(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-02
(45)【発行日】2022-02-10
(54)【発明の名称】リン酸ホウ素マトリックス層
(51)【国際特許分類】
H01M 8/0293 20160101AFI20220203BHJP
H01M 8/086 20160101ALI20220203BHJP
H01M 4/86 20060101ALI20220203BHJP
【FI】
H01M8/0293
H01M8/086
H01M4/86 M
H01M4/86 B
(21)【出願番号】P 2019510768
(86)(22)【出願日】2017-08-21
(86)【国際出願番号】 US2017047738
(87)【国際公開番号】W WO2018039104
(87)【国際公開日】2018-03-01
【審査請求日】2020-08-12
(32)【優先日】2016-08-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】518206871
【氏名又は名称】ドゥサン フューエル セル アメリカ、インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】特許業務法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】アーピン、ケヴィン エイ.
【審査官】山本 雄一
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-054559(JP,A)
【文献】特開平03-105866(JP,A)
【文献】特開昭62-026764(JP,A)
【文献】特開昭52-029933(JP,A)
【文献】特開昭63-299057(JP,A)
【文献】特開2007-188856(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/00- 8/0297
H01M 8/08- 8/2495
H01M 4/86- 4/98
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カソード電極と、
アノード電極と、
前記カソード電極と前記アノード電極との間の多孔質のマトリックス層であって、該マトリックス層は細孔および固体部を有し、前記マトリックス層の前記固体部は少なくとも90%のリン酸ホウ素を含む、前記マトリックス層と、
前記マトリックス層の前記細孔内のリン酸電解質と
を備える、燃料電池。
【請求項2】
前記リン酸ホウ素は0.5μm~4μmの平均粒径を有する、請求項1に記載された燃料電池。
【請求項3】
前記平均粒径
が2μmである、請求項2に記載された燃料電池。
【請求項4】
前記マトリックス層が10μm~100μmの厚さを有する、請求項1に記載された燃料電池。
【請求項5】
前記厚さ
が50μmである、請求項
4に記載された燃料電池。
【請求項6】
前記マトリックス層が90%~99%のリン酸ホウ素を含む、請求項1に記載された燃料電池。
【請求項7】
前記マトリックス層は、前記カソード電極および前記アノード電極のうちの少なくとも1つの電極上のコーティングを含む、請求項1に記載された燃料電池。
【請求項8】
前記カソード電極および前記アノード電極はそれぞれ触媒層を備え、
各触媒層はフィラーバンド層によって囲まれており、
各フィラーバンド層はリン酸ホウ素を含む、請求項1に記載された燃料電池。
【請求項9】
前記フィラーバンド層は前記マトリックス層とは異なる組成を有する、請求項
8に記載された燃料電池。
【請求項10】
前記アノード電極および前記カソード電極はそれぞれ基板層上に支持され、
各基板層はエッジシールを備え、
各エッジシールはリン酸ホウ素を含む、請求項1に記載された燃料電池。
【請求項11】
燃料電池を作製する方法において、
カソード層を形成する段階と、
アノード層を形成する段階と、
前記カソード層と前記アノード層との間に多孔質のマトリックス層を形成する段階であって、前記マトリックス層は細孔と固体部を有し、前記マトリックス層の前記固体部は少なくとも90%のリン酸ホウ素を含む、前記マトリックス層を形成する段階と、
前記マトリックス層の前記細孔内にリン酸電解質を配置する段階と
