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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-02
(45)【発行日】2022-02-10
(54)【発明の名称】膨張可能な装置用弁システム
(51)【国際特許分類】
   A61M 25/10 20130101AFI20220203BHJP
   A61M 1/00 20060101ALI20220203BHJP
   A61M 39/24 20060101ALI20220203BHJP
【FI】
A61M25/10 540
A61M1/00 180
A61M39/24 100
【請求項の数】 28
(21)【出願番号】P 2018521933
(86)(22)【出願日】2016-10-27
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2018-11-01
(86)【国際出願番号】 US2016059132
(87)【国際公開番号】W WO2017075226
(87)【国際公開日】2017-05-04
【審査請求日】2019-10-18
(31)【優先権主張番号】62/247,934
(32)【優先日】2015-10-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】509146126
【氏名又は名称】コンバテック・テクノロジーズ・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】CONVATEC TECHNOLOGIES INC
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100111039
【弁理士】
【氏名又は名称】前堀 義之
(74)【代理人】
【識別番号】100183232
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 敏行
(72)【発明者】
【氏名】ミンリャン・ローレンス・ツァイ
【審査官】鈴木 洋昭
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-501681(JP,A)
【文献】特表2011-519629(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0080794(US,A1)
【文献】特開2008-212628(JP,A)
【文献】特表2005-528567(JP,A)
【文献】特開平8-215303(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 25/10
A61M 1/00
A61M 39/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
膨張可能な留置医療装置の膨張可能な部分内の流体圧力を制限するための機器であって、
前記膨張可能な留置医療装置が、前記膨張可能な部分を前記機器に個別に接続している供給流体経路及び戻り流体経路を備え、
前記機器が、第1の通路により接続された流体入口ポート及び流体出口ポートを備える本体と、第2の通路に配置された充填表示器とを備え、
前記第1の通路が、前記流体出口ポートで前記供給流体経路に接続されており、
前記第2の通路が、前記戻り流体経路に接続されており、
前記第1の通路及び前記第2の通路が、前記機器内で流体連通しておらず、
前記充填表示器は、前記膨張可能な部分内の圧力が既定の第1の圧力を超過したときに、表示を提供するように構成され、
圧力逃がし弁が、前記膨張可能な部分及び前記第2の通路内の前記流体圧力が前記前記既定の第1の圧力より大きい既定の第2の圧力を超過したときに、前記圧力逃がし弁が開口し、過剰な流体が前記膨張可能な部分から放出されるように配置されている、機器。
【請求項2】
前記膨張可能な部分内の前記圧力が前記既定の第2の圧力を超過したときに前記機器の前記第1の通路が遮断されず、その結果、前記機器が、前記膨張可能な部分内の前記圧力が前記既定の第2の圧力を超過したときに、前記膨張可能な部分が前記第1の通路を介して流体を受容することを可能にするように構成されている、請求項1に記載の機器。
【請求項3】
前記既定の第2の圧力が、前記圧力逃がし弁のクラッキング圧力である、請求項1または2に記載の機器。
【請求項4】
前記既定の第2の圧力が、30mmHg~90mmHgであるか、または50mmHg~70mmHgである、請求項1~3のいずれか一項に記載の機器。
【請求項5】
前記圧力逃がし弁が、アンブレラ弁、ばね式ボール弁、ばね式ポペット弁、破断ディスク、またはそれらの組み合わせを備える、請求項1~4のいずれか一項に記載の機器。
【請求項6】
前記圧力逃がし弁が、20、15、10、9、8、7、6、または5mm以下の高さを有する、請求項1~5のいずれか一項に記載の機器。
【請求項7】
前記圧力逃がし弁が、前記第2の通路内に位置付けられている、請求項1~6のいずれか一項に記載の機器。
【請求項8】
前記充填表示器が、前記膨張可能な部分内の圧力が最適充填圧力を満たすか、または超えたときに、第1の物理状態と第2の物理状態との間で切り替わるように構成された機械要素を備える圧力表示器である、請求項1~7のいずれか一項に記載の機器。
【請求項9】
前記最適充填圧力が、10mmHg~60mmHgである、請求項8に記載の機器。
【請求項10】
前記膨張可能な部分が、最大充填容積を有し、その点で前記膨張可能な部分内の前記圧力が前記既定の第2の圧力である、請求項1~9いずれか一項に記載の膨張可能な留置医療装置。
【請求項11】
前記最大充填容積が、50ml±5mlである、請求項1に記載の膨張可能な留置医療装置。
【請求項12】
膨張可能な留置医療装置であって、
a.第1の通路及び第2の通路により接続された流体入口ポート及び流体出口ポートを備える機器であって、前記第1の通路及び前記第2の通路が、前記機器内で接続されていない、機器と、
b.保持バルーンであって、供給流体経路が、前記機器の前記第1の通路を前記流体出口ポートで前記保持バルーンに接続しており、戻り流体経路が、前記機器の前記第2の通路を前記保持バルーンに接続している、保持バルーンと、を備え、
前記機器が、前記第2の通路に配置された充填表示器を備え、
前記充填表示器は、前記保持バルーン内の圧力が既定の第1の圧力を超過したときに、表示を提供するように構成され、
前記第2の通路が、前記保持バルーン内の前記圧力が前記既定の第1の圧力より大きい既定の第2の圧力に達したときに前記保持バルーン内の圧力を軽減するように開口する圧力逃がし弁を備える、膨張可能な留置医療装置。
【請求項13】
前記既定の第2の圧力が、30mmHg~90mmHg、または50mmHg~70mmHgである、請求項1に記載の装置。
【請求項14】
前記充填表示器が、前記保持バルーンが最適充填圧力まで、またはこれを上回って充填されたときに通知を提供し、前記第2の通路内に位置付けられている、請求項1または1に記載の装置。
【請求項15】
前記最適充填圧力が、30mmHg~60mmHgである、請求項1に記載の装置。
【請求項16】
前記圧力逃がし弁が、アンブレラ弁、ばね式ボール弁、ばね式ポペット弁、破断ディスク、またはそれらの組み合わせを備える、請求項1~1のいずれか一項に記載の装置。
【請求項17】
前記保持バルーンが、患者の体腔内に挿入するためのカテーテルの遠位端に位置付けられており、前記カテーテルの近位端が、回収袋に連結するように構成されている、請求項1~1のいずれか一項に記載の装置。
【請求項18】
留置医療装置の膨張可能な部分を既定の動作範囲まで充填させる方法であって、
a)前記膨張可能な部分を備える前記装置を提供することであって、前記膨張可能な部分が、
i.第1の通路を介した膨張ポート、ならびに
ii.充填表示器及び閉鎖構成での圧力逃がし弁と、第2の通路を介して流体連通しており、
前記膨張可能な部分が、最小動作充填容積及び最大動作充填容積を有し、前記最小及び前記最大動作充填容積間の、かつこれらを含む充填容積が、前記膨張可能な部分の前記既定の動作範囲であり、前記第1の通路及び前記第2の通路が、機器内に封入されており、前記第1の通路及び前記第2の通路が、前記機器内で流体連通していない、前記装置を、提供することと、
b)前記充填表示器が、前記最小動作充填容積が達成されたことを表示するまで、前記膨張可能な部分を充填させるように、前記膨張ポート及び前記第1の通路を通して前記膨張可能な部分に流体を提供することと、
c)(i)前記圧力逃がし弁が、前記膨張可能な部分が前記最大動作充填容積を超えて充填されるのを制限するように開放構成へと開口するまで、またはii)前記圧力逃がし弁が前記開放構成へと開口する前に、前記膨張ポート及び前記第1の通路を通して前記膨張可能な部分に前記流体を提供し続けることと、を含む、方法。
【請求項19】
前記圧力逃がし弁が、30mmHg~90mmHg、または50mmHg~70mmHgのクラッキング圧力で開口する、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
