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特許7018294固体撮像装置、固体撮像装置の駆動方法、および電子機器
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-02
(45)【発行日】2022-02-10
(54)【発明の名称】固体撮像装置、固体撮像装置の駆動方法、および電子機器
(51)【国際特許分類】
   H04N 5/3745 20110101AFI20220203BHJP
   H01L 27/146 20060101ALI20220203BHJP
   H04N 5/353 20110101ALI20220203BHJP
   H04N 5/363 20110101ALI20220203BHJP
【FI】
H04N5/3745 500
H01L27/146 A
H01L27/146 F
H04N5/353
H04N5/363
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2017217067
(22)【出願日】2017-11-10
(65)【公開番号】P2019087963
(43)【公開日】2019-06-06
【審査請求日】2020-09-09
(73)【特許権者】
【識別番号】521182560
【氏名又は名称】ブリルニクス シンガポール プライベート リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001863
【氏名又は名称】特許業務法人アテンダ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大高 俊徳
【審査官】大室 秀明
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-065524(JP,A)
【文献】特開2000-165754(JP,A)
【文献】特開2016-092661(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L21/339
H01L27/14-27/148
H01L27/30
H01L29/762
H04N 5/30-5/378
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光電変換を行う画素が配置された画素部と、
前記画素部から画素信号の読み出しを行う読み出し部と、を有し、
前記画素は、
蓄積期間に光電変換により生成した電荷を蓄積する光電変換素子と、
前記光電変換素子に蓄積された電荷を前記蓄積期間後の転送期間に転送可能な転送素子と、
前記転送素子を通じて前記光電変換素子で蓄積された電荷が転送される出力ノードと、
前記出力ノードに接続された蓄積素子と、
前記蓄積素子を介して前記出力ノードの電荷を蓄積する蓄積容量素子と、
少なくとも第1のリセット期間および第2のリセット期間に前記出力ノードを所定の電位にリセットするリセット素子と、
前記出力ノードの電荷を電荷量に応じた利得をもって電圧信号に変換し、変換した電圧信号を出力する出力バッファ部と、
前記出力バッファ部による電圧信号と参照電圧とを比較し、デジタル化した比較結果信号を出力するアナログデジタル(AD)変換処理を行う比較器と、
前記比較器の比較結果信号に応じたデータを記憶するメモリ部と、を含み、
前記読み出し部は、
前記第1のリセット期間に、前記出力バッファ部から前記出力ノードの第1電荷量に応じた第1変換利得で変換した第1の読み出しリセット信号を読み出し、前記比較器で当該第1の読み出しリセット信号に対する前記AD変換処理を行う第1変換利得リセット読み出し処理と、
前記第1のリセット期間後の前記転送期間に続く読み出し期間に、前記出力バッファ部から前記出力ノードの第1電荷量に応じた第1変換利得で変換した第1の読み出し信号を読み出し、前記比較器で当該第1の読み出し信号に対する前記AD変換処理を行う第1変換利得信号読み出し処理と、
第2変換利得信号読み出し処理実行中に前記蓄積素子を導通状態に保持して前記出力ノードの電荷に前記蓄積容量素子の電荷を共有させた第2電荷量に応じた第2変換利得で変換した第2の読み出し信号を読み出し、前記比較器で当該第2の読み出し信号に対する前記AD変換処理を行う第2変換利得信号読み出し処理と、
前記第2のリセット期間に、前記出力バッファ部から前記第2電荷量に応じた第2変換利得で変換した第2の読み出しリセット信号を読み出し、前記比較器で当該第2の読み出しリセット信号に対する前記AD変換処理を行う第2変換利得リセット読み出し処理と、を行うことが可能であり、
前記メモリ部には、前記第1変換利得リセット読み出し処理における前記比較器のAD変換処理後のデータのみを格納する
固体撮像装置。
【請求項2】
前記画素部は、前記画素が行列状に配置され、
前記読み出し部は、
前記第1のリセット期間中、全画素における前記リセット素子を導通状態に保持して前記第1変換利得リセット読み出し処理を実行し、前記第1の読み出しリセット信号に対するAD変換コードを前記メモリ部に格納した後、
前記転送期間中、全画素における前記転送素子を導通状態に保持して、前記光電変換素子に蓄積された電荷を前記出力ノードに転送し、オーバーフローした電荷を前記蓄積容量素子に蓄積させるグローバルシャッタ動作を実行し、
行ごとに読み出しを行う場合に、
前記第1変換利得信号読み出し処理、前記第2変換利得信号読み出し処理、および前記第2変換利得リセット読み出し処理を表記した順に実行する
請求項1記載の固体撮像装置。
【請求項3】
前記読み出し部は、
前記第1変換利得信号読み出し処理を、前記蓄積素子を非導通状態に保持して、前記出力ノードの電荷と前記蓄積容量素子の電荷を分離させて実行し、
前記第2変換利得信号読み出し処理を、前記蓄積素子を導通状態に保持して、前記出力ノードの電荷と前記蓄積容量素子の電荷を共有させて実行し、
前記第2変換利得リセット読み出し処理を、前記リセット素子および前記蓄積素子を導通状態に保持して、前記出力ノードの電荷と前記蓄積容量素子の電荷をクリアさせて実行する
請求項2記載の固体撮像装置。
【請求項4】
前記読み出し部は、
次のフレーム用に、前記第2変換利得リセット読み出し処理による前記第2の読み出しリセット信号に対するAD変換コードを前記メモリ部に格納可能である
請求項2または3記載の固体撮像装置。
【請求項5】
前記画素は、
前記出力ノードとしてのフローティングディフュージョンを含み、
前記出力バッファ部は、
前記フローティングディフュージョンの電荷を電荷量に応じた電圧信号に変換し、変換した信号を出力するソースフォロワ素子と、
前記ソースフォロワ素子のソースに接続された電流源と、
前記ソースフォロワ素子のソースと前記電流源との接続部により形成され、前記比較器の一方の入力端子に接続された読み出しノードと、を含む
請求項1から4のいずれか一に記載の固体撮像装置。
【請求項6】
前記比較器は、
第1の入力端子に、前記出力バッファ部の前記読み出しノードに接続され、前記出力バッファ部による前記電圧信号が供給され、
第2の入力端子に、前記参照電圧が供給され、
前記出力バッファ部の前記読み出しノードと前記比較器の前記第1の入力端子との間に結合キャパシタが接続されている
請求項5記載の固体撮像装置。
【請求項7】
1つの前記比較器が複数の共有画素で共有されている
請求項1から6のいずれか一に記載の固体撮像装置。
【請求項8】
前記読み出し部は、
前記第1のリセット期間中、全画素における前記リセット素子を導通状態に保持して前記第1変換利得リセット読み出し処理を行ごとに順番に実行し、前記第1の読み出しリセット信号に対するAD変換コードを前記メモリ部にそれぞれ格納した後、
前記転送期間中、全画素における前記転送素子を導通状態に保持して、前記光電変換素子に蓄積された電荷を前記出力ノードに転送し、オーバーフローした電荷を前記蓄積容量素子に蓄積させるグローバルシャッタ動作を実行する
請求項7記載の固体撮像装置。
【請求項9】
前記読み出し部は、
前記第1のリセット期間中、全画素における前記リセット素子を導通状態に保持して前記第1変換利得リセット読み出し処理を全行で同時並列的に実行し、前記第1の読み出しリセット信号に対するAD変換コードを前記メモリ部にそれぞれ格納した後、
前記転送期間中、全画素における前記転送素子を導通状態に保持して、前記光電変換素子に蓄積された電荷を前記出力ノードに転送し、オーバーフローした電荷を前記蓄積容量素子に蓄積させるグローバルシャッタ動作を実行する
請求項7記載の固体撮像装置。
【請求項10】
前記比較器は、
第1の入力端子に、前記出力バッファ部の前記読み出しノードに接続され、前記出力バッファ部による前記電圧信号が供給され、
第2の入力端子に、前記参照電圧が供給され、
前記各共有画素は、
前記出力ノードとしてのフローティングディフュージョンを含み、
前記出力バッファ部は、
前記フローティングディフュージョンの電荷を電荷量に応じた電圧信号に変換し、変換した信号を出力するソースフォロワ素子と、
前記ソースフォロワ素子のソースに接続された電流源と、
前記ソースフォロワ素子のソースと前記電流源との接続部により形成され、前記比較器の一方の入力端子に接続された読み出しノードと、
前記出力バッファ部の前記読み出しノードに接続された結合キャパシタと、
前記結合キャパシタと前記比較器の前記第1の入力端子との間に接続されたスイッチ素子と、を含む
請求項7から9のいずれか一に記載の固体撮像装置。
【請求項11】
前記比較器の出力側に、前記共有画素に対応して複数のメモリ部が並列に接続されている
請求項7から10のいずれか一に記載の固体撮像装置。
【請求項12】
前記画素部は、前記画素が行列状に配置され、
前記比較器の出力は列単位で配線された信号線に接続され、
前記メモリ部は列単位で配置され、前記信号線に接続されている
請求項1から10のいずれか一に記載の固体撮像装置。
【請求項13】
前記比較器は、
出力端子と前記第1の入力端子との間にリセットスイッチが接続され、
前記出力端子側に負荷キャパシタが接続されている
請求項6または10記載の固体撮像装置。
【請求項14】
第1の基板と、
第2の基板と、を含み、
前記第1の基板と前記第2の基板は接続部を通して接続された積層構造を有し、
前記第1の基板には、
少なくとも、前記画素の前記光電変換素子、前記転送素子、前記出力ノード、および出力バッファ部が形成され、
前記第2の基板には、
少なくとも、前記比較器、前記メモリ部、および前記読み出し部の少なくとも一部が形成されている
請求項1から13のいずれか一に記載の固体撮像装置。
【請求項15】
光電変換を行う画素が配置された画素部と、
前記画素部から画素信号の読み出しを行う読み出し部と、を有し、
前記画素は、
蓄積期間に光電変換により生成した電荷を蓄積する光電変換素子と、
前記光電変換素子に蓄積された電荷を前記蓄積期間後の転送期間に転送可能な転送素子と、
前記転送素子を通じて前記光電変換素子で蓄積された電荷が転送される出力ノードと、
前記出力ノードに接続された蓄積素子と、
前記蓄積素子を介して前記出力ノードの電荷を蓄積する蓄積容量素子と、
