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特許7018443ターゲットの定位を支援する方法およびこの方法の実行可能な観察装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-02
(45)【発行日】2022-02-10
(54)【発明の名称】ターゲットの定位を支援する方法およびこの方法の実行可能な観察装置
(51)【国際特許分類】
   G06T 19/00 20110101AFI20220203BHJP
   G01B 11/00 20060101ALI20220203BHJP
【FI】
G06T19/00 600
G01B11/00 H
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019521818
(86)(22)【出願日】2017-10-12
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-01-09
(86)【国際出願番号】 FR2017052808
(87)【国際公開番号】W WO2018078236
(87)【国際公開日】2018-05-03
【審査請求日】2020-06-24
(31)【優先権主張番号】1601535
(32)【優先日】2016-10-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】508150821
【氏名又は名称】ネクスター・システムズ
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 卓二
(74)【代理人】
【識別番号】100132241
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 博史
(74)【代理人】
【識別番号】100113170
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 和久
(72)【発明者】
【氏名】フィリップ・ブルノー
【審査官】板垣 有紀
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2007/0276590(US,A1)
【文献】特表2013-521576(JP,A)
【文献】特開2003-173475(JP,A)
【文献】特開2014-102608(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06T 19/00
G01B 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
拡張現実観察手段(11)を備える観察装置(26)を装着している第1ユーザ(6)のためのターゲット(24、25)の定位を支援する方法であって、当該拡張現実観察手段(11)は、支持板(12)に固定されており、計算手段(16)に連結しており、通信手段(18)と関連し、
基準プラットフォーム(1)は、活動範囲に配置されており、マスタ基準フレーム(RM)と呼ばれる空間的方位基準フレームを有し、第1ユーザ基準フレームと呼ばれる第1ユーザ空間的方位基準フレーム(RU1)が前記観察装置のデザインによって定義されており、前記第1ユーザ(6)の前記観察装置(26)と関連し、
前記ターゲットの定位を支援する方法は、
前記基準プラットフォーム(1)から、または、前記通信手段(18)を介して第2ユーザ(7)によって、前記マスタ基準フレーム(RM)における前記ターゲット(24、25)の座標を前記第1ユーザ(6)に送信するステップと、
前記第1ユーザ(6)によって、少なくとも1つのカメラ(13)から前記基準プラットフォーム(1)を観察するステップであって、前記カメラ(13)が、前記第1ユーザ(6)によって支持された前記支持板(12)に固定されており、前記拡張現実観察手段(11)を支持する、観察するステップと、
前記マスタ基準フレーム(RM)に対する前記第1ユーザ基準フレーム(RU1)の方位および位置を推定するように、観察された前記基準プラットフォーム(1)の幾何特徴を、前記計算手段(16)のメモリ(17)に記憶された前記基準プラットフォーム(1)のデジタルモデルと比較するステップと、