前記膨張可能な部分が、対象の空洞内に挿入される、請求項1または19に記載の方法。
【請求項21】
前記膨張可能な部分の前記既定の動作範囲が、前記対象の前記空洞の同一性及び/または寸法により判定される、請求項2に記載の方法。
【請求項22】
前記対象の前記空洞に応じて、前記圧力逃がし弁のクラッキング圧力を選択することを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項23】
前記最小動作充填容積が、30ml~45mlである、請求項1~2のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記最大動作充填容積が、45ml~70mlである、請求項1~2のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記圧力逃がし弁が、弁座上に位置付けられ、前記圧力逃がし弁のクラッキング圧力が、前記弁座の高さに依存している、請求項1に記載の方法。
【請求項26】
前記圧力逃がし弁が、アンブレラ弁、ばね式ボール弁、ばね式ポペット弁、破断ディスク、またはそれらの組み合わせを備える、請求項1~2のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記圧力逃がし弁が、20、15、10、9、8、7、6、または5mm以下の高さを有する、請求項1~2のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記充填表示器が、前記膨張可能な部分内に圧力が最小動作充填容積を満たすか、または超過したときに第1の物理状態と第2の物理状態との間で切り替わるように構成された機械要素を備える圧力表示器である、請求項1~2のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
相互参照
本願は、2015年10月29日に出願された米国仮出願第62/247,934号の利益を主張し、その出願は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
留置医療装置は、医療の一般的かつ必須の部分である。留置装置は、例えば、カテーテルを介した体からの流体物質の排出を促進するように、身体器官または通路内に設置され得る。留置医療装置は、カテーテルを体内に保持及び/または封止するための保持バルーン等の膨張可能な部分を有し得る。適切な膨張は、カテーテルを体内に保持するのに使用され、患者を害することなく、体内に挿入され、かつ体から除去されるように収縮される。
【0003】
留置医療装置は、寝たきりで、固定化され、かつ/または糞便を失禁することが多い患者内の廃棄流体の仮の排水及び封じ込めを可能にする糞便管理システム(FMS)において使用されている。FMSは、創傷を糞便汚染から保護し、皮膚の損傷の危険を低減し、感染症の伝播を低減し、パッド、おむつ、及び糞便嚢等の糞便失禁の従来の方法に対する安全かつ効果的な代替手段を提供することができる。
【発明の概要】
【0004】
糞便失禁は、集中治療室にいる患者を襲う一般的な症状であり、病院職員に大きな負担を課し、患者に対する有意な危険を伴う。複雑かつ有害な影響としては、皮膚の損傷及び床擦れの進行、ならびに下痢で見られ得る感染性細菌であるC.ディフィシルの蔓延が挙げられる。
【0005】
糞便管理システムにおいて、保持バルーンは、カテーテルの遠位端に配置されている。保持バルーンは、収縮状態で体内に挿入され得、かつ直腸空洞の内側に位置付けられ得る。いったん適切に位置付けられると、保持バルーンは、保持バルーンに通路を提供し、かつカテーテルに沿って体外に延在する管の遠位端上に配置され得る膨張ポートを介して膨張され得る。保持バルーンは、過剰に膨張せず、既定の圧力を超過しないことが重要である。本開示は、糞便管理システムを含む膨張可能な留置の過剰膨張を防止するための弁及び弁システムを提供している。追加の留置医療装置としては、導尿カテーテル、気道カテーテル、気管カテーテル、排出装置、開通装置、治療法及び薬剤の投与のための装置、栄養管、及び同様のもの等、血管、尿管、及び消化管内の狭窄領域を拡張させるのに広く使用されているカテーテルバルーン拡張が挙げられる。
【0006】
一態様において、膨張可能な装置の膨張可能な部分内の流体圧力を制限するための機器であって、膨張可能な装置が、膨張可能な部分を機器に個別に接続している供給流体経路及び戻り流体経路を備え、機器が、第1の通路により接続された流体入口ポート及び流体出口ポートを備える本体を備え、第1の通路が、流体出口ポートで供給流体経路に接続されており、第2の通路が、戻り流体経路に接続されており、第1の通路及び第2の通路が、機器内で流体連通しておらず、圧力逃がし弁が、膨張可能な部分及び第2の通路内の流体圧力が既定の圧力を超過したときに、圧力逃がし弁が開口し、過剰な流体が膨張可能な部分から放出されるように配置されている、機器を提供している。いくつかの実施形態において、膨張可能な部分内の圧力が既定の圧力を超過したときに機器の第1の通路が遮断されず、その結果、機器が、膨張可能な部分内の圧力が既定の圧力を超過したときに膨張可能な部分が第1の通路を介して流体を受容することを可能にするように構成されている。いくつかの実施形態において、既定の圧力は、圧力逃がし弁のクラッキング圧力である。いくつかの実施形態において、既定の圧力は、約30mmHg~約90mmHg、または約50mmHg~約70mmHgである。いくつかの実施形態において、圧力逃がし弁は、アンブレラ弁、ばね式ボール弁、ばね式ポペット弁、破断ディスク、またはそれらの組み合わせを備える。いくつかの実施形態において、圧力逃がし弁は、約20、15、10、9、8、7、6、または5mm以下の高さを有する。いくつかの実施形態において、圧力逃がし弁は、第2の通路内に位置付けられている。いくつかの実施形態において、機器は、機器の第2の通路に配置された充填表示器をさらに備える。いくつかの実施形態において、圧力逃がし弁は、強磁性でない。いくつかの実施形態において、充填表示器は、膨張可能な部分内の圧力が最適充填圧力を満たすか、または超過したときに第1の物理状態と第2の物理状態との間で交互するように構成された機械要素を備える圧力表示器である。いくつかの実施形態において、最適充填圧力は、約10mmHg~約60mmHgである。膨張可能な医療装置を本明細書にさらに提供している。いくつかの実施形態において、膨張可能な医療装置の膨張可能な部分は、最大充填容積を有し、その点で膨張可能な部分内の圧力が既定の圧力である。いくつかの実施形態において、最大充填容積は、約35ml~約50mlである。いくつかの実施形態において、最大充填容積は、約50ml±5mlである。
【0007】
別の態様において、膨張可能な留置医療装置であって、(a)第1の通路及び第2の通路により接続された流体入口ポート及び流体出口ポートを備える機器であって、第1の通路及び第2の通路が、機器内で接続されていない、機器と、(b)保持バルーンであって、供給流体経路が、機器の第1の通路を流体出口ポートで保持バルーンに接続しており、戻り流体経路が、機器の第2の通路を保持バルーンに接続している、保持バルーンと、を備え、第2の通路が、保持バルーン内の圧力が既定の圧力に達したときに保持バルーン内の圧力を軽減するように開口する圧力逃がし弁を備える、膨張可能な留置医療装置を本明細書に提供している。いくつかの実施形態において、既定の圧力は、約30mmHg~約90mmHg、または約50mmHg~約70mmHgである。いくつかの実施形態において、機器は、保持バルーンが最適充填圧力まで、またはこれを上回って充填されたときに通知を提供する充填表示器をさらに備え、充填表示器は、第2の通路内に位置付けられている。いくつかの実施形態において、最適充填圧力は、約30mmHg~約60mmHgである。いくつかの実施形態において、圧力逃がし弁は、アンブレラ弁、ばね式ボール弁、ばね式ポペット弁、破断ディスク、またはそれらの組み合わせを備える。いくつかの実施形態において、保持バルーンは、患者の体腔内に挿入するためのカテーテルの遠位端に位置付けられており、カテーテルの近位端は、回収袋に連結するように構成されている。
【0008】