を含む、燃料電池を作製する方法。
【請求項12】
前記マトリックス層を形成する段階が、
リン酸ホウ素粒子、界面活性剤、増粘剤および結合剤を含むスラリーを混合する段階と、
前記カソード層および前記アノード層のうちの少なくとも一方に混合スラリーのコーティングを被着させる段階と、
被着させた前記コーティングを乾燥させ、得られたコーティングが前記マトリックス層の少なくとも一部となる段階と
を含む、請求項11に記載された燃料電池を作製する方法。
【請求項13】
前記カソード層および前記アノード層のそれぞれに前記混合スラリーのコーティングを被着させる段階と、
溶媒を除去する段階と
を含み、
被着された前記コーティングが、一緒になってマトリックス層を形成する、請求項12に記載された燃料電池を作製する方法。
【請求項14】
前記リン酸ホウ素粒子が0.5μm~4μmの平均粒径を有する、請求項12に記載された燃料電池を作製する方法。
【請求項15】
前記平均粒径
が2μmである、請求項14に記載された燃料電池を作製する方法。
【請求項16】
前記マトリックス層が10μm~100μmの厚さを有する、請求項11に記載された燃料電池を作製する方法。
【請求項17】
前記厚さ
が50μmである、請求項16に記載された燃料電池を作製する方法。
【請求項18】
前記マトリックス層が90%~99%のリン酸ホウ素を含む、請求項11に記載された燃料電池を作製する方法。
【請求項19】
前記カソード層および前記アノード層をそれぞれ、リン酸ホウ素を含むフィラーバンド層で囲む段階を含む、請求項11に記載された燃料電池を作製する方法。
【請求項20】
第1の基板層上に前記カソード層を形成する段階と、
第2の基板層上に前記アノード層を形成する段階と、
前記第1の基板層上に第1のエッジシールを設ける段階と、
前記第2の基板層上に第2のエッジシールを設ける段階と
を含み、前記第1のエッジシールおよび前記第2のエッジシールはリン酸ホウ素を含む、請求項11に記載された燃料電池を作製する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
燃料電池は、電気化学反応に基づいて電気エネルギーを発生させるのに有用である。様々な種類の燃料電池が開発されてきたが、リン酸型燃料電池(PAFC)は、カソード電極とアノード電極との間にリン酸電解質を利用するものであり、固体高分子型燃料電池(PEM)は、電極間に高分子電解質を利用する。各種の燃料電池は、それぞれ特性を有し、特定の用途に適したものにできる。
【背景技術】
【0002】
PAFCでは、リン酸電解質は電極間に配置されるマトリックスに保持される。マトリックス層には様々な材料が使用されてきた。米国特許第3,694,310号にはフェノール樹脂マトリックス層が記載されている。フェノール樹脂マトリックス層の欠点の1つは、高温でリン酸とマトリックス層の有機材料とが反応することによって、時間とともに、電極触媒上に吸着する分子が生成され、それが触媒にとって有害となることである。その結果、燃料電池性能が低下する。
【0003】
米国特許第4,017,664号は、炭化ケイ素からなるマトリックス層が記載されている。このマトリックス層の欠点の1つは、通常の燃料電池の運転条件下で炭化ケイ素上の酸化物が徐々に溶解し、リン酸に溶解しないリン酸ケイ素を形成することである。これに伴いリン酸電解質が損失し、そして不溶性のリン酸物質が電極への燃料ガスまたは酸化剤ガスの供給を妨げる虞がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】米国特許第3,694,310号明細書
【文献】米国特許第4,017,664号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来提案され又は使用されたマトリックス層と比較して特性の改善されたPAFCマトリックス層を有することは有用である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
燃料電池の例示的な具体例は、カソード電極、アノード電極、および両電極間の多孔質マトリックス層を備えるものであり、マトリックス層は細孔と固体部を有する。マトリックス層の固体部は少なくとも90%のリン酸ホウ素を含む。リン酸電解質はマトリックス層の細孔内にある。
