元嘉
(72)【発明者】
【氏名】新田 晋吾
【審査官】伊佐地 公美
(56)【参考文献】
【文献】SCHMIDT, A. et al.,Organic & Biomolecular Chemistry,2008年,Vol. 6,pp. 287-295
【文献】上木達生、他,プロセス化学,日本,丸善,2008年07月30日,pp. 34-35
【文献】日本プロセス化学会,実践プロセス化学,日本,化学同人,2013年08月20日,pp. 36-37
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
CAplus/REGISTRY(STN)
CASREACT(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表される含窒素化合物と下記式(2)で表される炭酸ジアルキル化合物を反応させて下記式(3)で表されるカルボキシレート化合物を含む反応液を得、前記反応液から式(3)で表されるカルボキシレート化合物を単離することなく下記式(4)で表されるイソシアネート化合物と反応させる下記式(5)で表されるアミデート化合物の製造方法
であって、下記式(1)で表される含窒素化合物が、下記式(1-1)又は式(1-3)で表される含窒素化合物である下記式(5)で表されるアミデート化合物の製造方法。
式(1):
【化1】
(式中、R
3~R
5はヘテロ原子を含んでいてもよい炭化水素基であり、一部又は全てが相互に結合して環構造を形成していてもよい。Xは窒素原子、酸素原子又は硫黄原子を示す。但し、Xが酸素原子又は硫黄原子の場合、R
5は無い。)
式(2):
【化2】
(式中、R
2はヘテロ原子を含んでいてもよい炭化水素基である。)
式(3):
【化3】
(式中、R
2~R
5及びXは前記に同じである。)
式(4):
【化4】
(式中、Aは置換若しくは無置換の炭化水素基、nは1以上の整数である。)
式(5):
【化5】
(式中、A、n、R
2~R
5及びXは前記に同じである。)
式(1-1):
【化6】
(式中、R
5
及びXは前記に同じ、R
8
及びR
9
は水素原子又はヘテロ原子を含んでいても良い炭素数1~6の炭化水素基である。)
式(1-3):
【化7】
(式中、R
5
及びXは前記に同じ、R
12
~R
15
は水素原子又はヘテロ原子を含んでいても良い炭素数1~6の炭化水素基である。)
【請求項2】
請求項1において、式(1)で表される含窒素化合物と式(2)で表される炭酸ジアルキル化合物を反応させて得られる反応液が、さらに下記式(b1)で表されるアルコール化合物を含んでおり、前記反応液に下記式(b1)で表されるアルコール化合物が存在したまま式(4)で表されるイソシアネート化合物と反応させる請求項1に記載のアミデート化合物の製造方法。
式(b1):
R
2
-OH (b1)
(式中、R
2
は前記に同じである。)
【請求項3】
請求項1
又は2において、式(1)で表される含窒素化合物と式(2)で表される炭酸ジアルキル化合物を反応させる際に、アルコール溶媒存在下で反応させる請求項1
又は2に記載のアミデート化合物の製造方法。
【請求項4】
式(4)で表されるイソシアネート化合物が下記式(4-1)~式(4-3)で表されるイソシアネート化合物である請求項1~3のいずれかに記載のアミデート化合物の製造方法。
式(4-1):
【化8】
(式中、R
6は置換若しくは無置換の炭化水素基である。)
式(4-2):
【化9】
(式中、R
7は置換若しくは無置換の炭化水素基である。)
式(4-3):
【化10】
(式中、mは0~4の整数である。)
【請求項5】
Xが窒素原子である請求項1~4のいずれかに記載のアミデート化合物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アミデート化合物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
カルベン化合物と総称される配位不飽和化合物の中でも、複素環式カルベン化合物(NHCs)は、近年その触媒としての利用に関して注目されている。例えば、エポキシ化合物のようなアルキレンオキシドの開環重合により、ポリエーテル構造を有する重合体の製造用触媒として使用されること(特許文献1、2)や、脂肪族ジイソシアネートと脂肪族ジオールの重合反応における触媒として使用されること(非特許文献1)が知られている。しかし、カルベン化合物は一般に、酸素や水に対して不安定であることから、カルベンを安定化させた化合物として、例えば、複素環式カルベン化合物にCO2を付加させた化合物(以下、カルボキシレート化合物という。)やイソシアネート化合物を付加させた化合物(以下、アミデート化合物という。)が知られている(非特許文献2)。
【0003】
このうち、アミデート化合物の製造方法としては、例えば、1-メチルイミダゾールと炭酸ジメチルを反応させて、カルボキシレート化合物である1,3-ジメチルイミダゾリウム-2-カルボキシレートを製造し、これを単離してから、イソシアネート化合物であるp-クロロフェニルイソシアネートを反応させる方法が知られている(非特許文献2)。本発明者らは、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウム-2-カルボキシレートを基質とするアミデート化合物を合成すべく、非特許文献2を参考に1-ブチルイミダゾールと炭酸ジメチルを反応させて1-ブチル-3-メチルイミダゾリウム-2-カルボキシレートの製造を試みた。その結果、反応で得られた反応液の1H-NMR分析においては、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウム-2-カルボキシレートの生成を確認できたものの、反応液を濃縮したところ、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウム-2-カルボキシレートが分解することから、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウム-2-カルボキシレートを単離できないことが判明した(後述の比較例1参照)。このことから、非特許文献2に記載の製造方法は、単離することが困難な安定性の低いカルボキシレート化合物を基質としてアミデート化合物を製造する場合には不適であり、安定性の低いカルボキシレート化合物を基質としても目的とするアミデート化合物を製造できる、基質適用性の高いアミデート化合物の製造方法の開発が課題であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2009/013344号パンフレット