別の態様において、装置の膨張可能な部分を既定の動作範囲まで充填させる方法であって、(a)膨張可能な部分を備える装置を提供することであって、膨張可能な部分が、(i)第1の通路を介した膨張ポート、ならびに(ii)充填表示器及び閉鎖構成での圧力逃がし弁と、第2の通路を介して流体連通しており、膨張可能な部分が、最小動作充填容積及び最大動作充填容積を有し、最小及び最大動作充填容積間の、かつこれらを含む充填容積が、膨張可能な部分の既定の動作範囲であり、第1の通路及び第2の通路が、機器内に封入されており、第1の通路及び第2の通路が、機器内で流体連通していない、提供することと、(b)充填表示器が、最小動作充填容積が達成されたことを表示するまで、膨張可能な部分を充填させるように、膨張ポート及び第1の通路を通して膨張可能な部分に流体を提供することと、(c)任意に、(i)圧力逃がし弁が、膨張部分が最大動作充填容積を超えて充填されるのを制限するよう開放構成へと開口するまで、またはii)圧力逃がし弁が開放構成へと開口する前に、膨張ポート及び第1の流体通路を通して膨張部分に流体を提供し続けることと、を含む、方法を本明細書に提供している。いくつかの実施形態において、圧力逃がし弁は、約30mmHg~約90mmHg、または約50mmHg~約70mmHgのクラッキング圧力で開口している。いくつかの実施形態において、膨張可能な部分は、対象の空洞内に挿入されている。いくつかの実施形態において、膨張可能な部分の既定の動作範囲は、対象の空洞の同一性及び/または寸法により判定される。いくつかの実施形態において、本方法は、対象の空洞に応じて圧力逃がし弁のクラッキング圧力を選択することを含む。いくつかの実施形態において、最小動作充填容積は、約30ml~約45ml、または約35ml~約45mlである。いくつかの実施形態において、最大動作充填容積は、約45ml~約70ml、または約45ml~約55mlである。いくつかの実施形態において、圧力逃がし弁は、弁座上に位置付けられており、圧力逃がし弁のクラッキング圧力は、弁座の高さに依存している。いくつかの実施形態において、圧力逃がし弁は、アンブレラ弁、ばね式ボール弁、ばね式ポペット弁、破断ディスク、またはそれらの組み合わせを備える。いくつかの実施形態において、圧力逃がし弁は、約20、15、10、9、8、7、6、または5mm以下の高さを有する。いくつかの実施形態において、充填表示器は、膨張可能な部分内の圧力が最小動作充填容積を満たすか、または超過したときに第1の物理状態と第2の物理状態との間で交互するように構成された機械要素を備える圧力表示器である。
【0009】
参照による組み込み
本明細書で述べられている全ての公報、特許、及び特許出願は、各個々の公報、特許、または特許出願が参照により組み込まれると明示的かつ個別に表示されているのと同じ範囲まで、参照により本明細書に組み込まれる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】保持バルーン及び保持バルーンの過剰膨張を防止するための弁システムBを備える膨張可能な留置医療装置の実施形態である。
図2A】アンブレラ弁を備える弁システムBの実施形態である。
図2B】本明細書に提供されている弁システムにおいて使用するためのアンブレラ弁の実施形態である。
図3A】ばね式ボール弁を備える弁システムBの実施形態である。
図3B】本明細書に提供されている弁システムにおいて使用するためのばね式ボール弁の実施形態である。
図4A】ばね式ポペット弁を備える弁システムBの実施形態である。
図4B】本明細書に提供されている弁システムにおいて使用するためのばね式ポペット弁の実施形態である。
図5】本明細書に提供されている弁システムにおいて使用するための破断ディスクの実施形態である。
図6】圧力逃がし弁を有するか、または有しないシステムにおいて、バルーンが空気により膨張したときのバルーンの直径対バルーンの膨張容積の描画である。
図7】圧力逃がし弁を有するか、または有しないシステムにおいて、バルーンが空気により膨張したときのバルーン圧力対バルーンの膨張容積の描画である。
図8】圧力逃がし弁を有するか、または有しないシステムにおいて、バルーンが水により膨張したときのバルーンの直径対バルーンの膨張容積の描画である。
図9】圧力逃がし弁を有するか、または有しないシステムにおいて、バルーンが水により膨張したときのバルーン圧力対バルーンの膨張容積の描画である。
図10】圧力逃がし弁を有するか、または有しないシステムにおいて、バルーンが水により膨張したときのバルーン圧力対バルーンの膨張容積の描画である。1つのシステムは、60mmHgのクラッキング圧力を有する圧力逃がし弁から構成されており、別のシステムは、75mmHgのクラッキング圧力を有する圧力逃がし弁から構成された。
【発明を実施するための形態】
【0011】
糞便管理システムにおいて、遠位に設置された保持バルーンは、収縮状態で体内に挿入され得、直腸空洞の内側に位置付けられ得る。保持バルーンが過剰に膨張せず、患者内の既定の圧力を超過しないことが重要である。過剰膨張の合併症としては、患者内の損傷、潰瘍形成、組織壊死、及び感染症が挙げられる。保持バルーン内の適切かつ十分な圧力を制御及び維持するための課題としては、保持バルーンの入口または膨張管腔内に組み込まれた場合の患者に対する安全上の懸念、十分な圧力制御、及び圧力スパイクの防止を含む、圧力逃がし及び維持システムを組み込むための医療装置内の限定された設置面積、及び10mmHg~100mmHg(およそ0.2psi~2psi)の範囲で圧力を維持する際に技術的課題を提示する、保持バルーン内で維持される低圧力が挙げられる。
【0012】
本発明は、糞便管理システムを含む膨張可能な留置医療装置の過剰膨張を防止するための圧力逃がし弁を含む弁及び弁システムを提供している。いくつかの実施形態において、圧力逃がし弁は、低圧力の維持及び制御において提示される課題に対処するために、保持バルーンシステムの出口または戻り管腔内に組み込まれる。加えて、本明細書に記載されている圧力逃がし弁は、これらの留置医療装置において使用される低圧力維持システム内の動作を可能にする、小設置面積または寸法を有する機械であり得る。追加的な留置医療装置としては、導尿カテーテル、気道カテーテル、気管カテーテル、排出装置、開通装置、治療法及び薬剤の投与のための装置、栄養管、及び同様のもの等、血管、尿管、及び消化管内の狭窄の領域を拡張させるのに広く使用されているカテーテルバルーン拡張が挙げられる。
【0013】
図1を参照すると、弁システムB及び装置Aを患者の体腔内に位置付けるための遠位端104を有する細長い可撓性管状要素102を備える膨張可能な留置医療装置Aの実施形態を示している。管状要素102の近位端106は、装置Aが患者内に位置付けられたときに管状要素102の内側を通して排出する患者からの排泄物を回収するための容器に接続し得る。体腔内の装置Aの遠位端104を固定する機能を果たすその膨張状態で示されている膨張可能な保持バルーン108が、管状要素102の遠位端104の外側表面に固着される。
【0014】
保持バルーン108は、供給管腔110により提供された供給流体経路及び戻り管腔122により提供された戻り流体経路を通して弁システムBに接続されている。弁システムBは、膨張中に、かつ保持バルーン108が体腔内に保持されるときに保持バルーン108内の流体圧力を制限するように設計されている。弁システムBの本体112は、保持バルーン108を膨張させるための流体源と関連付けられたコネクタを受容するための入口ポート116と、供給流体経路に接続された出口ポート114とを備え、入口ポート116及び出口ポート114は、本体112内の第1の通路を介して接続されている。
【0015】
弁システムBは、戻り流体経路に接続された第2の通路をさらに備え、第2の通路は、充填表示器118及び圧力逃がし弁120を備える。第2の通路は、第2の通路が保持バルーン108からの圧力を受容するように、戻り流体経路を介して保持バルーン108に接続されている。保持バルーン108内の圧力が、例えば、膨張中に第1の圧力を超過した場合、充填表示器118は、膨張ポート116を介して保持バルーン108から過剰な流体を除去するように、保持バルーン108を充填する実行者に視覚的及び/または聴覚的通知等の通知を提供する。保持バルーン108内に圧力が第2の圧力を超過した場合、圧力逃がし弁120は、開口し、弁システムの第2の通路を通して保持バルーン108からの過剰な流体を放出するだろう。第2の圧力は、第1の圧力以上であり得る。いくつかの事例において、第1の圧力は、充填表示器118が、最適圧力が満たされており、膨張を中断させるように、保持バルーン108を充填する実行者に通知する保持バルーン108の最適圧力である。充填表示器118が機械要素である場合、充填表示器118の第1の状態は、過少膨張を表示し得、第2の状態は、最適膨張及び過剰膨張の両方を表示し得る。
【0016】
本図において、圧力逃がし弁120及び充填表示器118は、第2の通路内に位置付けられており、膨張ポート116は、保持バルーン108に対する第1の通路内にある。この例示的な構成において、弁システム本体112のハウジング以外の第1の通路から第2の通路間の相互作用がなく、よってこれらの構成要素を有するユーザ相互作用の設置面積を最小にする。
【0017】
図1に示されている充填表示器118は、第2の流体通路にわたって位置付けられた半球体を備える。第1の圧力に達したとき、半球体は外方に拡張して、第1の圧力に達したとの視覚的表示を提供する。しかしながら、充填表示器118は、代替的もしくは追加的に、例えば、電磁弁、空気弁、発光ダイオード(LED)もしくは他の光、聴覚的音、無線ビープ音、または同様のものを介して、第1の圧力に達したときの空気もしくは電子表示を提供し得る。
【0018】
