(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-02
(45)【発行日】2022-02-10
(54)【発明の名称】使い捨てペン式薬剤送達装置用およびその内部の回転式用量センシングモジュール
(51)【国際特許分類】
A61M 5/315 20060101AFI20220203BHJP
A61M 5/31 20060101ALI20220203BHJP
【FI】
A61M5/315 514
A61M5/31 520
(21)【出願番号】P 2019541335
(86)(22)【出願日】2018-01-22
(86)【国際出願番号】 EP2018051490
(87)【国際公開番号】W WO2018141571
(87)【国際公開日】2018-08-09
【審査請求日】2020-12-21
(32)【優先日】2017-02-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2017-02-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(32)【優先日】2017-12-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】596113096
【氏名又は名称】ノボ・ノルデイスク・エー/エス
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】アナスン, カーステン シャウ
(72)【発明者】
【氏名】ザケルイディ, デーヴィッド
(72)【発明者】
【氏名】ヴィーラント, ヤコブ エスト
(72)【発明者】
【氏名】ハーヴ, マシュー ウィリアム
(72)【発明者】
【氏名】マツザキ, ブレイク
(72)【発明者】
【氏名】キコス, グレゴリー エー
【審査官】上田 真誠
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-510241(JP,A)
【文献】特表2016-506845(JP,A)
【文献】特表2010-521276(JP,A)
【文献】特表2012-507314(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/31-5/315
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ペン式薬剤送達装置のための回転式用量センシングモジュールであって、
前記ペン式薬剤送達装置が、変位可能なピストン
付き薬剤充填カートリッジ、出口およびピストンロッドを備え、前記ピストンロッドが前記ピストンに向かって軸方向に移動することによって前記ピストンが変位してカートリッジから前記出口を通ってある用量の薬剤が放出され、軸方向の移動中に、前記ピストンロッドが前記ピストンに対して回転軸(A)の周りに回転するように構成され、
前記モジュールが、
・ (-)
端子および(+)端子を有する電源ユニットと、
・ 前記電源ユニットの前記(-)
端子および前記(+)端子に接続されたプロセッサユニットと、
・ センサユニットであって、
・ 用量放出中に回転しない前記送達装置の
部分に直接的または間接的に固定されるように適合された第一のセンサ部品であって、
可撓性プリント回路基板シートを含み、その第一の表面には複数の個々の導電性センサ領域が配置され、前記複数の個々の導電性センサ領域は、一部が前記電源ユニットの
前記(-)端子に電気的に接続され、
別の一部が前記プロセッサユニットに接続さ
れるようなパターンで配置され、前記可撓性プリント回路基板シート
は前記電源ユニットの周りに折り畳まれて固着し、前記第一の表面が前記電源ユニットの表面によって支持されるようになっている、第一のセンサ部品と、
・ 前記第一のセンサ部品の反対側に配置され、かつ前記ピストンロッドに直接的または間接的に固定され、用量放出中に前記ピストンロッド
に従動回転するように適合された、第二のセンサ部品であって、複数の電気的に接続された接触構造を備える、第二のセンサ部品とを含む、センサユニットとを含み、
前記接触構造
は、
前記複数の個々の導電性センサ領域のうち、前記電源
