(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-02
(45)【発行日】2022-02-10
(54)【発明の名称】部品製造用具及び部品製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/683 20060101AFI20220203BHJP
H01L 21/67 20060101ALI20220203BHJP
H01L 21/301 20060101ALI20220203BHJP
C09J 7/38 20180101ALI20220203BHJP
【FI】
H01L21/68 N
H01L21/68 E
H01L21/78 M
C09J7/38
(21)【出願番号】P 2019517647
(86)(22)【出願日】2018-05-08
(86)【国際出願番号】 JP2018017833
(87)【国際公開番号】W WO2018207793
(87)【国際公開日】2018-11-15
【審査請求日】2020-12-04
(31)【優先権主張番号】P 2017095082
(32)【優先日】2017-05-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000220099
【氏名又は名称】三井化学東セロ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100151127
【氏名又は名称】鈴木 勝雅
(74)【代理人】
【識別番号】100094190
【氏名又は名称】小島 清路
(72)【発明者】
【氏名】林下 英司
【審査官】鈴木 孝章
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/002610(WO,A1)
【文献】特開2012-114265(JP,A)
【文献】特開2012-188597(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/683
H01L 21/67
H01L 21/301
C09J 7/38
C09J 7/20
C09J 201/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体部品の製造方法又は電子部品の製造方法に用いられる部品製造用具であって、
開口部を有する枠体と、前記開口部を覆って前記枠体に張られた保持フィルムと、を有し、
前記枠体は、リング状の第1枠と、前記第1枠と係合可能なリング状の第2枠と、を備え、
前記保持フィルムは、基層と、前記基層の一面側に設けられた保持層と、を備えるとともに、伸張した状態で前記第1枠と前記第2枠との間に挟まれて保持されており、
前記基層は、100℃における弾性率E’(100)と、25℃における弾性率E’(25)と、の比R
E1(=E’(100)/E’(25))が
0.30≦R
E1≦1であり、且つ、E’(25)が35MPa以上3500MPa以下であることを特徴とする部品製造用具。
【請求項2】
前記基層の線熱膨張係数が100ppm/K以上である請求項1に記載の部品製造用具。
【請求項3】
前記基層は、熱可塑性ポリエステル系エラストマー、熱可塑性ポリアミド系エラストマー、及び、ポリブチレンテレフタレートのうちの少なくとも1種を含む請求項1又は2に記載の部品製造用具。
【請求項4】
前記製造方法は、半導体部品、前記半導体部品の前駆体、電子部品、及び、前記電子部品の前駆体から選ばれた複数個の部品が、前記保持層に保持された状態にある前記保持フィルムを、加熱されたチャックテーブルの表面に吸着して固定する吸着工程を備える請求項1乃至3のうちのいずれかに記載の部品製造用具。
【請求項5】
前記吸着工程後に、前記保持フィルムに保持された前記部品を評価する評価工程を備える請求項4に記載の部品製造用具。
【請求項6】
前記評価工程後に、前記部品のうちの一部の部品のみを、前記基層側から前記保持層側へ向かって突き押して、前記保持フィルムを更に伸張させることによって、他の部品から離間させてピックアップするピックアップ工程を備える請求項5に記載の部品製造用具。
【請求項7】
開口部を有する枠体と、前記開口部を覆って前記枠体に張られた保持フィルムと、を有し、
前記枠体は、リング状の第1枠と、前記第1枠と係合可能なリング状の第2枠と、を備え、
前記保持フィルムは、基層と、前記基層の一面側に設けられた保持層と、を備えるとともに、伸張した状態で前記第1枠と前記第2枠との間に挟まれて保持されており、
前記基層は、100℃における弾性率E’(100)と、25℃における弾性率E’(25)と、の比R
E1(=E’(100)/E’(25))が
0.30≦R
E1≦1であり、且つ、E’(25)が35MPa以上3500MPa以下である部品製造用具の前記保持層に、半導体部品、前記半導体部品の前駆体、電子部品、及び、前記電子部品の前駆体から選ばれた複数個の部品を保持する部品保持工程と、
前記部品が保持された前記保持フィルムを、加熱されたチャックテーブルの表面に吸着して固定する吸着工程を備えることを特徴とする部品製造方法。
【請求項8】
前記吸着工程後に、前記保持フィルムに保持された前記部品を評価する評価工程を備える請求項7に記載の部品製造方法。
【請求項9】
前記評価工程後に、前記部品のうちの一部の部品のみを、前記基層側から前記保持層側へ向かって突き押して、前記保持フィルムを更に伸張させることによって、他の部品から離間させてピックアップするピックアップ工程を備える請求項8に記載の部品製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、部品製造用具及び部品製造方法に関する。更に詳しくは、半導体部品製造に利用される部品製造用具、半導体部品を製造する部品製造方法、電子部品製造に利用される部品製造用具、及び、電子部品を製造する部品製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、回路形成されたウエハを個片化した後、個片化された半導体部品を評価(検査)し、評価合格した半導体部品のみをピックアップして、その後の工程へと送るという半導体部品の製造方法が知られている。この製造方法は、例えば、下記特許文献1(請求項1~3等参照)に開示がある。これにより、最終製品の歩留まり率を向上させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平08-330372号公報
【文献】特開2013-084794号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この方法を利用するには、個片化(ダイシング)、評価、ピックアップの3つの工程を経る必要がある。この際、部品はキャリア(貼着シートや治具等)上に配置されて加工されるが、各工程においてキャリアへの要求特性が異なるため、その都度、必要に応じたキャリアに乗せ換えることで対応されている。
【0005】
例えば、特許文献2では、個片化工程で、フィルムを張ったリングフレーム(特許文献2における「第1の枠体5」)を利用(特許文献2の
図7(A)参照)するが、その後、ピックアップ工程へ移行する際には、グリップリング(特許文献2における「第2の枠体7」)が利用される(特許文献2の
図8(C)及び(D)参照)。グリップリングにより、フィルムを引き伸ばして、フィルム上の部品同士の間隙を広げることでピックアップ性を確保できる。更に、グリップリングの利用により、部品が貼着された必要な領域のみをリングフレームから切り離して利用できる。
しかしながら、特許文献2では、このような操作を可能とするフィルムが具体的に開示されていない。また、特許文献2では、評価工程が想定されていない。一般に、評価工程は、加温環境下での作動確認や、熱ストレス負荷を用いた加速評価等の熱付加を利用した評価が含まれる。そのため、キャリアには、個片化及びピックアップで必要とされる機械的強度及び柔軟性に加え、耐熱性や、熱耐久後の機械的強度及び柔軟性までもが要求されるが、これらの点については何ら検討がなされていない。