少なくとも第1のリセット期間および第2のリセット期間に前記出力ノードを所定の電位にリセットするリセット素子と、
前記出力ノードの電荷を電荷量に応じた利得をもって電圧信号に変換し、変換した電圧信号を出力する出力バッファ部と、
前記出力バッファ部による電圧信号と参照電圧とを比較し、デジタル化した比較結果信号を出力するアナログデジタル(AD)変換処理を行う比較器と、
前記比較器の比較結果信号に応じたデータを記憶するメモリ部と、を含む
固体撮像装置の駆動方法であって、
前記読み出し部の制御の下、
前記第1のリセット期間に、前記出力バッファ部から前記出力ノードの第1電荷量に応じた第1変換利得で変換した第1の読み出しリセット信号を読み出し、前記比較器で当該第1の読み出しリセット信号に対する前記AD変換処理を行う第1変換利得リセット読み出し処理と、
前記第1のリセット期間後の前記転送期間に続く読み出し期間に、前記出力バッファ部から前記出力ノードの第1電荷量に応じた第1変換利得で変換した第1の読み出し信号を読み出し、前記比較器で当該第1の読み出し信号に対する前記AD変換処理を行う第1変換利得信号読み出し処理と、
第2変換利得信号読み出し処理実行中に前記蓄積素子を導通状態に保持して前記出力ノードの電荷に前記蓄積容量素子の電荷を共有させた第2電荷量に応じた第2変換利得で変換した第2の読み出し信号を読み出し、前記比較器で当該第2の読み出し信号に対する前記AD変換処理を行う第2変換利得信号読み出し処理と、
前記第2のリセット期間に、前記出力バッファ部から前記第2電荷量に応じた第2変換利得で変換した第2の読み出しリセット信号を読み出し、前記比較器で当該第2の読み出しリセット信号に対する前記AD変換処理を行う第2変換利得リセット読み出し処理と、を行い、
前記メモリ部には、前記第1変換利得リセット読み出し処理における前記比較器のAD変換処理後のデータのみを格納する
固体撮像装置の駆動方法。
【請求項16】
前記画素部は、前記画素が行列状に配置され、
前記読み出し部の制御の下、
前記第1のリセット期間中、全画素における前記リセット素子を導通状態に保持して前記第1変換利得リセット読み出し処理を実行し、前記第1の読み出しリセット信号に対するAD変換コードを前記メモリ部に格納した後、
前記転送期間中、全画素における前記転送素子を導通状態に保持して、前記光電変換素子に蓄積された電荷を前記出力ノードに転送し、オーバーフローした電荷を前記蓄積容量素子に蓄積させるグローバルシャッタ動作を実行し、
行ごとに読み出しを行う場合に、
前記第1変換利得信号読み出し処理、前記第2変換利得信号読み出し処理、および前記第2変換利得リセット読み出し処理を表記した順に実行する
請求項15記載の固体撮像装置の駆動方法。
【請求項17】
前記読み出し部の制御の下、
前記第1変換利得信号読み出し処理を、前記蓄積素子を非導通状態に保持して、前記出力ノードの電荷と前記蓄積容量素子の電荷を分離させて実行し、
前記第2変換利得信号読み出し処理を、前記蓄積素子を導通状態に保持して、前記出力ノードの電荷と前記蓄積容量素子の電荷を共有させて実行し、
前記第2変換利得リセット読み出し処理を、前記リセット素子および前記蓄積素子を導通状態に保持して、前記出力ノードの電荷と前記蓄積容量素子の電荷をクリアさせて実行する
請求項16記載の固体撮像装置の駆動方法。
【請求項18】
次のフレーム用に、前記第2変換利得リセット読み出し処理による前記第2の読み出しリセット信号に対するAD変換コードを前記メモリ部に格納する
請求項16または17記載の固体撮像装置の駆動方法。
【請求項19】
固体撮像装置と、
前記固体撮像装置に被写体像を結像する光学系と、を有し、
前記固体撮像装置は、
光電変換を行う画素が配置された画素部と、
前記画素部から画素信号の読み出しを行う読み出し部と、を有し、
前記画素は、
蓄積期間に光電変換により生成した電荷を蓄積する光電変換素子と、
前記光電変換素子に蓄積された電荷を前記蓄積期間後の転送期間に転送可能な転送素子と、
前記転送素子を通じて前記光電変換素子で蓄積された電荷が転送される出力ノードと、
前記出力ノードに接続された蓄積素子と、
前記蓄積素子を介して前記出力ノードの電荷を蓄積する蓄積容量素子と、
少なくとも第1のリセット期間および第2のリセット期間に前記出力ノードを所定の電位にリセットするリセット素子と、
前記出力ノードの電荷を電荷量に応じた利得をもって電圧信号に変換し、変換した電圧信号を出力する出力バッファ部と、
前記出力バッファ部による電圧信号と参照電圧とを比較し、デジタル化した比較結果信号を出力するアナログデジタル(AD)変換処理を行う比較器と、
前記比較器の比較結果信号に応じたデータを記憶するメモリ部と、を含み、
前記読み出し部は、
前記第1のリセット期間に、前記出力バッファ部から前記出力ノードの第1電荷量に応じた第1変換利得で変換した第1の読み出しリセット信号を読み出し、前記比較器で当該第1の読み出しリセット信号に対する前記AD変換処理を行う第1変換利得リセット読み出し処理と、
前記第1のリセット期間後の前記転送期間に続く読み出し期間に、前記出力バッファ部から前記出力ノードの第1電荷量に応じた第1変換利得で変換した第1の読み出し信号を読み出し、前記比較器で当該第1の読み出し信号に対する前記AD変換処理を行う第1変換利得信号読み出し処理と、
第2変換利得信号読み出し処理実行中に前記蓄積素子を導通状態に保持して前記出力ノードの電荷に前記蓄積容量素子の電荷を共有させた第2電荷量に応じた第2変換利得で変換した第2の読み出し信号を読み出し、前記比較器で当該第2の読み出し信号に対する前記AD変換処理を行う第2変換利得信号読み出し処理と、
前記第2のリセット期間に、前記出力バッファ部から前記第2電荷量に応じた第2変換利得で変換した第2の読み出しリセット信号を読み出し、前記比較器で当該第2の読み出しリセット信号に対する前記AD変換処理を行う第2変換利得リセット読み出し処理と、を行うことが可能であり、
前記メモリ部には、前記第1変換利得リセット読み出し処理における前記比較器のAD変換処理後のデータのみを格納する
電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体撮像装置、固体撮像装置の駆動方法、および電子機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
光を検出して電荷を発生させる光電変換素子を用いた固体撮像装置(イメージセンサ)として、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサが実用に供されている。
CMOSイメージセンサは、デジタルカメラ、ビデオカメラ、監視カメラ、医療用内視鏡、パーソナルコンピュータ(PC)、携帯電話等の携帯端末装置(モバイル機器)等の各種電子機器の一部として広く適用されている。
【0003】
CMOSイメージセンサは、画素毎にフォトダイオード(光電変換素子)および浮遊拡散層(FD:Floating Diffusion、フローティングディフュージョン)を有するFDアンプを持ち合わせており、その読み出しは、画素アレイの中のある一行を選択し、それらを同時に列(カラム)出力方向へと読み出すような列並列出力型が主流である。
【0004】
また、列並列出力型CMOSイメージセンサの画素信号読み出し(出力)回路については実に様々なものが提案されている。
それらの中で、その最も進んだ回路のひとつが、列(カラム)毎にアナログ-デジタル変換器(ADC(Analog digital converter))を備え、画素信号をデジタル信号として取り出す回路である(たとえば特許文献1,2参照)。
【0005】
この列並列ADC搭載CMOSイメージセンサ(カラムAD方式CMOSイメージセンサ)では、比較器(コンパレータ)はいわゆるRAMP波と画素信号の比較をして、後段のカウンタでデジタルCDSを行うことによりAD変換を行う。
【0006】
しかしながら、この種のMOSイメージセンサは、信号の高速転送が可能であるが、グローバルシャッタ読み出しができないという不利益がある。
【0007】
これに対して、各画素に比較器を含むADC(さらにはメモリ部)を配置して、画素アレイ部中の全画素に対して同一のタイミングで露光開始と露光終了とを実行するグローバルシャッタをも実現可能にするデジタル画素(ピクセル)センサが提案されている(たとえば特許文献3,4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2005-278135号公報
【文献】特開2005-295346号公報
【文献】US 7164114 B2 FIG、4
【文献】US 2010/0181464 A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、上述した従来のデジタル画素センサを備えたCMOSイメージセンサでは、グローバルシャッタ機能を実現することは可能であるが、電荷モードのグローバルシャッタ画素および電圧モードのグローバルシャッタ画素のものと比較して、画素内に比較器(コンパレータ)およびデジタルメモリの多くのトランジスタを実装する必要があるため、画素ピッチを小さくすることは一般的に困難である。
【0010】
しかし、VR(Virtual Reality:バーチャルリアリティ:仮想現実)およびAR(Augmented Reality:拡張現実)アプリケーションに対応したヘッドマウントディスプレイ(HMD)や先進運転支援システム(ADAS: Advanced driver-assistance systems)など、新たなマシンビジョン市場が開拓される中で、グローバルシャッタ機能を備えたCMOSイメージセンサの画素ピッチの微細化が強く求められている。
【0011】
ユーザの頭部に装着され、眼前に配置されたディスプレイ等によってユーザ個人に画像を提示することが可能な、ヘッドマウントディスプレイ(HMD)が知られている(たとえば、特許文献1参照)。
近年では、VR(Virtual Reality:バーチャルリアリティ:仮想現実)およびAR(Augmented Reality:拡張現実)アプリケーションに対応したHMDも普及してきている。
【0012】
デジタル画素は、広ダイナミックレンジ、高感度、低ノイズ、高フレームレートを同時に達成できるため、高度なプロセス技術が利用可能なときに、グローバルシャッタ技術のための画素アーキテクチャとして有望である。
【0013】
