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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-02
(45)【発行日】2022-02-10
(54)【発明の名称】エレクトロスラグ再溶解法及び溶解容器
(51)【国際特許分類】
   B22D 23/10 20060101AFI20220203BHJP
   B22D 11/041 20060101ALI20220203BHJP
【FI】
B22D23/10 550
B22D11/041 D
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2018561514
(86)(22)【出願日】2017-05-23
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-06-20
(86)【国際出願番号】 EP2017062450
(87)【国際公開番号】W WO2017202857
(87)【国際公開日】2017-11-30
【審査請求日】2020-04-23
(31)【優先権主張番号】102016109712.8
(32)【優先日】2016-05-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】507332907
【氏名又は名称】アー エル デー ヴァキューム テクノロジーズ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ALD Vacuum Technologies GmbH
【住所又は居所原語表記】Otto-von-Guericke-Platz 1, 63457 Hanau, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】110002675
【氏名又は名称】特許業務法人ドライト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヘンリック フランツ
(72)【発明者】
【氏名】ウルリッヒ ビーブリッヒャー
(72)【発明者】
【氏名】ハラルド ショルツ
【審査官】田中 則充
(56)【参考文献】
【文献】特開昭63-072837(JP,A)
【文献】特開2001-334354(JP,A)
【文献】特表2013-537486(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22D 23/10
B22D 11/041
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの内壁(4)と前記内壁(4)によって囲まれた溶融チャンバーとを備え、前記内壁(4)と前記溶融チャンバーの間に境界面(9)がある、溶解容器であって、
前記溶解容器が温度を測定するための複数の測定装置(8)を有し、複数の前記測定装置(8)が少なくとも2つの測定グループにわけられて配置されており、
前記測定グループ内の各前記測定装置(8)は、前記内壁(4)と前記溶融チャンバーの間の前記境界面(9)までの距離が実質的に等しく、
前記内壁(4)と前記溶融チャンバーの間の前記境界面(9)までの距離は、異なる前記測定グループに属する前記測定装置(8)間で異なり、
同じ前記測定グループ内の前記測定装置(8)は、異なる高さに配置されており、
前記溶解容器が、外壁(3)と、外壁(3)と前記内壁(4)の間に配置された冷却剤チャネル(5)とを備え、
他の前記測定グループと比較して、前記境界面(9)までの距離が最も小さい前記測定グループが、前記内壁(4)の中央に配置されている、前記溶解容器を用いた金属又は金属合金のためのエレクトロスラグ再溶解法であって、
A.溶融するために、少なくとも1つの前記金属又は前記金属合金の電極(1)を前記溶解容器に供給するステップと、
B.前記溶解容器にスラグを供給するステップと、
C.前記電極(1)を溶融し、溶融した前記金属又は溶融した前記金属合金がスラグゾーン(6)を通過してインゴット(2)に固化されるステップとを有し、
前記測定装置(8)を介して取得された情報によって、連続して熱収支が導出される
エレクトロスラグ再溶解法。
【請求項2】
前記インゴットが、溶融中に、前記溶解容器から引き出される、及び/又は、前記溶解容器が、成長している前記インゴット(2)に対して相対的に移動するように持ち上げられる
請求項1に記載のエレクトロスラグ再溶解法。
【請求項3】
引き出し速度又は引き上げ速度が少なくとも0.01cm/minで、多くとも1.0cm/minである
請求項2に記載のエレクトロスラグ再溶解法。
【請求項4】
引き出し速度又は引き上げ速度と前記溶解容器の内径との積が少なくとも1000mm/minで、多くとも5000mm/minである
請求項2又は3に記載のエレクトロスラグ再溶解法。
【請求項5】
決定された前記スラグゾーン(6)の位置が目標位置と比較され、前記目標位置と前記スラグゾーン(6)の位置とに差があるときには、前記スラグゾーン(6)の位置に影響を与えることが行われる
請求項1~4のいずれか1項に記載のエレクトロスラグ再溶解法。
【請求項6】
前記スラグゾーン(6)の位置が下方に逸脱するとき、溶融レートを増加させ、及び/又は、前記溶解容器からの前記インゴット(2)の引き出し又は前記溶解容器の引き上げを減速する
