IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社神戸製鋼所の特許一覧

特許7018380タイヤ表面の画像表示方法およびその画像表示に用いる画像処理装置
<>
  • 特許-タイヤ表面の画像表示方法およびその画像表示に用いる画像処理装置 図1
  • 特許-タイヤ表面の画像表示方法およびその画像表示に用いる画像処理装置 図2
  • 特許-タイヤ表面の画像表示方法およびその画像表示に用いる画像処理装置 図3
  • 特許-タイヤ表面の画像表示方法およびその画像表示に用いる画像処理装置 図4
  • 特許-タイヤ表面の画像表示方法およびその画像表示に用いる画像処理装置 図5
  • 特許-タイヤ表面の画像表示方法およびその画像表示に用いる画像処理装置 図6
  • 特許-タイヤ表面の画像表示方法およびその画像表示に用いる画像処理装置 図7
  • 特許-タイヤ表面の画像表示方法およびその画像表示に用いる画像処理装置 図8
  • 特許-タイヤ表面の画像表示方法およびその画像表示に用いる画像処理装置 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-02
(45)【発行日】2022-02-10
(54)【発明の名称】タイヤ表面の画像表示方法およびその画像表示に用いる画像処理装置
(51)【国際特許分類】
   G01M 17/02 20060101AFI20220203BHJP
   B60C 19/00 20060101ALI20220203BHJP
   G06T 1/00 20060101ALI20220203BHJP
   G06T 5/00 20060101ALI20220203BHJP
   G06T 5/40 20060101ALI20220203BHJP
   G01B 11/30 20060101ALN20220203BHJP
【FI】
G01M17/02
B60C19/00 H
G06T1/00 300
G06T5/00 735
G06T5/40
G01B11/30 A
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2018224546
(22)【出願日】2018-11-30
(65)【公開番号】P2020087236
(43)【公開日】2020-06-04
【審査請求日】2020-11-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000001199
【氏名又は名称】株式会社神戸製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】特許業務法人梶・須原特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】福田 淳平
(72)【発明者】
【氏名】松下 康広
【審査官】岡村 典子
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-096972(JP,A)
【文献】特開2010-130399(JP,A)
【文献】高橋 英二,外5名,超高速画像処理カメラによるタイヤ三次元形状計測装置,R&D神戸製鋼技報,Vol.58 No.2,日本,神戸製鋼所,2008年,pages.62-66,「1.計測手法」-「4.実験結果」
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M 17/02
G06T 1/00、5/00
B60C 19/00
G01B 11/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に凹凸のあるマークが形成されたタイヤの表面画像を撮像する撮像工程と、
該撮像した表面画像より、前記タイヤの表面上の位置と、該位置毎の表面輝度と、の関係を表す波形データを取得する波形データ取得工程と、
前記波形データより、所定刻みで設定された前記表面輝度の階級と、該階級毎の出現度数と、の関係を表すヒストグラムを作成するヒストグラム作成工程と、
前記ヒストグラムに基づき、第1の階級閾値、および、第2の階級閾値を決定する階級閾値決定工程と、
前記ヒストグラムの前記第1の階級閾値以上の領域、前記第1の階級閾値未満で前記第2の階級閾値を超える領域、および、前記第2の階級閾値以下の領域を、色相、彩度および明度のうちの少なくともいずれか1つを用いて表現することで、画面上に前記マークを含む前記タイヤの表面画像を表示する画像表示工程と、
