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特許7018427フランジカルボン酸ユニットを有するポリエステルフィルムとヒートシール性樹脂層とを備える積層体および包装袋
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  • 特許-フランジカルボン酸ユニットを有するポリエステルフィルムとヒートシール性樹脂層とを備える積層体および包装袋 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-02
(45)【発行日】2022-02-10
(54)【発明の名称】フランジカルボン酸ユニットを有するポリエステルフィルムとヒートシール性樹脂層とを備える積層体および包装袋
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/36 20060101AFI20220203BHJP
   B65D 65/40 20060101ALI20220203BHJP
   C08J 5/18 20060101ALI20220203BHJP
【FI】
B32B27/36
B65D65/40 D
C08J5/18 CFD
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019503042
(86)(22)【出願日】2018-02-28
(86)【国際出願番号】 JP2018007405
(87)【国際公開番号】W WO2018159649
(87)【国際公開日】2018-09-07
【審査請求日】2020-11-12
(31)【優先権主張番号】PCT/JP2017/008201
(32)【優先日】2017-03-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003160
【氏名又は名称】東洋紡株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】513164624
【氏名又は名称】フラニクス テクノロジーズ ビー.ブイ.
(74)【代理人】
【識別番号】110002837
【氏名又は名称】特許業務法人アスフィ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】早川 章太
(72)【発明者】
【氏名】沼田 幸裕
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 勝也
(72)【発明者】
【氏名】稲垣 潤
(72)【発明者】
【氏名】ヤスパー ガブリエル ファン ベルケル
【審査官】赤澤 高之
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-200546(JP,A)
【文献】国際公開第2014/100265(WO,A1)
【文献】特開2012-229395(JP,A)
【文献】特開2012-094699(JP,A)
【文献】特開平11-010725(JP,A)
【文献】特開2014-073598(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00- 43/00
C08J 5/00- 5/24
B65D 65/00- 65/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエステルフィルムとヒートシール性樹脂層とを備えた積層体であって、
上記ポリエステルフィルムは、フランジカルボン酸とエチレングリコールからなるポリエチレンフランジカルボキシレート樹脂を含む二軸配向ポリエステルフィルムであり、
上記フィルムの面配向係数ΔPが0.100以上、0.200以下であり、上記フィルムの厚さが1μm以上、300μm以下であり、
上記フィルムの150℃で30分加熱したときの熱収縮率が10%以下であり、破断強度がMD方向及びTD方向とも150MPa以上であり、破断伸度がMD方向及びTD方向とも30%以上であり、
上記積層体のラミネート強度が2.0N/15mm以上であることを特徴とする積層体。
【請求項2】
温度23℃、相対湿度65%下における酸素透過度が1mL/m2/day/MPa以上、200mL/m2/day/MPa以下である請求項1に記載の積層体。
【請求項3】
請求項1または2のいずれかに記載の積層体を備えることを特徴とする包装袋。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フランジカルボン酸ユニットを有するポリエステルフィルムとヒートシール性樹脂層とを備えた、ラミネート強度に優れた積層体、およびそれを備える包装袋に関する。
【背景技術】
【0002】
耐熱性や機械物性に優れた熱可塑性樹脂であるポリエチレンテレフタレート(PET)やポリブチレンテレフタレート(PBT)などのポリエステル樹脂は、プラスチックフィルム、エレクトロニクス、エネルギー、包装材料、自動車等の非常に多岐な分野で利用されている。プラスチックフィルムのなかでも、二軸延伸PETフィルムは機械特性強度、耐熱性、寸法安定性、耐薬品性、光学特性などとコストのバランスに優れることから、工業用、包装用分野において幅広く用いられている。
【0003】
工業用フィルムの分野では、優れた透明性を有することから液晶ディスプレイやプラズマディスプレイなどのフラットパネルディスプレイ(FPD)向けの機能フィルムとして用いることができる。また耐加水分解性を付与したPETフィルムは太陽電池バックシート用フィルムとしても利用されており、機能性フィルム、ベースフィルムとして様々な目的で使われている。
【0004】
包装用フィルムの分野では、食品包装用、ボトル用シュリンクラベル、ガスバリアフィルム用途として利用されている。特に、ガスバリア性に優れるフィルムは、食品、医薬品、電子部品等の気密性を要求される包装材料、または、ガス遮断材料として使用され、近年需要が高まっている。
【0005】
一方、環境配慮型または環境持続型材料として、生分解性を有する樹脂やバイオマス由来の原料を用いた樹脂が注目されている。上述の観点から、PET等の石油誘導体を代替する再生可能なポリマーを提供することを目指して、多くの検討がなされている。PETの主鎖骨格であるテレフタル酸に代替する可能性のある化合物として、フランジカルボン酸(FDCA)が提案されており、FDCAとジオールとを重縮合したフラン系のPET相当物が提案されている(特許文献1、非特許文献1)。
【0006】
またポリブチレンフランジカルボキシレート(PBF)を中心として数種のフランジカルボン酸ユニットを有する熱可塑性樹脂組成物について、重合度を規定し電気・電子部品等の用途に使用できる高分子化合物の提案がされている(特許文献2)。さらに、還元粘度、末端酸価を規定し機械強度に優れるポリエステルの提案がされている(特許文献3,4)。
【0007】
またPEF誘導体およびPEF誘導体と共重合ポリエステルなどのブレンドによって得られたシートの一軸延伸フィルムの検討がなされている(特許文献5、6)。
【0008】
また特許文献7には機械的強度に優れたPEFフィルムについて開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】米国特許第2551731号公報
【文献】特許第4881127号公報
【文献】特開2013-155389号公報
【文献】特開2015-098612号公報
【文献】特表2015-506389号公報
【文献】特開2012-229395号公報
【文献】国際公開第2016/032330号
【0010】
【文献】Y. Hachihama, T.Shono, and K. Hyono, Technol. Repts. Osaka Univ., 8, 475 (1958)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、特許文献1において、開示されている高分子の物性は融点のみであり、機械強度は明らかになっておらず、フランジカルボン酸ユニットを有する熱可塑性樹脂組成物が工業用、包装用フィルムの分野で使用できるか不明であった。
【0012】
また、特許文献2において、開示されているPBFの熱プレス成形品の透明性は低く、工業用、包装用フィルムの分野での使用は制限される。特許文献3,4に開示されているポリエチレンフランジカルボキシレート(PEF)構造の200μmシート品の機械特性について、破断伸び、破断強度ともに低く、工業用、包装用フィルムの分野で使用することは考えられなかった。
【0013】
特許文献5では、配合物の種類、配合比率によりフランジカルボン酸ユニットを有する熱可塑性樹脂組成物からなるシートに比べて、それを一軸延伸したフィルムの破断伸びが向上することが記載されている。しかし、破断伸びが向上することが広く知られているシクロヘキサンジメタノール共重合PETを配合しない限り、破断伸びの大きな向上は認められず、限定的な配合比率による効果と言わざるを得ず、工業用、包装用フィルムの分野で使用されることもなかった。
【0014】
特許文献6では圧延ロールを用いて1.6倍程度に一軸延伸を行ったPEFフィルムが開示されている。ガスバリア性に優れるプラスチックフィルムであることが示されているものの、PEFのもつ化学構造由来のバリア性の利点を示したに過ぎず、包装材料として重要な機械強度は明らかになっておらず、フランジカルボン酸ユニットを有する包装用ガスバリアフィルムの分野で使用されることもなかった。
【0015】
特許文献7ではフランジカルボン酸ユニットを含む二軸延伸ポリエステルフィルムとヒートシール性を有するフィルムの特性向上しか検討されていない。
【0016】
このように、上記特許文献に提案のフランジカルボン酸ユニットを有する樹脂組成物がPET代替として検討されている。しかし、製袋するために必要なヒートシール性を有するフィルムを積層した積層体の検討は行われておらず、工業用、包装用フィルムとして適用できるかが不明である。
【0017】
本発明の課題は、フランジカルボン酸ユニットを有するポリエステルフィルムとヒートシール性樹脂層とを備えるラミネート強度に優れた積層体、およびそれを備える包装袋を提供することにある。好ましくは、更にガスバリア性に優れた積層体、およびそれを備える包装袋の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明の構成は以下のとおりである。
1.ポリエステルフィルムとヒートシール性樹脂層とを備えた積層体であって、
上記ポリエステルフィルムは、フランジカルボン酸とエチレングリコールからなるポリエチレンフランジカルボキシレート樹脂を含む二軸配向ポリエステルフィルムであり、
上記フィルムの面配向係数ΔPが0.005以上、0.200以下であり、上記フィルムの厚さが1μm以上、300μm以下であり、上記フィルムの150℃で30分加熱したときの熱収縮率が10%以下であり、