請求項5に記載のエレクトロスラグ再溶解法。
【請求項7】
前記スラグゾーン(6)の位置が上方に逸脱するとき、溶融レートを減少させ、及び/又は、前記溶解容器からの前記インゴット(2)の引き出し又は前記溶解容器の引き上げを加速する
請求項5又は6に記載のエレクトロスラグ再溶解法。
【請求項8】
前記スラグの高さが目標高さと比較され、前記スラグゾーンの高さが下方に逸脱しているとき、前記スラグの材料が再投入される
請求項1~7のいずれか1項に記載のエレクトロスラグ再溶解法。
【請求項9】
溶融中に、前記溶解容器内での前記スラグゾーン(6)の位置も、前記測定装置(8)を介して決定される
請求項1~8のいずれか1項に記載のエレクトロスラグ再溶解法。
【請求項10】
前記電極(1)の前記スラグゾーン(6)への浸漬深さ及び/又は前記スラグの投入量が前記熱収支に基づいて修正される
請求項9に記載のエレクトロスラグ再溶解法。
【請求項11】
インゴット/金属プール境界面と金属プール/スラグ境界面の間の垂直方向の距離は、多くとも、製造する前記インゴットの断面直径の2倍である
請求項1~10のいずれか1項に記載のエレクトロスラグ再溶解法。
【請求項12】
Kg/h単位で表される溶融レートが、前記インゴット(2)の断面直径Dをmm単位で表すと、Dの2.5倍の値を超えない
請求項1~11のいずれか1項に記載のエレクトロスラグ再溶解法。
【請求項13】
少なくとも1つの内壁(4)と前記内壁(4)によって囲まれた溶融チャンバーとを備え、前記内壁(4)と前記溶融チャンバーの間に境界面(9)があり、金属又は金属合金をエレクトロスラグ再溶解するために用いられる、溶解容器であって、
前記溶解容器が温度を測定するための複数の測定装置(8)を有し、複数の前記測定装置(8)が少なくとも2つの測定グループにわけられて配置されており、
前記測定グループ内の各前記測定装置(8)は、前記内壁(4)と前記溶融チャンバーの間の前記境界面(9)までの距離が実質的に等しく、
前記内壁(4)と前記溶融チャンバーの間の前記境界面(9)までの距離は、異なる前記測定グループに属する前記測定装置(8)間で異なり、
同じ前記測定グループ内の前記測定装置(8)は、異なる高さに配置されており、
前記溶解容器が、外壁(3)と、外壁(3)と前記内壁(4)の間に配置された冷却剤チャネル(5)とを備え、
他の前記測定グループと比較して、前記境界面(9)までの距離が最も小さい前記測定グループが、前記内壁(4)の中央に配置されている
溶解容器。
【請求項14】
前記測定装置(8)は、前記溶解容器の前記内壁(4)に配置されている
請求項13に記載の溶解容器。
【請求項15】
前記測定装置(8)が熱電対である
請求項13又は14に記載の溶解容器。
【請求項16】
第1測定グループは、前記内壁(4)と前記溶融チャンバーの間の前記境界面(9)までの距離がAであり、同じ前記境界面までの第2測定グループの距離A+Cより小さい
請求項13~15のいずれか1項に記載の溶解容器。
【請求項17】
同じ前記測定グループ内の隣接する前記測定装置の間の距離が、前記溶解容器の操業中に金属プール/スラグ境界面及び/又はスラグ/気相境界面が配置される領域で最小である
請求項13~16のいずれか1項に記載の溶解容器。
【請求項18】
第1測定グループの前記測定装置(8)と第2測定グループの前記測定装置(8)との間の水平方向の距離Cが、少なくとも3mmである
請求項13~17のいずれか1項に記載の溶解容器。
【請求項19】
同じ前記測定グループの各前記測定装置に対して、他の前記測定グループの対応する前記測定装置が同じ高さに設けられる
請求項13~18のいずれか1項に記載の溶解容器。
【請求項20】
各前記測定グループの前記測定装置の数は、少なくとも5つである請求項13~19のいずれか1項に記載の溶解容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属及び金属合金の再溶解法に関する。本発明は、さらに、最適な容器、具体的には、鋳型と、この容器の使用とに関する。
【背景技術】
【0002】
高純度の材料を得るために、当該材料で作られた母材が再溶解される。よく知られた再溶解法は、所謂エレクトロスラグ再溶解法である。この再溶解法では、通常、溶融電極が再溶解される溶解容器が提供される。電極の再溶解は電極を流れる電流によって行われ、通常は、比較的低電圧で、非常に大きな電流が流れる。直流電流を用いることによって起こりうる電界効果を避けるために、交流電流が通常用いられる。エレクトロスラグ再溶解法では、スラグが、加熱要素及び製錬プールとして供される。電流は電極を介してスラグゾーン及びインゴットを通って流れる。スラグの抵抗のために、電極の先端が加熱され、電極が溶融する。溶融した金属又は溶融した金属合金の液滴が、スラグゾーンを通過すると、結果として製錬される。電極の先端はスラグゾーンに浸漬されている。スラグゾーンは、溶融した金属又は溶融した金属合金上に浮かんでいる。スラグゾーンもまた、周囲の雰囲気からの液体金属のシールを確実なものとする。通常、フッ化カルシウム、酸化カルシウム及び酸化アルミニウムの混合物をスラグとして用いることができる。しかし、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム又は二酸化ケイ素の純粋な混合物も用いることができる。スラグは、製錬のために、低い融点、高い安定性、低い揮発性及び良い反応性を有していなければならない。電極の材料中の不純物は、スラグ中での溶解及びスラグとの化学反応の両方によって取り除かれる。
