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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-02
(45)【発行日】2022-02-10
(54)【発明の名称】布類展開装置
(51)【国際特許分類】
   D06F 67/04 20060101AFI20220203BHJP
【FI】
D06F67/04
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018017998
(22)【出願日】2018-02-05
(65)【公開番号】P2019134835
(43)【公開日】2019-08-15
【審査請求日】2020-12-09
(73)【特許権者】
【識別番号】502407130
【氏名又は名称】株式会社プレックス
(74)【代理人】
【識別番号】110001704
【氏名又は名称】特許業務法人山内特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】出上 弘幸
(72)【発明者】
【氏名】林田 誉生
(72)【発明者】
【氏名】加藤 信治
【審査官】渡邉 洋
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-085712(JP,A)
【文献】特開2004-089473(JP,A)
【文献】特開2007-092255(JP,A)
【文献】特開2011-036312(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0073881(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D06F67/00-67/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
布類の一辺の両端角部を把持し、該布類を吊り下げる一対の展張チャックと、
前記一対の展張チャックを個別に横行させる横行機と、を備え、
前記一対の展張チャックの横行方向に沿って受取位置と受渡位置と超過位置とがこの順に設定されており、
前記一対の展張チャックは、それらの中間位置を前記受取位置に配置して前記布類を把持してから、それらの間隔を広げて該布類を展開し、該中間位置を前記受渡位置に配置して該布類を開放し、
前記一対の展張チャックが前記布類を把持してから開放するまでの過程において、該一対の展張チャックの前記中間位置は、前記受取位置から前記超過位置まで移動した後、前記超過位置から前記受渡位置まで移動して停止する
ことを特徴とする布類展開装置。
【請求項2】
前記一対の展張チャックは、前記中間位置を基準として前記受渡位置まで横行した後、前記間隔を広げて前記布類を展開する
ことを特徴とする請求項1記載の布類展開装置。
【請求項3】
前記一対の展張チャックは、前記中間位置を基準として前記超過位置から前記受渡位置まで横行すると同時に、前記間隔を広げて前記布類を展開する
ことを特徴とする請求項1記載の布類展開装置。
【請求項4】
前記一対の展張チャックは、前記中間位置を前記受取位置に配置した状態から前記間隔を広げて前記布類を展開した後、該中間位置を基準として前記超過位置まで横行する
ことを特徴とする請求項1記載の布類展開装置。
【請求項5】
前記一対の展張チャックは、前記中間位置を基準として前記受取位置から前記超過位置まで横行すると同時に、前記間隔を広げて前記布類を展開する
ことを特徴とする請求項1記載の布類展開装置。
【請求項6】
前記横行機の動作を制御する制御部と、
前記制御部に前記布類の種類を入力する入力部と、を備え、
前記制御部は、
前記布類の種類ごとに、前記受渡位置と前記超過位置との間の超過距離が記憶されており、
前記入力部から入力された前記布類の種類に対応する前記超過距離に基づき、前記超過位置を設定する
ことを特徴とする請求項1、2、3、4または5記載の布類展開装置。
【請求項7】
前記横行機の動作を制御する制御部と、
前記制御部に前記布類の種類を入力する入力部と、を備え、
前記制御部は、
前記布類の種類ごとに、前記一対の展張チャックの横行速度が記憶されており、
