(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-02
(45)【発行日】2022-02-10
(54)【発明の名称】レーダー精度の測定方法および装置
(51)【国際特許分類】
G01S 7/03 20060101AFI20220203BHJP
G01S 7/40 20060101ALI20220203BHJP
H01Q 1/42 20060101ALI20220203BHJP
【FI】
G01S7/03 246
G01S7/40 104
G01S7/40 152
H01Q1/42
(21)【出願番号】P 2017184364
(22)【出願日】2017-09-26
【審査請求日】2020-09-16
(32)【優先日】2017-04-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】501374208
【氏名又は名称】ローデ ウント シュヴァルツ ゲーエムベーハー ウント コンパニ カーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100098545
【氏名又は名称】阿部 伸一
(74)【代理人】
【識別番号】100087745
【氏名又は名称】清水 善廣
(74)【代理人】
【識別番号】100106611
【氏名又は名称】辻田 幸史
(74)【代理人】
【識別番号】100189717
【氏名又は名称】太田 貴章
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス シースル
(72)【発明者】
【氏名】シェリーフ アハメド
(72)【発明者】
【氏名】シュテファン フーエル
【審査官】藤田 都志行
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-122892(JP,A)
【文献】特開平02-181683(JP,A)
【文献】特開2012-198138(JP,A)
【文献】米国特許第05047782(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/00- 7/42
G01S 13/00-13/95
H01Q 1/00- 1/10
H01Q 1/27- 1/52
H01Q 3/00- 3/46
H01Q 21/00-25/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーダー放射を生成し、前記レーダー放射を受信するように構成されるテストアンテナと、
前記レーダー放射を受信し、前記レーダー放射を生成するように構成されるレーダーセンサーアンテナと、
前記レーダーセンサーアンテナを覆うレーダーセンサーアンテナカバーと、
を備えるレーダーアンテナカバーの
影響を測定するテストセットアップであって、
前記テストアンテナは、仰角および/または方位角方向において複数のアンテナ要素を備えることを特徴とするテストセットアップ。
【請求項2】
生成および受信されるレーダーセンサーアンテナデータおよび/または前記レーダーセンサーアンテナカバーの有無による測定に基づくテストアンテナデータに基づく、前記レーダーセンサーアンテナカバーを評価するように構成される分析ユニットを備えることを特徴とする請求項1に記載のセットアップ。
【請求項3】
前記テストアンテナにより生成される前記レーダー放射は、標的を模擬するようにレーダーエコーを発するものであることを特徴とする請求項1に記載のセットアップ。
【請求項4】
前記各テストアンテナ要素は、個別的に切り替えられるように構成されていることを特徴とする請求項1に記載のセットアップ。
【請求項5】
前記切り替え可能なテストアンテナ要素は、ビームを形成するように構成されていることを特徴とする請求項4に記載のセットアップ。
【請求項6】
前記切り替え可能なテストアンテナ要素は、干渉信号を形成するように構成されていることを特徴とする請求項4に記載のセットアップ。
【請求項7】
前記切り替え可能なテストアンテナ要素は、多数の標的を模擬するために多重模擬信号を形成するように構成されていることを特徴とする請求項4に記載のセットアップ。
【請求項8】
前記レーダーセンサーアンテナは、前記テストアンテナからの受信信号を測定するように構成されていることを特徴とする、請求項1に記載のテストアップ。
【請求項9】
前記レーダーセンサーアンテナは、信号の角度および/または幅および/またはドップラー信号および/または信号エコーパワーを測定するように構成されていることを特徴とする、請求項8に記載のテストアップ。
【請求項10】
前記レーダーセンサーアンテナは、マルチアンテナ配列であることを特徴とする、請求項1に記載のテストアップ。