【文献】特表2013-526630号公報
【非特許文献】
【0005】
【文献】Polymer Chemistry 2012年 3巻 605-608頁
【文献】Organic & Biomolecular Chemistry 2008年 6巻 2号 287-295頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記の背景技術に鑑みてなされたものであり、単離することが困難な安定性の低いカルボキシレート化合物を基質に用いた場合であっても、目的とするアミデート化合物を製造することができる、基質適用性の高い、アミデート化合物の新規な製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者が、上記課題を解決するために鋭意検討を行ったところ、下記式(1)で表される含窒素化合物と下記式(2)で表される炭酸ジアルキル化合物を反応させて下記式(3)で表されるカルボキシレート化合物を含む反応液を得た後に、前記反応液からカルボキシレート化合物(3)を単離せず下記式(4)で表されるイソシアネート化合物と反応させることで、下記式(5)で表されるアミデート化合物を製造できること見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、以下の[1]~[5]に関するものである。
【0009】
[1]下記式(1)で表される含窒素化合物と下記式(2)で表される炭酸ジアルキル化合物を反応させて下記式(3)で表されるカルボキシレート化合物を含む反応液を得、前記反応液から式(3)で表されるカルボキシレート化合物を単離することなく下記式(4)で表されるイソシアネート化合物と反応させる下記式(5)で表されるアミデート化合物の製造方法。
【0010】
式(1):
【0011】
【化1】
(式中、R
3~R
5はヘテロ原子を含んでいてもよい炭化水素基であり、一部又は全てが相互に結合して環構造を形成していてもよい。Xは窒素原子、酸素原子又は硫黄原子を示す。但し、Xが酸素原子又は硫黄原子の場合、R
5は無い。)
【0012】
式(2):
【0013】
【化2】
(式中、R
2はヘテロ原子を含んでいてもよい炭化水素基である。)
【0014】
式(3):
【0015】
【化3】
(式中、R
2~R
5及びXは前記に同じである。)
【0016】
式(4):
【0017】
【化4】
(式中、Aは置換若しくは無置換の炭化水素基、nは1以上の整数である。)
【0018】
式(5):
【0019】
【化5】
(式中、A、n、R
2~R
5及びXは前記に同じである。)
【0020】
[2][1]において、式(1)で表される含窒素化合物と式(2)で表される炭酸ジアルキル化合物を反応させる際に、アルコール溶媒存在下で反応させる[1]に記載のアミデート化合物の製造方法。
【0021】
[3]式(1)で表される含窒素化合物が下記式(1-1)~式(1-3)からなる群より選択される少なくとも1種の含窒素化合物である[1]又は[2]に記載のアミデート化合物の製造方法。
【0022】
式(1-1):
【0023】
【化6】
(式中、R
5及びXは前記に同じ、R
8及びR
9は水素原子又はヘテロ原子を含んでいても良い炭素数1~6の炭化水素基である。)
【0024】
式(1-2):
【0025】
【化7】
(式中、R
5及びXは前記に同じ、R
10及びR
11は水素原子又はヘテロ原子を含んでいても良い炭素数1~6の炭化水素基である。)
【0026】
式(1-3):
【0027】
【化8】
(式中、R
5及びXは前記に同じ、R
12~R
15は水素原子又はヘテロ原子を含んでいても良い炭素数1~6の炭化水素基である。)
【0028】
[4]式(4)で表されるイソシアネート化合物が下記式(4-1)~式(4-3)で表されるイソシアネート化合物である[1]~[3]のいずれかに記載のアミデート化合物の製造方法。
【0029】
式(4-1):
【0030】
【化9】
(式中、R
6は置換若しくは無置換の炭化水素基である。)
【0031】
式(4-2):
【0032】
【化10】
(式中、R
7は置換若しくは無置換の炭化水素基である。)
【0033】
式(4-3):
【0034】
【0035】
[5]Xが窒素原子である[1]~[4]のいずれかに記載のアミデート化合物の製造方法。
【発明の効果】
【0036】
本発明によれば、単離することが困難な安定性の低いカルボキシレート化合物を基質に用いた場合であっても、目的とするアミデート化合物を製造することができる、基質適用性の高い、アミデート化合物の新規な製造方法を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。
【0038】
式(1)中、R3~R5はヘテロ原子を含んでいてもよい炭化水素基であり、一部又は全てが相互に結合して環構造を形成していてもよい。ヘテロ原子を含んでいてもよい炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-オクチル基、n-デシル基、n-ドデシル基、アリル基、ベンジル基、シクロヘキシル基、アダマンチル基、フェニル基、2,6-ジイソプロピルフェニル基、2,4,6-トリメチルフェニル基、2-メトキシエチル基、2-エトキシエチル基、2-(ジメチルアミノ)エチル基等が挙げられる。好ましくはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、t-ブチル基、n-オクチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、2,4,6-トリメチルフェニル基であり、より特に好ましくはメチル基、又はエチル基、イソプロピル基、t-ブチル基、n-オクチル基、フェニル基、特に好ましくはメチル基、イソプロピル基、t-ブチル基、n-オクチル基、フェニル基である。Xは窒素原子、酸素原子又は硫黄原子であり、好ましくは窒素原子である。但し、Xが酸素原子又は硫黄原子の場合、R5は無い。