したがって本発明は、小さな画素ピッチでグローバルシャッタ機能を備えたデジタル画素を実現することが可能な固体撮像装置、固体撮像装置の駆動方法、および電子機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の第1の観点の固体撮像装置は、光電変換を行う画素が配置された画素部と、前記画素部から画素信号の読み出しを行う読み出し部と、を有し、前記画素は、蓄積期間に光電変換により生成した電荷を蓄積する光電変換素子と、前記光電変換素子に蓄積された電荷を前記蓄積期間後の転送期間に転送可能な転送素子と、前記転送素子を通じて前記光電変換素子で蓄積された電荷が転送される出力ノードと、前記出力ノードに接続された蓄積素子と、前記蓄積素子を介して前記出力ノードの電荷を蓄積する蓄積容量素子と、少なくとも第1のリセット期間および第2のリセット期間に前記出力ノードを所定の電位にリセットするリセット素子と、前記出力ノードの電荷を電荷量に応じた利得をもって電圧信号に変換し、変換した電圧信号を出力する出力バッファ部と、前記出力バッファ部による電圧信号と参照電圧とを比較し、デジタル化した比較結果信号を出力するアナログデジタル(AD)変換処理を行う比較器と、前記比較器の比較結果信号に応じたデータを記憶するメモリ部と、を含み、前記読み出し部は、前記第1のリセット期間に、前記出力バッファ部から前記出力ノードの第1電荷量に応じた第1変換利得で変換した第1の読み出しリセット信号を読み出し、前記比較器で当該第1の読み出しリセット信号に対する前記AD変換処理を行う第1変換利得リセット読み出し処理と、前記第1のリセット期間後の前記転送期間に続く読み出し期間に、前記出力バッファ部から前記出力ノードの第1電荷量に応じた第1変換利得で変換した第1の読み出し信号を読み出し、前記比較器で当該第1の読み出し信号に対する前記AD変換処理を行う第1変換利得信号読み出し処理と、第2変換利得信号読み出し処理実行中に前記蓄積素子を導通状態に保持して前記出力ノードの電荷に前記蓄積容量素子の電荷を共有させた第2電荷量に応じた第2変換利得で変換した第2の読み出し信号を読み出し、前記比較器で当該第2の読み出し信号に対する前記AD変換処理を行う第2変換利得信号読み出し処理と、前記第2のリセット期間に、前記出力バッファ部から前記第2電荷量に応じた第2変換利得で変換した第2の読み出しリセット信号を読み出し、前記比較器で当該第2の読み出しリセット信号に対する前記AD変換処理を行う第2変換利得リセット読み出し処理と、を行うことが可能であり、前記メモリ部には、前記第1変換利得リセット読み出し処理における前記比較器のAD変換処理後のデータのみを格納する。
【0015】
本発明の第2の観点は、光電変換を行う画素が配置された画素部と、前記画素部から画素信号の読み出しを行う読み出し部と、を有し、前記画素は、蓄積期間に光電変換により生成した電荷を蓄積する光電変換素子と、前記光電変換素子に蓄積された電荷を前記蓄積期間後の転送期間に転送可能な転送素子と、前記転送素子を通じて前記光電変換素子で蓄積された電荷が転送される出力ノードと、前記出力ノードに接続された蓄積素子と、前記蓄積素子を介して前記出力ノードの電荷を蓄積する蓄積容量素子と、少なくとも第1のリセット期間および第2のリセット期間に前記出力ノードを所定の電位にリセットするリセット素子と、前記出力ノードの電荷を電荷量に応じた利得をもって電圧信号に変換し、変換した電圧信号を出力する出力バッファ部と、前記出力バッファ部による電圧信号と参照電圧とを比較し、デジタル化した比較結果信号を出力するアナログデジタル(AD)変換処理を行う比較器と、前記比較器の比較結果信号に応じたデータを記憶するメモリ部と、を含む固体撮像装置の駆動方法であって、前記読み出し部の制御の下、前記第1のリセット期間に、前記出力バッファ部から前記出力ノードの第1電荷量に応じた第1変換利得で変換した第1の読み出しリセット信号を読み出し、前記比較器で当該第1の読み出しリセット信号に対する前記AD変換処理を行う第1変換利得リセット読み出し処理と、前記第1のリセット期間後の前記転送期間に続く読み出し期間に、前記出力バッファ部から前記出力ノードの第1電荷量に応じた第1変換利得で変換した第1の読み出し信号を読み出し、前記比較器で当該第1の読み出し信号に対する前記AD変換処理を行う第1変換利得信号読み出し処理と、第2変換利得信号読み出し処理実行中に前記蓄積素子を導通状態に保持して前記出力ノードの電荷に前記蓄積容量素子の電荷を共有させた第2電荷量に応じた第2変換利得で変換した第2の読み出し信号を読み出し、前記比較器で当該第2の読み出し信号に対する前記AD変換処理を行う第2変換利得信号読み出し処理と、前記第2のリセット期間に、前記出力バッファ部から前記第2電荷量に応じた第2変換利得で変換した第2の読み出しリセット信号を読み出し、前記比較器で当該第2の読み出しリセット信号に対する前記AD変換処理を行う第2変換利得リセット読み出し処理と、を行い、前記メモリ部には、前記第1変換利得リセット読み出し処理における前記比較器のAD変換処理後のデータのみを格納する。
【0016】
本発明の第3の観点の電子機器は、固体撮像装置と、前記固体撮像装置に被写体像を結像する光学系と、を有し、前記固体撮像装置は、光電変換を行う画素が配置された画素部と、前記画素部から画素信号の読み出しを行う読み出し部と、を有し、前記画素は、蓄積期間に光電変換により生成した電荷を蓄積する光電変換素子と、前記光電変換素子に蓄積された電荷を前記蓄積期間後の転送期間に転送可能な転送素子と、前記転送素子を通じて前記光電変換素子で蓄積された電荷が転送される出力ノードと、前記出力ノードに接続された蓄積素子と、前記蓄積素子を介して前記出力ノードの電荷を蓄積する蓄積容量素子と、少なくとも第1のリセット期間および第2のリセット期間に前記出力ノードを所定の電位にリセットするリセット素子と、前記出力ノードの電荷を電荷量に応じた利得をもって電圧信号に変換し、変換した電圧信号を出力する出力バッファ部と、前記出力バッファ部による電圧信号と参照電圧とを比較し、デジタル化した比較結果信号を出力するアナログデジタル(AD)変換処理を行う比較器と、前記比較器の比較結果信号に応じたデータを記憶するメモリ部と、を含み、前記読み出し部は、前記第1のリセット期間に、前記出力バッファ部から前記出力ノードの第1電荷量に応じた第1変換利得で変換した第1の読み出しリセット信号を読み出し、前記比較器で当該第1の読み出しリセット信号に対する前記AD変換処理を行う第1変換利得リセット読み出し処理と、前記第1のリセット期間後の前記転送期間に続く読み出し期間に、前記出力バッファ部から前記出力ノードの第1電荷量に応じた第1変換利得で変換した第1の読み出し信号を読み出し、前記比較器で当該第1の読み出し信号に対する前記AD変換処理を行う第1変換利得信号読み出し処理と、第2変換利得信号読み出し処理実行中に前記蓄積素子を導通状態に保持して前記出力ノードの電荷に前記蓄積容量素子の電荷を共有させた第2電荷量に応じた第2変換利得で変換した第2の読み出し信号を読み出し、前記比較器で当該第2の読み出し信号に対する前記AD変換処理を行う第2変換利得信号読み出し処理と、前記第2のリセット期間に、前記出力バッファ部から前記第2電荷量に応じた第2変換利得で変換した第2の読み出しリセット信号を読み出し、前記比較器で当該第2の読み出しリセット信号に対する前記AD変換処理を行う第2変換利得リセット読み出し処理と、を行うことが可能であり、前記メモリ部には、前記第1変換利得リセット読み出し処理における前記比較器のAD変換処理後のデータのみを格納する。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、小さな画素ピッチでグローバルシャッタ機能を備えたデジタル画素を実現することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の第1の実施形態に係る固体撮像装置の構成例を示すブロック図である。
図2】本発明の第1の実施形態に係る固体撮像装置の画素部のデジタル画素アレイの一例を示す図である。
図3】本発明の第1の実施形態に係る固体撮像装置のデジタル画素の一例を示すブロック図である。
図4】本発明の第1の実施形態に係る固体撮像装置のデジタル画素の一例を示す回路図である。
図5】本発明の第1の実施形態に係るデジタル画素の主要部である電荷蓄積転送系の構成例を示す簡略断面図およびオーバーフロー時のポテンシャル図である。
図6】本発明の第1の実施形態に係る固体撮像装置におけるデジタル画素の読み出しシーケンスの一例を示す図である。
図7】本第1の実施形態に係る固体撮像装置の積層構造について説明するための模式図である。
図8】本第1の実施形態に係る固体撮像装置の積層構造について説明するための簡略断面図である。
図9】本第1の実施形態に係る固体撮像装置の所定シャッタモード時の主として画素部における読み出し動作を説明するための動作シーケンスおよびポテンシャル遷移を示す第1図である。
図10】本第1の実施形態に係る固体撮像装置の所定シャッタモード時の主として画素部における読み出し動作を説明するための動作シーケンスおよびポテンシャル遷移を示す第2図である。
図11】本発明の第2の実施形態に係る固体撮像装置におけるデジタル画素の構成例を示すブロック図である。
図12】本発明の第2の実施形態に係るデジタル画素の構成例を示す回路図である。
図13】本発明の第2の実施形態に係るデジタル画素の光電変換読み出し部の構成例を示す回路図である。
図14】本発明の第2の実施形態に係るデジタル画素のAD変換部およびメモリ部の構成例を示す回路図である。
図15】本発明の第2の実施形態に係る固体撮像装置における共有デジタル画素の読み出しシーケンスの第1例を示す図である。
図16】本発明の第2の実施形態に係る固体撮像装置における共有デジタル画素の読み出しシーケンスの第2例を示す図である。
図17】本発明の第2の実施形態に係るデジタル画素の構成例を示す回路図であって、2つの光電変換読み出し部で1つの比較器を共有している構成例を示す回路図である。
図18図17のデジタル画素の読み出し動作の一例を示すタイミングチャートである。
図19】本発明の第3の実施形態に係る固体撮像装置におけるデジタル画素の構成例を示すブロック図である。
図20】本発明の第3の実施形態に係るデジタル画素の構成例を示す回路図である。
図21】本発明の第3の実施形態に係る固体撮像装置におけるデジタル画素の読み出しシーケンスの一例を示す図である。
図22】本発明の第4の実施形態に係るデジタル画素の構成例を示す回路図である。
図23】本発明の実施形態に係る固体撮像装置が適用される電子機器の構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態を図面に関連付けて説明する。
【0020】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態に係る固体撮像装置の構成例を示すブロック図である。
本実施形態において、固体撮像装置10は、たとえば画素としてデジタル画素(Digital Pixel)を含むCMOSイメージセンサにより構成される。
【0021】
この固体撮像装置10は、図1に示すように、撮像部としての画素部20、垂直走査回路(行走査回路)30、出力回路40、およびタイミング制御回路50を主構成要素として有している。
これらの構成要素のうち、たとえば垂直走査回路30、出力回路40、およびタイミング制御回路50により画素信号の読み出し部60が構成される。
【0022】
本第1の実施形態において、固体撮像装置10は、画素部20において、デジタル画素として光電変換読み出し部、AD(アナログデジタル)変換部、およびメモリ部を含み、グローバルシャッタの動作機能を持つ、たとえば積層型のCMOSイメージセンサとして構成されている。