【請求項11】
テストアンテナにより生成される仰角および/または方位角データを備えるレーダー放射の第1の測定を備えるレーダーアンテナカバーの
影響を測定するテスト方法であって、
前記レーダー放射は、レーダーセンサーアンテナを覆う部材を通らない、及び前記レーダーセンサーアンテナを覆う前記部材を通る双方で、前記レーダーセンサーアンテナによって受信され、
前記受信されるレーダー放射は、前記レーダーセンサーアンテナを覆う前記部材の影響を評価するために分析され
、前記レーダーセンサーアンテナを覆う前記部材を通らない、及び前記レーダーセンサーアンテナを覆う前記部材を通る双方で、前記テストアンテナによって受信される、前記レーダー放射の第2の測定を備え、この測定に基づいて前記レーダーセンサーアンテナのアンテナビームパターンの歪みの評価を実行することを特徴とす
るテスト方法。
【請求項12】
前記テスト方法は、レーダーエコーが標的を模擬するように生成される前記テストアンテナを形成する工程をさらに備えることを特徴とする請求項11に記載のテスト方法。
【請求項13】
前記テスト方法は、全ての入手可能なアンテナ要素のいかなる切替え組合せをも実現するように、個別的にアンテナ要素を切り替える工程をさらに備えることを特徴とする請求項11に記載のテスト方法。
【請求項14】
前記テスト方法は、ビームが前記テストアンテナによって形成される工程をさらに構成し、および/または前記方法は干渉信号が前記テストアンテナによって形成される工程をさらに備えることを特徴とする請求項11に記載のテスト方法。
【請求項15】
前記テスト方法は、多重模擬信号が前記テストアンテナによって形成される工程をさらに備えることを特徴とする請求項11に記載のテスト方法。
【請求項16】
前記テスト方法は、前記テストアンテナからの受信信号が前記レーダーセンサーアンテナによって測定される工程をさらに備えることを特徴とする請求項11に記載のテスト方法。
【請求項17】
前記テスト方法は、信号の角度および/または幅および/またはドップラー信号および/または信号エコーパワーが前記レーダーセンサーアンテナによって測定される工程をさらに備えることを特徴とする
請求項16に記載のテスト方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーダー波のレーダーアンテナカバーの影響を評価するテストセットアップおよびテスト方法に関するものである。テストセットアップは、テストアンテナ、レーダーセンサーアンテナおよびレーダーアンテナカバーを構成する。
【背景技術】
【0002】
一般に、レーダーアンテナは、アンテナを保護するレドームまたはバンパーと呼ばれる全天候型の囲いにより覆われている。たとえ、レドームまたはバンパーがレーダー波の影響を最小限に抑える部材から構成されているとしても、レーダーセンサーの角度精度は影響を受け、アンテナビームパターンは歪められる。このように、レドームまたはバンパーにより生じるレーダー波の効果を測定する測定方法およびセットアップが必要である。
【0003】
特許文献1は、第1無線信号が第1アンテナ配列により送信され、前記無線信号は第2アンテナ配列によって監視され測定されるカバーによって少なくとも部分的に反射されることを特徴とする、2つの近接したアンテナ配列を使用する、鉄道車両のドップラーレーダーセンサーのカバーを監視する方法を開示している。前記第2アンテナによって測定される反射信号に基づき、カバー上に存在するゴミは自動的に検出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1は、レドームまたはバンパーにより生じるレーダー波の効果を評価する仰角および/または方位角方向における複数のアンテナ要素を構成するテストアンテナを示していない。特許文献1は、送信アンテナ配列および受信アンテナ配列がカバーの同じ側に位置し、よって特許文献1はテストアンテナを有するレーダー波上のレドームまたはダンパー部材への影響の測定を開示しておらず、反射測定に基づくカバー上のゴミを検出するのみである。テストアンテナ、レーダーセンサーアンテナ、レーダーセンサーアンテナカバーを有するシステムおよび方法を提供することが必要である。
【0006】