本発明において、入手容易性の観点から、式(1)で表される含窒素化合物(以下、含窒素化合物(1)という。)においてR3及びR4が相互に結合し、環構造を形成していることが好ましい。環を形成している含窒素有機化合物(1)として好ましくは式(1-1)~式(1-3)で表される含窒素有機化合物からなる群より選択される少なくとも1種であり、特に好ましくは式(1-1)で表される含窒素有機化合物である。
【0039】
式(1-1):
【0040】
【化12】
(式中、R
5及びXは前記に同じ、R
8及びR
9は水素原子又はヘテロ原子を含んでいても良い炭素数1~6の炭化水素基である。)
【0041】
式(1-2):
【0042】
【化13】
(式中、R
5及びXは前記に同じ、R
10及びR
11は水素原子又はヘテロ原子を含んでいても良い炭素数1~6の炭化水素基である。)
【0043】
式(1-3):
【0044】
【化14】
(式中、R
5及びXは前記に同じ、R
12~R
15は水素原子又はヘテロ原子を含んでいても良い炭素数1~6の炭化水素基である。)
【0045】
式(1-1)中、R5及びXは前記に同じである。R8及びR9は水素原子又はヘテロ原子を含んでいても良い炭素数1~6の炭化水素基であり、好ましくは水素原子である。ヘテロ原子を含んでいても良い炭素数1~6の炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、フェニル基、2-メトキシエチル基、2-エトキシエチル基、2-(ジメチルアミノ)エチル基等が挙げられ、好ましくはメチル基である。
【0046】
式(1-1)で表される含窒素化合物の具体例としては、1-メチルイミダゾール、1-エチルイミダゾール、1-プロピルイミダゾール、1-イソプロピルイミダゾール、1-ブチルイミダゾール、1-t-ブチルイミダゾール、1-ペンチルイミダゾール、1-ヘキシルイミダゾール、1-ヘプチルイミダゾール、1-オクチルイミダゾール、1-ノニルイミダゾール、1-デシルイミダゾール、1-アリルイミダゾール、1-ベンジルイミダゾール、1-(2-メトキシエチル)イミダゾール、1-(2-エトキシエチル)-イミダゾール、1-(2-ジメチルアミノエチル)イミダゾール、1,4,5-トリメチルイミダゾール
【0047】
オキサゾール、5-メチルオキサゾール、4,5-ジメチルオキサゾール、
【0048】
チアゾール、4-メチルチアゾール、5-メチルチアゾール、4,5-ジメチルチアゾール等が挙げられ、好ましくは、1-メチルイミダゾール、1-エチルイミダゾール、1プロピルイミダゾール、1-ブチルイミダゾール、1-オクチルイミダゾールであり、特に好ましくは、1-メチルイミダゾール、1-ブチルイミダゾール、1-オクチルイミダゾールである。
【0049】
式(1-2)中、R5及びXは前記に同じである。R10及びR11は水素原子又はヘテロ原子を含んでいても良い炭素数1~6の炭化水素基であり、好ましくは水素原子である。ヘテロ原子を含んでいても良い炭素数1~6の炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、フェニル基、2-メトキシエチル基、2-エトキシエチル基、2-(ジメチルアミノ)エチル基等が挙げられ、好ましくはメチル基である。
【0050】
式(1-2)で表される含窒素化合物の具体例としては、1-メチルイミダゾリン、1-エチルイミダゾリン、1-プロピルイミダゾリン、1-イソプロピルイミダゾリン、1-ブチルイミダゾリン、1-t-ブチルイミダゾリン、1-ペンチルイミダゾリン、1-ヘキシルイミダゾリン、1-ヘプチルイミダゾリン、1-オクチルイミダゾリン、1-ノニルイミダゾリン、1-デシルイミダゾリン、1-アリルイミダゾリン、1-ベンジルイミダゾリン、1-(2-メトキシエチル)イミダゾリン、1-(2-エトキシエチル)イミダゾリン、1-(2-ジメチルアミノエチル)イミダゾリン、1,4,5-トリメチルイミダゾリン
【0051】
オキサゾリン、5-メチルオキサゾリン、4,5-ジメチルオキサゾリン、
【0052】
チアゾリン、4-メチルチアゾリン、5-メチルチアゾリン、4,5-ジメチルチアゾリン等が挙げられ、好ましくは、1-メチルイミダゾリン、1-エチルイミダゾリン、1-プロピルイミダゾリン、1-ブチルイミダゾリンであり、特に好ましくは、1-メチルイミダゾリンである。
【0053】
式(1-3)中、R5及びXは前記に同じである。R12~R15は水素原子又はヘテロ原子を含んでいても良い炭素数1~6の炭化水素基であり、好ましくは水素原子である。ヘテロ原子を含んでいても良い炭素数1~6の炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、フェニル基、2-メトキシエチル基、2-エトキシエチル基、2-(ジメチルアミノ)エチル基等が挙げられ、好ましくはメチル基である。
【0054】
式(1-3)で表される含窒素化合物の具体例としては、1-メチルベンゾイミダゾール、1-エチルベンゾイミダゾール、1-プロピルベンゾイミダゾール、1-ブチルベンゾイミダゾール、1-ペンチルベンゾイミダゾール、1-ヘキシルベンゾイミダゾール、1-ヘプチルベンゾイミダゾール、1-オクチルベンゾイミダゾール、1-ノニルベンゾイミダゾール、1-デシルベンゾイミダゾール、1-アリルベンゾイミダゾール、1-ベンジルベンゾイミダゾール、1,6-ジメチルベンゾイミダゾール、1-アセチル-6-メチルベンゾイミダゾール、1,6,7-トリメチルベンゾイミダゾール、
【0055】
ベンゾオキサゾール、ベンゾチアゾール等が挙げられ、好ましくは、1-メチルベンゾイミダゾール、1-エチルルベンゾイミダゾール、1-プロピルベンゾイミダゾール、1-ブチルベンゾイミダゾールであり、特に好ましくは、1-メチルベンゾイミダゾールである。
【0056】