【0003】
開放された溶解容器からインゴットが引き出される又は溶解容器が上方に移動されるエレクトロスラグ再溶解法では、熱による過負荷又はプラントへのダメージを避けるための他の構成要素の内で、処理中に比較的一定の位置に保たれる鋳型と比較して、スラグとインゴットとの(又はスラグと液体金属との)境界面の位置が決定的に重要である。インゴットの引き出し速度による又は鋳型の引き上げ速度による場合と同等の、溶融レートによって決まるインゴットの体積の増大を補償することは難しいことである。電極の領域とインゴットの領域での溶融金属の密度の違い(部分的には同じである)のために、溶融レートからの単純な体積の算出は、精度が不十分であり、最終的にドリフト効果につながる可能性がある。信頼できる位置の決定と制御は、処理及び操業の安全のために決定的に重要である。そうしないと、スラグが漏れる(位置が溶解容器内で深すぎる場合)又はスラグが溢れ出る(位置が溶解容器内で高すぎる場合)リスクがある。
【0004】
エレクトロスラグ再溶解法は、インゴットと溶融金属の間及び溶融金属と気相との間の2つの境界面だけでなくインゴット/溶融金属、溶融金属/スラグ及びスラグ/気相の3つの境界面を有している点で、連続鋳造のような他の処理方法と大きく異なる。スラグゾーンの高さが一定ではないので、3つの境界面の内の1つの境界面の位置を決定するだけでは処理の制御に不十分である。それどころか、スラグは、製造されるインゴット上にスラグスキンを形成し、スラグゾーンから連続的に排出される。さらに、溶融した金属の高さも一定ではない。よって、エレクトロスラグ再溶解法中にスラグゾーンの位置及び高さを決定することは、極めて複雑であり、具体的には、境界面を2つのみ有する場合よりもさらに複雑である。
【0005】
この問題を解決するために、実質的には溶解法中にスラグレベルを監視することによる様々な解決策が適用されている。スラグレベルの光学的測定方法及びレーダーベース距離測定方法の両方が用いられている。欧州特許出願公開第2386366号公報は、スラグレベルのレーダーベース測定方法が開示されている。同位体放射線を用いる、初期に使用されていた距離測定は、もはや最新のものではない。
【0006】
体積計算から生じる難しさの他に、インゴットで固化したスラグの層はシステムから恒久的に引き出され、結果として、スラグの質量(又は高さ)が処理の過程で変化する可能性があるという事実によって、位置の測定はさらに複雑になる。先行技術の方法では、スラグゾーンの表面の位置だけを直接決定することができるが、溶解容器内でのその範囲、すなわち、高さを決定することができない。
【0007】
通常は閉鎖されたシステムが使用される、すなわち、溶解容器がフードによって閉じられているので、スラグレベルの視認チェックはその方法の間に簡単にはできない。スラグレベルの連続した視認監視は、強い煙が発生し、そのために急激なスラグレベルの変化をすぐには発見できないので、いずれにしろ実用的ではない。閉鎖されたシステムではガスの交換を減らすためにより多くのダストを生じる。先行技術でしばしば使用されているビデオシステムは、ダスト、煙の発生のために不正確な測定を行いがちであり、さらには、カメラの撮影角度や内壁の温度が決定を不確実にする。さらに、鋳型の寿命を長くするために、ある範囲内でスラグゾーンの変動を許容することは、有用であり得る。このことは、特に注意深く連続的にスラグレベルを決定することを要求し、容器の壁部の熱流から決定され得る。
【0008】
特開昭63-72837号公報は、鋳型の壁部で、鋳型の高さ方向に渡って温度が測定されるエレクトロスラグ再溶解法を開示する。これにより、スラグゾーンの高さ及び位置が導出される。しかし、この方法は、1つの測定グループのみを使用することによって、1つの温度測定のみが実行され、熱収支を導出できないので、実際には実用的でないことがわかっている。しかし、単なる温度測定とは対照的に、熱収支は、より精密で正確なスラグゾーンの位置を決定することに使用できる。このために、本発明によって本明細書において意図されるように、少なくとも2つの測定グループが必要である。特開昭63-72837号公報の図3もまた、スラグスキンの厚さが温度測定にかなりの影響を与えることを示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】欧州特許出願公開第2386366号公報
【文献】特開昭63-72837号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、できるだけ簡便かつ少ない装置構成で、エレクトロスラグ再溶解法中に、溶解容器内のスラグゾーンの位置及び範囲(高さ)を決定できる方法を提供することである。そのような方法に適用できる溶解容器もまた必要である。
【課題を解決するための手段】
【0011】
目的は、特許請求の範囲の主題によって解決される。
【0012】