前記入力部から入力された前記布類の種類に対応する前記横行速度で前記一対の展張チャックを横行させる
ことを特徴とする請求項1、2、3、4または5記載の布類展開装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、布類展開装置に関する。さらに詳しくは、本発明は、洗濯済みのシーツ、包布(2枚生地の布団カバー)、枕カバー、タオル、テーブルクロスなどの布類を展開し、次工程の処理装置に投入するための布類展開装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ホテル、病院などでは大量にシーツが使用される。使用済みのシーツはランドリー工場で洗濯、アイロンがけされ、再度ホテル、病院などで使用される。ランドリー工場では、シーツなどの布類を洗濯した後、ロールアイロナーでアイロンがけしたり、布類折畳装置で折り畳んだりする作業が行なわれる。これらの処理装置に布類を供給するには、予め布類を展開する必要がある。布類を展開する作業を作業員が行う場合、作業に多大な時間と労力が必要である。そこで、近年では、布類展開装置を用いてこの作業を行っている。
【0003】
特許文献1に開示された布類展開装置は、概略つぎのように構成されている。
布類展開装置の左右両側に投入部が設けられている。投入部のクランプに布類が取り付けられると、クランプが上昇する。布類はクランプから左右一対のキャリッジに受け渡される。一対のキャリッジは布類を吊り下げた状態で装置中央まで横行した後、左右に開くように横行する。これにより、布類は装置中央において四角形に展開される。展開後の布類はその下部が気流成形部に挿入される。気流成形部内の気流により布類の皺が除去される。その後、布類は後続の処理装置に向けて排出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2013-215361号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記布類展開装置に長尺の布類を投入すると、キャリッジに吊り下げられた布類の裾が装置を設置している床面Gに達することがある。この場合、布類を吊り下げたキャリッジを横行させると、布類は裾を床面Gに擦った状態で移動する。そのため、キャリッジが布類の受け取り位置から装置中央まで横行したとしても、布類の裾は受け取り位置寄りに残った状態となる。そうすると、その後一対のキャリッジが左右に開くと、布類の展開に偏りが生じる。
【0006】
このように布類が偏って展開すると、布類展開装置から排出された布類に皺が残ることがある。また、偏って展開した布類の皺を気流成形部により除去するには、気流成形部における処理時間を長くする必要がある。そうすると、布類一枚当たりに要する処理時間が長くなり、布類展開装置の処理効率が低下する。
【0007】
本発明は上記事情に鑑み、布類を偏りなく展開できる布類展開装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1発明の布類展開装置は、布類の一辺の両端角部を把持し、該布類を吊り下げる一対の展張チャックと、前記一対の展張チャックを個別に横行させる横行機と、を備え、前記一対の展張チャックの横行方向に沿って受取位置と受渡位置と超過位置とがこの順に設定されており、前記一対の展張チャックは、それらの中間位置を前記受取位置に配置して前記布類を把持してから、それらの間隔を広げて該布類を展開し、該中間位置を前記受渡位置に配置して該布類を開放し、前記一対の展張チャックが前記布類を把持してから開放するまでの過程において、該一対の展張チャックの前記中間位置は、前記受取位置から前記超過位置まで移動した後、前記超過位置から前記受渡位置まで移動して停止する
ことを特徴とする。
第2発明の布類展開装置は、第1発明において、前記一対の展張チャックは、前記中間位置を基準として前記受渡位置まで横行した後、前記間隔を広げて前記布類を展開することを特徴とする。
第3発明の布類展開装置は、第1発明において、前記一対の展張チャックは、前記中間位置を基準として前記超過位置から前記受渡位置まで横行すると同時に、前記間隔を広げて前記布類を展開することを特徴とする。
