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  • 特許-複装式カッター 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-02
(45)【発行日】2022-02-10
(54)【発明の名称】複装式カッター
(51)【国際特許分類】
   E01C 23/09 20060101AFI20220203BHJP
【FI】
E01C23/09 A
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2018041712
(22)【出願日】2018-03-08
(65)【公開番号】P2019157389
(43)【公開日】2019-09-19
【審査請求日】2021-03-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000208204
【氏名又は名称】大林道路株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】512155836
【氏名又は名称】ユナイト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100197848
【弁理士】
【氏名又は名称】石塚 良一
(72)【発明者】
【氏名】井手 義勝
(72)【発明者】
【氏名】小嶋 匠
(72)【発明者】
【氏名】小田 和功
(72)【発明者】
【氏名】荒川 芳夫
【審査官】彦田 克文
(56)【参考文献】
【文献】特開昭63-284302(JP,A)
【文献】実開昭60-122461(JP,U)
【文献】特開平11-810(JP,A)
【文献】特表2018-505982(JP,A)
【文献】実開昭60-63637(JP,U)
【文献】特開2017-190562(JP,A)
【文献】実開昭57-85003(JP,U)
【文献】特開昭59-55902(JP,A)
【文献】実公昭53-36744(JP,Y2)
【文献】実開平2-136109(JP,U)
【文献】登録実用新案第3032626(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01C 23/09
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
構築物の表面に複数の切削溝を同時に切削することが可能な複装式カッターであって、
複数のカッター装置と、当該複数のカッター装置に駆動力を与える原動機とを少なくとも有し、
前記複数のカッター装置は、
それぞれ単一のカッターブレードと切削操作レバーとを備え、当該切削操作レバーの操作に応じて、前記カッターブレードを前記構築物の表面に対して切削可能な位置と切削不可能な位置とに切り替え可能である
ことを特徴とする複装式カッター。
【請求項2】
さらに、前記原動機により回転駆動される単一の回転駆動軸部材を有し、
前記カッターブレードの回転軸に、前記回転駆動軸部材の駆動力を伝達する回転ベルトが架け渡される
請求項1に記載の複装式カッター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、構築物の表面に対し、カッター装置を選択的に動作させることにより、複数の切削溝を同時に切削可能とする複装式カッターに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、一般的にアスファルト舗装を含む舗装面に対して切削溝を切削する場合、図6(a)の特許文献1に開示された「カッター装置」のように、1台のカッターに対して1枚のカッターブレードが装着された切削機械を使用し、1回の切削作業で1本の切削溝の切削を行っていた。
【0003】
また、所謂グルービング工法においては、図6(b)の特許文献2に開示された「路面加工機」のように、単一の回転軸に複数のカッターブレードが設けられた切削機械を使用し、1回の切削作業で同時に複数本の切削溝の切削を行っていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】実開平05-073010号公報
【文献】特開2017-190562号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、複数の切削溝を切削する必要がある場合、前述した従来の1枚のカッターブレードを有する切削機械では、切削機械1台で切削できる日当りの施工量は限られており、施工する切削溝が多い場合は切削機械を複数台用意する必要があることから、施工コストの増大につながり、特に乾式カッターの場合はそれが顕著となっていた。
【0006】
また、前述した特許文献2に開示された所謂グルービング工法において使用される切削機械のカッターブレードは、単一の回転軸に複数のカッターブレードが平行に所定間隔で固定して設けられているため、舗装面等の切削開始位置から終了位置まで、固定されたカッターブレードの数に対応する複数の切削溝が全て切削されることとなる。したがって、例えば、切削開始位置や終了位置がそれぞれ異なる切削溝を切削する必要がある場合には、当該グルービング工法において使用されるような切削機械を利用することができず、結果的に、特許文献1に開示されたような従来の単一のカッターブレードを備えた切削機械によって、1本1本の切削溝を、時間と手間をかけて切削するしか方法がなかった。
