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特許7018412蓋を操作するために加える力を調節する方法
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  • 特許-蓋を操作するために加える力を調節する方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-02
(45)【発行日】2022-02-10
(54)【発明の名称】蓋を操作するために加える力を調節する方法
(51)【国際特許分類】
   E05F 15/657 20150101AFI20220203BHJP
   B60J 5/10 20060101ALI20220203BHJP
   E05F 7/00 20060101ALI20220203BHJP
   E05F 11/54 20060101ALI20220203BHJP
【FI】
E05F15/657
B60J5/10 K
E05F7/00 Z
E05F11/54 A
【請求項の数】 14
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019078103
(22)【出願日】2019-04-16
(65)【公開番号】P2020029765
(43)【公開日】2020-02-27
【審査請求日】2020-03-17
(31)【優先権主張番号】62/685,464
(32)【優先日】2018-06-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】514062655
【氏名又は名称】スタビラス ゲ―エムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】特許業務法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】マイケル、ノップ
(72)【発明者】
【氏名】デイブ、サベット
【審査官】野尻 悠平
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-074907(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第102007062473(DE,A1)
【文献】特開2013-023867(JP,A)
【文献】特開2005-336772(JP,A)
【文献】特開2015-229868(JP,A)
【文献】特開2016-113861(JP,A)
【文献】特表2016-532794(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05F 15/657
B60J 5/10
E05F 7/00
E05F 11/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
操作力補助装置であって、
駆動ユニットを有するアクチュエータ(16)と、
前記アクチュエータ(16)が連結される蓋(10)と、
前記蓋(10)が可動式に連結されたユニット(12)と、
を含み、
前記アクチュエータ(16)は前記蓋(10)が連結された前記ユニット(12)に対して相対的に前記蓋(10)を駆動するように構成され、さらに、
前記アクチュエータ(16)が接続され、かつ、前記蓋(10)が手動で操作されている間、前記アクチュエータ(16)の前記駆動ユニットの速度(n)と、前記蓋(10)が連結されている前記ユニット(12)に対して相対的に前記蓋(10)が位置している角度(α)と、を検出するように構成された検出ユニットと、
前記検出ユニットが接続された決定ユニットであって、記アクチュエータ(16)の前記駆動ユニットの前記速度(n)と、前記蓋(10)が連結されている前記ユニット(12)に対して相対的に前記蓋(10)が位置している前記角度(α)と、に応じて増幅率(K)を決定し、かつ、電機子電圧(u)は前記増幅率(K)に応じて決定されるように構成された決定ユニットと、
前記決定ユニットに接続され、前記アクチュエータ(16)の前記駆動ユニットが前記電機子電圧(u)に応じて補助トルク(M)を生成するように、前記アクチュエータ(16)の前記駆動ユニットに前記電機子電圧(u)を出力するように構成された出力ユニットと、を有し、
前記アクチュエータ(16)はリニアスピンドル駆動装置であり、