そこで、本発明は、レーダーアンテナカバーの影響を測定するテストセットアップを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1概念によれば、レーダーアンテナカバーの影響を測定するテストセットアップが提供されている。前述のテストセットアップは、レーダー放射を生成し、レーダー放射を受信するように構成するテストアンテナと、レーダー放射を受信し、レーダー放射を生成するように構成されるレーダーセンサーアンテナと、レーダーセンサーアンテナを覆うレーダーセンサーアンテナカバーと、を備える。テストアンテナ自体は、仰角および/または方位角方向におけて複数のアンテナ要素を備える。有利なことに、仰角および/または方位角方向における複数のアンテナ要素を構成するテストアンテナのため、実際の条件下のセンサーカバー部材を評価するレーダー放射が生成できる。
【0008】
第1概念の第1の好ましい実施形態によれば、追加的にまたは代替的に、テストセットアップは、生成および受信されるレーダーセンサーアンテナデータおよび/またはレーダーセンサーアンテナカバーの有無による測定に基づくテストアンテナデータに基づく、レーダーセンサーアンテナカバーを評価するように構成される分析ユニットを構成している。レーダーセンサーカバー有りで生成されるデータおよびさらにレーダーセンサーアンテナカバー無しに生成されるデータに基づき、レーダーセンサーアンテナを覆ういかなる部材の影響をも評価することができる。
【0009】
第1概念の更なる好ましい実施形態によれば、テストアンテナにより生成されるレーダー放射は、レーダーエコーを発するものである。これらのレーダーエコーは、レーダー放射が発せられ、対象物において反射される時に、通常受信するレーダーエコーを模擬する。よって、生成されるエコーは、標的を模擬する。
【0010】
第1概念の更なる好ましい実施形態によれば、追加的にまたは代替的に、各テストアンテナ要素は、個別的に切り替えられるように構成されている。
【0011】
第1概念の更なる好ましい実施形態によれば、切替え可能なテストアンテナ要素は、ビームを形成するように構成されている。有利なことに、ビームは位相配列アンテナによって形成でき、またアンテナを移動させることなしに異なる方向を指示するように電子的に導光することができる。加えて、ロボットアームは、アンテナを特別な場所に位置させることができるように、テストアンテナが取り付けられることが考えられる。
【0012】
第1概念の更なる好ましい実施形態によれば、追加的にまたは代替的に、切替え可能なテストアンテナ要素は、干渉信号を形成するように構成されている。
【0013】
第1概念の更なる好ましい実施形態によれば、追加的にまたは代替的に、切替え可能なテストアンテナ要素は、多数の標的を模擬するために多重模擬信号を形成するように構成されている。
【0014】
第1概念の更なる好ましい実施形態によれば、追加的にまたは代替的に、レーダーセンサーアンテナは、テストアンテナからの受信信号を測定するように構成されている。
【0015】
第1概念の更なる好ましい実施形態によれば、追加的にまたは代替的に、レーダーセンサーアンテナは、信号の角度および/または幅および/またはドップラー信号および/または信号エコーパワーを測定するように構成されている。
【0016】
第1概念の更なる好ましい実施形態によれば、追加的にまたは代替的に、レーダーセンサーアンテナは、マルチアンテナ配列である。そのようなマルチアンテナ配列は、一つのアンテナで実現されるよりも、より狭いレーダー波のビームを実現することを許容する。マルチアンテナ配列は、無線ビームが異なる方向において電子的に導光するよう指示することを許容し、さらにまたアンテナ配列は特別な方向からの干渉を取り消すために使用できる。
【0017】
本発明の第2概念によれば、レーダーアンテナカバーの影響を測定する方法が提供されている。方法は、テストアンテナにより生成される仰角および/または方位角データを備えるレーダー放射の第1の測定を備える。第1の測定は、2つのパートから成り;1つ目のパートは、テストアンテナにより生成される放射が、レーダーセンサーアンテナを覆う部材の存在なしに直接レーダーセンサーアンテナにより受信されて測定される。測定の2つ目のパートは、テストアンテナにより生成される放射が、レーダーセンサーアンテナを覆う部材の存在下で、レーダーセンサーアンテナにより受信されて測定され、よって、放射はレーダー放射に影響を与える部材を通った後に部材が受信されて測定される。レーダーセンサーアンテナを覆う部材の有無による、双方の測定に基づき、測定データの分析が行われ、レーダーセンサーアンテナを覆う部材の影響が評価される。
【0018】
第2概念の第1の好ましい実施形態によれば、方法は更に、レーダーセンサーアンテナを覆う部材を通らない、及びレーダーセンサーアンテナを覆う部材を通る双方で、テストアンテナによって受信される、レーダー放射の第2の測定を備え、この測定に基づいてレーダーセンサーアンテナのアンテナビームパターンの歪みの評価を実行する。
【0019】