【0006】
特許文献1には、評価工程で利用できるキャリアが開示されている。即ち、予め熱収縮させたフィルムをキャリアとして利用することで、その後の工程での伸張余地が得られ、熱膨張差に起因した評価用電極パッド111とバンプ103とのずれ(特許文献1[
図15]参照)を解消できるとする技術である。このように、熱の影響によるフィルムの収縮・伸張は、評価工程における位置精度を左右するものであり、個片化及びピックアップのみを行う製造工程に比べて、評価工程を備える製造工程では、より高いレベルの熱対策が必要となることが分かる。
しかしながら、特許文献1では、下記の吸着不良に対する対処方法については検討されていない。
【0007】
本発明者らは、種々の材料を検討し、より多くの要求特性をバランスできるキャリア材料を選択すべく試験を繰り返した。そうしたところ、ピックアップ性を得るべく、部品同士に間隙を形成できる程度に柔軟な材料をフィルムとして選択すると、チャックテーブルにキャリアを固定できない不具合を生じることを知見した。即ち、加熱されたチャックテーブルへキャリアを吸着固定しようとすると、フィルムに皺が発生し、皺部分からの気密漏れを生じて、キャリアを正常にチャックテーブルに吸着できない不具合を生じる場合があることが分かった。
【0008】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、加熱環境下においても、チャックテーブルに確実に吸着させることができる部品製造用具、及び、この部品製造用具を用いた部品製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
即ち、本発明は以下の通りである。
[1]に記載の部品製造用具は、半導体部品の製造方法又は電子部品の製造方法に用いられる部品製造用具であって、
開口部を有する枠体と、前記開口部を覆って前記枠体に張られた保持フィルムと、を有し、
前記枠体は、リング状の第1枠と、前記第1枠と係合可能なリング状の第2枠と、を備え、
前記保持フィルムは、基層と、前記基層の一面側に設けられた保持層と、を備えるとともに、伸張した状態で前記第1枠と前記第2枠との間に挟まれて保持されており、
前記基層は、100℃における弾性率E’(100)と、25℃における弾性率E’(25)と、の比RE1(=E’(100)/E’(25))が0.2≦RE1≦1であり、且つ、E’(25)が35MPa以上3500MPa以下であることを要旨とする。
[2]に記載の部品製造用具は、[1]に記載の部品製造用具において、前記基層の線熱膨張係数が100ppm/K以上であることを要旨とする。
[3]に記載の部品製造用具は、請求項1又は2に記載の部品製造用具において、前記基層は、熱可塑性ポリエステル系エラストマー、熱可塑性ポリアミド系エラストマー、及び、ポリブチレンテレフタレートのうちの少なくとも1種を含むことを要旨とする。
[4]に記載の部品製造用具は、[1]乃至[3]のうちのいずれかに記載の部品製造用具において、前記製造方法は、半導体部品、前記半導体部品の前駆体、電子部品、及び、前記電子部品の前駆体から選ばれた複数個の部品が、前記保持層に保持された状態にある前記保持フィルムを、加熱されたチャックテーブルの表面に吸着して固定する吸着工程を備えることを要旨とする。
[5]に記載の部品製造用具は、[4]に記載の部品製造用具において、前記吸着工程後に、前記保持フィルムに保持された前記部品を評価する評価工程を備えることを要旨とする。
[6]に記載の部品製造用具は、[5]に記載の部品製造用具において、前記評価工程後に、前記部品のうちの一部の部品のみを、前記基層側から前記保持層側へ向かって突き押して、前記保持フィルムを更に伸張させることによって、他の部品から離間させてピックアップするピックアップ工程を備えることを要旨とする。
[7]に記載の部品製造方法は、開口部を有する枠体と、前記開口部を覆って前記枠体に張られた保持フィルムと、を有し、
前記枠体は、リング状の第1枠と、前記第1枠と係合可能なリング状の第2枠と、を備え、
前記保持フィルムは、基層と、前記基層の一面側に設けられた保持層と、を備えるとともに、伸張した状態で前記第1枠と前記第2枠との間に挟まれて保持されており、
前記基層は、100℃における弾性率E’(100)と、25℃における弾性率E’(25)と、の比RE1(=E’(100)/E’(25))が0.2≦RE1≦1であり、且つ、E’(25)が35MPa以上3500MPa以下である部品製造用具の前記保持層に、半導体部品、前記半導体部品の前駆体、電子部品、及び、前記電子部品の前駆体から選ばれた複数個の部品を保持する部品保持工程と、
前記部品が保持された前記保持フィルムを、加熱されたチャックテーブルの表面に吸着して固定する吸着工程を備えることを要旨とする。
[8]に記載の部品製造方法は、[7]に記載の部品の製造方法において、前記吸着工程後に、前記保持フィルムに保持された前記部品を評価する評価工程を備えることを要旨とする。
[9]に記載の部品製造方法は、[8]に記載の部品の製造方法において、前記評価工程後に、前記部品のうちの一部の部品のみを、前記基層側から前記保持層側へ向かって突き押して、前記保持フィルムを更に伸張させることによって、他の部品から離間させてピックアップするピックアップ工程を備えることを要旨とする。
【発明の効果】
【0010】
本部品製造用具によれば、加熱環境下においても、チャックテーブルに確実に吸着させることができる。このため、加熱環境を含んだ評価工程が介在される部品製造方法において、本部品製造用具を利用して、部品製造を行うことができる。また、本部品製造用具を利用により、評価及びピックアップの各工程でキャリアを共用することができる。
【0011】
本方法によれば、加熱環境下においても、部品製造用具をチャックテーブルに確実に吸着させることができる。このため、加熱環境を含んだ評価工程が介在される本部品製造方法を行うことができる。また、本製造方法により、評価及びピックアップの各工程でキャリアを共用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本部品製造用具の一例の平面形態(a)、対応する断面形態(b)、対応する断面形態の他のバリエーション(c)を説明する説明図である。
【
図2】本部品製造用具を構成する枠体を説明する説明図である。
【
図3】本部品製造用具の他例の平面形態(a)、対応する断面形態(b)を説明する説明図である。
【
図4】本方法に係る個片化工程を説明する説明図である。
【
図5】本方法に係る部品保持工程の枠体係合工程を説明する説明図である。
【
図6】本方法に係る部品保持工程のフィルムカット工程を説明する説明図である。
【
図7】本方法に係る吸着工程を説明する説明図である。
【
図8】本方法に係る評価工程を説明する説明図である。
【
図9】本方法に係るピックアップ工程を説明する説明図である。
【
図10】従来の部品製造用具の問題点を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を、図を参照しながら説明する。ここで示す事項は例示的なもの及び本発明の実施形態を例示的に説明するためのものであり、本発明の原理と概念的な特徴とを最も有効に且つ難なく理解できる説明であると思われるものを提供する目的で述べたものである。この点で、本発明の根本的な理解のために必要で、ある程度以上に本発明の構造的な詳細を示すことを意図してはおらず、図面と合わせた説明によって本発明の幾つかの形態が実際にどのように具現化されるかを当業者に明らかにするものである。
【0014】
[1]部品製造用具
本部品製造用具(1)は、部品(50)の製造方法に用いられる部品製造用具(1)である。部品(50)には、半導体部品(51)及び電子部品(54)が含まれる。
本部品製造用具(1)は、開口部(10h)を有する枠体(10)と、開口部(10h)を覆って枠体(10)に張られた保持フィルム(20)と、を有する。