ユニットの前記(-)端子に接続された導電性センサ領域を介して、前記電源
ユニットの前記(-)端子に接続され
るが、前記第一のセンサ部品と前記第二のセンサ部品の間の相対的
な回転運動
につれて、異な
る導電性センサ領域
が前記プロセッサユニットに電気的に接続
されることとなって、
当該異なる導電性センサ領域
を介して、前記(-)端子と前記プロセッサユニットの間の電気回路
が閉じ、
その際の各電気的接続
によって前記プロセッサユニットに
発生する電気信号が、前記第一のセンサ部品と前記第二のセンサ部品間の
回転位置を
表し、前記プロセッサユニットが
当該電気信号を処理し
て、前記第一のセンサ部品と前記第二のセンサ部品の間の相対的回転量を決定し、
この決定した相対的回転量に基づいて、放出する用量サイズを計算するように適合されている、モジュール。
【請求項2】
前記電気回路が閉じられ
て、センサ領域
の電気信号が前記プロセッサユニット
に受信された後、前記電気回路
を前記センサ領域
から切り離す、電気スイッチ機構であって、前記プロセッサユニットによって制御される、
電気スイッチ機構をさらに含む、請求項1に記載のモジュール。
【請求項3】
前記電気スイッチ機構は、前記電気回路が閉じられ、センサ領域
の電気信号が前記プロセッサユニット
に受信され
てから所定時間後、前記電気回路を前記センサ領域
から切り離すプルアップ抵抗器
を備え、
当該プルアップ抵抗器は前記プロセッサユニットによって制御される
、請求項2に記載のモジュール。
【請求項4】
前記
複数の個々の導電性センサ領域は、前記第一のセンサ部品の前記第一の表面上の中心軸(B)の周りに円周方向に分布し、
モジュールはさらに軸受カップ部品を含むセンタリング要素を備え、当該センタリング要素の中心軸(C)が
前記複数の個々の導電性センサ領域の中心軸(B)と一致するように、
当該センタリング要素は前記第一のセンサ部品に対して配置さ
れ、前記軸受カップ部品は、用量放出中、
前記ピストンロッドの回転軸(A)が前記
複数の個々の導電性センサ領域の中心軸(B)と一致
している状況下で、前記ピストンロッドの遠位先端部を維持するように適合されている、請求項1から
3のいずれか
に記載の
モジュール。
【請求項5】
前記第二のセンサ部品は、前記ピストンロッドの前記遠位先端部の一部を形成するように適合され、前記軸受カップ部品は、用量放出中、
前記ピストンロッドの回転軸(A)が前記
複数の個々の導電性センサ領域の中心軸(B)と一致
している状況下で、前記遠位先端部を形成する前記第二のセンサ部品の
部分を受けて維持するように適合されている、請求項
4に記載の
モジュール。
【請求項6】
前記軸受カップ部品は、導電性材料からなり、前記電源ユニットの前記(-)端子に電気的に接続されており、前記第二のセンサ部品は、前記軸受カップ部品内に維持さ
れている場合には、前記軸受カップ部品に電気的に接続される、請求項
4または5に記載の
モジュール。
【請求項7】
前記プロセッサユニットが、前記可撓性
プリント回路基板シート上に配置される、請求項1~
6のいずれかに記載のモジュール。
【請求項8】
用量サイズデータを外部ユニットに無線で通信するための通信ユニットをさらに備える、請求項1~
7のいずれかに記載のモジュール。
【請求項9】
前記導電性センサ領域が配置されている前記第一の表面が、前記
ピストンロッドの回転軸(A)と実質的に垂直に、またはそれと平行に延在する、請求項1~
8のいずれかに記載のモジュール。
【請求項10】
ペン式薬剤送達装置と組み合わせた、請求項1~9のいずれかに記載のモジュールであって、
前記ペン式薬剤送達装置は、ハウジン
グ、変位可能なピストン
付き薬剤充填非交換式カートリッ
ジ、出口、およびピストンロッドを備え、前記ピストンロッドが前記ピストンに向かってが軸方向に移動することで前記ピストンが変位することによって、前記カートリッジから前記出口を通ってある用量の薬剤が放出され、軸方向の移動中に、前記ピストンロッドが前記ピストンおよび前記ハウジングに対して回転するように構成され、
モジュールの前記第一のセンサ部品
は、前記ハウジングと前記第一のセンサ部品との間の相対的回転が不可能であるように、直接または間接的に前記ハウジングに係合し、