式(2)中、R2はヘテロ原子を含んでいてもよい炭化水素基である。ヘテロ原子を含んでいてもよい炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-オクチル基、n-デシル基、n-ドデシル基、アリル基、ベンジル基、シクロヘキシル基、アダマンチル基、フェニル基、2,6-ジイソプロピルフェニル基、2,4,6-トリメチルフェニル基、2-メトキシエチル基、2-エトキシエチル基、2-(ジメチルアミノ)エチル基等が挙げられる。好ましくはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、t-ブチル基、n-オクチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、フェニル基であり、特に好ましくはメチル基である。
【0057】
式(2)で表される炭酸ジアルキル化合物(以下、炭酸ジアルキル化合物(2)という。)の具体例としては、炭酸ジメチル、炭酸ジエチル、炭酸ジプロピル、炭酸ジブチル、炭酸ジペンチル、炭酸ジヘキシル等が挙げられ、好ましくは炭酸ジメチル、炭酸ジエチル、炭酸ジプロピル、炭酸ジブチルであり、特に好ましくは炭酸ジメチルである。
【0058】
炭酸ジアルキル化合物(2)の使用量は、含窒素有機化合物(1)1モルに対して通常1モル以上、好ましくは1~6モルである。
【0059】
次いで、式(3)で表されるカルボキシレート化合物(以下、カルボキシレート化合物(3)という。)について説明する。
【0060】
式(3)中、R2~R5及びXは前記に同じである。カルボキシレート化合物(3)において、R3及びR4が相互に結合し、環構造を形成していることが好ましい。環を形成しているカルボキシレート化合物(3)として好ましくは式(3-1)~式(3-3)で表されるカルボキシレート化合物からなる群より選択される少なくとも1種であり、特に好ましくは式(3-1)で表されるカルボキシレート化合物である。
【0061】
式(3-1):
【0062】
【化15】
(式中、R
2、R
5、R
8、R
9及びXは前記に同じである。)
【0063】
式(3-2):
【0064】
【化16】
(式中、R
2、R
5、R
10、R
11及びXは前記に同じである。)
【0065】
式(3-3):
【0066】
【化17】
(式中、R
2、R
5、R
12~R
15及びXは前記に同じである。)
【0067】
式(3-1)中、R2、R5、R8、R9及びXは前記に同じである。
【0068】
式(3-1)で表されるカルボキシレート化合物の具体例としては、1,3-ジメチルイミダゾリウム-2-カルボキシレート、1-エチル-3-メチルイミダゾリウム-2-カルボキシレート、1-メチル-3-プロピルイミダゾリウム-2-カルボキシレート、1-メチル-3-イソプロピルイミダゾリウム-2-カルボキシレート、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウム-2-カルボキシレート、1-t-ブチル-3-メチルイミダゾリウム-2-カルボキシレート、1-メチル-3-ペンチルイミダゾリウム-2-カルボキシレート、1-ヘキシル-3-メチルイミダゾリウム-2-カルボキシレート、1-ヘプチル-3-メチルイミダゾリウム-2-カルボキシレート、1-メチル-3-オクチルイミダゾリウム-2-カルボキシレート、1-メチル-3-ノニルイミダゾリウム-2-カルボキシレート、1-デシル-3-メチルイミダゾリウム-2-カルボキシレート、1-アリル-3-メチルイミダゾリウム-2-カルボキシレート、1-ベンジル-3-メチルイミダゾリウム-2-カルボキシレート、1-(2-メトキシエチル)-3-メチルイミダゾリウム-2-カルボキシレート、1-(2-エトキシエチル)-3-メチルイミダゾリウム-2-カルボキシレート、1-(2-ジメチルアミノエチル)-3-メチルイミダゾリウム-2-カルボキシレート、
【0069】
3-メチルオキサゾリウム-2-カルボキシレート、3,5-ジメチルオキサゾリウム-2-カルボキシレート、3,4,5-トリメチルオキサゾリウム-2-カルボキシレート、
【0070】
3-メチルチアゾリウム-2-カルボキシレート、3,4-ジメチルチアゾリウム-2-カルボキシレート、3,5-ジメチルチアゾリウム-2-カルボキシレート、3,4,5-トリメチルチアゾリウム-2-カルボキシレート、等が挙げられ、好ましくは、1,3-ジメチルイミダゾリウム-2-カルボキシレート、1-エチル-3-メチルイミダゾリウム-2-カルボキシレート、1-メチル-3-プロピルイミダゾリウム-2-カルボキシレート、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウム-2-カルボキシレート、1-メチル-3-オクチルイミダゾリウム-2-カルボキシレートであり、特に好ましくは、1,3-ジメチルイミダゾリウム-2-カルボキシレート、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムカルボキシレート、1-メチル-3-オクチルイミダゾリウム-2-カルボキシレートである。
【0071】
式(3-2)中、R2、R5、R8、R9及びXは前記に同じである。
【0072】
式(3-2)で表されるカルボキシレート化合物の具体例としては、1,3-ジメチルイミダゾリニウム-2-カルボキシレート、1-エチル-3-メチルイミダゾリニウム-2-カルボキシレート、1-メチル-3-プロピルイミダゾリニウム-2-カルボキシレート、1-ブチル-3-メチルイミダゾリニウム-2-カルボキシレート、1-メチル-3-ペンチルイミダゾリニウム-2-カルボキシレート、1-ヘキシル-3-メチルイミダゾリニウム-2-カルボキシレート、1-ヘプチル-3-メチルイミダゾリニウム-2-カルボキシレート、1-メチル-3-オクチルイミダゾリニウム-2-カルボキシレート、1-メチル-3-ノニルイミダゾリニウム-2-カルボキシレート、1-デシル-3-メチルイミダゾリニウム-2-カルボキシレート、1-アリル-3-メチルイミダゾリニウム-2-カルボキシレート、1-ベンジル-3-メチルイミダゾリニウム-2-カルボキシレート、1-(2-メトキシエチル)-3-メチルイミダゾリニウム-2-カルボキシレート、1-(2-エトキシエチル)-3-メチルイミダゾリニウム-2-カルボキシレート、1-(2-ジメチルアミノエチル)-3-メチルイミダゾリニウム-2-カルボキシレート、1,3,4,5-テトラメチルイミダゾリニウム-2-カルボキシレート、
