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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-02
(45)【発行日】2022-02-10
(54)【発明の名称】内装材及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   E04F 15/16 20060101AFI20220203BHJP
   E04F 15/10 20060101ALI20220203BHJP
   E04F 13/07 20060101ALI20220203BHJP
   E04F 13/08 20060101ALI20220203BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20220203BHJP
   B32B 27/30 20060101ALI20220203BHJP
   B32B 27/20 20060101ALI20220203BHJP
【FI】
E04F15/16 A
E04F15/10 104E
E04F13/07 B
E04F13/08 E
B32B27/00 E
B32B27/30 101
B32B27/20 Z
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018048785
(22)【出願日】2018-03-16
(65)【公開番号】P2019157576
(43)【公開日】2019-09-19
【審査請求日】2020-07-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000222495
【氏名又は名称】東リ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001748
【氏名又は名称】特許業務法人まこと国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西山 知也
(72)【発明者】
【氏名】松元 務
(72)【発明者】
【氏名】森原 將史
(72)【発明者】
【氏名】若本 隆
【審査官】前田 敏行
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-007332(JP,A)
【文献】特開平04-176954(JP,A)
【文献】米国特許第05670237(US,A)
【文献】特公昭46-022880(JP,B1)
【文献】特開平02-155707(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04F 15/00-15/22
E04F 13/07、13/08
B32B 1/00-43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
塩化ビニル樹脂、着色剤及び充填剤を含むシート体を有し、
前記シート体の表面側には、着色された塩化ビニル樹脂粒子が凝集した部分が形成され、
前記凝集した部分の前記塩化ビニル樹脂粒子が、表出している部分の最大長さが50μm~200μmである塩化ビニル樹脂粒子を含み、
前記塩化ビニル樹脂粒子が凝集した部分に、凹部が形成され、前記塩化ビニル樹脂粒子よりも小さい充填剤微粒子が前記凹部の表面であって前記塩化ビニル樹脂粒子の表出している部分の周りに集まって付着されており、
前記充填剤微粒子が、炭酸カルシウムを含む、内装材。
【請求項2】
前記塩化ビニル樹脂粒子が、異なる色彩に着色された少なくとも2種類の塩化ビニル樹脂粒子を含み、前記充填剤微粒子が、前記それぞれの塩化ビニル樹脂粒子の表出している部分の周りに集まって付着されている、請求項1に記載の内装材。
【請求項3】
前記凝集した部分が、平面視で、前記充填剤微粒子が集まって付着した領域を海とし且つ前記塩化ビニル樹脂粒子の露出部を島とする海島構造を成している、請求項1または2に記載の内装材。
【請求項4】
前記凝集した部分において表出している塩化ビニル樹脂粒子が、次の(a)乃至(c)から選ばれる少なくとも1つの関係を満たしている、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の内装材。
(a)表出している部分の最大長さが50μm~100μmの範囲である塩化ビニル樹脂粒子が、1平方mmの中に16個以上存在する。
(b)表出している部分の最大長さが100μmを超え150μm以下の範囲である塩化ビニル樹脂粒子が、1平方mmの中に12個以上存在する。
(c)表出している部分の最大長さが150μmを超え200μm以下の範囲である塩化ビニル樹脂粒子が、1平方mmの中に8個以上存在する。
【請求項5】
前記シート体のみから又は前記シート体とその表面に積層された表面保護層とから構成されている、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の内装材。
【請求項6】
体積平均粒径が20μm~300μmの塩化ビニル樹脂粒子、その粒子よりも小さい炭酸カルシウムを含む充填剤微粒子、着色剤及び可塑剤を混合することによって、着色された塩化ビニル樹脂粒子の表面に、その粒子よりも小さい充填剤微粒子が点在されている原料粒子を製造する工程、
前記原料粒子を集めて加熱加圧してシート状に成形する工程、を有する内装材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微細な砂目調模様を有する内装材などに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建築物の床材、壁材、天井材などの建築物用の内装材として、いわゆる砂目調模様を有する樹脂製内装材が知られており、特に、床材として根強い人気がある。
ここで、内装材における砂目調模様は、チップやフレークでシートを形成する方法、或いは、透明な表面層にバックプリントを行うことによって砂目調模様をデザインする方法によって作製された、砂地のような模様をいう。砂目調模様を有する樹脂製内装材は、砂目調模様が樹脂材料で人工的に再現された内装材と言える。
このような砂目調模様を有する樹脂製内装材は、着色された塩化ビニル樹脂シートを粉砕し、この粉砕物を集めて圧延又は加圧することによって得られる(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第2533978号公報