本発明によれば、少なくとも1つの内壁と内壁によって囲まれた溶融チャンバーとを備え、内壁と溶融チャンバーの間に境界面があり、金属又は金属合金をエレクトロスラグ再溶解するために用いられる溶解容器が提供される。溶解容器は、温度を測定するための複数の測定装置を有し、複数の測定装置が少なくとも2つの測定グループにわけられて配置されており、測定グループ内の各測定装置は、内壁と溶融チャンバーの間の境界面までの距離が実質的に等しく、その距離は、異なる測定グループに属する測定装置間で異なり、測定グループ内の測定装置は、鋳型において異なる高さに配置されているという特徴を有する。溶解容器は、具体的には、鋳型であり、好ましくは再溶解法の間に振動しない鋳型であり、すなわち、固定されている又は再溶解法の間に動かない。フードが溶解容器上に配置される場合に、これは特に好ましく、本発明によっても好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は先行技術の溶解容器の断面図である。
図2図2は本発明による溶解容器の壁の断面図である。
図3図3は本発明による溶解容器の内壁の一部の拡大断面図である。
図4図4は本発明による溶解容器の断面図である。
図5図5は溶融チャンバー近く(A)、溶融チャンバーから最も離れた位置(B)で測定された温度及び熱流束密度(C)を示す3つの図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
エレクトロスラグ再溶解法では、スラグゾーンが電極、液体金属及びインゴットに比べて最も温度が高い。当該方法の間、熱は冷却剤によって消散される。本発明は、溶解容器の熱流の最大値を検出することを、溶解容器内のスラグゾーンの位置及び範囲の決定に使用できるという知見に基づく。
【0015】
好ましい実施形態では、溶解容器は、冷却剤により具体的には水により冷却される。好ましくは、本発明による溶解容器は、外壁と、外壁と内壁の間に広がる冷却剤チャネルとを備える。
【0016】
温度を測定するための測定装置が、好ましくは、溶解容器の内壁に配置される。具体的には、測定装置は、内壁に配置され、溶解容器の溶融チャンバー内のダメージを受けるような侵襲的な環境にはさらされない。しかしながら、測定装置は、できるだけ信頼の高い温度測定を可能にするために、溶融チャンバーにできるだけ近い位置に配置されるべきである。内壁は、溶融チャンバーとの境界面と、好ましくは冷却剤チャネルとの境界面とを有する。
【0017】
測定装置は、好ましくは、熱電対である。熱電対は幅広い温度範囲で連続して測定できるので、好ましくは、熱電対が適している。
【0018】
他の測定グループと比較して内壁/溶融チャンバー境界面までの距離が最も短い測定グループが、おおよそ内壁の中央に、具体的には、内壁と冷却剤チャネルの間の中間に配置されていると有利である。さらなる測定グループは、いずれも、境界面までの距離がそれよりも長い。境界面まで十分な距離を有するように測定装置を配置したのは、とりわけ、鋳型での再溶解中に測定装置がダメージを受けるのを回避するためである。さらに、冷却剤チャネルによって測定結果が過度の影響を受けることは避けられるべきである。好ましくは、測定装置と冷却剤チャネルとの間の距離は、少なくとも5mm、さらに好ましくは、少なくとも10mmである。特に好ましい実施形態では、測定装置から冷却剤チャネルまでの距離が、測定装置から他の測定グループに属する隣の測定装置までの距離よりも大きい。
【0019】
好ましくは、測定装置は、内壁と溶融チャンバーの間の境界面まで、少なくとも5mmの距離に、具体的には、少なくとも10mmの距離に配置される。この距離は、一方で測定装置を損傷せず、他方では、測定結果が高い情報価値を有するために役立つことが示されている。この場合、距離は、具体的には、水平方向の距離を意味している。測定装置と溶融チャンバーの間の距離が長すぎると、測定結果の有意性が損なわれる。
【0020】
好ましくは、測定グループ内の互いに隣接する測定装置間の距離は、溶解容器の操業中に、スラグゾーンが配置されるところで最小である。具体的には、隣接する測定装置間の距離は、(予想される)スラグゾーンまでの距離の増加に伴って増加する。本発明によれば、好ましくは、スラグゾーンは、溶解容器の上端より下、100~600mm、好ましくは200~400mm、より好ましくは約300mmの距離に配置される。このような配置は、関連する位置、すなわち、スラグゾーンが配置され得る場所で、最も正確な測定を可能とする。代替的な実施形態では、測定グループ内で隣接する測定装置は、実質的に、それぞれ互いに同じ距離を有する。
【0021】
他の代替的な実施形態では、測定グループ内の隣接する測定装置間の最大距離は、溶解容器の操業中に、スラグゾーンが配置されるところである。具体的には、それぞれの隣接する測定装置間の距離は、(予想される)スラグゾーンまでの距離の増加に伴って減少する。特に好ましい実施形態では、測定グループ内の互いに隣接する測定装置間の距離は、溶解容器の操業中に、スラグ/金属プール境界面及びスラグ/気相境界面が予想されるところで最小である。これは、特にスラグ/金属又はスラグ/ガス境界領域において、スラグゾーンの高さ又は位置の変化を測定できるという事実を考慮している。
【0022】
好ましくは、測定グループの各測定装置に対して、他の測定グループの対応する測定装置が同じ高さに設けられる。よって、高さに関してではなく内壁と溶融チャンバーの境界面までの距離が異なるいくつかの測定装置が、1つの高さで利用可能となる。
【0023】
好ましくは、測定グループの隣接する測定装置間の距離は、少なくとも5mm、より好ましくは少なくとも10mm又は少なくとも30mmである。この最少距離より短いと、測定結果の質を顕著に改善することができず、溶解装置のコストが増大する。測定グループの隣接する測定装置間の距離は、多くとも100mmであるべきである。この距離は、具体的には、測定装置間の垂直方向の距離である。測定グループ内の測定装置は、好ましくは、実質的に、垂直方向に配列されて配置される。しかし、それらは異なる配置とすることもでき、具体的には、溶融チャンバーの周りにらせん状に配置することもできる。