【0007】
そこで、本願発明は、構築物の表面に対し、カッター装置を選択的に動作させることにより、任意の位置で複数の切削溝の切削を開始及び終了させることが可能な複装式カッターを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)構築物の表面(舗装面200)に複数の切削溝(切削溝210)を同時に切削することが可能な複装式カッター(複装式カッター100)であって、複数のカッター装置(カッター装置10a、10b、10c)と、当該複数のカッター装置に駆動力を与える原動機(原動機20)とを少なくとも有し、前記複数のカッター装置は、それぞれ単一のカッターブレード(カッターブレード13)と切削操作レバー(可動レバー11a、11b、11c)とを備え、当該切削操作レバーの操作に応じて、前記カッターブレードを前記構築物の表面に対して切削可能な位置と切削不可能な位置とに切り替え可能であることを特徴とする複装式カッター。
【0009】
上記(1)の構成によれば、本発明の複装式カッター(複装式カッター100)に複数のカッター装置(カッター装置10a、10b、10c)を設け、さらに、各カッター装置(カッター装置10a、10b、10c)に設けられた切削操作レバー(可動レバー11a、11b、11c)の操作に応じ、各カッター装置(カッター装置10a、10b、10c)を構築物の表面に対して切削可能な位置と切削不可能な位置とに切り替えることができるので、例えば、切削溝(切削溝210)の切削開始位置や終了位置が互いに異なる複数の切削溝(切削溝210)を同時に切削することが可能となる。このような構成により、従来の切削機械による施工時間よりも大幅に施工時間の短縮を図ることができるほか、切削機械の数を増やすことなく効率的に複数の切削溝(切削溝210)切削することが可能となる。
【0010】
(2)さらに、前記原動機(原動機20)により回転駆動される単一の回転駆動軸部材(回転駆動軸22)を有し、前記カッターブレード(カッターブレード13)の回転軸に、前記回転駆動軸部材の駆動力を伝達する回転ベルト(カッターベルト24)が架け渡される上記(1)に記載の複装式カッター。
【0011】
上記(2)の構成によれば、原動機(原動機20)により回転駆動される単一の回転駆動軸部材(回転駆動軸22)により、各カッター装置(カッター装置10a、10b、10c)のカッターブレード(カッターブレード13)に駆動力を伝達することができるので、複装式カッター(複装式カッター100)自体を大型化することなく、施工性に優れたものとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明における、複装式カッターの全体斜視図である。
図2】本発明における、複装式カッターの側方からの斜視図である。
図3】本発明における、複装式カッターの駆動部側面斜視図である。
図4】本発明における、複装式カッターの駆動部正面図である。
図5】本発明における、複装式カッターの適用例を示す説明図である。
図6】従来の切削機械を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しつつ、本発明の「複装式カッター」について、実施例に基づいて説明する。
【0014】
(複装式カッター100の全体構成)
本発明の複装式カッター100の一実施例として、図1には複装式カッター100の全体斜視図が示されている。図示されるように、本実施例の複装式カッター100は、4つの車輪43とハンドル40、切削中に左右に回転することにより、複装式カッター100を前後進させる前後進回転ハンドル41を備えており、作業員の操作によって、当該複装式カッター100を移動させて所定の場所に切削溝210を切削できるように構成されている。
【0015】
さらに、本発明の複装式カッター100は、個別に切削可能な複数のカッター装置を備えることを最大の特徴点としており、本実施例では図1等に示されるように、3つのカッター装置10a、10b、10cを備えている。そして、各カッター装置(10a、10b、10c)は可動レバー(11a、11b、11c)と連結されており、当該可動レバー(11a、11b、11c)の係止片12が係合部48に引っ掛けられている状態において、各カッター装置(10a、10b、10c)は図1に示されるように切削対象面から上方に離間した上昇位置に配置されるように構成されている。
【0016】
また、本実施例の複装式カッター100には、カッターブレード13に回転力を与える原動機20が備えられており、例えば、図4の正面図に図示されるように、原動機ベルト21を介して回転駆動軸22を回転させるように構成されている。そして、当該回転駆動軸22には、各カッター装置(10a、10b、10c)に備えられたカッターブレード13に回転力を与えるためのカッターベルト24がそれぞれ接続されている。
【0017】
また、本実施例の複装式カッター100は切削溝210を切削する際に発生する粉塵を回収するため、集塵部材44を各カッター装置(10a、10b、10c)の後方に設けており、当該集塵部材44に接続された集塵ホース45を経由して、図示しない集塵装置によって、切削時に生じる粉塵を回収することが可能となっている。
【0018】
(各カッター装置10a、10b、10cの構成)