【発明の概要】
【0004】
砂目調模様が再現された内装材は、砂地のような、微細な砂を撒いたような外観(微細な砂目調模様)を有し、看者に落ち着いた印象を与える。
しかしながら、砂目調模様を印刷で再現した場合、平面的な模様に見え、立体的な砂粒を有するような外観が得られない。
一方、特許文献1のように、樹脂シートの粉砕物を溶融させて圧延し、そのままシート状にする場合、粉砕物が溶融しすぎて立体的な砂粒を再現できないおそれがある。
また、塩化ビニルペースト樹脂に熱可塑性樹脂のチップやフレークを分散させ、それを基材に塗布した後、加熱しゲル化させることによってシートを形成する方法も考えられるが、チップやフレークが塩化ビニルペースト樹脂に埋没してしまい、立体的な砂粒を有するような外観を表現することは困難である。
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、恰も微細な砂を撒いたような立体的な外観を有する内装材及びその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の内装材は、塩化ビニル樹脂、着色剤及び充填剤を含むシート体を有し、前記シート体の表面側には、着色された塩化ビニル樹脂粒子が凝集した部分が形成され、前記凝集した部分の前記塩化ビニル樹脂粒子が、表出している部分の最大長さが50μm~200μmである塩化ビニル樹脂粒子を含み、 前記塩化ビニル樹脂粒子が凝集した部分に、凹部が形成され、前記塩化ビニル樹脂粒子よりも小さい充填剤微粒子が前記凹部の表面であって前記塩化ビニル樹脂粒子の表出している部分の周りに集まって付着されており、前記充填剤微粒子が、炭酸カルシウムを含む
【0007】
本発明の好ましい内装材は、前記塩化ビニル樹脂粒子が、異なる色彩に着色された少なくとも2種類の塩化ビニル樹脂粒子を含み、前記充填剤微粒子が、前記それぞれの塩化ビニル樹脂粒子の表出している部分の周りに集まって付着されている。
本発明の好ましい内装材は、前記凝集した部分が、平面視で、前記充填剤微粒子が集まって付着した領域を海とし且つ前記塩化ビニル樹脂粒子の露出部を島とする海島構造を成している。
本発明の好ましい内装材は、前記凝集した部分において表出している塩化ビニル樹脂粒子が、次の(a)乃至(c)から選ばれる少なくとも1つの関係を満たしている。
(a)表出している部分の最大長さが50μm~100μmの範囲である塩化ビニル樹脂粒子が、1平方mmの中に16個以上存在する。
(b)表出している部分の最大長さが100μmを超え150μm以下の範囲である塩化ビニル樹脂粒子が、1平方mmの中に12個以上存在する。
(c)表出している部分の最大長さが150μmを超え200μm以下の範囲である塩化ビニル樹脂粒子が、1平方mmの中に8個以上存在する。
本発明の好ましい内装材は、前記シート体のみから又は前記シート体とその表面に積層された表面保護層とから構成されている。
【0008】
本発明の別の局面によれば、内装材の製造方法を提供する。
本発明の内装材の製造方法は、体積平均粒径が20μm~300μmの塩化ビニル樹脂粒子、その粒子よりも小さい炭酸カルシウムを含む充填剤微粒子、着色剤及び可塑剤を混合することによって、着色された塩化ビニル樹脂粒子の表面に、その粒子よりも小さい充填剤微粒子が点在されている原料粒子を製造する工程、前記原料粒子を集めて加熱加圧してシート状に成形する工程、を有する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の内装材は、恰も微細な砂を撒いたような外観を有する。本発明によれば、立体的な砂粒を表現した意匠性の高い内装材を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の第1実施形態の内装材の一部省略平面図。
図2図1のII-II線で切断した断面図。
図3】本発明の第2実施形態の内装材の断面図。
図4】本発明の第3実施形態の内装材の断面図。
図5】本発明の第4実施形態の内装材の断面図。
図6】内装材のシート体の表面を拡大した平面図(図1のVI部の拡大平面図)。
図7図6のVII-VII線で切断した断面図。
図8】原料粒子の正面図。
図9】塩化ビニル樹脂粒子の正面図。
図10】内装材のシート体の製造装置の概略図。
図11】実施例で使用した塩化ビニル樹脂の拡大写真図。
図12】実施例で使用した炭酸カルシウムの拡大写真図。
図13】原料粒子の拡大写真図。
図14】シート体の表面の写真図。
図15】シート体の表面の任意の箇所の拡大写真図。
図16】シート体の表面に表出している塩化ビニル樹脂粒子を示す参考拡大写真図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明について、適宜図面を参照しつつ説明する。
本明細書において、平面視は、シート体(内装材)の表面に対して直交する方向から見ることをいい、平面視形状は、その方向から見たときの形状をいう。また、断面視形状は、シート体(内装材)を厚み方向で切断したときの形状をいう。
本明細書において、「下限値X~上限値Y」で表される数値範囲は、下限値X以上上限値Y以下を意味する。前記数値範囲が別個に複数記載されている場合、任意の下限値と任意の上限値を選択し、「任意の下限値~任意の上限値」を設定できるものとする。
【0012】
[内装材の概要]
図1及び図2において、本発明の内装材1は、塩化ビニル樹脂、着色剤及び充填剤を含むシート体2を有する。
本発明の内装材1は、図1に示すように、長尺帯状に形成されていてもよく、或いは、特に図示しないが、枚葉状に形成されていてもよい。前記長尺帯状は、1つの方向の長さが他の方向よりも十分に長い平面視略長方形状をいう。長尺帯状の内装材1は、例えば、第1方向の長さが1000mm~4000mmで、第2方向の長さが5m以上であり、好ましくは、第2方向の長さが10m以上である。なお、第1方向は、第2方向と直交する方向である。
前記枚葉状は、例えばタイル床材のような平面視で略矩形状などの略多角形状などの所定形状に形成されているものであり、一般に、積み重ねて保管・運搬できる形状をいう。枚葉状の内装材1は、例えば、第1方向の長さが200mm~1000mm、第2方向の長さが200mm~1000mmの略矩形状などが挙げられる。