図1に示されている圧力逃がし弁120は、弁座124上に位置するアンブレラ弁である。しかしながら、本明細書に提供されている弁システムに有用な他の圧力逃がし弁が想定される。非限定的な例として、弁システムは、ばね式ボール弁、ばね式ポペット弁、破断ディスク、またはそれらの組み合わせを備え得る。概して、圧力逃がし弁は、接続される保持バルーン108の最大圧力に相当する弁システム内のクラッキング圧力(すなわち、弁を開口するのに必要とされる最小圧力)を有するように選択される。
【0019】
図1に示されている弁システムBは、膨張中、または装置Aが患者の体腔内に維持されているときに、保持バルーン108の圧力を制限するのに有用である。この目的のために弁システムBを使用する方法は、(a)概して図1に示されている膨張可能な留置医療装置Aを提供することと、(b)保持バルーン108を体腔内に挿入することと、(c)弁システムBの膨張ポート116に接続された流体源を介して保持バルーン108内に流体を導入することと、を含み、保持バルーン108の第1の圧力が達成された場合、充填表示器118は、そのような圧力の表示を提供し、過剰な流体は、保持バルーン108内の圧力が第1の圧力未満に低減されるまで膨張ポート116を通して引き込まれ得、保持バルーンの第2の圧力が達成された場合、圧力逃がし弁120が開口し、保持バルーン108から過剰な流体を放出する。圧力逃がし弁が非開口状態に戻ることができる(例えば、アンブレラ弁、ばね式ボール弁、ばね式ポペット弁)事例に対して、保持バルーン108内の圧力が第2の圧力未満に低減されたとき、圧力逃がし弁は、非開口状態に戻る。
【0020】
いくつかの実施形態において、膨張ポート116は、流体源として機能するルアーロックシリンジに接続するルアー取り付け具を備える。いくつかの事例において、膨張流体源の、膨張ポート116への係合は、ルアーチェック弁への流体のアクセスを可能にし、一定の圧力を満たしたとき、ルアーチェック弁の開口を可能にする。いくつかの事例において、膨張流体源の、膨張ポート116への係合は、封止部を開口し、ルアーチェック弁へのアクセスを可能にする。ルアーチェック弁は、本体、ステム、及びプラグを備え得る。いくつかの事例において、ステムは、弾性ゴムを備える。ルアーチェック弁は、通常、弁のステムが膨張流体源(すなわち、シリンジ)のルアー先端部により圧縮されたとき、流体経路を開口させて弁システムBの第1の通路内への流体の通過を可能にするように、閉鎖され得る。
【0021】
圧力逃がし弁としてアンブレラ弁132を備える弁システムBの実施形態を図2Aに示している。図1に図示されているように、弁システムBは、本体112内に封入された第1及び第2の通路を備える。図2Aに示されている弁システムBに対して、充填表示器118及び弁座134上に着座されたアンブレラ弁132が、第2の通慮内に位置付けられている。アンブレラ弁132及び弁座134の詳細な図を図2Bに示している。アンブレラ弁132は、一定の封止力を有する弁座134に対して平らである封止ディスク136と、ステム138とを備える。封止ディスク136は、封止力を生成するための弾性材料特性及び凸形状を有し得、ステム138を使用して、ばねまたは保定装置等の追加の構成要素の必要性を回避するようにアンブレラ弁132を適所に保持する。弁座134は、通気口140を備える。通気口140を通して封止ディスク136上に行使される力が座部134から凸状振動板を持ち上げるのに十分であるとき、アンブレラ弁132は、流れが前方方向(図2B、右パネル)に生じることを可能にすると同時に、反対方向(図2B、左パネル)での逆流を防止する。アンブレラ弁132は、前方方向が、第2の通路からアンブレラ弁132を通して本体112を残すように流体が流れる方向であるように配向されている。アンブレラ弁132は、アンブレラ弁132を開口するのに必要な力が、弁システムBの第2の通路に加わる保持バルーン108の既定の圧力に相当するように選択され得る。既定の圧力は、約30mmHg~約90mmHg、または約50mmHg~約70mmHgであり得るアンブレラ弁132のクラッキング圧力に相当し得る。
【0022】
既定の圧力を超過したときに流体を放出し、次に、圧力が既定のレベル未満に低下したときに閉鎖するばね式ボール弁142を備える弁システムBの実施形態を図3Aに示している。ばね式ボール弁の詳細な図を図3Bに示している。ばね式ボール弁142は、バルーン108内の流体の圧力が既定のレベルを超過したとき、流体がボール144上でばね146を圧縮して流体が前方方向に移動することを可能にする力を行使するように、ばね146に対して位置付けられたボール144を備える。ばね式ボール弁142は、ボール144を圧縮するのに必要な力が、弁システムBで認識されるバルーン108の既定の圧力に相当するように選択され得る。既定の圧力は、約30mmHg~約90mmHg、または約50mmHg~約70mmHgであり得るばね式ボール弁142のクラッキング圧力に相当し得る。いくつかの実施形態において、クラッキング圧力は、約60mmHgである。
【0023】
ばね式ポペット弁148を備える弁システムBの実施形態を図4Aに示している。ばね式ポペット弁148(図4B)は、ポペット弁148のばね及び第2の通路内からの圧力がばね式ポペット弁148上に対向する力を加えるように弁システムB内に位置付けられている。第2の通路からの力が、ばね力(すなわち、クラッキング圧力)より大きい力を行使すると、次に、ポペットが、弁座から離れるように移動し、流体がばね式ポペット弁148の出口ポートを通過することを可能にする。第2の通路内の圧力が弁のクラッキング圧力未満に低下すると、弁は閉鎖する。
【0024】
図5に示されているように、本明細書に提供されている弁システムBにおいて有用である別の種類の圧力逃がし弁は、破断ディスク150である。破断ディスクは、既定の差圧で破断する使い切り薄膜152を備える。いくつかの事例において、本明細書で提供されている弁システムは、第1の圧力逃がし弁、及びバックアップ装置として、破断ディスクを備える。例えば、圧力が増加し、第1の圧力逃がし弁が動作しないか、または十分な圧力を十分迅速に軽減しない場合、破断ディスクは、破裂するだろう。
【0025】
弁システム
本開示の一態様において、本明細書に提供されている弁システムは、非干渉であるか、または非相互作用性である第1及び第2の通路を有する。これは、US2015/0051542に記載されているもの等、先に記載されている弁システムとは明確に異なる。例えば、現在の弁システムの圧力が既定の充填圧力を超過したとき、第1の通路は、クラッキング圧力がそのように設定された場合の本開示において充填され続けることが可能である。したがって、本明細書のシステムは、クラッキング圧力を既定の充填圧力を上回って設定することを可能にするが、US2015/0051542に記載されている弁システムは、第2の通路内の圧力が既定の充填圧力に達するとすぐに、第1の通路からの流れを停止するだろう。本開示のそのような設計は、US2015/0051542の弁システムを通しては達成することができない臨床使用における利点を有する。最適充填圧力は、患者によって異なるため、動作窓の制限された可撓性を有する弁システムは、充填圧力を患者に起因して変えることを可能にする。例えば、肥満患者内の直腸圧力は、平均的な体重及び直腸の大きさを有する特許の直腸圧力より大きい場合がある。結果として、肥満患者集団内の充填圧力は、バルーンを直腸の内側で膨張させ、よって固定することを可能にするために、最適充填圧力を上回って調節される必要があり得る。最適充填圧力を上回って設定されるようにクラッキング圧力を適切に選択することにより、本記載されているシステムは、バルーンを最適充填圧力を上回る圧力範囲で充填することを可能にする。装置内の任意の充填表示器は、適切な充填容積に対する合図または信号を提供する。同時に、圧力逃がし弁のクラッキング圧力は、患者に有害である有意な過剰膨張を防止する。これは、60mmHgの圧力逃がし弁が本発明の一実施形態で使用されるときにバルーンの膨張を可能にする40ml~50mlの充填容積の範囲がある図10に図示されている。図10はまた、本実施形態において、75mmHgの圧力逃がし弁を使用するときにバルーンの膨張を可能にする40ml~60mlの充填容積の範囲があることを示している。本発明のシステムのそのようなより広い動作範囲は、特定の患者上の充填容積の動作範囲が非常に狭い、US2015/0051542のシステムを使用する必要性を制限することなく、臨床医が大多数の患者内の直腸バルーンを膨張させることを可能にする。任意の充填表示器の使用は、臨床医が最適充填容積(よって、バルーン圧力)の開始を判断することを可能にする別の安全特徴を追加する。
【0026】
圧力逃がし弁
膨張可能な留置医療装置の膨張可能な部分に、かつ/またはそこから、それぞれ、流体の通過を可能にするか、または拒絶するための開放構成及び閉鎖構成を有する圧力逃がし弁を備える弁システムを本明細書に提供している。考察されているように、圧力逃がし弁は、第1の通路を介した膨張中に生じ得る任意の圧力スパイクが弁を早めに開口するように、弁システムの第2の通路内に配置されている。
【0027】
