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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-02
(45)【発行日】2022-02-10
(54)【発明の名称】ゲル状洗浄剤組成物及び洗浄剤製品
(51)【国際特許分類】
   C11D 17/08 20060101AFI20220203BHJP
   C11D 3/22 20060101ALI20220203BHJP
   C11D 1/66 20060101ALI20220203BHJP
【FI】
C11D17/08
C11D3/22 ZNM
C11D1/66
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018067667
(22)【出願日】2018-03-30
(65)【公開番号】P2019178217
(43)【公開日】2019-10-17
【審査請求日】2020-04-10
(73)【特許権者】
【識別番号】390029148
【氏名又は名称】大王製紙株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 良男
(72)【発明者】
【氏名】山崎 孝介
【審査官】山本 悦司
(56)【参考文献】
【文献】特表2010-509462(JP,A)
【文献】国際公開第2014/104318(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2011/0288000(US,A1)
【文献】特開2017-110085(JP,A)
【文献】特開2011-057780(JP,A)
【文献】特開2016-065116(JP,A)
【文献】特開2016-094358(JP,A)
【文献】国際公開第2018/186261(WO,A1)
【文献】特開2019-011287(JP,A)
【文献】特開2010-037348(JP,A)
【文献】特表2016-525591(JP,A)
【文献】国際公開第97/045510(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C11D 1/00-19/00
Japio-GPG/FX
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
セルロースナノファイバーと、界面活性剤と、水と、ヒドロキシエチルセルロースと、を含有し、
前記セルロースナノファイバーの含有割合は、0.02質量%以上、0.2質量%以下であることを特徴とするゲル状洗浄剤組成物。
【請求項2】
セルロースナノファイバーと、界面活性剤と、水と、カルボキシメチルセルロースと、を含有し、
前記セルロースナノファイバーの含有割合は、0.02質量%以上、0.2質量%以下であり、
前記カルボキシメチルセルロースの含有割合は、0.5質量%以上、10質量%以下であることを特徴とするゲル状洗浄剤組成物。
【請求項3】
前記セルロースナノファイバーは、平均繊維幅が、30nm以上、50nm以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載のゲル状洗浄剤組成物。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載のゲル状洗浄剤組成物が、押し出し式容器に収納された洗浄剤製品。
【請求項5】
前記押し出し式容器は、
前記ゲル状洗浄剤組成物を押し出すための吐出口と、
前記吐出口の周囲を囲むようにして配置された複数の突起部と、
を備えることを特徴とする請求項4に記載の洗浄剤製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゲル状洗浄剤組成物及び洗浄剤製品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、トイレの便器等の定期的に水が流される場所に付着する汚れを除去するため、様々な洗浄剤が使用されているが、このような洗浄剤の一形態として、長時間洗浄効果を発揮させるため、トイレの便器内面等に付着させ、トイレ等の流水によって徐々に解け出す洗浄剤が開発されている。このような洗浄剤は、押し出し式の容器に、ゲル状の洗浄剤を収納しておき、これをトイレの便器の内面等に付着させて使用する(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2011-57780号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このようなトイレの便器内面等に付着させて使用されるゲル状の洗浄剤においては、長時間洗浄効果を発揮できるように、トイレの便器内面等への高い定着性が求められる。このような定着性を高めるためには、粘度が高いことが望ましい。