このうち、枠体(10)は、リング状の第1枠(11)と、第1枠(11)と係合可能なリング状の第2枠(12)と、を備えている。一方、保持フィルム(20)は、伸張された状態で、第1枠(11)と第2枠(12)との間に挟まれて保持されている。
そして、保持フィルム(20)は、基層(21)と、基層(21)の一面(21a)側に設けられた保持層(22)と、を備えている。このうち、基層(21)は、100℃における弾性率E’(100)と、25℃における弾性率E’(25)と、の比R
E1(=E’(100)/E’(25))が0.2≦R
E1≦1、且つ、E’(25)が35MPa以上3500MPa以下である(
図1参照)。
【0015】
上述の構成を有する部品製造用具1により、加熱環境下においても、チャックテーブルに確実に吸着できる部品製造用具とすることができる。即ち、加熱されたチャックテーブルへ本部品製造用具1を吸着固定しても、枠体10に張られた保持フィルム20には皺が発生されず、気密漏れを生じないため、部品製造用具1を正常にチャックテーブルに吸着・固定できる。これにより、評価工程において正常な評価を行うことができる。即ち、例えば、評価時に、評価対象である部品50と、評価用装置(例えば、プローブ)等との意図しないずれを防止して、正常に評価を行うことができる。また、本部品製造用具1の利用により、評価工程前に、個片化された部品同士の間に間隙を形成できるため、個片化工程後から評価工程へと移行する間に、部品同士が接触することを防止し、この移行の際の部品間接触により生じ得る不具合を防止できる。
尚、本部品製造用具1の利用形態及び流通形態は特に限定されないものの、通常、利用時には、保持フィルム20上に部品50が載置された状態となる。
【0016】
尚、チャックテーブルとは、平滑な天面を有するテーブル(天板)を備えた装置であって、吸着によって、この平滑な天面に、枠体10に張られたままの保持フィルム20を吸着させることができる装置である。上述のテーブルは、特に限定されないが、通常、吸引可能な構造を有する。即ち、例えば、吸引孔や吸引溝等の吸引ルートを備えた成形体(金属成形体、セラミックス成形体、樹脂成形体等)や、多孔質な成形体(金属成形体、セラミックス成形体、樹脂成形体等)を用いることができる。
【0017】
〈1〉枠体
枠体10(
図2参照)は、第1枠11と第2枠12と、を備える。第1枠11はリング状をなし、開口部11hを有する。同様に、第2枠12はリング状をなし、開口部12hを有する。第1枠11と第2枠12とは係合可能であり、第1枠11と第2枠12とを係合することで、第1枠11と第2枠12とが一体となって枠体10をなす。また、第1枠11と第2枠12とを係合することで、開口部11hと開口部12hとが一体となって開口部10hをなす。第1枠11及び第2枠12の各構成材料が限定されず、各種の有機材料(樹脂、エラストマなど)及び無機材料(金属、セラミックスなど)を適宜必要に応じて利用できる。このうち、有機材料としては、例えば、ポリカーボネート樹脂、ABS樹脂、ポリエステル樹脂(芳香族ポリエステル樹脂、液晶性ポリエステル樹脂等)、ポリアミド樹脂(芳香族ポリアミド樹脂等)、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。これらの有機材料に対しては、更に、無機材料フィラー、無機材料補強(繊維ガラス繊維、炭素繊維等)、有機材料フィラー、有機材料補強繊維(芳香族ポリアミド樹脂繊維等)などの補強材を配合できる。当然ながら、補強材についても1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0018】
第1枠11と第2枠12との係合形態は限定されない。例えば、
図1(a)及び
図1(b)に示すように、第1枠11の外径が、第2枠12の内径よりも小さくされた係合形態が挙げられる。即ち、この形態では、第1枠11の外周に対して第2枠12の内周を嵌め込んで係合できる。この場合、第1枠11の外周面と第2枠12の内周面との間に、保持フィルム20を挟んで、伸張状態を維持して保持できる(
図1(b’)参照)。更に、この形態では、
図1(b")に示すように、第1枠11の外周面に係合用の凸部111と、第2枠12の内周面に係合用の凹部121と、を設けることによって、より確実な係合を行うことができる。
更に、
図1(a)及び
図1(c)に示すように、第1枠11は、その一部の外径が、第2枠12の内径よりも小さくなるように切り欠かれた形状を有することができる。この形状では、係合時及び係合後に、第2枠12が、第1枠11の嵌め込み側とは反対側へ抜け落ちることを防止できる。
また、係合は、第1枠11と第2枠12との係合クリアランスの調整のみで可能とされてもよいが、例えば、磁力の利用等により、係合状態を維持することもできる。
【0019】
また、例えば、
図3(a)及び
図3(b)に示すように、第1枠11と第2枠12とを上下に積み重ねて係合し、第1枠11の下面と第2枠12の上面との間に、保持フィルム20を挟んで、伸張状態を維持して保持することもできる。この場合には、第1枠11の下面と第2枠12の上面とが磁力によって係合できるように、例えば、第1枠11及び第2枠12の各々に磁石を埋設することができる。
【0020】
〈2〉保持フィルム
保持フィルム20は、伸張された状態で、第1枠11と第2枠12との間に挟まれて保持されたフィルムである。この保持フィルム20は、基層21と、その一面21a側に設けられた保持層22と、を備える(
図1、
図3及び
図6参照)。そして、このうち、基層21は、100℃における弾性率E’(100)と、25℃における弾性率E’(25)と、の比R
E1(=E’(100)/E’(25))が0.2≦R
E1≦1、且つ、E’(25)が35MPa以上3500MPa以下である。
尚、上記「E’(100)」は、基層21の100℃における引張弾性率を表わし、上記「E’(25)」は、基層21の25℃における引張弾性率を表わす。
また、
図1及び
図3における基層21及び保持層22の配置は一例である。即ち、
図1及び
図3は、いずれも、第1枠11の側に基層21が配置された例を示しているが、第1枠11の側に保持層22が配置されてもよい。
【0021】
即ち、基層21のE’(25)が、35MPa≦E’(25)≦3500MPa以下であることにより、枠体10に伸張状態で保持しても、その状態から更に、ピックアップする際には伸張させることが可能な柔軟性を有することができる。更に、RE1≦1であることで、加熱環境下において、保持フィルム20に熱皺を生じることを防止でき、チャックテーブルに確実に吸着できる部品製造用具1とすることができる。加えて、RE1が、RE1≧0.2であることにより、評価時に加熱されたチャックテーブルから、評価後に部品製造用具1を離間させることが容易となる。即ち、RE1が、RE1<0.2となると、高温吸着時に部品製造用具をチャックテーブルに正常に吸着させることができたとしても、離間させる際には、保持フィルム20が張り付き易くなり、高温状態のままでは離間し難くなる傾向にある。この場合は、部品製造用具1をチャックテーブルから離間するため、強制冷却を行うか、離間させ易い温度になるまで放冷するのを待つ等の対応が必要になるが、評価工程のタイムサイクルが低下することになり、好ましくない。
このように、部品製造時の評価効率を高めるには、チャックテーブルの温度が下がり切る前に、キャリアを吸着させたり、離間させたりする必要を生じるが、このような状況に対応できる部品製造用具は現在知られていない。とりわけ、予め伸張された状態で保持フィルム20が枠体10に張られた部品製造用具1を上述のような評価工程に供することは極めて困難である。この点、本部品製造用具1では、保持フィルム20に、0.2≦RE1≦1、且つ、E’(25)が35MPa以上3500MPa以下となる性質を持たせることにより、上述の通り本問題を解決して、部品製造を行うことが可能である。
【0022】
