(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-02
(45)【発行日】2022-02-10
(54)【発明の名称】無線システム、遅延誤差検出装置、及び遅延誤差検出方法
(51)【国際特許分類】
H04B 1/74 20060101AFI20220203BHJP
H04B 1/04 20060101ALN20220203BHJP
【FI】
H04B1/74
H04B1/04 D
(21)【出願番号】P 2018069813
(22)【出願日】2018-03-30
【審査請求日】2021-03-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000004330
【氏名又は名称】日本無線株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100206391
【氏名又は名称】柏野 由布子
(72)【発明者】
【氏名】田中 康英
【審査官】佐藤 敬介
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-139642(JP,A)
【文献】特開2002-171208(JP,A)
【文献】特開2010-171783(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第101699775(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0204100(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 1/74
H04B 1/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
同様に構成される第1及び第2の送信部と、
前記第1の送信部のアナログ遅延量と前記第2の送信部のアナログ遅延量を検出し、前記第1の送信部のアナログ遅延量と前記第2の送信部のアナログ遅延量とが等しくなるように、前記第1の送信部及び/又は前記第2の送信部における変調後のディジタル信号の遅延量を調整する遅延誤差検出部と
を備え
、
前記遅延誤差検出部は、
前記第1及び第2の送信部からの高周波信号を選択的に入力する第1のスイッチと、
第1及び第2の送信部からの局部発振信号を選択的に入力する第2のスイッチと、
前記第1のスイッチを介して入力された高周波信号と前記第2のスイッチを介して入力された局部発振信号とを乗算して周波数変換を行うミキサと、
前記ミキサの出力信号をアナログ信号からディジタル信号に変換するADコンバータと、
第1及び第2の送信部からの変調後のディジタル信号を選択的に入力する第3のスイッチと、
前記ADコンバータから出力されるディジタル信号と前記第3のスイッチを介して入力された変調後のディジタル信号とを比較して遅延誤差を検出する遅延検出部と
を備え
る無線システム。
【請求項2】
複数の送信部からの高周波信号を選択的に入力する第1のスイッチと、
前記複数の送信部からの局部発振信号を選択的に入力する第2のスイッチと、
前記第1のスイッチを介して入力された高周波信号と前記第2のスイッチを介して入力された局部発振信号とを乗算して周波数変換を行うミキサと、
前記ミキサの出力信号をアナログ信号からディジタル信号に変換するADコンバータと、
前記複数の送信部からの変調後のディジタル信号を選択的に入力する第3のスイッチと、
前記ADコンバータから出力されるディジタル信号と前記第3のスイッチを介して入力された変調後のディジタル信号とを比較して遅延誤差を検出する遅延検出部と
を備える遅延誤差検出装置。
【請求項3】
同様に構成される第1の送信部と第2の送信部を備え
るとともに、
前記第1及び第2の送信部からの高周波信号を選択的に入力する第1のスイッチと、
第1及び第2の送信部からの局部発振信号を選択的に入力する第2のスイッチと、
前記第1のスイッチを介して入力された高周波信号と前記第2のスイッチを介して入力された局部発振信号とを乗算して周波数変換を行うミキサと、
前記ミキサの出力信号をアナログ信号からディジタル信号に変換するADコンバータと、
第1及び第2の送信部からの変調後のディジタル信号を選択的に入力する第3のスイッチと
を備えた無線システムの遅延誤差検出方法であって、
前記第1及び第2の送信部のうちの一方のアナログ遅延量を検出する工程と、
前記第1及び第2の送信部のうちの他方のアナログ遅延量を検出する工程と、
前記第1の送信部のアナログ遅延量と前記第2の送信部のアナログ遅延量とが等しくなるように遅延調整を行う工程と