しかしながら、このような洗浄剤は、使用者が容器から押し出し、これをトイレの便器内面等に付着させる必要があるところ、粘度を徒に高めると、このような押し出し作業が困難となる。
【0005】
本発明の課題は、トイレの便器内面等への定着性が高く、かつ容器から押し出し易いゲル状洗浄剤組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、請求項1記載の発明は、ゲル状洗浄剤組成物であって
セルロースナノファイバーと、界面活性剤と、水と、ヒドロキシエチルセルロースと、を含有し、
前記セルロースナノファイバーの含有割合は、0.02質量%以上、0.2質量%以下であることを特徴とする。
請求項2記載の発明は、ゲル状洗浄剤組成物であって
セルロースナノファイバーと、界面活性剤と、水と、カルボキシメチルセルロースと、を含有し、
前記セルロースナノファイバーの含有割合は、0.02質量%以上、0.2質量%以下であり、
前記カルボキシメチルセルロースの含有割合は、0.5質量%以上、10質量%以下であることを特徴とする。
本発明によれば、トイレの便器内面等への定着性が高く、かつ容器から押し出し易いゲル状洗浄剤組成物を提供することができる。
【0008】
請求項に記載の発明は、請求項1又は2に記載のゲル状洗浄剤組成物であって、
前記セルロースナノファイバーは、平均繊維幅が、30nm以上、50nm以下であることを特徴とする。
本発明によれば、洗浄効果をさらに高めることができる。
【0009】
請求項に記載の発明は、
請求項1から3のいずれか一項に記載のゲル状洗浄剤組成物が、押し出し式容器に収納された洗浄剤製品である。
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の洗浄剤製品であって、
前記押し出し式容器は、
前記ゲル状洗浄剤組成物を押し出すための吐出口と、
前記吐出口の周囲を囲むようにして配置された複数の突起部と、
を備えることを特徴とする。
本発明によれば、トイレの便器内面等への定着性が高く、かつ容器から押し出し易いゲル状洗浄剤組成物が収納された洗浄剤製品を提供することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、トイレの便器内面等への定着性が高く、かつ容器から押し出し易いゲル状洗浄剤組成物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施形態に係るゲル状洗浄剤組成物からなるゲル状洗浄剤を、トイレの便器内面等に付着させるために用いられる押し出し式容器の一例を示す斜視図である。
図2図1のII-II部に置ける断面図である。
図3】(a)は図1に示す押し出し式容器によって、トイレの便器内面等に押し出されたゲル状洗浄剤を示す斜視図であり、(b)は(a)のb-b部における断面図である。
図4】変形例に係る押し出し式容器の側面図である。なお、容器本体の一部の図示を省略している。
図5】変形例に係る押し出し式容器の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態であるゲル状洗浄剤組成物の具体的な態様について説明する。
【0013】
[ゲル状洗浄剤組成物の構成]
本発明の実施形態であるゲル状洗浄剤組成物は、ゲル状に形成され、セルロースナノファイバー(以下、「CNF」という。)を含有するものである。
なお、本発明において、「ゲル状」とは、25℃において、ゾルにならず、定形性のある半固形状の状態をいう。
【0014】
(CNF)
CNFとは、パルプ繊維を解繊して得られる微細なセルロース繊維をいい、一般的に平均繊維幅がナノサイズ(1nm以上、1000nm以下)のセルロース微細繊維を含むセルロース繊維をいう。
【0015】