圧力逃がし弁は、膨張可能な留置医療装置の弁システム内の限定された接地面積を部分的に有するように選択される。小さい設置面積は、体の敏感な部分に密接している糞便カテーテル、フォーリーカテーテル、及び気道カテーテルの場合のように、患者が弁システム上に横たわるか、または擦り付けたときに床擦れを生じる可能性を最小にする。いくつかの実施形態において、圧力逃がし弁を備える弁システムの高さは、約50mm、40mm、30mm、20mm、15mm、または10mm以下である。いくつかの実施形態において、圧力逃がし弁の高さは、約50mm、40mm、30mm、20mm、15mm、または10mm以下である。いくつかの事例において、弁システムの高さは、約20mm未満である。いくつかの事例において、圧力逃がし弁の高さは、約20mm未満である。いくつかの事例において、圧力逃がし弁の高さは、約15mm未満である。いくつかの事例において、圧力逃がし弁の高さは、約10mm未満である。
【0028】
圧力逃がし弁はまた、弁を開口させる第2の通路内のクラッキング圧力、または最小圧力に対して選択される。圧力逃がし弁は、そのクラッキング圧力が特定の膨張可能な留置医療装置のために必要とされる圧力制限に相当するように選択され得る。いくつかの例において、クラッキング圧力は、装置の膨張可能な部分の膨張中に満たされる。いくつかの例において、クラッキング圧力は、バルーンの膨張後に満たされ、例えば、クラッキング圧力は、咳、くしゃみ、蠕動、移動、着座、及び号泣により生じる圧力変化を含む、患者の体内の圧力変化により生じ得る膨張可能な部分内の圧力変化により達成される。
【0029】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載されているシステムにおける弁のクラッキング圧力は、約10mmHg~約120mmHg、約10mmHg~約100mmHg、約10mmHg~約90mmHg、約10mmHg~約80mmHg、約10mmHg~約70mmHg、約20mmHg~約90mmHg、約20mmHg~約80mmHg、約30mmHg~約90mmHg、約30mmHg~約80mmHg、約40mmHg~約90mmHg、約40mmHg~約80mmHg、約50mmHg~約80mmHg、または約50mmHg~約70mmHgである。クラッキング圧力は、約50mmHg~約70mmHgであり得る。いくつかの事例において、本明細書に記載されているシステム内の弁のクラッキング圧力は、約30mmHg~約90mmHgである。公差は、約±5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、または20%であり得る。いくつかの事例において、公差は、約±15%である。クラッキング圧力は、約±15%の公差を有する約50mmHg~約70mmHgであり得る。いくつかの事例において、弁のクラッキング圧力は、±10mmHg、もしくは好ましくは±5mmHgの公差を有する約30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、または90mmHgである。種々の実施形態において、弁システムの管腔内の流体流の比率は、システムの弁のクラッキング圧力に依存している。
【0030】
本明細書に提供されているシステムにおいて有用な圧力逃がし弁は、設定に達したときに弁が開口する、放風弁またはクラッキング圧力チェック弁を含む。例えば、いったん弁システム内で既定の圧力に達すると、弁が開口して圧力を放出し、膨張可能な留置医療装置の膨張可能な部分の過剰膨張を防止する。本明細書に記載されている弁システムにおいて有用な圧力逃がし弁の非制限的な例としては、アンブレラ弁、ダックビル弁、スプリット弁、金属ばね弁、フィルム弁、及び皿ばね弁が挙げられる。いくつかの実施形態において、弁は、フランジ状である。他の実施形態において、弁は、スリーブ状である。いくつかの実施形態において、弁は、複合弁、例えば、1つの単一の構成要素において2つ以上の弁を備える弁である。いくつかの事例において、複合弁は、ダックビル及びアンブレラを備える。
【0031】
圧力逃がし弁は、装置内に一方向流を生成する一方向弁であり得る。そのような例において、圧力逃がし弁は、前方方向流を可能にし、かつ逆流を防止するエラストマー封止要素を備え得る。一方向弁の非限定的な例としては、アンブレラ弁、ばね式ボール弁、ばね式ポペット弁、及び破断ディスクが挙げられる。いくつかの事例において、圧力逃がし弁は、開口するときに2つの方向での流体の通過を可能にする双方向弁である。
【0032】
圧力逃がし弁は、留置医療装置内の一体化に好適な任意の材料から作製され得る。材料としては、限定されないが、シリコン、エラストマー、フッ素重合体、合成、または天然ゴム、ポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロン、アセタール、PVDF、ABS、及び耐炭化水素フルオロシリコンゴムが挙げられる。エラストマー材料は、ショアA75未満、ショアA60未満、または好ましくは、ショアA50未満の硬度により特徴付けられることが多い。いくつかの実施形態において、圧力逃がし弁は、強磁性でない。いくつかの事例において、強磁性弁を使用せずに、留置医療装置内の弁システムを使用して患者が磁気共鳴撮像法により走査されることを可能にする。
【0033】
いくつかの実施形態において、圧力逃がし弁は、弁システム内に機械的に保持されており、例えば、弁は、座部上に位置付けられている。いくつかの実施形態において、圧力逃がし弁は、弁システム内に接着されているか、またな別様に保持されている。他の実施形態において、圧力逃がし弁は、弁システムの別の構成要素に溶接されている。
【0034】
いくつかの実施形態において、圧力逃がし弁は、アンブレラ弁である。例示的な実施形態において、アンブレラ弁は、振動板形状の封止ディスク、すなわち、アンブレラ形状、及びステムを備える。座部内に取り付けられたとき、凸状振動板は、弁座に対して平らになり、一定量の座部の不整を吸収し、かつ一定の封止力を生成する。アンブレラ弁は、いったん頭部圧力が凸状振動板を座部から持ち上げるのに十分な力を生成すると前方方向流を可能にするため、既定の圧力での一方向の流れを可能にし、反対での直ぐの逆流を防止する。いくつかの実施形態において、開放圧力は、座部の厚さを変化させることにより変化可能である。いくつかの事例において、ステムの高さは、約1mm~約20mm、または約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、または20mmである。いくつかの事例において、弁座の高さは、少なくとも約1、2、3、4、または5mmである。いくつかの事例において、封止ディスクは、直径約5mm~約20mmを有する。
【0035】
アンブレラ弁のクラッキング圧力は、弁及び/または弁座の構成に従って可変であり得る。いくつかの実施形態において、弁座の高さは、座部内に存在する弁のクラッキング圧力に寄与する。いくつかの実施形態において、弁座内の通気口の大きさは、弁のクラッキング圧力に寄与する。例えば、高流率を必要とする弁に対して、座部内の流れ通気口は、より大きく、低流率を必要とする弁に対して、座部内の流れ通気口は、より小さい。いくつかの事例において、高背圧に対する抵抗を必要とする弁に対して、座部内の流れ通気口は、より小さく、座部は、より高く、アンブレラは、アンブレラの縁がより持ち上がりにくいように、より堅固である。いくつかの事例において、低背圧に対する抵抗を必要とする弁に対して、座部内の流れ通気口は、より幅広く、座部は、より細く、アンブレラは、アンブレラの縁がより持ち上がりやすいように、より堅固でない。いくつかの実施形態において、弁座は、約0.5mm~約5mm、約0.5mm~約4mm、約0.5mm~約3mm、約0.5mm~約2mm、約0.5mm~約1mm、約1mm~約5mm、約1mm~約4mm、約1mm~約3mm、または約1mm~約2mmの厚さを有する本明細書の弁システムに対して選択される。いくつかの実施形態において、弁座は、約0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2、または2.5mmの座部高さを有する。アンブレラ弁のクラッキング圧力は、約30mmHg~約90mmHg、または約50mmHg~約70mmHgであり得る。
【0036】
いくつかの実施形態において、アンブレラ弁は、固定器具により座部内の適所に保持されるステムを備える皿ばね弁である。この固定器具は、アンブレラ弁の直上のキャップもしくは蓋のように一体的である、装置の別個の構成要素または一体部である可能性がある。
【0037】
いくつかの実施形態において、圧力逃がし弁は、ダックビル弁である。例示的な実施形態において、ダックビル弁は、逆流を防止し、かつ前方方向流を可能にするダックビルの形状でのエラストマーリップ部を備える。ダックビル弁は、封止部を形成するように座部表面との一体化を必要とされない場合がある。代わりに、弁の封止機能は、弁の一体的な構成要素である。
【0038】