前記第1ユーザ基準フレーム(RU1)における前記ターゲット(24、25)の座標を計算するステップと、
前記ターゲット(24、25)を定位可能とする少なくとも1つの仮想レチクル(22)を、前記第1ユーザ()の前記拡張現実観察手段(11)に表示するステップと、
を備える、ターゲットの定位を支援する方法。
【請求項2】
前記マスタ基準フレーム(RM)における前記ターゲット(24)の前記座標は前記基準プラットフォーム(1)から送信され、少なくとも1つのマスタ観察手段(23)は前記基準プラットフォーム(1)に装着されており、前記基準プラットフォーム(1)はターゲット指定手段に連結しており、前記ターゲット指定手段は前記マスタ基準フレーム(RM)における前記ターゲット(24)の前記座標を判断することを可能とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記マスタ基準フレームにおける前記ターゲット(25)の前記座標は観察装置(26)を装着している第2ユーザ(7)によって送信され、前記第2ユーザ(7)が装着している観察装置(26)は、計算手段(16)に連結しており、通信手段(18)と関連し、第2ユーザ(7)はターゲットを指定させえる手段を有する、請求項1に記載のターゲットの定位を支援する方法。
【請求項4】
第2ユーザ(7)は、前記第1ユーザ(6)の前記拡張現実観察手段(11)と同様な拡張現実観察手段(11)を含む観察装置(26)を装着しており、第2ユーザ基準フレームと呼ばれる第2ユーザ空間的方位基準フレーム(RU2)は、前記観察装置(26)のデザインによって定義されており、前記第2ユーザ(7)の前記観察装置(26)と関連し、
前記ターゲットの定位を支援する方法において、
前記第2ユーザ(7)は、前記第2ユーザ基準フレーム(RU2)においてターゲット(25)が指定されるべき前記座標を判断し、
前記第2ユーザ(7)は、少なくとも1つのカメラ(13)から前記基準プラットフォーム(1)を観察し、前記カメラ(13)が、前記第2ユーザ(7)によって支持され、前記第2ユーザ(7)によって支持された前記支持板(12)に固定されており、前記第2ユーザ(7)の前記拡張現実観察手段(11)を支持し、
前記マスタ基準フレーム(RM)に対する前記第2ユーザ基準フレーム(RU2)の方位および位置を推定するように、観察された前記基準プラットフォーム(1)の幾何特徴が、記計算手段(16)のメモリ(17)に記憶された前記基準プラットフォーム(1)のデジタルモデルと比較され、
前記マスタ基準フレーム(RM)において前記ターゲット(25)が指定されるべき前記座標が計算され、
前記第2ユーザ(7)は、前記マスタ基準フレーム(RM)における前記ターゲット(25)の座標を前記第1ユーザ(6)に送信する、請求項3に記載のターゲットの定位を支援する方法。
【請求項5】
前記基準プラットフォーム(1)は車両から構成される、請求項1~4のいずれか1項に記載のターゲットの定位を支援する方法。
【請求項6】
前記基準プラットフォーム(1)の前記デジタルモデルは、前記車両の外部幾何特徴のモデルの少なくとも一部である、請求項5に記載のターゲットの定位を支援する方法。
【請求項7】
前記基準プラットフォーム(1)の前記デジタルモデルは、前記車両の内部幾何特徴のモデルの少なくとも一部である、または、前記車両の前記内部幾何特徴の前記モデルの少なくとも一部を含む、請求項5または6に記載のターゲットの定位を支援する方法。
【請求項8】
第1ユーザ(6)のための観察装置(26)であって、
前記観察装置は、通信手段(18)と関連する計算手段(16)に連結している拡張現実観察手段(11)を含み、本発明に係る方法が実行可能であり、
前記観察装置は、
前記第1ユーザ(6)の周りの空間を観察すること、および、基準プラットフォーム(1)の映像を取得することを可能とする少なくとも1つのカメラ(13)を強固に固定し支持する板(12)と、
メモリ(17)およびアルゴリズムを組み込んでいる前記計算手段(16)であって、前記メモリ(17)に前記基準プラットフォーム(1)のデジタルモデルが記憶されており、前記アルゴリズムが、