本第1の実施形態に係る固体撮像装置10において、後で詳述するように、各デジタル画素DPがAD変換機能を有しており、AD変換部は、光電変換読み出し部により読み出される電圧信号と参照電圧とを比較し、読み出される電圧信号VSLに対してアナログデジタル(AD)変換処理を行い、デジタル化した比較結果信号を出力する比較器(コンパレータ)を有している。
【0023】
そして、本第1の実施形態に係る固体撮像装置10は、小さな画素ピッチでグローバルシャッタ機能を備えたデジタル画素を実現することを可能とするため、読み出し部60は
デジタル画素からの画素信号の読み出し処理およびAD変換処理後のデータ格納を以下のように実行する。
【0024】
読み出し部60は、第1のリセット期間PR1に、出力バッファ部から出力ノードであるフローティングディフュージョンFDの第1電荷量に応じた第1変換利得(たとえば高変換利得:HCG)で変換した第1の読み出しリセット信号HCGVRSTを読み出し、比較器で第1の読み出しリセット信号HCGVRSTに対するAD変換処理を行う第1変換利得リセット読み出し処理HCGRRDを行うことが可能である。
さらに、読み出し部60は、第1のリセット期間PR1後の転送期間PT1に続く読み出し期間PRDに、出力バッファ部から出力ノードであるフローティングディフュージョンFDの第1電荷量に応じた第1変換利得(HCG)で変換した第1の読み出し信号HCGVSIGを読み出し、比較器で第1の読み出し信号HCGVSIGに対するAD変換処理を行う第1変換利得信号読み出し処理HCGSRDを行うことが可能である。
さらに、読み出し部60は、出力バッファ部から出力ノードであるフローティングディフュージョンFDの電荷に蓄積容量素子CS1の電荷を共有させた第2電荷量に応じた第2変換利得(低変換利得:LCG)で変換した第2の読み出し信号LCGVSIGを読み出し、比較器で第2の読み出し信号LCGVSIGに対するAD変換処理を行う第2変換利得信号読み出し処理LCGSRDを行うことが可能である。
さらに、読み出し部60は、第2のリセット期間PR2に、出力バッファ部から第2電荷量に応じた第2変換利得(LCG)で変換した第2の読み出しリセット信号LCGVRSTを読み出し、比較器で第2の読み出しリセット信号LCGVRSTに対するAD変換処理を行う第2変換利得リセット読み出し処理LCGRRDを行うことが可能である。
そして、本第1の実施形態の読み出し部60は、メモリ部には、第1変換利得リセット読み出し処理HCGRRDにおける比較器のAD変換処理後のデータ(AD変換コード)を格納する。
【0025】
本第1の実施形態の読み出し部60は、第1のリセット期間PR1中、全画素におけるリセット素子であるリセットトランジスタを導通状態に保持して第1変換利得リセット読み出し処理HCGRRDを実行し、第1の読み出しリセット信号HCGVRSTに対するAD変換コードをメモリ部に格納した後、転送期PT1中、全画素における転送素子である転送トランジスタを導通状態に保持して、光電変換素子であるフォトダイオードPDに蓄積された電荷を出力ノードであるフローティングディフュージョンFDに転送し、オーバーフローした電荷を蓄積容量素子である蓄積キャパシタCS1に蓄積させるグローバルシャッタ動作を実行する。
そして、本第1の実施形態の読み出し部60は、行ごとに読み出しを行う場合に、第1変換利得信号読み出し処理HCGSRD、第2変換利得信号読み出し処理LCGSRD、および第2変換利得リセット読み出し処理LCGRRDを表記した順に実行する。
【0026】
以下、固体撮像装置10の各部の構成および機能の概要、特に、画素部20およびデジタル画素の構成および機能、それらに関連した読み出し処理、並びに、画素部20と読み出し部60の積層構造等について詳述する。
【0027】
(画素部20およびデジタル画素200の構成)
図2は、本発明の第1の実施形態に係る固体撮像装置10の画素部のデジタル画素アレイの一例を示す図である。
図3は、本発明の第1の実施形態に係る固体撮像装置10のデジタル画素の一例を示すブロック図である。
図4は、本発明の第1の実施形態に係る固体撮像装置10のデジタル画素の一例を示す回路図である。
【0028】
画素部20は、図2に示すように、複数のデジタル画素200がN行M列の行列状(マトリクス状)に配列されている。
なお、図2においては、図面の簡単化のため、9つのデジタル画素200が3行3列の行列状(M=3、N=3のマトリクス状)に配置されている例が示されている。
【0029】
本第1の実施形態に係るデジタル画素200は、光電変換読み出し部(図2ではPDと表記)210、AD変換部(図2ではADCと表記)220、およびメモリ部(図2ではMEMと表記)230を含んで構成されている。
本第1の実施形態の画素部20は、後で詳述するように、第1の基板110と第2の基板120の積層型のCMOSイメージセンサとして構成されるが、本例では、図3および図4に示すように、第1の基板110に光電変換読み出し部210が形成され、第2の基板120にAD変換部220およびメモリ部230が形成されている。
【0030】
画素200の光電変換読み出し部210は、フォトダイオード(光電変換素子)と画素内アンプとを含んで構成される。
具体的には、この光電変換読み出し部210は、たとえば光電変換素子であるフォトダイオードPD1を有する。
このフォトダイオードPD1に対して、転送素子としての転送トランジスタTG1-Tr、リセット素子としてのリセットトランジスタRST1-Tr、ソースフォロワ素子としてのソースフォロワトランジスタSF1-Tr、電流源素子としてのカレントトランジスタIC1-Tr、蓄積素子としての蓄積トランジスタCG1-Tr、蓄積容量素子としての蓄積キャパシタCS1、出力ノードND1としてのフローティングディフュージョンFD1、読み出しノードND2、および結合キャパシタCC1をそれぞれ一つずつ有する。
このように、第1の実施形態に係るデジタル画素200の光電変換読み出し部210は、転送トランジスタTG1-Tr、リセットトランジスタRST1-Tr、ソースフォロワトランジスタSF1-Tr、カレントトランジスタIC1-Tr、および蓄積トランジスタCG1-Trの5トランジスタ(5Tr)を含んで構成されている。
【0031】
そして、本第1の実施形態においては、ソースフォロワトランジスタSF1-Tr、カレントトランジスタIC1-Tr、読み出しノードND2、および結合キャパシタCC1を含んで出力バッファ部211が構成されている。
【0032】
本第1の実施形態に係る光電変換読み出し部210は、出力バッファ部211の読み出しノードND2が結合キャパシタCC1を介してAD変換部220の入力部に接続されている。
【0033】
出力バッファ部211の読み出しノードND2とAD変換部220の比較器221の、第1の入力端子との間に結合キャパシタCC1が接続されて、第1の基板110側の光電変換読み出し部210の出力バッファ部211と第2の基板1120側のAD変換部220の比較器221の入力部をAC結合することにより、低ノイズ化を図り、低照度時に高SNRを実現可能なように構成されている。
そして、光電変換読み出し部210は、出力ノードND1としてのフローティングディフュージョンFD1の電荷を電荷量に応じた電圧信号に変換し、変換した電圧信号VSLをAD変換部220に出力する。
【0034】
より具体的には、光電変換読み出し部210は、第1変換利得リセット読み出し処理HCGRRDとして、第1のリセット期間PR1に、出力バッファ部211から出力ノードND1であるフローティングディフュージョンFD1の第1電荷量に応じた第1変換利得(たとえば高変換利得:HCG)で変換した第1の読み出しリセット信号HCGVRSTを読み出す。
光電変換読み出し部210は、第1変換利得信号読み出し処理HCGSRDとして、第1のリセット期間PR1後の転送期間PT1に続く読み出し期間PRDに、出力バッファ部21から出力ノードND1であるフローティングディフュージョンFD1の第1電荷量に応じた第1変換利得(HCG)で変換した第1の読み出し信号HCGVSIGを読み出す。
【0035】
次いで、光電変換読み出し部210は、第2変換利得信号読み出し処理LCGSRDとして、出力バッファ部211から出力ノードND1であるフローティングディフュージョンFD1の電荷に蓄積容量素子CS1の電荷を共有させた第2電荷量に応じた第2変換利得(低変換利得:LCG)で変換した第2の読み出し信号LCGVSIG2読み出す。
次いで、光電変換読み出し部210は、第2変換利得リセット読み出し処理LCGRRDとして、第2のリセット期間PR2に、出力バッファ部211から第2電荷量に応じた第2変換利得(LCG)で変換した第2の読み出しリセット信号LCGVRSTを読み出す。
【0036】
フォトダイオードPD1は、入射光量に応じた量の信号電荷(ここでは電子)を発生し、蓄積する。
以下、信号電荷は電子であり、各トランジスタがn型トランジスタである場合について説明するが、信号電荷が正孔(ホール)であったり、各トランジスタがp型トランジスタであっても構わない。
また、本実施形態は、複数のフォトダイオードおよび転送トランジスタ間で、各トランジスタを共有している場合にも有効である。
【0037】
各デジタル画素200において、フォトダイオード(PD)としては、埋め込み型フォトダイオード(PPD)が用いられる。
フォトダイオード(PD)を形成する基板表面にはダングリングボンドなどの欠陥による表面準位が存在するため、熱エネルギーによって多くの電荷(暗電流)が発生し、正しい信号が読み出せなくなってしまう。
埋め込み型フォトダイオード(PPD)では、フォトダイオード(PD)の電荷蓄積部を基板内に埋め込むことで、暗電流の信号への混入を低減することが可能となる。
【0038】
光電変換読み出し部210の転送トランジスタTG1-Trは、フォトダイオードPD1とフローティングディフュージョンFD1の間に接続され、制御線を通じてゲートに印加される制御信号TGにより制御される。
転送トランジスタTG1-Trは、制御信号TGがハイ(H)レベルの転送期間PTに選択されて導通状態となり、フォトダイオードPD1で光電変換され蓄積された電荷(電子)をフローティングディフュージョンFD1に転送する。
なお、フォトダイオードPD1およびフローティングディフュージョンFD1が所定のリセット電位にリセットされた後、転送トランジスタTG1-Trは、制御信号TGがロー(L)レベルの非導通状態となり、フォトダイオードPD1は蓄積期間PIとなるが、このとき、入射する光の強度(量)が非常に高い場合、飽和電荷量を超えた電荷が転送トランジスタTG1―Tr下のオーバーフローパスを通じてオーバーフロー電荷としてフローティングディフュージョンFD1に溢れ出す。
【0039】
リセットトランジスタRST1-Trは、電源電圧VDDの電源線VddとフローティングディフュージョンFD1の間に接続され、制御線を通じてゲートに印加される制御信号RSTにより制御される。
リセットトランジスタRST1-Trは、制御信号RSTがHレベルのリセット期間に選択されて導通状態となり、フローティングディフュージョンFD1を電源電圧VDDの電源線Vddの電位にリセットする。
【0040】