第2概念の更なる好ましい実施形態によれば、追加的にまたは代替的に、方法は、レーダーエコーが標的を模擬するように生成されるようテストアンテナを形成する工程をさらに備える。さもなければレーダー波が対象物によって反射される場合にのみ生成される、エコーを生成可能なテストアンテナでのこの標的の模擬は、実際のテスト対象物を必要とせずに、標的を模擬することを許容する。そのような模擬は、実際の対象物を使用するよりも正確でより速く実行できる。
【0020】
第2概念の更なる好ましい実施形態によれば、追加的にまたは代替的に、方法は、全ての入手可能なアンテナ要素のいかなる切替えの組み合わせをも実現するように、個別的にアンテナ要素を切り替える工程をさらに構成する。
【0021】
第2概念の更なる好ましい実施形態によれば、追加的にまたは代替的に、方法は、ビームがテストアンテナによって形成される工程をさらに構成し、および/または方法は干渉信号がテストアンテナによって形成される工程をさらに構成する。前述のビームは、アンテナを移動することなしに異なる方向を指示するように電子的に導光することができる。加えて、テストアンテナは可動であり、アンテナの位置を所望の位置に変更できる。
【0022】
第2概念の更なる好ましい実施形態によれば、追加的にまたは代替的に、方法は、多重模擬信号がテストアンテナによって形成される工程をさらに備える。
【0023】
第2概念の更なる好ましい実施形態によれば、追加的にまたは代替的に、方法は、テストアンテナからの受信信号がレーダーセンサーアンテナによって測定される工程をさらに備える。
【0024】
第2概念の更なる好ましい実施形態によれば、追加的にまたは代替的に、方法は、信号の角度および/または幅および/またはドップラー信号および/または信号エコーパワーがレーダーセンサーアンテナによって測定される工程をさらに備える。
【発明の効果】
【0025】
本発明のテストセットアップによれば、実際の条件下のセンサーカバー部材を評価するレーダー放射が生成できる。
また本発明のテスト方法によれば、レーダーセンサーアンテナを覆う部材の影響が評価される。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本発明による第1概念の代表的なテストセットアップのブロック図
【
図2】本発明による第1概念のロボットアームを備える代表的なテストセットアップのブロック図
【
図3】本発明による第2概念の代表的なテスト方法の工程1~工程4のフローチャート
【
図4】本発明による第2概念の代表的なテスト方法の工程5~工程8のフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0027】
発明の代表的実施態様は例としてのみ図面にて更に説明され、これに限定されない。
図1は、レーダーセンサーアンテナ1、テストアンテナ2、レーダーセンサーカバー3および分析ユニット4を構成する、レーダーアンテナカバーの
影響を測定する代表的なテストセットアップを示す。
【0028】
レーダーセンサーアンテナ1は、複数のアンテナ要素5から成る代表的なマルチアンテナ配列でり、それぞれのアンテナ要素5は位相シフター6と接続する。この代表的なケースの位相シフター6は、接続線7を介して適用信号の位相を構成するため、分析ユニット4の一部である制御処理ユニット8に接続されている。さらにまた、位相シフター6は、接続線9を介してレーダー信号を送受信するように構成される分析ユニット4の一部である送受信ユニット10に接続されている。送受信ユニット10は、制御処理ユニット8に接続されている。送受信ユニット10および/または制御処理ユニット8が別個のユニットとして設けられ、必ずしも分析ユニット4に備えないこともまた考えられる。
【0029】
テストアンテナ2は、仰角および/または方位角方向において複数のアンテナ要素11を構成する。さらにまた、アンテナ要素11は、代表的に位相シフター12に接続し得て、そこで位相シフター12は、接続線13を介して適用信号の位相を構成する、分析ユニット4の一部である制御処理ユニット8に接続されている。さらにまた、位相シフター12は、接続線14を介してレーダー信号を送受信するように構成される分析ユニット4の一部である送受信ユニット15に接続されている。このように、各アンテナ要素11の供給電流は、位相シフター12を介して流れる。送受信ユニット15は、制御処理ユニット8に接続している。送受信ユニット15および/または制御処理ユニット8が、別個のユニットとして設けられ、必ずしも分析ユニット4に備えないこともまた考えられる。
【0030】