本明細書において、形状の「略」は、本発明の属する技術分野において許容される形状を意味する。略長方形状、略正方形状、略矩形状などの「略」は、例えば、角部が面取りされている形状、辺の一部が僅かに膨らむ又は窪んでいる形状、辺が若干湾曲している形状などが含まれる。また、略楕円形状又は略円形状の「略」は、例えば、周の一部が僅かに膨らむ又は窪んでいる形状、周の一部が若干直線又は斜線とされた形状などが含まれる。
【0013】
図2は、第1実施形態の内装材を示し、図3は、第2実施形態の内装材を示し、図4は、第3実施形態の内装材を示し、図5は、第4実施形態の内装材を示す。
第2乃至第4実施形態の内装材の各平面図は、図1と同様であるので省略している。
図2において、第1実施形態の内装材1は、シート体2のみから構成されている。換言すると、この内装材1は、塩化ビニル樹脂、着色剤及び充填剤を含むシート体2のみからなる単層構造であり、シート体2の表面及び裏面が、内装材1の最表面及び最裏面を成している。
図3において、第2実施形態の内装材1は、塩化ビニル樹脂、着色剤及び充填剤を含むシート体2と、前記シート体2の表面に積層された表面保護層3と、から構成されている。この内装材1は、表面保護層3の表面が内装材1の最表面を成し、シート体2の裏面が内装材1の最裏面を成している。
図4において、第3実施形態の内装材1は、塩化ビニル樹脂、着色剤及び充填剤を含むシート体2と、前記シート体2の裏面に積層されたバック層4と、から構成されている。この内装材1は、シート体2の表面が内装材1の最表面を成し、バック層4の裏面が内装材1の最裏面を成している。
図5において、第4実施形態の内装材1は、塩化ビニル樹脂、着色剤及び充填剤を含むシート体2と、前記シート体2の表面に積層された表面保護層3と、前記シート体2の裏面に積層されたバック層4と、から構成されている。この内装材1は、表面保護層3の表面が内装材1の最表面を成し、バック層4の裏面が内装材1の最裏面を成している。
【0014】
<シート体>
シート体2は、柔軟性を有する。シート体2は、例えば、直径20cmの芯材にロール状に巻き取ることができるような柔軟性を有する。シート体2は、非発泡体から構成されている。なお、図4及び図5に示すようなシート体2にバック層4などが積層されている内装材1も、シート体2と同様な柔軟性を有することが好ましい。
シート体2の厚みは、特に限定されず、例えば、0.5mm~8mmであり、好ましくは、1.0mm~5.0mmである。第1及び第2実施形態のように、シート体2の裏面にバック層4が積層されない場合には、シート体2の厚みは、比較的大きいことが好ましく、例えば、1.0mm~8mmであり、好ましくは、1.2mm~5mmである。また、第3及び第4実施形態のように、シート体2の裏面にバック層4が積層される場合には、シート体2の厚みを比較的小さくすることもできる。
【0015】
シート体2は、塩化ビニル樹脂、着色剤及び充填剤を含み、さらに、可塑剤などの添加剤を含んでいてもよい。シート体2の表面側には、着色された塩化ビニル樹脂粒子5が凝集した部分が形成され、塩化ビニル樹脂粒子5が凝集した部分に、凹部21が形成され、その凹部21の表面に、塩化ビニル樹脂粒子5よりも小さい充填剤微粒子6が集まって付着されている。
以下、前記塩化ビニル樹脂粒子5が凝集した部分を「凝集部分」という。
凝集部分は、複数個の塩化ビニル樹脂粒子5が集まり且つ接合して層を成しており、シート体2の少なくとも表面側に延在されている。
着色された塩化ビニル樹脂粒子5は、粒子状を成し且つ着色剤によって着色された塩化ビニル樹脂を意味し、充填剤微粒子6は、粒子状を成している充填剤を意味する。
【0016】
着色された塩化ビニル樹脂粒子5は、少なくとも1種類用いられ、好ましくは、異なる色彩に着色された少なくとも2種類の塩化ビニル樹脂粒子5が用いられる。
前記塩化ビニル樹脂粒子5の表面には、充填剤微粒子6が点在されており、凝集部分の凹部21の表面に、充填剤微粒子6が集まっている。従って、凝集部分には、塩化ビニル樹脂粒子5が表出している部分と、充填剤微粒子6が表出している部分と、が混在しており、特に充填剤微粒子6は、凹部21に集中的に存在している。
塩化ビニル樹脂、着色剤、充填剤及び可塑剤などの添加剤の詳細は、[内装材の製造方法]の欄で詳細に述べる。
図6及び図7を参照して、シート体2の表面側は、複数の塩化ビニル樹脂粒子5が凝集されている部分を有し、前記各塩化ビニル樹脂粒子5の表面に、充填剤微粒子6が点在されている。好ましくは、異なる色彩に着色された2種類以上の塩化ビニル樹脂粒子5の複数が凝集されている。
充填剤微粒子6の大きさは、塩化ビニル樹脂粒子5よりも小さい。なお、充填剤微粒子6は小さいため、図6及び図7において、個々の充填剤微粒子を図示していない。
凝集部分はシート体2の表面の一部分に形成されていてもよいが、好ましくは、シート体2の表面全体に亘って凝集部分が形成されている。
【0017】
凝集部分における、異なる色彩に着色された塩化ビニル樹脂粒子5は、2種類でもよく、3種類以上であってもよい。ここでは、異なる色彩に着色された3種類の塩化ビニル樹脂粒子5を例にとって説明する。以下、異なる色彩の塩化ビニル樹脂粒子5を区別する必要がある場合には、第1塩化ビニル樹脂粒子51、第2塩化ビニル樹脂粒子52及び第3塩化ビニル樹脂粒子53という。
着色された塩化ビニル樹脂粒子5(例えば、第1乃至第3塩化ビニル樹脂粒子51,52,53)は、塩化ビニル樹脂及び着色剤を含み、さらに、可塑剤などの添加剤を含む樹脂組成物が粒子化されたものである。
【0018】
色彩の異なる第1乃至第3塩化ビニル樹脂粒子51,52,53は、色彩(着色剤)が異なっていることを条件として、その組成は同じでもよく、或いは、異なっていてもよい。
【0019】
凝集部分においては、複数の塩化ビニル樹脂粒子5が隣接し、隣接した塩化ビニル樹脂粒子同士が接合されて層を成している。なお、図7では、隣接する塩化ビニル樹脂粒子5の間が、明確な実線で表されているが、隣接する塩化ビニル樹脂粒子5は、接合(融合)により、明確な境界を有さないことがあることに留意されたい。
図示例では、複数の塩化ビニル樹脂粒子5は、複数の第1塩化ビニル樹脂粒子51、第2塩化ビニル樹脂粒子52及び第3塩化ビニル樹脂粒子53を有し、それらの一部分が凝集部分の表面(シート体2の表面)において不規則に露出されている。