モジュールの前記第二のセンサ部品
は、前記ピストンロッドと前記第二のセンサ部品との間の相対的回転が不可能であるように、直接または間接的に前記ピストンロッドに係合する、
モジュール。
【請求項11】
用量放出中に前記ピストンロッドが、モジュールに遠位方向の力を及ぼし、前記力がモジュールによって前記ピストンに伝達され、前記電源ユニットは、前記ピストンロッドから前記ピストンに前記力を伝達する負荷受け部品を構成する
、請求項
10に記載のペン式薬剤送達装置と組み合わせたモジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ペン式薬剤送達装置用およびその内部の用量センシングモジュールに関する。特に、本発明は、使い捨てのペン式薬剤送達装置に統合するかまたは統合するための費用効果が高く、コンパクトで信頼性のある電子式回転用量サイズセンサモジュール、つまり外部デバイスに用量データを外部装置に通信することもできるモジュールを提供するという問題に対処する。
【背景技術】
【0002】
糖尿病において、必要なインスリン注射を適切なタイミングで適切な用量サイズで行うことは、疾患を管理するために不可欠である。すなわち、特定のインスリン投与レジメンを順守することは、血糖値をコントロールし、低血糖/高血糖症状のリスクを最小限に抑えるために重要である。患者が推奨インスリン投与レジメンに従っているかどう患者自身またはHCPが見るのを可能にするために、用量サイズおよび各投与なされた時刻のログが維持されることが望ましい。推奨される用量および/または必要に応じて、現在の投与レジメンに対する調整に対するガイダンスを可能にするために、これらのデータを、さらなる解析のために外部ソース、例えば携帯電話、サーバーまたはクラウドに転送することができる場合には、さらにより良くなりうる。
【0003】
用量データ取り込みの別の目的は、当局、支払者、およびプロバイダーが、毎日インスリン薬剤の有効性を実証する実際のデータをますます要求していることである。医薬品は、臨床試験を通して得られたデータに基づき、世界中の市場における市場での販売のために承認される。しかしながら、臨床試験では、患者は特定の基準を満たすよう注意深く選択され、すべての患者は治療レジメンへの遵守のために密接に監視される。しかしながら、日常生活習慣が障害となり、人々が異なっており、投与がなされず、その他の状況が病気の進捗を悪化させうる、臨床試験の外側の実際の世界では、これは当てはまらない。これらのすべての変数により、実際の世界で患者の治療の結果は、多くの場合、所与の薬剤がマーケティングのために承認される元となる臨床データを反映しない。これを考慮すると、注射の用量サイズおよびタイミングを追跡し、このデータを例えば、HCPにさらに伝達することが大きな関心がある。これにより、患者が糖尿病治療に順守し、患者が推奨用量パターンに従っている場合、フォロウし、そうでない場合、彼らに気づかせ、必要に応じて用量サイズの調整への推奨を行うことが可能である。これはすべて、患者に与えられるインスリン薬剤の効果を最適化することを目的とし、それによって彼らの生命を糖尿病患者として改善するだけでなく、治療のさらなる改善に使用される実際のデータも得る。
【0004】
最も一般的に使用される薬剤送達装置の一つは、ペン式注射装置である。これらの装置に具体化されている放出機構のタイプに応じて、放出機構は、用量設定中に歪んでから解放されてピストンロッドをペンの遠位端に向かって駆動してピストンを薬剤充填カートリッジ内に前進させ、それによって解放ボタンが作動されると用量を放出するばねを含み得る。別の方法として、放出機構は完全に手動であってもよい。こうしたタイプの注射装置については、放出機構はしばしば、回転部品(例えば、ピストンロッドおよび/またはピストンロッドを駆動する駆動チューブであり、これはカートリッジ内でピストンに対して回転する)および/または装置内の別の非回転部品を含む。放出された用量サイズを捕捉する方法は、放出機構の回転部品と非回転部品の間の相対的回転の数を検出し、その後、相対的回転に基づいて、放出された薬剤の排出量を決定することである。
【0005】