当該基準プラットフォーム(1)と関連するマスタ基準フレーム(RM)に対する、かつ、第1ユーザ基準フレームと呼ばれる前記第1ユーザ(6)の前記観察装置(26)の第1ユーザ空間的方位基準フレーム(RU1)の方位および位置を判断し、
前記マスタ基準フレーム(RM)から前記第1ユーザ空間的方位基準フレーム(RU1)に画像またはターゲットの座標を転換し、
前記第1ユーザ空間的方位基準フレーム(RU1)から前記マスタ基準フレーム(RM)に画像またはターゲットの前記座標を転換することを可能とする、前記計算手段(16)と、
前記板(12)に固定された、少なくとも1つの投影コリメータ(19)および少なくとも1つの半透明のブレード(20)を含む、前記拡張現実観察手段(11)と、
を備え、
各コリメータ(19)は前記画像を半透明のブレード(20)に表示可能であり、前記板(12)は、固い機械的支持を構成し、前記カメラ(13)、前記コリメータ(19)および前記半透明のブレード(20)の相対的な位置および角度方位を固定することを可能とする、観察装置。
【請求項9】
それぞれが視準器と関連する2つの半透明のブレード(20)を備える、請求項8に記載の観察装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、観察手段を装着しているユーザのためのターゲットの定位を支援することを可能とする方法の技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
観察手段は、ユーザに光景を見させる光学観察手段(optical viewing means)またはデジタル観察手段に特に関する。このような装置は、まびさし、双眼鏡、光学ゴーグル、ヘルメットゴーグルを搭載する拡張現実システムを特に含む。
【0003】
観察される対象物の情報を提供する埋め込み情報をターゲットの様子の上に重ね合わすのは一般的である。
【0004】
特許文献1および特許文献2は、遠隔のオペレータからの支援を用いてまたは用いずに保守タスク(maintenance task)を行うことに利用される拡張現実観察装置を示す。
【0005】
一般的に、観察される光景に対する観察手段(ゴーグルまたはヘルメット)の定位は、分析すべき対象物に配置されたマーカを用いて行われる。特許文献3はこのような技術を記載している。
【0006】
特許文献4も、自身の座標を観察者に送る特別なマーカを活動範囲(field)に配置することを記載している。
【0007】
そして、基準点が配置されえない未知の環境において観察者が移動するときに、困難点が生じる。
【0008】
ヘルメットから構成された観察装置をユーザに装着させる提案があり、当該ヘルメットは、環境を観察するための手段を提供し、相関の連続撮影画像によってヘルメットの動きの評価を行うために後者の等価分析(constant analysis)を行う。特許文献5はこのようなヘルメットを記載している。快速に変化しえる環境において演算性能に対して困難点が生じる。ヘルメットの取得可能な空間的位置の正確さに対しても、もう1つの困難点が生じる。
【0009】
軍事活動または平和維持活動において、観察手段内に基準点または基準画像を動的に配置することを可能とするために、例えば、制圧すべきターゲットを配置する必要があるとき、ヘルメットまたはゴーグルの方位(orientation)を非常に精確に定位する必要があるのは事実である。
【0010】
位置角度(location angles)には数ミリラジアン(milliradian、ミルとも呼ばれている)程度の精確さが必要である。
【0011】
いかなる場合においても即時の環境の下で活動範囲内に設置された固定の基準点がなく分析することは保証しにくい。すると、持続的にその空間的方位を測定可能なように、慣性プラットフォームを有するヘルメットを装着する必要が生じる。
【0012】
しかしながら、このような技術は扱いにくくて高価すぎるため適用できない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【文献】欧州特許第2942717号明細書
【文献】欧州特許第1451652号明細書
【文献】欧州特許第949513号明細書