各要素11が位相シフター12に設けられる、複数のアンテナ要素11に基づいて、アンテナを移動することなしに、異なる方向を指示するように電子的に導光することができるレーダー波のビームを生成することが可能である。このように、レーダー放射が実際の対象物により反射される場合、通常生成されるレーダーエコーと同一のレーダー放射が生成される。このように、テストアンテナ2は、制御処理ユニット8が送受信ユニット15と組み合わせて、標的を模擬するためレーダーエコーを生成するように構成されるので、標的を模擬することが可能である。
【0031】
さらにまた、
図1はレーダーセンサーアンテナ1を覆う部材3を示している。部材3は、レーダーセンサーアンテナ1とテストアンテナ2の間に位置し、部材3を通ってレーダー放射に影響を与えている。しかしながら、
図3に記載する工程2による測定の間、および
図4に記載されている工程6による測定の間、レーダー放射に影響を与える部材なしに参照データを取得するために、これらの2つのアンテナ1と2の間には部材は存在しない。この理由のため、測定が、2つのアンテナ1と2の間の部材3有りで実行され、2つのアンテナ1と2の間の部材なしで実行されることを示すため、カバー物質3は点線により描写されている。
【0032】
分析ユニット4は、レーダーセンサーアンテナ1を覆うレドーム、バンパー、ウェザーシールド等の、レーダー放射に影響を与える部材3なしに取り込む測定データと、レーダー放射に影響を与える部材3ありで取り込む測定データとを比較する。カバー部材3に起因する角度精度効果を測定するため、レーダーセンサーアンテナ1は、部材3を通って受信信号の仰角および/または方位角度を測定し、分析ユニット4はこのデータと、カバー部材3を通らなかったレーダーセンサー信号の仰角および方位角度の測定データとを比較する。カバー部材3に起因するアンテナビームパターンの歪みの測定のため、テストアンテナ2は部材3を通ってレーダーセンサーアンテナ1によって発せられるレーダー信号を測定し、分析ユニット4はこのデータと、テストアンテナ2が部材3を通らないでレーダーセンサーアンテナ1によって発せられるレーダー放射を受信する場合に取得される測定データとを比較する。
【0033】
レーダー放射の生成と受信のための例示の他に、当業者に公知のその他の実施例を提供することができる。複数の位相シフターとアンテナ要素で、アンテナ毎に一つの送受信器のみを備える、いわゆるパッシブ電子走査アレイ(PESA)を示す
図1に提示される配列と対比し、各アンテナ要素に対して個別の送信器および/または受信器ユニットを備えるアクティブ電子走査アレイ(AESA)アンテナを実施することができる。
【0034】
有利なことに、本発明によるテストセットアップは、技術水準での解決策から公知のカバー部材の角度精度影響を測定するためのコーナー反射器を必要としない。公知の技術水準での方法は、更なる努力を意味し極めて時間的に消費する複数のコーナー反射器のレドームカバー有りのコーナー反射器位置(R、方位角、仰角)の測定を必要としている。本発明のテストセットアップは、数秒以内にカバー部材の角度精度影響の測定を許容し、その上アンテナカバーに起因するアンテナビームパターンの歪みの測定は数秒以内に可能である。
【0035】
別図において同様の要素をより理解しやすくするため、100番台を
図1に付与された符号に追記して、
図2の要素に付番した。
図2は、レーダーセンサーアンテナ101、テストアンテナ102、レーダーセンサーカバー103、分析ユニット104およびテストアンテナ102をロボットアーム116に接続する接続アダプター117を備えるロボットアーム116を構成する、レーダーアンテナカバーの
影響を測定する代表的なテストセットアップを示している。機械的な安定を確保しロボットアーム116を固定するため、ロボットアームは、取付板118上に取り付けられる。
【0036】
レーダーセンサーアンテナ101は、複数のアンテナ要素105から成る代表的なマルチアンテナ配列であり、複数のアンテナ要素105は、それぞれが、接続線109を介して送受信ユニット110に、接続線107を介して制御処理ユニット108に接続される。この代表的なケースにおいて、第1アンテナ配列を設けるだけでなく、第1アンテナと対称的に反射される副の第2アンテナが示されている。
【0037】
追加的にまたは代替的に、第1アンテナ配列に関し異なる方向で配置されるアンテナ配列のレーダーセンサーアンテナが考えられる。さらにまた、送受信ユニット110は制御処理ユニット108と接続している。
【0038】
加えて、また送受信ユニット110および/または送受信ユニット115および/または制御処理ユニット108が別個のユニットとして設けられ、分析ユニット104に備える必要がないものと考えられる。
【0039】