【0024】
内壁の厚さは、好ましくは少なくとも15mm、具体的には、少なくとも25mmである。溶解容器の安定性を損なわないようにするため、所定の壁厚を下まわらないようにすべきである。内壁は、好ましくは金属で作製され、特に銅又は銅合金で作製される。具体的には、鉄のような他の金属も考えられるが、あまり好ましくない。
【0025】
溶解容器は、具体的には、鋳型であり、製造されるインゴットの望ましい形状に依存して、種々の断面形状であってもよい。溶解容器の形状と同様に、インゴットの形状は、本発明の機能にとって決定的なものではない。溶解容器は、ドイツ特許出願公開第4207694号のように、代替的なデザインであるるつぼであってもよい。この場合、成型が溶解容器内で行われるのではなく、別の鋳型内で行われる。液体金属又は液体金属合金を排出するステップが、インゴットを引き出す代わりに行われる。
【0026】
複数の測定装置が、2つ以上の測定グループにわけられて配置されている。内壁と溶融チャンバーとの間の境界面までの距離が実質的に同じ場合、それらの測定装置は、1つの測定グループに属する。この距離は、具体的には、その境界面までの水平方向の距離を指す。好ましくは、本発明の溶解容器は、少なくとも2つの測定グループを有する。好ましくは、第1測定グループは、内壁と溶融チャンバーとの間の境界面までの距離がAであり、第2測定グループの同じ境界面までの距離A+Cより小さい。好ましくは、第1測定グループの測定装置と第2測定グループの測定装置との間の水平方向の距離Cは、少なくとも3mm、具体的には少なくとも5mmである。測定グループ内の測定装置は、好ましくは、内壁と溶融チャンバーとの間の境界面と平行に、垂直方向に配列されて配置されている。
【0027】
本発明の溶解容器内の測定装置を用いて、温度が、操業の間監視され、具体的には、連続的に監視され、測定された温度プロファイルから熱収支が導出される。熱収支は、溶解容器内のスラグゾーンの位置に関する結論を引き出すために使用される。溶解容器の関連領域に渡る複数の測定装置の配置は、特に内壁内の完全な温度プロファイルを提供する。熱収支から、スラグの位置と相関のある最大値を決定できる。
【0028】
測定装置を適切に配置することにより、スラグゾーンの位置を連続的に決定することができ、幾何学的計算と溶融速度を考慮することを組み合わせて、設定するインゴットの引き出し速度又は溶解容器の引き上げ速度を確実に決定することができる。
【0029】
本発明によれば、内壁内の異なる深さに位置する複数の測定グループを使用する場合、複数の温度プロファイルを同時に記録することが可能である。溶解容器の材料の既知の熱伝導率を考慮すると、溶解容器を通る局所的熱輸送又は熱流束密度をこのようにして求めることができる。この方法で決定された熱収支は、単純な温度プロファイルと比較して、改善されたスラグゾーンの位置の記述を提供でき、従来の測定方法では達成できない又は限られた範囲でしか達成できなかったプロセス制御についてのさらなる結論を導き出すことが可能である。
【0030】
局部的な熱収支を用いることで、単純な温度プロファイルよりも、操業中に鋳型への熱入力の増加領域を詳細に記録し、監視することができる。これにより、他の方法では達成できなかった又は非常に限られた範囲でしか達成できなかったプロセスの操作条件(例えば、スラグ温度、スラグゾーンの高さ)について直接的な結論を出すことができる。同時に、鋳型の境界面での、溶融チャンバーへの熱輸送の現在の境界状態と、必要であれば冷却剤チャネルでの現在の境界状態とを決定するために、鋳型内での決定されたパフォーマンスプロファイルの外挿を使用できる。この方法では、臨界的な操業条件(例えば、核沸騰)及びプロセス制御での異常の発生を効果的に識別できる。さらに、この測定方法は、プロセスモデルとシミュレーションの検証に直接使用できるデータを提供する。その結果、モデルベースのプロセス管理が可能となる。好ましくは、この方法の間、特に連続的に、熱収支が決定される。熱収支に依存して、具体的には、電極の浸漬深さ及び/又はスラグの投入量を修正することができる。
【0031】
溶解容器は、好ましくは少なくとも2つの測定装置、より好ましくは少なくとも3つの測定装置、さらに、より好ましくは少なくとも4つの測定装置、より好ましくは少なくとも6つの測定装置を有する。測定装置の数が少なすぎると、溶解容器内のスラグゾーンを良好に位置決めすることが難しい。測定装置の数が増加すると、溶解容器の製造コストと同様に、得られるデータの質(有意性)と精度が向上する。好ましくは、溶解容器は、多くても100個の測定装置、具体的には、多くとも60個の測定装置、好ましくは多くとも40個又は多くとも25個の測定装置を有する。各測定グループは、少なくとも2つ、具体的には、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ又は好ましくは少なくとも6つの測定装置若しくは少なくとも8つの測定装置を有することが好ましい。好ましくは、測定グループ毎の測定装置の数は、25を超えるべきではなく、具体的には、18を超えるべきではなく、特に好ましくは14を超えるべきではない。非常に多くの測定装置を使用しても、測定結果の情報価値を顕著に高めることはなく、システムのコストと、操業の複雑さとを増加させる。