第4発明の布類展開装置は、第1発明において、前記一対の展張チャックは、前記中間位置を前記受取位置に配置した状態から前記間隔を広げて前記布類を展開した後、該中間位置を基準として前記超過位置まで横行することを特徴とする。
第5発明の布類展開装置は、第1発明において、前記一対の展張チャックは、前記中間位置を基準として前記受取位置から前記超過位置まで横行すると同時に、前記間隔を広げて前記布類を展開することを特徴とする。
第6発明の布類展開装置は、第1、第2、第3、第4または第5発明において、前記横行機の動作を制御する制御部と、前記制御部に前記布類の種類を入力する入力部と、を備え、前記制御部は、前記布類の種類ごとに、前記受渡位置と前記超過位置との間の超過距離が記憶されており、前記入力部から入力された前記布類の種類に対応する前記超過距離に基づき、前記超過位置を設定することを特徴とする。
第7発明の布類展開装置は、第1、第2、第3、第4または第5発明において、前記横行機の動作を制御する制御部と、前記制御部に前記布類の種類を入力する入力部と、を備え、前記制御部は、前記布類の種類ごとに、前記一対の展張チャックの横行速度が記憶されており、前記入力部から入力された前記布類の種類に対応する前記横行速度で前記一対の展張チャックを横行させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
第1~第5発明によれば、布類を吊り下げた一対の展張チャックが受渡位置を行き過ぎてから戻って来るので、布類の裾を受渡位置に引き寄せられる。これにより布類の姿勢を直すことができ、布類を偏りなく展開できる。
第6発明によれば、超過距離を布類に対して適切な距離に設定できるので、布類の裾を受渡位置に近づけることができる。
第7発明によれば、展張チャックの横行速度を布類に対して適切な速度に設定できるので、布類の裾を受渡位置に近づけることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の第1実施形態に係る布類展開装置の正面図である。
図2図1の布類展開装置の側面図である。
図3図1の布類展開装置の正面図である。ただし、中継部を省略している。
図4】第1実施形態における展開動作の工程(1)、(2)の説明図である。
図5】第1実施形態における展開動作の工程(3)、(4)の説明図である。
図6】第1実施形態における展開動作の工程(5)の説明図である。
図7】第2実施形態における展開動作の工程(1)、(2)の説明図である。
図8】第3実施形態における展開動作の工程(3)、(4)の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
つぎに、本発明の実施形態を図面に基づき説明する。
〔第1実施形態〕
本発明の第1実施形態に係る布類展開装置1は、洗濯済みのシーツ、包布(2枚生地の布団カバー)、枕カバー、タオル、テーブルクロスなどの大形の方形状布類Cを展開し、ロールアイロナーなどの次工程装置に供給するための装置である。本明細書では、布類展開装置1の前後・左右・上下方向を図1および図2に示すように定義する。
【0012】
(基本構成)
つぎに、布類展開装置1の基本構成を動作と共に説明する。
図1および図2に示すように、布類展開装置1は機枠10を備えている。また、布類展開装置1は、以下に説明する各種装置の動作を制御する制御部11を備えている。制御部11は、CPU、メモリなどで構成されたコンピュータである。
【0013】
機枠10には入力部12が設けられている。入力部12は各種のスイッチ、タッチパネルなどで構成されている。作業員が入力部12を操作することで、布類展開装置1で処理する布類Cの種類、例えば大きさ、生地を入力できる。布類Cの種類を特定する情報は入力部12から制御部11に入力される。制御部11は布類Cの種類に応じて各種装置の動作、パラメータなどを変更する。
【0014】
機枠10の前面には作業員が布類Cを投入する投入部20が設けられている。投入部20は、布類Cを把持する投入チャック21と、投入チャック21を昇降させる昇降機22とからなる。昇降機22は本体部22aと、昇降部22bとからなる。昇降部22bは本体部22aに沿って昇降可能である。投入チャック21を支持するチャックベース23が昇降部22bに固定されている。
【0015】