第1塩化ビニル樹脂粒子51は、任意の色彩(例えば黒色など)に着色され、第2塩化ビニル樹脂粒子52は、これと異なる色彩(例えば白色など)に着色され、第3塩化ビニル樹脂粒子53は、これらとは異なる色彩(例えば茶色など)に着色されている。
なお、凝集部分は、着色された塩化ビニル樹脂粒子5を有することを条件として、無着色の塩化ビニル樹脂粒子を含んでいてもよい。
【0020】
表出されている各塩化ビニル樹脂粒子5の平面視形状(表出している部分の平面視形状)は、図6に示すように、比較的多くが不定形(不定形は、形状が無秩序であり、特定の形状を認定できない状態である)であるが、一部の塩化ビニル樹脂粒子5は、平面視略楕円形状又は略円形状を成して表出している。つまり、それぞれの塩化ビニル樹脂粒子5の平面視形状は、一様ではないが、凝集部分は、表出形状が平面視略楕円形状又は略円形状である塩化ビニル樹脂粒子5を有している。平面視略楕円形状及び略円形状以外の塩化ビニル樹脂粒子5の平面視形状は、特定できない。
換言すると、前記凝集部分の表面における塩化ビニル樹脂粒子5は、平面視略楕円形状又は略円形状を成して表出している塩化ビニル樹脂粒子5と、平面視不定形を成して表出している塩化ビニル樹脂粒子5と、からなる。なお、各塩化ビニル樹脂粒子5の立体形状は、図7に示すように、不定形である。
凝集部分において、一部の塩化ビニル樹脂粒子5が平面視略楕円形状及び略円形状となって表出されていることにより、砂岩のごとく、砂を撒いたような立体感に優れた内装材を得ることができる。
【0021】
前記凝集部分において、表出している塩化ビニル樹脂粒子5の、大きさ及び個数(割合)は、次の(a)乃至(c)の少なくとも何れか1つを満たしていることが好ましい。
(a)表出している部分の最大長さが50μm~100μmの範囲である塩化ビニル樹脂粒子が、1平方mmの中に16個以上、好ましくは30個以上、より好ましくは40個以上である。前記50μm~100μmの範囲である塩化ビニル樹脂粒子の個数の上限は特にないが、例えば、400個以下、さらには、300個以下である。
(b)表出している部分の最大長さが100μmを超え150μm以下の範囲である塩化ビニル樹脂粒子が、1平方mmの中に12個以上、好ましくは18個以上、より好ましくは30個以上である。前記100μmを超え150μm以下の塩化ビニル樹脂粒子の個数の上限は特にないが、例えば、100個以下、さらには、80個以下である。
(c)表出している部分の最大長さが150μmを超え200μm以下の範囲である塩化ビニル樹脂粒子が、1平方mmの中に8個以上、好ましくは15個以上、より好ましくは20個以上である。前記150μmを超え200μm以下の塩化ビニル樹脂粒子の個数の上限は特にないが、例えば、50個以下、さらには、40個以下である。
【0022】
ただし、前記塩化ビニル樹脂粒子5の大きさ及び個数は、凝集部分の表面におけるSEM画像から計測できる。
凝集部分の表面の任意の箇所を、100倍で撮像してSEM写真を得、そのSEM画像の中の任意の1平方mmの中から、表出している塩化ビニル樹脂粒子を抽出する。その抽出した全ての塩化ビニル樹脂粒子の表出している部分の最大長さを計測することにより、上記(a)、(b)及び(c)を特定できる。
なお、表出している部分の最大長さは、表出している部分の面内を通り且つその部分の対向縁に交差する直線のうちの最大値をいう。図6に、表出している部分の最大長さとなる箇所を、幾つかの塩化ビニル樹脂粒子に符号Wで示している。
【0023】
また、凝集部分の表面(シート体2の表面)には、僅かな凹部21が形成されている。前記凹部21は、凝集部分の表面側において、隣接する塩化ビニル樹脂粒子5の間に形成されている。前記凹部21は、隣接する塩化ビニル樹脂粒子5の外面が互いに押し合うことによって形成されるものであり、塩化ビニル樹脂粒子5の露出部5aの周囲に形成されている。
凹部21の平面視形状は、不定形であるが、凹部21は、平面視において塩化ビニル樹脂粒子5の露出部5aを取り囲むように、無秩序に折れ曲がった平面視線状に形成されている。凹部21の断面視形状も不定形である。
凹部21の深さは、特に限定されないが、余りに大きいと凝集部分の表面が粗面化され過ぎ、余りに小さいと、実質的に凹部21と成り得ない。かかる点を考慮すると、凹部21の深さは、0を超え150μmが好ましく、0.05μm~30μmがより好ましい。別の観点では、凹部21の深さは、塩化ビニル樹脂粒子5の粒径の1/5倍以下が好ましく、1/6倍以下がより好ましい。
【0024】
また、前記凹部21との相対的な関係として、凝集部分の表面には、凸部が形成されている。凸部は、主として各塩化ビニル樹脂粒子5の露出部5aから構成されている。
前記各塩化ビニル樹脂粒子5の露出部5aは、図7に示すように、平坦状の部分を有することが好ましく、さらに、露出部5aの全体が略平坦状に形成されていることがより好ましい。
なお、シート体2の表面及び/又は裏面に、エンボス加工による凹凸(図示せず)が施されていてもよい。エンボス加工による凹凸は、前記凹部21よりも大きい。
【0025】
複数の塩化ビニル樹脂粒子5(例えば、第1乃至第3塩化ビニル樹脂粒子51,52,53)の表面には、複数の充填剤微粒子6が点在されている。充填剤微粒子6が点在されているとは、塩化ビニル樹脂粒子5の表面全体を覆っておらず、複数の充填剤微粒子6が塩化ビニル樹脂粒子5の表面の所々に付着されていることをいう。
なお、図6において、複数の充填剤微粒子6が付着した部分を網掛けで示しており、図6の無地は塩化ビニル樹脂粒子5の露出部5aを示している。
特に、充填剤微粒子6は、前記凹部21の表面に集まって付着されている。複数の充填剤微粒子6が集まって付着された領域では、塩化ビニル樹脂粒子5の表面が充填剤微粒子6によって被覆されている。
【0026】
図6を参照して、凝集部分においては、平面視で、充填剤微粒子6が集まって付着した領域を海とし、塩化ビニル樹脂粒子5の露出部5aを島とする、海島構造を成している。なお、塩化ビニル樹脂粒子5の露出部5aの一部に、充填剤微粒子6が付着されている場合もあり、前記海島構造は、厳密な意味ではなく、概ね海島状を成しているという意味である。
充填剤微粒子6は、塩化ビニル樹脂粒子5よりも粒径が小さいので、光を乱反射させる効果に優れている。このため、前記海島構造のように塩化ビニル樹脂粒子5の露出部5aの周りに充填剤微粒子6が額縁のように集まって付着していることにより、塩化ビニル樹脂粒子5の色彩及び立体感を強く視認できるようになる。