【0032】
測定装置が導電性を有する溶解容器に配置されているので、測定装置は溶解容器から電気的に絶縁されるのが好ましい。好ましくは、測定装置は、内壁に、特に、冷却剤チャネルの方向から、形成された穴内に、接着される。電気的な絶縁は、好ましくは、使用した接着剤によって提供される。接着剤は、また、冷却剤が穴内に入るのを防止する。
【0033】
本発明による金属又は金属合金のエレクトロスラグ再溶解法は、以下のステップを有する。
A.溶融するために、少なくとも1つの金属又は金属合金の電極を本発明の溶解容器に供給するステップ
B.溶解容器にスラグを供給するステップ
C.電極を溶融し、溶融した金属又は溶融した金属合金がスラグゾーンを通過してインゴットに固化されるステップ
【0034】
これにより、測定装置を介して得られた情報によって、具体的には、連続して、熱収支が導出される。好ましくは、溶融中に、溶解容器内でのスラグゾーンの位置、具体的にはその高さも、測定装置と、この方法により決定された溶解容器内の熱分布とを介して決定される。
【0035】
測定装置を用いた温度測定によってスラグゾーンの位置について記述できるだけでなく、高さ方向の範囲も確実に決定できることは、本発明による方法及び溶解容器の特別有利な点である。さらに、鋳型内の熱分布を可視化でき、鋳型内の熱分布を溶解容器内のスラグの高さの位置を考慮するために利用できる。プロセス中に、インゴットの引き出しを介して、スラグ成分が連続して除去される実施形態があるので、存在するスラグの量を決定可能であることは意義がある。この可能性は、溶融中に溶解容器からインゴットが引き出される方法で特に有利である。そのような方法は、本発明によれば、電流が流れている間の同軸性の理由から好ましい。
【0036】
この方法で再溶解される金属又は金属合金は、鋼(高合金又は低合金)、超合金及びニッケルベース合金から選択されることが好ましい。
【0037】
本発明の方法による好ましい実施形態では、決定されたスラグゾーンの位置又は高さが目標位置又は目標高さと比較され、目標位置又は目標高さとスラグゾーンの位置又は高さとに差があるときには、スラグゾーンの位置又は高さに影響を与えることが行われる。同じことが、具体的には、スラグゾーンへの電極の浸漬深さについても行われる。
【0038】
スラグゾーンの上部は、溶解容器の上端より約100~600mm、好ましくは、200~400mm、好ましくは、約300mm下方に位置する。上方への放散を考慮しなければならないので、この数字は、溶解容器及び電極の直径に依存してわずかに変化する可能性がある。「スラグゾーン」という語句は、操業中にスラグで満たされる溶融チャンバーの領域を指す。これは、金属プール/スラグ境界面とスラグ/気相境界面との間に位置する。スラグゾーンは位置高さが可変である。「スラグの高さ」という語句は、当該2つの境界面間の垂直方向の距離であって、その内の最も長い距離を指す。本発明により導出された熱収支は、他の方法と比較してスラグゾーンの位置及び高さを非常に正確に決定することができるので、50~500mm、具体的には、75~400mm又は100mm~300mの範囲のスラグの高さを使用することができる。具体的には、スラグの高さが低すぎる値に推測される危険がない。十分な抵抗を生成し、したがって経済的な電力消費を維持するために、スラグの高さの最小値を下まわらないようにすべきである。スラグの高さが小さくなり過ぎた場合、スラグを再投入することができる。スラグの高さの減少、それに関連するスラグの熱成分の低下及び電流の増加に伴って、スラグの流出の危険性又は金属の流出の危険性が増加する。したがって、スラグゾーンの正確な検査は、この方法にとって特に重要である。
【0039】
好ましくは、スラグゾーンの位置が下方に逸脱すると、溶解容器からのインゴットの引き出しを減速する。本発明によれば、好ましくは、この方法において、冷却剤の量又は冷却剤の流量は調整しない。これらのパラメータを変化させると、液体金属プールの形状の変化を引き起こすだろう。しかし、本発明によれば、好ましくは、プールの形状及びプールの高さを、できる限り一定に維持するべきである。プールの高さは、電力の入力(電極を溶融するための溶融エネルギー)を介して調整される。溶融レートは、好ましくは、実質的に一定に維持される。すなわち、溶融レートも電力の入力により変わる可能性があるが、本発明によれば、一定の平らな溶融プールを達成するために、一定の溶融レートが好ましい。
【0040】
スラグの材料は、本発明によれば、好ましくは、フッ化カルシウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、二酸化ケイ素及びこれらの混合物からなる群から選択される。必要に応じて、チタン酸化物、チタンの亜酸化物、酸化ホウ素、酸化ランタン又は他の希土類酸化物を、少量、スラグの材料に添加してもよい。少量とは、具体的には、この方法の開始時におけるスラグの材料の全量に対して10重量%未満、好ましくは5重量%未満の量を指す。
【0041】
スラグゾーンの位置が上方にずれると、溶解容器からのインゴットの引き出しを加速する。温度測定又はこの方法中に生じる測定装置を介した熱収支の準備のために、スラグゾーンの状態に柔軟に反応することが可能である。
【0042】