前記電機子電圧(u)は、
iが印加電流、Rが電気系統の抵抗、θが慣性モーメント、そして、nが使用者が前記蓋を動かすために該蓋に加える前記駆動ユニットの手動速度であるとき、式
【数1】
によって決定されること
を特徴とする操作力補助装置。
【請求項2】
前記アクチュエータ(16)の前記駆動ユニットによって生成される前記補助トルク(M)は、検出された前記速度(n)で前記アクチュエータ(16)の前記駆動ユニットだけによって前記蓋(10)を動かすために必要なトルクよりも小さいこと
を特徴とする請求項1に記載の操作力補助装置。
【請求項3】
前記アクチュエータ(16)の近傍の温度を検出する温度センサ、及び/又は前記蓋(10)が連結されている前記ユニット(12)が重力方向(F)に対して相対的に位置する角度を検出する傾きセンサをさらに含むこと
を特徴とする請求項1又は2に記載の操作力補助装置。
【請求項4】
少なくとも前記蓋(10)が連結されている前記ユニット(12)に対する前記蓋(10)の前記角度(α)によって決まる、前記電機子電圧(u)及び/又は増幅率(K)の特定の値を含むルックアップテーブルが格納される記憶ユニットをさらに有すること
を特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の操作力補助装置。
【請求項5】
使用者が蓋(10)を操作するために加える必要のある力(F)を調節する方法であって、前記蓋(10)を駆動するように構成されたアクチュエータ(16)が前記蓋(10)に連結されており、該方法は
-前記アクチュエータ(16)が配置された前記蓋(10)を配置するステップと、
-前記蓋(10)を手動で操作している間に、前記アクチュエータ(16)の駆動ユニットの速度(n)と、前記蓋(10)が連結されているユニット(12)に対して前記蓋(10)が相対的に位置する角度(α)とを検出するステップと、
-前記アクチュエータ(16)の前記駆動ユニットの前記速度(n)、及び前記蓋(10)が連結されている前記ユニット(12)に対する前記蓋(10)の前記角度(α)に応じて、増幅率(K)を決定するステップと、
-前記アクチュエータ(16)の前記駆動ユニットが作動される電機子電圧(u)を決定するステップと、
-前記アクチュエータ(16)の前記駆動ユニットが前記電機子電圧(u)に基づいて補助トルク(M)を生成するように、前記アクチュエータ(16)の前記駆動ユニットに前記電機子電圧(u)を出力するステップと、を含み、
前記アクチュエータ(16)はリニアスピンドル駆動装置であり、
前記電機子電圧(u)は、
iが印加電流、Rが電気系統の抵抗、θが慣性モーメント、そして、nが使用者が前記蓋を動かすために該蓋に加える前記駆動ユニットの手動速度であるとき、式
【数2】
によって決定される
こと
を特徴とする方法。
【請求項6】
前記アクチュエータ(16)の前記駆動ユニットによって生成された前記補助トルク(M)は、検出された前記速度(n)で前記アクチュエータ(16)の前記駆動ユニットだけによって前記蓋(10)を動かすために必要なトルクよりも小さいこと
を特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記蓋(10)が連結されている前記ユニット(12)が重力方向(F)に対して相対的に位置する角度を検出するステップをさらに含むこと
を特徴とする請求項5又は6に記載の方法。
【請求項8】
前記アクチュエータ(16)の近傍の温度を検出するステップをさらに含むこと
を特徴とする請求項5~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記増幅率(K)を決定するステップは、少なくとも、前記蓋(10)が連結されている前記ユニット(12)に対する前記蓋(10)の前記角度(α)に応じてルックアップテーブルから値を選択するステップを含むこと
を特徴とする請求項5~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記アクチュエータ(16)の前記駆動ユニットが作動される前記電機子電圧(u)を決定するステップは、少なくとも前記アクチュエータ(16)の前記駆動ユニットの前記速度(n)及び前記増幅率(K)に応じてルックアップテーブルから値を選択するステップを含むこと
を特徴とする請求項5~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記増幅率(K)及び/又は前記電機子電圧(u)は、少なくとも前記蓋(10)の前記角度(α)に応じて特定の操作力(F)を定義する事前設定に基づいて選択されること