を含み、
前記遅延調整を行う工程には、
前記ADコンバータから出力されるディジタル信号と前記第3のスイッチを介して入力された変調後のディジタル信号とを比較して遅延誤差を検出することが含まれる
無線システムの遅延誤差検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線システム、遅延誤差検出装置、及び遅延誤差検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、現用系と予備系の2系統の無線装置を備え、メンテナンス作業の際に、現用系と予備系とを無瞬断で切り替えるようにした冗長系を持つ無線システムが記載されている。このような冗長系を持つ無線システムでは、無線装置を切り替える際に、データ伝送のタイミングにずれがあると、受信側での復調に問題が生じてくる。そこで、特許文献1では、フレームタイミングを揃えることで装置間でのデータ伝送のタイミングを合わせ、無瞬断での現用系と予備系との切り替えを実現している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
現用系と予備系の2系統の無線装置を切り替えるような場合、フレームタイミングのようなディジタルデータでの遅延誤差とともに、アナログ部での遅延誤差が生じる。近年のデータ伝送の高速化で無線シンボルレートの高速化、変調多値数の高多値化により、送信切り替え時の送信側のアナログ部での遅延誤差が受信側復調部に与える影響は大きくなっている。しかしながら、特許文献1では、送信側の無線装置のアナログ部の遅延誤差は考慮されていない。
【0005】
上述の課題を鑑み、本発明は、同様に構成される2系統の送信部のアナログ部での遅延誤差に対する補償が行える無線システム、遅延誤差検出装置、及び遅延誤差検出方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る無線システムは、同様に構成される第1及び第2の送信部と、前記第1の送信部のアナログ遅延量と前記第2の送信部のアナログ遅延量を検出し、前記第1の送信部のアナログ遅延量と前記第2の送信部のアナログ遅延量とが等しくなるように、前記第1の送信部及び/又は前記第2の送信部における変調後のディジタル信号の遅延量を調整する遅延誤差検出部とを備え、前記遅延誤差検出部は、前記第1及び第2の送信部からの高周波信号を選択的に入力する第1のスイッチと、第1及び第2の送信部からの局部発振信号を選択的に入力する第2のスイッチと、前記第1のスイッチを介して入力された高周波信号と前記第2のスイッチを介して入力された局部発振信号とを乗算して周波数変換を行うミキサと、前記ミキサの出力信号をアナログ信号からディジタル信号に変換するADコンバータと、第1及び第2の送信部からの変調後のディジタル信号を選択的に入力する第3のスイッチと、前記ADコンバータから出力されるディジタル信号と前記第3のスイッチを介して入力された変調後のディジタル信号とを比較して遅延誤差を検出する遅延検出部とを備える。
【0008】
本発明の一態様に係る無線システムの遅延誤差検出方法は、同様に構成される第1の送信部と第2の送信部を備えるとともに、前記第1及び第2の送信部からの高周波信号を選択的に入力する第1のスイッチと、第1及び第2の送信部からの局部発振信号を選択的に入力する第2のスイッチと、前記第1のスイッチを介して入力された高周波信号と前記第2のスイッチを介して入力された局部発振信号とを乗算して周波数変換を行うミキサと、前記ミキサの出力信号をアナログ信号からディジタル信号に変換するADコンバータと、第1及び第2の送信部からの変調後のディジタル信号を選択的に入力する第3のスイッチとを備えた無線システムの遅延誤差検出方法であって、前記第1及び第2の送信部のうちの一方のアナログ遅延量を検出する工程と、前記第1及び第2の送信部のうちの他方のアナログ遅延量を検出する工程と、前記第1の送信部のアナログ遅延量と前記第2の送信部のアナログ遅延量とが等しくなるように遅延調整を行う工程とを含み、前記遅延調整を行う工程には、前記ADコンバータから出力されるディジタル信号と前記第3のスイッチを介して入力された変調後のディジタル信号とを比較して遅延誤差を検出することが含まれる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、同様に構成される第1及び第2の送信部におけるアナログ部の遅延誤差の調整を行うことができる。これにより、第1の送信部と第2の送信部とを無瞬断で切り替えても、同様のタイミングの信号を送り続けることができ、受信側における復調に影響を与えることが回避できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係る無線システムの構成を示すブロック図である。