データ捕捉/監視機能は、以前の注射装置に対して提案されてきた(例えば、国際公開第2010/052275号および米国特許第7,008,399号を参照のこと)。ただし、ほとんどの装置はデータを捕捉することはない。また、注射装置への耐久性の高いアドオンモジュールが提案されてきたが(例えば、国際公開第2010/098927号を参照)、アドオンにはユーザーが注射ペンおよび血糖測定機器の他に、さらなる装置を保持する必要がある。また、耐久性のあるペン式装置用の統合用量捕捉ユニットを提供することも提案されてきた(国際公開第2014/128155号を参照)。
【0006】
米国特許出願公開第2016/015903号および国際公開第2006/045523号などの用量検出機構がさらに参照される。
【0007】
国際公開第2008/113772号は、送達システムに挿入された特定のタイプの容器の識別を容易にする容器認識機能を有する送達システムを記述する。
【0008】
米国特許出願公開第2016/0263327号は、放出された薬剤の量に関連する情報を表示するように構成された指標手段を含む医療装置に言及する。
【0009】
今日、インスリン患者の相当の部分は、それらの薬剤、例えば、インスリンまたはGLP-1またはそれらの組み合わせを注入するためにあらかじめ充填された薬剤カートリッジを有する使い捨てのペン式装置を使用する。ところが、耐久性のある注射ペンと反対に、あらかじめ充填されている非交換可能薬剤カートリッジを備えた使い捨てのペンは、通常、それらのFMC(フル製造原価)が低く保たれる必要があるため、通常は安い構成要素で作製される。このため、現在市場における使い捨てのペンには、用量データ捕捉ユニット、プロセッサ、電源、などの統合電子回路が装備されていない。ゆえに、使い捨てのペンのアドオン装置のみが存在する理由がある。
【0010】
上記を考慮して、本発明の目的は、送達装置が、ペン式装置に付属のアドオンアクセサリを必要とせずに、用量データ(サイズおよび時刻)を正確に検出することを可能にする使い捨てのペン式薬剤送達装置に一体化されるまたは一体化されている、費用効果が高く、コンパクトで信頼性のある回転センサモジュールを提供することである。
【0011】
本発明のさらなる目的は、送達装置が、用量データ(サイズおよび時刻)を正確に検出することを可能にする使い捨てのペン式薬剤送達装置に一体化されるまたは一体化されている、費用効果が高く、コンパクトで信頼性のある回転センサモジュールを提供し、ペン式装置に付属のアドオンアクセサリーを必要とせずに、これらのデータを外部装置にさらに通信することである。
【0012】
本発明のなおさらなる目的は、用量データ(サイズおよび時刻)の検出を可能にする、使い捨てのペン式薬剤送達装置に組み込まれる、費用効果が高く、コンパクトで信頼できる回転センサモジュールを提供し、そしてこれらのデータを、モジュールを既存の装置に統合するには装置のわずかな変更が必要である外部装置に伝達することである。
【0013】
本発明のさらに別の目的は、用量放出機構を駆動するために最小限の付加トルクを要する、注射装置に組み込まれる、または注射装置内に組み込まれている、コンパクトで信頼性のある正確な回転センサモジュールを提供することである。
【発明の概要】
【0014】
本発明の開示では、上記の物体のうちの一つまたは複数に対処する実施形態および態様が記載されるか、または以下の開示および典型的実施形態の説明から明らかな物体に対処する実施形態および態様が記載される。
【0015】
第一の態様によれば、変位可能なピストンおよび出口および、前記ピストンを変位させるため、前記ピストンに向かう方向に軸方向に前進し、ゆえにカートリッジから前記出口を介して用量の薬剤を放出するピストンロッドであって、軸方向移動中に回転軸(A)の周りに前記ピストンに対して回転する、ピストンロッドを有する薬剤充填カートリッジを備えたペン式薬剤送達装置用の回転式用量センシングモジュールが提供される。