このような観点から、比RE1は、0.2≦RE1≦1が好ましいが、更に、0.23≦RE1≦0.90が好ましく、更に、0.24≦RE1≦0.80が好ましく、更に、0.30≦RE1≦0.78が好ましく、更に、0.32≦RE1≦0.75が好ましく、更に、0.35≦RE1≦0.70が好ましく、更に、0.38≦RE1≦0.65が好ましい。各々の好ましい範囲においては、チャックテーブルの加熱時であっても、より効果的に熱皺を防止できるとともに、吸着停止後にチャックテーブルからより取り外し易くすることができる。
【0023】
また、0.2≦RE1≦1の範囲内において、E’(25)は、38MPa≦E’(25)≦3000MPaが好ましく、更に、40MPa≦E’(25)≦2000MPaが好ましく、更に、42MPa≦E’(25)≦1000MPaが好ましく、更に、44MPa≦E’(25)≦700MPaが好ましく、更に、46MPa≦E’(25)≦500MPaが好ましく、更に、48MPa≦E’(25)≦350MPaが好ましく、更に、50MPa≦E’(25)≦250MPaが好ましく、更に、51MPa≦E’(25)≦150MPaが好ましい。このE’(25)の値は、基層のMD方向及びTD方向で異なってもよいが、基層のMD方向及びTD方向の両方において上述の範囲であることが好ましい。
【0024】
更に、E’(100)は、10MPa≦E’(100)≦2000MPaが好ましく、更に、15MPa≦E’(100)≦800MPaが好ましく、更に、17MPa≦E’(100)≦300MPaが好ましく、更に、20MPa≦E’(100)≦150MPaが好ましく、更に、25MPa≦E’(100)≦50MPaが好ましく、更に、26MPa≦E’(100)≦45MPaが好ましく、更に、27MPa≦E’(100)≦42MPaが好ましい。このE’(100)の値は、基層のMD方向及びTD方向で異なってもよいが、基層のMD方向及びTD方向の両方において上述の範囲であることが好ましい。
【0025】
尚、基層に関する上述の各弾性率E’は、動的粘弾性測定装置(DMA:Dynamic Mechanical Analysis)により測定される。具体的には、サンプルサイズを幅10mm、チャック間の長さ20mmとし、周波数1Hz、昇温速度5℃/分の測定条件で-50℃から200℃まで測定して得られたデータから各温度のデータを読み取ることで得られる。即ち、25℃における値を引張弾性率E’(25)(単位はMPaである)とし、100℃における値を引張弾性率E’(100)(単位はMPaである)とする。
【0026】
更に、評価工程では、上述のように、高温だけでなく、低温を負荷する場合がある。このように、高温負荷だけでなく、低温負荷についても評価を行う場合、本部品製造用具1に利用する保持フィルム20の基層21は、0.2≦RE1≦1、且つ、E’(25)が35MPa以上3500MPa以下であることに加えて、更なる特性を併せ有することが好ましい。具体的には、160℃における弾性率E’(160)と、-40℃における弾性率E’(-40)と、の比をRE2(=E’(160)/E’(-40))とした場合に、比RE2は0.001以上1以下(0.001≦RE2≦1)であることが好ましい。ここで、「E’(160)」は、基層の160℃における引張弾性率を表わし、「E’(-40)」は、基層の-40℃における引張弾性率を表わす。
【0027】
上述のように、0.001≦RE2≦1である場合、部品製造時に、100℃以上160℃以下の高温、及び、-40℃以上0℃以下の低温、の各温度域で評価工程を行ったとしても、その後に、保持フィルム20から部品50をピックアップする際、ピックアップし易い保持フィルム20の柔軟性を維持させることができる。即ち、保持フィルム20は、常態において、枠体10に伸張状態で張られており、その状態で、評価工程において高温及び低温(負荷の順序は問わない)を課せられる。その後、ピックアップ工程では、保持フィルム20を破断させることなく、予め付与された伸張状態から更にピックアップのための伸張を行うことができる。つまり、ピックアップ工程において突上げ部材92により更に突き上げて、突き上げた部位の保持フィルム20を破断させることなく、伸張させ、所望の部品のみを、他の部品から上方へ突出させ、ピックアップ器具93で掴み易くすることができる。
【0028】
上述の比RE2は、0.001≦RE2≦1が好ましいが、更に、0.005≦RE2≦0.7が好ましく、更に、0.007≦RE2≦0.5が好ましく、更に、0.01≦RE2≦0.3が好ましく、更に、0.012≦RE2≦0.2が好ましく、更に、0.014≦RE2≦0.1が好ましく、更に、0.016≦RE2≦0.05が好ましく、更に、0.018≦RE2≦0.04が好ましい。これらの好ましい範囲では、熱間サイクルを経た場合であっても、保持フィルム20の柔軟性を特に良好に維持させることができる。
【0029】
また、0.001≦RE2≦1の範囲内において、E’(-40)は、10MPa≦E’(-40)≦4500MPaが好ましい。保持フィルム20では、基層21が、10MPa≦E’(-40)≦4500MPaである場合には、評価工程で低温環境を利用する場合であっても、保持フィルム20に良好な柔軟性を維持させることができる。
前述の通り、製造部品の評価は、高温において行われる他、低温においても行われ得る。低温下では基層21の引張弾性率E’は、高温下よりも必然的に大きくなる。従って、伸長状態で枠体10に張られた保持フィルム20が、評価時の低温を経る場合であっても破断されない柔軟性を維持できることが要求される。しかしながら、高温耐熱性に優れた材料は、通常、高温引張弾性率が高い材料であり、このような材料の引張弾性率は、低温では更に高くなり、上述の状況に耐えることが困難となる。この点、基層21の比RE2が0.01≦RE2≦1であり、且つ、E’(-40)が、10MPa≦E’(-40)≦4500MPaである保持フィルム20では、上述の要求を充足することができる。
【0030】
E’(-40)は、更に、50MPa≦E’(-40)≦4300MPaが好ましく、更に、100MPa≦E’(-40)≦3000MPaが好ましく、更に、120MPa≦E’(-40)≦2000MPaが好ましく、更に、150MPa≦E’(-40)≦1500MPaが好ましく、更に、180MPa≦E’(-40)≦1000MPaが好ましく、更に、200MPa≦E’(-40)≦700MPaが好ましく、更に、250MPa≦E’(-40)≦580MPaが好ましく、更に、300≦E’(-40)≦550MPaが好ましく、更に、330MPa≦E’(-40)≦500MPaが好ましい。このE’(-40)の値は、基層のMD方向及びTD方向で異なってもよいが、基層のMD方向及びTD方向の両方において上述の範囲であることが好ましい。
【0031】
一方、E’(160)は、0.1MPa≦E’(160)≦600MPaが好ましく、更に、0.15MPa≦E’(160)≦450MPaが好ましく、更に、0.2MPa≦E’(160)≦300MPaが好ましく、更に、1MPa≦E’(160)≦200MPaが好ましく、更に、2MPa≦E’(160)≦100MPaが好ましく、更に、3MPa≦E’(160)≦50MPaが好ましく、更に、4MPa≦E’(160)≦40MPaが好ましく、更に、4.5MPa≦E’(160)≦25MPaが好ましく、更に、5MPa≦E’(160)≦15MPaが好ましい。このE’(160)の値は、基層のMD方向及びTD方向で異なってもよいが、基層のMD方向及びTD方向の両方において上述の範囲であることが好ましい。
【0032】
尚、基層21に関する上述の各弾性率E’は、動的粘弾性測定装置(DMA:Dynamic Mechanical Analysis)により測定される。具体的には、サンプルサイズを幅10mm、チャック間の長さ20mmとし、周波数1Hz、昇温速度5℃/分の測定条件で-50℃から200℃まで測定して得られたデータから各温度のデータを読み取ることで得られる。即ち、-40℃における値を引張弾性率E’(-40)とし、160℃における値を引張弾性率E’(160)とする。