いくつかの実施形態において、圧力逃がし弁は、スプリット弁である。いくつかの実施形態において、スプリット弁は、部分的に横方向弁区分にわたる遠位切り込みを備え、切り込みは、弁の片側に対して押圧される力の受容により開口し、次に、力が除去されたときに閉鎖されるように構成されている。例えば、力は、膨張中の弁システム内の流体により行使される圧力である。別の例として、力は、膨張可能な留置医療装置の膨張可能な部分に対する別の外力の適用により生じる弁システム内の圧力である。いくつかの事例において、弁封止部は、別個に成形されるか、または2分割され、次に、分割中に容易に破壊される弱い結合を形成するように融着されている一体的に成形された弁封止部から形成される、2つの対向する半体を備える。
【0039】
いくつかの実施形態において、圧力逃がし弁は、剛性着座部が組み込まれているカートリッジ型である。いくつかの事例において、カートリッジ型弁は、典型的に、本体、Oリング、ポペット、カートリッジ、及び金属ばねを備える。いくつかの事例において、カートリッジ型弁は、本体、Oリング、及びアンブレラ弁を備える。いくつかの事例において、カートリッジ型弁は、本体、Oリング、及びダックビル弁を備える。
【0040】
いくつかの実施形態において、圧力逃がし弁は、フィルム弁またはクラッキング圧力チェック弁である。いくつかの実施形態において、圧力逃がし弁は、アンブレラ弁である。クラッキング圧力チェック弁は、単一成形弁へと一体化された複数の構成要素を備える。弁ステムに対する張力を変更することにより、異なるクラッキング圧力を達成することができる。流率は、弁穴の大きさを変更することにより制御される。
【0041】
いくつかの実施形態において、圧力逃がし弁は、そのクラッキング圧力に達したときに流体を放出し、次に、圧力がクラッキング圧力未満に低下したときに閉鎖する、ばね式ボール弁である。ばね式ボール弁は、クラッキング圧力に達したとき、圧力が、ばねを圧縮して流体が前方方向に移動することを可能にするボールに対する力を行使するように、ばねに対して位置付けられたボールを備え得る。ばね式ボール弁のクラッキング圧力は、約30mmHg~約90mmHg、または約50mmHg~約70mmHgであり得る。
【0042】
いくつかの実施形態において、圧力逃がし弁は、ポペット弁のばね及び第2の通路内からの圧力が、ばね式ポペット弁に対して対向する力を適用するように、弁システム内に位置付けられたばね式ポペット弁である。第2の通路からの力がばね力(すなわち、クラッキング圧力)より大きい力を行使したとき、次に、ポペットは、弁座から離れるように移動し、流体がばね式ポペット弁の出口ポートを通過することを可能にする。第2の通路内の圧力が弁のクラッキング圧力未満に低下すると、弁は閉鎖する。ばね式ポペット弁のクラッキング圧力は、約30mmHg~約90mmHg、または約50mmHg~約70mmHgであり得る。
【0043】
充填表示器
いくつかの実施形態において、弁システムは、いったん膨張可能な部分が最適充填容積、最適充填圧力、またはどちらが最初に達しようとも最適充填容積もしくは最適充填圧力のいずれかに達し、かつ/またはこれを超過すると、臨床医及び/またはユーザに表示する充填表示器を備えるか、またはこれに動作可能に接続される。充填表示器は、弁システムの本体内に存在し得るか、または本体とは別個の構成要素であり得る。本システムが戻り流体経路及び筐体(例えば、戻り管腔)を備える場合、充填表示器は、筐体内に存在し得る。いくつかの例において、充填表示器は、戻り流体経路と流体連通する弁システムの本体内に存在する。いくつかの実施形態において、充填表示器は、いったん膨張可能な部分が最適充填容積及び/または圧力に達するか、またはこれを超えると、通知を提供する視覚的及び/または聴覚的表示器である。いくつかの事例において、充填表示器は、膨張可能な部分内の圧力に相当する第2の通慮内の圧力に応じて第1の物理状態と第2の物理状態との間で交互するように構成された機械要素である。非限定的な例として、機械要素は、膨張部分内の最適充填容積及び/または圧力が満たされていないときに第1の物理状態にあり、最適充填容積及び/または圧力が満たされるか、または超過したときに第2の物理状態になる。いくつかの事例において、機械要素は、膨張可能な部分が過少膨張であるときに第1の物理状態になる。いくつかの事例において、機械要素は、膨張可能な部分が過剰に膨張するときに第2の物理状態になる。種々の実施形態において、機械要素は、膨張可能な部分が最適充填容積及び/または圧力に充填されたときに第2の物理状態になる。
【0044】
いくつかの実施形態において、弁システムは、第1の圧力が達成されたときに充填表示器が表示し、第2の圧力が達成されたときに圧力逃がし弁が過剰膨張を防止するように、充填表示器及び圧力逃がし弁の両方を備える。いくつかの事例において、圧力逃がし弁は、いったん第2の圧力に達すると開口することにより過剰膨張を防止する。いくつかの事例において、第2の圧力は、圧力逃がし弁のクラッキング圧力に相当する既定の充填圧力である。いくつかの事例において、第2の圧力は、最大充填圧力である。いくつかの事例において、第1の圧力は、最適充填圧力である。いくつかの事例において、圧力逃がし弁は、膨張可能な部分が第1の圧力より大きい圧力に達することを可能にしないことにより、過剰膨張を防止する。いくつかの事例において、圧力逃がし弁は、最適充填圧力より高く、かつ長期間にわたる組織接触による有意な組織損傷を生じる可能性がある圧力により画定される、所望可能な圧力より高い圧力に達することを可能にしないことにより、過剰膨張を防止する。いくつかの事例において、圧力逃がし弁は、膨張可能な部分が第1の圧力より5%、10%、15%、20%、25%、30%、50%、または100%高い圧力に達することを可能にしないことにより、過剰膨張を防止する。いくつかの事例において、第1の圧力は、第2の圧力とは異なる。いくつかの事例において、第1の圧力は、第2の圧力より小さい。いくつかの事例において、第1及び第2の圧力は、約100%、75%、50%、40%、30%、20%、15%、10%、5%、または1%未満で異なる。
【0045】
膨張可能な留置医療装置
本明細書に提供されている弁及び弁システムは、留置医療装置の膨張可能な部分内の圧力を制御するのに有用である。いくつかの事例において、医療装置は、直腸カテーテルを備える。いくつかの事例において、医療装置は、導尿カテーテルを備える。いくつかの事例において、医療装置は、気道カテーテルを備える。いくつかの事例において、医療装置は、気管カテーテルを備える。いくつかの実施形態において、膨張可能な部分は、装置の遠位端を体腔内に保持するように構成された保持バルーンである。いくつかの事例において、膨張可能な部分、例えば、保持バルーンは、約70ml、60ml、50ml、45ml、40ml、35ml、30ml、25ml、20ml、15ml、10ml以下より小さい充填容量を有する。いくつかの事例において、膨張可能な部分は、直腸カテーテルを備える糞便管理システムの保持バルーンであり、約25ml~約60ml、約25ml~約50ml、約35ml~約45ml、約30ml~約60ml、約30ml~約50ml、約30ml~約45ml、約35ml~約55ml、約35ml~約50ml、約35ml~約45ml、または約40ml~約50mlの充填容積を有する。いくつかの事例において、膨張可能な部分は、約55、54、53、52、51、50、49、48、47、46、45、44、43、42、41、または40ml未満の液体により膨張する。いくつかの事例において、膨張可能な部分は、約45ml未満の液体により膨張する。膨張可能な部分が45ml未満の液体により膨張する事例において、膨張可能な部分内の圧力は、圧力逃がし弁が開口するようにトリガされたとき、約50mmHg±5mmHgであり得る。いくつかの事例において、膨張可能な部分は、約50ml未満の液体により膨張する。膨張可能な部分が50ml未満の液体により膨張する事例において、膨張可能な部分内の圧力は、圧力逃がし弁が開口するようにトリガされたとき、約50mmHg±5mmHgであり得る。圧力逃がし弁が開口する圧力であるクラッキング圧力は、各患者に適合され得る。このように、圧力逃がし弁に対するクラッキング圧力の範囲は、約50mmHg~約70mmHgであり得る。これは、患者と圧力逃がし弁との間の変動を可能にし得る。
【0046】
いくつかの事例において、膨張可能な部分は、約5ml~約20ml、約5ml~約15ml、約8ml~約12mlの充填容量を有する導尿カテーテルの保持バルーンである。いくつかの実施形態において、膨張可能な部分は、発泡充填を備える。いくつかの例において、発泡体は、膨張可能な部分を自己膨張させるだろう。これは、膨張可能な部分が圧力変化後にその元の大きさに戻ることを可能にする。例えば、圧力は、咳中及び後に生じるような体内の収縮及び拡張周期により変化する。好適な発泡体としては、ポリウレタン発泡体及びメモリ発泡体が挙げられる。
【0047】
種々の態様において、本明細書に記載されている弁システムは、膨張可能な部分の過少膨張もしくは過剰膨張を防止するように、膨張可能な医療装置の膨張可能な部分が最適容積及び/または圧力まで流体により充填されることを可能にする。いくつかの実施形態において、流体は、空気である。いくつかの実施形態において、流体は、液体、例えば、水または食塩水である。