【0073】
3-メチルオキサゾリニウム-2-カルボキシレート、3,4-ジメチルオキサゾリニウム-2-カルボキシレート、3,5-ジメチルオキサゾリニウム-2-カルボキシレート、3,4,5-トリメチルオキサゾリニウム-2-カルボキシレート、
【0074】
3-メチルチアゾリニウム-2-カルボキシレート、3,4-ジメチルチアゾリニウム-2-カルボキシレート、3,5-ジメチルチアゾリニウム-2-カルボキシレート、3,4,5-トリメチルチアゾリニウム-2-カルボキシレート等が挙げられ、好ましくは、1,3-ジメチルイミダゾリニウム-2-カルボキシレート、1-エチル-3-メチルイミダゾリニウム-2-カルボキシレート、1-メチル-3-プロピルイミダゾリニウム-2-カルボキシレート、1-ブチル-3-メチルイミダゾリニウム-2-カルボキシレートであり、特に好ましくは、1,3-ジメチルイミダゾリニウム-2-カルボキシレートである。
【0075】
式(3-3)中、R2、R5、R12~R15及びXは前記に同じである。
【0076】
式(3-3)で表されるカルボキシレート化合物の具体例としては、1,3-ジメチルベンゾイミダゾリウム-2-カルボキシレート、1-エチル-3-メチルベンゾイミダゾリウム-2-カルボキシレート、1-メチル-3-プロピルベンゾイミダゾリウム-2-カルボキシレート、1-ブチル-3-メチルベンゾイミダゾリウム-2-カルボキシレート、1-メチル-3-ペンチルベンゾイミダゾリウム-2-カルボキシレート、1-ヘキシル-3-メチルベンゾイミダゾリウム-2-カルボキシレート、1-ヘプチル-3-メチルベンゾイミダゾリウム-2-カルボキシレート、1-メチル-3-オクチルベンゾイミダゾリウム-2-カルボキシレート、1-メチル-3-ノニルベンゾイミダゾリウム-2-カルボキシレート、1-デシル-3-メチルベンゾイミダゾリウム-2-カルボキシレート、1-アリル-3-メチルベンゾイミダゾリウム-2-カルボキシレート、1-ベンジル-3-メチルベンゾイミダゾリウム-2-カルボキシレート、1,3,6-トリメチルベンゾイミダゾリウム-2-カルボキシレート、1-アセチル-3,6-ジメチルベンゾイミダゾリウム-2-カルボキシレート、1,3,6,7-テトラメチルベンゾイミダゾリウム-2-カルボキシレート、1,3-ジベンジル-6,7-ジメチルベンゾイミダゾリウム-2-カルボキシレート、
【0077】
3-メチルベンゾオキサゾリウム-2-カルボキシレート、
【0078】
3-メチルベンゾチアゾリウム-2-カルボキシレート好ましくは、1,3-ジメチルベンゾイミダゾリウム-2-カルボキシレート、1-エチル-3-メチルベンゾイミダゾリウム-2-カルボキシレート、1-メチル-3-プロピルベンゾイミダゾリウム-2-カルボキシレート、1-ブチル-3-メチルベンゾイミダゾリウム-2-カルボキシレートであり、特に好ましくは、1,3-ジメチルベンゾイミダゾリウム-2-カルボキシレートである。
【0079】
反応温度は、使用する原料、溶媒等によって最適な温度が異なるが、通常、室温以上であり、好ましくは20~200℃である。
【0080】
溶媒は使用してもしなくてもよい。溶媒を使用する場合、溶媒の具体例としては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、1-メトキシ-2-プロパノール、エトキシエタノール等のアルコール溶媒、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール等のポリオール溶媒、ジプロピレングリコールモノn-ブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノn-プロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノn-プロピルエーテル、プロピレングリコールモノn-ブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノn-ブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル等のグリコールモノアルキルエーテル溶媒等が挙げられ、好ましくは1価のアルコール溶媒であり、特に好ましくはメタノールである。溶媒の使用量は、含窒素有機化合物(1)1重量部に対して、通常50重量部以下、好ましくは10重量部以下である。
【0081】
必要に応じて、窒素、アルゴン、ヘリウム等の反応に影響を与えない不活性ガス雰囲気下で反応させてもよい。
【0082】
反応終了後は、反応液からカルボキシレート化合物(3)を取り出さず、反応液のまま式(4)で表されるイソシアネート化合物との反応に使用する。
【0083】
式(4)で表されるイソシアネート化合物とカルボキシレート化合物(3)の反応について説明する。
【0084】
式(4)中、Aは置換若しくは無置換の炭化水素基であり、好ましくは置換若しくは無置換の炭素数1~100の炭化水素基、より好ましくは置換若しくは無置換の炭素数1~50の炭化水素基、特に好ましくは置換若しくは無置換の炭素数1~30の炭化水素基である。Aが置換基を有する場合、置換基の例としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子、メチルアミノ基等のアルキルアミノ基、ジメチルアミノ基等のジアルキルアミノ基、メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基、ベンジルオキシ基などのアリールオキシ基、トリフルオロメチル基等のハロゲン化アルキル基、ニトロ基、シアノ基、イソシアネート基等が挙げられる。また、Aの炭化水素基が、酸素原子、窒素原子、硫黄原子などのヘテロ原子で置換されていても良い。
【0085】
nは1以上の整数であり、入手性の観点から好ましくは1~6、より好ましくは1~4、特に好ましくは1~2である。
【0086】
式(4)で表されるイソシアネート化合物(以下、イソシアネート化合物(4)という。)として、好ましくは式(4-1)~式(4-3)で表されるイソシアネート化合物であり、特に好ましくは式(4-1)又は式(4-2)で表されるイソシアネート化合物である。