【0033】
基層21の線熱膨張係数は限定されないものの、100ppm/K以上であることが好ましい。このような材料としては、後述するように熱可塑性エラストマーが挙げられる。即ち、熱可塑性エラストマーは、線熱膨張係数が比較的大きい材料であり、大きな線熱膨張係数は、高温下において、保持フィルム20の変形に起こす駆動要因と考えられる。このように、線熱膨張係数が100ppm/K以上である基層21を用いた保持フィルム20は、特に加熱環境下において、皺などを生じてチャックテーブルへの吸着不具合を生じ易い傾向にある。これに対し、線熱膨張係数が100ppm/K以上である基層21を利用する場合であっても、そのRE1を、0.2≦RE1≦1とし、E’(25)を35MPa以上3500MPa以下とすることにより、加温環境下におけるチャックテーブルへの吸着不良を防止できる。
この線熱膨張係数は100ppm/K以上300ppm/K以下が好ましく、更に、130ppm/K以上280ppm/K以下が好ましく、更に、150ppm/K以上250ppm/K以下がより好ましく、更に、165ppm/K以上240ppm/K以下がより好ましい。この線熱膨張係数は、JIS K7197に準じて測定され、温度50℃から190℃までの間における熱膨張係数とする。
【0034】
基層21の厚さは限定されないが、例えば、50μm以上200μm以下とすることができ、60μm以上185μm以下が好ましく、70μm以上170μm以下がより好ましい。尚、基層の延伸の有無は問わない。
【0035】
基層21は、上述の各種特性を有し、保持層22を支持できればよく、その材質は特に限定されない。基層21を構成する材料としては、樹脂が好ましい。
基層21を構成する材料としては、樹脂が好ましい。また、樹脂のなかでも、十分な柔軟性(力学的な伸縮性)を有する樹脂であることが好ましく、特にエラストマー性を有する樹脂であることが好ましい。
【0036】
エラストマー性を有する樹脂としては、熱可塑性エラストマー及びシリコーン等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。これらのうちでは、熱可塑性を有するものが好ましいため、熱可塑性エラストマーが好ましい。熱可塑性エラストマーは、ハードセグメント及びソフトセグメントを有したブロック共重合体からなってもよく、ハードポリマーとソフトポリマーとのポリマーアロイからなってもよく、これらの両方の特性を有したものであってもよい。
【0037】
熱可塑性エラストマーを含む場合、その割合は、基層21を構成する樹脂全体に対して、例えば、30質量%以上100質量%以下とすることができる。即ち、基層21を構成する樹脂は熱可塑性エラストマーのみからなってもよい。熱可塑性エラストマーの割合は、更に、50質量%以上100質量%以下が好ましく、70質量%以上100質量%以下がより好ましい。
【0038】
具体的には、熱可塑性エラストマーとしては、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、ポリアミド系熱可塑性エラストマー、スチレン系熱可塑性エラストマー、オレフイン系熱可塑性エラストマー、塩化ビニル系熱可塑性エラストマー、ポリイミド系熱可塑性エラストマー(ポリイミドエステル系、ポリイミドウレタン系等)などが挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
これらのうちでは、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、ポリアミド系熱可塑性エラストマー、ポリイミド系熱可塑性エラストマーが好ましく、更には、ポリエステル系熱可塑性エラストマー及び/又はポリアミド系熱可塑性エラストマーが特に好ましい。
【0039】
ポリエステル系熱可塑性エラストマーは、ポリエステル成分をハードセグメントとする以外、どのような構成であってもよい。ソフトセグメントとしては、ポリエステル、ポリエーテル及びポリエーテルエステル等を利用できる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。即ち、例えば、ハードセグメントを構成するポリエステル成分としては、テレフタル酸ジメチル等のモノマーに由来する構成単位を含むことができる。一方、ソフトセグメントを構成する成分としては、1,4-ブタンジオール及びポリ(オキシテトラメチレン)グリコール等のモノマーに由来する構成単位を含むことができる。
より具体的には、PBT-PE-PBT型ポリエステル系熱可塑性エラストマー等が挙げられる。
【0040】
このようなポリエステル系熱可塑性エラストマーとして、三菱化学株式会社製「プリマロイ(商品名)」、東レ・デュポン社製「ハイトレル(商品名)」、東洋紡績株式会社製「ペルプレン(商品名)」、リケンテクノス株式会社製「ハイパーアロイアクティマー(商品名)」等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0041】
ポリアミド系熱可塑性エラストマーは、ポリアミド成分をハードセグメントとする以外、どのような構成であってもよい。ソフトセグメントとしては、ポリエステル、ポリエーテル及びポリエーテルエステル等を利用できる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。即ち、例えば、ハードセグメントを構成するポリアミド成分としては、ポリアミド6、ポリアミド11及びポリアミド12等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。これらのポリアミド成分には、各種のラクタム等をモノマーとして利用できる。一方、ソフトセグメントを構成する成分としては、ジカルボン酸等のモノマーやポリエーテルポリオールに由来する構成単位を含むことができる。このうち、ポリエーテルポリオールとしては、ポリエーテルジオールが好ましく、例えば、ポリ(テトラメチレン)グリコール、ポリ(オキシプロピレン)グリコール等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
より具体的には、ポリエーテルアミド型ポリアミド系熱可塑性エラストマー、ポリエステルアミド型ポリアミド系熱可塑性エラストマー、ポリエーテルエステルアミド型ポリアミド系熱可塑性エラストマー等が挙げられる。
【0042】
このようなポリアミド系熱可塑性エラストマーとして、アルケマ株式会社製「ペバックス(商品名)」、ダイセル・エボニック株式会社製「ダイアミド(商品名)」、ダイセル・エボニック株式会社製「ベスタミド(商品名)」、宇部興産株式会社製「UBESTA XPA(商品名)」等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0043】
また、基層21が、熱可塑性エラストマー以外の樹脂を含む場合、このような樹脂としては、ポリエステル、ポリアミド、ポリカーボネート、アクリル樹脂等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。これらのなかでは、ポリエステル及び/又はポリアミドが好ましく、具体的には、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート等のポリエステル、ナイロン6、ナイロン12等のポリアミドが挙げられる。
具体的には、ポリブチレンテレフタレートとして、東レ株式会社製「トレコン(商品名)」が挙げられる。このポリブチレンテレフタレートは、単独で基層21として利用可能である。
【0044】
更に、基層21は、これを構成する樹脂中に、可塑剤及び軟化剤(鉱油等)、充填剤(炭酸塩、硫酸塩、チタン酸塩、珪酸塩、酸化物(酸化チタン、酸化マグネシウム)、シリカ、タルク、マイカ、クレー、繊維フィラー等)、酸化防止剤、光安定化剤、帯電防止剤、滑剤、着色剤等の各種添加剤を含むことができる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0045】