【
図2】本発明の第1の実施形態に係る無線システムにおいて2つの送信部を切り替えるときの処理を示すフローチャートである。
【
図3】本発明の第1の実施形態に係る無線システムにおける遅延調整の説明図である。
【
図4】本発明の第1の実施形態に係る無線システムにおける遅延調整の説明図である。
【
図5】本発明の第1の実施形態に係る無線システムにおける遅延調整の説明図である。
【
図6】本発明の第1の実施形態に係る無線システムにおける遅延調整の説明図である。
【
図7】本発明による無線システムの基本構成を示す概略ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態に係る無線システム1の構成を示すブロック図である。
【0012】
図1に示すように、本発明の第1の実施形態に係る無線システム1は、2つの送信部100a及び100bと、遅延誤差検出部200とから構成される。2つの送信部100a及び100bは同様に構成されている。
【0013】
送信部100a、100bは、フレーム化部111a、111bと、マッピング部112a、112bと、ディジタル変調器113a、113bと、遅延調整器114a、114bと、DAコンバータ(Digital-to-Analog Converter)115a、115bと、バッファ116a、116bと、ミキサ117a、117bと、ローカル発振器118a、118bと、電力増幅器119a、119bとを備えている。
【0014】
フレーム化部111a、111bには、データ(DATA)及びクロック(CLK)が入力される。フレーム化部111a、111bは、入力データを所定のフレームの形式に整形する。フレーム化部111aとフレーム化部111bとの間では、互いにタイミング信号がやり取りされる。マッピング部112a、112bは、送信データをIQ平面に上にマッピングする。ディジタル変調器113a、113bは、IQ平面にマッピングされた送信データを用いて、送信データをディジタル変調する。遅延調整器114a、114bは、2つの送信部100a、100bのアナログ部の遅延調整を行う。DAコンバータ115a、115bは、送信データをディジタル信号からアナログ信号に変換する。ミキサ117a、117bは、DAコンバータ115a、115bからの送信信号とローカル発振器118a、118bからの局部発振信号とを乗算して、送信信号の周波数を所望の周波数に変換する。電力増幅器119a、119bは、送信信号を電力増幅し、高周波信号として出力する。送信部100a及び100bにおいて、DAコンバータ115a及び115bより後段がアナログ部となる。
【0015】
送信部100a及び100bの送信信号は、スイッチ121に供給される。スイッチ121は、2つの送信部100a及び100bを切り替えるスイッチである。スイッチ121が端子121a側に設定されると、送信部100a側からの送信信号がアンテナ122から出力される。スイッチ121が端子121b側に設定されると、送信部100b側からの送信信号がアンテナ122から出力される。
【0016】
本実施形態では、このような2つの送信部100a及び100bを有する冗長系のシステムに、更に、遅延誤差検出部200が設けられる。遅延誤差検出部200は、送信部100aのアナログ遅延量と送信部100bのアナログ遅延量を検出し、送信部100aのアナログ遅延量と送信部100bのアナログ遅延量とが等しくなるように、送信部100a及び/又は送信部100bにおける変調後のディジタル信号の遅延量を調整する。
【0017】
遅延誤差検出部200は、スイッチ(第1のスイッチ)211、スイッチ(第2のスイッチ)212、スイッチ(第3のスイッチ)213と、ミキサ214と、バッファ215と、ADコンバータ(Analog-to-Digital Converter)216と、遅延検出部217とから構成される。
【0018】
スイッチ211は、送信部100a及び100bからの高周波信号を選択的に入力する。スイッチ212は、送信部100a及び100bからの局部発振信号を選択的に入力する。スイッチ213は、送信部100a及び100bからの変調後のディジタル信号を選択的に入力する。
【0019】
ミキサ214は、送信部100a又は100bからの高周波信号と、送信部100a又は100bからの局部発振信号とを乗算して周波数変換を行う。ADコンバータ216は、ミキサ214の出力信号をアナログ信号からディジタル信号に変換する。遅延検出部217は、ADコンバータ216から出力されるディジタル信号の位相と、送信部100a又は100bからの変調後のディジタル信号の位相とを比較して、遅延誤差を検出する。