を含むことを特徴とするタイヤ表面の画像表示方法。
【請求項2】
前記撮像工程で撮像される前記タイヤの表面画像は、前記タイヤの周方向を横軸、前記タイヤの周方向に直交する方向を縦軸とする画像であり、
前記撮像工程で撮像された前記タイヤの表面画像を構成するラインであって前記横軸の方向に延びる前記ラインを所定本数設定するライン設定工程を含み、
前記波形データ取得工程における前記波形データの取得は、前記撮像した表面画像に対し、前記ライン1本、行うことを特徴とする請求項1に記載のタイヤ表面の画像表示方法。
【請求項3】
前記画像表示工程において、
前記第1の階級閾値以上の領域を白で、
前記第2の階級閾値以下の領域を黒で、
および、
前記第1の階級閾値未満で前記第2の階級閾値を超える領域を、白から黒の間の明度が階調的に変化するように、
表現することを特徴とする請求項1または2に記載のタイヤ表面の画像表示方法。
【請求項4】
前記所定刻みは可変であることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載のタイヤ表面の画像表示方法。
【請求項5】
前記第1、第2の階級閾値のうちの少なくともいずれか1つは、前記出現度数が最頻値となる階級に基づいて決定されることを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載のタイヤ表面の画像表示方法。
【請求項6】
前記タイヤの表面は、サイドウォール面であることを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載のタイヤ表面の画像表示方法。
【請求項7】
タイヤ表面の画像表示に用いる画像処理装置であって、
表面に凹凸のあるマークが形成されたタイヤの表面画像が撮像手段で撮像され、該撮像された前記表面画像より、前記タイヤの表面上の位置と、該位置毎の表面輝度と、の関係を表す波形データを取得する波形データ取得手段と、
前記波形データより、所定刻みで設定された前記表面輝度の階級と、該階級毎の出現度数と、の関係を表すヒストグラムを作成するヒストグラム作成手段と、
前記ヒストグラムに基づき、第1の階級閾値、および、第2の階級閾値を決定する階級閾値決定手段と、
前記ヒストグラムの前記第1の階級閾値以上の領域、前記第1の階級閾値未満で前記第2の階級閾値を超える領域、および、前記第2の階級閾値以下の領域を、色相、彩度および明度のうちの少なくともいずれか1つを用いて表現することで、画面上に前記マークを含む前記タイヤの表面画像を表示する画像表示手段と、
を含むことを特徴とする画像処理装置。
【請求項8】
前記撮像手段で撮像される前記タイヤの表面画像は、前記タイヤの周方向を横軸、前記タイヤの周方向に直交する方向を縦軸とする画像であり、
前記撮像手段で撮像された前記タイヤの表面画像を構成するラインであって前記横軸の方向に延びる前記ラインを所定本数設定するライン設定手段を含み、
前記波形データ取得手段は、前記撮像された表面画像に対し、前記ライン1本、前記波形データを取得することを特徴とする請求項7に記載の画像処理装置。
【請求項9】
前記画像表示手段は、
前記第1の階級閾値以上の領域を白で、
前記第2の階級閾値以下の領域を黒で、
および、
前記第1の階級閾値未満で前記第2の階級閾値を超える領域を、白から黒の間の明度が階調的に変化するように、
表現することを特徴とする請求項7または8に記載の画像処理装置。
【請求項10】
前記所定刻みは可変であることを特徴とする請求項7~9のいずれか1項に記載の画像処理装置。
【請求項11】
前記第1、第2の階級閾値のうちの少なくともいずれか1つは、前記出現度数が最頻値となる階級に基づいて決定されることを特徴とする請求項7~10のいずれか1項に記載の画像処理装置。
【請求項12】
前記タイヤの表面は、サイドウォール面であることを特徴とする請求項7~11のいずれか1項に記載の画像処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤ表面の画像表示方法およびその画像表示に用いる画像処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
タイヤの表面に、製品の型式やサイズ、メーカのロゴ等を表す文字、図形、記号、模様等(以下、「凹凸のあるマーク」と称し、トレッドも含む)が形成されたタイヤの形状検査装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