蓄積トランジスタCG1―Trは、フローティングディフュージョンFD1とリセットトランジスタRST1―Trとの間に接続され、その接続ノードND3と基準電位VSSとの間に蓄積キャパシタCS1が接続されている。
蓄積トランジスタCG1-Trは、制御線を通じてゲートに印加される制御信号DCGにより制御される。
蓄積トランジスタCG1-Trは、制御信号DCGがHレベルのリセット期間に選択されて導通状態となり、フローティングディフュージョンFD1と蓄積キャパシタCS1とを接続する。
【0041】
第1変換利得信号読み出し処理HCGSRD時には、蓄積トランジスタCG1-Trは非導通状態に保持され、出力ノードND1であるフローティングディフュージョンFD1の電荷と蓄積キャパシタCS1の電荷を分離させて読み出し処理が実行される。
第2変換利得信号読み出し処理LCGSRD時には、蓄積トランジスタCG1-Trは導通状態に保持され、出力ノードND1であるフローティングディフュージョンDF1の電荷と蓄積キャパシタCS1の電荷を共有させて読み出し処理が実行される。
第2変換利得リセット読み出し処理LCGRRD時には、リセットトランジスタRST1-Trおよび蓄積トランジスタCG1-Trが導通状態に保持され、出力ノードND1であるフローティングディフュージョンFD1の電荷と蓄積キャパシタCS1の電荷をクリアさせて読み出し処理が実行される。
【0042】
ソースフォロワ素子としてのソースフォロワトランジスタSF1-Trは、ソースが読み出しノードND2に接続され、ドレイン側が電源線Vddに接続され、ゲートがフローティングディフュージョンFD1に接続されている。
読み出しノードND2と基準電位VSS(たとえばGND)の間に電流源素子としてのカレントトランジスタIC1-Trのドレイン、ソースが接続されている。カレントトランジスタIC1-Trのゲートは制御信号VBNPIXの供給ラインに接続されている。
読み出しノードND2とAD変換部220の入力部間の信号線LSGN1との間には、結合キャパシタCC1が接続されている。
そして、読み出しノードND2とAD変換部220の入力部間の信号線LSGN1は、電流源素子としてのカレントトランジスタIC1-Trにより駆動される。
【0043】
図5(A)および(B)は、本発明の第1の実施形態に係るデジタル画素の主要部である電荷蓄積転送系の構成例を示す簡略断面図およびオーバーフロー時のポテンシャル図である。
【0044】
各デジタル画素セルPXLCは、光Lが照射される第1基板面1101側(たとえば裏面側)と、この第1基板面1101側と対向する側の第2基板面1102側とを有する基板(本例では第1の基板110)に形成され、分離層SPLにより分離されている。
そして、図5のデジタル画素セルPXLCは、光電変換読み出し部210を形成するフォトダイオードPD1、転送トランジスタTG1-Tr、フローティングディフュージョンFD1、リセットトランジスタRST1-Tr、分離層SPL、さらには図示しないカラーフィルタ部およびマイクロレンズを含んで構成されている。
【0045】
(フォトダイオードの構成)
フォトダイオードPD1は、第1基板面1101側と、第1基板面1101側と対向する側の第2基板面1102側とを有する半導体基板に対して埋め込むように形成された第1導電型(本実施形態ではn型)半導体層(本実施形態ではn層)2101を含み、受光した光の光電変換機能および電荷蓄積機能を有するように形成されている。
フォトダイオードPD1の基板の法線に直交する方向(X方向)における側部には第2の導電型(本実施形態ではp型)分離層SPLが形成されている。
【0046】
このように、本実施形態では、各デジタル画素セルPXLCにおいて、フォトダイオード(PD)としては、埋め込み型フォトダイオード(PPD)が用いられる。
フォトダイオード(PD)を形成する基板表面にはダングリングボンドなどの欠陥による表面準位が存在するため、熱エネルギーによって多くの電荷(暗電流)が発生し、正しい信号が読み出せなくなってしまう。
埋め込み型フォトダイオード(PPD)では、フォトダイオード(PD)の電荷蓄積部を基板内に埋め込むことで、暗電流の信号への混入を低減することが可能となる。
【0047】
図5のフォトダイオードPD1においては、n層(第1導電型半導体層)2101が、基板110の法線方向(図中の直交座標系のZ方向)に2層構造を持つように構成されている。
本例では、第1基板面1101側にn-層2102が形成され、このn-層2102の第2基板面1102側にn層2103が形成され、このn-層2103の第2基板面1102側にp+層2104およびp層2105が形成されている。
また、n-層2102の第1基板面1101側にp+層2106が形成されている。
p+層2106は、フォトダイオードPD1のみならず分離層SPL、さらには他のデジタル画素セルPXLCにわたって一様に形成されている。
【0048】
なお、このP+層2106の光入射側には、カラーフィルタ部が形成され、さらに、カラーフィルタ部の光入射射側であって、フォトダイオードPD1および分離層SPLの一部に対応するようにマイクロレンズが形成されている。
【0049】
これらの構成は一例であり、単層構造であってもよく、また、3層、4層以上の積層構造であってもよい。
【0050】
(X方向(列方向)における分離層の構成)
図5のX方向(列方向)におけるp型分離層SPLにおいては、フォトダイオードPD1のn-層2102と接する側であって基板の法線に直交する方向(図中の直交座標系のX方向)の右側部に、第1のp層(第2導電型半導体層)2107が形成されている。
さらに、p型分離層SPLにおいては、第1のp層2107のX方向の右側に、第2のp層(第2導電型半導体層)2108が、基板110の法線方向(図中の直交座標系のZ方向)に2層構造を持つように構成されている。
本例では、第2のp層2108において、第1基板面1101側にp-層2109が形成され、このp-層2109の第2基板面1102側にp層2110が形成されている。
【0051】
これらの構成は一例であり、単層構造であってもよく、また、3層、4層以上の積層構造であってもよい。
【0052】
p型分離層SPLの第1のp層2107および第2のp-層2109の第1の基板面1101側にはフォトダイオード2110と同様のp+層2106が形成されている。
【0053】
p型分離層SPLの第1のp層2107の第2の基板面1102側の一部にかかりオーバーフローパスOVPが形成されるように、n層2103が延長するように形成されている。
そして、n層2103の第2基板面1102側のp層2105上に、ゲート絶縁膜を介して転送トランジスタTG1-Trのゲート電極2111が形成されている。
さらに、p型分離層SPLの第1のp層2107の第2の基板面1102側にはフローティングディフュージョンFD1となるn+層2112が形成され、n+層2112に隣接してリセットトランジスタRST1-Trのチャネル形成領域となるp層2113、p層2113に隣接してn+層2114が形成されている。
そして、p層2113上に、ゲート絶縁膜を介してゲート電極2115が形成されている。
【0054】
このような構造において、入射する光の強度(量)が非常に高い場合、飽和電荷量を超えた電荷が転送トランジスタTG1―Tr下のオーバーフローパスOVPを通じてオーバーフロー電荷としてフローティングディフュージョンFD1に溢れ出す。
【0055】
デジタル画素200のAD変換部220は、光電変換読み出し部210により出力されるアナログの電圧信号VSLを、所定の傾きを持たせて変化させたランプ波形または固定電圧の参照電圧VREFと比較して、デジタル信号に変換する機能する。
【0056】
AD変換部220は、図4に示すように、比較器(COMP)221、出力側の負荷キャパシタCL1、およびリセットスイッチSW-RSTを含んで構成されている。
【0057】
比較器221は、第1の入力端子としての反転入力端子(-)に、光電変換読み出し部210の出力バッファ部211から信号線LSGN1に出力された電圧信号VSLが供給され、第2の入力端子としての非反転入力端子(+)に参照電圧VREFが供給され、電圧信号VSTと参照電圧VREFとを比較し、デジタル化した比較結果信号SCMPを出力するAD変換処理(比較処理)を行う。
【0058】
比較器221は、第1の入力端子としての反転入力端子(-)に結合キャパシタCC1が接続されており、第1の基板110側の光電変換読み出し部210の出力バッファ部211と第2の基板120側のAD変換部220の比較器221の入力部をAC結合することにより、低ノイズ化を図り、低照度時に高SNRを実現可能なように構成されている。
【0059】
また、比較器221は、出力端子と第1の入力端子としての反転入力端子(-)との間にリセットスイッチSW-RSTが接続され、出力端子と基準電位VSSとの間に負荷キャパシタCL1が接続されている。
【0060】
基本的に、AD変換部220においては、光電変換読み出し部210の出力バッファ部211から信号線LSGN1に読み出されたアナログ信号(電位VSL)は比較器221で参照電圧VREF、たとえばある傾きを持った線形に変化するスロープ波形であるランプ信号RAMPと比較される。
このとき、たとえば比較器221と同様に列毎に配置された図示しないカウンタが動作しており、ランプ波形のあるランプ信号RAMPとカウンタ値が一対一の対応を取りながら変化することで電圧信号VSLをデジタル信号に変換する。
基本的に、AD変換部220は、参照電圧VREF(たとえばランプ信号RAMP)の変化は電圧の変化を時間の変化に変換するものであり、その時間をある周期(クロック)で数えることでデジタル値に変換する。
そして、アナログ信号VSLとランプ信号RAMP(参照電圧VREF)が交わったとき、比較器221の出力が反転し、図示しないカウンタの入力クロックを停止し、または、入力を停止していたクロックを図示しないカウンタに入力し、そのときのカウンタの値(データ)がメモリ部230に記憶されてAD変換を完了させる。
以上のAD変換期間終了後、各デジタル画素200のメモリ部230に格納されたデータ(信号)は出力回路40から図示しない信号処理回路に出力され、所定の信号処理により2次元画像が生成される。
【0061】
メモリ部230はSRAMやDRAMにより構成され、デジタル変換された信号が供給され、フォトコンバージョン符号に対応し、画素アレイ周辺の出力回路40の外部IOバッファにより読み出すことができる。
【0062】
垂直走査回路30は、タイミング制御回路50の制御に応じてシャッタ行および読み出し行において行走査制御線を通してデジタル画素200の光電変換読み出し部210の駆動を行う。
垂直走査回路30は、タイミング制御回路50の制御に応じて、各デジタル画素200の比較器221に対して、比較処理に準じて設定される参照電圧VREFを供給する。
また、垂直走査回路30は、アドレス信号に従い、信号の読み出しを行うリード行と、フォトダイオードPDに蓄積された電荷をリセットするシャッタ行の行アドレスの行選択信号を出力する。
【0063】
出力回路40は、たとえば画素部20の各デジタル画素200のメモリ出力に対応して配置されたIOバッファを含み、各デジタル画素200から読み出されるデジタルデータを外部に出力する。