【文献】米国特許出願公開第2007/0276590号明細書
【文献】米国特許第8831277号明細書
【発明の概要】
【0014】
本発明の目標は、ユーザのためのターゲットの定位を支援する方法を提供することであり、この方法において定位は簡単で迅速で行える。
【0015】
本発明に係る方法は軍事活動に適用可能であり、戦場において、異なるオペレータの間、および、歩兵と車両の乗組員との間での活動情報の通信を支援する。本発明に係る方法は平和維持活動にも適用可能であり、平和維持活動のために、活動範囲における車両から距離を置く場所にいるオペレータと活動情報を通信する必要なときがある。
【0016】
よって、本発明は、拡張現実観察手段を備える観察装置を装着している第1ユーザのためのターゲットの定位を支援する方法に関する。当該拡張現実観察手段は、支持板に固定されており、計算手段に連結しており、通信手段と関連する。基準プラットフォームは、活動範囲に配置されており、マスタ基準フレーム(master reference frame)と呼ばれる空間的方位基準フレーム(spatial orientation reference frame)を有し、第1ユーザ基準フレームと呼ばれる第1ユーザ空間的方位基準フレームが観察装置のデザインによって定義されており、第1ユーザの観察装置と関連する。
ターゲットの定位を支援する方法は、
プラットフォームから、または、通信手段を介して第2ユーザによって、マスタ基準フレームにおけるターゲットの座標を第1ユーザに送信するステップと、
第1ユーザによって、少なくとも1つのカメラから基準プラットフォームを観察するステップであって、カメラが、第1ユーザによって支持された板に固定されており、拡張現実観察手段を支持する、観察するステップと、
マスタ基準フレームに対する第1ユーザ基準フレームの方位および位置を推定するように、観察されたプラットフォームの幾何特徴(geometry)を、計算手段のメモリに記憶されたプラットフォームのデジタルモデルと比較するステップと、
第1ユーザ基準フレームにおけるターゲットの座標を計算するステップと、
ターゲットを定位可能とする少なくとも1つの仮想レチクルを、第1ユーザの拡張現実観察手段に表示するステップと、を備える。
【0017】
1つの特定の実施例において、マスタ基準フレームにおけるターゲットの座標はプラットフォームから送信されてもよく、少なくとも1つのマスタ観察手段はプラットフォームに装着されており、プラットフォームはターゲット指定手段に連結しており、ターゲット指定手段はマスタ基準フレームにおけるターゲットの座標を判断することを可能とする。
【0018】
もう1つの実施例において、マスタ基準フレームにおけるターゲットの座標は観察装置を装着している第2ユーザによって送信され、第2ユーザが装着している観察装置は、計算手段に連結しており、通信手段と関連し、第2ユーザはターゲットを指定させえる手段を有する。
【0019】
有益なことに、第2ユーザは、第1ユーザの拡張現実観察手段と同様な拡張現実観察手段を含む観察装置を装着しており、第2ユーザ基準フレームと呼ばれる第2ユーザ空間的方位基準フレームは、観察装置のデザインによって定義されており、第2ユーザの観察装置と関連する。
ターゲットの定位を支援する方法において、
第2ユーザは、第2ユーザ基準フレームにおいてターゲットが指定されるべき座標を判断し、
第2ユーザは、少なくとも1つのカメラから基準プラットフォームを観察し、カメラが、第2ユーザによって支持され、第2ユーザによって支持された板に固定されており、第2ユーザの拡張現実観察手段を支持し、
マスタ基準フレームに対する第2ユーザ基準フレームの方位および位置を推定するように、観察されたプラットフォームの幾何特徴が、計算手段のメモリに記憶されたプラットフォームのデジタルモデルと比較され、
マスタ基準フレームにおいてターゲットが指定されるべき座標が計算され、
第2ユーザは、マスタ基準フレームにおけるターゲットの座標を第1ユーザに送信する。
【0020】
1つの実施例に基づくと、プラットフォームは車両から構成される。
【0021】
プラットフォームのデジタルモデルは、車両の外部幾何特徴のモデルの少なくとも一部であってもよい。
【0022】