充填剤微粒子6は、図7に示すように、シート体2の内部においても、隣接する塩化ビニル樹脂粒子5の間に存在している。なお、図7に示す無地部分は、シート体2の内部に生じた気泡を表している。
【0027】
表出された充填剤微粒子6の平面視形状及び立体形状は、不定形である。
充填剤微粒子6は、塩化ビニル樹脂粒子5に比して随分と小さい。
凝集部分において点在し且つ表出している充填剤微粒子6は、例えば、最大長さが20μm以下であり、好ましくは10μm以下であり、より好ましくは6μm以下である。前記最大長さが20μm以下であるとは、下記計測法に従い、表出している充填剤微粒子6の実質的に全てが、最大径20μm以下のものであることを意味する。
前記充填剤微粒子6の最大長さは、凝集部分の平面視におけるSEM画像から計測できる。
凝集部分の表面の任意の箇所を、1000倍で撮像してSEM写真を得、そのSEM画像の中の任意の100平方μmの中の表出している充填剤微粒子の中から、比較的大きいものを幾つか抽出する。その抽出した全ての充填剤微粒子の最大長さを計測する。
なお、表出している充填剤微粒子の最大長さは、上記表出している塩化ビニル樹脂粒子の最大長さと同様に、平面視で充填剤微粒子の面内を通り且つ対向縁に交差する直線のうちの最大値をいう。
【0028】
<表面保護層>
表面保護層3は、シート体2の表面を保護する目的で、必要に応じて設けられる。
表面保護層3は、有色透明でもよいが、無色透明であることが好ましい。表面保護層3は、非発泡である。
表面保護層3は、主成分樹脂を含み、必要に応じて、主成分樹脂以外の樹脂及び難燃剤、安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、防黴剤などの添加剤が含まれていてもよい。
ここで、本明細書において、主成分樹脂は、その層を構成する樹脂成分中で最も多い樹脂成分(重量比)をいう。
表面保護層3を形成する主成分樹脂としては、特に限定されず、例えば、熱可塑性樹脂、紫外線硬化型樹脂などの電離線硬化型樹脂などが挙げられる。耐傷付き性などの観点から、表面保護層3は、紫外線硬化型樹脂などの電離線硬化型樹脂から形成されていることが好ましい。
電子線硬化型樹脂としては、不飽和ジカルボン酸と多価アルコールの縮合物などの不飽和ポリエステル類、ポリエステルメタクリレート、ポリエーテルメタクリレート、ポリオールメタクリレート、メラミンメタクリレートなどのメタクリレート類、ポリエステルアクリレート、エポキシアクリレート、ウレタンアクリレート、ポリエーテルアクリレート、ポリオールアクリレート、メラミンアクリレートなどの紫外線硬化型樹脂などが挙げられる。
表面保護層3の厚みは、特に限定されず、可及的に小さいことが好ましく、例えば、3μm~50μmであり、好ましくは5μm~40μmである。
【0029】
<バック層>
バック層4は、従来公知の床材、壁材及び天井材に使用されているものを適宜用いることができる。前記バック層4としては、公知の床材、壁材及び天井材の中から表層(化粧層を含む)を除いたものを用いることができ、例えば、発泡樹脂層、非発泡樹脂層、ゴム層、人工又は天然石材、木材、布材などが挙げられる。
例えば、図4及び図5では、バック層4は、シート体2の裏面に積層された上側樹脂層41及び下側樹脂層43と、前記上側樹脂層41及び下側樹脂層43の間に介在された繊維補強層42と、を有する。
上側樹脂層41及び下側樹脂層43の形成材料としては、特に限定されず、例えば、塩化ビニルや塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体などの塩化ビニル樹脂、ポリオレフィン樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体などの酢酸ビニル樹脂、エチレン-メタクリレート樹脂などのアクリル樹脂、ポリアミド樹脂、エステル樹脂などの熱可塑性樹脂;オレフィン系エラストマー、スチレン系エラストマーなどの各種の熱可塑性エラストマー;イソプレンゴムなどのゴム;などが挙げられる。
シート体2に対して良好に接着することから、少なくとも上側樹脂層41は主成分樹脂として塩化ビニル樹脂を含む材料から形成されていることが好ましく、さらに、上側樹脂層41及び下側樹脂層43が主成分樹脂として塩化ビニル樹脂を含む材料から形成されていることがより好ましい。
繊維補強層42としては、繊維を含んでいれば特に限定されず、不織布、織布などが挙げられる。前記不織布や織布を構成する繊維の材質は、特に限定されず、例えば、ポリエステル、ポリオレフィンなどの合成樹脂繊維;ガラス、カーボンなどの無機繊維;天然繊維などが挙げられる。
バック層4の厚みは、特に限定されず、例えば、0.5mm~10mmである。
【0030】
[内装材の製造方法]
本発明の内装材は、例えば、次のような方法で得ることができる。ただし、本発明の内装材は、下記製法によって得られるものに限定されるわけではない。
本発明の内装材は、着色された塩化ビニル樹脂粒子の表面に、その粒子よりも小さい充填剤微粒子が点在されている原料粒子を製造する工程、前記原料粒子を集めて加熱加圧してシート状に成形する工程、を経て得られる。
【0031】
<原料粒子の製造>
原料粒子Aは、図8に示すように、着色された塩化ビニル樹脂粒子Bの表面にその粒子Bよりも小さい充填剤微粒子Cが点在されているものである。図8において、複数の充填剤微粒子Cが付着した部分を網掛けで示しており、図8の無地は、塩化ビニル樹脂粒子Bの表面が露出した部分を示している。
以下、本明細書の製造方法において、上記内装材1に形成された後の塩化ビニル樹脂粒子5及び充填剤微粒子6と、その内装材を形成する前の原料としての塩化ビニル樹脂粒子B及び充填剤微粒子Cとを、用語上区別するという目的で、原料粒子を構成する塩化ビニル樹脂粒子B及び充填剤微粒子Cを、「原料樹脂粒子B」及び「原料充填剤微粒子C」と記す。
【0032】
原料粒子Aの製造は、例えば、塩化ビニル樹脂を用いて粒子を作製する工程と、塩化ビニル樹脂を着色する工程と、原料樹脂粒子Bに原料充填剤微粒子Cを付着させる工程と、を有する。これらの工程は、それぞれ独立して行ってもよく、或いは、これらの工程から選ばれる少なくとも2つの工程を同時に行ってもよい。例えば、塩化ビニル樹脂から粒子を作製するときに、塩化ビニル樹脂を着色してもよい。或いは、塩化ビニル樹脂の粒子を作製した後、その粒子を着色すると共に原料充填剤微粒子Cを付着させてもよい。工程を少なくできることから、2つの工程を同時に行うことが好ましい。