【0087】
式(4-1):
【0088】
【化18】
(式中、R
6は置換若しくは無置換の炭化水素基である。)
【0089】
式(4-2):
【0090】
【化19】
(式中、R
7は置換若しくは無置換の炭化水素基である。)
【0091】
式(4-3):
【0092】
【0093】
式(4-1)において、R6は置換若しくは無置換の炭化水素基であり、好ましくは置換若しくは無置換の炭素数1~100の炭化水素基、より好ましくは置換若しくは無置換の炭素数1~50の炭化水素基、特に好ましくは置換若しくは無置換の炭素数1~30の炭化水素基である。R6が置換基を有する場合、置換基の例としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子、メチルアミノ基等のアルキルアミノ基、ジメチルアミノ基等のジアルキルアミノ基、メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基、ベンジルオキシ基等のアリールオキシ基、トリフルオロメチル基等のハロゲン化アルキル基、ニトロ基、シアノ基、イソシアネート基等が挙げられる。また、R6の炭化水素基が、酸素原子、窒素原子、硫黄原子等のヘテロ原子で置換されていても良い。
【0094】
式(4-2)において、R7は置換若しくは無置換の炭化水素基であり、好ましくは置換若しくは無置換の炭素数1~100の炭化水素基、より好ましくは置換若しくは無置換の炭素数1~50の炭化水素基、特に好ましくは置換若しくは無置換の炭素数1~30の炭化水素基である。具体的には、メチレン基、ジメチルメチレン基、エチレン基、n-プロピレン基、n-ブチレン基、n-ペンチレン基、n-ヘキシレン基、n-ヘプチレン基、n-オクチレン基、n-ノニレン基、n-デシレン基、n-ドデシレン基、n-オクタデシレン基、シクロヘキシレン基等のアルキレン基、フェニレン基、2-メチルフェニレン基、2,6-ジメチルフェニレン基、2,4-ジメチルフェニレン基、2,3-ジメチルフェニレン基、ナフチレン基等のアリーレン基、フェニルメチレン基、フェニルエチレン基、1-フェニルプロピレン基、2-フェニルプロピレン基、1-フェニルブチレン基、2-フェニルブチレン基、ナフチルメチレン基、ナフチルエチレン基等のアリールアルキレン基、前述のアルキレン基とアリーレン基が適宜組み合わされて成るアリーレンアルキレン基等が挙げられる。これらの二価の炭化水素基が反復して又は組み合わされて、1つの二価の炭化水素基を構成していても良い。
【0095】
R7が置換基を有する場合、置換基の例としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子、メチルアミノ基等のアルキルアミノ基、ジメチルアミノ基等のジアルキルアミノ基、メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基、ベンジルオキシ基など等のアリールオキシ基、トリフルオロメチル基等のハロゲン化アルキル基、ニトロ基、シアノ基、イソシアネート基等が挙げられる。また、R7の炭化水素基が、酸素原子、窒素原子、硫黄原子など等のヘテロ原子で置換されていても良い。
【0096】
式(4-3)において、mは前記に同じである。
【0097】
以下にイソシアネート化合物(4)の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。下記具体例中、Etはエチル基、Prはn-プロピル基、Buはn-ブチル基を示す。
【0098】
【0099】
【0100】
【0101】
【0102】
イソシアネート化合物(4)として好ましくは式(4-1-20)、(4-1-30)、(4-1-41)、(4-1-45)、(4-1-46)、(4-1-48)、(4-1-52)、(4-1-59)、(4-1-88)、(4-1-89)、(4-1-90)、(4-2-20)で表される化合物であり、特に好ましくは式(4-1-20)で表される化合物である。
【0103】
式(5)で表されるアミデート化合物について説明する。
【0104】
式(5)中、A、R2~R5、X及びnは前記に同じである。式(5)で表されるアミデート化合物(以下、アミデート化合物(5)という。)としては、式(5-1)~式(5-3)で表されるアミデート化合物であることが好ましい。
【0105】
式(5-1):
【0106】
【化25】
(式中、R
2~R
6、Xは前記に同じである。)
【0107】
式(5-2):
【0108】
【化26】
(式中、R
2~R
5、R
7、及びXは前記に同じである。)
【0109】
式(5-3):
【0110】
【化27】
(式中、R
2~R
5、X及びmは前記に同じである。)
【0111】
式(5-1)において、R2~R6、Xは前記に同じである。
【0112】
式(5-2)において、R2~R5、R7及びXは前記に同じである。
【0113】
式(5-3)において、R2~R5、X及びmは前記に同じである。
【0114】
以下にアミデート化合物(5)の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。下記具体例中、Etはエチル基、Prはn-プロピル基、Buはn-ブチル基を示す。
【0115】
【0116】
【0117】
【0118】
【0119】
【0120】
【0121】
【0122】
【0123】
【0124】
【0125】
【0126】
【0127】
【0128】
【0129】
【0130】
【0131】
【0132】
【0133】
【0134】
【0135】
【0136】
【0137】
【0138】
【0139】
【0140】
【0141】
【0142】
【0143】
【0144】
【0145】
【化58】
(式(5-3-1a)~(3-3-1c)中、mは前記に同じ。)
【0146】