プラットフォームのデジタルモデルは、車両の内部幾何特徴のモデルの少なくとも一部であってもよく、または、車両の内部幾何特徴のモデルの少なくとも一部を含んでもよい。
【0023】
本発明は第1ユーザのための観察装置にも関する。観察装置は、通信手段と関連する計算手段に連結している拡張現実観察手段を含み、本発明に係る方法が実行可能である。
観察装置は、
第1ユーザの周りの空間を観察すること、および、プラットフォームの映像を取得することを可能とする少なくとも1つのカメラを強固に固定し支持する板と、
メモリおよびアルゴリズムを組み込んでいる計算手段であって、メモリにプラットフォームのデジタルモデルが記憶されており、アルゴリズムが、
当該プラットフォームと関連するマスタ基準フレームに対する、かつ、第1ユーザ基準フレームと呼ばれるユーザの観察装置の第1ユーザ空間的方位基準フレームの方位および位置を判断し、
マスタ基準フレームから第1基準フレームに画像またはターゲットの座標を転換し、
第1基準フレームからマスタ基準フレームに画像またはターゲットの座標を転換することを可能とする、計算手段と、
板に固定された、少なくとも1つの投影コリメータおよび少なくとも1つの半透明のブレードを含む、拡張現実観察手段と、
を備える。
各コリメータは画像を半透明のブレードに表示可能であり、板は、固い機械的支持を構成し、カメラ、コリメータおよび半透明のブレードの相対的な位置および角度方位(angular orientation)を固定することを可能とする。
【0024】
有益なことに、観察装置は、それぞれが視準器と関連する2つの半透明のブレードを備えてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0025】
1つの特定の実施例について、添付図面を参照した以下の説明によれば、本発明はよりよく理解されるであろう。
図1】活動範囲における本発明の実施を概略的に示す図
図2】本発明に係る観察装置をさらに詳細に示す図
図3図2に係る観察装置の概略的な上面図
【発明を実施するための形態】
【0026】
図1は車両1が中に移動する軍事(または平和維持)の活動戦域を示し、当該車両1は、武器システム3を支持する砲塔2が装着されて、武装された車両である。
【0027】
図1は、頭が車室から外へ出た車両の運転手4、および、同様に頭が砲塔2から外へ出た車両のもう1人の乗員5、例えば、車両長(vehicle chief)またはシュータ5を示す。2人の武装した歩兵6および武装した歩兵7も活動範囲で移動している。
【0028】
各歩兵は個別の武器8を装着して筐体9を負っており、筐体9は、通信手段と関連するポータブル計算手段と、概略的に示されているアンテナ10とを収納する。通信手段は各歩兵6、7が他方の歩兵および車両1の乗員と通信することを可能とする。
【0029】
このような通信手段は既知である。通信手段はヘルツ波(Hertzian waves)を利用し音声とデータ交換とを組み合わせることが一般的である。
【0030】
各歩兵は拡張現実観察手段11を含む観察装置26も装着しており、当該拡張現実観察手段11は拡張現実ゴーグルの形式で概略的に示されている。
【0031】
これらの拡張現実観察手段は、筐体9に置かれた計算手段と連結しており、進行中に任務に関する画像または情報や、他方の歩兵によってまたは車両の乗員によって送信された情報を、視野に重ね合わすように示すことを可能とする。
【0032】
本発明に基づくと、観察装置26は支持板12に固定された拡張現実観察手段11を含み、板には、当のユーザの周りの空間を観察することを可能とする少なくとも1つのカメラ13も強固に固定し支持される。
【0033】
図1は、各ユーザに着用されたヘルメットによる支持板12を概略的に示す。カメラ13はヘルメットの頂部に固定されている。
【0034】
カメラまたは一群のカメラは規定されているため、ユーザを中心にして実質的な360°の角度カバー範囲(angular coverage)を有するカメラ13の観察視野14が保証される。広視野カメラを選択すること(によって広角レンズを選択すること)が可能であるが、比較的狭いレンズ角度も選択可能である。比較的狭いレンズ角度を選択した場合、所望の角度カバー範囲(360°)を保証するようにカメラの数を増やす必要がある。