以下、塩化ビニル樹脂の粒子を作製した後、その粒子を着色すると共に原料充填剤微粒子Cを付着させることによって、原料粒子Aを製造する場合を例にとって説明する。
【0033】
塩化ビニル樹脂は、乳化重合法、懸濁重合法、溶液重合法、塊状重合法などで製造されたものが挙げられる。粒子状に形成し易いことから、乳化重合法、又は、懸濁重合法で得られる塩化ビニル系樹脂が好ましく、特に、懸濁重合法で得られる塩化ビニル樹脂が好ましい。
前記懸濁重合法は、水と懸濁剤を入れた反応器内に圧力をかけて液化させた塩化ビニルモノマーを入れ、高速で攪拌することにより、前記モノマーを極めて微小な液滴にした後、重合開始剤を反応器に入れ、所定気圧及び温度で反応させることにより、塩化ビニル樹脂を作製する方法である。懸濁重合法によって得られる塩化ビニル樹脂は、通常、数十μm~数百μmの粒子となっているので、これを脱水・乾燥することにより、塩化ビニル樹脂からなる粒子を取り出すことができる。
【0034】
上述のように、懸濁重合法で得られる塩化ビニル樹脂の粒子は、数十μm~数百μmであるので、そのまま原料樹脂粒子Bとして使用してもよい。良好な砂目調模様の内装材を形成するために、適切な大きさで且つ粒径の揃った原料樹脂粒子Bを選別することが好ましい。
例えば、前記懸濁重合法で得られた塩化ビニル樹脂からなる粒子を、スクリーンを用いて篩い分けし、所望の粒径の原料樹脂粒子Bを取り出す。
図9は、原料樹脂粒子Bの正面図を示す。原料樹脂粒子Bは、真球に比べると歪な部分を所々に有するが、概ね球形を成している。
原料樹脂粒子Bの好ましい体積平均粒径(50%径)は、20μm~300μmであり、好ましくは30μm~250μmであり、より好ましくは50μm~200μmである。
前記原料樹脂粒子Bの体積平均粒径は、レーザー回折散乱式粒度分布測定装置により測定できる。
【0035】
原料樹脂粒子Bを構成する塩化ビニル樹脂の平均重合度は、特に限定されないが、例えば、650~1000であり、好ましくは、700~900である。
前記平均重合度は、JIS K 6721のウベローデ粘度計を用いた溶液粘度測定法により測定できる。
また、前記塩化ビニル樹脂のK値は、特に限定されないが、例えば、58~70であり、好ましくは、60~65である。
前記K値は、JIS K 7367-2に準じて測定できる。
前記塩化ビニル樹脂の見掛け密度は、特に限定されないが、例えば、0.45~0.75であり、好ましくは、0.5~0.7である。
前記見掛け密度は、JIS K 7365に準じて測定できる。
【0036】
原料充填剤微粒子Cは、標準状態(25℃、1気圧)で固形状を成している無機充填剤を適宜用いることができ、例えば、炭酸カルシウム、酸化カルシウム、炭酸バリウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、クレー、タルク、マイカなどの各種の無機充填剤が挙げられる。
安価であることから、原料充填剤微粒子Cは、炭酸カルシウムの微粒子を用いることが好ましい。
【0037】
原料充填剤微粒子Cは、原料樹脂粒子Bよりも粒径の小さいものが用いられる。原料充填剤微粒子Cは、球状などの定形、或いは、不定形など任意の形状を用いることができるが、光を乱反射させる効果が高いことから不定形が好ましい。
原料樹脂粒子Bの内部に埋没し難くして原料樹脂粒子Bの表面により多くの原料充填剤微粒子Cを付着させることができることから、適切な大きさの原料充填剤微粒子Cを用いることが好ましい。
原料充填剤微粒子Cの体積平均粒径(50%径)は、例えば、0.05μm~20μmであり、好ましくは、1μm~10μmであり、より好ましくは、2μm~6μmである。
前記原料充填剤微粒子Cの体積平均粒径は、レーザー回折散乱式粒度分布測定装置により測定できる。なお、原料充填剤微粒子Cは、略扁平状になっているものも多いので、前記原料充填剤微粒子Cの体積平均粒径は、球相当径の体積平均値を表す。
【0038】
原料粒子Aの全表面に対する、原料充填剤微粒子Cの被覆面積の割合は、特に限定されないが、3%~50%であることが好ましく、5%~20%であることがより好ましい。原料充填剤微粒子Cの被覆面積の割合は、(原料充填剤微粒子Cの被覆面積/原料粒子Aの表面積)×100で求められる。
【0039】
着色剤は、従来公知の顔料、染料を用いることができる。また、原料樹脂粒子Bに混じり易くなることから、着色剤として、トナーを用いることが好ましい。ここで、トナーは、微細な樹脂に顔料などが付着された微粒子、又は、この微粒子を液状物に分散させたものである。
可塑剤は、特に限定されず、従来より塩化ビニル系樹脂などに添加されているものを適宜用いることができ、例えば、フタル酸ジオクチル(DOP)、ジブチルフタレート(DBP)、ブチルオクチルフタレート(BOP)、ジオクチルイソフタレート(DOIP)、フタル酸ジイソノニル(DINP)、テレフタル酸ジ-2-エチルヘキシル(DOTP)などが挙げられる。特に、標準状態下で液状の可塑剤を用いることが好ましい。
その他の添加剤としては、安定剤、加工助剤、防かび剤、難燃剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤などが挙げられる。
【0040】
上記原料樹脂粒子B、原料充填剤微粒子C、着色剤、可塑剤及び必要に応じて添加剤を混合することにより、原料粒子Aを得ることができる。
原料粒子Aは、少なくとも1つの色彩に着色された1種類作製され、好ましくは、異なる色彩に着色された少なくとも2種類作製する。
例えば、上述のように、第1乃至第3塩化ビニル樹脂粒子51,52,53を有する内装材を製造する場合には、色彩の異なる3種類の原料粒子Aを作製する。
色彩の異なる複数種(例えば3種類)の原料粒子Aは、着色剤に起因する色彩が異なることを条件として、その組成は同じでもよく、或いは、異なっていてもよい。原料粒子Aの組成が異なるとは、塩化ビニル樹脂及びその配合量、原料充填剤微粒子C及びその配合量、可塑剤及びその配合量、並びに、添加剤及びその配合量の中から選ばれる少なくとも1つが異なっているという意味である。
製造容易であることから、色彩の異なる複数種の原料粒子Aは、着色剤を除いて、その組成が同じであることが好ましい。
【0041】