【0020】
次に、本発明の第1の実施形態に係る無線システム1において2つの送信部100a及び100bを無瞬断で切り替えるときの処理について説明する。
図2は、本発明の第1の実施形態に係る無線システム1において2つの送信部100a及び100bを切り替えるときの処理を示すフローチャートである。ここでは、送信部100aから送信部100bへの切り替えを行うものとする。
【0021】
(ステップS1)まず、遅延誤差検出部200の各スイッチ(スイッチ211、スイッチ212、スイッチ213)を送信部100a側に設定し、送信部100aのアナログ遅延量を検出する。
【0022】
すなわち、スイッチ211が端子211a側に設定され、スイッチ212が端子212a側に設定され、スイッチ213が端子213a側に設定される。スイッチ211が端子211a側に設定されている場合、電力増幅器119aからバッファ120aを介して出力される高周波信号がスイッチ211を介して、ミキサ214に入力される。また、スイッチ212が端子212a側に設定されている場合、ローカル発振器118aからの局部発振信号がスイッチ212を介してミキサ214に入力される。また、スイッチ213が端子213a側に設定されている場合、ディジタル変調器113aからのディジタル信号がスイッチ213を介して遅延検出部217に入力される。
【0023】
ミキサ214でローカル発振器118aの局部発振信号と電力増幅器119aから出力される高周波信号とが乗算される。ミキサ214の出力信号は、送信部100aにおけるミキサ117aの入力信号と対応した周波数の信号となる。ミキサ214の出力信号は、バッファ215を介してADコンバータ216に送られ、ADコンバータ216でディジタル信号に変換される。ADコンバータ216の出力信号は、送信部100aにおけるディジタル変調器113aの出力信号と対応した信号となる。
【0024】
遅延検出部217は、ADコンバータ216の出力信号の位相とディジタル変調器113aの出力信号の位相とを比較して、位相誤差を検出する。この遅延検出部217で検出される位相誤差は、送信部100aのアナログ遅延量δ1(遅延調整器114a、DAコンバータ115a、バッファ116a、ミキサ117a、電力増幅器119aの遅延量)と、遅延誤差検出部200のアナログ遅延量δa(ミキサ214、バッファ215、ADコンバータ216の遅延量)との和に相当する。なお、遅延調整器114aはディジタル回路であるが、アナログ遅延量を調整するために設けられたものであり、遅延調整器114aの遅延量は、送信部100aのアナログ遅延量に含められる。このようにして、送信部100aのアナログ遅延量が検出される。
【0025】
(ステップS2)次に、遅延誤差検出部200の各スイッチ(スイッチ211、スイッチ212、スイッチ213)を送信部100b側に設定し、送信部100bのアナログ遅延量を検出する。
【0026】
すなわち、スイッチ211が端子211b側に設定され、スイッチ212が端子212b側に設定され、スイッチ213が端子213b側に設定される。スイッチ211が端子211b側に設定されている場合、電力増幅器119bからバッファ120bを介して出力される高周波信号がスイッチ211を介して、ミキサ214に入力される。また、スイッチ212が端子212b側に設定されている場合、ローカル発振器118bからの局部発振信号がスイッチ212を介してミキサ214に入力される。また、スイッチ213が端子213b側に設定されている場合、ディジタル変調器113bからのディジタル信号がスイッチ213を介して遅延検出部217に入力される。
【0027】
ミキサ214で、ローカル発振器118bの局部発振信号と電力増幅器119bから出力される高周波信号とが乗算される。ミキサ214の出力信号は、送信部100bにおけるミキサ117bの入力信号と対応した周波数の信号となる。ミキサ214の出力信号は、バッファ215を介してADコンバータ216に送られ、ADコンバータ216でディジタル信号に変換される。ADコンバータ216の出力信号は、送信部100bにおけるディジタル変調器113bの出力信号と対応した信号となる。
【0028】