〈3〉保持層
保持層22は、部品50を保持できるよう、例えば、粘着材等により形成された層である。保持層22は、基層21の一面のみに備えてもよいし、基層21の両面に備えてもよい。保持層22は、基層21と直接接して設けられていてもよく、他の層を介して設けられていてもよい。
【0046】
保持層22が粘着材により形成されている場合、保持層22の粘着力は、特に限定されないが、シリコンウエハの表面に貼着して60分間放置した後、シリコンウエハの表面から剥離するときの、JIS Z0237に準拠して測定されるシリコンウエハに対する粘着力が(温度23℃、相対湿度50%の環境下にて測定)0.1~10N/25mmであることが好ましい。粘着力が上記範囲である場合には、被貼着物(即ち、部品50)との良好な貼着性を確保しつつ、被貼着物を剥離する際の糊残りを抑制できる。この粘着力は、更に、0.2N/25mm以上9N/25mm以下がより好ましく、0.3N/25mm以上8N/25mm以下が更に好ましい。
また、保持層22の厚さ(基層21の一方の面側のみの厚さ)は特に限定されないが、1μm以上40μm以下が好ましく、2μm以上35μm以下がより好ましく、3μm以上25μm以下が特に好ましい。
尚、当然ながら、保持層22は、保持フィルム20に部品50を保持する機能を付与するための層であり、基層21の特性が、保持フィルム20に反映されることを阻害しない層である。従って、保持層22は、通常、基層21より厚さが薄く、前述した各弾性率も小さい層である。
【0047】
粘着材は、上述の特性を有すればよく、どのような材料を用いてもよい。通常、少なくとも粘着主剤を含む。粘着主剤としては、アクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ゴム系粘着剤等が挙げられる。また、この粘着材は、粘着主剤以外に、架橋剤を含むことができる。
更に、粘着材は、エネルギー線によって硬化できるエネルギー線硬化型粘着材であってもよいし、エネルギー線によって硬化されないエネルギー非硬化型粘着材であってもよい。エネルギー線硬化型粘着材である場合、粘着材に対しエネルギー線照射を行うことで、粘着材を硬化させ、その粘着力を低下させることができ、本部品製造用具1と部品50とを離間させる際に、部品50に対する糊残りを防止できる。エネルギー線の種類は限定されず、紫外線、電子線、赤外線等を利用できる。
エネルギー線硬化型粘着材である場合、粘着材は、上述の粘着主剤以外に、分子内に炭素-炭素二重結合を有する化合物と、エネルギー線に反応して硬化性化合物の重合を開始させることができる光重合開始剤を含むことができる。この硬化性化合物は、分子中に炭素-炭素二重結合を有し、ラジカル重合により硬化可能なモノマー、オリゴマー及び/又はポリマーが好ましい。
【0048】
〈4〉その他の層
保持フィルム20は、基層21及び保持層22のみからなってもよいが、他層を備えることができる。他層としては、貼り付け面の凹凸形状を吸収してフィルム面を平滑にできる凹凸吸収層、粘着材との界面強度を向上する界面強度向上層、基層21から粘着面への低分子量成分の移行を抑制する移行防止層、表面の電気抵抗を低減する帯電防止層等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0049】
〈5〉保持フィルムの製造
保持フィルム20は、どのような方法で製造してもよく、その方法は特に限定されない。具体的には、共押出し法、押出ラミネート法、接着ラミネート法、塗布法等の方法により製造できる。このうち、共押出し法は、基層21となる溶融樹脂と保持層22となる溶融樹脂等とを共押出しによって積層して、保持フィルム20を製造する方法である。
【0050】
上記押出ラミネート法は、基層21上に、保持層22となる溶融樹脂等を押出しによって積層して、保持フィルム20を製造する方法である。更に、上記塗布法は、基層21上に、保持層22となる溶融樹脂等を塗布又は塗工によって積層して保持フィルム20を製造する方法である。保持層22を構成する粘着材として、エネルギー線硬化型粘着材を用いる場合は、この塗布法を用いることが好ましい。また、上記接着ラミネート法は、基層21と保持層22とを、熱圧着、接着剤、ホットメルト等を介して積層して保持フィルム20を製造する方法である。これらの方法は、1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0051】
[2]部品の製造方法
本部品の製造方法は、前述の本発明の部品製造用具(1)の保持層(22)に、半導体部品(51)、半導体部品の前駆体(52)、電子部品(54)、及び、電子部品の前駆体(55)から選ばれた複数個の部品(50)を保持する部品保持工程(R2)(
図5及び
図6参照)と、
部品(50)が保持された保持フィルム(20)を、加熱されたチャックテーブルの表面に吸着して固定する吸着工程(R3)(
図7参照)を備えることを特徴とする。
【0052】
更に、本方法では、吸着工程(R3)後に、保持フィルム(20)に保持された部品(50)を評価する評価工程(R4)(
図8参照)を備えることができる。
更に、本方法では、評価工程(R4)後に、部品(50)のうちの一部の部品(50’)のみを、基層(21)側から保持層(22)側へ向かって突き押して、保持フィルム(20)を更に伸張させることによって、他の部品(50)から離間させてピックアップするピックアップ工程(R5)(
図9参照)を備えることができる。
【0053】
(1)部品保持工程(R2)
部品保持工程R2は、部品製造用具1の保持層22に複数個の部品50を保持する工程である。
この際の保持方法は特に限定されず、個片化された複数の部品50の裏面を保持フィルム20の保持層22に各々貼着して、部品保持を行ってもよいが、
図5~
図6に示すように、部品50が保持されたフィルム25(前駆保持フィルム)が張られたリングフレーム70から、前駆保持フィルム25の一部であって部品50が保持された領域を、枠体10を利用して切り取ることによって行うことができる。
【0054】
より具体的には、
図4に示すように、リングフレーム70に張られたフィルム25(前駆保持フィルム)に予め保持された半導体ウエハ53やアレイ状電子部品56を個片化して部品50を得る個片化工程R1(
図4参照)を行うことにより、部品50を得ることができる。
その後、例えば、前駆保持フィルム25に部品50を保持した状態で、前駆保持フィルム25の表面側に第2枠12を配置し、前駆保持フィルム25の裏面に第1枠11を当接させて、第1枠11を上昇させながら、前駆保持フィルム25を伸張させて、前駆保持フィルム25上において部品50同士を離間させるとともに、第1枠11と第2枠12とを係合させる。これにより、第1枠11と第2枠12とは係合されて枠体10が形成されるとともに、開口部10hを覆って伸張された状態で、枠体10に張られた前駆保持フィルム25が得られる(
図5参照)。その後、カット刃91を利用して、枠体10の近傍で、前駆保持フィルム25を小さくカットすることにより、枠体10とその開口部10hを覆って枠体10に張られた保持フィルム20とが得られる(
図6参照)。これにより、得られた保持フィルム20上に、個片化された部品50同士が接触されないように、互いに離間された状態で保持された状態が得られることになる。
【0055】
即ち、リングフレーム70に張られたフィルム25(前駆保持フィルム)に予め保持された半導体ウエハ53やアレイ状電子部品56を個片化して(個片化工程R1を経て)部品50を得ることができる(
図4参照)。その後、個片化された部品50が保持された部分の前駆保持フィルム25に対して、枠体10を取り付け(枠体係合工程R2-1)(
図5参照)、次いで、枠体10に保持された保持フィルム20のみを切り出す(フィルムカット工程R2-2)(
図6参照)ことで、部品保持工程R2を行うことができる。