チャックベース23は人の肩幅程度の幅を有している。チャックベース23の左右両端部に、それぞれ一対の投入チャック21、21が設けられている。布類Cの一辺の両端角部が、それぞれ一対の投入チャック21、21に把持される。
【0016】
昇降機22の駆動により、投入チャック21は、作業員が布類Cを投入チャック21に取り付ける投入位置(図2における実線)と、最上端まで上昇した上昇位置(図2における二点鎖線)との間で昇降する。作業員が手作業で布類Cを投入チャック21に取り付けると、昇降機22は投入チャック21とともに布類Cを上昇させる。
【0017】
布類展開装置1に備えられる投入部20の数は特に限定されず、1つでもよいし複数でもよい。本実施形態では、投入部20が4基設けられており、いずれの投入部20からでも布類Cを投入できるようになっている。
【0018】
布類展開装置1は中継チャック30を備えている。中継チャック30の数は投入部20の数と同数である。一つの投入部20に対して一つの中継チャック30が設けられている。本実施形態では、中継チャック30が4基設けられている。中継チャック30は上昇位置まで上昇した投入チャック21の背後に配置されている。中継チャック30はそれに対応する投入部20から布類Cを受け取り、その布類Cを展張部40に受け渡す。
【0019】
中継チャック30の背後には布類Cを展開する展張部40が設けられている。図3に示すように、展張部40は、布類Cの一辺の両端角部を把持する一対の展張チャック41、41と、一対の展張チャック41、41を個別に横行させる横行機42とからなる。横行機42は、例えば、各展張チャック41を案内するレールと、展張チャック41に接続された無端チェーンと、無端チェーンを駆動するサーボモータとからなる。各展張チャック41は布類展開装置1が設置された床面Gから所定の高さにおいて水平方向(左右方向)に横行する。また、各展張チャック41は中継チャック30の背後において横行する。
【0020】
図2に示すように、作業員が手作業で布類Cを投入チャック21に取り付けると、投入チャック21は布類Cを把持したまま上昇する。投入チャック21が上昇位置まで上昇すると、投入チャック21から中継チャック30に布類Cが受け渡される。その後、中継チャック30から展張チャック41、41に布類Cが受け渡される。なお、投入チャック21から直接展張チャック41、41に布類Cが受け渡される構成としてもよい。すなわち、中継チャック30はなくてもよい。
【0021】
その後、一対の展張チャック41、41が左右に開くように横行することで、布類Cは展開状態で吊り下げられる。展張チャック41、41の動作は後に詳述する。
【0022】
機枠10の下部には、整形ダクト51と、整形ダクト51に接続されたブロワー52とが設けられている。布類展開装置1は布類Cの両端角部を展張チャック41、41で把持しつつ、布類Cの下方部分を整形ダクト51内に吸引する。整形ダクト51内の気流により布類Cの皺が除去される。
【0023】
展張部40の下方には、前後進可能なバキュームボックス61が配置されている。バキュームボックス61の下方には、一次コンベア62が配置されている。一次コンベア62の搬送面の下方にはバキュームボックス63が配置されている。一次コンベア62の後方には、二次コンベア64が接続されている。
【0024】
整形ダクト51による皺除去処理の後、バキュームボックス61を前進させて布類Cに接触させるとともに、展張チャック41、41を開くと、布類Cの上端縁がバキュームボックス61に吸着される。つぎに、バキュームボックス61を後進させると、布類Cの上端縁がバキュームボックス61から一次コンベア62に乗り移る。この際、バキュームボックス63は作動した状態であり、一次コンベア62に布類Cが吸着される。一次コンベア62と二次コンベア64の駆動により、布類Cが後方に送られる。これにより、展開された布類Cは次工程装置に供給される。
【0025】
(展開動作)
つぎに、展張チャック41、41の展開動作を説明する。
なお、以下では一番右側の投入部20に布類Cが投入された場合を例に説明する。他の投入部20に布類Cが投入された場合も同様の動作である。
【0026】
図3に示すように、布類展開装置1には展張チャック41、41の横行方向(布類展開装置1の左右方向)に沿って、受取位置RP、受渡位置DP、および超過位置EPが設定されている。
【0027】