センシングモジュールは、(-)および(+)端子を有する電源ユニットと、前記電源ユニットの前記(-)および前記(+)端子に接続されたプロセッサユニットと、用量放出中に回転しない前記送達装置の一部に直接的または間接的に固定されるように適合された第一のセンサ部品であって、あるパターンで配置される複数の個々の導電性センサ領域であって、その一部が前記電源ユニットの(-)端子に電気的に接続され、その一部が前記プロセッサユニットに接続されている、複数の個々の導電性センサ領域が配置される、第一の表面を有する、可撓性プリント回路基板シートを含む、第一のセンサ部品と、前記第一のセンサ部品の反対側に配置され、かつ前記ピストンロッドに直接的または間接的に固定され、用量放出中に前記ピストンロッドの回転に従うように適合された、第二のセンサ部品であって、複数の電気的に接続された接触構造を備える、第二のセンサ部品と、を含む、センサユニットとを含み、前記接触構造が、前記電源の前記(-)端子に接続された導電性センサ領域を介して、前記電源の前記(-)端子に接続され、前記接触構造が、前記第一のセンサ部品と前記第二のセンサ部品の間の相対的回転運動のとき、異なる個々の導電性センサ領域を前記プロセッサユニットに電気的に接続し、ゆえに、前記異なる導電性センサ領域に対し、前記(-)端子と前記プロセッサユニットの間の電気回路を閉じ、各電気的接続が、電気信号を前記プロセッサユニットに生成し、前記第一のセンサ部品と前記第二のセンサ部品間の前記回転位置を示し、前記プロセッサユニットが前記信号を処理し、前記第一のセンサ部品と前記第二のセンサ部品の間の相対的回転量を決定し、ゆえに、前記決定した相対的回転量に基づいて、放出する用量サイズを計算するように適合されている。
【0016】
導電性センサ領域および接触構造は、電源ユニットおよびプロセッサユニットと異なって接続されてもよく、また依然としてプロセッサユニットに信号を生成することが理解されるべきである。例えば、導電性センサ領域は、(-)端子に接続することができるが、接触構造は、プロセッサユニットを介して(+)端子に接続されてもよい。
【0017】
可撓性プリント回路基板(PCB)シートを使用することで、固く厚いPCBを使用することに比較して非常にコンパクトなモジュールを取得できる。さらに、電源ユニットへの電気的接続は、固いPCBを使用するよりも可撓性PCBを使用することにより容易である。可撓性プリント回路基板シートは、例えば、電源ユニットの周りに折り畳み、および貼り付けることができる。この場合、第一のセンサ部品の第一の表面は、電源ユニットの面によって支持され得る。さらに、実施形態の一つに関連して以下にさらに説明するように、可撓性のPCBシートを使用することにより、電源ユニットの一方の側を、センサユニットの導電表面領域として利用することができる。
【0018】
センサユニットは、回転センサの原理に基づいているが、ここで導電性センサ領域は電気回路と導電接触の内外で切り替えられ、その原理は、非常に信頼性の高い投薬量感知を提供する。さらに、このようなシステムは動作するのに最小限の電力が必要とされるので、電源ユニットのサイズを制限することができ、したがってほとんど空間が必要ない。さらに、センサユニットに対する電力要件が制限されるので、電源のコストは低く維持されうる。
【0019】
第二のセンサ部品の構造は、例えば、
図4および11の実施形態に示す通り、導電性センサ領域に直接電気接点を提供する導電性材料を含む。しかしながら、代替として、センサユニットからの電気信号は、第二のセンサ部品の接触構造と個々の導電性センサ領域との間の他の電気的相互作用に基づいて生成されうる。こうした相互作用は、容量的または抵抗的または誘導的な相互作用でありうる。
【0020】
モジュールは前記電気回路が閉じられ、センサ領域に対し前記プロセッサユニットによって電気信号が受信された後、前記電気回路を、前記センサ領域に開く、電気スイッチ機構であって、前記プロセッサユニットによって制御される、スイッチ機構をさらに含んでもよい。
【0021】
前記電気スイッチ機構は、前記電気回路が閉じられ、センサ領域に対し前記プロセッサユニットによって電気信号が受信された後、前記電気回路を前記センサ領域に開くプルアップ抵抗器であって、前記プロセッサユニットによって制御される、プルアップ抵抗器を含んでもよい。センサの移行をモニタリングするためのすべての時間、センサ領域に電源をいれる必要があるわけではないため、これは効果的に電力を節約することになる。
【0022】