を特徴とする請求項5~10のいずれか一項に記載の方法、
【請求項12】
前記蓋(10)は、車両のトランクへのアクセスを許可又は防止するように構成された車両のトランク用蓋(10)であること
を特徴とする請求項5~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
請求項5~12のいずれか一項に記載の方法で使用される前記増幅率(K)及び/又は前記電機子電圧(u)を出力するように構成されたコンピュータ・モジュールであって、前記増幅率(K)及び前記電機子電圧(u)は、前記蓋(10)が連結されるユニット(12)に対する前記蓋(10)の前記角度(α)によって決まる前記蓋(10)の手動操作力(F)に関して、使用者が入力した前記角度(α)と該角度(α)に対応する前記手動操作力(F)との組み合わせに基づいて出力されること
を特徴とするコンピュータ・モジュール。
【請求項14】
前記入力は、前記蓋(10)の前記角度(α)によって決まる前記手動操作力(F)を定義するグラフィカル曲線を含むこと
を特徴とする請求項13に記載のコンピュータ・モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓋を操作するときに使用者を補助する操作力補助装置に関する。本発明は、さらに、蓋を操作するために使用者が加える必要がある力を調節する方法に関する。さらに、本発明は、本発明に基づく方法で使用される増幅率及び/又は電機子電圧を出力するコンピュータ・モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
使用者が蓋を操作する必要のある状況は、例えば、車両のトランクを開けたり閉じたりするために車両のトランクの蓋を操作する場合である。この例は本発明の出願人にとって特に重要であるので、本発明は、以下の記載では、車両、例えば自動車の車体に連結されたトランクの蓋に関して説明される。また、一つだけ、又は複数のアクチュエータを蓋に連結することができるが、以下においては、本発明は、一つだけのアクチュエータに言及して説明される。本発明の請求範囲は、けっして、この例に限定されないことを理解されたい。
【0003】
従来技術の蓋の多くは、車体に対して蓋を駆動する駆動ユニットを備えたアクチュエータを含んでいる。通常、これらのアクチュエータは、例えば、使用者の手助けを必要とせずに、蓋を自動的に駆動するように構成されている。
【0004】
蓋の移動範囲全体における任意の所望の位置に蓋を保持するために、これらのアクチュエータは、コイルばね又はブレーキ等の受動部品を必要とする。蓋を所望の位置に保持するために必要な力、したがってこれらの受動部品の選択は、蓋の重量と蓋の重心によって決まる場合がある。
【0005】
使用者がアクチュエータを作動させずに手動で蓋を動かすことが必要になることが時々ある。例えば、受動部品の選択、蓋の重量、蓋の重心、蓋のヒンジの摩擦力に基づいて、使用者は、蓋を手で動かすときに一定量の人力を加える必要がある。
【0006】
従来技術のシステムでは、これらの力は、車両製造時に一度事前設定され、その後個々人のレベルで調節できない場合がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、本発明の目的は、蓋を動かす際に使用者を補助し、かつ、車両製造後の操作力の調節を可能にする操作力補助装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的は、駆動ユニットを備えるアクチュエータと、該アクチュエータが連結された蓋と、この蓋が可動式に連結されたユニットと、を含み、前記アクチュエータは前記蓋が連結された前記ユニットに対して相対的に前記蓋を動かすように構成され、かつ、
前記アクチュエータが接続され、かつ、前記蓋が手動で操作されている間の、前記アクチュエータの前記駆動ユニットの速度と、前記蓋が連結された前記ユニットに対して前記蓋が相対的に位置する角度と、を検出する検出ユニットと、
前記検出ユニットが接続された決定ユニットであって、前記アクチュエータの前記駆動ユニットの前記速度と前記蓋が連結されている前記ユニットに対する前記蓋の前記角度とに応じて増幅率を決定し、電機子電圧を前記増幅率に応じて決定する決定ユニットと、