上記積層体のラミネート強度が2.0N/15mm以上であることを特徴とする積層体。
2.温度23℃、相対湿度65%下における酸素透過度が1mL/m2/day/MPa以上、200mL/m2/day/MPa以下である上記1に記載の積層体。
3.上記1または2のいずれかに記載の積層体を備えることを特徴とする包装袋。
【発明の効果】
【0019】
本発明の積層体はラミネート強度に優れるため、包装材料として好適に用いることができる。更に本発明の積層体は、好ましくはガスバリア性に優れているため、食品、医薬品、電子部品等の気密性を要求される包装材料を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1図1は、本発明に用いるフィルムの製膜装置におけるTD延伸工程の平面図の一例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
(1)ポリエステルフィルム
本発明に用いるポリエステルフィルムは、フランジカルボン酸とエチレングリコールからなるポリエチレンフランジカルボキシレート樹脂を含む二軸配向ポリエステルフィルムである。
【0022】
上記ポリエステルフィルムは、フランジカルボン酸とエチレングリコールからなるポリエチレンフランジカルボキシレート(以下、PEFということがある)樹脂を含む。すなわち、ポリエチレンフランジカルボキシレート樹脂は、ジカルボン酸成分(フランジカルボン酸)とグリコール成分(エチレングリコール)からなる組成物から形成されている。上記ポリエステルの全構成ユニット100モル%中、エチレンフランジカルボキシレートユニットの含有量が50モル%超100モル%以下であることが好ましく、本発明の目的を阻害しない範囲であれば、他のジカルボン酸成分やグリコール成分が共重合されたポリエチレンフランジカルボキシレート系樹脂であってもよい。エチレンフランジカルボキシレートユニットの含有量は70モル%以上100モル%以下であることがより好ましく、80モル%以上100モル%以下であることがさらに好ましく、90モル%以上100モル%以下であることがよりさらに好ましく、95モル%以上100モル%以下であることが特に好ましく、100モル%であることが最も好ましい。
他のジカルボン酸成分およびグリコール成分の共重合量は、上記ポリエステルの全構成ユニット100モル%中、20モル%以下であることが好ましく、10モル%以下であることがより好ましく、5モル%以下であることが特に好ましい。
上記の他のジカルボン酸成分としては、テレフタル酸やイソフタル酸、フタル酸、ナフタレンジカルボン酸、4、4’-ジカルボキシビフェニル、5-ナトリウムスルホイソフタル酸等の芳香族ジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、1,3-シクロヘキサンジカルボン酸、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸、2,5-ノルボルネンジカルボン酸、テトラヒドロフタル酸等の脂環族ジカルボン酸や、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、オクタデカン二酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸、メサコン酸、シトラコン酸、ダイマー酸等の脂肪族ジカルボン酸等が挙げられる。
上記の他のグリコール成分としては、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、2-アミノ-2-エチル-1,3-プロパンジオール、2-アミノ-2-メチル-1,3-プロパンジオール、1,10-デカンジオール、ジメチロールトリシクロデカン、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール等の脂肪族グリコール、ビスフェノールA、ビスフェノールS、ビスフェノールC、ビスフェノールZ、ビスフェノールAP、4,4′-ビフェノールのエチレンオキサイド付加体またはプロピレンオキサイド付加体、1,2-シクロヘキサンジメタノール、1,3-シクロヘキサンジメタノール、1,4-シクロヘキサンジメタノール等の脂環族グリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等が挙げられる。
【0023】
このようなポリエチレンフランジカルボキシレート系樹脂の重合法としては、フランジカルボン酸とエチレングリコール、および必要に応じて他のジカルボン酸成分およびジオール成分を直接反応させる直接重合法、およびフランジカルボン酸のジメチルエステル(必要に応じて他のジカルボン酸のジメチルエステルを含む)とエチレングリコール(必要に応じて他のジオール成分を含む)とをエステル交換反応させるエステル交換法等の任意の製造方法が利用され得る。
【0024】
本発明のポリエステルフィルムの樹脂成分として、ポリアミド、ポリスチレン、ポリオレフィン、上記以外のポリエステルなどの他の樹脂を含んでもよいが、機械特性、耐熱性の点で、他の樹脂の含有量はポリエステルフィルムの全構成ユニットに対して30モル%以下であることが好ましく、20モル%以下であることがより好ましく、10モル%以下であることがさらに好ましく、5モル%以下であることがよりさらに好ましく、0モル%であることが最も好ましい。なお、本明細書においては、ポリエステル以外の樹脂が含まれる場合であっても「ポリエステルフィルム」という。
【0025】
本発明に用いるPEFフィルムは、その面配向係数(ΔP)は0.005以上、0.200以下であり、好ましくは0.020以上、0.195以下であり、より好ましくは0.100以上、0.195以下であり、さらに好ましくは0.110以上、0.195以下であり、さらにより好ましくは0.120以上、0.195以下であり、さらにより一層好ましくは0.130以上、0.195以下であり、特に好ましくは0.140以上、0.190以下であり、最も好ましくは0.140以上、0.160以下である。
面配向係数(ΔP)が0.005未満では、フィルムの機械特性が不十分となり、フィルムの印刷や製袋などの後加工が困難となること、後の印刷やコーティングを行うときに印刷機やコーター上でフィルムが切れることなどが発生するため好ましくない。これに対して面配向係数(ΔP)を0.005以上とすることにより、上記問題が解消される他、PEFフィルムのガスバリア性が向上する。また面配向係数(ΔP)を、最も好ましくは0.160以下とすることにより十分な機械強度が得られる。
【0026】
面配向係数は、以下のように算出することができる。JIS K 7142-1996 5.1(A法)により、ナトリウムD線を光源としてアッベ屈折計によりフィルム面内の機械方向(MD方向、縦方向)の屈折率(nx)、およびその直角方向(TD方向、横方向)の屈折率(ny)、厚み方向の屈折率(nz)を測定し、下記式によって面配向係数(ΔP)を算出できる。
ΔP={(nx+ny)-2nz}÷2
【0027】
本発明に用いるPEFフィルムは、150℃で30分間加熱したときの加熱収縮率(以下、単に熱収縮率という)はMD方向およびTD方向とも10%以下である。好ましくは8%以下、より好ましくは4.5%以下であり、さらに好ましくは3.5%以下、さらにより好ましくは3.2%以下、一層好ましくは2.8%以下であり、より一層好ましくは2.4%以下である。熱収縮率が大きいと印刷時の色ズレ、印刷機やコーター上でのフィルムの伸びの発生による印刷やコーティング実施が困難になること、および高熱化でのフィルムの変形による外観不良などが発生する。特に、印刷機やコーターで加工する工程において、フィルムを搬送するロール間の拘束が無いため、TD方向収縮しやすく外観不良となりやすい。そのため、TD方向の熱収縮率はさらに一層好ましい順序で、1.8%以下、1.5%以下、1.2%以下、0.9%以下であり、0.6%以下が最も好ましい。上記熱収縮率は低い程良いが、製造上の点から、MD方向およびTD方向ともに0.01%以上が好ましい。
【0028】
本発明に用いるフランジカルボン酸ユニットを有するポリエステルフィルムの厚みは1μm以上、300μm以下であり、好ましくは5μm以上、200μm以下であり、より好ましくは10μm以上、100μm以下である。厚さが300μmを超えるとコスト面で問題があり、包装材料として用いた場合に視認性が低下しやすくなる。また、厚さが1μmに満たない場合は、機械的特性が低下し、フィルムとしての機能が果たせないおそれがあり、またラミネート強度が低下するおそれがある。
【0029】
本発明に用いるPEFフィルムにおいて、温度23℃、相対湿度65%下における酸素透過度は、好ましくは1mL/m2/day/MPa以上、1000mL/m2/day/MPa以下であり、より好ましくは500mL/m2/day/MPa以下であり、さらに好ましくは200mL/m2/day/MPa以下であり、さらにより好ましくは120mL/m2/day/MPa以下である。1000mL/m2/day/MPaを超えると、酸素により物質が劣化したり食品の保存性が不良になる。また、製造上の点から、1mL/m2/day/MPa以上が好ましい。
【0030】
本発明に用いるPEFフィルムにおいて、温度23℃、相対湿度65%下における厚さ50μm当たりの酸素透過度は、好ましくは1mL/m2/day/MPa以上、200mL/m2/day/MPa以下であり、より好ましくは50mL/m2/day/MPa以下であり、さらに好ましくは40mL/m2/day/MPa以下であり、さらにより好ましくは30mL/m2/day/MPa以下である。200mL/m2/day/MPaを超えると、酸素により物質が劣化したり食品の保存性が不良になる。また、製造上の点から1mL/m2/day/MPa以上が好ましい。
なお、本項で記載しているのは基材フィルムそのものの酸素透過度であり、当然、基材フィルムにコーティング、金属蒸着、金属酸化物による蒸着、スパッタリングなどの方法および共押出しなどによる方法などを付与することで、さらに酸素透過度を改善することは可能である。
【0031】
本発明に用いるPEFフィルムにおいて、温度37.8℃、相対湿度90%下における水蒸気透過度は、好ましくは0.1g/m2/day以上、40g/m2/day以下であり、より好ましくは30g/m2/day以下であり、さらに好ましくは20g/m2/day以下である。40g/m2/dayを超えると、水蒸気により物質が劣化したり食品の保存性が不良になる。また、製造上の点から0.1g/m2/day以上が好ましい。
【0032】
本発明に用いるPEFフィルムにおいて、温度37.8℃、相対湿度90%下における厚さ50μm当たりの水蒸気透過度は、好ましくは0.1g/m2/day以上、10g/m2/day以下であり、より好ましくは8g/m2/day以下であり、さらに好ましくは5g/m2/day以下であり、さらにより好ましくは4g/m2/day以下である。10g/m2/dayを超えると、水蒸気により物質が劣化したり食品の保存性が不良になる。また、製造上の点から、0.1g/m2/day以上が好ましい。