【0035】
技術的な原因のため、この360°のカバー範囲はユーザから所定距離(例えば、少なくとも1メーター)内のみ有効である。特に、ユーザがヘルメットの周囲に分布している複数のカメラ13を着用する場合、盲点は存在し、ユーザに近づくときのみ、離れたところに交差するカメラの視野は360°のカバー範囲を提供する。具体的に、視野が十分に広いように選択されるため、後述するように、カメラ13は、ここでは車両1から構成された基準プラットフォームの少なくとも一部の観察を常に提供する。
【0036】
図1において、示された角度セクタ(angular sector)14は、実質的な球面形状を有することによってユーザを中心にする360°を確実にカバーする際の空間カバー範囲のセクタである。上方および下方に向かう盲点は操作上に阻害にならない。図1から見られるように、車両の運転手4および車両長5も拡張現実観察手段11を含んだ観察装置26を装着しており、当該装置は歩兵6および歩兵7の装置と同様である。
【0037】
図2および図3は、ヘルメットに固定された、本発明に係る観察装置26の構造をさらに詳細に示す。
【0038】
これらの図面において、ヘルメットは示されていないが、板12は観察手段11およびカメラ13を支持するために提供されることが確認できる。図示された例示に基づくと、板12は、垂直軸15の周囲において角度上規律に分布している4つのカメラ13を支持するため、これらのカメラの観察視野が360°を重なり合っていることが保証される。
【0039】
図2において、筐体9は、メモリ17を組み込んでいる計算手段16、および通信手段18を収納することも概略的に示されている。
【0040】
説明を簡略化するために、図面は、筐体9に収納された計算手段16が歩兵によって支持されていることを示す。計算手段は専用の筐体9以外のところに構造的に配置されうること、例えば、ヘルメットに固定された板12によって支持されうることも当然に理解されるであろう。計算手段はカメラ13に関連する電子回路に組み込まれてもよい。これらの計算手段は、いかなる場合でも当のユーザによって支持されるため、「ポータブル」の性質を維持する。
【0041】
拡張現実観察手段11は、板12に固定された、少なくとも1つの投影コリメータ19と少なくとも1つの半透明のブレードとを含む。
【0042】
一般的に、コリメータ19は関連する半透明のブレード20に画像を表示することを可能とする。
【0043】
ここで示された観察装置26は2つの半透明のブレード20を含み、ユーザの両眼21のそれぞれの前に1つの半透明のブレード20が配置されている。観察装置26は2つの投影コリメータ19を含み、半透明のブレード20のそれぞれの前に投影コリメータ19が配置されている。ブレード20とコリメータ19とも板12に対して強固に固定されている。2つの半透明のブレードを利用することにより、空間の立体映像(stereoscopic vision)、および、適用される2つのコリメータによって投影される映像を提供し、浮き上がった画像をユーザに与えることが可能となる。
【0044】
一般的に、各コリメータ19は自身に関連する半透明のブレード20に、計算手段16によって提供された情報、および、ユーザの環境空間について有する視野を補完する情報を表示することを可能とする。
【0045】
特に、本発明に係る方法に従い、コリメータ19は画像をブレード20に投影することを可能とし、ここにおける当該画像はターゲットの定位を可能とする仮想レチクル22である。
【0046】
板12は固い機械的支持を構成し、カメラ13、コリメータ19および半透明のブレード20の相対的な位置および角度方位を固定することを可能とする。
【0047】
よって、板12は、空間におけるユーザの観察手段11の方位基準フレーム、またはユーザ基準フレーム(RU)を実施する。
【0048】
もちろん、仮想レチクル以外の画像を半透明のブレード20に表示することも可能であり、当該画像は、例えば、ターゲットの浮き上がった拡大画像、および、活動範囲の偵察活動を促進するなどのためにプラットフォームによって送信された拡大画像、または、活動範囲に存在する要素もしくは対象物に関連する情報である。