ところが、この特定のセンサ領域の次のセンサ移行の検出は、プルアップ抵抗器によって電気回路が開いているので検出されない。この問題を減少させる方法は、プルアップ抵抗器のインテリジェント制御を実施することである。最初に、すべての開放電気回路のプルアップ抵抗器のみが起動される。センサ移行が検出されると、すべてのプルアップ抵抗器が起動され、プロセッサユニット内のソフトウェアがすべてのセンサ移行を検出し、タイマが起動されるようになる。センサ移行が検出されるたびに、タイマは元の値にリセットされ、タイマがタイムアウトになると、システムは、開いた電気回路のプルアップ抵抗器のみが起動するように戻る。センサは、検出された遷移の間および直後に電力を消費するが、静的なときは電力ゼロである。
【0023】
前記個々の導電性センサ領域は、前記第一のセンサ部品の中心軸(B)の周りに円周方向に分布してもよく、モジュールは、中心軸(C)を有し、前記中心軸(C)が中心軸(B)と一致するように、前記第一のセンサ部品に対して配置された軸受カップ部品であって、用量放出中、前記中心軸(A)が前記中心軸(B)と一致する位置に、前記ピストンロッドの遠位先端部を維持するように適合されている、軸受カップ部品を有するセンタリング要素をさらに備える。
【0024】
軸受カップ部品を有するセンタリング要素を提供することによって、すべての移行を正確に検出するために、回転センサにとって不可欠な第一のセンサ部品と第二のセンサ部品の間が完全に整列される。マイナーな未整列がある場合、第二のセンサ部品の接触構造は、第一のセンサ部品のセンサ領域と係合しない場合があるが、一部の接続をジャンプして信号を生成することはできない。それによって、回転センサからの読み取り値が不正確であるため、相対的回転回数のプロセッサユニットによる間違った決定になり、したがって誤った用量サイズ計算が行われる。センタリングにおける非常に小さな逸脱によって、用量サイズの測定が不正確になる可能性がある。
【0025】
さらに、軸受カップ部品を有するセンタリング要素を正確に回転軸の中心に配置することによって、第一のセンサ部品に対して第二のセンサ部品を回転させるために加えられるトルクは最小化され、注射装置内の放出機構を駆動するために必要とされる最小の追加トルクをもたらす。このセンタリング要素がないと、より大きなトルクが必要となるが、これは自動ペンの用量放出機構における大きなばねまたは手動ペンに対しにユーザーによって手動で加えられるより大きな注入力につながる。
【0026】
典型的実施形態では、第二のセンサ部品は、ピストンロッドの遠位先端部の一部を形成するように適合される。その場合、軸受カップ部品は、遠位先端部を形成する第二のセンサ部品の一部を、用量放出中、中心軸(A)が中心軸(B)と一致する位置に受け維持するように適合される。
【0027】
ピストンロッドのセンタリングを最適化し、それによって第一のセンサ部品に対する第二のセンサ部品のセンタリングを最適化し、二つの部品を互いに対して回転させるのに必要なトルクを最小にするために、軸受カップ部品はその中心軸(C)の周りに回転対称形状を有するのが好ましい。
【0028】
中心軸(C)に平行に見られる軸受カップ部品の断面形状は、ピストンロッドの遠位部分とカップ部品の間の所望のレベルの働きに応じて形態が変化しうる。断面形状は、例えば、実質的にV-またはUまたは台形または正方形状であってもよい。
【0029】
センタリング要素および第一のセンサ部品は、それぞれの中心軸が一致するように、固定相互位置に配置される。この相互に固定された位置を提供するために、センタリング要素は第一のセンサ部品にはんだ付けまたはリベット接合または接着接合されてもよく、または第一のセンサ部品と一体的に形成されてもよい。
【0030】
典型的実施形態では、前記軸受カップ部品は、導電性材料からなり、前記電源ユニットの前記(-)端子に接続されており、前記第二のセンサ部品は、前記軸受カップ部品内に維持されるとき、前記軸受カップ部品に電気的に接続される。これにより、電気接地信号が第二のセンサ部品に通過されるようになる。こうした実施形態の詳細については、
図12bおよび13bおよび関連する説明を参照する。
【0031】