前記決定ユニットに接続された出力ユニットであって、前記アクチュエータの前記駆動ユニットが前記電機子電圧に応じて補助トルクを生成するように、前記電機子電圧を前記アクチュエータの前記駆動ユニットへ出力するように構成された出力ユニットと、を含む操作力補助装置を提供することにより、本発明により解決される。
【0009】
電機子電圧の決定の基になる増幅率は次の式に基づいて決定される。

=i×R+K×θ×n ・・・(1)
【0010】
ここで、u は電機子電圧であり、iは印加電流、Rは電気系統の抵抗、Kは増幅率、θは慣性モーメント、かつ、n は使用者が蓋を動かすためにその蓋に加える駆動ユニットの手動速度である。
【0011】
したがって、駆動ユニット受動的に動かすことにより、すなわち、蓋を手動で動かして前記駆動ユニットを駆動することにより、検出ユニットは、アクチュエータの駆動ユニットの速度を検出する。検出ユニットによって検出された駆動ユニットの速度と、同様に検出された車体に対する相対的な前記蓋の角度と、に基づいて、決定ユニットは、使用者が蓋を動かすことを補助し、従って、使用者が蓋を動かすためにかける必要のある操作力を減らす操作補助力の事前設定に基づいて、電機子電圧を決定することができる。
【0012】
操作力補助装置は、使用者が蓋を動かすために加える必要のある手動力が、蓋が動く全範囲にわたって一定になるように、または、蓋の動きによっては車体に対する蓋の角度に応じ異なる手動力を使用者が加えることが必要になるように、車体に対する蓋の角度に応じて電機子を駆動させるように調節することができる。
【0013】
操作力補助装置が、蓋を動かしている途中の使用者を補助するために既にアクチュエータを作動させているとき、アクチュエータの駆動ユニットは、該駆動ユニットに印加される電機子電圧に基づいて特定の速度で駆動されている。さらに繰り返して補助力を決定するときは、蓋を動かしている使用者を補助するために、使用者自身によってではなく駆動ユニットに印加される電機子電圧によって引き起こされる駆動ユニットの速度を計算に入れる必要がある。この場合、アクチュエータの駆動ユニットに印加される電機子電圧を決定するステップは以下のステップを含む。
-駆動ユニットが操作力補助装置によって既に駆動されている速度、たとえば、以前の補助動作に基づいて印加された電機子電圧に基づいて駆動する速度を決定するステップ、
-駆動ユニットが駆動されている実際の速度を、検出ユニットによって検出することにより決定する。
-蓋がおかれている角度に応じて、使用者が蓋に加えようとしている事前設定された手動操作力を決定する。
【0014】
操作力はトルクに基づいて計算することができる。このトルクは、アクチュエータの駆動ユニットの速度と、アクチュエータの駆動ユニットに印加される電機子電圧、及び、使用者が車体に対する蓋の角度に応じて蓋を動かすために印加しようとする事前設定されたトルクと、に基づいてアクチュエータによって印加される。
【0015】
操作力補助装置によるアクチュエータの作動によって発生するアクチュエータの速度/トルクと、事前設定に基づく手動操作力として要求されるアクチュエータの速度/トルクとの合計が、アクチュエータの実際に検出された速度/トルクよりも小さい場合、操作力補助装置は、車体に対する特定の角度と速度で蓋を動かすときに使用者が加える手動操作力を所望のレベルまで小さくするために、電機子電圧を上げる必要がある。
【0016】
なお、ここで、車体、蓋、及びアクチュエータの幾何学的形状に基づいて蓋の全可動範囲にわたって一定の速度で蓋を動かすためには、車体に対する蓋の角度に応じて異なる速度でアクチュエータを駆動することが必要である。
【0017】
有利な点として、アクチュエータの駆動ユニットによって生成される補助トルクは、検出された速度でアクチュエータの駆動ユニットだけを用いて蓋を動かすために必要なトルクより小さくすることができる。したがって、蓋を動かすには、使用者が手動で追加のトルクを加える必要がある。これにより、アクチュエータだけで蓋を動かすことを防ぎ、蓋を動かすためには常に使用者が加える手動操作力が必要になる。
【0018】
本発明の実施の形態では、操作力補助装置は、さらに、アクチュエータの近傍の温度を検出する温度センサ、及び/又は、蓋が連結されているユニットが重力方向に対して成す角度を検出する傾きセンサを有することができる。アクチュエータの近傍の温度及び車体の傾きの両方とも、車体に対する蓋の角度に応じて蓋を動かすために必要なトルクに影響を及ぼす可能性がある。