【0049】
本発明に係る方法の目標は、対象物(例えば、ターゲット)の定位情報を、ユーザの観察方向の精確の座標を知る必要がなく、通信手段18を介してユーザに動的に送信することを可能とすることである。
【0050】
そのために、本発明に基づくと、ここでは車両1である基準プラットフォームが考えられ、当該基準プラットフォームは、活動範囲に配置されているので、以下にマスタ基準フレーム(図1を参照)と呼ばれる方位空間基準フレーム(orientation spatial reference frame)RMを有する。
【0051】
さらに、観察装置26のデザインによって、また、板12によって保証されたカメラ13と観察手段11との間の固い接続の結果として、第1ユーザ(例えば、歩兵6)に対して、第1ユーザ基準フレームRU1と呼ばれる第1ユーザ空間的方位基準フレームを定義することが可能となる。この第1ユーザ基準フレームは第1ユーザ6の観察装置26と関連する(図11を参照)、第1ユーザ6の観察手段11とも関連する。
【0052】
プラットフォームまたは車両1には少なくとも1つのマスタ観察手段23が装着され、マスタ観察手段23は(ここではマスタ観察手段23に組み込まれた)ターゲット指定手段と連結している。
【0053】
ターゲット指定手段は当業者に知られている。ターゲット指定手段は一般的には、レーザなどのテレメータと、マスタ基準フレームRMに対する照準線LVの方位を計算するための手段とを備える。これらの手段はマスタ基準フレームRMにおけるターゲット24の座標を判断すること可能とする。
【0054】
そして、これらの座標は車両1内にあるすべての視聴画面に利用可能であり、車両1に関する方位が知られる人のこれらの画面で目視されたターゲットが定位可能となる。
【0055】
発明に基づくと、マスタ基準フレームRMにおけるターゲット24の座標が通信手段18を介して第1ユーザ6に送信される(ステップ80)。もちろん、車両自体は、これらの座標を第1ユーザに送信可能な通信手段(例えば、ヘルツ波を利用する通信手段)を装着している。図1は、ブロック18aによって、アンテナ10aに関連する車両の通信手段を概略的に示す。
【0056】
一方、持続的に、第1ユーザ6に支持されたカメラ13基準プラットフォーム1を観察することを可能とする。
【0057】
適したアルゴリズムは、基準プラットフォーム1の画像を当該プラットフォームの即時のデジタルモデル(ステップB)に転換することを可能とする。
【0058】
プラットフォームの実際のデジタルモデルは、すでに第1ユーザに支持された計算手段16のメモリ17に記憶されている。このデジタルモデルはプラットフォームのコンピューター支援設計から得る。これは3次元モデルであり、ユーザに見られない(隠し形式の)プラットフォームのデータから削除されるのみである。
【0059】
もちろん、このデジタルモデルは実際の車両の寸法的要素を組み込んでおり、当該寸法的要素は、所定サイズの車両の画像から、ユーザと車両との距離を判断することを可能とする。
【0060】
よって、観察されたプラットフォーム1の幾何特徴(即時デジタルモデル)と、ポータブルの計算手段16のメモリ17に記憶された基準モデルとの比較が行われる(ステップC)。
【0061】
結果として、この比較は、比較アルゴリズムを用いて、マスタ基準フレームRM(の軸の角度)に対する第1ユーザ基準フレームRU1の軸の方位を推定し、マスタ基準フレームRMに対する第1ユーザ基準フレームRU1の位置(マスタ基準フレームRMにおいて第1ユーザ基準フレームRU1の中心の場所)を推定することを可能とする。この比較は頭字語SLAM(スラム、Simultaneous Localization And Mapping、同時に自己位置推定と環境地図作成)で知られる画像比較アルゴリズムによって実行される。これらのアルゴリズムは当業者に知られており、ここで詳細に説明する必要がない。これらのアルゴリズムは、最良相関を得るのに必要な軸の方向の変化を判断するために、フィルタ処理技術(カルマンフィルタ処理、確率的フィルタ処理(probabilistic filtering))を実行することによって画像比較を実施することに注意すべきである。よって、マスタ基準フレームRMにおいて第1ユーザ基準フレームRU1の座標が判断可能であり、マスタ基準フレームRMに対する第1ユーザ基準フレームRU1の軸の方位も判断可能である。