アミデート化合物(5)として好ましくは式(5-1-20a)、(5-1-30a)、(5-1-41a)、(5-1-45a)、(5-1-46a)、(5-1-48a)、(5-1-52a)、(5-1-59a)、(5-1-88a)、(5-1-89a)、(5-1-90a)、(5-2-20a)、(5-1-20b)、(5-1-30b)、(5-1-41b)、(5-1-45b)、(5-1-46b)、(5-1-48b)、(5-1-52b)、(5-1-59b)、(5-1-88b)、(5-1-89b)、(5-1-90b)、(5-2-20b)、(5-1-20c)、(5-1-30c)、(5-1-41c)、(5-1-45c)、(5-1-46c)、(5-1-48c)、(5-1-52c)、(5-1-59c)、(5-1-89c)、(5-1-90c)、(5-1-88c)、(5-2-20c)、(5-2-41a)、(5-2-48a)、(5-2-49a)、(5-2-51a)、(5-2-41b)、(5-2-48b)、(5-2-49b)、(5-2-51b)、(5-2-41c)、(5-2-48c)、(5-2-49c)、(5-2-51c)で表される化合物であり、特に好ましくは式(5-1-20a)、(5-1-20b)、(5-1-20c)で表される化合物である。
【0147】
本発明のアミデート化合物(5)が、光学異性体、立体異性体、位置異性体等の異性体を有する場合には、いずれの異性体であるか明記がない限り、いずれの異性体の混合物もアミデート化合物(5)に包含される。例えば、アミデート化合物(5)に光学異性体が存在する場合、ラセミ体から分割されたその光学異性体もアミデート化合物(5)に包含され得る。これらの異性体は、自体公知の合成手法、分離手法(濃縮、溶媒抽出、カラムクロマトグラフィー、再結晶等)によりそれぞれを単一化合物として得ることができる。
【0148】
また、アミデート化合物(5)は共鳴によって異性化すると考えられる。例えば式(5)で表される化合物において、Xが窒素原子であるとき、以下の共鳴構造を取りうると考えられる。
【0149】
【化59】
(式中、A、R
2~R
5及びnは前記に同じ。)
【0150】
イソシアネート化合物(4)とカルボキシレート化合物(3)の反応において、通常、イソシアネート化合物(4)に含まれるイソシアネート基1モルに対して、カルボキシレート化合物(3)を0.8モル以上、好ましくは1~3モルとなる量を反応させる。
【0151】
イソシアネート化合物(4)とカルボキシレート化合物(3)の反応においては、溶媒を使用してもしなくてもよい。溶媒を使用する場合、含窒素化合物(1)と炭酸ジアルキル(2)との反応において使用した溶媒をそのまま本反応の溶媒とでき、さらに別途溶媒を追加してもよい。溶媒を追加する場合、溶媒としては、例えば、トルエン、ベンゼン、キシレン等の芳香族炭化水素、メチルシクロヘキサン、シクロヘキサン、n-ヘキサン、n-ヘプタン、オクタン等の脂肪族炭化水素、ブチルクロライド、1,2-ジクロロエタン等のハロゲン化炭化水素、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン等のハロゲン化芳香族炭化水素などが挙げられ、好ましくは芳香族炭化水素とハロゲン化芳香族炭化水素であり、特に好ましくはトルエン、キシレン、クロロベンゼンである。溶媒は必要に応じて2種以上を混合して使用することもできる。溶媒の使用量は、カルボキシレート化合物(4)1重量部に対して、通常50重量部以下、好ましくは0.1~35重量部である。
【0152】
反応温度は、特に制限されないが、溶媒の沸点以下であればよく、通常10℃以上、好ましくは40~200℃、特に好ましくは80~150℃である。
【0153】
必要に応じて、窒素、アルゴン、ヘリウム等の反応に影響を与えない不活性ガス雰囲気下で反応させてもよい。
【0154】
反応終了後は、反応液を濃縮又はろ過により、アミデート化合物(5)を得ることができる。また、得られたアミデート化合物(5)は、再結晶等の方法により精製することができる。
【0155】
本発明の製造方法においては、含窒素化合物(1)と炭酸ジアルキル化合物(2)の反応によって得られた反応液からカルボキシレート化合物(3)を単離することなくイソシアネート化合物(4)と反応させる。このとき、含窒素化合物(1)と炭酸ジアルキル化合物(2)の反応によって得られた反応液にはカルボキシレート化合物(3)の他に、副生物である式(b1)で表されるアルコール化合物が含まれる。
【0156】
式(b1):
【0157】
R2-OH (b1)
(式中、R2は前記に同じである。)
【0158】
式(b1)で表されるアルコール化合物としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、t-ブタノール、n-オクタノール、メトキシエタノール、エトキシエタノール等の脂肪族アルコール、フェノール等のフェノール類、ベンジルアルコール等の芳香族アルコールが挙げられる。
【0159】
また、含窒素化合物(1)と炭酸ジアルキル化合物(2)の反応においてアルコール溶媒を使用した場合、反応液には当該アルコール溶媒(以下、アルコール化合物(b2)という。)が含まれる。
【0160】
イソシアネート化合物のイソシアネート基はアルコール化合物のヒドロキシル基と反応してしまうため、イソシアネート化合物をアルコール化合物以外の化合物と反応させる場合においては、通常、アルコール化合物存在下では反応を行わない。したがって、通常であれば、含窒素化合物(1)と炭酸ジアルキル化合物(2)の反応によって得られた反応液からカルボキシレート化合物(3)を単離するか、反応液からアルコール化合物を除去して、イソシアネート化合物(4)との反応を行う。しかしながら、本発明においては、アルコール化合物(b1)及びアルコール化合物(b2)(以下、アルコール化合物(b1)及びアルコール化合物(b2)をまとめてアルコール化合物(B)という。)が存在していても、目的のアミデート化合物(5)を得ることができる。その理由としては、下記反応式に示す反応経路を辿るためであると考えられる。
【0161】
【0162】
すなわち、アルコール化合物(B)存在下でイソシアネート化合物(4)とカルボキシレート化合物(3)を反応させた場合、まず、イソシアネート化合物(4)とアルコール化合物(B)が反応して、ウレタン化合物(以下、ウレタン化合物(C)という。)が生成する。ここで、生成したウレタン化合物(C)はカルボキシレート化合物(3)と反応する。このため、目的物であるアミデート化合物(5)を得ることができるものと考えられる。