【0019】
検出された車体の温度及び/又は検出された車体の傾きは、決定ユニットによって電機子電圧又は増幅率を決定する際にそれぞれ計算に入れることができる。
【0020】
本発明の実施の形態では、操作力補助装置は、さらに、ルックアップテーブルを格納した記憶ユニットを有することができる。該ルックアップテーブルは、少なくとも、蓋が連結されているユニットすなわち車体に対する蓋の角度によって決まる、電機子電圧及び/又は増幅率の特定の値を含む。このルックアップテーブルにより、計算をしないで、少なくとも蓋の角度によって決まる特定の値を選択するだけですむことになる。これによって、システムの複雑さと操作力補助装置の計算量を軽減することができる。このルックアップテーブルには、また、アクチュエータの近傍の温度、重力方向に対する車体の傾き、及び/又は蓋が動く速度を考慮点として入れることができる。
【0021】
本発明の実施の形態では、アクチュエータは、リニアスピンドル駆動装置にすることができる。リニアスピンドル駆動装置は、車両のトランク用蓋を動かす応用分野では非常に一般的なものである。もちろん、本発明による操作力補助装置及び/又は方法は、あらゆる種類のアクチュエータ、例えば回転駆動装置、線形駆動装置、シザー駆動装置、油圧駆動装置、空気圧駆動装置等で実施することができる。
【0022】
第2の態様において、本発明は、蓋を操作するために使用者が加える必要のある力を調節する方法に関し、前記蓋には前記蓋を駆動するアクチュエータが結合されており、該方法は、前記アクチュエータが配置された前記蓋を準備するステップと、前記蓋が手動操作されている間に前記アクチュエータの駆動ユニットの速度、及び、前記蓋が連結されたユニットに対して相対的に前記蓋が置かれた角度を検出するステップと、前記アクチュエータの前記駆動ユニットの前記速度、及び前記蓋が連結されている前記ユニットに対する前記蓋の前記角度に応じて増幅率を決定するステップと、前記アクチュエータの前記駆動ユニットが作動されるときの電機子電圧を決定するステップと、前記アクチュエータの前記駆動ユニットが前記電機子電圧に応じて補助トルクを生成するように前記アクチュエータの前記駆動ユニットに前記電機子電圧を出力するステップと、を含む。
【0023】
なお、操作力補助装置に関して記載した全ての特徴及び利点は、本発明による力を調節するための方法にも適用することができ、また、その逆も成り立つことを、ここで前もって述べておく。
【0024】
操作力補助装置に関連して説明したように、本発明の方法は、アクチュエータの現在の速度又はトルクと事前設定されたトルク又は力とを比較することにより、すなわち、手動操作力の事前設定値と、使用者が蓋を動かすために加えようとしている力とを比較することにより、車両の蓋を操作するために使用者が加える必要のある手動力を調節することができる。
【0025】
上記の力の事前設定は、単に計算手順で用いる値に基づいて決定でき、ハードウェアの設定に基づく必要はないので、使用者が加える必要のある力の調整は、車両製造後の任意の時点において前記計算手順で用いる値を調節することにより、行うことができる。
【0026】
有利な点として、アクチュエータの駆動ユニットによって生成される補助トルクは、そのアクチュエータの駆動ユニットだけによって検出された速度で蓋を移動させるために必要となるトルク値以下にすることができる。そうすることで、前記アクチュエータだけで蓋を駆動することはできず、蓋を動かすために使用者が加える追加の手動操作力を常に必要とする。本発明では、アクチュエータは純然たる補助装置として理解することができる。
【0027】
本発明の方法は、さらに、蓋が接続されたユニットが重力方向に対して置かれている角度を検出するステップ、すなわち、蓋が連結されている車体の傾きを検出するステップを含む。車体に対する蓋の相対的角度に応じて蓋の重心から車体と蓋の接合点へ働く梃力が変化するため、蓋を動かすために必要なトルクは車体に対する蓋の角度に応じて異なっている。このため、車体の傾きがこの梃力、したがって、蓋の角度に応じて蓋を動かすために必要なトルクに影響を与える可能性がある。
【0028】
また、本発明の方法は、さらに、アクチュエータの近傍の温度を検出するステップを含むことができる。温度変化によりアクチュエータの部品が収縮又は膨張する可能性があり、かつ/又は、互いに相対的に動く部品間の摩擦力が温度変化により変化する可能性があるため、蓋を動かすために使用者が加えなければならないトルクを決定するとき、すなわち、蓋を動かす際に使用者を補助するためにアクチュエータの駆動ユニットに加えられる電機子電圧を決定するときに、アクチュエータの近傍の温度を計算に入れることができる。