【0062】
次に、第1ユーザ基準フレームRU1におけるターゲット24の座標を簡単に計算する(ステップD)。これは、ターゲット24を定位可能とする仮想レチクル22を、第1ユーザの拡張現実観察手段11に表示することを可能とする。
【0063】
もちろん、まずはユーザの形態的特徴(両眼間の間隔、両眼から半反射のブレードまでの距離、ブレードとカメラとの間の距離)に対して観察装置26の観察手段11を較正する必要がある。ユーザからプラットフォーム1の一部しか見えない場合であっても、CADから得たデジタルモデルは位置のロバスト性の保証に十分に精確である。このモデルによって、ユーザとプラットフォームとの間の妨害、プラットフォームの部分的かつ一時的な潜伏による妨害などの存在(例えば、他のユーザが視野にはいってくること)によって混乱することがなくなる。
【0064】
よって、本発明は、板12に固定された慣性プラットフォームの利用を完全になくすことを可能とする。CADから得たデジタルモデルの精確さは、数ミリラジアンより少ない角度ずれの範囲内でマスタ照準線LVの座標を判断可能とするため、定位の精確さが優良である。
【0065】
本発明は、車両1に対するいかなるユーザの定位を可能とし、車両1自体からだけではなく、本発明に係る観察装置26を装着している他のユーザ、例えば、歩兵7から、ターゲット25を指定することも可能とし、当該観察装置26は、ポータブルの計算手段16と連結する観察手段11を含み、通信手段18に関連する。第2ユーザ7もターゲットを指定させえる手段、例えば、レーザ指定器、または三角測量方法を実行する受動的手段を装着している。
【0066】
よって、第2ユーザ7は、自身のユーザ基準フレームRU2においてターゲット25に対する自身の照準線LV2の座標が判断可能となる。
【0067】
第2ユーザ7が常にそのカメラ13を用いて車両1を観察し、かつ、前述したように画像相関によってアルゴリズムがマスタ基準フレームRMに対するユーザ基準フレームRU2の位置および方位を保証するので、第2ユーザ7はマスタ基準フレームRMにおけるユーザ基準フレームRU2の方位および位置を知っている。
【0068】
よって、第2ユーザ7はマスタ基準フレームRMにおける新たなターゲット25の座標を第1ユーザ6に送信することができる。
【0069】
第1ユーザ6は続いて、前述したように、本発明に係る方法を実行し、自身のユーザ基準フレームRU2における当該新たなターゲット25の座標を計算する。
【0070】
いかなる場合においても、本質は各ユーザがそのカメラ13を用いて車両1を観察する可能性にある。ユーザは続いて自身を空間において定位することができ、マスタ基準フレームRMは、車両から降りてかつ車両の周囲に分散しているすべてのユーザに対する基準とされる。現在の光学システムによって、車両から数十メーター程度の範囲内では所望の定位精確さを有する定位が可能となる。
【0071】
本発明の1つの特徴に基づくと、ユーザは車両全体を目視する必要がない。SLAMアルゴリズムに対しては、実行されうる特徴的な部分がユーザの視野に入れば十分である。
【0072】
図1に示されているように、運転手4と車両長(またはシュータ)5とも、拡張現実観察手段11を含んで、歩兵6および歩兵7の観察装置26と同様な観察装置26を装着している。このような配置によって、乗組員が車室にいる(かつ光学ルートを介して活動範囲を観察する)か、またはその頭が車室から外へ出ているかにかかわらず、乗組員もその観察手段11でユーザに指定されるターゲットを見ることができる。
【0073】
車両を占めるユーザが所定位置に着いているかいまいかに関係なく指定機能における継続性を保証するために、プラットフォームの外部幾何特徴のデジタルモデルだけではなく、車両の内部幾何特徴の少なくとも一部のデジタルモデルも、メモリに組み込まれるべきである。メモリに記憶されるデジタルモデルの軽量化のために、内部幾何特徴のモデルは、オペレータに見られる車室の内部幾何の大部分に限定されるべきであり、車両において見られない部分が排除される。
図1
図2
図3