なお、本項で記載しているのは基材フィルムそのものの水蒸気透過度であり、当然、基材フィルムにコーティング、金属蒸着、金属酸化物による蒸着、スパッタリングなどの方法および共押出しなどによる方法などを付与することで、さらに水蒸気透過度を改善することは可能である。
【0033】
本発明に用いられるフィルムは、PEFそのものが高い酸素バリア性(すなわち、低い酸素透過度)の特性を有するが、後で述べる延伸工程を導入することにより酸素バリア性はさらに高くなる。
【0034】
上記PEFの固有粘度は、0.30dl/g以上、1.20dl/g以下の範囲が好ましく、より好ましくは0.55dl/g以上、1.00dl/g以下であり、さらに好ましくは0.70dl/g以上、0.95dl/g以下である。固有粘度が0.30dl/gよりも低いと、フィルムが裂けやすくなり、1.20dl/gより高いと濾圧上昇が大きくなって高精度濾過が困難となり、フィルターを介して樹脂を押出すことが困難となる。
【0035】
フィルム面内のMD方向の屈折率(nx)およびMD方向の直角方向の屈折率(ny)は、1.5700以上が好ましく、より好ましくは1.5800以上であり、さらに好ましくは1.5900以上であり、さらにより好ましくは1.6000以上であり、一層好ましくは1.6100以上であり、最も好ましくは1.6200以上である。nxとnyが1.5700以上では、十分なフィルム破断強度や破断伸度が得られるため、フィルムの機械特性が十分となり、フィルムの印刷や製袋などの後加工が容易となること、後の印刷やコーティングを行うときに印刷機やコーター上でフィルムが切れることなどが発生しにくいため好ましい。なお、製造上の点や熱収縮率の点から上限は、1.7000未満が好ましい。
【0036】
本発明に用いるPEFフィルムは、その破断強度がMD方向及びTD方向とも75MPa以上であることが好ましい。破断強度のより好ましい下限は100MPa、さらに好ましい下限は150MPa、さらにより好ましい下限は200MPa、一層好ましい下限は220MPaである。破断強度が75MPa未満では、フィルムの力学的強度が不十分となり、フィルムの加工工程で伸び、ズレ等の不具合を生じやすくなるので好ましくない。製造上の点を考慮して、上限は1000MPaが好ましい。
【0037】
本発明に用いるPEFフィルムは、その破断伸度がMD方向及びTD方向とも10%以上であることが好ましい。破断伸度の好ましい下限は15%、さらに好ましい下限は20%、特に好ましい下限は30%である。破断伸度が10%未満では、フィルムの力学的伸度が不十分となり、フィルムの加工工程で割れ、破れ等の不具合を生じやすくなるので好ましくない。製造上の点を考慮して、破断伸度の上限は好ましくは300%である。破断伸度の上限は、より好ましくは150%、さらに好ましくは100%、さらにより好ましくは80%である。
【0038】
本発明に用いるPEFフィルムの静摩擦係数(μs)は1.0以下、動摩擦係数(μd)は1.0以下であることが好ましい。静摩擦係数(μs)は0.8以下であることがより好ましく、0.6以下であることがさらに好ましい。動摩擦係数(μd)は0.8以下であることがより好ましく、0.6以下であることがさらに好ましい。静摩擦係数(μs)又は動摩擦係数(μd)が1.0を超えると、易滑性が悪くなり、フィルム走行中に擦れによりキズやシワが発生するおそれがある。なお、静摩擦係数(μs)は、本発明に用いるPEFフィルムの一方の面と他方の面との静摩擦係数であり、動摩擦係数(μd)は、本発明に用いるPEFフィルムの一方の面と他方の面との動摩擦係数である。
【0039】
本発明に用いるPEFフィルムは、全光線透過率が85%以上であることが好ましい。フィルムの欠点となる内部異物の検出精度を向上させるためには、透明性が高いことが望ましい。そのため、本発明のフランジカルボン酸ユニットを有するポリエステルフィルムの全光線透過率は85%以上が好ましく、87%以上がより好ましく、89%以上がさらに好ましい。フィルムの欠点となる内部異物の検出精度を向上させるためには、全光線透過率は高ければ高いほど良いが、100%の全光線透過率は技術的に達成困難である。
【0040】
本発明に用いるPEFフィルムは、ヘーズが15%以下であることが好ましい。食品包装用途において内容物の欠点検査を行うためには、フィルムの濁りが少ないことが望ましい。そのため、本発明に用いるPEFフィルムにおけるヘーズは15%以下であることが好ましく、7%以下であることがより好ましく、3%以下であることがさらに好ましく、1%以下が特に好ましい。ヘーズは低い方が良いが、PEFフィルム固有の屈折率から、0.1%以上が好ましい。
【0041】
本発明に用いるPEFフィルムの15μm換算の衝撃(インパクト)強度(耐衝撃性)の下限は、好ましくは0.4J/15μmであり、より好ましくは0.6J/15μmであり、さらに好ましくは0.8J/15μmである。0.4J/15μm未満であると袋として用いる際に強度が不足することがある。衝撃強度の上限は、好ましくは3.0J/15μmである。3.0J/15μmを超えると改善の効果が飽和することとなる。
【0042】
(2)ヒートシール性樹脂層
本発明に用いるヒートシール性樹脂層は、包装機械のヒートシール条件に適応する樹脂を含むものであればよい。すなわちヒートシール性樹脂は、製袋等の加工の際に、ヒートシールバーの熱と圧力により熱接着する方法、インパルスシール、超音波シール等の方法によりシール可能なものであればよく、例えば、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン等のポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアルコール、エチレン-ビニルアルコール共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-アクリル酸共重合体、エチレン-アクリル酸エチル共重合体、アイオノマー等が用いられる。
【0043】
(3)その他の層
(3-1)被覆層
本発明の積層体は、本発明に用いるPEFフィルムに高い透明性と優れた易滑性等を付与するために、被覆層を備えていてもよい。被覆層を設ける場合には、上記ポリエステルフィルムの少なくとも片面に被覆層を備えることが好ましい。被覆層は上記ポリエステルフィルムの両面にあってもよく、被覆層上にさらに被覆層を設ける多層積層構成をとってもよい。被覆層が多層の場合は、より外側(ポリエステルフィルムの反対側)の被覆層に後述の粒子を含有させることが好ましく、後述の無機粒子を含有させることがより好ましい。
【0044】
被覆層は、ポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂、およびアクリル系樹脂よりなる群から選ばれる少なくとも1種の樹脂を含有することが好ましい。ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂は、ポリエステルフィルムに対して接着性を有する。上述の樹脂は単独で用いてもよいし、異なる2種以上の樹脂、例えば、ポリエステル樹脂とウレタン樹脂、ポリエステル樹脂とアクリル樹脂、あるいはウレタン樹脂とアクリル樹脂を組み合わせて用いてもよい。
【0045】
(3-1)(a)ポリエステル樹脂
被覆層のポリエステル樹脂として共重合ポリエステルを用いる場合、ジカルボン酸成分として芳香族ジカルボン酸成分を、グリコール成分としてエチレングリコール及び分岐状グリコールを構成成分とすることが好ましい。分岐状グリコールとは、例えば、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール(ネオペンチルグリコール)、2-メチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、2-メチル-2-ブチル-1,3-プロパンジオール、2-メチル-2-プロピル-1,3-プロパンジオール、2-メチル-2-イソプロピル-1,3-プロパンジオール、2-メチル-2-n-ヘキシル-1,3-プロパンジオール、2,2-ジエチル-1,3-プロパンジオール、2-エチル-2-n-ブチル-1,3-プロパンジオール、2-エチル-2-n-ヘキシル-1,3-プロパンジオール、2,2-ジ-n-ブチル-1,3-プロパンジオール、2-n-ブチル-2-プロピル-1,3-プロパンジオール、2,2-ジ-n-ヘキシル-1,3-プロパンジオールなどが挙げられる。
【0046】
分岐状グリコール成分のモル比の下限は、全グリコール成分に対し、10モル%であることが好ましく、より好ましくは20モル%、さらに好ましくは30モル%である。一方、上限は90モル%であることが好ましく、より好ましくは80モル%である。また、必要に応じて、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ヘキサンジオール、または1,4-シクロヘキサンジメタノールなどを併用してもよい。
【0047】
芳香族ジカルボン酸成分としては、テレフタル酸、イソフタル酸、またはフランジカルボン酸が最も好ましい。芳香族ジカルボン酸成分は、テレフタル酸、イソフタル酸、及びフランジカルボン酸のみで構成されていてもよい。また、他の芳香族ジカルボン酸、特に、ジフェニルカルボン酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸を全ジカルボン酸成分に対し、10モル%以下の範囲で加えて共重合させてもよい。
【0048】
また、ポリエステル樹脂を水系塗液として用いる場合には、水溶性あるいは水分散性のポリエステル系樹脂が用いられるが、このような水溶性化あるいは水分散化のためには、スルホン酸塩基を含む化合物や、カルボン酸塩基を含む化合物を共重合させることが好ましい。ジカルボン酸成分の他に、ポリエステルに水分散性を付与させるため、例えば、スルホテレフタル酸、5-スルホイソフタル酸、4-スルホナフタレンイソフタル酸-2,7-ジカルボン酸、5-(4-スルホフェノキシ)イソフタル酸またはそれらのアルカリ金属塩などを全ジカルボン酸成分に対して1~10モル%の範囲で使用するのが好ましく、5-スルホイソフタル酸又はそのアルカリ金属塩を使用することがより好ましい。
【0049】
(3-1)(b)ポリウレタン樹脂
被覆層のポリウレタン樹脂は、構成成分として、少なくともポリオール成分及びポリイソシアネート成分を含み、さらに必要に応じて鎖延長剤を含むことができる。熱反応型ポリウレタン樹脂を用いる場合には、例えば、末端イソシアネート基を活性水素基で封鎖(以下ブロックと言う)した、水溶性または水分散性ポリウレタンなどが挙げられる。
【0050】