【0048】
いくつかの実施形態において、最適充填圧力は、膨張可能な留置医療装置の膨張可能な部分内の最小圧力と最大圧力との間の圧力である。いくつかの事例において、最小圧力は、膨張可能な部分を体腔内に保持するのに必要な最小圧力に相当する。いくつかの事例において、最大圧力は、膨張可能な部分が過剰に膨張する前に膨張可能な部分が取り扱うことができる最高量の圧力である。過剰膨張は、膨張可能な部分により接触された軟組織内の異常な血液灌流、及び/または軟組織の圧迫壊死を生じ得る。いくつかの実施形態において、最適充填圧力は、約20mmHg~約90mmHg、約20mmHg~約80mmHg、約20mmHg~約70mmHg、約20mmHg~約60mmHg、約20mmHg~約50mmHg、約30mmHg~約90mmHg、約30mmHg~約80mmHg、約30mmHg~約70mmHg、または約30mmHg~約50mmHgである。いくつかの事例において、最小充填圧力は、約20mmHg~約50mmHg、例えば、約20、25、30、35、40、45、または50mmHgである。いくつかの事例において、最大充填圧力は、約40~約90mmHg、例えば、約40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、または90mmHgである。いくつかの実施形態において、最大圧力は、システム内で使用される弁のクラッキング圧力に相当する。いくつかの実施形態において、最大圧力は、システム内で使用される弁のクラッキング圧力より約5%、10%、15%、20%、30%、40%、または50%大きい圧力に相当する。いくつかの実施形態において、最大圧力は、システム内で使用される弁のクラッキング圧力に相当する。いくつかの実施形態において、好ましい動作圧力は、システム内で使用される圧力逃がし弁のクラッキング圧力より約5%、10%、15%、20%、30%、40%、または50%小さい圧力に相当する。
【0049】
いくつかの実施形態において、最適充填容積は、最小充填容積と最大充填容積との間の容積である。弁システムが留置医療装置の一部であるいくつかの事例において、最小充填容積は、膨張可能な部分を患者の空洞内に保持するのに必要な膨張可能な部分の最小容積である。いくつかの事例において、最大充填容積は、膨張可能な部分が最大圧力で含有することができる最大容積である。いくつかの事例において、最適充填容積は、患者依存的であり、例えば、患者の空洞が小さいか、または圧力下にある(例えば、肥満患者において)場合、最適充填容積は、より大きい空洞もしくは当該圧力下にない空洞を有する患者のそれより小さい。いくつかの事例において、留置医療装置の保持バルーンに対する最適充填容積は、体腔の特徴に依存しており、例えば、導尿カテーテルシステムに対する最適充填容積は、糞便カテーテルシステムのそれより小さい。直腸カテーテルシステムの膨張可能な部分に対する最小充填容積の非限定的な例としては、5ml、10ml、20ml、25ml、26ml、27ml、28ml、29ml、30ml、31ml、32ml、33ml、34ml、35ml、40ml、45ml、50ml、及び60mlが挙げられる。直腸カテーテルシステムの膨張可能な部分に対する最大充填容積の非限定的な例としては、25ml、30ml、35ml、36ml、37ml、38ml、39ml、40ml、41ml、42ml、43ml、44ml、45ml、50ml、75ml、及び100mlが挙げられる。いくつかの実施形態において、本明細書に記載されている弁システムを備える直腸カテーテルシステムの膨張可能な部分に対する最適充填容積は、約20ml~約50ml、約30ml~約50ml、約35ml~約45ml、約30ml~約45ml、及び約35ml~約45mlである。
【0050】
本明細書に提供されている弁システムの種々の態様において、圧力逃がし弁は、膨張可能な留置医療装置の膨張可能な部分の、既定の充填容積を超える過剰膨張を防止するように構成されている。いくつかの事例において、既定の充填容積は、最大充填容積であるか、または最大充填容積より約100%、75%、50%、30%、25%、20%、15%、10%、5%、もしくは1%小さい。他の事例において、既定の充填容積は、最適充填容積であるか、または最適充填容積より約5%、10%、15%、20%、25%、50%、75%大きい。いくつかの実施形態において、弁システムの弁は、膨張可能な部分の、既定の充填圧力を超える過剰膨張を防止する。いくつかの事例において、既定の充填圧力は、最大充填圧力であるか、または最大充填圧力より約100%、75%、50%、30%、25%、20%、15%、10%、5%、もしくは1%小さい。他の事例において、既定の充填圧力は、最適充填圧力であるか、または最適充填圧力より約5%、10%、15%、20%、25%、50%、75%大きい。いくつかの実施形態において、圧力逃がし弁は、どちらが最初に生じようとも、膨張可能な部分の、既定の充填容積もしくは既定の充填圧力のいずれかを超える膨張を防止する。一例として、圧力逃がし弁は、既定の充填容積を満たしていない場合であっても、いったん既定の充填圧力に達すると、膨張可能な部分の過剰膨張を防止する。これは、体腔(例えば、直腸空洞、膀胱)の大きさが、他の患者におけるよりも何人かの患者において、より小さいか、またはより大きい圧力下にあるカテーテル装置において生じ得る。
【0051】
いくつかの事例において、留置医療装置は、糞便カテーテルまたは導尿カテーテルである。そのようなカテーテルは、膨張ポート、バルーン、カテーテル管、排水可能な袋、試料ポート、潅注ポート等を備える。いくつかの事例において、バルーンは、シリコン、天然ゴム、またはエラストマー等のエラストマーから作製される。いくつかの事例において、カテーテルは、シリコン、天然ゴム、またはエラストマーから作製される。いくつかの事例において、膨張ポートは、バルーンの膨張を可能にするルアーアクセスチェック弁を備える。バルーンの材料としては、限定されないが、プラスチック、シリコン、エラストマー、フッ素重合体、合成または天然ゴム、ポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロン、アセタール、PVDF、ABS、及び耐炭化水素フルオロシリコンゴムが挙げられる。
【0052】
膨張可能な留置医療装置は、(a)第1の通慮及び第2の通路により接続された流体入口ポート及び流体出口ポートを備える機器であって、第1の通路及び第2の通路が機器内で接続されていない、機器と、(b)保持バルーンと、(c)機器の第1の通路を流体出口ポートで保持バルーンに接続する供給流体経路と、(d)第2の通路を保持バルーンに接続する戻り流体経路であって、第2の通路が既定の圧力で開口する圧力逃がし弁を備える、戻り流体経路と、を備え得る。いくつかの事例において、既定の圧力は、約30mmHg~約90mmHg、または約50mmHg~約70mmHgである。いくつかの事例において、膨張可能な留置医療装置は、保持バルーンが最適充填レベルまでか、またはこれを上回って充填されたときに通知を提供する充填表示器をさらに備える。充填表示器は、第2の通路に位置付けられ得る。保持バルーンは、患者の体腔内に挿入するためのカテーテルの遠位端に位置付けられ得る。カテーテルの近位端は、回収袋に連結するように構成され得る。いくつかの実施形態において、膨張可能な留置医療装置は、糞便管理システム(FMS)であり、カテーテルは、直腸カテーテルである。いくつかの実施形態において、膨張可能な留置医療装置は、尿管理システムであり、カテーテルは、導尿カテーテルである。いくつかの実施形態において、保持バルーンは、バルーンが最小容積及び/または圧力まで膨張したとき、膨張したバルーンが、カテーテルの遠位端を体腔内に維持し、体内の排泄物が体腔からカテーテルの排出チャネルを通して回収袋内に流れることを可能にするように、体腔内に挿入するように構成されている。
【0053】
留置医療装置の保持バルーンの過剰膨張を防止する方法は、(a)(i)体腔からの流出物のための排出通路を画定している管状要素と、(ii)体腔内に挿入するための管状要素の遠位端に配置された保持バルーンと、(iii)圧力逃がし弁及び膨張ポートを備えるハウジングと、(iv)保持バルーンとハウジングとの間に第1の流体経路を提供する膨張管腔であって、保持バルーンが膨張管腔の遠位端に配置されており、膨張ポートが膨張管腔の近位端に配置されている、膨張管腔と、(v)保持バルーンとハウジングとの間に第2の流体経路を提供する戻り管腔であって、保持バルーンが戻り管腔の遠位端に配置されており、ハウジングが戻り管腔の近位端に配置されており、弁が第2の流体経路と流体連通している、戻り管腔と、を備える、留置医療装置を提供することと、(b)外付け穴を超えて体腔内に保持バルーンを挿入することと、(c)流体を含む取り付け部材を膨張ポートに接続することと、(d)保持バルーンが最適充填容積に達するまで、弁のクラッキング圧力未満である流率で取り付け部材から保持バルーン内に流体を導入することと、(e)取り付け部材を接続解除することと、(f)保持バルーン内の圧力が弁により制御される規定の時間、充填された保持バルーンを空洞内に維持することと、を含み得る。