【実施例】
【0163】
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はなんらこれらに限定されるものではない。なお、実施例中、1H-NMRはブルカー株式会社製AV400を使用し、400MHzで測定した。
【0164】
[製造例1]1-ブチル-3-メチルイミダゾリウム-2-カルボキシレートの合成
【0165】
【化61】
窒素置換した180mLのオートクレーブに1-ブチルイミダゾール25.9g(0.2mol)、炭酸ジメチル25.0g(0.3mol)、メタノール26.2gを仕込み、125℃で19時間撹拌後、更に130℃で4時間撹拌した。得られた反応混合物を25℃に冷却し、上記式で表される化合物(以下、BMIm-CO
2と略記する。)のメタノール溶液を73.0g得た(純分34.3g、収率95%)。上記式で表される化合物の
1H-NMR分析結果を以下に示す。
【0166】
1H-NMR(CD3OD)δ(ppm)=7.79(s,1H)、7.72(s,1H)、4.31(t,J=7.4Hz,2H)、4.02(s,3H)、1.94-1.88(m,2H)、1.44-1.38(m,2H)、1.00(t,J=7.2Hz,3H)
【0167】
[製造例2]1-オクチル-3-メチル-2-カルボキシレートの合成
【0168】
【化62】
窒素置換した180mLのオートクレーブに1-オクチルイミダゾール25.0g(139mmol)、炭酸ジメチル16.7g(185mmol)、メタノール25.1gを仕込み、125℃で29時間撹拌した。室温まで冷却し、炭酸ジメチル8.5g(54mmol)を追加し、130℃で更に3時間撹拌した。得られた反応混合物を25℃に冷却し、上記式で表される化合物(以下、OMIm-CO
2と略記する。)のメタノール溶液を44.0g得た(純分33.0g、収率99%)。上記式で表される化合物の
1H-NMR分析結果を以下に示す。
【0169】
1H-NMR(CD3OD)δ(ppm)=7.67(s,1H)、7.61(s,1H)、4.22(t,J=7.2Hz,2H)、3.94(s,3H)、1.91-1.84(m,2H)、1.32-1.26(m,10H)、0.85(t,J=7.2Hz,3H)
【0170】
[実施例1]BMIm-PIの合成
【0171】
【化63】
窒素置換した200mL試験管に製造例1で得られたBMIm-CO
2のメタノール溶液を6.0g(BMIm-CO
2の純分16mmol)、フェニルイソシアネート1.9g(16mmol)、トルエン100mLを仕込み、得られた混合物を内温110℃で3時間撹拌した。減圧濃縮し、上記式で表される化合物(BMIm-PI)を4.1g得た(収率97%)。上記式で表される化合物の
1H-NMR分析結果を以下に示す。
【0172】
1H-NMR(CD3OD)δ(ppm)=7.53(s,1H)、7.47(s,1H)、7.33-7.25(m,4H)、7.00(t,J=7.2Hz,1H)、4.38(t,J=7.4Hz,2H)、3.98(s,3H)、1.89(quint,J=7.6Hz,2H)、1.39(sext,J=7.4Hz,2H)、0.97(t,J=7.2Hz,3H)
【0173】
[実施例2]OMIm-PIの合成
【0174】
【化64】
窒素置換した200mL試験管に製造例2で得られたOMIm-CO
2のメタノール溶液4.0g(OMIm-CO
2の純分13mmol)、フェニルイソシアネート1.5g(13mmol)、トルエン100mLを仕込み、得られた混合物を内温110℃で3時間撹拌した。減圧濃縮し、上記式で表される化合物(OMIm-PI)を3.3g得た(収率84%)。上記式で表される化合物の
1H-NMR分析結果を以下に示す。
【0175】
1H-NMR(CD3OD)δ(ppm)=7.51(s,1H)、7.45―7.33(m,6H)、4.37(t,J=7.4Hz,2H)、3.97(s,3H)、1.91-1.86(m,2H)、1.35-1.27(m,10H)、0.88(t,J=6.8Hz,3H)
【0176】
[比較例1]1-ブチル-3-メチルイミダゾリウム-2-カルボキシレートの合成
窒素置換した180mLのオートクレーブに1-ブチルイミダゾール20.0g(0.2mol)、炭酸ジメチル19.3g(0.2mol)、メタノール20.0gを仕込み、120℃で22.5時間撹拌した。得られた反応液を1H-NMR分析し、BMIm-PIが71%生成していることを確認した。その後、前記反応液を60℃で減圧濃縮したところ、上記式で表される化合物は全て不純物へと分解しており、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウム-2-カルボキシレートを得ることが出来なかった。
【0177】
[比較例2]1-ブチル-3-メチルイミダゾリウム-2-カルボキシレートの合成
窒素置換した500mLのオートクレーブに1-ブチルイミダゾール90.0g(0.7mol)、炭酸ジメチル87.0g(1.0mol)、メタノール89.5gを仕込み、130℃で23時間撹拌し、反応液256.8gを得た。得られた反応液を1H-NMR分析し、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウム-2-カルボキシレートが純分で118.4g(収率89%)で得られていることを確認した。
次いで、前記反応液のうち199.9g(1-ブチル-3-メチルイミダゾリウム-2-カルボキシレートの純分92.2g、メタノールの純分79.8g)にブチルセロソルブ100.0gを加え、40℃で減圧濃縮し、メタノールを留去し、BMIm-PIのブチルセロソルブ溶液199.6gを得た。得られた1-ブチル-3-メチルイミダゾリウム-2-カルボキシレートのブチルセロソルブ溶液を1H-NMR分析したところ、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウム-2-カルボキシレートの純分は78.2g、メタノールの純分3.2gであり、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウム-2-カルボキシレートの純分は約15%減少しており、代わりに不純物が生成していた。