ポリオール成分としては、多価カルボン酸(例えば、マロン酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、フマル酸、マレイン酸、テレフタル酸、イソフタル酸等)またはそれらの酸無水物と、多価アルコール(例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6-ヘキサンジオール等)との反応から得られるポリエステルポリオール類、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレンプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、ポリヘキサメチレンエーテルグリコール等のポリエーテルポリオール類、ポリカーボネートポリオール類、ポリオレフィンポリオール類、アクリルポリオール類などが挙げられる。
【0051】
ウレタン樹脂の構成成分であるポリイソシアネートとしては、例えば、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタン-4,4-ジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート類、キシリレンジイソシアネート等の芳香族脂肪族ジイソシアネート類、イソホロンジイソシアネート及び4,4-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、1,3-ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン等の脂環式ジイソシアネート類、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート類、あるいはこれらの化合物の1種または2種以上と、トリメチロールプロパン等とをあらかじめ付加させたポリイソシアネート類が挙げられる。バリア性の観点からは、芳香族ジイソシアネート類、芳香脂肪族ジイソシアネート類、脂環式ジイソシアネート類が好ましい。さらに、環状部に置換基を有する場合は、芳香環や脂環の側鎖は短鎖であることが好ましい。また、ジイソシアネート成分は対称性を有する方が、凝集力が向上するため好ましい。
【0052】
イソシアネート基のブロック化剤としては、重亜硫酸塩類、フェノール類、アルコール類、ラクタム類、オキシム類、マロン酸ジメチル等のエステル類、アセト酢酸メチル等のジケトン類、メルカプタン類、尿素類、イミダゾール類、コハク酸イミド等の酸イミド類、ジフェニルアミン等のアミン類、イミン類、2-オキサゾリジン等のカルバメート系等が挙げられる。水溶性または水分散性ポリウレタンは、分子中に親水性基を有することが好ましい。そのため、使用する分子内に少なくとも1個以上の活性水素原子を有する化合物に親水性基を有するか、ブロック化剤に親水性を有する化合物を使用することが好ましい。使用する分子内に少なくとも1個以上の活性水素原子を有する化合物中に親水性基を有する例として、タウリン、ジメチロールプロピオン酸、カルボン酸基またはスルホン酸基を有するポリエステルポリオール、ポリオキシアルキレンポリオール等が挙げられる。また、ブロック化剤に親水性を有する化合物としては、重亜硫酸塩類、及びスルホン酸基を含有したフェノール類等が挙げられる。フィルム製造時の乾燥あるいは熱セット過程で、上記樹脂に熱エネルギーが与えられると、ブロック化剤がイソシアネート基からはずれるため、上記樹脂は自己架橋した編み目に混合した水分散性共重合ポリエステル樹脂を固定化するとともに、上記樹脂の末端基等とも反応する。特に水溶性または水分散性ポリウレタンとしては、ブロック化剤に親水性を有する化合物を使用したものが好ましい。これらのポリウレタンは、塗布液調整中の樹脂は親水性であるため耐水性が悪いが、塗布、乾燥、熱セットして熱反応が完了すると、ウレタン樹脂の親水基すなわちブロック化剤がはずれるため、耐水性が良好な塗膜が得られる。
【0053】
ポリウレタン樹脂において使用されるウレタンプレポリマーの化学組成としては、(i)分子内に少なくとも2個の活性水素原子を有する分子量が200~20,000の化合物、(ii)分子内に2個以上のイソシアネート基を有する有機ポリイソシアネート、及び、必要により含有される(iii)分子内に少なくとも2個の活性水素原子を有する鎖伸長剤を反応させて得られる、末端イソシアネート基を有する化合物である。
【0054】
上記(i)の分子内に少なくとも2個の活性水素原子を有する分子量が200~20,000の化合物として一般に知られている末端又は分子中に2個以上のヒドロキシル基、カルボキシル基、アミノ基あるいはメルカプト基を含むものが好ましく、特に好ましい化合物としては、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール等が挙げられる。
【0055】
ポリエステルポリオールとしては、コハク酸、アジピン酸、フタル酸、無水マレイン酸等の多価の飽和あるいは不飽和カルボン酸、あるいはこのカルボン酸無水物等と、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6-ヘキサンジオール、トリメチロールプロパン等の多価の飽和または不飽和のアルコール類、比較的低分子量のポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のポリアルキレンエーテルグリコール類、あるいはそれらアルコール類の混合物を縮合することにより得ることができる。
【0056】
ポリエステルポリオールとしては、ラクトン及びヒドロキシ酸から得られるポリエステル類、あらかじめ製造されたポリエステル類にエチレンオキシドあるいはプロピレンオキシド等を付加したポリエステルポリオール類も使用することができる。
【0057】
上記(ii)の有機ポリイソシアネートとしては、トルイレンジイソシアネートの異性体類、4,4-ジフェニルメタンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート類、キシリレンジイソシアネート等の芳香族脂肪族ジイソシアネート類、イソホロンジイソシアネート、4,4-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート等の脂環式ジイソシアネート類、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート類、あるいはこれらの化合物の1種または2種以上をトリメチロールプロパン等に付加させて得られるポリイソシアネート類が挙げられる。
【0058】
上記(iii)の分子内に少なくとも2個の活性水素原子を有する鎖伸長剤としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール等のグリコール類、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等の多価アルコール類、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ピペラジン等のジアミン類、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン等のアミノアルコール類、チオジエチレングルコール等のチオジグリコール類、あるいは水が挙げられる。
【0059】
ウレタンプレポリマーは、通常、上記(i)と上記(ii)と、さらに必要に応じて上記(iii)とを用いた一段式あるいは多段式イソシアネート重付加方法により、150℃以下、好ましくは70~120℃の温度において、5分ないし数時間反応させることにより合成される。上記(i)および上記(iii)の活性水素原子に対する上記(ii)のイソシアネート基の比は、1以上であればよいが、得られるウレタンプレポリマー中に遊離のイソシアネート基を残存させる必要がある。さらに、遊離のイソシアネート基の含有量は、得られるウレタンプレポリマーの全質量に対して10質量%以下であればよいが、ブロック化された後のウレタンポリマーの水溶液の安定性を考慮すると、7質量%以下であることが好ましい。
【0060】
ウレタンプレポリマーは、好ましくは重亜硫酸塩を用いて末端イソシアネート基のブロック化を行う。ウレタンプレポリマーを重亜硫酸塩水溶液と混合し、約5分~1時間、よく攪拌しながら反応を進行させる。反応温度は60℃以下とするのが好ましい。その後、反応混合物を水で希釈して適当な濃度にして、熱反応型水溶性ウレタン樹脂組成物とする。該組成物は使用する際、適当な濃度および粘度に調整するが、通常80~200℃前後に加熱すると、ブロック化剤である重亜硫酸塩が解離して活性な末端イソシアネート基が再生するために、プレポリマーの分子内あるいは分子間で起こる重付加反応によってポリウレタン重合体が生成するか、あるいは他の官能基への付加を起こす性質を有するようになる。
【0061】
(3-1)(c)アクリル系樹脂
被覆層のアクリル系樹脂として、水分散性または水溶性のアクリル樹脂を用いることができる。水分散性または水溶性のアクリル樹脂とは、例えば、アクリレートおよびメタクリレート樹脂のうち少なくとも1つ、あるいはこれらと、スチレンなどの不飽和二重結合を有するアクリル樹脂と共重合可能な脂肪族化合物または芳香族化合物との共重合体が挙げられる。親水性に優れたアクリル-スチレン共重合樹脂として、乳化重合による水分散性アクリル-スチレンランダム共重合樹脂が最も好ましい。
【0062】
(3-1)(d)粒子
耐スクラッチ性やロール状に巻取る際や巻出す際のハンドリング性(滑り性、走行性、ブロッキング性、巻取り時の随伴空気の空気抜け性など)を改善するために、被覆層に粒子を含有させることが好ましい。これにより、本発明の積層ポリエステルフィルムは、高い透明性を保持しながら、滑り性、巻取り性、耐スクラッチ性を得ることができる。
【0063】
粒子としては、無機粒子、有機粒子(耐熱性高分子粒子)などが挙げられる。無機粒子としては、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、非晶性シリカ、結晶性のガラスフィラー、カオリン、タルク、二酸化チタン、アルミナ、シリカ-アルミナ複合酸化物、硫酸バリウム、フッ化カルシウム、フッ化リチウム、ゼオライト、硫化モリブデン、マイカなどを粒子にしたものを用いることができる。また、有機粒子としては、架橋ポリスチレン粒子、架橋アクリル系樹脂粒子、架橋メタクリル酸メチル系粒子、ベンゾグアナミン・ホルムアルデヒド縮合物粒子、メラミン・ホルムアルデヒド縮合物粒子、ポリテトラフルオロエチレン粒子などの耐熱性高分子粒子が挙げられる。
【0064】
これらの粒子の中でも、樹脂成分と屈折率が比較的近いため、高透明のフィルムを得やすいという点でシリカ粒子が好ましい。また、粒子の形状は特に限定されないが、易滑性を付与する点からは、球状に近い粒子が好ましい。
【0065】