上記特許文献1においては、例えば、サイドウォール面の形状欠陥検査の途中で、上記凹凸のあるマークを含むサイドウォール面を、補正後2値分布情報(画像)として得る技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2010-14698号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記特許文献1に開示された技術では、画像表示手段の画面上に表示された上記画像を検査装置の操作員等が確認するだけで、タイヤの明らかな欠陥や異常がどの位置で発生しているのかを見極めるには、画像の視認性として不十分であるという問題点があった。
【0006】
本発明の目的は、表面に凹凸のあるマーク(例えば、製品の型式やサイズ、メーカのロゴ等を表す文字、図形、記号、模様、トレッド等)が形成されたタイヤの表面画像を、視認性を高めて、より鮮明に画面上に表示可能なタイヤ表面の画像表示方法およびその画像表示に用いる画像処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的を達成するために、第1発明に係るタイヤ表面の画像表示方法は、
表面に凹凸のあるマークが形成されたタイヤの表面画像を撮像する撮像工程と、
該撮像した表面画像より、前記タイヤの表面上の位置と、該位置毎の表面輝度と、の関係を表す波形データを取得する波形データ取得工程と、
前記波形データより、所定刻みで設定された前記表面輝度の階級と、該階級毎の出現度数と、の関係を表すヒストグラムを作成するヒストグラム作成工程と、
前記ヒストグラムに基づき、第1の階級閾値、および、第2の階級閾値を決定する階級閾値決定工程と、
前記ヒストグラムの前記第1の階級閾値以上の領域、前記第1の階級閾値未満で前記第2の階級閾値を超える領域、および、前記第2の階級閾値以下の領域を、色相、彩度および明度のうちの少なくともいずれか1つを用いて表現することで、画面上に前記マークを含む前記タイヤの表面画像を表示する画像表示工程と、
を含むことを特徴とするタイヤ表面の画像表示方法である。
【0008】
また、第2発明に係るタイヤ表面の画像表示方法は、第1発明に係るタイヤ表面の画像表示方法において、前記波形データ取得工程における波形データの取得は、前記撮像した表面画像に対し、1ライン毎、行うことを特徴とするものである。
【0009】
また、第3発明に係るタイヤ表面の画像表示方法は、第1発明または第2発明に係るタイヤ表面の画像表示方法において、前記画像表示工程は、前記第1の階級閾値以上の領域を白で、前記第2の階級閾値以下の領域を黒で、および、前記第1の階級閾値未満で前記第2の階級閾値を超える領域を、白から黒の間の明度が階調的に変化するように、表現することを特徴とするものである。
【0010】
また、第4発明に係るタイヤ表面の画像表示方法は、第1発明~第3発明のいずれか1つの発明に係るタイヤ表面の画像表示方法において、前記所定刻みは可変であることを特徴とするものである。
【0011】
また、第5発明に係るタイヤ表面の画像表示方法は、第1発明~第4発明のいずれか1つの発明に係るタイヤ表面の画像表示方法において、前記第1、第2の階級閾値のうちの少なくともいずれか1つは、前記出現度数が最頻値となる階級に基づいて決定されることを特徴とするものである。
【0012】
また、第6発明に係るタイヤ表面の画像表示方法は、第1発明~第5発明のいずれか1つの発明に係るタイヤ表面の画像表示方法において、前記タイヤの表面は、サイドウォール面であることを特徴とするものである。
【0013】
また、第7発明に係る画像処理装置は、
タイヤ表面の画像表示に用いる画像処理装置であって、
表面に凹凸のあるマークが形成されたタイヤの表面画像が撮像手段で撮像され、該撮像された前記表面画像より、前記タイヤの表面上の位置と、該位置毎の表面輝度と、の関係を表す波形データを取得する波形データ取得手段と、
前記波形データより、所定刻みで設定された前記表面輝度の階級と、該階級毎の出現度数と、の関係を表すヒストグラムを作成するヒストグラム作成手段と、
前記ヒストグラムに基づき、第1の階級閾値、および、第2の階級閾値を決定する階級閾値決定手段と、
前記ヒストグラムの前記第1の階級閾値以上の領域、前記第1の階級閾値未満で前記第2の階級閾値を超える領域、および、前記第2の階級閾値以下の領域を、色相、彩度および明度のうちの少なくともいずれか1つを用いて表現することで、画面上に前記マークを含む前記タイヤの表面画像を表示する画像表示手段と、