CNFの製造に使用可能なパルプ繊維としては、広葉樹パルプ(LBKP)、針葉樹パルプ(NBKP)等の化学パルプ、晒サーモメカニカルパルプ(BTMP)、ストーングランドパルプ(SGP)、加圧ストーングランドパルプ(PGW)、リファイナーグランドパルプ(RGP)、ケミグランドパルプ(CGP)、サーモグランドパルプ(TGP)、グランドパルプ(GP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)、ケミサーモメカニカルパルプ(CTMP)、リファイナーメカニカルパルプ(RMP)等の機械パルプ、茶古紙、クラフト封筒古紙、雑誌古紙、新聞古紙、チラシ古紙、オフィス古紙、段ボール古紙、上白古紙、ケント古紙、模造古紙、地券古紙、更紙古紙等から製造される古紙パルプ、古紙パルプを脱墨処理した脱墨パルプ(DIP)などが挙げられる。これらは、本発明の効果を損なわない限り、単独で用いてもよく、複数種を組み合わせて用いてもよい。
【0016】
CNFの製造方法としては、例えば、高圧ホモジナイザー法、マイクロフリュイダイザー法、グラインダー磨砕法、ビーズミル凍結粉砕法、超音波解繊法等の機械的手法が挙げられるが、これらの方法に限定されるものではない。
例えば、パルプ繊維に対して機械的手法の解繊処理を施したものに、カルボキシメチル化等の化学的処理を施しても良いし、酵素処理を施してもよい。
また、化学的処理や酵素処理を施したCNFに、機械的手法の解繊処理を施してもよい。
【0017】
本実施形態において用いられるCNFは、過度に解繊されることなく、比較的繊維幅が残ったものであることが望ましく、具体的には、後述の方法によって算出した平均繊維幅が、30nmから50nmであることが好ましい。このようなCNFは、例えば、機械的手法の解繊処理のみが施され、化学的処理が施されていない場合において得られるものである。この場合、CNFの形状が比較的残存しているため、立体障害物となり易く、後述の洗浄効果を向上させる効果を高めることができる。
【0018】
ゲル状洗浄剤組成物中のCNFの含有割合としては、0.02質量%以上、0.2質量%以下であることが好ましい。例えば2質量%水溶液を用いる場合、1質量%以上、10質量%以下加えることが好ましいということとなる。0.02質量%未満となると、後述のCNFを加えることによる効果が十分に発揮されず、0.2質量%を超えると、製造時の撹拌による泡立ちが多くなり、製造が困難となる。さらに、0.1質量%以上、0.16質量%以下であることが最も好ましい。
【0019】
なお、具体的に用いることができるCNFとしては、例えば、NBKP100%のCNFであり、CNFの平均繊維幅(メジアン径)が49nmのものが挙げられる。このCNFは、NBKPをリファイナー処理して粗解繊した後、高圧ホモジナイザーを用いて、4回処理して解繊することにより得られたものである。
【0020】
ここで、CNFの繊維幅(平均繊維幅)の測定方法について説明する。
まず、固形分濃度0.01~0.1質量%のセルロースナノファイバーの水分散液100mlをテフロン(登録商標)製メンブレンフィルターでろ過し、エタノール100mlで1回、t-ブタノール20mlで3回溶媒置換する。
次に、凍結乾燥し、オスミウムコーティングして試料とする。この試料について、構成する繊維の幅に応じて5000倍、10000倍又は30000倍のいずれかの倍率(段落0021に記載のCNFについては、30000倍の倍率を用いた。)で電子顕微鏡SEM画像による観察を行う。具体的には、観察画像に二本の対角線を引き、対角線の交点を通過する直線を任意に三本引く。さらに、この三本の直線と交錯する合計100本の繊維の幅を目視で計測する。そして、計測値の中位径(メジアン径)を平均繊維径とする。なお、計測値の中位径に限らず、例えば、数平均径や、モード径(最頻径)を平均繊維径としてもよい。
【0021】
(その他の組成物)
ゲル状洗浄剤組成物は、CNF以外に、界面活性剤、香料、グリセリン、水等を含む。この内、界面活性剤及び水を含有することは必須である。
【0022】
界面活性剤及び水、洗浄剤をゲル化させるために必須となる。界面活性剤としては、エステル型、エーテル型、アルキルグリコシド等の非イオン界面活性剤を用いることが好ましい。
界面活性剤の含有割合としては、10質量%以上、60質量%以下であることが好ましい。10質量%未満であるとゲル状となり難く、60質量%を超えると固体となってしまう。さらに、30質量%以上、39質量%以下であることが最も好ましい。
【0023】
香料は、ゲル状洗浄剤組成物に、洗浄作用に加え、芳香作用を付与するために加えられる。