原料充填剤微粒子Cの配合量は、特に限定されないが、余りに多いと原料樹脂粒子Bの表面の略全体に原料充填剤微粒子Cが付着するおそれがあり、余りに少ないと原料樹脂粒子Bの表面が露出し過ぎる。かかる観点から、原料充填剤微粒子Cの配合量は、原料樹脂粒子Bの100重量部に対して、1重量部~100重量部であり、好ましくは、1重量部~50重量部である。
可塑剤の配合量は、特に限定されず、例えば、原料樹脂粒子Bの100重量部に対して、20重量部~50重量部であり、好ましくは、30重量部~40重量部である。
着色剤の配合量は、その着色剤の種類に応じて適宜設定でき、例えば、原料樹脂粒子Bの100重量部に対して、0.1重量部~10重量部であり、好ましくは、1重量部~5重量部である。
添加剤の配合量は、従来と同様であり、通常、微量である。
【0042】
前記混合は、スーパーミキサーなどの従来公知のミキサーを用いて実施できる。
混合時間は、ミキサーの規模及び投入量によって適宜設定されるが、その目安としては、例えば、300秒~3000秒である。
【0043】
原料樹脂粒子B、原料充填剤微粒子C、着色剤、可塑剤及び必要に応じて添加剤を混合する際には、室温(25℃)よりも十分に高い温度であって、塩化ビニル樹脂が溶融しない温度以下で行うことが重要である。
例えば、前記混合は、80℃~140℃の温度範囲で行うことが好ましく、100℃~125℃がより好ましく、110℃~130℃がさらに好ましい。
また、前記混合は、常圧(特に、外部から圧力を加えない状態)で行うことが好ましい。
【0044】
加熱装置及び冷却装置を用いて、混合温度を前記温度範囲に設定してもよい。また、混合時に材料から生じる摩擦熱などによって、混合温度が前記温度範囲となるようであれば、特に加熱及び/又は冷却しないで、混合を行ってもよい。
前記温度範囲で混合することにより、原料樹脂粒子Bは、溶融せずに概ね球形を保持しつつ少し軟らかくなり、その原料樹脂粒子Bの表面に、原料充填剤微粒子C及び着色剤などが接触する。
標準状態で液状の可塑剤は、原料樹脂粒子Bと混ざりやすく、可塑剤によって、原料樹脂粒子Bが軟らかくなる。着色剤は、微細であるため、軟らかくなった原料樹脂粒子Bの表面からその内部に埋没していくようになり、原料樹脂粒子Bが着色される。必要に応じて添加される微量の添加剤も、原料樹脂粒子Bの内部に取り込まれる、又は、原料樹脂粒子Bの表面に付着する。
【0045】
原料充填剤微粒子Cは、前記添加剤などに比して大きく、その一部が原料樹脂粒子Bの内部に入り込むこともあるが、その多くが又は全てが軟らかくなった原料樹脂粒子Bの表面に付着するようになる。例えば、混合した原料充填剤微粒子Cのうち、原料樹脂粒子Bの表面に付着している割合は、混合した原料充填剤微粒子Cの全量を100重量%として、60重量%~100重量%であり、好ましくは80重量%以上100重量%未満である。
このようにして、図8に示すような、着色された原料樹脂粒子Bの表面に、その粒子よりも小さい原料充填剤微粒子Cが点在されている原料粒子Aを得ることができる。得られた原料粒子Aを構成する原料樹脂粒子Bは、混合前の原料樹脂粒子Bに比して、歪度合いが大きくなるが、概ね球形を保っている。
着色剤を適宜変更して同様に混合することにより、色彩の異なる原料粒子Aを作製する。このようにして、第1塩化ビニル樹脂粒子51、第2塩化ビニル樹脂粒子52及び第3塩化ビニル樹脂粒子53に対応する、色彩の異なる3種類の原料粒子Aを得ることができる。
なお、着色剤を配合しないことを除いて、同様に混合することにより、無着色の原料粒子を得ることもできる。
【0046】
<シート体の製造>
所望の原料粒子Aを、図10に示すように、散布装置91を用いて一対のローラー93の間に入れ、前記一対のローラー93にて加圧することにより、複数の原料粒子Aの集合からなる所定厚みの層状物94を作製する。その層状物94をエンドレスのシートコンベア92の上に導き、オーブンなどの加熱装置95にて加熱し、原料樹脂粒子の塩化ビニル樹脂を溶融させる。前記加熱温度は、塩化ビニル樹脂が溶融する温度以上であればよく、例えば、160℃以上であり、好ましくは、170℃以上であり、より好ましくは、175℃以上である。また、余りに温度が高すぎると、原料充填剤微粒子Cが原料樹脂粒子Bの内部に埋没し易くなるおそれがあることから、前記加熱温度は、例えば、210℃以下であり、好ましくは、210℃以下であり、より好ましくは、200℃以下である。
加熱時間は、300秒~3000秒程度が好ましい。
【0047】
加熱後、層状物94を厚み方向に加圧して、シート状に加工する。圧力は、特に限定されず、例えば、1.5kgf/cm~5kgf/cmである。加圧は、プレス機を用いてもよいが、図示のような連続的に製造する装置9を用いる場合には、加圧ロール96を用い、加圧ロール間に層状物94を通過させることによって、シート状に加工することが好ましい。
溶融された原料粒子Aが加圧されることにより、原料樹脂粒子Bは不規則に変形して不定形になり、且つ隣接する原料樹脂粒子間において接合する。
その後、自然冷却又は強制冷却を行うことにより、上記シート体2が得られる。
なお、必要に応じて、エンボスローラー97を用いて、シート体2の表面又は/及び裏面に、エンボス凹凸を形成してもよい。
また、必要に応じて、シート体2の表面に、塗布機98を用いて表面保護層を形成してもよい。塗布機98は、表面保護層形成材料をシート2の表面に塗布し、この材料を固化させるものであり、例えば、紫外線硬化型樹脂などの電離線硬化型樹脂からなる表面保護層を形成する場合には、前記電離線硬化型樹脂を塗布する塗布部と、その樹脂を硬化させる紫外線などの光線照射部と、を有する。
得られたシート体2は、回収機99に巻き取られ、製造装置9から分離される。
【0048】
なお、上記製法では、3種類の原料粒子Aを使用した場合を例示したが、原料粒子Aは、1種類でもよく、2種類でもよく、或いは4種類以上準備してもよい。例えば、色彩の異なる複数種の原料粒子Aを作製しておき、そこから任意の1種類の原料粒子Aを選んでシート体を作製してもよく、そこから2種以上の原料粒子Aを選び且つそれらを混合してシート体を作製してもよい。