個々の導電性センサ領域および接触構造の数は、特定の使用(薬剤、ペンなど)および望ましいコードパターン、例えば、グレーコードまたは直交コードパターンに応じて変化しうる。センサ領域の数は、例えば、3または4または6または8、または24もしくは48もしくは72など、それより多くであってもよく、接触構造の数は2または3または4またはそれより多くであってもよい。
【0032】
導電性センサ領域は、印刷により、特定のパターンで可撓性プリント回路基板シート上に導電性材料の層を形成することにより、または、最初にシート上に導電性材料の層を配置し、その後、その材料を除去してセンサ領域を形成することにより、提供されてもよい。導電性材料は、銀、銅、炭素または金などの任意の適切な導電性材料であってもよく、層の厚さは、例えば、0.01~0.05mmであってもよいが、それよりも多いかまたはそれより小さくてもよい。
【0033】
導電性センサ領域が配置される第一の表面は、回転軸(A)と実質的に垂直に、または平行に延びうる。
【0034】
可撓性プリント回路基板シートは、例えば0.05~0.1mmの厚さを有する薄箔であってもよく、図面の例に示すように、必要に応じて折り畳まれてモジュールの非常にコンパクトな構造を可能にする。さらに、可撓性プリント回路基板シートは、例えば、「ロールオンロール」プロセスのようなプロセスにおいて、大量生産することができ、何千枚もの個々のシートが、迅速にプリントされることを可能にし、シート当たり非常に低コストを達成できる。
【0035】
電源ユニットは標準電池(例えば、コインセルなど)であってもよいが、別の方法として、モジュールのよりコンパクトな構造を可能にする印刷された電池の形態の可撓性PCBシート上に配置された電源もありうる。プロセッサユニットは、例えば、リアルタイム時計ユニットを通して時間を追跡することができることが好ましいので、電源ユニットは、時計ユニットを連続的に電力オンにするために、低い「スリープ電流」をプロセッサユニットに供給するよう適合されてもよい。
【0036】
センサユニットは、第一のセンサ部品と第二のセンサ部品との間の初期の第一の相対軸方向および/または回転運動によって、非アクティブ(オフ)状態からアクティブ(オン)状態へと切り替えられるように適合されうる。例えば、センサユニットは、用量放出前に「オフ」モードであって、その後、用量放出の直前、例えば、ペンの用量放出機構を起動する間、「オン」と切り替えてもよい。用量放出の直前にセンサユニットを起動することにより、モジュールは、二つの部品が互いに対して回転するのを開始する前に、第一のセンサ部品と第二のセンサ部品間の正確な相対位置を決定できるようになる。
【0037】
プロセッサユニットは、マイクロプロセッサ、マイクロコントローラまたはCPUの形態であってもよく、これは汎用設計であってもよく、または実際の装置用に特定に設計されていてもよい。プロセッサユニットは、第一のセンサ部品と第二のセンサ部品間の相対的回転位置を示す、用量センサユニットから受信された信号に基づいて、対応する放出用量を計算し、各用量の薬剤が投与されるときの時間を含むこのデータを記憶するように構成される。しかしながら、プロセッサユニットが実際の線量を計算する代わりに、記憶されたデータは回転数データのみの形式であってもよく、これは受信外部ユニット、例えば、スマートフォンまたはPCが、薬の種類、カートリッジの種類、およびデバイスの種類に関して提供された情報に基づいて実際の薬剤の用量を計算するのを可能にする。
【0038】
モジュールは、記憶されたデータを外部装置に無線で通信するための通信ユニットを備えることが好ましい。通信ユニットは、可撓性プリント回路基板シート上に配置されてもよい。通信ユニットは、NFC、ブルートゥース、BLE(ブルートゥース低エネルギー)、Wi-Fi、ZigBee、ZigFox、LoRa、GSM、ナローバンドまたは任意の他の無線通信技術のような通信技術を介して、スマートフォン、サーバー、クラウドなどの任意のユニットへの用量データを通信するように適合され得る。
【0039】