従って、部品保持工程R2は、枠体係合工程R2-1及びフィルムカット工程R2-2を含むことができる。枠体係合工程R2-1は、個片化された部品50が保持された前駆保持フィルム25を、その表裏から第1枠11と第2枠12とで挟みながら係合して、枠体10を完成させる工程(
図5参照)である。また、フィルムカット工程R2-2は、枠体10に保持された保持フィルム20のみを切り出す工程である(
図6参照)。
【0056】
部品50は、半導体部品51、半導体部品の前駆体52、電子部品54、及び、電子部品の前駆体55から選ばれた部品である。これらの部品は、いずれも個片化後の部品であり、例えば、半導体ウエハ53やアレイ状電子部品56が個片化された部品が含まれる。即ち、半導体ウエハ53から個片化された半導体部品の前駆体52や、半導体部品の前駆体52が所定の工程(例えば、評価工程等)を経てなる半導体部品51が含まれる。同様に、アレイ状電子部品56から個片化された電子部品の前駆体55や、電子部品の前駆体55が所定の工程(例えば、評価工程等)を経てなる電子部品54が含まれる。
【0057】
部品50が、半導体部品51又は半導体部品の前駆体52である場合、これらの部品を構成する基体は特に限定されず、シリコン、サファイア、ゲルマニウム、ゲルマニウム-ヒ素、ガリウム-リン、ガリウム-ヒ素-アルミニウム等が挙げられる。半導体部品51又は半導体部品の前駆体52には、上述の基体に対して回路が形成されている。回路としては、配線、キャパシタ、ダイオード及びトランジスタ等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0058】
更に、アレイ状電子部品56は、電子部品の前駆体55がアレイ状に一体化された部品である。アレイ状電子部品56には、下記の形態(1)-(3)が含まれる。
(1):回路形成された半導体ウエハ53から得られた半導体部品51(チップ、ダイ)を、リードフレーム上に配列し、ワイヤーボンディングした後、封止剤で封止して得られたアレイ状電子部品56。
(2):回路形成された半導体ウエハ53から得られた半導体部品51(チップ、ダイ)を、離間配列し、封止剤で封止した後、再配線層及びバンプ電極等の外部との導通を得る外部回路を一括して形成したアレイ状電子部品56。即ち、ファンアウト方式(eWLB方式)において得られるアレイ状電子部品56である。
(3):半導体ウエハ53をウエハ状態のまま利用し、再配線層及びバンプ電極等の外部との導通を得る外部回路や、封止剤で封止した封止層を一括して形成したアレイ状電子部品56。この形態(3)における半導体ウエハ53は、個片化前状態であって、半導体部品51(チップ、ダイ)がアレイ状に形成された形態や、半導体ウエハ53を基体として利用する(非回路シリコン基板上に回路を有するチップを接合して利用する形態)等を含むものである。即ち、形態(3)におけるアレイ状電子部品56は、ウエハレベルチップサイズパッケージ(WLCSP)方式において得られるアレイ状電子部品56である。
【0059】
個片化は、半導体ウエハ53の個片化である場合、1つの前駆体52内に少なくとも1つの半導体回路領域が含まれるように個片化されてもよく、2つ以上の半導体回路領域が含まれるように個片化されてもよい。同様に、個片化が、アレイ状電子部品56の個片化である場合、1つの前駆体55内に少なくとも1つの半導体部品が含まれるように個片化されてもよく、2つ以上の半導体部品が含まれるように個片化されてもよい。
【0060】
(2)吸着工程(R3)
吸着工程R3は、部品50が保持された保持フィルム20を、加熱されたチャックテーブル60の表面61に吸着して固定する工程である(
図7参照)。
前述のように、従来の部品製造用具では、加熱されたチャックテーブル60に部品製造用具を吸着・固定しようとすると、保持された部品50の外周部分の保持フィルム20’に、皺Xを生じ、この皺Xより吸引漏れを起こし、部品製造用具をチャックテーブル60へ正常に吸着固定できない場合があった。これに対し、本部品製造用具1を利用することにより、皺Xの発生を抑えで、部品製造用具1をチャックテーブル60の表面61に対して正常に吸着固定できるようになる(
図7参照)。
【0061】
チャックテーブル60は、前述のように、通常、チャックテーブルは、平滑な天面(表面61)を有するテーブル(天板)を備える。平滑とは、当然ながら、吸引孔や吸引溝等の吸引ルートを除く天面における平滑を意味する。
また、加熱されたチャックテーブル60とは、チャックテーブル60が操作環境よりも高い温度にされた状態を意味する。具体的には、吸着工程R3後の評価工程R4のために、予熱された状態のチャックテーブル60に部品製造用具1を吸着させる状況や、評価工程R4のタイムサイクルを大きくするために、チャックテーブル60の放冷や冷却を十分に行うことなく、連続的に次ロットを保持した部品製造用具1を吸着させる状況等が想定される。とりわけ、本方法では、表面61の温度が70℃以上であるチャックテーブル60に吸着させる場合が想定される。この表面61の温度は、通常、200℃以下であり、更には75℃以上190℃以下とすることができ、更には80℃以上180℃以下とすることができ、更には85℃以上170℃以下とすることができ、更には90℃以上160℃以下とすることができる。即ち、このような温度範囲のチャックテーブル60に対して、前述した本部品製造用具1は対応することができる。
【0062】
本方法では、前述した部品保持工程R2及び吸着工程R3以外に、他の工程を備えることができる。他の工程としては、個片化工程R1、評価工程R4及びピックアップ工程R5が挙げられる。このうち、個片化工程R1は、前述した通りである。
即ち、個片化工程R1(
図4参照)は、部品保持工程R2前に行われる工程であり、半導体ウエハ53やアレイ状電子部品56を個片化して部品50を得る工程である。例えば、リングフレーム70に張られたフィルム25(前駆保持フィルム)に予め保持された半導体ウエハ53やアレイ状電子部品56を個片化して部品50を得ることができる。
尚、このリングフレーム70の形状は特に限定されないが、通常、枠体10の開口部10hよりも、大きな開口部70hを有している。
【0063】
また、評価工程R4(
図8参照)は、吸着工程R3後に、保持フィルム20に保持された部品50を評価する工程である。評価方法は特に限定されないが、例えば、部品50を保持フィルム20に保持した状態で、部品50の回路の電気特性が、所定の温度域(例えば、100℃以上又は170℃以下)において、所望の特性を発揮できるか否かを、プローバを利用して行うことができる。この評価には、所望の温度域における動作確認を目的とするものや、所望の温度域における加速耐久試験を目的とするもの(例えば、バーンインテスト)も含むことができる。
具体的には、例えば、複数のプローブ81が形成されたプローブカード80を、部品50の所定の対応する箇所へ接触させて電気的接続を行い、プローブ81と各部品50上に形成された回路との間でやり取りされる信号の正否判定を行う(プローブテスト)ことができる(
図8参照)。尚、評価としては、上述のように、プローブを接触させて行う電気的な評価(プローブテスト)以外に、非接触の光学式の評価が挙げられる。また、保持フィルム20に保持された部品50が複数個ある場合、評価工程R4において評価される部品50の個数は限定されない。即ち、評価工程R4は、全ての部品50を評価する工程であってもよいし、一部の部品50のみを評価する工程であってもよい。
【0064】
更に、ピックアップ工程R5(
図9参照)は、評価工程R4後に、部品50のうちの一部の部品50’のみを、基層21側から保持層22側へ向かって突き押して、保持フィルム20を更に伸張させることによって、他の部品50から離間させてピックアップする工程である。