香料の含有割合としては、0.5質量%以上、10質量%以下であることが好ましい。0.5質量%未満であると、芳香作用が十分でない場合が多く、10質量%を超えるとゲル状となり難くなる。さらに、3質量%以上、7質量%以下であることが最も好ましい。
【0024】
グリセリンは、ゲル状洗浄剤組成物のゲル化濃度をコントロールするために加えられる。
グリセリンの含有割合としては、3質量%以上、20質量%以下であることが好ましい。
【0025】
[ゲル状洗浄剤組成物の効果]
CNFは、チクソトロピー性が高い。すなわち、剪断応力を受けている際には粘度が低下し易く、静止している際には、粘度が上昇し易い。
したがって、使用者がゲル状洗浄剤組成物を容器から押し出そうとして力を加えた際には、その粘度が低下し、ゲル状洗浄剤組成物を容器から押し出す作業が容易となる。また、これをトイレの便器内面等に付着させた後には、その粘度が上昇し、定着性が高まることから、長時間洗浄効果を発揮させることができる。
【0026】
また、CNFは立体障害物となり、発泡性を向上させる効果も有することから、ゲル状洗浄剤組成物につき、洗浄効果を向上させることもできる。
【0027】
[変形例]
ゲル状洗浄剤組成物には、さらに、カルボキシメチルセルロース(以下、「CMC」という。)を含有していてもよい。
CMCは、CNFのOH基に結合することで、静電相互作用により立体障害的に分子同士を離れやすくし、CNFの凝集を防ぎ、その効果を高めることができる。
【0028】
ゲル状洗浄剤組成物にCMCを加える場合の含有割合としては、0.5質量%以上、10質量%以下であることが好ましい。0.5質量%未満であると、下記の効果を十分に発揮できず、10質量%を超えるとゲル化が不安定となり、ゲル状を維持し難くなる。さらに、1質量%以上、5質量%以下であることが最も好ましい。
【0029】
ゲル状洗浄剤組成物は、ヒドロキシエチルセルロース(以下、「HEC」という。)を含有していてもよい。HECによっても、CMCと同様の効果を得ることができる。
CNF含有ゲル状洗浄剤組成物にHECを加える場合の含有割合としては、0.5質量%以上、10質量%以下であることが好ましい。0.5質量%未満であると、上記の効果を十分に発揮できず、10質量%を超えるとゲル化が不安定となり、ゲル状を維持し難くなる。さらに、1質量%以上、5質量%以下であることが最も好ましい。
【0030】
また、実施形態に係るゲル状洗浄剤組成物は、トイレの便器内面において用いられるものに限られず、例えば洗面台の流しの中等、定期的に水が流されることとなる場所において、広く用いることができる。
【0031】
[押し出し式容器の説明]
次に、実施形態に係るゲル状洗浄剤組成物からなるゲル状洗浄剤Wを、トイレの便器内面等に付着させるために用いられる押し出し式容器100について、図1から図3に基づいて説明する。ただし、押し出し式容器100は一例にすぎず、実施形態に係るゲル状洗浄剤組成物からなるゲル状洗浄剤Wをトイレの便器内面等に付着させるために用いられる容器の形状は、これに限られるものではない。
【0032】
{押し出し式容器の構成}
押し出し式容器100は、図1に示すように、容器本体1と、吐出部2と、を備える。
【0033】
(容器本体)
容器本体1は、内部が空洞となり収納空間Sが形成され、ゲル状洗浄剤Wによって充填される、押し出し式容器100の本体をなす部材である。
図1及び図2に示すように、容器本体1には、一端が扁平となるように融着され、扁平端部11が形成されている。また、図2に示すように、もう一方の端部は略円形の開口部となっており、本体側開口部12が形成されている。
容器本体1は、図2に示すように、本体側開口部12の周囲の外周が、後述の吐出部2の吐出部側開口部211の内周と略同一の直径を有する円形に形成され、容器本体1が吐出部側開口部211に挿入されるようにして、容器本体1と吐出部2とが、所定の接着剤によって接着する等の任意の方法により接続されている。
なお、これとは反対に、本体側開口部12の内周が、後述の吐出部2の吐出部側開口部211の周囲の外周と略同一の直径を有する円形に形成され、吐出部2が本体側開口部12に挿入されるようにして、容器本体1と吐出部2とが接続されていてもよい。ただし、ゲル状洗浄剤Wの押し出し時に剥がれ難くするため、図2に示すように接続されている方が好ましい。
【0034】
容器本体1は、吐出部2と比較して軟質な材料によって形成される。具体的な硬度としては、70から90であることが好ましい。なお、上記硬度は、JIS K 6253(タイプAデュロメータ)によって測定されたものである。