【0064】
タイミング制御回路50は、画素部20、垂直走査回路30、出力回路40等の信号処理に必要なタイミング信号を生成する。
【0065】
本第1の実施形態において、読み出し部60は、たとえばグローバルシャッタモード時に、デジタル画素200からの画素信号の読み出し制御を行う。
【0066】
(読み出し部60によるデジタル画素200からの画素信号の読み出し制御)
次に、本第1の実施形態に係る読み出し部60によるデジタル画素200からの画素信号の読み出し制御について、図6に関連付けて具体的に説明する。
【0067】
図6は、本発明の第1の実施形態に係る固体撮像装置10におけるデジタル画素の読み出しシーケンスの一例を示す図である。
【0068】
読み出し部60は、図6に示すように、まず、第1のリセット期間PR1に、出力バッファ部211から出力ノードND1であるフローティングディフュージョンFD1の第1電荷量に応じた第1変換利得(高変換利得:HCG)で変換した第1の読み出しリセット信号HCGVRSTを読み出し、比較器221で第1の読み出しリセット信号HCGVRSTに対するAD変換処理を行う第1変換利得リセット読み出し処理HCGRRDを行うる。
読み出し部60は、第1のリセット期間PR1中、全画素におけるリセット素子であるリセットトランジスタRST1-Trを導通状態に保持して第1変換利得リセット読み出し処理HCGRRDを実行し、第1の読み出しリセット信号HCGVRSTに対するAD変換コードをメモリ部230に格納する。
【0069】
読み出し部60は、第1の読み出しリセット信号HCGVRSTに対するAD変換コードをメモリ部に格納した後、転送期間PT1中、全画素における転送素子である転送トランジスタTG1-Trを導通状態に保持して、光電変換素子であるフォトダイオードPD1に蓄積された電荷を出力ノードND1であるフローティングディフュージョンFD1に転送し、オーバーフローした電荷を蓄積容量素子である蓄積キャパシタCS1に蓄積させるグローバルシャッタ動作を実行する。
【0070】
そして、本第1の実施形態の読み出し部60は、行ごとに読み出しを行う場合に、第1変換利得信号読み出し処理HCGSRD、第2変換利得信号読み出し処理LCGSRD、および第2変換利得リセット読み出し処理LCGRRDを表記した順に実行する。
【0071】
具体的には、読み出し部60は、第1のリセット期間PR1後の転送期間PT1に続く読み出し期間PRDに、出力バッファ部211から出力ノードND1であるフローティングディフュージョンFD1の第1電荷量に応じた第1変換利得(HCG)で変換した第1の読み出し信号HCGVSIGを読み出し、比較器で221第1の読み出し信号HCGVSIGに対するAD変換処理を行う第1変換利得信号読み出し処理HCGSRDを行う。
読み出し部60は、第1変換利得信号読み出し処理HCGSRDの実行期間中は、制御信号DCGをLレベルにして蓄積トランジスタCG1-Trを非導通状態に保持して出力ノードND1であるフローティングディフュージョンFD1の電荷と蓄積容量素子である蓄積キャパシタCS1の電荷を分離させて、フローティングディフュージョンFD1の電荷量を第1電荷量に保持させる。
【0072】
次に、読み出し部60は、出力バッファ部211から出力ノードND1であるフローティングディフュージョンFD1の電荷に蓄積容量素子である蓄積キャパシタCS1の電荷を共有させた第2電荷量に応じた第2変換利得(低変換利得:LCG)で変換した第2の読み出し信号LCGVSIGを読み出し、比較器221で第2の読み出し信号LCGVSIGに対するAD変換処理を行う第2変換利得信号読み出し処理LCGSRDを行う。
読み出し部60は、第2変換利得信号読み出し処理LCGSRDの実行期間中は、制御信号DCGをHレベルにして蓄積トランジスタCG1-Trを導通状態に保持して出力ノードND1であるフローティングディフュージョンFD1の電荷と蓄積容量素子である蓄積キャパシタCS1の電荷を共有させて、フローティングディフュージョンFD1の電荷量を第2電荷量に保持させる。
【0073】
次に、読み出し部60は、第2のリセット期間PR2に、出力バッファ部211から第2電荷量に応じた第2変換利得(LCG)で変換した第2の読み出しリセット信号LCGVRSTを読み出し、比較器221で第2の読み出しリセット信号LCGVSIGに対するAD変換処理を行う第2変換利得リセット読み出し処理LCGRRDを行う。
読み出し部60は、第2変換利得リセット読み出し処理LCGRRDを実行期間中は、制御信号DCGをHレベルにして蓄積トランジスタCG1-Trを導通状態に保持するとともに、制御信号RSTをHレベルにしてリセット素子であるリセットトランジスタRST1-Trを導通状態に保持して出力ノードND1であるフローティングディフュージョンFD1の電荷と蓄積容量素子である蓄積キャパシタCS1の電荷をクリアさせる。
【0074】
そして、本第1の実施形態の読み出し部60は、メモリ部230には、第1変換利得リセット読み出し処理HCGRRDにおける比較器のAD変換処理後のデータ(AD変換コード)のみを格納する。
【0075】
読み出されたフレームは、メモリノードからのデジタル信号データの読み出しによって実行され、そのようなMIPIデータフォーマットを有する、たとえば出力回路40のIOバッファを介して固体撮像装置10(イメージセンサ)の外部に送られる。この動作は、全画素(ピクセル)アレイに対してグローバルに実行することができる。
【0076】
また、画素部20において、全画素同時にリセットトランジスタRST1-Trと転送トランジスタTG1-Trを使ってフォトダイオードPD1をリセットすることで、全画素同時並列的に露光を開始する。また、所定の露光期間(蓄積期間)が終了した後、転送トランジスタTG1-Trを使って光電変換読み出し部からの出力信号をAD変換部220、メモリ部230でサンプリングすることで、全画素同時並列的に露光を終了する。これにより、完全なシャッタ動作を電子的に実現する。
【0077】
なお、読み出し部60は、次のフレーム用に、第2変換利得リセット読み出し処理LCGRRDによる第2の読み出しリセット信号LCGVRSTに対するAD変換コードをメモリ部230に格納するように構成することも可能である
【0078】
以上のように、読み出し部60は、デジタル画素200からの画素信号の読み出し制御において、高変換利得HCGによる読み出し信号と低変換利得LCGによる読み出し信号の両方でアナログCDS(オートゼロ:Auto Zero)とデジタルCDS(AD変換)を実施する。
ただし、メモリ部230には、第1変換利得リセット読み出し処理HCGRRDにおける比較器のAD変換処理後のデータ(AD変換コード)のみを格納し、行ごとに読み出す場合は残りの第1変換利得信号読み出し処理HCGSRD、第2変換利得信号読み出し処理LCGSRD、および第2変換利得リセット読み出し処理LCGRRDの各AD変換処理を実行する。
これにより、デジタル画素200内のデジタルメモリの必要性を低くし、不要なメモリを取り除くことが可能となる。
この点に関しては、高変換利得HCGによる読み出し動作におけるCDSは真のCDSであるのに対して、低変換利得LCGによる読み出し動作におけるCDSはこのフレーム内で使用されると疑似CDSであると言える。
この場合、高変換利得HCGによる読み出し動作に対してリセットノイズが除去されるが、DC変動のみが低変換利得LCGによる読み出し動作に対して除去されることを意味する。
【0079】
これに対して、接合点において、第2変換利得リセット読み出し処理LCGRRDによる第2の読み出しリセット信号LCGVRSTに対するAD変換コードをメモリ部230に格納し、次のフレームに使用される場合、低変換利得LCGによる読み出し動作について真のCDS動作が実現される。
そして、本第1の実施形態においては、すべてのデジタル画素200の転送トランジスタTG1-Trを同時並列的に導通状態にしてグローバルシャッタ動作を保証し、その信号を遮光領域下に保持する。
【0080】
(固体撮像装置10の積層構造)
次に、本第1の実施形態に係る固体撮像装置10の積層構造について説明する。
【0081】
図7(A)および(B)は、本第1の実施形態に係る固体撮像装置10の積層構造について説明するための模式図である。
図8は、本第1の実施形態に係る固体撮像装置10の積層構造について説明するための簡略断面図である。
【0082】
本第1の実施形態に係る固体撮像装置10は、第1の基板(上基板)110と第2の基板(下基板)120の積層構造を有する。
固体撮像装置10は、たとえばウェハレベルで貼り合わせた後、ダイシングで切り出した積層構造の撮像装置として形成される。
本例では、第1の基板110と第2の基板120が積層された構造を有する。
【0083】
第1の基板110には、その中央部を中心として画素部20の各デジタル画素200の光電変換読み出し部210が形成されている。
第1の基板110の光Lが入射側である第1面111側にフォトダイオードPDが形成され、その光入射側にマイクロレンズMCLやカラーフィルタが形成されている。
第1の基板110の第2面側に転送トランジスタTG1-Tr,リセットトランジスタRST1-Tr,ソースフォロワトランジスタSF1-Tr,カレントトランジスタIC1-Tr、蓄積トランジスタCG1-Trが形成されている
【0084】
このように、本第1の実施形態においては、第1の基板110には、基本的に、デジタル画素200の光電変換読み出し部210が行列状に形成されている。
【0085】
第2の基板120には、各デジタル画素200のAD変換部220、メモリ部230がマトリクス状に形成されている。
また、第2の基板120には、垂直走査回路30、出力回路40、およびタイミング制御回路50も形成されてもよい。
【0086】
このような積層構造において、第1の基板110の各光電変換読み出し部210の読み出しノードND2と第2の基板120の各デジタル画素200の比較器221の反転入力端子(-)とが、たとえば図3および図4に示すように、それぞれ信号線LSGN1、マイクロバンプBMPやビア(Die-to-Die Via)等を用いて電気的な接続が行われている。
また、本実施形態においては第1の基板110の各光電変換読み出し部210の読み出しノードND2と第2の基板120の各デジタル画素200の比較器221の反転入力端子(-)とが、結合キャパシタCC1によりAC結合されている。
【0087】
(固体撮像装置10の読み出し動作)
以上、固体撮像装置10の各部の特徴的な構成および機能について説明した。
次に、本第1の実施形態に係る固体撮像装置10のデジタル画素200の画素信号の読み出し動作等について詳述する。
【0088】
図9(A)~(C)および図10(A)および(B)は、本第1の実施形態に係る固体撮像装置の所定シャッタモード時の主として画素部における読み出し動作を説明するための動作シーケンスおよびポテンシャル遷移を示す図である。