遅延検出部217は、ADコンバータ216の出力信号の位相とディジタル変調器113bの出力信号の位相とを比較して、位相誤差を検出する。遅延検出部217で検出される位相誤差は、送信部100bのアナログ遅延量δ2(遅延調整部114b、DAコンバータ115b、バッファ116b、ミキサ117b、電力増幅器119bの遅延量)と、遅延誤差検出部200のアナログ遅延量δa(ミキサ214、バッファ215、ADコンバータ216の遅延量)との和に相当する。なお、遅延調整器114bはディジタル回路であるが、アナログ遅延量を調整するために設けられたものであり、遅延調整器114bの遅延量は、送信部100bのアナログ遅延量に含められる。このようにして、送信部100bのアナログ遅延量が検出される。
【0029】
(ステップS3)遅延誤差検出部200により、送信部100aのアナログ遅延量δ1と送信部100bのアナログ遅延量δ2とが等しくなるように、遅延調整を行う。
【0030】
前述したように、ステップS1で、ADコンバータ216の出力信号の位相とディジタル変調器113aの出力信号の位相とが比較され、送信部100aのアナログ遅延量δ1が検出される。また、ステップS2で、ADコンバータ216の出力信号の位相とディジタル変調器113bの出力信号の位相とが比較され、送信部100bのアナログ遅延量δ2が検出される。遅延検出部217は、送信部100aのアナログ遅延量δ1と、送信部100bのアナログ遅延量δ2との遅延誤差(δ1-δ2)を求め、この遅延誤差(δ1-δ2)がゼロになるように、送信部100aの遅延調整器114a及び/又は送信部100bの遅延調整器114bの遅延量を調整する。これにより、送信部100aのアナログ遅延量δ1と送信部100bのアナログ遅延量δ2とを等しくすることができる。なお、位相の比較は、ADコンバータ216の出力信号の位相とディジタル変調器113a(又はディジタル変調器113b)の出力信号の位相の相関関係に基づいて比較するようにしてもよい。
【0031】
なお、ステップS1で遅延検出部217により求められる遅延誤差は、送信部100aのアナログ遅延量δ1と、遅延誤差検出部200のアナログ遅延量δaとの和に相当する遅延量である。ステップS2で遅延検出部217により求められる遅延誤差は、送信部100bのアナログ遅延量δ2と、遅延誤差検出部200のアナログ遅延量δaとの和に相当する遅延量である。両者の遅延誤差の差を求めると、遅延誤差検出部200のアナログ遅延量δaはキャンセルされる。よって、ステップS1で求めた遅延誤差と、ステップS2で求めた遅延誤差とを減算すれば、送信部100aのアナログ遅延量δ1と送信部100bのアナログ遅延量δ2との遅延誤差(δ1-δ2)が求められることになる。
【0032】
(ステップS4)送信部を切り替えるスイッチ121を、端子121a側から端子121b側に切り替える。
【0033】
送信部100aが運用に使用されている間では、スイッチ121は端子121a側に設定されている。スイッチ121が端子121b側に切り替えられると、送信部100bの電力増幅器119bの出力信号がスイッチ121を介してアンテナ122から送信されるようになる。これにより、送信部100aから送信部100bに、運用に用いる送信部が切り替えられる。
【0034】
ここで、本実施形態では、送信部100aのフレーム化部111aと送信部100bのフレーム化部111bとの間でタイミング信号をやり取りしている。これにより、送信部100aと送信部100bとで変調前のディジタルデータの遅延誤差の調整が行われる。更に、上述のように、遅延誤差検出部200を設けることで、送信部100aと送信部100bとで、アナログ部の遅延誤差の調整が行われている。このため、送信部100aから送信部100bに、無瞬断で運用に用いる送信部を切り替えても、同様のタイミングの信号を送り続けることができ、受信側における復調に影響を与えることが回避できる。
【0035】
図3~
図6は、本発明の第1の実施形態に係る無線システム1における遅延調整の説明図である。
【0036】
送信部100aのフレーム化部111a及び111bでは、入力データを所定形式のフレームに整形して出力している。ここで、
図3に示すように、送信部100aから出力されるディジタルデータ(
図3(A))と、送信部100bから出力されるディジタルデータ(
図3(B))との間に、遅延誤差τ1が生じているとする。すなわち、
図3(A)に示すように、送信部100aのフレーム化部111aでは、フレームA0、A1、A2、…が出力されている。これに対して、送信部100bのフレーム化部111bからのフレームA0、A1、A2、…は、遅延誤差τ1だけ遅れている。
【0037】
上述のように、送信部100aのフレーム化部111aと送信部100bのフレーム化部111bとの間では、互いにタイミング信号がやり取りされる。これにより、
図4に示すように、フレーム化部111aから出力されるディジタルデータ(
図4(A))と、フレーム化部111bから出力されるディジタルデータ(