具体的な材料としては、例えばポリエチレンテレフタラート(PET)、ポリプロピレン(PP)、アルミ、各種蒸着フィルム等が用いられる。
【0035】
容器本体1の大きさは、充填されるゲル状洗浄剤Wの量に応じて任意に定めることができるが、複数回使用できる十分な内容量を確保しつつ、かつ、ゲル状洗浄剤Wをトイレの便器内面に付着させる際の利便性も確保する観点から、本体側開口部12付近において直径5mmから30mmとなり、扁平端部11から本体側開口部12までの長さが50mmから150mmとなるように形成され、内容量が30mlから100mlであることが望ましい。
【0036】
(吐出部)
吐出部2は、ゲル状洗浄剤Wが押し出される開口部をなす部分であり、図1及び図2に示すように、接続部21と、突出部22と、を備える。
吐出部2は、容器本体1と比較して硬質な材料によって形成される。具体的な硬度としては、90から100であることが好ましい。なお、上記硬度は、JIS K 6253(タイプAデュロメータ)によって測定されたものである。
具体的な材料としては、例えばPET、PP等が用いられる。
【0037】
(接続部)
接続部21は、図1及び図2に示すように、一方の端部は略円形の開口部となっており、吐出部側開口部211が形成されている。
図2に示すように、吐出部側開口部211の内周は、容器本体1の本体側開口部12の周囲の外周と略同一の直径を有する円形に形成され、容器本体1が吐出部側開口部211に挿入されるようにして、容器本体1と吐出部2とが、所定の接着剤によって接着する等の任意の方法により接続されている。
なお、これとは反対に、吐出部2の吐出部側開口部211の周囲の外周が、本体側開口部12の内周と略同一の直径を有する円形に形成され、吐出部2が本体側開口部12に挿入されるようにして、容器本体1と吐出部2とが接続されていてもよい。ただし、ゲル状洗浄剤Wの押し出し時に剥がれ難くするため、図2に示すように接続されている方が好ましい。
【0038】
また、接続部21の吐出部側開口部211と対向する面は、図2に示すように、中央部のみが開口部となるように形成され、当該開口部に、突出部22が接続されている。
【0039】
接続部21は、直径が容器本体1の本体側開口部12付近と比較して僅かに大きくなり、高さが10mmから30mmとなる円筒状に形成されている。
【0040】
(突出部)
突出部22は、図2に示すように、筒状に形成され、接続部21の容器本体1と接続される側とは反対側の面に形成された開口部に接続され、接続部21を介して、容器本体1の収納空間Sと接続されている。これによって、接続部21及び突出部22の内部を通って、収納空間S内のゲル状洗浄剤Wを押し出すことができる。
【0041】
突出部22の先端には、ゲル状洗浄剤Wが押し出される円形の吐出口221が形成されており、これを周回するように複数の突起部222…が形成されている。図1においては、10個の突起部222…が形成された場合につき図示したが、突起部222…の形成数はこれに限られない。突起部222…が備えられていることによって、便器内面等の対象面に付着させたゲル状洗浄剤Wの形状を揃えることができ、かつ、突出部22先端にゲル状洗浄剤Wが付着してしまうことを防止することができる。
【0042】
突出部22は、後述のようにして、ゲル状洗浄剤Wを押し出し易く、かつ便器内面等に押し付けた際に適切な大きさとすることができるように、吐出口221の直径が10mmから25mmであることが好ましく、15mmから20mmであればさらに好ましい。
また、突出部22の長さは、後述のようにして、ゲル状洗浄剤Wを便器の内面に押し付ける際に、容器本体1から便器内面までに適切な距離を確保し、押し付ける作業を行い易くするため、突起部222…を除いて、5mmから30mmであることが好ましく、10mmから20mmであればさらに好ましい。
また、突起部222…は、上記効果を好適に生じさせるため、吐出口221の周囲から、0.5mmから5mm突出するように形成されることが好ましく、1mmから3mm突出するように形成されることがさらに好ましい。突起部222…の間の間隙は、突出部22先端にゲル状洗浄剤Wが付着してしまうことを防止するため、1mm以上の幅を有することが好ましい。
また、突起部222…は、全て同じ長さに形成され、先端部が同一平面状に位置するように形成されていることが好ましい。
【0043】
{押し出し式容器の使用方法}