テストアンテナ102は、仰角および/または方位角方向において複数のアンテナ要素111を構成する。さらにまた、アンテナ要素111は、適用信号の位相を構成するため、接続線113を介して分析ユニット104の一部であり得る制御処理ユニット108に接続している。さらにまた、アンテナ要素111は、送受信レーダー信号を構成するため、接続線114を介して分析ユニット104の一部であり得る送受信ユニット115に接続している。
【0040】
制御処理ユニット108を介して、各要素111が個々に切り替えられて、制御し得るように構成される、複数のアンテナ要素111に基づいて、テストアンテナ102を移動することなしに、異なる方向を指示するように電子的に導光することができるレーダー波のビームを生成することが可能であり、レーダー放射が実際の対象物によって反射される場合に、通常生成されるレーダーエコーと同一であるレーダー放射を生成することが可能である。このように、テストアンテナ102は、標的を模擬することが可能である。
【0041】
個別的に各単一アンテナ要素111の制御によって電子的に生成されるレーダービーム移動に加え、ロボットアーム116はテストアンテナ102をレーダーセンサーアンテナ101周囲の所望の位置へ移動させるように設けられている。この代表的なケースにおいて、ロボットアーム116の移動は、x、 yおよびz方向においてロボットアーム116を移動させるモーター119によって実現される。ロボットアームは、制御処理ユニット108によって制御され、接続線120を介して制御処理ユニット108に接続される。ロボットアームは周知であり、異なる形状において入手し得るので、ロボットアームに関してはさらなる詳述は行わない。さらにまた、テストアンテナ102をロボットアーム116に接続する接続アダプター117およびロボットアームを取り付けて、機械的安定性の確保をする取付板118、が示されている。
【0042】
さらにまた、
図2はレーダーセンサーアンテナ101を覆う部材103を示している。部材103は、レーダーセンサーアンテナ101とテストアンテナ102の間に位置し、部材103を通してレーダー放射に影響を与えている。しかしながら、
図3に記載する工程2による測定の間、および
図4に記載する工程6の間、レーダー放射に影響を与える部材なしに参照データを取得するために、2つのアンテナ101と102の間に部材は存在しない。この理由のため、測定が、2つのアンテナ101と102の間の部材103有りで実行され、また2つのアンテナ101と102の間の部材103なしで実行されることを示すため、カバー部材103は点線により描写されている。
【0043】
分析ユニット104は、レーダーセンサーアンテナ101を覆うレドーム、バンパー、ウェザーシールド等の、レーダー放射に影響を与える部材103なしに取り込む測定データと、レーダー放射に影響を与える部材103有りで取り込む測定データとを比較する。カバー部材103に起因する角度精度効果を測定するため、レーダーセンサーアンテナ101は、部材103を通って受信信号の仰角および方位角度を測定し、分析ユニット104はこのデータと、カバー部材3を通らないレーダーセンサー信号の仰角および方位角度の測定データとを比較する。カバー部材103に起因するアンテナビームパターンの歪みの測定のため、テストアンテナ102は部材103を通ってレーダーセンサーアンテナ101によって発せられるレーダー信号を測定し、分析ユニット104はこのデータと、テストアンテナ102が部材103を通らないでレーダーセンサーアンテナ101によって発せられるレーダー放射を受信する場合に取得される測定データとを比較する。
【0044】
有利なことに、本発明によるテストセットアップは、技術水準での解決策から公知のカバー部材の角度精度影響を測定するためのコーナー反射器を必要としない。公知の技術水準での方法は、更に高水準の努力を意味し極めて時間的に消費する複数のコーナー反射器のレドームカバーの有無でコーナー反射器位置(R、方位角、仰角)の測定を必要としている。本発明のテストセットアップは、数秒以内にカバー部材の角度精度影響の測定を許容する。アンテナ移動なしに行われるビーム移動に加え、ロボットアーム116の移動はテストアンテナ102を位置決めすることができ、大まかな走査位置を定めることができるので、追加のロボットアーム116はさらにテスト時間を削減する。微細な位置決め、いわゆるビームのファインチューニングは、電子ビーム移動によって処理される。
【0045】
加えて、ロボットアーム116は、測定工程次第で、レーダーセンサーアンテナ101周囲にレドーム・バンパー103を配置する、またレーダーセンサーアンテナ101周囲にレドーム・バンパー103を外すためのさらなる機能を果たすように適用できる。この構成は、自動製造ラインのテストをする場合に特に時間の節約になる。
【0046】