図9(A)は第1変換利得リセット読み出し処理HCGRRを説明するための図である。図9(B)はグローバルシャッタ動作を説明するための図である。図9(C)は第1変換利得信号読み出し処理HCGSRDを説明するための図である。図10(A)は第2変換利得信号読み出し処理LCGSRDを説明するための図である。図10(B)は第2変換利得リセット読み出し処理LCGRRDを説明するための図である。
【0089】
まず、図9(A)に示すように、第1のリセット期間PR1中、全画素におけるリセット素子であるリセットトランジスタRST1-Trが導通状態に保持されて第1変換利得リセット読み出し処理HCGRRDが実行される。なお、ここでは、フォトダイオードPD1は蓄積電荷がオーバーフロー寸前の満杯(フル)状態にあるものとしている。
この場合、読み出し部60の制御の下、出力バッファ部211からフローティングディフュージョンFD1の第1電荷量に応じた第1変換利得(高変換利得:HCG)で変換した第1の読み出しリセット信号HCGVRSTが読み出される。そして、比較器221で第1の読み出しリセット信号HCGVRSTに対するAD変換処理が行われ、第1の読み出しリセット信号HCGVRSTに対するAD変換コードがメモリ部230に格納される。
この状態において、アナログCDS(オートゼロ:Auto Zero)とデジタルCDS(AD変換)が実施される。
【0090】
次に、図9(B)に示すように、第1の読み出しリセット信号HCGVRSTに対するAD変換コードをメモリ部が格納された後、転送期間PT1中、全画素における転送素子である転送トランジスタTG1-Trが導通状態に保持されて、光電変換素子であるフォトダイオードPD1に蓄積された電荷が出力ノードND1であるフローティングディフュージョンFD1に転送される。そして、転送電荷の一部の電荷が蓄積容量素子である蓄積キャパシタCS1に蓄積される。
出力ノードND1であるフローティングディフュージョンFD1と蓄積容量素子である蓄積キャパシタCS1が使用されてグローバルシャッタ動作が実行される。
このように、すべてのデジタル画素200の転送トランジスタTG1-Trを同時並列的に導通状態にしてグローバルシャッタ動作が保証され、その信号が遮光領域下に保持される。
【0091】
そして、読み出し部60の制御の下、行ごとに読み出しを行う場合に、第1変換利得信号読み出し処理HCGSRD、第2変換利得信号読み出し処理LCGSRD、および第2変換利得リセット読み出し処理LCGRRDが実行される。
【0092】
次に、図9(C)に示すように、第1変換利得信号読み出し処理HCGSRDが実行される。
第1変換利得信号読み出し処理HCGSRDの実行期間中には、蓄積トランジスタCG1-Trが非導通状態に保持されて出力ノードND1であるフローティングディフュージョンFD1の電荷と蓄積容量素子である蓄積キャパシタCS1の電荷が分離される。これにより、フローティングディフュージョンFD1の電荷量が第1電荷量に保持される。
この場合、読み出し部60の制御の下、第1のリセット期間PR1後の転送期間PT1に続く読み出し期間PRDに、出力バッファ部211から出力ノードND1であるフローティングディフュージョンFD1の第1電荷量に応じた第1変換利得(HCG)で変換した第1の読み出し信号HCGVSIGが読み出される。そして、比較器で221第1の読み出し信号HCGVSIGに対するAD変換処理が行われる。
【0093】
次に、図10(A)に示すように、第2変換利得信号読み出し処理LCGSRDが実行される。
第2変換利得信号読み出し処理LCGSRDの実行期間中には、蓄積トランジスタCG1-Trが導通状態に保持されて出力ノードND1であるフローティングディフュージョンFD1の電荷と蓄積容量素子である蓄積キャパシタCS1の電荷が共有(加算)される。これにより、フローティングディフュージョンFD1の電荷量が第2電荷量に保持される。
この場合、読み出し部60の制御の下、出力バッファ部211から出力ノードND1であるフローティングディフュージョンFD1の電荷に蓄積容量素子である蓄積キャパシタCS1の電荷が共有された第2電荷量に応じた第2変換利得(低変換利得:LCG)で変換した第2の読み出し信号LCGVSIGが読み出される。そして、比較器221で第2の読み出し信号LCGVSIGに対するAD変換処理が行われる。
【0094】
次に、図10(B)に示すように、第2変換利得リセット読み出し処理LCGRRDが実行される。
第2変換利得リセット読み出し処理LCGRRDを実行期間中には、蓄積トランジスタCG1-Trが導通状態に保持されるとともに、セット素子であるリセットトランジスタRST1-Trが導通状態に保持され出力ノードND1であるフローティングディフュージョンFD1の電荷と蓄積容量素子である蓄積キャパシタCS1の電荷がクリアされる。
この場合、読み出し部60の制御の下、第2のリセット期間PR2に、出力バッファ部211から第2電荷量に応じた第2変換利得(LCG)で変換した第2の読み出しリセット信号LCGVRSTが読み出される。そして、比較器221で第2の読み出しリセット信号LCGVSIGに対するAD変換処理が行われる。
【0095】
そして、読み出された信号は、メモリノードからのデジタル信号データの読み出しによって実行され、そのようなMIPIデータフォーマットを有する、たとえば出力回路40のIOバッファを介して固体撮像装置10(イメージセンサ)の外部に送られる。この動作は、全画素(ピクセル)アレイに対してグローバルに実行される。
【0096】
以上説明したように、本第1の実施形態によれば、固体撮像装置10は、画素部20において、デジタル画素として光電変換読み出し部210、AD変換部220、およびメモリ部230を含み、グローバルシャッタの動作機能を持つ、たとえば積層型のCMOSイメージセンサとして構成されている。
本第1の実施形態に係る固体撮像装置10において、各デジタル画素200がAD変換機能を有しており、AD変換部220は、光電変換読み出し部210により読み出される電圧信号と参照電圧とを比較し、デジタル化した比較結果信号を出力するAD変換処理を行う比較器221を有している。
そして、本第1の実施形態に係る固体撮像装置10の読み出し部60は、第1のリセット期間PR1に、出力バッファ部211からフローティングディフュージョンFDの第1電荷量に応じた第1変換利得(たとえば高変換利得:HCG)で変換した第1の読み出しリセット信号HCGVRSTを読み出し、比較器で第1の読み出しリセット信号HCGVRSTに対するAD変換処理を行う第1変換利得リセット読み出し処理HCGRRDを行うことが可能である。
さらに、読み出し部60は、第1のリセット期間PR1後の転送期間PT1に続く読み出し期間PRDに、出力バッファ部211からフローティングディフュージョンFDの第1電荷量に応じた第1変換利得(HCG)で変換した第1の読み出し信号HCGVSIGを読み出し、比較器で第1の読み出し信号HCGVSIGに対するAD変換処理を行う第1変換利得信号読み出し処理HCGSRDを行うことが可能である。
さらに、読み出し部60は、出力バッファ部211からフローティングディフュージョンFDの電荷に蓄積容量素子CS1の電荷を共有させた第2電荷量に応じた第2変換利得(低変換利得:LCG)で変換した第2の読み出し信号LCGVSIGを読み出し、比較器で第2の読み出し信号LCGVSIGに対するAD変換処理を行う第2変換利得信号読み出し処理LCGSRDを行うことが可能である。
さらに、読み出し部60は、第2のリセット期間PR2に、出力バッファ部211から第2電荷量に応じた第2変換利得(LCG)で変換した第2の読み出しリセット信号LCGVRSTを読み出し、比較器で第2の読み出しリセット信号LCGVRSTに対するAD変換処理を行う第2変換利得リセット読み出し処理LCGRRDを行うことが可能である。
そして、本第1の実施形態の読み出し部60は、メモリ部には、第1変換利得リセット読み出し処理HCGRRDにおける比較器のAD変換処理後のデータ(AD変換コード)のみを格納する。
【0097】
本第1の実施形態の読み出し部60は、第1のリセット期間PR1中、全画素におけるリセット素子であるリセットトランジスタを導通状態に保持して第1変換利得リセット読み出し処理HCGRRDを実行し、第1の読み出しリセット信号HCGVRSTに対するAD変換コードをメモリ部に格納した後、転送期PT1中、全画素における転送素子である転送トランジスタを導通状態に保持して、フォトダイオードPD1に蓄積された電荷をフローティングディフュージョンFD1に転送し、オーバーフローした電荷を蓄積容量素子である蓄積キャパシタCS1に蓄積させるグローバルシャッタ動作を実行する。
そして、本第1の実施形態の読み出し部60は、行ごとに読み出しを行う場合に、第1変換利得信号読み出し処理HCGSRD、第2変換利得信号読み出し処理LCGSRD、および第2変換利得リセット読み出し処理LCGRRDを表記した順に実行する。
【0098】
したがって、本第1の実施形態の固体撮像装置10によれば、小さな画素ピッチでグローバルシャッタ機能を備えたデジタル画素を実現することが可能となる。
これにより、デジタル画素は、広ダイナミックレンジ、高感度、低ノイズ、高フレームレートを同時に達成できるため、グローバルシャッタ技術のための画素アーキテクチャとして適用することが可能となる。
また、本第1の実施形態によれば、実質的に広ダイナミックレンジ化、高フレームレート化を実現することが可能で、しかも低ノイズ化を図れ、有効画素領域を最大限に拡大することができ、コストあたりの価値を最大限に高めることが可能となる。
【0099】
また、本第1の実施形態の固体撮像装置10によれば、構成の複雑化を防止しつつ、レイアウト上の面積効率の低下を防止することができる。
【0100】
また、本第1の実施形態に係る固体撮像装置10は、第1の基板(上基板)110と第2の基板(下基板)120の積層構造を有する。
したがって、本第1の実施形態において、第1の基板110側を、基本的に、NMOS系の素子だけで形成すること、および、画素アレイにより有効画素領域を最大限に拡大することにより、コストあたりの価値を最大限に高めることができる。
【0101】
(第2の実施形態)
図11は、本発明の第2の実施形態に係る固体撮像装置におけるデジタル画素の構成例を示すブロック図である。
図12は、本発明の第2の実施形態に係るデジタル画素の構成例を示す回路図である。
図13は、本発明の第2の実施形態に係るデジタル画素の光電変換読み出し部の構成例を示す回路図である。
図14は、本発明の第2の実施形態に係るデジタル画素のAD変換部およびメモリ部の構成例を示す回路図である。
【0102】
本第2の実施形態に係る固体撮像装置10Aが、上述した第1の実施形態に係る固体撮像装置10と異なる点は、次のとおりである。
本第2の実施形態に係る固体撮像装置10Aでは、1つの比較器221が複数の共有画素200-1~200-nで共有されている。
図12および図13の例では、図面の簡単化のため、9つのデジタル画素200200-1~200-9が3行3列の行列状(M=3、N=3のマトリクス状)に配置されている例が示されている。
【0103】