押し出し式容器100を使用する際には、使用者は、まず、容器本体1を把持した上で、これを押圧し、突出部22の先端から、収納空間S内部のゲル状洗浄剤Wが押し出された状態とする。この際、使用者は、便器内面等に付着させたい量に応じて、押し出す量を調整する。
【0044】
続いて、使用者は、ゲル状洗浄剤Wが押し出された状態の押し出し式容器100を、突出部22側において、便器内面等のゲル状洗浄剤Wを押し付けたい箇所に近接させ、押し出された状態のゲル状洗浄剤Wを、当該箇所に押し付ける。この際、ひねりながら押し込むことで、突出部22の周りに、均等にゲル状洗浄剤Wが広がる。
なお、この際には、突出部22が直接便器内面等に振れないようにする。
【0045】
続いて、使用者は、押し出し式容器100を便器内面等から離す。この際、突出部22の先端から押し出されていたゲル状洗浄剤Wは、便器内面等に付着し、残ることとなる。
この際、上記のように、突出部22の周りに、均等にゲル状洗浄剤Wが広がり、突出部22の外側であった部分において付着量が多くなり、突出部22と重なっていた部分において付着量が少なくなるため、便器内面に付着したゲル状洗浄剤Wは、図3に示すような、中心部に凹部が形成され、その周囲が、前記凹部の全周を囲むように突出した形状となる。
【0046】
{押し出し容器の効果}
押し出し式容器100によれば、上記のように、図3に示すような形状となるように、便器内面等に対してゲル状洗浄剤Wを付着させることができる。
便器内面等に付着し、流水によって徐々に解け出す洗浄剤は、長時間トイレ等が使用されず、水が流されることがないと、付着させた洗浄剤の表面が乾燥してしまう。そして、過度に乾燥して固まってしまうと、トイレ等の流水によって溶け出さなくなってしまい、洗浄剤としての効果が失われてしまうことがある。
この点、押し出し式容器100によれば、上記のように中央に凹部が形成されるようにして、ゲル状洗浄剤Wを便器内面等に付着させることができることから、当該凹部に水が溜まり易く、付着させたゲル状洗浄剤Wの乾燥を防止することができる。
【0047】
また、押し出し式容器100によれば、上記のようにして、ゲル状洗浄剤Wを押し出した上で、これを便器の内面等に押し付けるのみで付着させることができることから、ゲル状洗浄剤Wを便器内面等に付着させる作業が容易となる。
【0048】
また、押し出し式容器100によれば、便器内面等に対してゲル状洗浄剤Wを付着させる際に、ゲル状洗浄剤Wが、便器内面等に対し押し付けられることとなる。これによって、付直後のゲル状洗浄剤Wを剥がれ難くすることができる。また、曲面に対しても、確実にゲル状洗浄剤Wを付着させることができる。
【0049】
また、押し出し式容器100によれば、便器内面等に対し、吐出部2を直接触れさせることなく、ゲル状洗浄剤Wを付着させることができる。したがって、衛生面でも優れる。
【0050】
また、押し出し式容器100によれば、任意の量のゲル状洗浄剤Wを容器から出すことができ、洗浄効果を継続させたい期間等に応じて、付着させる量を調整しつつ使用することができる。
【0051】
また、押し出し式容器100によれば、比較的軟質な容器本体1にゲル状洗浄剤Wが収納されていることによって、容器本体1を変形させつつゲル状洗浄剤Wを押し出すことができることから、容器内に残ってしまい、使用できないゲル状洗浄剤Wを減少させることができる。
【0052】
{押し出し式容器の変形例}
吐出部2の突出部22の先端形状は、上記の突起部222…を備えるものに限られない。ただし、先端部の円周上に複数の間隙を有する形状であることが好ましい。また、突出部22先端にゲル状洗浄剤Wが付着してしまうことを防止するため、それぞれの間隙が、1mm以上の幅を有することが好ましい。
【0053】
また、突出部の形状は、図1及び図2に示したような円筒状のものに限られず、例えば、図4及び図5に示す突出部22Aように、略半球状に形成され、その先端部に吐出口221Aを備えるようにしてもよい。吐出口221Aの形状は、図4及び図5においては、平面視星形となるように形成した場合につき図示したが、これに限られない。また、吐出口221Aの周辺は、図4及び図5に示したように、先端が平面状となるように形成されていることが、押し出されたゲル状洗浄剤Wを安定して保持する上で好ましい。
【実施例
【0054】
次に、本発明の実施例及び比較例に係るゲル状洗浄剤組成物につき、その定着性及び押し出し易さにつき評価した結果について説明する。
【0055】
[実施例及び比較例の構成]
以下の実施例及び比較例に係るゲル状洗浄剤組成物を用意した。