図3は、レーダー放射を生成する送信モードに切り替えるテストアンテナ2、 102と、レーダー放射を受信する受信モードに切り替えるレーダーセンサーアンテナ1、 101を有する本発明のテスト方法のフローチャートを示している。工程1において、仰角および方位角データを構成するレーダー放射は、テストアンテナ2、 102によって生成される。レーダー放射に含まれる仰角および方位角データゆえに、標的の模擬を許容する、実際の対象物により反射されるレーダー波と比較されるレーダー波が生成される。次の工程2において、レーダーセンサーアンテナ1、 101は、レーダーセンサーアンテナ1、 101を覆う部材3、 103を通ることなくテストアンテナ2、 102からの放射を受信する。レーダーセンサーアンテナ1、 101とテストアンテナ2、 102との間の部材3、 103なしの測定は、参照測定として必要とされる。工程3において、レーダーセンサーアンテナ1、 101は、テストアンテナ2、 102から生成される、レーダーセンサーアンテナ1、 101を覆う部材3、 103を通る、レーダー放射を受信する。
【0047】
部材3、 103がレーダー放射に高い透過性を備えていて、部材を通過する放射線への影響を最小にするために可能な限り等質であるとしても、ビームパターンの歪みと角度測定エラーを引き起こす部材を通過するレーダー放射に対する影響がある。工程4は、部材3、 103を通ることなく、直接に受信するレーダー放射を分析し、またレーダー放射に影響を与える部材3、 103を通った後に受信されるレーダー放射を分析する。センサーアンテナカバー3、 103なしの測定と、またセンサーアンテナカバー3、 103がある他の測定に基づいて、テストアンテナから発せられるレーダー放射上のカバー3、 103の影響が評価される。レーダー放射上のセンサーアンテナカバーの影響に関する情報は、吸収、反射または散乱により、レーダー放射に影響を与えるカバー3、 103が、レーダーセンサーアンテナ1、 101を覆う場合、レーダーセンサーアンテナの角度精度を維持するために必要とされる。
【0048】
最後に、
図4は、継続レーダー波(CW)を生成する送信モードに切り替えるレーダーセンサーアンテナ1、 101と、レーダーセンサーアンテナ1、 101によって発せられるレーダー波を受信する受信モードに切り替えるテストアンテナ2、 102を有する本発明のテスト方法のフローチャートを示している。継続レーダー波の生成は、本発明のテスト方法の工程5に示されている。工程6において、放射継続レーダー波は、レーダーセンサーアンテナ1、 101を覆う部材3、 103を通ることなく、テストアンテナ2、 102によって受信、測定される。工程7において、放射継続レーダー波は、レーダーセンサーアンテナ1、 101を覆う部材3、 103を通って、テストアンテナ2、 102によって受信、測定される。工程8において、上記2つの測定、1つはセンサーアンテナカバー3、 103の影響なしの測定と、もう1つはセンサーアンテナカバー3、 103の影響を受ける測定に基づき、カバー部材3、 103により起因するアンテナビームパターンの歪みの測定が実行される。
【0049】
上記に本発明の様々な実施形態が記載されているが、それらは例示のみによって提示されており、限定されないと理解すべきである。発明の理念または範囲から逸脱することなく、ここでの開示に従って、開示された実施形態への多数の変更が可能である。よって、本発明の幅および範囲は上記に記載の実施形態に限定されるべきでない。むしろ、発明の範囲は下記の請求項およびそれらの同等物に従って定義されるべきである。
【0050】
発明は、一つまたはそれ以上の実施例に関して図解され記述されたけれども、同等の変更および修正は、この明細書および添付の図面を読解した上で当業者に思い浮かぶであろう。加えて、複数の実施例の一つに関してのみ、発明の詳細な特徴は開示されているが、そのような特徴は、所望される他の実施例およびいかなるまたは特別な出願の利点の一つまたはそれ以上の他の特徴との組み合わせても構わない。
【符号の説明】
【0051】
1 レーダーセンサーアンテナ
2 テストアンテナ
3 レーダーセンサーカバー(部材)
4 分析ユニット
5、11 アンテナ要素
6、12 位相シフター
7、9、13、14 接続線
8 制御処理ユニット
10、15 送受信ユニット
101 レーダーセンサーアンテナ
102 テストアンテナ
103 レーダーセンサーカバー(部材)
104 分析ユニット
105、111 アンテナ要素
107、109、113、114、120 接続線
108 制御処理ユニット
110、115 送受信ユニット
116 ロボットアーム
117 接続アダプター
118 取付板
119 モーター