【0007】
上記段落の燃料電池の1つまたは複数の構成を有する例示的な具体例において、リン酸ホウ素は0.5μm~4μmの平均粒径を有する。
【0008】
上記段落のいずれかの燃料電池の1つまたは複数の構成を有する例示的な具体例において、この平均粒径は約2μmである。
【0009】
上記段落のいずれかの燃料電池の1つまたは複数の構成を有する例示的な具体例において、マトリックス層は10μm~100μmの厚さを有する。
【0010】
上記段落のいずれかの燃料電池の1つまたは複数の構成を有する例示的な具体例において、この厚さは約50μmである。
【0011】
上記段落のいずれかの燃料電池の1つまたは複数の構成を有する例示的な具体例において、マトリックス層の固体部は90%~99%のリン酸ホウ素を含む。
【0012】
上記段落のいずれかの燃料電池の1つまたは複数の構成を有する例示的な具体例において、マトリックス層は少なくとも1つの電極上のコーティングを含む。
【0013】
上記段落のいずれかの燃料電池の1つまたは複数の構成を有する例示的な具体例において、カソード電極およびアノード電極はそれぞれ触媒層を備え、各触媒層はフィラーバンド層によって囲まれており、各フィラーバンド層はリン酸ホウ素を含む。
【0014】
上記段落のいずれかの燃料電池の1つまたは複数の構成を有する例示的な具体例において、フィラーバンド層はマトリックス層とは異なる組成を有する。
【0015】
上記段落のいずれかの燃料電池の1つまたは複数の構成を有する例示的な具体例において、アノード電極およびカソード電極はそれぞれ基板層上に支持され、各基板層はエッジシールを備え、各エッジシールはリン酸ホウ素を含む。
【0016】
燃料電池を作製する方法の例示的な具体例は、カソード層を形成し、アノード層を形成し、カソード層とアノード層との間に多孔質マトリックス層を形成する段階と、マトリックス層の細孔内にリン酸電解質を配置する段階とを含む。マトリックス層は細孔と固体部を有し、マトリックス層の固体部は少なくとも90%のリン酸ホウ素を含む。
【0017】
上記段落の方法の1つまたは複数の構成を有する例示的な具体例において、マトリックス層を形成する段階は、リン酸ホウ素粒子、界面活性剤、増粘剤および結合剤を含むスラリーを混合する段階と、カソード層およびアノード層のうちの少なくとも一方に混合スラリーのコーティングを被着させる段階と、被着させたコーティングを乾燥させる段階とを含む。得られたコーティングは、マトリックス層の少なくとも一部である。
【0018】
上記段落のいずれかの方法の1つまたは複数の構成を有する例示的な具体例において、カソード層およびアノード層のそれぞれに混合スラリーのコーティングを被着させる段階を含み、被着されたコーティングが、一緒になってマトリックス層を形成する。
【0019】
上記段落のいずれかの方法の1つまたは複数の構成を有する例示的な具体例において、リン酸ホウ素粒子は0.5μm~4μmの平均粒径を有する。
【0020】
上記段落のいずれかの方法の1つまたは複数の構成を有する例示的な具体例において、この平均粒径は約2μmである。
【0021】
上記段落のいずれかの方法の1つまたは複数の構成を有する例示的な具体例において、マトリックス層は10μm~100μmの厚さを有する。
【0022】
上記段落のいずれかの方法の1つまたは複数の構成を有する例示的な具体例において、この厚さは約50μmである。
【0023】
上記段落のいずれかの方法の1つまたは複数の構成を有する例示的な具体例において、マトリックス層の固体部は90%~99%のリン酸ホウ素を含む。
【0024】
上記段落のいずれかの方法の1つまたは複数の構成を有する例示的な具体例において、カソード層およびアノード層をそれぞれ、リン酸ホウ素を含むフィラーバンド層で囲む段階を含む。
【0025】
上記段落のいずれかの方法の1つまたは複数の構成を有する例示的な具体例において、第1の基板層上にカソード層を形成する段階、第2の基板層上にアノード層を形成する段階、第1の基板層上に第1のエッジシールを設ける段階、第2の基板層上に第2のエッジシールを設ける段階を含む。第1のエッジシールおよび第2のエッジシールはリン酸ホウ素を含む。
【0026】