被覆層全量に占める粒子の含有量は、20質量%以下であることが好ましく、より好ましくは15質量%以下、特に好ましくは10質量%以下である。被覆層中の粒子の含有量が20質量%を超えると、透明性が悪化し、フィルムの接着性も不十分となりやすい。一方、粒子の含有量の下限は、好ましくは0.1質量%、より好ましくは1質量%、特に好ましくは3質量%である。
【0066】
粒子が1種の場合、または2種以上の場合の主体とする粒子Pの平均粒径は10~10000nmが好ましく、特に好ましくは200~1000nmである。粒子Pの平均粒径が10nm未満の場合、耐スクラッチ性、滑り性、巻き性が悪化する場合がある。一方、粒子Pの平均粒径が10000nmを超える場合、粒子が脱落しやすくなるばかりでなく、ヘーズが高くなる傾向がある。2種以上の粒子を用いる場合で補助的に平均粒径の小さな粒子Qを添加する場合の粒子Qの平均粒径は20~150nmが好ましく、より好ましくは40~60nmである。平均粒径が20nm未満であると、十分な耐ブロッキング性を得ることが困難な他、耐スクラッチ性が悪化する傾向がある。
【0067】
また、粒子Pがシリカ粒子である場合、粒子Pの平均粒径が10~10000nmであると、乾式法で作製されたシリカよりなる平均一次粒径40~60nmの凝集体が被覆層から脱落しにくいため好ましい。これは製膜工程において、被覆層を塗布後、延伸工程、熱固定工程を経ることによって平たく、安定した形状にできるためと推察される。さらに粒子Pとしては、凝集状態での平均粒径と平均一次粒子との比(凝集状態での平均粒径/平均一次粒径)が4倍以上となる粒子を用いることが、耐スクラッチ性の点から好ましい。
【0068】
粒子は異種の粒子を2種類以上含有させても良いし、同種の粒子で平均粒径の異なるものを含有させてもよい。
【0069】
被覆層には、コート時のレベリング性の向上、コート液の脱泡を目的に界面活性剤を含有させることもできる。界面活性剤は、カチオン系、アニオン系、ノニオン系などのいずれでもよいが、シリコーン系、アセチレングリコール系、又はフッ素系界面活性剤が好ましい。これらの界面活性剤は、ポリエステルフィルムとの接着性を損なわない程度の範囲、例えば、被覆層形成用塗布液中に0.005~0.5質量%の範囲で含有させることが好ましい。
【0070】
被覆層に他の機能性を付与するために、各種の添加剤を含有させてもよい。添加剤としては、例えば、蛍光染料、蛍光増白剤、可塑剤、紫外線吸収剤、顔料分散剤、抑泡剤、消泡剤、防腐剤、帯電防止剤等が挙げられる。
【0071】
(3-2)薄膜層
本発明の積層体は、PEFフィルムのガスバリア性を向上し、PEFフィルムに可撓性を付与するために薄膜層を備えていてもよい。薄膜層は、無機化合物を主たる成分とするものである。無機化合物は、酸化アルミニウム及び酸化珪素の少なくとも一方である。ここでの「主たる成分」とは、薄膜層を構成する成分100質量%に対し、酸化アルミニウム及び酸化珪素の合計量が50質量%超であることを意味し、好ましくは70質量%以上、より好ましくは90質量%以上、最も好ましくは100質量%(酸化アルミニウム、酸化珪素以外の成分が薄膜層を構成する成分として含有されていない)である。ここでいう酸化アルミニウムとは、AlO,Al2O,Al23等の各種アルミニウム酸化物の少なくとも1種以上からなり、各種アルミニウム酸化物の含有率は薄膜層の作製条件によって制御することができる。酸化珪素とは、SiO,SiO2,Si32等の各種珪素酸化物の少なくとも1種以上からなり、各種珪素酸化物の含有率は薄膜層の作製条件によって制御することができる。酸化アルミニウム又は酸化珪素には、成分中に、特性が損なわれない範囲で微量(全成分に対して、最大でも3質量%まで)の他成分を含んでいてもよい。
【0072】
薄膜層の厚さは、特に限定されないが、フィルムのガスバリア性及び可撓性の点からは、5~500nmが好ましく、より好ましくは10~200nmであり、さらに好ましくは15~50nmである。薄膜層の膜厚が5nm未満では、所望とするガスバリア性が得られ難くなるおそれがあり、一方、500nmを超えても、それに相当するガスバリア性の向上の効果は得られず、耐屈曲性や製造コストの点でかえって不利となる。
(3-3)その他
本発明の積層体は、特性向上のために必要に応じて、上記PEFフィルム、被覆層、および薄膜層以外の層を備えていてもよい。例えば、二軸延伸ポリアミドフィルム、ポリ塩化ビニリデンフィルム、ポリメタキシレンアジパミドフィルム、耐衝撃強度の向上に有効な二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム等が挙げられる。
【0073】
(4)積層体
本発明の積層体は、ポリエチレンフランジカルボキシレート系樹脂よりなる二軸配向ポリエステルフィルムと、ヒートシール性樹脂層とを備えるものである。また本発明の積層体は、上述の通りその他の層も備えていても良い。すなわち本発明の積層体は、2層に限定されず、3層以上の積層構造であっても良い。
【0074】
本発明の積層体の2層構造は、本発明におけるフランジカルボン酸ユニットを有するポリエステルフィルムをPEF、酸化アルミニウムや酸化珪素を蒸着したPEFフィルムを蒸着PEF、直鎖状低密度ポリエチレン系フィルムをLLDPE、未延伸ポリプロピレンフィルムをCPPとした場合、PEF/LLDPE、PEF/CPP、蒸着PEF/LLDPE、蒸着PEF/CPP等の構造が挙げられる。
【0075】
本発明の積層体の3層構造は、更にAlをアルミニウム箔、DPETを二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム、蒸着DPETを酸化アルミニウムや酸化珪素を蒸着したDPETフィルム、ONYを二軸延伸ポリアミドフィルム、PVDCをポリ塩化ビニリデンフィルム、EVOHをエチレンビニルアルコール共重合体フィルムとした場合、PEF/Al/LLDPE、PEF/Al/CPP、DPET/PEF/LLDPE、DPET/PEF/CPP、PEF/ONY/LLDPE、PEF/ONY/CPP、ONY/PEF/LLDPE、ONY/PEF/CPP、蒸着DPET/PEF/LLDPE、蒸着DPET/PEF/CPP、PEF/蒸着DPET/LLDPE、PEF/蒸着DPET/CPP、DPET/蒸着PEF/LLDPE、DPET/蒸着PEF/CPP、蒸着PEF/DPET/LLDPE、蒸着PEF/DPET/CPP、ONY/蒸着PEF/LLDPE、ONY/蒸着PEF/CPP、蒸着PEF/ONY/LLDPE、蒸着PEF/ONY/CPP、PEF/PVDC/LLDPE、PEF/PVDC/CPP、PEF/EVOH/LLDPE、PEF/EVOH/CPP、PEF/MXD6/LLDPE等の構造が挙げられる。
【0076】
本発明の積層体の4層構造は、更にMXD6をポリメタキシレンアジパミドフィルムとした場合、PEF/ONY/Al/LLDPE、PEF/ONY/Al/CPP、DPET/Al/PEF/CPP、DPET/Al/PEF/LLDPE、PEF/MXD6/CPP等の構造が挙げられる。
【0077】
本発明の積層体のラミネート強度は2.0N/15mm以上、好ましくは2.5N/15mm以上、より好ましくは3.0N/15mm以上であり、さらに好ましくは3.5N/15mm以上である。2.0N/15mm未満であると、ヒートシールを行い、製袋後の内容物の充填された袋を積み重ねた状態で運搬した場合、互いに接触することで圧力がかった場合、あるいは、袋を高いところから落下させた場合に袋が破れやすくなる。また上限は好ましくは15N/15mmである。
【0078】
本発明の積層体の温度23℃、相対湿度65%下における酸素透過度は、好ましくは1mL/m2/day/MPa以上、200mL/m2/day/MPa以下であり、より好ましくは150mL/m2/day/MPa以下であり、さらに好ましくは120mL/m2/day/MPa以下であり、さらにより好ましくは90mL/m2/day/MPa以下であり、特に好ましくは80mL/m2/day/MPa以下である。
200mL/m2/day/MPaを超えると、酸素により物質が劣化したり食品の保存性が不良になる。また、製造上の点から、1mL/m2/day/MPa以上が好ましい。
【0079】
本発明の積層体の温度37.8℃、相対湿度90%下における水蒸気透過度は、好ましくは0.1g/m2/day以上、10g/m2/day以下であり、より好ましくは8.0g/m2/day以下であり、さらに好ましくは6g/m2/day以下であり、さらにより好ましくは4g/m2/day以下である。10g/m2/dayを超えると、水蒸気により物質が劣化したり食品の保存性が不良になる。また、製造上の点から0.1g/m2/day以上が好ましい。
【0080】
本発明の積層体のヒートシール強度は、本発明のフランジカルボン酸ユニットを有するポリエステルフィルムの表面になんらかの処理を施さなくても、十分な値を得ることができるが、コロナ処理、プラズマ処理、アンカーコートを行うことで接着強度を高くすることが可能である。
【0081】
(5)包装袋
本発明の積層体を製袋することにより包装袋を得ることができる。包装体としては、袋、フタ材、カップ、チューブ、スタンディングパウチ、トレイ等が挙げられる。その形状、種類は、特に限定されず、例えば、袋物の包装形式としては、ピロータイプ、三方シール、四方シール等が挙げられる。これらの包装材料、包装体の全部あるいは一部として、本発明の積層体を用いる。
【0082】
(6)積層体の製造方法
次に、本発明の積層体を製造する方法について説明する。まず本発明に用いるフランジカルボン酸ユニットを有するポリエステルフィルムの製造方法について説明する。PEFペレットを用いた代表例について詳しく説明するが、当然これに限定されるものではない。
【0083】
まず、フィルム原料を水分率が100ppm未満となるように、乾燥あるいは熱風乾燥する。次いで、各原料を計量、混合して押し出し機に供給し、シート状に溶融押出を行う。さらに、溶融状態のシートを、静電印加法を用いて回転金属ロール(キャスティングロール)に密着させて冷却固化し、未延伸PEFシートを得る。
【0084】
また、溶融樹脂が220~300℃に保たれた任意の場所で、樹脂中に含まれる異物を除去するために高精度濾過を行う。溶融樹脂の高精度濾過に用いられる濾材は、特に限定はされないが、ステンレス焼結体の濾材の場合、Si、Ti、Sb、Ge、Cuを主成分とする凝集物及び高融点有機物の除去性能に優れ好適である。
【0085】
表層(a層)と中間層(b層)とを共押出し積層する場合は、2台以上の押出し機を用いて、各層の原料を押出し、多層フィードブロック(例えば角型合流部を有する合流ブロック)を用いて両層を合流させ、スリット状のダイからシート状に押出し、キャスティングロール上で冷却固化せしめて未延伸フィルムを作る。あるいは多層フィードブロックを用いる代わりにマルチマニホールドダイを用いても良い。
【0086】