を含むことを特徴とする画像処理装置である。
【0014】
また、第8発明に係る画像処理装置は、第7発明に係る画像処理装置において、前記波形データ取得手段は、前記撮像された表面画像に対し、1ライン毎、波形データを取得することを特徴とするものである。
【0015】
また、第9発明に係る画像処理装置は、第7発明または第8発明に係る画像処理装置において、前記画像表示手段は、前記第1の階級閾値以上の領域を白で、前記第2の階級閾値以下の領域を黒で、および、前記第1の階級閾値未満で前記第2の階級閾値を超える領域を、白から黒の間の明度が階調的に変化するように、表現することを特徴とするものである。
【0016】
また、第10発明に係る画像処理装置は、第7発明~第9発明のいずれか1つの発明に係る画像処理装置において、前記所定刻みは可変であることを特徴とするものである。
【0017】
また、第11発明に係る画像処理装置は、第7発明~第10発明のいずれか1つの発明に係る画像処理装置において、前記第1、第2の階級閾値のうちの少なくともいずれか1つは、前記出現度数が最頻値となる階級に基づいて決定されることを特徴とするものである。
【0018】
また、第12発明に係る画像処理装置は、第7発明~第11発明のいずれか1つの発明に係る画像処理装置において、前記タイヤの表面は、サイドウォール面であることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0019】
以上のように、本発明に係るタイヤ表面の画像表示方法は、上述した各工程を有しているため、表面に凹凸のあるマークが形成されたタイヤの表面画像を、視認性を高めて、より鮮明に画面上に表示可能なタイヤ表面の画像表示方法を実現できる。
【0020】
また、本発明に係る画像処理装置は、上述した各手段を有しているため、表面に凹凸のあるマークが形成されたタイヤの表面画像を、視認性を高めて、より鮮明に画面上に画像表示するために用いる画像処理装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の実施形態に係るタイヤ表面の画像表示に用いる画像処理装置の概略構成を示す説明図である。
図2】タイヤのサイドウォール面の画像表示に用いるシートレーザ及びカメラの三次元配置を模式的に表した説明図である。
図3】本発明の実施形態に係るタイヤ表面(サイドウォール面)の画像表示方法の処理手順を説明するためのフローチャートである。
図4】サイドウォール面の撮像例である。
図5】サイドウォール面の周方向の位置と、該位置毎の表面輝度と、の関係を表す波形データ図である。
図6】表面輝度の階級と、該階級毎の出現度数と、の関係を表すヒストグラム図である。
図7】ヒストグラム図における第1、第2の階級閾値を説明するための説明図である。
図8】ディスプレイの画面に表示されるサイドウォール面であって、本発明の思想を適用しない場合の例である。
図9】本発明の実施形態に係る、ディスプレイの画面に表示されるサイドウォール面の例である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明者は、表面に凹凸のあるマークが形成されたタイヤの表面画像を、視認性を高めて、より鮮明に画面上に表示可能になるのか鋭意研究を行った。その結果、以下に説明するような構成により、目的を達成できることを見出した。
【0023】
以下の添付図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明し、本発明の理解に供する。なお、以下の実施形態は、本発明を具体化した一例であって、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
【0024】
図1は、本発明の実施形態に係るタイヤ表面の画像表示に用いる画像処理装置の概略構成を説明するための説明図である。
【0025】
図1において、タイヤ形状検査装置Wを構成する要部として、タイヤ1、タイヤ回転機2、センサユニット3、ユニット駆動装置4、エンコーダ5、画像処理装置6、画像表示手段としてのディスプレイ11、及びディスプレイ11の画面11aである。なお、画像処理装置6は、波形データ取得手段7、ヒストグラム作成手段8、階級閾値決定手段9および画像表示手段10を含む。更に、画像処理装置6は、タイヤ回転機2,センサユニット3,ユニット駆動装置4,エンコーダ5と接続させることも可能である。また、画像処理装置6は、例えばDSP(Digital Signal Processor)によって構成される。そして、波形データ取得手段7、ヒストグラム作成手段8、階級閾値決定手段9および画像表示手段10は、DSP内にそれぞれ設けることが可能である。