受取位置RPは展張チャック41、41が布類Cを把持するときに基準となる位置である。一対の展張チャック41、41は、それらの間隔(以下、「チャック間隔」と称する)を所定の受取間隔とするとともに、それらの中間位置(以下、「チャック中間位置」と称する。)を受取位置RPに配置する。この状態で、展張チャック41、41は前工程機から布類Cを受け取る。ここで、本実施形態において前工程機は中継チャック30である。展張チャック41、41が投入部20から直接布類Cを受け取る構成の場合、前工程機は投入部20である。受取位置RPは布類Cが投入された投入部20、またはその投入部20に対応する中継チャック30の中心位置である。
【0028】
受渡位置DPは展張チャック41、41が布類Cを開放するときに基準となる位置である。一対の展張チャック41、41は、チャック間隔を広げて布類Cが展開する展開間隔とするとともに、チャック中間位置を受渡位置DPに配置する。この状態で、展張チャック41、41は布類Cを後工程機に受け渡す。ここで、本実施形態において後工程機はバキュームボックス61である。1レーン構成、すなわち、布類Cを一列にして排出する布類展開装置1の場合、通常、受渡位置DPは布類展開装置1の左右中心位置である。複数レーン構成、すなわち、布類Cを複数列にして排出する布類展開装置1の場合、受渡位置DPは各レーンの中心位置である。
【0029】
超過位置EPは受渡位置DPからみて受取位置RPとは反対側の位置である。すなわち、受取位置RP、受渡位置DP、および超過位置EPは、展張チャック41、41の横行方向に沿ってこの順に並んでいる。超過位置EPと受渡位置DPとの間の距離を「超過距離」と称する。超過距離は布類Cに対して適切な値に設定される。
【0030】
制御部11は展張チャック41、41および横行機42を概略以下の手順で動作させる。
まず、展張チャック41、41はチャック中間位置を受取位置RPに配置して布類Cを把持する。つぎに、展張チャック41、41はチャック間隔を広げて布類Cを展開し、チャック中間位置を受渡位置DPに配置して布類Cを開放する。
【0031】
展張チャック41、41が布類Cを把持してから開放するまでの過程を、図4図6に基づき詳説する。なお、図4図6における(1)~(5)は、それぞれ以下の説明の(1)~(5)に対応する。
【0032】
(1)布類受取
まず、一対の展張チャック41、41はチャック間隔を受取間隔とするとともに、チャック中間位置を受取位置RPに配置する。この状態で、展張チャック41、41は布類Cを把持する。すなわち、展張チャック41、41は前工程機から布類Cを受け取る。
【0033】
一対の展張チャック41、41は布類Cの一辺の両端角部を把持する。すなわち、一方の展張チャック41は布類Cの一方の角部を把持する。他方の展張チャック41は布類Cの他方の角部を把持する。布類Cは展張チャック41、41により吊り下げられる。布類Cが展張チャック41と床面Gとの距離よりも長い場合、布類Cの裾は床面Gに達した状態となる。
【0034】
(2)受渡位置通過
つぎに、展張チャック41、41は受渡位置DPに向かって横行する。ここで、布類Cの裾が床面Gに達している場合、展張チャック41、41を横行させると、布類Cは裾を床面Gに擦った状態で移動する。そのため、展張チャック41、41が受渡位置DPに到達したとしても、布類Cの裾は受取位置RP寄りに残った状態となる。すなわち、布類Cは斜めに傾いた状態となる。また、展張チャック41、41とともに移動している布類Cが、中継チャック30に吊り下げられた他の布類Cに絡むことがある。この場合にも、布類Cは斜めに傾いた状態となる。
【0035】
従来の布類展開装置は展張チャック41、41が受渡位置DPに到達した直後に、チャック間隔を広げて布類Cを展開していた。布類Cが斜めに傾いた状態から布類Cを展開するため、布類Cが左右均等に展開されないことがあった。これに対して、本実施形態の展張チャック41、41は、受渡位置DPを通過して、さらに横行する。
【0036】
(3)超過位置到達
展張チャック41、41はチャック中間位置を基準として受取位置RPから超過位置EPまで横行する。展張チャック41、41が超過位置EPに到達すると、布類Cの裾は受渡位置DPの近くに引き寄せられる。展張チャック41、41はチャック中間位置が超過位置EPに到達した後、受渡位置DPに向かって逆方向に横行する。