次に、前記の方法で得られた未延伸フィルムを二軸延伸し、次いで熱固定を行う。
【0087】
例えば、フランジカルボン酸ユニットを有する二軸配向ポリエステルフィルムを製造する場合、MD方向またはTD方向に一軸延伸を行い、次いで直交方向に延伸する逐次二軸延伸方法、MD方向及びTD方向に同時に延伸する同時二軸延伸する方法、さらに同時二軸延伸する際の駆動方法としてリニアモーターを用いる方法を採用することができる。逐次二軸延伸方法の場合、MD延伸は加熱ロールを用いて速度差をつけることでMD方向に延伸することで可能となる。加熱に赤外線ヒーターなどを併用することも可能である。引き続き行うTD延伸は、縦延伸したシートをテンターに導き、両端をクリップで把持し、加熱しながらTD方向に延伸することで可能となる。TD延伸後のフィルムは、テンター内で引き続き熱固定を行う。熱固定は、TD延伸で引っ張ったまま行うことも可能であるが、TD方向に弛緩させながら処理することも可能である。熱固定後のフィルムは、両端を切り落としてワインダーで巻き上げることも可能である。
【0088】
特許文献5、6には、1.6~5.0倍の一軸延伸を行ったPEFフィルムの製造方法が開示されている。しかしながら、上記開示の方法では、工業用、包装用として利用できる機械特性を達成することはできない。そこで、本願発明者は鋭意検討を行なった結果、以下のような延伸方法を行なうことにより、高い機械特性を達成するに至った。
【0089】
(6-1)フィルムのMD方向の延伸倍率の制御
本発明で用いるポリエステルフィルムを得るためには1.1~10.0倍の範囲でMD方向に延伸を行うことが好ましい。MD方向に1.1倍以上延伸することで、面配向係数ΔPが0.005以上であるフィルムを作製することができる。MD方向の延伸倍率は、より好ましくは1.5倍以上、さらに好ましくは2.5倍以上、さらにより好ましくは3.5倍以上、一層好ましくは3.8倍以上、特に好ましくは4.0倍以上、最も好ましくは4.5倍以上である。2.5倍以上とすることで、ΔPが0.02以上、さらにはMDおよびTD方向の屈折率nx、nyが1.5700以上となり、フィルム破断強度が100MPa以上かつフィルム破断伸度が15%以上の力学的特性に優れたフィルムとすることができる。MD方向の延伸倍率が10.0倍以下であると破断の頻度が少なくなり好ましい。MD方向の延伸倍率が高いほど、熱固定工程の温度を高くすることができ、熱収縮率を下げることができる。
【0090】
(6-2)フィルムのMD方向の延伸温度の制御
本発明で用いられるポリエステルフィルムを得るためには90℃以上150℃以下の範囲でMD方向に延伸を行うことが好ましい。より好ましくは100℃以上125℃以下である。MD方向の延伸温度が90℃以上では破断の頻度が少なくなり好ましい。150℃以下であると均一に延伸ができるため好ましい。
【0091】
次に図1を用いて、TD方向の延伸以降の工程について説明する。図1は、本発明に用いるフィルム製膜装置におけるTD方向の延伸工程の平面図の一例である。MD方向の延伸後のフィルムは、両端がクリップ7で把持され、予熱ゾーン1、延伸ゾーン2、熱固定ゾーン3、弛緩ゾーン4、5、冷却ゾーン6を経て、下流の巻取り工程に導かれる。但し、上記工程はこれに限定されない。
【0092】
(6-3)フィルムのTD方向の延伸倍率の制御
本発明のフランジカルボン酸ユニットを有するポリエステルフィルムを得るためには1.1~10.0倍の範囲でTD方向に延伸を行うことが好ましい。TD方向に1.1倍以上延伸することで、面配向係数ΔPが0.005以上のフィルムを作製することができる。より好ましくは、TD方向の延伸倍率が3.0倍以上、さらに好ましくは3.5倍以上、さらにより好ましくは4倍以上、特に好ましくは4.5倍以上である。3.0倍以上とすることで、面配向係数ΔPが0.02以上、さらにはMD方向及びTD方向の屈折率nx、nyが1.5700以上となり、フィルム破断強度が75MPa以上かつフィルム破断伸度が15%以上の力学的特性に優れたフィルムとすることができる。TD方向の延伸倍率が10.0倍以下であると破断の頻度が少なくなり好ましい。
【0093】
(6-4)フィルムのTD方向の延伸温度の制御
本発明のフランジカルボン酸ユニットを有するポリエステルフィルムを得るためには80℃以上200℃以下の範囲でTD方向に延伸を行うことが好ましい。より好ましくは95℃以上135℃以下である。幅方向の延伸温度が80℃以上では破断の頻度が少なくなり好ましい。200℃以下であると均一に延伸ができるため好ましい。
【0094】
(6-5)フィルムの熱固定温度の制御
本発明のフランジカルボン酸ユニットを有するポリエステルフィルムを得るためには110℃以上、210℃以下の範囲で熱固定処理を行うことが好ましい。熱固定処理の温度が210℃以下であるとフィルムが不透明になり難く、溶融破断の頻度が少なくなり、好ましい。一方、熱固定温度を高くすると熱収縮率が低減するため110℃以上であることが好ましく、120℃以上がより好ましく、140℃以上がさらに好ましく、160℃以上がさらにより好ましく、175℃以上が特に好ましい。熱固定処理により面配向係数ΔPが大きくなる傾向にある。
【0095】
本発明では、上記熱固定処理の後、TD方向の緩和処理;TD方向またはMD方向の弛緩処理の少なくともいずれか一方を行なう。具体的には、熱固定処理の後、TD方向の緩和処理のみを行なう方法;熱固定処理の後、TD方向またはMD方向の弛緩処理のみを行なう方法;熱固定処理の後、TD方向の緩和処理を行なった後、TD方向またはMD方向の弛緩処理を行なう方法、が挙げられる。
【0096】
(6-6)TD方向の緩和温度の制御
TD方向の緩和処理を行なう場合、本発明のフランジカルボン酸ユニットを有するポリエステルフィルムを得るためには100℃以上200℃以下の範囲でTD方向に緩和処理を行うことが好ましい。より好ましくは165℃以上195℃以下である。これにより、熱収縮率を低減できるため好ましい。
【0097】
(6-7)TD方向の緩和率の制御
TD方向の緩和処理を行なう場合、本発明のフランジカルボン酸ユニットを有するポリエステルフィルムを得るためにはTD方向の緩和率を0.5%以上10.0%以下の範囲で行うことが好ましい。より好ましくは2%以上6%以下である。緩和率を0.5%以上とすることにより、熱収縮率を低減できるため好ましい。
【0098】
(6-8)弛緩処理
熱固定ゾーン3の最高温度を経て結晶化を施したフィルムに対して弛緩処理を行うと、その残留延伸応力を適度に除去できるため、好ましい。例えば緩和処理を行なわずに弛緩処理のみ行なう場合、図1に示すように熱固定ゾーン3の熱固定処理による最高温度部を経た後、ただちに弛緩ゾーン4でフィルム端部を分離し、MD方向およびTD方向に熱固定を行う(この場合は、次の弛緩ゾーン5でフィルム端部を分離しない)か;または弛緩ゾーン4にて弛緩を行った後、ただちに弛緩ゾーン5にてフィルム端部を分離し、MD方向およびTD方向に弛緩処理を施すことが好ましい。これにより、熱収縮率を低く抑えることができる。また、冷却後、巻取り工程の引き取り速度をTD方向の延伸の製膜速度より遅くしてTD方向の弛緩処理を行ってもよいが、熱固定ゾーン3の最高温度を経た後にフィルムを冷却することなくフィルムに弛緩処理を行うことが好ましい。
【0099】
(6-8)(A)弛緩処理温度の制御
弛緩ゾーン4または5の温度は140℃以上200℃以下であることが好ましく、160℃以上180℃以下であることがより好ましい。弛緩ゾーン4または5の温度が140℃以上200℃以下であると150℃、30分間加熱したときの熱収縮率最大値が小さくなり好ましい。140℃未満の弛緩処理では150℃、30分間加熱したときの全方位の収縮率を低減することは難しく、200℃を超える弛緩処理ではフィルムの弾性率が低下することにより、フィルムの平面性が悪化してしまう。
【0100】
(6-8)(B)弛緩処理率の制御
熱固定ゾーン3の熱固定処理による最高温度部を経た後、フィルムを冷却することなくフィルム端部を分離する場合には、横方向には自由に弛緩することから、上記弛緩処理温度の制御により、横方向の熱収縮率は極めて低くなる。また、下記式(1)で定義される縦方向弛緩率は、縦方向の熱収縮率と相関するため、縦方向弛緩率は1.0%以上15.0%以下であることが好ましく、3.0%以上10.0%以下であることがより好ましい。縦方向弛緩率が15.0%以下であると、フィルムの平面性に優れるため好ましい。縦方向弛緩率が1.0%以上であると、熱収縮率最大値が小さくなり好ましい。
【0101】
縦方向弛緩率=((端部分離前のフィルム速度-巻取り工程のフィルム速度)÷端部分離前のフィルム速度)×100(%) (1)
【0102】
(6-8)(C)工程内弛緩処理におけるフィルム端部の分離方法
フィルム端部の分離方法は特に限定されないが、弛緩ゾーン4または5に切断刃を設け、端部を切断分離する手法、弛緩ゾーン4内でクリップよりフィルム端部を外す方法などを用いることができる。弛緩ゾーン4または5内でクリップよりフィルム端部を外す方法では縦方向弛緩率によらず安定的に弛緩処理を行うことができるためより好ましい。
【0103】
本発明に用いるフィルムは上記方法により製造されるものであるが、上記技術思想の範囲であれば、上記具体的に開示された方法に限定されるものはない。本発明に用いるフィルムを製造する上で重要であるのは、上記技術思想に基づき、上述の製造条件について極めて狭い範囲で高精度の制御をすることである。
【0104】
本発明に用いるフィルムの破断強度、破断伸度と熱収縮率は、前述した延伸と熱固定条件を独立に、かつ組み合わせて制御することが可能である。それらは任意に選べるが、上述した好ましい条件組み合わせることで、面配向係数(ΔP)が0.005以上、熱収縮率が10%以下、好ましくは8%以下、フィルム破断強度が好ましくは75MPa以上、破断伸度が好ましくは10%以上のフィルムとすることが可能となる。例えば、縦方向の延伸倍率および横方向の延伸倍率を大きくし、より高い温度で熱固定処理を行うことが有効である。
【0105】
本フィルムの延伸工程中または延伸終了後に、コロナ処理やプラズマ処理を行うことも可能である。また、本フィルム中に、滑剤粒子を入れることで、滑り性を付与することができる。また、樹脂や架橋剤、粒子などを適宜混合し、溶剤で溶かした液または分散液をコーティングすることで、滑り性、アンチブロッキング性、帯電防止性、易接着性などを付与することも可能である。また、本発明に用いるフィルム中に各種安定剤、顔料、UV吸収剤など入れても良い。
【0106】
また、延伸、熱固定が終了したフィルムを表面処理することで、機能を向上させることができる。例えば印刷やコーティング、金属蒸着、金属酸化物蒸着、スパッタリング処理などがあげられる。
【0107】
ヒートシール性樹脂層のラミネート方法は、特に限定されないが、ドライラミネート、押出ラミネート法等が好ましい。さらに、装飾または内容物の説明のために印刷を施したり、意匠用フィルムあるいは補強材等と張り合わせたりしても良い。