好ましくは、色彩の異なる5種類(例えば、黒、白、マゼンタ、シアン、イエロー)の原料粒子Aを予め準備しておき、そこから少なくとも2種類の原料粒子Aを選択することで、任意のシート体を作製することができる。各色を呈する原料粒子Aを溶融させないことから色彩が完全に混ざることがなく、個々の原料粒子Aが砂目調模様を表出しつつ、巨視的には様々な色彩のシート体を形成できる。例えば、前記5種類の中から、マゼンタとシアンの原料粒子Aを主として使用することにより、巨視的に見ると濃青色系の砂目調模様のシート体を作製でき、シアンとイエローの原料粒子Aを主として使用することにより、巨視的に見ると緑色系の砂目調模様のシート体を作製できる。
すなわち、前記5種類の原料粒子Aから幾つかを選択し所定割合で混合することで、三原色の原理により多種多様な色彩の砂目調模様のシート体を作製することができる。本発明によると、さらに原料粒子によって色彩を表出させているので、あたかも点描画な意匠表現を創出することが可能となる。
なお、三原色は、マゼンタ、シアン、イエローを用いるのが好ましいが、赤、青、緑を用いてもよい。
【0049】
[内装材の効果及び用途]
本発明の内装材1は、シート体2の凝集部分に形成された凹部21の表面に、塩化ビニル樹脂粒子よりも小さい充填剤微粒子が集まって付着されているので、恰も微細な砂を撒いたような立体的な外観(砂目調模様)を有する。さらに、本発明の内装材1は、前記のように凹部21が形成され、その凹部21の表面に充填剤微粒子6が集まって付着されているので、艶消し感に優れている。
本発明の内装材1は、建築物の床面、壁面及び天井面などの施工面に施工される。内装材の施工面に対する取り付け方法は、特に限定されず、例えば、接着剤を用いて内装材の裏面を施工面に貼り付けることなどが挙げられる。
本発明の内装材1は、新設の施工面に施工してもよく、或いは、リフォームなどの既存の施工面に施工してもよい。
本発明の内装材1は、床材、壁材、天井材などに使用でき、特に、床材、壁材として好適に使用できる。
シート体2は、内装材の意匠を構成するが、所定の厚みを有し、靴底などで摩耗しても同様の柄が現れるので、耐久性に優れ、床材として最も好適に使用できる。
【実施例
【0050】
以下、実施例を示し、本発明をさらに詳述する。ただし、本発明は、下記実施例に限定されるわけではない。
【0051】
[使用材料]
<塩化ビニル樹脂(原料樹脂粒子)>
懸濁重合法による粒状の塩化ビニル樹脂(新第一塩ビ株式会社製の商品名「ZEST 800Y」。平均重合度:760~860、K値:60.5~63.1、見掛け密度:0.53~0.63(カタログ値))。塩化ビニル樹脂の粒径は、概ね100μm~300μmのものを使用した。
図11は、使用した塩化ビニル樹脂のSEM写真(600倍拡大)を示す。
<充填剤>
粒状の炭酸カルシウム(三共製粉株式会社製の商品名「エスカロン#200」)。
図12は、使用した炭酸カルシウムのSEM写真(600倍拡大)を示す。
<可塑剤>
DOP(汎用品)。
<着色剤>
マゼンタトナー(日弘ビックス株式会社製)。
シアントナー(日弘ビックス株式会社製)。
イエロートナー(日弘ビックス株式会社製)。
白色トナー(日弘ビックス株式会社製)。
黒色トナー(日弘ビックス株式会社製)。
【0052】
[原料粒子の準備]
<マゼンタ原料粒子の作製>
標準状態下で、前記塩化ビニル樹脂100重量部に対し、20重量部の充填剤、35重量部の可塑剤、2重量部のマゼンタトナーを、ミキサーに投入し、外部から加熱しないで、約10分間混合した。混合開始から昇温し始め、概ね10分後に約120℃になった。
このようにして、マゼンタを呈する原料粒子(マゼンタ原料粒子)を作製した。
図13は、作製した原料粒子のSEM写真(600倍拡大)を示す。図13において、小さな粒状のものが、粒状の炭酸カルシウムであり、それが付着しているものが、粒状の塩化ビニル樹脂である。
【0053】
<シアン原料粒子の作製>
マゼンタトナーをシアントナーに換えたこと以外は、上記マゼンタ原料粒子の作製と同様にして、シアン原料粒子を作製した。
【0054】
<イエロー原料粒子の作製>
マゼンタトナーをイエロートナーに換えたこと以外は、上記マゼンタ原料粒子の作製と同様にして、イエロー原料粒子を作製した。
【0055】
<白色の原料粒子の作製>
マゼンタトナーを白色トナーに換えたこと以外は、上記マゼンタ原料粒子の作製と同様にして、白色の原料粒子を作製した。
【0056】
<黒色の原料粒子の作製>
マゼンタトナーを黒色トナーに換えたこと以外は、上記マゼンタ原料粒子の作製と同様にして、黒色の原料粒子を作製した。
【0057】
[実施例1]
マゼンタ原料粒子、シアン原料粒子、イエロー原料粒子及び黒色の原料粒子を、7:2:0.5:0.5の重量割合で混ぜ合わせ、これを既存のシート製造装置(図10に示すようなもの)の散布装置から一対のローラー間に通して概ねシート状に仮成形し、それをエンドレスシートコンベア上に載せ、200℃の熱風循環オーブンで5分間加熱溶融させた後、室温下の加圧ロールに通して概ね3kgf/cmの圧力を加えて圧延することにより、厚み2mmのマゼンタ系のシート体を作製した。
なお、シートコンベアの速度は、約1m/分とした。
【0058】
[実施例2]
マゼンタ原料粒子、シアン原料粒子、イエロー原料粒子及び白色の原料粒子を、1:6:1:2の重量割合で混ぜ合わせたものを使用したこと以外は、実施例1と同様にして、厚み2mmのシアン系のシート体を作製した。
【0059】
図14は、実施例1で得られたシート体の表面の写真(拡大なし)を示し、図15は、そのシート体の表面の任意の箇所を180倍に拡大したSEM写真を示す。
図14に示すように、得られたシート体の表面は、微細な砂を撒いたような立体的な外観となっていた。
また、図16は、図15の写真の右上角部領域を切り出して、凝集部分において表出している塩化ビニル樹脂粒子を太線で区画した参考写真図である。表出されている塩化ビニル樹脂粒子のうち、一部のものは平面視略楕円形状又は略円形状を成していることが判る。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明の内装材は、一般住宅、オフィスビル、ホテル、マンション、商業施設などの各種建築物の床材、壁材、天井材などに使用できる。
【符号の説明】
【0061】
1 内装材
2 シート体
21 凹部
5,51,52,53 着色された塩化ビニル樹脂粒子
6 充填剤微粒子
A 原料粒子
B 原料粒子を構成する塩化ビニル樹脂粒子
C 原料粒子を構成する充填剤微粒子
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16