【0037】
(4)受渡位置到達
展張チャック41、41はチャック中間位置を基準として超過位置EPから受渡位置DPまで横行する。このように、展張チャック41、41が受渡位置DPを行き過ぎてから戻って来るので、布類Cの裾を受渡位置DPに引き寄せられる。これにより布類Cの姿勢を真っ直ぐに直すことができる。
【0038】
なお、展張チャック41、41が横行している間、チャック間隔は受取間隔と同じでもよいし、広くてもよいし、狭くてもよい。
【0039】
(5)布類展開
その後、展張チャック41、41は左右に開くように横行する。すなわち、展張チャック41、41はチャック間隔を広げて布類Cを展開する。この際、チャック中間位置は受渡位置DPに配置されたままである。これにより、布類Cは機枠10の前面において展開状態で吊り下げられる。その後、展張チャック41、41は布類Cを開放し、布類Cを後工程機に受け渡す。
【0040】
布類Cの姿勢が直されているので、布類Cを左右偏りなく展開できる。そのため、布類展開装置1から排出された布類Cに皺が残ることを抑制できる。整形ダクト51における皺除去処理の時間を短くしても、布類Cの皺を十分に除去できる。布類C一枚当たりに要する処理時間を短くでき、布類展開装置1の処理効率が向上する。
【0041】
なお、工程(4)と工程(5)とを同時に行なってもよい。すなわち、展張チャック41、41は、チャック中間位置を基準として超過位置EPから受渡位置DPまで横行すると同時に、チャック間隔を広げて布類Cを展開する。この場合でも、布類展開装置1は布類Cを左右偏りなく展開できる。
【0042】
ところで、超過位置EPと受渡位置DPとの間の距離である超過距離は、布類Cに対して適切な距離に設定することが好ましい。具体的には、展張チャック41、41が超過位置EPに到達したときに、布類Cの裾の中心が受渡位置DPの近傍まで引き寄せられるように、超過距離を設定することが好ましい。したがって、超過距離は主に布類Cの辺のうち展張チャック41、41から吊り下げられる辺の長さに基づいて設定される。
【0043】
好ましくは、超過距離は受取位置RPと受渡位置DPとの間の距離に基づいて設定される。受取位置RPと受渡位置DPとの間の距離が長いほど、布類Cの裾が受渡位置DPから離れた位置に残りやすい。そこで、受取位置RPと受渡位置DPとの間の距離が長いほど超過距離を長く設定することが好ましい。
【0044】
受渡位置DPが布類展開装置1の左右中心位置であるとする。左右外側に配置された投入部20に布類Cが投入された場合、受取位置RPと受渡位置DPとの間の距離は長くなる。一方、左右内側に配置された投入部20に布類Cが投入された場合、受取位置RPと受渡位置DPとの間の距離は短くなる。そこで、外側の投入部20に布類Cが投入された場合の超過距離を、内側の投入部20に布類Cが投入された場合の超過距離よりも長く設定することが好ましい。
【0045】
また、展張チャック41、41の横行速度も布類Cに対して適切な速度に設定することが好ましい。特に、展張チャック41、41が受取位置RPから超過位置EPまで横行するときの速度は、布類Cの裾の引き寄せ具合に影響する。横行速度が速いほど、布類Cの裾を走行方向に引き寄せやすくなる。
【0046】
好ましくは、横行速度は受取位置RPと受渡位置DPとの間の距離に基づいて設定される。受取位置RPと受渡位置DPとの間の距離が長いほど横行速度を速く設定することが好ましい。具体的には、外側の投入部20に布類Cが投入された場合の横行速度を、内側の投入部20に布類Cが投入された場合の横行速度よりも速く設定することが好ましい。
【0047】
布類展開装置1を以下のように構成すれば、超過距離および横行速度の設定変更が容易となる。
制御部11には予め布類Cの種類ごとに超過距離および横行速度が記憶されている。作業員が入力部12を用いて布類展開装置1で処理する布類Cの種類を設定すると、その情報が入力部12から制御部11に入力される。制御部11は入力された布類Cの種類に対応する超過距離に基づいて超過位置EPを設定する。また、制御部11は入力された布類Cの種類に対応する横行速度で展張チャック41、41を横行させる。
【0048】