【0108】
本発明においてラミネートに用いられる接着剤としては、ポリエステルフィルム等とヒートシール性樹脂層(シーラントフィルム)を接着するための役割を果たすものであればよく、接着剤としては一般的にポリウレタン系、ポリエステル系、ポリエチレンイミン、アルキルチタネート等が用いられる。
【0109】
本発明の積層体に好ましく用いられる被覆層は、積層体の製造工程の任意の段階で、例えばポリエステルフィルムの少なくとも片面に、溶媒、粒子、樹脂を含有する被覆層形成用塗布液を塗布し、被覆層を形成すればよい。また未延伸あるいは一軸延伸後のポリエステルフィルムに被覆層形成用塗布液を塗布、乾燥した後、少なくとも一軸方向に延伸し、次いで熱処理を行って被覆層を形成することが好ましい。溶媒として、トルエン等の有機溶剤、水、あるいは水と水溶性の有機溶剤の混合系が挙げられるが、環境問題の点から水単独あるいは水に水溶性の有機溶剤を混合したものが好ましい。
【0110】
この被覆層形成用塗布液をフィルムに塗布するための方法は、公知の任意の方法を用いることができる。例えば、リバースロールコート法、グラビアコート法、キスコート法、ダイコーター法、ロールブラッシュ法、スプレーコート法、エアナイフコート法、ワイヤーバーコート法、パイプドクター法、含浸コート法、カーテンコート法、などが挙げられる。これらの方法を単独で、あるいは組み合わせて塗工する。
【0111】
本発明の積層体に好ましく用いられる薄膜層の作製には、真空蒸着法、スパッタ法、イオンプレ-ティングなどのPVD法(物理蒸着法)、あるいは、CVD法(化学蒸着法)などの公知の製法が適宜用いられるが、物理蒸着法であることが好ましく、中でも真空蒸着法であることがより好ましい。例えば、真空蒸着法においては、蒸着源材料としてAl23とSiO2の混合物やAlとSiO2の混合物等が用いられ、加熱方式としては、抵抗加熱、高周波誘導加熱、電子ビ-ム加熱等を用いることができる。また、反応性ガスとして、酸素、窒素、水蒸気等を導入したり、オゾン添加、イオンアシスト等の手段を用いた反応性蒸着を用いてもよい。また、基板にバイアス等を加えたり、基板温度を上昇、あるいは、冷却したり等、本発明の目的を損なわない限りにおいて、作製条件を変更してもよい。スパッタ法やCVD法等のほかの作製法でも同様である。
【0112】
本願は、2017年3月1日に出願された国際特許出願第PCT/JP2017/008201号に基づく優先権の利益を主張するものである。2017年3月1日に出願された国際特許出願第PCT/JP2017/008201号の明細書の全内容が、本願に参考のため援用される。
【実施例
【0113】
次に、本発明の効果を実施例および比較例を用いて説明する。まず、本発明で使用した特性値の評価方法を下記に示す。
【0114】
(1)破断強度、破断伸度
フィルムのMD方向及びTD方向に対して、それぞれ長さ140mm及び幅10mmの短冊状に試料を片刃カミソリで切り出した。次いで、オートグラフAG-IS(株式会社島津製作所製)を用いて短冊状試料を引っ張り、得られた荷重-歪曲線から各方向の破断強度(MPa)および破断伸度(%)を求めた。
【0115】
なお、測定は25℃の雰囲気下で、チャック間距離40mm、クロスヘッドスピード100mm/min、ロードセル1kNの条件にて行った。なお、この測定は5回行い平均値を用いた。
【0116】
(2)面配向係数(ΔP)
以下の方法により、面配向係数(ΔP)を算出した。JIS K 7142-1996 5.1(A法)により、ナトリウムD線を光源としてアッベ屈折計によりフィルム面内の縦方向の屈折率(nx)、およびその直角方向の屈折率(ny)、厚み方向の屈折率(nz)を測定し、下記式によって面配向係数(ΔP)を算出した。
ΔP={(nx+ny)-2nz}÷2
【0117】
(3)全光線透過率、ヘーズ
JIS K 7136-2000「プラスチック 透明材料のヘーズの求め方」に準拠して測定した。測定器には、日本電色工業社製NDH-5000型濁度計を用いた。
【0118】
(4)熱収縮率(MD方向及びTD方向の熱収縮率)
JIS C 2318-1997 5.3.4(寸法変化)に準拠して測定した。測定すべき方向に対し、フィルムを幅10mm、長さ250mmに切り取り、150mm間隔で印を付け、5gfの一定張力下で印の間隔(A)を測定した。次いで、フィルムを150℃の雰囲気中のオーブンに入れ、無荷重下で150±3℃で30分間加熱処理した後、5gfの一定張力下で印の間隔(B)を測定した。以下の式より熱収縮率を求めた。
熱収縮率(%)=(A-B)/A×100
【0119】
(5)酸素透過率(OTR)
酸素透過度測定装置(MOCON社製OX-TRAN2/21)を用いて、温度23℃、相対湿度65%の条件にて、酸素をPEF側から供給して測定を行った。
【0120】
(6)水蒸気透過率(WVTR)
水蒸気透過量は、水蒸気透過度測定装置(MOCON社製PERMATRAN-W3/333)を用いて、温度37.8℃、相対湿度90%の条件にて、水蒸気をPEF側から供給して測定を行った。
【0121】
(7)固有粘度(IV)
ポリエステル樹脂を粉砕して乾燥した後、パラクロロフェノール/テトラクロロエタン=75/25(重量比)の混合溶媒に溶解した。ウベローデ粘度計を用いて、30℃で0.4g/dlの濃度の溶液の流下時間及び溶媒のみの流下時間を測定し、それらの時間比率から、Hugginsの式を用い、Hugginsの定数が0.38であると仮定して固有粘度を算出した。
【0122】
(8)フィルム厚み
ミリトロンを用い、測定すべきフィルムのTD方向の中央から両側へ全幅の6割に相当する範囲内における任意の4箇所より5cm角サンプル4枚を切り取り、マール社製の厚み計「Millitron 1254」を用い、一枚あたり各5点(計20点)測定して平均値を厚みとした。
【0123】
(9)衝撃強度
株式会社東洋精機製作所製のインパクトテスターを用い、23℃の雰囲気下におけるフィルムの衝撃打ち抜きに対する強度を測定した。衝撃球面は、直径1/2インチのものを用いた。単位はJであり、測定したフィルムの厚みで測定値を割り、厚み15μmあたりの評価値を用いた。
【0124】
(10)包装袋の酸素透過性試験
i)包装袋の作製
実施例で作製したポリエステルフィルムにポリエステル系接着剤を塗布後、厚み40μmの直鎖状低密度ポリエチレンフィルム(L‐LDPEフィルム:東洋紡績社製、L4102)をドライラミネートし、40℃の環境下で3日間エージングを行いラミネートフィルムとした。ラミネートフィルムを用い内寸:横70mm×縦105mmの三方シールされた包装袋を作成した。
ii)呈色液の作製
水2Lと粉寒天6.6gをガラス容器に入れ95℃の湯中に容器を浸し1時間以上温め寒天を完全に溶解させた。50メッシュの金網を用いて溶液をろ過しゲル化した異物を取り除いた。溶液にメチレンブルー0.04gを加えた。事前に窒素を15分以上流通させたグローブボックス内で溶液にハイドロサルファイトナトリウム1.25gを加え均一に混ぜることで呈色液(未呈色)を得た。
iii)呈色液の充填
事前に窒素を15分以上流通させたグローブボックス内で三方シールされた包装袋に約30mLの呈色液を入れ、窒素を充填した後にシーラーで袋を閉じ、呈色液が充填された包装袋(メチレンブルー呈色液入り包装袋)を得た。
iv)酸素透過性試験
寒天を室温で固めた後、メチレンブルー呈色液入り包装袋を40℃、相対湿度90%の恒温室に移し72時間後の色変化を観察した。色変化について下記のA、Bの基準で判定し、Aを合格(良好)とした。
A: 色の変化がほとんどない。
B: 色の変化が大きい。
【0125】
(11)ラミネート強度
ラミネート強度は、積層体を幅15mm、長さ200mmに切り出して試験片とし、ポリエステルフィルムとヒートシール性樹脂層との剥離強度を引張速度200mm/minの条件下で、剥離角度90度で剥離させたときの強度とした。
【0126】
(12)耐破袋性評価
上記(10)で作製したメチレンブルー呈色液入り包装袋を用いて、以下の方法で耐破袋性試験を行った。5℃、相対湿度40%の条件下で、包装袋20袋を高さ方向に1列にまとめて、1mの高さから鋼鉄の床の上に落下させた。これを1回の処理として、20回繰り返し処理した後、包装袋が破れたもの、包装袋から内容物が漏出したもの、または外観に損傷が見られなくても40℃、相対湿度90%の条件下で3日間保存した後の包装袋内のメチレンブルー寒天溶液が著しく呈色したものは破袋したと判断した。評価方法は下記のA、B、Cの基準で判定して、A、Bの場合実用上問題なし(良好)と評価した。
A:破袋率が10%未満
B:破袋率が10%以上、20%未満
C:破袋率が20%以上
【0127】
(実施例1)
原料として、Avantium社製ポリ(エチレン2,5-フランジカルボキシレート)、IV=0.90を用いた。100℃で24時間減圧乾燥(1Torr)し、水分率を100ppm以下にした後、二軸押出機(スクリュー径30mm、L/D=25)に供給した。二軸押出機に供給された原料を、押出機の溶融部、混練り部、配管、ギアポンプまでの樹脂温度は270℃、その後の配管では275℃とし、口金よりシート状に溶融押し出した。
【0128】
そして、押し出した樹脂を、表面温度20℃の冷却ドラム上にキャスティングして静電印加法を用いて冷却ドラム表面に密着させて冷却固化し、厚さ250μmの未延伸フィルムを作成した。
【0129】
得られた未延伸シートを、120℃に加熱されたロール群でフィルム温度を昇温した後周速差のあるロール群で、MD方向に5.0倍に延伸した。
【0130】
次いで、得られた一軸延伸フィルムをテンターに導きクリップで把持し、TD方向の延伸を行った。搬送速度は5m/minとした。TD方向の延伸温度は105℃、TD方向の延伸倍率は5.0倍とした。次いで、200℃で12秒間の熱固定を行い、190℃で5%の緩和処理を行い、フランジカルボン酸ユニットを有するポリエステルフィルムを得た。MD方向の延伸温度を120℃としてMD方向に5倍に延伸し、TD方向の延伸温度を105℃としてTD方向に5倍に延伸することで熱固定温度を200℃まで高めることができた。得られたフィルムの物性を表1に示す。
【0131】
表1に示す通り、優れた耐熱寸法安定性、耐衝撃強度特性、機械物性、透明性、ガスバリア性を有するポリエステルフィルムを得ることができた。
【0132】
次いで得られた二軸延伸ポリエステルフィルムの片面に、ウレタン系2液硬化型接着剤(三井化学社製「タケラック(登録商標)A525S」と「タケネート(登録商標)A50」とを13.5:1(質量比)の割合で配合)を用いて、ヒートシール性樹脂層として厚さ70μmの未延伸ポリプロピレンフィルム(東洋紡社製「P1147」)(CPP)をドライラミネート法により貼り合わせ、40℃で4日間エージングを施すことによって、評価用の積層体を得た。なお、ウレタン系2液硬化型接着剤で形成された接着剤層の乾燥後の厚みは約4μmであった。得られた積層体の物性を表1に示す。