【0029】
前記増幅率を決定するステップは、蓋が連結されるユニットすなわち車体に対する蓋の角度に応じて、ルックアップテーブルから一つの値を選択するステップを含むことができる。単にルックアップテーブル内の複数の値から一つの増幅率を選択することによって、増幅率を決定する処理を、公式や等式を使用して増幅率を計算する場合と比べてより簡単にすることができる。
【0030】
追加で又は代替として、アクチュエータの駆動ユニットを作動させる電機子電圧を決定するステップは、少なくともアクチュエータの駆動ユニットの速度、及び増幅率に応じて一つの値をルックアップテーブルから選択するステップを含むことができる。上述のように、増幅率も又ルックアップテーブルから選択することができる。また、駆動ユニットの速度の代わりに又はそれに加えて、駆動ユニットが生成するトルクを、ルックアップテーブルから値を選択するときに考慮することができる。これにより本発明による複雑さ又は計算の労力をさらに減らすことができる。
【0031】
増幅率及び/又は電機子電圧は、少なくとも蓋の角度に応じて決まる特定の操作力を定義する事前設定に基づいて選択することができる。この事前設定は、例えば、使用者、車両の製造業者、車両の配給業者、又は、車両のサービス提供者等が調節することができる。この事前設定は、使用者が蓋を動かすために加える必要がある、車体に対する蓋の角度毎に決まる特定の手動操作力、又は少なくとも値-角度の複数の相関関係、たとえば1度毎の値を含むことができる。
【0032】
前記方法及び操作力補助装置は、それぞれ、事前設定の中の二つの所定の角度の間にある、車体に対する蓋の複数の角度に対して操作力を補間するように構成することができる。加えて、又は代替として、前記事前設定は、蓋の角度に応じて操作力を定義するグラフィカルな曲線を含むことができる。
【0033】
前記事前設定は、ヒューマン・マシン・インタフェースを介して調節又は入力することができる。
【0034】
本発明の説明の冒頭で述べたように、蓋は、車両のトランクへのアクセスを許可又は防止するように構成された、車両のトランク用の蓋の場合がある。ただし、本発明は、容器又は空間を閉じる蓋に限定されず、「蓋」という用語は、別の部品、例えば窓、ドアなどに可動式に結合される被駆動部品として理解するべきである。
【0035】
さらに別の態様において、本発明は、蓋が連結されるユニットすなわち車体に対する蓋の角度に応じて、蓋の手動操作力について使用者が行った入力に基づき、上述の本発明による方法において使用される増幅率及び/又は電機子電圧を出力するように構成されたコンピュータ・モジュールに関する。本発明によるコンピュータ・モジュールは、上述の特徴的機能の少なくともいくつかを含み、上述のルックアップテーブルを含む記憶装置を有することができる。
【0036】
コンピュータ・モジュールの使用者は、所望の手動操作力、すなわち、車体に対する蓋の角度に応じて蓋を動かすために必要な手動操作力/トルクの事前設定を入力することができる。コンピュータ・モジュールは、駆動ユニットの検出した速度及び蓋の角度、及び/又はアクチュエータ周辺の温度、及び/又は車体の傾きに基づいて、アクチュエータの駆動ユニットに対し特定の電機子電圧を出力することにより、アクチュエータによって生成されるトルクを制御することができる。
【0037】
前記入力は、蓋の角度に応じた操作力を定義するグラフィカル曲線を含む方が望ましい。車体に対する蓋の特定の角度に応じた操作力に関するグラフィカル曲線を定義することにより、コンピュータ・モジュールの使用者は、蓋の使用者が蓋を動かすために必要な操作力の事前設定を、グラフィック・ユーザ・インターフェース(GUI)を使用して調節することができる。これにより、コンピュータ・モジュールの使用者が手動操作力の事前設定を調節するための直感的な方法が提供される。
【0038】
以下では、添付の図面を参照して本願発明を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0039】
図1】加えられた力や梃力を含め、車両の後部を示す図である。
図2】蓋の角度に応じた複数の操作力のグラフィカル曲線を示す図である。