少なくとも1つの開示された例示的具体例の様々な特徴および利点は、以下の詳細な説明から当業者には明らかになるであろう。詳細な説明に付随する図面は、以下のように簡単に説明することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】本発明の具体例に従って設計された燃料電池の選択された部分の概略図。
【
図2】燃料電池の別の具体例の選択された部分の概略図。
【発明を実施するための形態】
【0028】
図1は、燃料電池20の選択された部分を概略的に示している。カソード電極22とアノード電極24は、カソード22とアノード24の間に配置された多孔質マトリックス層26によって分離されている。多孔質マトリックス層26は、固体部および細孔を含む。マトリックス層26の固体部はリン酸ホウ素を含む。ある例では、マトリックス層26の固体部は、少なくとも90%のリン酸ホウ素を含む。一具体例では、マトリックス層26の固体部は最大99%のリン酸ホウ素を含む。
【0029】
例えば、マトリックス層26によって占められる体積を考慮すると、その体積のいくらかはマトリックス層26の細孔によって占められるであろう。ある具体例では、細孔は、その体積の少なくとも約40%を占める。細孔によって占められていない体積の残りの部分は、マトリックス層の固体部によって占められ、その固体部は少なくとも90%のリン酸ホウ素を含む。
【0030】
マトリックス層26の細孔は、28で概略的に示されるリン酸電解質を収容する。これは、燃料電池20が電気を発生させる電気化学反応を促進するための電解質として機能する。
【0031】
マトリックス層26にリン酸ホウ素を利用することにより、電極間にリン酸電解質28を保持し(燃料電池の運転に必要とされる)、それぞれの電極からの反応物が混合することを防ぐ(すなわち、十分なバブル圧)。多孔質マトリックス層26は、良好な液体透過性を有し、リン酸電解質に対する濡れ性を有し、少なくとも燃料電池の運転を容易にするのに十分な程度まで電気絶縁性であり、リン酸電解質の存在下で化学的に安定であり、マトリックス層26を、IR損失を最小にするのに十分に薄くできる。
【0032】
マトリックス層26の1つの特徴は、他の材料で作られたマトリックス層と比較して薄いマトリックス層を実現するのに十分に小さいリン酸ホウ素粒子を含むことができることである。ある例では、リン酸ホウ素粒子は、0.5μm~4μmの平均粒径、約10μmの最大粒径(例えば、D100=10μm)を有する。一例では、平均粒径は約1μmである。本明細書のこの文脈では、「約」という用語は、正確に1μmである粒子サイズからのばらつきを包含する。例えば、用語「約1μm」は、0.5μmと1.5μmとの間の平均粒径を含むと理解されるべきである。他の具体例では、異なる平均粒径または最大粒径を有することができる。
【0033】
リン酸ホウ素を含むマトリックス層26は、10μm程度の薄さにできる。例示的具体例では、10μm~100μmのマトリックス層厚さを有する。一例示的具体例では、約50μmの厚さを有するマトリックス層26を含む。この文脈における「約」という用語は、50μmの正確な寸法からのばらつきを包含するものと理解されるべきであり、例えば40μmと60μmとの間を含む。マトリックス層をより薄くすることにより、IR損失を減少させ、より良好な燃料電池効率を提供する。
【0034】
リン酸ホウ素を使用することにより、より小さい粒径、およびその結果得られるより薄いマトリックス層を有することが可能になる。炭化ケイ素のような従来のマトリックス層材料と比較して粒径が小さいことにより、バブル圧力の増大が可能になり、それにより燃料電池の動作が向上し寿命が延びる。
【0035】
例示される具体例のリン酸ホウ素粒子ほどの小さい炭化ケイ素粒子を使用することは不可能である。その理由は、小さな炭化ケイ素粒子は、表面積が大きく、酸化物が多いため、リン酸電解質との反応による結果として、上記の不溶性のリン酸ケイ素が多く生成され、燃料電池中の酸の減少、および燃料電池寿命の減少が起こる。
【0036】
マトリックス層をより薄くすることによって損失を減少させることにより、電力を犠牲にすることなく電極の白金担持量を低下させることが可能になる。白金が高価な材料であることを考えると、本発明の具体例に従って設計されたマトリックス層26により、マトリックス層自体だけでなく燃料電池の他の部分にもコスト面での利点がもたらされる。コスト削減は、燃料電池業界の直面する大きな課題である。