1つの比較器221を複数の共有画素200-1~200-9で共有するため、図12および図13に示すように、光電変換読み出し部210Aの出力バッファ部211Aは、結合キャパシタCC1と比較器221の第1の入力端子との間に接続されたスイッチ素子SW1を有している。
スイッチ素子SW1は、たとえばnチャネルMOS(NMOS)トランジスタNT1により形成される。
また、比較器211の出力側には、図13および図14に示すように、共有画素200-1~200-9に対応して複数のメモリ部230-1~230-9がスイッチ素子SS1~SS9を介して並列に接続されている。
【0104】
図15は、本発明の第2の実施形態に係る固体撮像装置10Aにおける共有デジタル画素200-1~200-9の読み出しシーケンスの第1例を示す図である。
【0105】
図15の例では、読み出し部60は、アナログCDS(オートゼロ)を行うために、第1のリセット期間PR1中、全共有画素200-1~200-9におけるリセット素子であるリセットトランジスタRST1-Trを導通状態に保持して第1変換利得リセット読み出し処理HCGRRD<1>~<9>を行ごとに順番に実行し、各第1の読み出しリセット信号HCGVRSTに対するAD変換コードをメモリ部230-1~230-9にそれぞれ格納する。
そして、各第1の読み出しリセット信号HCGVRSTに対するAD変換コードをメモリ部230-1~230-9にそれぞれ格納した後、転送期間PT1中、全画素における転送素子である転送トランジスタTG1-Trを導通状態に保持して、光電変換素子であるフォトダイオードPD1に蓄積された電荷を出力ノードND1であるフローティングディフュージョンFD1に転送し、オーバーフローした電荷を蓄積容量素子である蓄積キャパシタCS1に蓄積させるグローバルシャッタ動作を実行する。
そして、読み出し部60は、行ごとに読み出しを行う場合に、第1変換利得信号読み出し処理HCGSRD、第2変換利得信号読み出し処理LCGSRD、および第2変換利得リセット読み出し処理LCGRRDを表記した順に実行する。
【0106】
図16は、本発明の第2の実施形態に係る固体撮像装置10Aにおける共有デジタル画素200-1~200-9の読み出しシーケンスの第2例を示す図である。
【0107】
図16の例では、読み出し部60は、アナログCDS(オートゼロ)を行うために、第1のリセット期間PR1中、全共有画素200-1~200-9におけるリセット素子であるリセットトランジスタRST1-Trを導通状態に保持して第1変換利得リセット読み出し処理HCGRRD<1>~<9>を全行で同時並列的に実行し、各第1の読み出しリセット信号HCGVRSTに対するAD変換コードをメモリ部230-1~230-9にそれぞれ格納する。
そして、各第1の読み出しリセット信号HCGVRSTに対するAD変換コードをメモリ部230-1~230-9にそれぞれ格納した後、転送期間PT1中、全画素における転送素子である転送トランジスタTG1-Trを導通状態に保持して、光電変換素子であるフォトダイオードPD1に蓄積された電荷を出力ノードND1であるフローティングディフュージョンFD1に転送し、オーバーフローした電荷を蓄積容量素子である蓄積キャパシタCS1に蓄積させるグローバルシャッタ動作を実行する。
そして、読み出し部60は、行ごとに読み出しを行う場合に、第1変換利得信号読み出し処理HCGSRD、第2変換利得信号読み出し処理LCGSRD、および第2変換利得リセット読み出し処理LCGRRDを表記した順に実行する。
【0108】
図17は、本発明の第2の実施形態に係るデジタル画素の構成例を示す回路図であって、2つの光電変換読み出し部210Aで1つの比較器221を共有している構成例を示す回路図である。
図18は、図17のデジタル画素の読み出し動作の一例を示すタイミングチャートである。
【0109】
図17の例においては、上述したように、出力バッファ部211Aにおいて、スイッチ素子SW1,SW2としてのNMOSトランジスタNT1、NT2がAC結合用の結合キャパシタCC1の信号線LXGN1側に追加され、AC結合用の結合キャパシタCC1を比較器221の第1の入力端子であるマイナス端子(仮想接地)に制御信号PSEL<1>,PSEL<2>に応じて選択的に接続し、切断する。
オートゼロ(Auto Zero)後に課されるノイズを伴うオフセットがノードns<1>とns<2>にそれぞれ保存される。
【0110】
本第2の実施形態によれば、上述した第1の実施形態の効果と同様の効果を得ることができることはもとより、さらなる小さな画素ピッチでグローバルシャッタ機能を備えたデジタル画素を実現することが可能となり、また低消費電力化を図ることが可能となる。
【0111】
(第3の実施形態)
図19は、本発明の第3の実施形態に係る固体撮像装置におけるデジタル画素の構成例を示すブロック図である。
図20は、本発明の第3の実施形態に係るデジタル画素の構成例を示す回路図である。
【0112】
本第3の実施形態に係る固体撮像装置10Bが、上述した第1の実施形態に係る固体撮像装置10と異なる点は、次のとおりである。
本第3の実施形態に係る固体撮像装置10Bでは、比較器221の出力は列単位で配線された垂直信号線LSGN11に接続され、メモリ部230Bは列単位で配置され、垂直信号線LSGN11に接続されている。
【0113】
図19の例では、ドライバ222およびスイッチ素子SW220が、比較器221の出力側と垂直信号線LSGN11との間に接続されている。
【0114】
比較器221の出力は、列対応のメモリ部230BにAD変換コードのラッチタイミングで送出される。
【0115】
図21は、本発明の第3の実施形態に係る固体撮像装置10Bにおけるデジタル画素200の読み出しシーケンスの一を示す図である。
【0116】
この場合も、読み出し部60は、デジタル画素200からの画素信号の読み出し制御において、高変換利得HCGによる読み出し信号と低変換利得LCGによる読み出し信号の両方でアナログCDS(オートゼロ:Auto Zero)とデジタルCDS(AD変換)を実施する。
ただし、メモリ部230には、第1変換利得リセット読み出し処理HCGRRDにおける比較器のAD変換処理後のデータ(AD変換コード)のみを格納し、行ごとに読み出す場合は残りの第1変換利得信号読み出し処理HCGSRD、第2変換利得信号読み出し処理LCGSRD、および第2変換利得リセット読み出し処理LCGRRDの各AD変換処理を実行する。
これにより、デジタル画素200内のデジタルメモリの必要性を低くし、不要なメモリを取り除くことが可能となる。
この点に関しては、高変換利得HCGによる読み出し動作におけるCDSは真のCDSであるのに対して、低変換利得LCGによる読み出し動作におけるCDSはこのフレーム内で使用されると疑似CDSであると言える。
この場合、高変換利得HCGによる読み出し動作に対してリセットノイズが除去されるが、DC変動のみが低変換利得LCGによる読み出し動作に対して除去されることを意味する。
【0117】
これに対して、接合点において、第2変換利得リセット読み出し処理LCGRRDによる第2の読み出しリセット信号LCGVRSTに対するAD変換コードをメモリ部230に格納し、次のフレームに使用される場合、低変換利得LCGによる読み出し動作について真のCDS動作が実現される。
【0118】
本第3の実施形態によれば、上述した第1の実施形態の効果と同様の効果を得ることができることはもとより、メモリ(本例ではSRAM)ビットに必要な面積を削減することが可能で、比較器221の面積効率を向上させることができ、さらなる小さな画素ピッチでグローバルシャッタ機能を備えたデジタル画素を実現することが可能となり、また低消費電力化を図ることが可能となる。
【0119】
(第4の実施形態)
図22は、本発明の第4の実施形態に係るデジタル画素の構成例を示す回路図である。
【0120】
本第4の実施形態に係る固体撮像装置10Cが、上述した第3の実施形態に係る固体撮像装置10Bと異なる点は、次のとおりである。
本第4の実施形態に係る固体撮像装置10Cでは、比較器221の出力はスイッチ素子SW220を介して列単位で配線された垂直信号線LSGN11に接続され、ドライバ222がメモリ部230Bの入力側の垂直信号線LSGN11に接続されている。
【0121】
本第4の実施形態において、比較器221は、ノイズ帯域幅を狭めるために垂直信号線LSGN11の寄生容量CPを使用する。
【0122】
本第4の実施形態によれば、上述した第1および第3の実施形態の効果と同様の効果を得ることができる。
【0123】
以上説明した固体撮像装置10,10A,10B,10Cは、デジタルカメラやビデオカメラ、携帯端末、あるいは監視用カメラ、医療用内視鏡用カメラなどの電子機器に、撮像デバイスとして適用することができる。
【0124】
図23は、本発明の実施形態に係る固体撮像装置が適用されるカメラシステムを搭載し
た電子機器の構成の一例を示す図である。
【0125】
本電子機器300は、図23に示すように、本実施形態に係る固体撮像装置10が適用可能なCMOSイメージセンサ310を有する。
さらに、電子機器300は、このCMOSイメージセンサ310の画素領域に入射光を導く(被写体像を結像する)光学系(レンズ等)20を有する。
電子機器00は、CMOSイメージセンサ310の出力信号を処理する信号処理回路(PRC)330を有する。
【0126】
信号処理回路330は、CMOSイメージセンサ310の出力信号に対して所定の信号処理を施す。
信号処理回路330で処理された画像信号は、液晶ディスプレイ等からなるモニタに動画として映し出し、あるいはプリンタに出力することも可能であり、またメモリカード等の記録媒体に直接記録する等、種々の態様が可能である。
【0127】
上述したように、CMOSイメージセンサ310として、前述した固体撮像装置10,10A,10Bを搭載することで、高性能、小型、低コストのカメラシステムを提供することが可能となる。
そして、カメラの設置の要件に実装サイズ、接続可能ケーブル本数、ケーブル長さ、設置高さなどの制約がある用途に使われる、たとえば、監視用カメラ、医療用内視鏡用カメラなどの電子機器を実現することができる。
【符号の説明】
【0128】
10,10A,10B,10C・・・固体撮像装置、20・・・画素部、PD1・・・フォトダイオード、TG1-Tr・・・転送トランジスタ、RST1-Tr・・・リセットトランジスタ、SF1-Tr・・・ソースフォロワトランジスタ、IC1-Tr・・・カレントトランジスタ、CG1-Tr・・・蓄積トランジスタ、CS1・・・蓄積キャパシタ、FD1・・・フローティングディフュージョン、CC1・・・結合キャパシタ、200,220A,220B,220C・・・デジタル画素、210,210A・・・光電変換読み出し部、211,211A・・・出力バッファ部、220・・・AD変換部、221・・・比較器、222・・・ドライバ、230,230A.230B・・・メモリ部、30・・・垂直走査回路、40・・・出力回路、50・・・タイミング制御回路、60・・・読み出し部、300・・・電子機器、310・・・CMOSイメージセンサ、320・・・光学系、330・・・信号処理回路(PRC)。
図1
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