好ましい実施形態では、本発明による方法によって製造されるインゴットは、600mmを超える、具体的には、700mmを超える又は800mmを超える断面直径を有する。連続鋳造と比較して、本発明の方法によって得られるインゴットの直径は特に大きい。
【0043】
比較的平らな金属プールを使用できることは、本発明による方法の利点である。これは、インゴット/金属プール及び金属プール/スラグ境界面の改善されたチェック手法によって可能になる。「プールの深さ」は、当該境界面の間の垂直方向の距離であって、その内の最も長い距離を指す。これは、通常、溶融チャンバーの中央にある。プールの深さは、好ましくは多くとも2×D、具体的には、多くとも1.5×D又は多くとも1×D(D=スラグスキンなしの状態の製造されるインゴットの断面直径、単位はmm)である。しかしながら、プールの深さは、好ましくは0.1×D未満、より好ましくは少なくとも0.2×D未満又は少なくとも0.25×D未満であるべきではない。有利なプールの深さを維持することは、インゴットのエラーを回避する。これらのプールの深さは比較的小さい。連続鋳造では、具体的には高い鋳造レートが使用される結果、明らかに、より大きなプールの深さとなる。対照的に、本発明による方法における、溶融レートで表される溶融した金属の供給量は低い。好ましい実施形態では、本発明の方法における、kg/h単位で表される溶融レートは、2.5*D、好ましくは2.0*D、特に好ましくは1.5*D又は1.0*Dの値を超えない。例:インゴットの断面直径D=800mmの場合、最大溶融速度は2.5*800=2000kg/hである。この低い溶融レートにより、有利な浅いプールの深さと望ましいインゴット品質が達成される。溶融レートは、電極の重さを計ることによって容易に測定することができる。
【0044】
特に、連続鋳造の鋳造レートと比較して、インゴットの溶融レートがきわめて低いため、いわゆる「スラグスキン」は製造されるインゴット上に形成される。このスラグスキンは、製造されるインゴットの外側に位置する固化したスラグの層である。それ故に、本発明の方法では、溶融金属及び製造されるインゴットは、溶解容器の壁に接触しない。スラグスキンは、熱の消散に影響を与える。本発明によって導出される熱収支は、スラグスキンの厚さについての記述を可能とする。
【0045】
本発明による方法では、平均引き出し速度及び平均引き上げ速度は、好ましくは最大10mm/min、最大8mm/min、特に好ましくは最大5mm/minである。具体的には、それらは少なくとも0.1mm/min、好ましくは少なくとも0.5mm/minである。寸法が大きくなればなるほど、引き出し速度及び引き上げ速度は低くなる。好ましい実施形態では、引き出し速度又は引き上げ速度と溶解容器の内径との積は、少なくとも1000mm/min、多くとも5000mm/min又は2000~3500mm/minである。例えば、直径1000mmのるつぼで、速度3mm/min(3mm/min*1000mm=3000mm/min)で引き出すことが有利である。
【0046】
溶解容器の内径は、好ましくは少なくとも500mm、具体的には、少なくとも800mm又は少なくとも1000mmである。好ましい実施形態では、この内径は多くとも4000mm又は多くとも3000mmである。特に、内径がより大きい場合に、本発明による方法が有利である。
【0047】
好ましい実施形態では、少なくとも2つ、少なくとも3つ又は少なくとも4つの電極がこの方法で使用される。これには、電極の1つを交換する場合、他の電極を使用し続けることができるという利点がある。また、本発明の方法は、電極の位置決め及び選択のために使用することができ、これは重要な利点である。
【0048】
本明細書で単に「金属」という語句を使用した場合、金属合金も含まれるものとする。
【0049】
要約すると、本発明による方法は、以下のステップの1つ、いくつか又はすべてが実行され得る。
-スラグゾーンの位置と高さを検出するステップ
-スラグゾーンの所定の位置でインゴットの引き出しを開始するステップ(ゆっくりと成長するブロックがその前でスラグゾーンを上方に押し上げる)
-スラグスキンの厚さを一定に保つために、電極交換中にエネルギー入力を最適化するステップ(電極の交換中、新しい電極での電力入力の過剰は溶解容器内の熱負荷によって制限され得る)
-スラグの高さを監視するステップ(プロセス中にスラグの高さが減少する)
-スラグ成分の添加、例えば、スラグの粘度に影響を及ぼすために、より高温での酸化成分の添加及び/又はより低い温度での蛍石の添加を制御するステップ、
-スラグ成分を添加することによりスラグスキンを一定に保つステップ(熱収支の制御を改善するため)
-スラグのエッジシェルを監視するステップ
-カッピング加熱中のスラグ流出を検出するステップ
-エッジシェルの弱化を回避するステップ
-スラグの動きを測定するステップ
-均質な熱負荷を達成するステップ(例えば、電極の浸漬深さの制御を介して)
-消散する熱負荷に応じてカッピング加熱中の電力入力を調整するステップ
【0050】
スラグの流出を検出できることと、それに対応して電力入力を調整することは、効率的かつ低リスクのカッピング加熱を可能とし、これにより、製造するインゴットの質をさらに改善できる。したがって、本発明の方法は、カッピング加熱するステップを有することが好ましい。
【0051】