図4(B))との間の遅延誤差τ1が解消され、ディジタルデータのタイミングを一致させることができる。
【0038】
しかしながら、
図4に示したように、フレーム化部111aから出力されるディジタルデータと、フレーム化部111bから出力されるディジタルデータとの間の遅延誤差を解消したとしても、これらのディジタルデータを変調して送信する場合に、送信部100aと送信部100bとでアナログ部の遅延誤差が生じる。
図5では、送信部100aの送信信号(
図5(A))と送信部100bの送信信号(
図5(B))との間に、遅延誤差τ2が生じている。
【0039】
本実施形態では、遅延誤差検出部200により、送信部100aのアナログ遅延量δ1と送信部100bのアナログ遅延量δ2との遅延誤差(δ1-δ2)がゼロとなるように、遅延調整器114a及び/又は114bの遅延量が調整される。これにより、
図6に示すように、送信部100aから出力される高周波信号(
図6(A))と、送信部100bから出力される高周波信号(
図6(B))との間のアナログ部の遅延誤差τ2が解消され、アナログ部のタイミングを一致させることができる。
【0040】
なお、送信部100aのアナログ部と送信部100bのアナログ部との遅延誤差の調整は、以下のような場合に行われる。
【0041】
(1)送信部100aと送信部100bとを切り替える際に、送信部100aのアナログ遅延量と送信部100bのアナログ遅延量との遅延誤差がゼロとなるように調整を行い、上述のように、無瞬断で送信部100aと送信部100bとの切り替えを行う。
【0042】
(2)出荷前に、送信部100aのアナログ部と送信部100bのアナログ部との遅延誤差がなくなるように、遅延誤差検出部200を用いて、遅延調整を行う。遅延誤差の調整が一度行われれば、その後は、遅延の誤差は変動しにくい。このため、出荷された後は、調整は不要である。
【0043】
(3)所定の条件に応じて、遅延誤差の調整を行う。すなわち、無線システムが温度変化がある環境にて用いられる場合、その温度変化に応じてアナログ部の特性が変わる場合がある。そのため、遅延誤差検出部200に、温度センサを設けておき、その温度変化が一定以上となったときに、遅延の誤差の調整を実施する。あるいは、経年劣化等を考慮する場合には、一定時間が経過したことを検知した場合に、遅延の誤差がなくなるように調整を実施する。
【0044】
なお、遅延誤差検出部200は、単体で「遅延誤差検出装置」として構成するようにしても良い。
【0045】
図7は、本発明による無線システムの基本構成を示す概略ブロック図である。すなわち、本発明による無線システムは、第1及び第2の送信部500a及び500bと、遅延誤差検出部501とを備える。第1及び第2の送信部500a及び500bは、同様に構成される。遅延誤差検出部501は、第1の送信部500aのアナログ遅延量と第2の送信部500bのアナログ遅延量を検出し、第1の送信部500aのアナログ遅延量と第2の送信部500bのアナログ遅延量とが等しくなるように、第1の送信部500a及び/又は第2の送信部500bにおける変調後のディジタル信号の遅延量を調整する。
【0046】
上述した実施形態における無線システム1の全部または一部をコンピュータで実現するようにしてもよい。その場合、この機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することによって実現してもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD-ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含んでもよい。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよく、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであってもよく、FPGA等のプログラマブルロジックデバイスを用いて実現されるものであってもよい。
【0047】
以上、この発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。
【符号の説明】
【0048】
100a,100b:送信部、111a,111b:フレーム化部、113a,113b:ディジタル変調器、114a,114b:遅延調整器、115a,115b:DAコンバータ、117a,117b:ミキサ、118a,118b:ローカル発振器、119a,119b:電力増幅器、200:遅延誤差検出部、211,212,213:スイッチ、214:ミキサ、216:DAコンバータ、217:遅延検出部