図3】アクチュエータの駆動ユニットの速度と、電機子電圧と、発生トルクとの相関関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
図1において、トランク用蓋10はピボット点14で車体12に連結されている。蓋10の重心で重力Fが蓋10にかかり、重力Fの梃力lFGがピボット点14の方向にかかっている。
【0041】
アクチュエータ16は、その一端で蓋10に接合され、他端で車体12に接合されている。図1ではアクチュエータ16が一つだけ示されているが、もちろん、第二番目のアクチュエータを車体12の長手方向反対側に配置してもよい。複数のアクチュエータがある場合には、それに応じて、複数のアクチュエータに補助力を配分する必要がある。アクチュエータ16の蓋10側の接合点からピボット点14へかかる梃力は、距離lSDによって表される。
【0042】
車体12に対する蓋10の角度は、図1では角度αによって示されている。
【0043】
また、車体12に対して相対的に蓋10を動かすために使用者が加える必要のある力Fは、蓋10の操作点18に示されている。操作点18からピボット点14迄の距離は半径RFHで示される。
【0044】
使用者が蓋10の操作点18で矢印Fの方向に蓋10を動かすと、図示の実施形態におけるリニアスピンドル駆動装置であるアクチュエータ16は、長さが短くなる。これによって、スピンドル又はスピンドルナットの回転が起こり、どちらにしてもその回転はスピンドル駆動装置である駆動ユニットによって駆動されるものであり、このため、駆動ユニットの受動的な作動、例えば電気モータの駆動軸の回転が起こる。駆動ユニット、すなわちここでは電気モータで発生する速度nは、検出ユニットによって検出される。検出ユニットは、また、例えば角度検出用のセンサを使用することにより、車体12に対する蓋10の角度αも検出する。
【0045】
アクチュエータの駆動ユニットの検出速度nと蓋10の検出角度αは、電機子電圧uを決定するように構成された決定ユニットに転送される。この電機子電圧uで、アクチュエータの駆動ユニットが該駆動ユニットの速度n及び蓋10の角度αに応じて作動される。決定ユニットは、また、増幅率Kを決定することができ、この増幅率Kに基づいて次の式(1)を用いて電機子電圧uAが決定される。

=i×R+K×θ×n ・・・(1)
【0046】
ここで、iは印加された電流であり、Rは電気系統の抵抗であり、θは慣性モーメントであり、nは、使用者が蓋を動かすために蓋に印加する駆動ユニットの手動速度である。
【0047】
決定ユニットはルックアップテーブルを有し、該ルックアップテーブルは車体12に対する蓋10の角度αによって決まる手動動作力Fの値の事前設定を含む。この事前設定は車体12に対する蓋10の角度αの各々に対応する手動操作力Fを示すグラフィカルな曲線を含んでもよい。そのようなグラフィカルな曲線の可能な複数の例を図2に示す。ここで、X軸は蓋10の角度α(図2では「後尾扉開口角」と呼んでいる)を示しており、単位は度(°)で示されている。Y軸は、手動操作力F図2では「操作労力」と表示)を示し、単位はニュートンで示されている。
【0048】
特定の手動操作力Fが特定の条件に応じて選択されると、出力ユニットは出力電機子電圧uをアクチュエータ16の前記駆動ユニットに出力し、それによってアクチュエータ16の前記駆動ユニットが電機子電圧uによって決まる補助トルクMを生成する。
【0049】
アクチュエータ16の駆動ユニットが一定速度nのときに電機子電圧uを変更すると、例えば増加させると、アクチュエータ16のトルクMの変更、例えば増加という結果になる。
【0050】
特定のトルクMを生成する電機子電圧uに対する、アクチュエータ16の駆動ユニットの速度の依存性を図3に示す。Y軸は、アクチュエータ16の駆動ユニットの速度nを表し、X軸はアクチュエータ16が生成するトルクMを表す。図の左上から右下に延びる斜線は、異なる電機子電圧u1(下側左の破線)、u2(実線)、及びu3(上側右の破線)を示す。ここで、u1<u2<u3である。
【0051】
u1のモータ特性線からu3のモータ特性線に向かっている矢印は、アクチュエータ16の駆動ユニットが一定速度nのとき、電機子電圧uを増加させると、トルクMが増加することを示す。
【0052】
従って、本発明によるアクチュエータ16によって生成される補助力は、アクチュエータ16の駆動ユニットの電機子電圧uを増大又は減少させることによって、所望通りに増加又は減少させることができる。
図1
図2
図3