溶融チャンバー(又は溶融プール)の残存熱を測定装置の配置及び溶解容器全体にわたる熱負荷の計算を介して算出でき、エッジシェル(溶解容器/スラグ)でのスラグの厚さは可変のプロセス条件(例えば、溶融する電極のスラグへの浸漬深さ及び/又は電極を溶融するための出力増加)を介して影響を受ける可能性があり、最適な操業点(最大熱放散)をスラグのエッジシェルの弱体化なしに決定できる。この方法で、望んでいないスラグの流出が回避される。スラグのエッジシェルが厚すぎる又は薄すぎる場合、スラグが流出するリスクがある。
【0052】
溶融ゾーンとスラグゾーンの分離点でのスラグゾーンの正確な記録を介して引き出し速度及び引き上げ速度をセットし、フリーボード(スラグゾーンの上端と溶解容器の上端)の増加を許容することができる。
【0053】
エレクトロスラグ再溶解法における本発明による溶解容器の使用も本発明による。
【0054】
図の説明
各図は、縮尺通りでない簡略化した図面を表す。これらは下記のことを示している。
図1は先行技術の溶解容器の断面図である。
図2は本発明による溶解容器の壁の断面図である。
図3は本発明による溶解容器の内壁の一部の拡大断面図である。
図4は本発明による溶解容器の断面図である。
図5は溶融チャンバー近く(A)、溶融チャンバーから最も離れた位置(B)で測定された温度及び熱流束密度(C)を示す3つの図である。
【0055】
図1は、先行技術においても同様に使用されているエレクトロスラグ再溶解法のための溶解容器の実質的な要素を示す。溶解容器は垂直断面図に示されている。容器は鋳型として設計され、外壁3と、内壁4と、外壁3と内壁4との間に配置された冷却剤チャネル5とを有する。特に冷却剤としての水が、冷却剤チャネル5を流れ、好ましくは底部から頂部に向かって冷却剤チャネル5を通って流れる(矢印で示されている)。エレクトロスラグ再溶解法は、溶解容器内で行われ、電極1が上方から溶解容器内に導入され、その先端がスラグゾーン6に浸漬される。電流が流れると、スラグゾーン6は、その高い電気抵抗により強く加熱され、電極1の先端を溶融させる。そのため、溶融した金属がスラグゾーン6を通過し、液体金属又は液体金属合金7として溶解容器内に集まり、固化してインゴット2になる。インゴット2が溶解容器の外に向かって下方へ引き出され得る又は溶解容器が上方に移動され得る。上方から溶解容器内に電極1をさらに供給することができる。図1に示す特徴は、好ましくは、本発明の溶解容器又は方法においても見出される。
【0056】
図2は、外壁3と、内壁4と、外壁3と内壁4との間に配置された冷却剤チャネル5とを有する本発明による溶解容器の壁を通る垂直断面図である。内壁4において、複数の測定装置8が異なる高さに、すなわち内壁と溶融チャンバーとの境界面と平行に、垂直に配列されて配置されている。
【0057】
図3は、図2と比較として、本発明による溶解容器の内壁の一部を通る拡大垂直断面図を示す。ここに示す本発明による溶解容器の内壁は、複数の測定装置8を有する。複数の測定装置が測定グループにわけられて配置されており、測定グループ内の各測定装置8は、内壁と溶融チャンバーとの間の境界面9までの距離が実質的に同じである。ここに示される第1の測定グループは、内壁と溶融チャンバーとの間の境界面9までの距離が距離Aである測定装置8を有する。内壁と溶融チャンバーとの間の境界面9までのこの第1の測定グループの距離は、同じ境界面までの第2の測定グループの距離A+Cよりも小さい。
【0058】
図4は、鋳型形式に形成された本発明による溶解容器の垂直断面図である。スラグゾーン6及び溶融した金属又は溶融した金属合金7と同様に電極1とインゴット2が示されている。さらに、複数の測定装置8がここに示されており、これらは内壁4内で異なる高さに配置され、小さい円で表されている。矢印は、好ましい実施形態による電極1の再配置又はインゴット2の引き出しを表している。外壁及び冷却剤チャネルは示されていない。スラグゾーン6の位置及び高さ(H)を決定するために、垂直方向に配列された測定装置8の測定グループを有する実施形態が示されている。1つの測定グループ内にいくつかの列を有していてもよく、これもまた本発明に含まれる。列は垂直方向に延びる必要はないが、異なる高さで溶融チャンバーまで同じ距離を置いて溶解容器上に分散して列を配置することもできる。
【0059】
図5は、左から右にA、B、Cと付された3つの図を示す。すべての図は、X軸が時間(h)単位の時間で、Y軸がミリメートル(mm)単位の鋳型の高さを示している。3つの図はすべて、1つの溶融プロセスから得た測定結果を示している。図Aは、溶融チャンバーまでの距離が小さい測定グループの測定装置で測定された温度を示す。図Bは、溶融チャンバーまでの距離がわずかに大きな距離を有する測定グループで測定された温度を示す。より明るい領域は、より暗い領域よりも高い温度を示す。図A及びBとは対照的に、図Cは、鋳型の高さにわたる熱流束密度形式で表された熱収支を示している。熱流束密度がより高い領域は熱流束密度が低い領域よりより明るく示されている。図Cの熱流束密度は、図A及び図Bに示された測定値から計算した。水平方向に延びる2本の線は、スラグゾーンの実際の位置を示す。図A及び図Bの温度測定は、スラグゾーンの領域で最大温度を示さず、スラグゾーンが実際よりも高い位置にあることを示唆している。
【符号の説明】
【0060】
1 電極
2 インゴット
3 外壁
4 内壁
5 冷却剤チャネル
6 スラグゾーン
7 液体金属又は液体金属合金
8 測定装置
9 溶融チャンバーとの境界面
10 冷却剤チャネルとの境界面

図1
図2
図3
図4
図5