以上の構成であれば、超過距離を布類Cに対して適切な距離に設定できる。そのため、布類Cの裾を受渡位置DPに近づけることができる。また、展張チャック41、41の横行速度を布類Cに対して適切な速度に設定できる。そのため、布類Cの裾を受渡位置DPに近づけることができる。しかも、布類展開装置1に投入する布類Cの種類を変更するときに、設定変更を容易に行える。
【0049】
なお、布類展開装置1が複数の投入部20を有する場合、布類展開装置1を以下のように構成してもよい。制御部11には予め布類Cの種類ごと、投入部20の位置ごとに超過距離および横行速度が記憶されている。制御部11は入力部12から入力された布類Cの種類に基づいて、複数の投入部20それぞれに対応する超過位置EPを設定する。また、制御部11は入力部12から入力された布類Cの種類に基づいて、複数の投入部20それぞれに対応する横行速度を設定する。
【0050】
このような構成とすれば、超過距離および横行速度を受取位置RPと受渡位置DPとの間の距離に基づいて設定できる。
【0051】
〔第2実施形態〕
展張チャック41、41の展開動作をつぎの手順としてもよい。
展張チャック41、41が布類Cを把持してから開放するまでの過程を、図7図8に示す。なお、図7図8における(1)~(4)は、それぞれ以下の説明の(1)~(4)に対応する。
【0052】
(1)布類受取
まず、一対の展張チャック41、41はチャック間隔を受取間隔とするとともに、チャック中間位置を受取位置RPに配置する。この状態で、展張チャック41、41は布類Cを把持する。
【0053】
(2)布類展開
つぎに、展張チャック41、41はチャック中間位置を受取位置RPに配置した状態からチャック間隔を広げて布類Cを展開する。この際、受取位置RPからみて受渡位置DP側に配置された展張チャック41は受渡位置DPに向かって横行する。受取位置RPからみて受渡位置DPとは反対側に配置された展張チャック41は、横行しなくてもよいし、受渡位置DPとは反対側に向かって横行してもよい。
【0054】
布類Cの裾が床面Gに達している場合、展張チャック41、41のチャック間隔を広げても、布類Cの裾が受取位置RP寄りに残った状態となる。すなわち、布類Cは綺麗な四角形に展開されない。
【0055】
(3)超過位置到達
展張チャック41、41は、チャック間隔を広げた後、チャック中間位置を基準として超過位置EPまで横行する。展張チャック41、41が超過位置EPに到達すると、布類Cの裾の中心は受渡位置DPの近くに引き寄せられる。
【0056】
(4)受渡位置到達
つぎに、展張チャック41、41はチャック中間位置を基準として超過位置EPから受渡位置DPまで横行する。このように、展張チャック41、41が受渡位置DPを行き過ぎてから戻って来るので、布類Cの裾の中心を受渡位置DPに引き寄せることができる。これにより布類Cは左右偏りなく展開される。
【0057】
なお、工程(2)と工程(3)とを同時に行なってもよい。すなわち、展張チャック41、41は、チャック中間位置を基準として受取位置RPから超過位置EPまで横行すると同時に、チャック間隔を広げて布類Cを展開する。この場合でも、布類Cは左右偏りなく展開される。
【0058】
〔その他の実施形態〕
展張チャック41、41の展開動作において、チャック間隔を広げる動作はいずれのタイミングで行なってもよい。チャック間隔を広げる動作を行なうタイミングとして、以下(i)~(v)の5つのタイミングが考えられる。これらのいずれか一のタイミングでチャック間隔を広げる動作を行なってもよいし、これらのうち複数のタイミングで段階的にチャック間隔を広げてもよい。
(i)展張チャック41、41が超過位置EPに向かって横行する前
(ii)展張チャック41、41が受取位置RPから超過位置EPまで横行する間
(iii)展張チャック41、41が超過位置EPに到達した後、受渡位置DPに向かって横行する前
(iv)展張チャック41、41が超過位置EPから受渡位置DPまで横行する間
(v)展張チャック41、41が受渡位置DPに到達した後
【符号の説明】
【0059】
1 布類展開装置
11 制御部
12 入力部
20 投入部
30 中継チャック
40 展張部
41 展張チャック
42 横行機
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8