次に、各カッター装置(10a、10b、10c)の構成について以下に説明する。各カッター装置(10a、10b、10c)は、図3及び図4に示されるように、それぞれ単一のカッターブレード13を備えており、当該カッターブレード13はブレードカバー102に覆われている。さらに、各カッターブレード13の回転軸部(図示略)には、回転駆動軸22からの回転力駆動伝達手段たるカッターベルト24が取り付けられ、ベルトカバー103により覆われている。
【0019】
また、図4等に示されるように、各ブレードカバー102の側面には、作業者に対し切削溝210の正確な切削位置が判るように切削ガイド101が設けられている。
【0020】
各カッター装置(10a、10b、10c)は、図3及び図4に示されるように、それぞれ軸支部49を中心に切削対象面となる構築物の表面に対して接近する位置と離間する位置とに変位可能に軸支されており、例えば、図2及び図3に示される状態においては、カッター装置10cが可動レバー11cの操作よって構築物の表面に接近した状態が図示されている。すなわち、各可動レバー(11a、11b、11c)は図2等に示されるようにスプリング14によって前方方向に付勢されており、可動レバー(11a、11b、11c)に設けられた係止片12と、係合部48との係止状態が作業者の操作によって解除されることにより、各カッター装置(10a、10b、10c)を構築物の表面に下降させ、切削溝210の切削が可能となっている。
【0021】
このような本発明の特徴的な構成により、切削溝210の切削開始位置や終了位置に応じて、適宜、作業員が各可動レバー(11a、11b、11c)を操作して各カッター装置(10a、10b、10c)を上げ下げすることにより、所望の位置で単数または複数の切削溝210を同時に切削することが可能となる。
【0022】
図5には、本実施例における複装式カッター100による切削溝210の切削方法の一例が示されている。例えば、図5に示されるように、切削溝形成端部位置220まで所定間隔の複数の切削溝210を構築物の表面200に切削する必要がある場合、複装式カッター100を矢印方向に走行させつつ、各カッター装置(10a、10b、10c)を構築物の表面200に降下させて切削溝210を切削する。そして、切削溝形成端部位置220にカッター装置10aが先に到達するので、当該カッター装置10aに連結された可動レバー11aを引き上げ、可動レバー11aに設けられた係止片12を係合部48に係止させてカッター装置10aを上昇させる。同様に、カッター装置10b、10cにおいても、順次、切削溝形成端部位置220まで切削が完了し次第、当該カッター装置10b、10cを上昇させて切削を終了する。
【0023】
(その他の実施形態)
本実施例における複装式カッター100の技術構成及び切削方法は上記したとおりであるが、さらに別の実施形態として種々の技術構成を加えることが可能である。
【0024】
上記実施例では、3つのカッター装置(10a、10b、10c)を備える複装式カッター100を例示して説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、2つ、または4つ以上のカッター装置を備えるように構成することも可能である。
【0025】
また、上記実施例では、1つの原動機20に単一の回転駆動軸22を備える複装式カッター100を例示して説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、原動機を複数にすることや、回転駆動軸を複数備えることも可能である。
【0026】
また、上記実施例では、各カッター装置(10a、10b、10c)はそれぞれ軸支部49に軸支され、複装式カッター100の左右方向には移動できない構成となっていたが、必ずしもこれに限られるものではなく、各カッター装置を単一の軸支部に軸支するとともに、左右方向に適宜移動できる構成とすることも可能である。このような構成によれば、種々の切削溝間隔に対応して、本発明の複装式カッター100を使用することが可能となり、さらなる施工の効率化やコスト削減を図ることが可能となる。
【0027】
また、上記実施例の複装式カッター100は、前後進回転ハンドル41を備えるものであったが、必ずしもこれに限られるものではなく、自走装置を備えるようにしてもよい。
【0028】
また、本発明の複装式カッター100は、舗装表面のほか、床スラブや種々の建築構造物、土木構造物の切削に利用可能であり、特に複数の切削溝を切削する場合に本発明の複装式カッター100は好適に使用することができる。
【0029】
以上、本発明の実施形態について図面にもとづいて説明したが、具体的な構成は、これらの実施形態に限定されるものではない。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。また、上記実施例に記載された具体的な材質、寸法形状等は本発明の課題を解決する範囲において、変更が可能である。
【符号の説明】
【0030】
10a カッター装置
10b カッター装置
10c カッター装置
11a 可動レバー
11b 可動レバー
11c 可動レバー
13 カッターブレード
20 原動機
22 回転駆動軸
24 カッターベルト
100 複装式カッター
200 構築物の表面
210 切削溝
図1
図2
図3
図4
図5
図6