【0026】
タイヤ回転機2は、タイヤ1をその回転軸1gを中心に回転させるモータ等の回転装置である。例えば、タイヤ回転機2は、タイヤ1を60rpmの回転速度で回転させる。これにより、タイヤ1を1回転させる1秒の間に、センサユニット3によって、タイヤ1のトレッド面及びサイドウォール面の全周範囲の表面画像を撮像する。
【0027】
図1においては、タイヤ1の2つのサイドウォール面をそれぞれ撮像するのに用いられる2つのセンサユニット3a、3cと、タイヤ1のトレッド面を撮像するのに用いられる1つのセンサユニット3bと、を併せて3つのセンサユニット3を備えている。
【0028】
図2は、図1に示すセンサユニット3の代表例として、センサユニット3(3a)を構成する、シートレーザ15及びカメラ20の三次元配置を模式的に表した説明図である。図2において、センサユニット3(3a)は、2本のライン光をそれぞれ出力するシートレーザ15(16)、15(17)と、カメラ20とを備えている{以下、シートレーザ15において、詳細を説明する場合、必要に応じて15(16)、15(17)と記載}。なお、図2において、X軸はタイヤ1の半径方向(サイドウォール面1aの半径方向)、Y軸はタイヤ1の周方向(すなわち、タイヤ1が回転する方向)、Z軸はX軸及びY軸に直交する方向(すなわち、タイヤ1の回転軸1gの方向)を表す座標軸である。また、いずれのセンサユニット3a、3b、3cにおいても、Y軸はタイヤ1の周方向を表す座標軸である。
【0029】
図2において、シートレーザ15(16)から照射される線状方向の光(以下、「ライン光」と称す)とシートレーザ15(17)のライン光の互いの端部がX軸方向(サイドウォール面1aの半径方向に沿った線Ls上)で重なるように連ねて全体として一本のライン光となる。この一本のライン光は、タイヤ1のサイドウォール面1aの周方向(Y軸方向)と直交する方向(X軸方向)を向くように設定される。
【0030】
カメラ20は、カメラレンズ22及び撮像素子21(受光部)を含み、回転されるタイヤ1の表面(図2においては、サイドウォール面1a)に連ねて照射された2本のライン光の像v1(前記線Ls上の像)を撮像するものである。
【0031】
なお、図2においては、サイドウォール面1aを撮像するのに用いられるセンサユニット3aに関する、シートレーザ15及びカメラ20の三次元配置について説明したが、センサユニット3c、および、センサユニット3bでも、シートレーザ15及びカメラ20の三次元配置についての基本原理は、同じである。
【0032】
ユニット駆動装置4(図1参照)は、3つのセンサユニット3をそれぞれサーボモータ等の駆動装置を駆動源として移動可能に支持し、タイヤ1に対する各センサユニット3を位置決めする装置である。ユニット駆動装置4は、所定の操作部に対する操作に応じて、又は、外部装置からの制御指令に応じて、タイヤ1がタイヤ回転機2に対して着脱される前、または着脱後のそれぞれにおいて、各センサユニット3をタイヤ1に対して、所定位置に離反接近させる。
【0033】
また、エンコーダ5は、タイヤ回転機2の回転軸の回転角度、すなわち、タイヤ1の回転角度を検出するセンサであり、その検出信号は、センサユニット3に含まれるカメラ20の撮像タイミングの制御に用いられる。
【0034】
次に、図1に示す本発明に係る画像処理装置6により実行されるタイヤ表面の画像表示方法に関して、図2に示すサイドウォール面1aを例に、図3に示されるフローチャートを参照しつつ、処理手順を説明する。
【0035】
[ステップS1]
エンコーダ5の検出信号に基づいて、センサユニット3(3a)が備えるカメラ20のシャッター制御(撮像タイミングの制御)が行われる。例えば、60rpmの速度で回転するタイヤ1が0.09°(=360°/4000)回転したことが、エンコーダ5によって検出される毎に、カメラ20のシャッターが切られるよう制御される。これにより、1秒間に4000フレームの撮像レートで、サイドウォール面1aの表面画像が撮像される(撮像工程)。前記撮像したサイドウォール面の撮像例を図4に示す。横軸はY軸方向(タイヤ1のサイドウォール面1aの周方向(すなわち、タイヤ1が回転する方向))、縦軸はX軸方向(タイヤ1のサイドウォール面1aの半径方向)である。しかし、図4に示すサイドウォール面1aの表面画像の状態では、表面に何が映っているのか分からない。
【0036】