【0056】
(実施例1)
界面活性剤を35質量%、香料を3質量%、グリセリンを15質量%、CNFを0.02質量%(2質量%水溶液を1質量%)、水を46.98質量%の割合で含有するゲル状洗浄剤組成物である。
界面活性剤としては、PC-2465(ミヨシ油脂株式会社製)を用いた。
香料としては、クリーンフローラル(栄香料株式会社製)を用いた。
グリセリンとしては、濃グリセリン(新日本理化株式会社製)を用いた。
CNFとしては、段落0019から0020に記載したものを使用した。
【0057】
(実施例2)
界面活性剤を35質量%、香料を3質量%、グリセリンを15質量%、CNFを0.06質量%(2質量%水溶液を3質量%)、水を46.94質量%の割合で含有するゲル状洗浄剤組成物であり、各含有物の具体的な内容は、実施例1と同様である。
【0058】
(実施例3)
界面活性剤を35質量%、香料を3質量%、グリセリンを15質量%、CNFを0.1質量%(2質量%水溶液を5質量%)、水を46.9質量%の割合で含有するゲル状洗浄剤組成物であり、各含有物の具体的な内容は、実施例1と同様である。
【0059】
(比較例1)
界面活性剤を35質量%、香料を3質量%、グリセリンを15質量%、CNFを0質量%、水を47質量%の割合で含有するゲル状洗浄剤組成物であり、各含有物の具体的な内容は、実施例1と同様である。
【0060】
[評価方法]
上記実施例及び比較例に係るゲル状洗浄剤組成物を用いて、以下の2種類の評価を行った。
【0061】
(自己定着性評価)
実施例及び比較例に係るゲル状洗浄剤組成物につき、80℃に暖めた上で、押し出し式容器(スクラビングバブルトイレスタンプクリーナー用容器、ジョンソン株式会社製)に、40ml押し込み、室温(25℃)まで冷ました。
正方形のタイル(株式会社LIXIL(旧株式会社INAX)製内装タイル(型番SPKC-1060/L06KC)、底面の寸法;97mm×97mm、厚さ;5.0mm)につき、各辺の中心を結ぶ直線を引いて4つの正方形の領域に区分けした。
区分けされた4つの正方形の領域のそれぞれの対角線の交点となる位置4か所に、上記容器を用いて、ゲル状洗浄剤組成物を押し出した。具体的には、上記対角線の交点のうち一か所には実施例1に係るゲル状洗浄剤組成物を、上記対角線の交点のうち一か所には実施例2に係るゲル状洗浄剤組成物を、上記対角線の交点のうち一か所には実施例3に係るゲル状洗浄剤組成物を、上記対角線の交点のうち一か所には比較例1に係るゲル状洗浄剤組成物を、それぞれ直径30mmの略円形となるように、7ml押し出し、付着させた。
タイルの各辺の中心を結ぶ直線の交点に、水(温度12℃)を、タイル表面からの高さ100mmの蛇口から、2l/分の流量となるように調整して注ぎ、10分後の状態を評価した。
【0062】
具体的には、前記タイルの平面視において、付着させたゲル状洗浄剤組成物の形状が全く変わらなかった場合につき◎、付着させたゲル状洗浄剤組成物の面積が8割以上残っていれば○、付着させたゲル状洗浄剤組成物の面積が8割以下となっていれば×と評価した。
【0063】
(押し出し易さの評価)
実施例及び比較例に係るゲル状洗浄剤組成物につき、80℃に暖めた上で、押し出し容器(スクラビングバブルトイレスタンプクリーナー用容器、ジョンソン株式会社製)に、40ml押し込み、室温(25℃)まで冷ました。
被験者5人に、押し出し容器から、ゲル状洗浄剤組成物を押し出させ、押し出し易いと感じたか否かを評価させ、押し出し易いと感じた人数につき評価した。
【0064】
(評価結果)
評価の結果を表Iに示す。
【0065】
【表1】
【0066】
(評価)
実施例1から3と、比較例1との比較により、ゲル状洗浄剤組成物につき、CNFを加えることで、その定着性と、容器からの押し出し易さの両者を向上させることができることが分かる。
また、実施例1及び2と実施例3との比較により、CNFの含有量を0.1質量%以上とすることで、さらに定着性を向上できることが分かる。
また、実施例1と実施例2及び3との比較により、CNFの含有量を0.06質量%以上とすることで、さらに容器からの押し出し易さを向上できることが分かる。
【符号の説明】
【0067】
100、100A 押し出し式容器
1 容器本体
11 扁平端部
12 本体側開口部
2、2A 吐出部
21 接続部
211 吐出部側開口部
22、22A 突出部
221、221A 吐出口
222 突起部
W ゲル状洗浄剤
S 収納空間
図1
図2
図3
図4
図5