【実施例
【0054】
実施例1:弁システムを備える糞便管理システム
弁システムは、FMSの保持バルーンの過剰膨張を防止するように、糞便管理システム(FMS)内に一体化されている。FMSは、概して図1に示されている構成を有する。FMSは、患者の直腸空洞から流体回収袋に廃棄流体を排水するための排出チャネル102を有するカテーテルを保持するように直腸空洞内に設置するように構成された保持バルーン108を備える。本例のFMSは、直腸空洞に潅注を提供するための補助管腔をさらに備える。
【0055】
保持バルーン108の過剰膨張は、概して図1に「B」により図示された弁システムを利用することにより達成される。弁システムBは、保持バルーン108にさらに接続された膨張ポート116を膨張管腔110に接続する第1の通路を備える。膨張ポート116は、弁システムB内に第1の流体通路を備える第1の流体進路、及び膨張管腔110内の供給流体経路を介したシリンジと保持バルーン108との間の流体の通過を可能にする開口を備える。弁システムBは、第2の通路をさらに備える。第2の流体進路は、保持バルーン108、戻り管腔122、及び第2の通路を接続する。本例において、第2の通路及び第1の通路は、相互作用しない。第2の通路は、保持バルーン108内の最適圧力が満たされたときに視覚的通知等の通知を提供する充填表示器を備える。第2の通路は、開放構成及び閉鎖構成を有するアンブレラ弁をさらに備える。アンブレラ弁は、システム内の圧力が弁のクラッキング圧力に達したときに開口し、システム内から圧力を放出する。クラッキング圧力は、保持バルーン108内の過剰膨張圧力に相当するように選択された。
【0056】
実施例2:60mmHgに設定された圧力逃がし弁を搭載した弁システムを備える糞便管理システムにおける過剰膨張の制御
実施例1に記載されているFMSにおける保持バルーンの充填特性を、圧力逃がし弁(制御装置)を有しないFMSにおける保持バルーンの特性と比較した。
【0057】
実施例1に記載されているFMSに、60mmHgで設定された圧力逃がし弁を搭載した。ショアA50シリコンから作製された7mmのアンブレラ弁を有する外径10mmを有するカートリッジ弁を弁システム内に接着した。カートリッジ弁の高さは、6mmであった。カートリッジ弁をABSから作製した。
【0058】
圧力逃がし弁を有し、かつ有しないFMSの保持バルーンを5cc~最大100ccまで空気で充填して、それぞれ、バルーンの直径及び充填されたバルーン圧力を観察した。図6~9に示されているように、データを描画した。
【0059】
図6に示されているように、バルーンの直径は、圧力逃がし弁を有しない制御装置における充填容積により線形に拡張する。圧力逃がし弁を備えるシステムにおいて、バルーンの直径は、約58.3mmの直径に達するまで充填容積により線形に拡張し、次に、充填容積内のさらなる増加時に約58.3mmで留まる。
【0060】
バルーン圧力対空気による充填容積についての測定を図7に示している。バルーンは約51mmの設定直径により成形されたため、バルーン圧力は、最初、ゼロ近くで留まった。バルーン圧力は、約35mlの充填容積で指数関数的に上昇し始め、制御システムにおいて約93mmHgまで上昇し続けた。圧力逃がし弁を備えるシステムにおいて、バルーン圧力は、0ml~約50mlの充填容積で制御装置と略同じ傾向をたどった。50ml後、バルーン圧力は、圧力逃がし弁の制御に起因して、約60mmHgで留まった。空気の代わりに水で同じ試験を繰り返した。図8及び図9の描画は、それぞれ、図6及び図4と同様の傾向を観察したことを示している。
【0061】
これらの実験は、圧力逃がし弁を備えるシステムが、60mmHgの弁のクラッキング圧力を上回る圧力を遮断するのに効果的であると同時に、本システムが、その点で充填表示器の半球体がバルーンの膨張の開始を表示し始める40mlの最適充填容積を上回って機能することを可能にしたことを示している。
【0062】
実施例3:75mmHgに設定された圧力逃がし弁を搭載した弁システムを備える糞便管理システムにおける過剰膨張の制御
実施例1に記載されているFMSにおける保持バルーンの充填特性を、圧力逃がし弁(制御装置)を有しないFMSにおける保持バルーンの特性と比較した。
【0063】
実施例1に記載されているFMSに、60mmHg(実施例2のように)、75mmHgに設定された圧力逃がし弁を搭載するか、または圧力逃がし弁(制御装置)を有しなかった。75mmHgのシステムにおいて、カートリッジ弁は、7mmのアンブレラ弁を含む10mmの外径を有した。カートリッジの高さは、6mmであった。カートリッジ弁は、ABSから作製された。カートリッジ弁を、実施例1のFMSの弁システム内に接着した。
【0064】
各システムのバルーンを5cc~100ccの水で充填して、それぞれ、3つのシステム中のバルーン圧力を観察した。図10に示されているように、データを描画した。バルーンが約51mmの設定直径により成形されたため、バルーン圧力は、最初、ゼロ近くに留まった。バルーン圧力は、約35mlの充填容積で指数関数的に上昇し始め、次に、制御システム内で約93mmHgまで上昇し続けた。60mmHgのクラッキング圧力逃がし弁を有する試験システムにおいて、バルーン圧力は、0ml~約50mlの充填容積で制御装置と同じ傾向をたどった。50ml後、バルーン圧力は、約60mmHgで留まった。75mmHgのクラッキング圧力逃がし弁を有するシステムにおいて、バルーン圧力は、0ml~約60mlの充填容積で制御装置と略同じ傾向をたどった。60ml後、バルーン圧力は、約75mmHgで留まった。このデータは、圧力逃がし弁システムが、弁のクラッキング圧力(60mmHgまたは75mmHg)を上回って圧力を遮断するのに効果的であると同時に、試験装置が、充填表示器の半球体がバルーンの膨張の開始を表示し始める40mlの最適充填容積を上回って機能することを可能にしたことを示している。
【0065】
実施例4:75mmHgに設定された臨界圧力逃がしを搭載したばね式ボール弁システムを備える糞便管理システムにおける過剰膨張の制御
実施例1に記載されているFMSに、75mmHgで設定された臨界逃がし圧力を有するばね式ボール弁を搭載した。ばね式ボール弁は、Lee Co.(Westbrook, CT, USA)から購入した。圧力逃がし弁は、直径5.46mm及び長さ7.3mmを有する。ボール弁は、ステンレス鋼ハウジング、ステンレス鋼ケージ、及びステンレス鋼ばねと共にセラミックから構築された。臨界逃がし圧力をばねの選択により制御した。ばね式ボール弁を、FMSの充填表示器(実施例1)へと接着し、図3A及び3Bに示している。
【0066】
各システムのバルーンを5cc~最大100ccの水で充填して、バルーン圧力を観察した。生成されたデータは、圧力逃がし弁システムが、弁のクラッキング圧力(75mmHg)を上回る圧力を遮断するのに効果的であると同時に、試験装置が、充填表示器の半球体がバルーンの膨張の開始を表示し始める40mlの最適充填容積を上回って機能することを可能にした図10の描画と同等であった。
【0067】
実施例5:75mmHgに設定された臨界圧力逃がしを搭載したばね式ポケット弁システムを備える糞便管理システムにおける過剰膨張の制御
実施例1に記載されているFMSに、75mmHgに設定された臨界圧力逃がしを有するばね式ポペット弁を搭載した。ばね式ポペット弁は、Check Valve,Inc.(Maplewood,MN,USA)から購入した。圧力逃がし弁は、直径6.35mm(1/4’’)及び長さ12.2mmを有する。ポペット弁は、ナイロンから構築された。ばね式ポペット弁を、FMSの充填表示器(実施例1)へと接着し、図4A及び4Bに示している。
【0068】
各システムのバルーンを5cc~最大100ccの水で充填して、バルーン圧力を観察した。データは、圧力逃がし弁システムが弁のクラッキング圧力(75mmHg)を上回る圧力を遮断するのに効果的であると同時に、試験装置が、充填表示器の半球体がバルーンの膨張の開始を表示し始める40mlの最適充填容積を上回って機能することを可能にした図10の描画と同様であった。ポペット弁の高さに起因して、取り付けられた圧力逃がし弁の形状は、実施例4のばね式ボール弁よりわずかに大きい。
【0069】
本開示の好ましい実施形態が本明細書に図示及び記載されているが、そのような実施形態は、例として提供されているにすぎないことが当業者に明らかであろう。多数の改変、変更、及び置換が、本発明から逸脱することなく、当業者には着想されよう。本発明を実践する際に、本明細書に記載されている発明の実施形態に対する種々の代替例が採用され得ることを理解するべきである。以下の特許請求の範囲は、本発明の範囲を定義しており、これらの特許請求の範囲内の方法及び構造ならびにそれらの等価物が、ここでは含まれることが意図される。
図1
図2A
図2B
図3A
図3B
図4A
図4B
図5
図6
図7
図8
図9
図10