【0037】
図2は、別の例示的な燃料電池構成を図示する。カソード層22は第1の基板層32に支持され、アノード層24は第2の基板層34に支持される。フィラーバンド層40がそれぞれの電極層22および24を取り囲んでいる。この例示的具体例では、額縁型構成のフィラーバンド層40を有する。この例では、フィラーバンド層40は多孔質であり、フィラーバンド層の固体部は少なくとも90%のリン酸ホウ素を含む。ある例では、フィラーバンド層40は少なくとも約40%の多孔体である。
【0038】
フィラーバンド層40中のリン酸ホウ素粒子の粒径は、マトリックス層26中のリン酸ホウ素粒子の粒径と異なっていてもよい。フィラーバンド層40中のリン酸ホウ素粒子の平均粒径は、0.5μm~10μmである。ある例では、フィラーバンド層40は、フルオロポリマーなどのバインダー材料を含む。さらに、フィラーバンド層40は他の成分を含むことができ、それによりフィラーバンド層40の組成が、ともにリン酸ホウ素を含んでいてもマトリックス層26の組成とは異なるようにできる。
【0039】
基板層32および34は、それぞれ基板層の縁部に沿う縁部シールを備える。例示のエッジシール42は、基板の細孔内に含浸されたリン酸ホウ素粒子を含む。エッジシール42内のリン酸ホウ素粒子の粒径は、マトリックス層26およびフィラーバンド層40に使用される粒子の大きさとそれぞれ異なっていてもよい。一具体例では、エッジシール中のリン酸ホウ素の平均粒径は0.1μm~4μmである。さらに、エッジシール42の組成は、フィラーバンド層40の組成とは異なってもよい。
【0040】
マトリックス層26、フィラーバンド層40およびエッジシール42の材料としてリン酸ホウ素を利用することにより、
図2に示されるような燃料電池配置を製造する工程を効率良く行うことができる。
【0041】
燃料電池を製造する方法の一具体例は、カソード層22の形成およびアノード層24の形成を含む。この方法は、カソード層とアノード層との間に、90%のリン酸ホウ素を含むマトリックス層26を形成することを含む。リン酸28が、電解質としてマトリックス層26内に配置される。
【0042】
例示的な具体例においてマトリックス層の形成は、リン酸ホウ素粒子、界面活性剤、増粘剤、および結合剤を含有するスラリーを混合することを含む。スラリー組成の一例は、約55%のリン酸ホウ素粉末、0.4%のサーフィノール(surfynol)104Eなどの界面活性剤、0.06%のロドポール(rhodopol)23、0.8%のケモア(chemours)D121などの結合剤としての水性FEP分散液を含み、残りの約43%は蒸留水である。添加剤の選択およびその概略の比率は、異なる被着方法に応じて調整できる。この説明を参照すれば、当業者は特定の状況に対して適切な比率を決定することができるであろう。
【0043】
ある例では、リン酸ホウ素粉末は、所望の平均粒径を得るために粉砕してもよい。
【0044】
混合スラリーは、アノード電極、カソード電極、またはその両方に塗布することができる。カソード層またはアノード層のうちの少なくとも1つの上に混合スラリーのコーティングを堆積させるための例示的な技法としては、テープキャスティング、スプレーコーティング、グラビアコーティング、カーテンコーティング、スクリーン印刷、転写印刷、ドクターブレード、ダイキャストまたは同等の方法が挙げられる。
【0045】
堆積したコーティングを乾燥させると、所望の厚さのリン酸ホウ素マトリックス層が得られる。ある例では、
図1および
図2に概略的に示すように電極が向き合って配置されるとき、各電極層はマトリックス層の全厚さの約半分を有するマトリックス層の一部により被覆される。
【0046】
上記の説明によるリン酸ホウ素から製造された燃料電池マトリックス層により、燃料電池効率が向上し、製品寿命が延び、燃料電池コストが低減できる。
【0047】
上記の説明は、本質的に例示のためになされており、発明を限定するものではない。開示された実施例の変形および修正は、必ずしも本発明の本質から逸脱しないことが、当業者にとって明らかである。本発明に与えられる法的保護の範囲は、添付の特許請求の範囲によってのみ決定できる。