【0133】
本実施例で得られた積層体は、ラミネート強度が3.9N/15mmであり、ラミネート強度に優れていた。更に、酸素透過度が100mL/m2/day/MPaであり、水蒸気透過度が3.8g/m2/dayであり、包装袋の酸素透過性試験が良好で、破袋性試験の評価も良好であった。
【0134】
(実施例2)
未延伸フィルムの厚みを300μmとしたこと以外は、実施例1に記載と同様の方法にて得たポリエステルフィルムに、実施例1と同様に未延伸ポリプロピレンフィルムをラミネートすることにより積層体を得た。得られたフィルムと積層体の物性を表1に示す。
【0135】
表1に示す通り、優れた耐熱寸法安定性、耐衝撃強度特性、機械物性、透明性、ガスバリア性を有するポリエステルフィルムを得ることができた。
【0136】
表1に示す通り、得られた積層体は、ラミネート強度が4.0N/15mmであり、ラミネート強度に優れていた。更に、酸素透過度が75mL/m2/day/MPaであり、水蒸気透過度が3.4g/m2/dayであり包装袋の酸素透過性試験が良好で、破袋性試験の評価も良好であった。
【0137】
(実施例3)
原料に添加剤としてシリカ粒子(富士シリシア化学製、サイリシア310)を2000ppm用いたこと以外は、実施例2と同様の方法で厚み300μmの未延伸フィルムを得た。
【0138】
次いで得られた未延伸フィルムを、120℃に加熱されたロール群でフィルム温度を昇温した後、周速差のあるロール群で、MD方向に5倍に延伸して、一軸延伸フィルムを得た。
【0139】
得られた一軸延伸フィルムをテンターに導きクリップで把持し、TD延伸を行った。搬送速度は5m/minとした。延伸ゾーン2の延伸温度は105℃、TD延伸倍率は5倍とした。次いで、熱固定ゾーン3にて200℃で12秒間の熱固定処理を行い、表1に示すように190℃で5%の緩和処理を行った直後に、弛緩ゾーン5にて弛緩温度180℃でクリップよりフィルム端部を外し、9%の縦方向弛緩率にて弛緩処理を行い、ポリエステルフィルムを得た。得られたフィルム物性を表1に示す。
【0140】
表1に示す通り、優れた耐熱寸法安定性、耐衝撃強度特性、機械物性、透明性、ガスバリア性を有するポリエステルフィルムを得ることができた。
【0141】
得られたポリエステルフィルムに、実施例1と同様に未延伸ポリプロピレンフィルムをラミネートすることにより積層体を得た。得られた積層体の物性を表1に示す。
【0142】
得られた積層体は、ラミネート強度が4.2N/15mmであり、ラミネート強度に優れていた。更に、酸素透過度が77mL/m2/day/MPaであり、水蒸気透過度が3.5g/m/dayであり、包装袋の酸素透過性試験が良好で、破袋性試験の評価も良好であった。
【0143】
(実施例4)
原料に添加剤としてシリカ粒子(富士シリシア化学製、サイリシア310)を1000ppm用いたこと以外は、実施例3と同様の方法で厚み300μmの未延伸フィルムを得た。
【0144】
得られた未延伸フィルムを、110℃に加熱されたロール群でフィルム温度を昇温した後周速差のあるロール群で、MD方向に3.8倍に延伸して、一軸延伸フィルムを得た。得られた一軸延伸フィルムをテンターに導きクリップで把持し、横延伸温度は105℃、横延伸倍率は4.5倍、続く190℃で12秒間の熱固定を行い、190℃で8%の緩和処理を行うこと以外は実施例1と同様の方法で二軸延伸ポリエステルフィルムを得た。また、実施例1に記載と同様に未延伸ポリプロピレンフィルムをラミネートすることにより積層体を得た。得られたポリエステルフィルムの物性、積層体の物性を表1に示す。
【0145】
表1に示す通り、優れた耐熱寸法安定性、耐衝撃強度特性、機械物性、透明性、ガスバリア性を有するポリエステルフィルムを得ることができた。
【0146】
得られた積層体は、ラミネート強度が5.4N/15mmであり、ラミネート強度に優れていた。更に酸素透過度が60mL/m2/day/MPaであり、水蒸気透過度が3.0g/m2/dayであり、包装袋の酸素透過性試験が良好で、破袋性試験の評価も良好であった。
【0147】
(実施例5)
実施例1に記載と同様の方法にて得たポリエステルフィルムの片面に、ウレタン系2液硬化型接着剤(三井化学社製「タケラック(登録商標)A525S」と「タケネート(登録商標)A50」とを13.5:1(質量比)の割合で配合)を用いて、ヒートシール性樹脂層として厚さ40μmの直鎖状低密度ポリエチレンフィルム(東洋紡社製「L4102」)(LLDPE)をドライラミネート法により貼り合わせ、40℃で4日間エージングを施すことによって、評価用の積層体を得た。なお、ウレタン系2液硬化型接着剤で形成された接着剤層の乾燥後の厚みはいずれも約4μmであった。得られたポリエステルフィルムの物性、積層体の物性を表1に示す。
【0148】
得られた積層体は、ラミネート強度が2.4N/15mmであり、ラミネート強度に優れていた。更に酸素透過度が105mL/m2/day/MPaであり、水蒸気透過度が6.8g/m2/dayであり、包装袋の酸素透過性試験が良好で、破袋性試験の評価も良好であった。
【0149】
(実施例6)
実施例2に記載と同様の方法にて得たポリエステルフィルムに、実施例5と同様に直鎖状低密度ポリエチレンフィルムをラミネートすることにより積層体を得た。得られたポリエステルフィルムの物性、積層体の物性を表1に示す。
【0150】
得られた積層体は、ラミネート強度が2.3N/15mmであり、ラミネート強度に優れていた。更に酸素透過度が82mL/m2/day/MPaであり、水蒸気透過度が5.8g/m2/dayであり、包装袋の酸素透過性試験が良好で、破袋性試験の評価も良好であった。
【0151】
(実施例7)
実施例3に記載と同様の方法にて得たポリエステルフィルムに、実施例5と同様に直鎖状低密度ポリエチレンフィルムをラミネートすることにより積層体を得た。得られたポリエステルフィルムの物性、積層体の物性を表1に示す。
【0152】
得られた積層体は、ラミネート強度が2.8N/15mmであり、ラミネート強度に優れていた。更に酸素透過度が81mL/m2/day/MPaであり、水蒸気透過度が5.7g/m2/dayであり、包装袋の酸素透過性試験が良好で、破袋性試験の評価も良好であった。
【0153】
(実施例8)
実施例4に記載と同様の方法にて得たポリエステルフィルムに、実施例5と同様に直鎖状低密度ポリエチレンフィルムをラミネートすることにより積層体を得た。得られたポリエステルフィルムの物性、積層体の物性を表1に示す。
【0154】
得られた積層体は、ラミネート強度が4.0N/15mmであり、ラミネート強度に優れていた。更に酸素透過度が78mL/m2/day/MPaであり、水蒸気透過度が5.2g/m2/dayであり、包装袋の酸素透過性試験が良好で、破袋性試験の評価も良好であった。
【0155】
(比較例1)
(1)PET樹脂(A)の製造
エステル化反応缶を昇温し、200℃に到達した時点で、テレフタル酸を86.4質量部及びエチレングリコールを64.4質量部からなるスラリーを仕込み、攪拌しながら触媒として三酸化アンチモンを0.017質量部及びトリエチルアミンを0.16質量部添加した。次いで、加圧昇温を行いゲージ圧3.5kgf/cm2、240℃の条件で、加圧エステル化反応を行った。その後、エステル化反応缶内を常圧に戻し、酢酸マグネシウム4水和物0.071質量部、次いでリン酸トリメチル0.014質量部を添加した。さらに、15分かけて260℃に昇温し、リン酸トリメチル0.012質量部、次いで酢酸ナトリウム0.0036質量部を添加した。15分後、得られたエステル化反応生成物を重縮合反応缶に移送し、減圧下260℃から280℃へ徐々に昇温し、285℃で重縮合反応を行った。
【0156】
重縮合反応終了後、95%カット径が5μmのナスロン製フィルターで濾過処理を行い、ノズルからストランド状に押出し、予め濾過処理(孔径:1μm以下)を行った冷却水を用いて冷却、固化させ、ペレット状にカットした。得られたPET樹脂(A)は、融点が257℃、固有粘度が0.62dl/g、不活性粒子及び内部析出粒子は実質上含有していなかった。
【0157】
(2)PET樹脂(B)の製造
添加剤としてシリカ粒子(富士シリシア化学株式会社製、サイリシア310、平均粒径2.7μm)を2000ppm含有したポリエチレンテレフタレートをPET(A)樹脂と同様の製法で作成した。
【0158】
(3)二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムの製造
表層(a)の原料として、PET樹脂(A)70質量部と、PET樹脂(B)30質量部とをペレット混合し、135℃で6時間減圧乾燥(1Torr)した後、押出機1に供給した。また、中間層(b)層の原料としてPET樹脂(A)82質量部と、PET樹脂(B)18質量部とをペレット混合し、135℃で6時間減圧乾燥(1Torr)した後、押出機2に供給した。押出機2、及び押出機1に供給された各原料を、押出機の溶融部、混練り部、配管、ギアポンプ、フィルターまでの樹脂温度は280℃、その後のポリマー管では275℃とし、3層合流ブロックを用いてa/b/aとなるように積層し、口金よりシート状に溶融押し出した。なお、a層とb層との厚み比率は、a/b/a=8/84/8となるように、各層のギアポンプを用いて制御した。また、前記のフィルターには、いずれもステンレス焼結体の濾材(公称濾過精度:10μm粒子を95%カット)を用いた。また、口金の温度は、押出された樹脂温度が275℃になるように制御した。
【0159】
そして、押し出した樹脂を、表面温度30℃の冷却ドラム上にキャスティングして静電印加法を用いて冷却ドラム表面に密着させて冷却固化し、厚さ170μmの未延伸フィルムを作成した。
【0160】
得られた未延伸シートを、78℃に加熱されたロール群でフィルム温度を100℃に昇温した後、周速差のあるロール群で、MD方向に3.5倍に延伸した。
【0161】
次いで、得られた一軸延伸フィルムをクリップで把持し、TD方向に延伸を行った。TD方向の延伸温度は120℃、延伸倍率は4.0倍とした。次いで、240℃で15秒間の熱固定を行い、185℃で4%の緩和処理を行い、厚さ12μmの二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムを得た。得られたポリエステルフィルムに、実施例1と同様に未延伸ポリプロピレンフィルムをラミネートすることにより積層体を得た。得られたフィルムの物性、積層体の物性を表1に示す。
【0162】
(比較例2)
比較例1と同様の方法で得られたポリエステルフィルムに、実施例5と同様の方法で直鎖状低密度ポリエチレンフィルムをラミネートすることにより積層体を得た。得られたフィルムの物性、積層体の物性を表1に示す。
【0163】
【表1】
【符号の説明】
【0164】
1 予熱ゾーン
2 延伸ゾーン
3 熱固定ゾーン
4、5 弛緩ゾーン
6 冷却ゾーン
7 クリップ
図1