[ステップS2]
前記撮像したサイドウォール面1aの表面画像を構成する水平方向のライン数nを256本と設定し(ライン設定工程、画像処理装置6のライン設定手段としての機能)、前記表面画像を水平方向に、1ライン毎、処理することを宣言した場合を説明する。初期値としては、nに1が入力される。
【0037】
[ステップS3]
画像処理装置6内の波形データ取得手段7で、前記撮像したサイドウォール面1aの表面画像の水平方向のn=1番目のラインについて、タイヤ1のサイドウォール面1aの周方向(Y軸方向)の位置と、該位置毎の表面輝度と、の関係を表す波形データを取得する(波形データ取得工程、図5参照)。図5において、横軸はY軸方向(サイドウォール面1aの周方向)、縦軸は表面輝度(単位は、×0.01μm)である。
【0038】
[ステップS4]
画像処理装置6内のヒストグラム作成手段8で、前記n=1番目のラインの波形データより、所定刻み(例えば、ここでは100×0.01μm)で設定された前記表面輝度の階級と、該階級毎の出現度数と、の関係を表すヒストグラムを作成する(ヒストグラム作成工程、図6参照)。図6において、横軸は表面輝度の階級、縦軸は出現度数である。また、前記所定刻みは、適宜、変化させられる。これにより、タイヤ1の種類に応じて、表面画像をより鮮明に画面11aに表示可能となる。
【0039】
[ステップS5]
画像処理装置6内の階級閾値決定手段9で、前記n=1番目のラインのヒストグラムにおいて、前記出現度数が最頻値となる階級(図6では、29200-29300)から、階級が所定数だけ大きな階級(例えば、29500-29600)を、第1の階級閾値とし、前記出現度数が最頻値となる階級から、階級が所定数だけ小さな階級(例えば、28900-29000)を、第2の階級閾値として、決定する(階級閾値決定工程、図6参照)。また、前記最頻値となる階級に基づき、階級閾値決定手段9にて標準偏差σを演算し、前記最頻値±3σにより前記第1および第2の階級閾値を決定してもよい。また更に、その都度でオペレータが修正可能としてもよい。これにより、上記ステップS4の場合と同様に、タイヤ1の種類に応じて、表面画像をより鮮明に画面11aに表示可能となる。
【0040】
[ステップS6]
画像処理装置6内の画像表示手段10で、前記n=1番目のラインのヒストグラムの前記第1の階級閾値以上の領域(例えば、特徴部分らしき領域)、前記第1の階級閾値未満で前記第2の階級閾値を超える領域、および、前記第2の階級閾値以下の領域を、色の三属性(色相、彩度および明度)のうちの少なくともいずれか1つを用いて表現する(画像表示工程、図7参照)。図7は、画像表示工程において、色の三属性(色相、彩度および明度)のうちの明度を用いて、前記第1の階級閾値以上の領域を白で、前記第2の階級閾値以下の領域を黒で、および、前記第1の階級閾値未満で前記第2の階級閾値を超える領域を前記表面輝度の階級に応じて、白から黒の間の明度が階調的に変化するように、表現することを特徴とする。
【0041】
[ステップS7]
前記画像表示手段10で、水平方向のライン数nが、上記ステップS2で予め設定された数(設定数)の256本以上であるか否かを判別する。
【0042】
[ステップS8]
前記画像表示手段10で、水平方向のライン数nが、上記設定数以上であると判別された場合(上記ステップS7参照)は、ディスプレイ11の画面11a上に前記マークを含むタイヤ1のサイドウォール面1aの表面画像を識別可能に表示する(図9参照)。なお、図8は、画面11aに表示されるサイドウォール面1aに形成されたマークの一部であって、本発明の思想を適用しない場合の例である。具体的には、階級閾値に関するプロセスが含まれない(すなわち、階級閾値決定工程および階級閾値に基づく画像表示工程を経ない)場合を想定されたい。図9は同一領域のサイドウォール面1aにつき、本発明の適用例である。図9において、表面に凹凸のあるマークが形成されたタイヤ1のサイドウォール面1aの表面画像が、視認性高く、より鮮明に画面11a上に表示されていることが分かる。したがって、タイヤ1の明らかな欠陥や異常がどの位置で発生しているのかを確認することもできる。また、画面11a上にサイドウォール面1aの表面画像が、視認性高く、より鮮明に表示されるため、例えば、サイドウォール面1a上のどの位置を検査したらよいのか、容易に判断できるという作用効果も奏する。
【0043】
[ステップS9]