本部品製造用具1に利用される保持フィルム20の柔軟性は、各工程を通して維持できるため、高いピックアップ性を有することができる。具体的には、ピックアップ工程において、ピックアップ対象部品が貼着された部位のフィルムだけを変形させることができる。即ち、突上げ部材92で突き上げた際に追従して持ち上がる周辺フィルムの面積を小さく抑え、突き上げに伴って持ち上がる円形部の直径L(
図9参照)を短くできる。これにより、意図せず非ピックアップ対象の部品が持ち上がる等の不具合を防止できる。十分な柔軟性を維持できないフィルムでは、突き上げに伴って意図せず持ち上がる周辺フィルムの面積が大きいため、ピックアップ対象の部品に隣合った他の部品(非ピックアップ対象部品)が同時に持ち上がったり、傾いて持ち上がったりすることで、部品同士が衝突する等の不具合を生じることが危惧される。この点、本方法では、前述した本部品製造用具1を利用するため、このような不具合を防止できる。
ピックアップ工程は、公知の方法を用いて適宜行うことができるが、例えば、保持フィルム20の基層21の側から突上げ部材92によって、ピックアップ対象である部品50を突き上げ、この突き上げられた部品50をピックアップ器具93によって吸着等の方法によりピックアップすることができる。
【実施例】
【0065】
以下、本発明を実施例によって具体的に説明する。
[1]部品製造用具の製造
〈1〉保持フィルム20の製造
〈実験例1〉
(1)基層
基層21として、厚さ75μmのポリブチレンテレフタレート(PBT)フィルムを用意した。このフィルムを用い、引張弾性率E’を、動的粘弾性測定装置(DMA:Dynamic Mechanical Analysis)(製品名:RSA-3、TAインスツルメント社製)により測定した。具体的には、サンプルサイズを幅10mm、チャック間の長さ20mmとし、周波数1Hz、昇温速度5℃/分の測定条件で-50℃から200℃まで測定して得られたデータから各温度のデータを読み取った。そして、-40℃における値を引張弾性率E’(-40)とし、25℃における値を引張弾性率E’(25)とし、100℃における値を引張弾性率E’(100)とし、160℃における値を引張弾性率E’(160)として、表1に示した。更に、これらの値を用いて、比RE1(=E’(100)/E’(25))の値、及び、比RE2(=E’(160)/E’(-40))の値、を算出し、この結果を表1に併記した。その結果、実験例1における比RE1は0.25であり、比RE2は0.06であった。
(2)保持層
保持層22として、厚さ10μmの非硬化型のアクリル系粘着剤を用いた。
(3)基層と保持層との積層
上記(1)の基層21の一面に、上記(2)の保持層22をラミネートして、実験例1の保持フィルム20を得た。
【0066】
〈実験例2〉
(1)基層
基層21として、厚さ150μmのナイロン系熱可塑性エラストマー(TPAE)フィルムを用意した。このフィルムを用い、実験例1と同様に、引張弾性率E’を測定するとともに、比RE1及び比RE2を算出し、この結果を表1に示した。その結果、実験例2における比RE1は0.34であり、比RE2は0.001であった。
(2)保持層
保持層22として、厚さ10μmの非硬化型のアクリル系粘着剤を用いた。
(3)基層と保持層との積層
上記(1)の基層21の一面に、上記(2)の保持層22をラミネートして、実験例2の保持フィルム20を得た。
【0067】
〈実験例3〉
(1)基層
基層21として、厚さ80μmのポリエステル系熱可塑性エラストマー(TPEE)フィルムを用意した。このフィルムを用い、実験例1と同様に、引張弾性率E’を測定するとともに、比RE1及び比RE2を算出し、この結果を表1に示した。その結果、実験例3における比RE1は0.4であり、比RE2は0.03であった。
(2)保持層
保持層22として、厚さ10μmの非硬化型のアクリル系粘着剤を用いた。
(3)基層と保持層との積層
上記(1)の基層21の一面に、上記(2)の保持層22をラミネートして、実験例3の保持フィルム20を得た。
【0068】
〈実験例4〉
(1)基層
基層21として、厚さ150μmのポリエステル系熱可塑性エラストマー(TPEE)フィルムを用意した。このフィルムは、実験例3のフィルムとは厚さのみが異なるフィルムである。
(2)保持層
保持層22として、厚さ10μmの非硬化型のアクリル系粘着剤を用いた。
(3)基層と保持層との積層
上記(1)の基層21の一面に、上記(2)の保持層22をラミネートして、実験例4の保持フィルム20を得た。
【0069】
〈実験例5〉
(1)基層
基層21として、厚さ120μmのポリエステル系熱可塑性エラストマー(TPEE)フィルムを用意した。このフィルムを用い、実験例1と同様に、引張弾性率E’を測定するとともに、比RE1及び比RE2を算出し、この結果を表1に示した。その結果、実験例5における比RE1は0.6であり、比RE2は0.02であった。
(2)保持層
保持層22として、厚さ10μmの非硬化型のアクリル系粘着剤を用いた。
(3)基層と保持層との積層
上記(1)の基層21の一面に、上記(2)の保持層22をラミネートして、実験例5の保持フィルム20を得た。
【0070】
【0071】
〈2〉部品製造用具の製造
実験例1-5の各保持フィルム20を、外径179mm且つ内径(開口部11hの直径169mm)である第1枠11と、外径182mm且つ内径(開口部12hの直径179mm)である第2枠12と、を用い、無負荷状態から、周囲へ均等に2mm拡張されるように、実験例1~5の各保持フィルムを伸張させて(第1枠11と第2枠12とで挟んだ状態で保持)張ることにより、実験例1~5の部品製造用具を得た。
【0072】
〈3〉部品製造用具の評価
温度120℃に設定した真空吸着式のチャックテーブル60の表面61に、上記〈2〉までに得られた実験例1~5の各部品製造用具1の保持フィルム20の基層21表面を吸着固定した。この際の吸着固定の状態を以下の基準で評価し、その結果を表1に示した。
「○」・・・良好に吸着固定できた。
「△」・・・吸着固定できたものの、僅かな皺が認められた。
「×」・・・保持フィルムが波を打って吸着固定できなかった。
【0073】
[2]実施例の効果
実験例1~5の基層21のE’(100)とE’(25)との比RE1(=E’(100)/E’(25))は、いずれも0.2≦RE1≦1の範囲に含まれる。加えて、実験例1~5の基層21のE’(25)は、いずれも35MPa以上3500MPa以下の範囲に含まれる。このような基層21を用いた部品製造用具により、高温の真空吸着式のチャックテーブルへ正常に吸着させることができ、熱皺も全く認められない。この結果、加熱環境でもチャックテーブルに吸着できる部品製造用具及び部品製造方法を提供できる。
【0074】
尚、本発明においては、上記の具体的実施例に示すものに限られず、目的、用途に応じて本発明の範囲内で種々変更した実施例とすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明の部品製造用具及び部品製造方法は、半導体部品製造、電子部品製造の用途において広く用いられる。特に、加熱を伴った評価工程、個片化工程及びピックアップ工程を備えた部品の製造方法を利用する場合、生産性に優れた部品製造を行う観点から好適に利用される。
【符号の説明】
【0076】
1;部品製造用具、
10;枠体、10h;開口部、
11;第1枠、11h;開口部、
12;第2枠、12h;開口部、
20;保持フィルム、21;基層、22;保持層、
50;部品、
51;半導体部品、52;半導体部品の前駆体(個片化後の前駆体)、53;半導体ウエハ(個片化前の前駆体)、
54;電子部品、55;電子部品の前駆体(個片化後の前駆体)、56;アレイ状電子部品(個片化前の前駆体)、
60;チャックテーブル、61;表面(チャックテーブルの吸着可能な表面)、
70;リングフレーム、71;リングフレームの開口部、
80;プローブカード、81;プローブ、
91;カット刃、92;突上げ部材、93;ピックアップ器具、
R1;個片化工程、
R2;部品保持工程、R2-1;枠体係合工程、R2-2;フィルムカット工程、
R3;吸着工程、
R4;評価工程、
R5;ピックアップ工程。