一方、前記画像表示手段10で、水平方向のライン数nが、上記設定数未満であると判別された場合(上記ステップS7参照)は、nに1を加算し、その(n+1)を、改めてnとする。そして、上記ステップS3に戻り、水平方向のライン数nが、上記設定数以上であると判別されるまで、上記ステップS3~上記ステップS9を繰り返す。
【0044】
本実施形態においては、撮像したサイドウォール面1aの表面画像を構成する水平方向のライン数nを256本と設定し、前記表面画像を水平方向に、1ライン毎、処理する例について説明したが、必ずしもこれに限定されるものではない。例えば、撮像したサイドウォール面1aの表面画像全体を一括して、波形データ取得工程、ヒストグラム作成工程、階級閾値決定工程、および、画像表示工程の順番にそれぞれ処理を行ない、前記マークを含むタイヤ1のサイドウォール面1aの表面画像を識別可能に再表示することも可能である。しかし、本実施形態のように、撮像したサイドウォール面1aの表面画像を水平方向に、1ライン毎、処理する方法を採用した場合には、タイヤ1のサイドウォール面1aの湾曲等が考慮され、サイドウォール面1aの表面画像を、視認性高く、より鮮明に画面11a上に表示可能であるため、より好ましい。
【0045】
また、水平方向のライン数nも256本に限定されるものではない。例えば、タイヤ1の種類および必要とされる表面画像の精細度に応じて適宜、水平方向のライン数nを増減させることも可能である。
【0046】
また、本実施形態においては、画像表示工程において、色の三属性(色相、彩度および明度)のうちの明度を用いて、前記ヒストグラムの前記第1の階級閾値以上の領域を白で、前記第2の階級閾値以下の領域を黒で、および、前記第1の階級閾値未満で前記第2の階級閾値を超える領域を前記表面輝度の階級に応じて、白から黒の間で明度が階調的に変化するように、表現した例について説明したが、必ずしもこれに限定されるものではない。例えば、前記第1の階級閾値以上の領域を第1の色相で、前記第2の階級閾値以下の領域を第2の色相で、および、前記第1の階級閾値未満で前記第2の階級閾値を超える領域を前記表面輝度の階級に応じて、前記第1、第2の色相とは異なる複数の色相で表現してもよい(なお、ここでは前記第1及び第2の色相の中間色を含む)。また、前記第1の階級閾値以上の領域、前記第2の階級閾値以下の領域、および、前記第1の階級閾値未満で前記第2の階級閾値を超える領域を、彩度を用いて表現してもよい。また、色相、彩度および明度を組み合わせて、表現することも可能である。すなわち、画像表示工程において、前記ヒストグラムの前記第1の階級閾値以上の領域、前記第1の階級閾値未満で前記第2の階級閾値を超える領域、および、前記第2の階級閾値以下の領域を、色相、彩度および明度のうちのいずれか2つ以上の属性を変化させることにより表現してもよい。
【0047】
また、本実施形態においては、タイヤ1のサイドウォール面1aを例に説明したが、必ずしもこれに限定されるものではない。例えば、タイヤ1のトレッド面に関しても、上述した本発明の思想が適用可能である。この場合、シートレーザ15(16)のライン光とシートレーザ15(17)のライン光の互いの端部が重なるように連ねて全体として一本のライン光が、タイヤ1のトレッド面の周方向(Y軸方向)と直交する方向(Z軸方向)を向くように設定されていればよい。
【0048】
また、本実施形態においては、タイヤ1自体がその回転軸を中心に回転される場合について説明したが、必ずしもこれに限定されるものではない。例えば、タイヤ1自体は固定された状態で、センサユニット3a、3b、3cが、タイヤ1の回転軸を中心に回転してもよい。言い換えると、撮像工程は、センサユニット3a、3b、3cに対して相対的に回転するタイヤ1の表面画像を撮像する工程であればよい。
【0049】
以上、本発明の実施形態を説明したが、具体例を示したに過ぎず、本発明の範囲内で具体的構成などは、適宜変更可能である。また、発明の実施形態に記載された、作用及び効果は、本発明から生じる最も好適な作用及び効果を列挙したに過ぎない。
【符号の説明】
【0050】
1 タイヤ
1a サイドウォール面
2 タイヤ回転機
3、3(3a)、3(3b)、3(3c) センサユニット
4 ユニット駆動装置
5 エンコーダ
6 画像処理装置(ライン設定手段を含む)
7 波形データ取得手段
8 ヒストグラム作成手段
9 階級閾値決定手段
10 画像表示手段
11 ディスプレイ
11a 画面
15、15(16)、15(17) シートレーザ
20 カメラ
21 撮像素子
22 カメラレンズ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9