用量放出中に回転するタイプの既存のピストンロッドは、遠位ピストン係合フットまたはワッシャを備え、ピストンロッドが非投薬中に自由に回転し、エラストマーピストンとの非回転係合を確保する。センサモジュールは、このピストンロッドフットを代用してもよく、すなわち、用量感知を提供することに加えて、ピストンロッドフットまたはワッシャと同じ機能を提供する。モジュールのサイズがピストンロッドフットまたはワッシャと同じサイズであることができるため、ペンへのモジュールの組み込みは非常に限定的なペンの修正を必要とする。そのような実施形態では、モジュールはピストンとピストンロッドとの間に配置され、ピストンと第一のセンサ部品との間の回転が不可能であるように第一のセンサ部品がピストンと係合し、第二のセンサ部品とピストンロッドとの間の回転が不可能であるように第二のセンサ部品がピストンロッドの端部と係合する。モジュールは、用量放出中のピストンおよびピストンロッドの軸方向移動に対応してカートリッジ内に軸方向に移動するように適合されてもよい。ピストンロッドは、用量放出中、モジュールに対して遠位に向かい合った力を加え、力は、モジュールによってピストンに伝達される。モジュールの電源ユニットは、ピストンロッドからピストンへ力を伝達する負荷受け部品を構成しうる。
【0040】
別の実施形態では、モジュールは、カートリッジを含む端部の反対側の端部に、すなわち、用量設定および用量の活性化機構を通常含むペンの末端に、ペンに組み込まれるように適合される。こうした統合の詳細な説明が
図7に関連して提供される。
【0041】
当然のことながら、モジュールは、第一のセンサ部品が用量放出中に回転し、第二のセンサ部品が用量放出中に回転しないように、ペンの中で、反対に位置付けられうる。例えば、第一のセンサ部品は、ピストンロッドと直接的または間接的に係合することができ、その回転に従い、第二のセンサ部品はピストンに直接的または間接的に係合することができる。
【0042】
上述のようにペンのいずれかの端部に配置されるという特定の目的に適合して、モジュールは、20mm未満、15mm未満、10mm未満または8mm未満の有効直径、および10mm未満、8mm未満、6mm未満または4mm未満の高さを有する。
【0043】
別の態様によれば、変位可能なピストンおよび出口および、前記ピストンを変位させるため、前記ピストンに向かう方向に軸方向に前進し、ゆえにカートリッジから前記出口を介して用量の薬剤を放出するピストンロッドであって、軸方向移動中に回転軸(A)の周りに前記ピストンに対して回転する、ピストンロッドを有する薬剤充填カートリッジを備えたペン式薬剤送達装置用の回転式用量センシングモジュールが提供される。モジュールは、(-)および(+)端子を有する電源ユニットと、前記電源ユニットの前記(-)および前記(+)端子に接続されたプロセッサユニットと、用量放出中に回転しない前記送達装置の一部に直接的または間接的に固定されるように適合された第一のセンサ部品であって、あるパターンで配置される複数の個々の導電性センサ領域であって、その一部が前記電源ユニットの(-)端子に電気的に接続され、その一部が前記プロセッサユニットに接続されている、複数の個々の導電性センサ領域が配置される、第一の表面を有する、可撓性プリント回路基板シートを含む、第一のセンサ部品と、前記第一のセンサ部品の反対側に配置され、かつ前記ピストンロッドに直接的または間接的に固定され、用量放出中に前記ピストンロッドの回転に従うように適合された、第二のセンサ部品であって、複数の接触構造を備える、第二のセンサ部品とを含む、センサユニットとを含み、前記接触構造が、前記第一のセンサ部品と前記第二のセンサ部品の間の相対的回転運動のとき、前記異なる導電性センサ領域に対し、前記(-)端子と前記プロセッサユニットの間の電気回路を閉じ、各電気的接続が、電気信号を前記プロセッサユニットに生成し、前記第一のセンサ部品と前記第二のセンサ部品間の前記回転位置を示し、前記プロセッサユニットが前記信号を処理し、前記第一のセンサ部品と前記第二のセンサ部品の間の相対的回転量を決定し、ゆえに、前記決定した相対的回転量に基づいて、放出する用量サイズを計算するように適合されている。
【0044】
一実施形態では、前記用量センサユニットが、前記回転軸に対して垂直に配置され、前記個々の導電性センサ領域を有する前記第一のセンサ部品の前記第一の表面に軸方向にオフセットされる、第二の表面領域を含み、前記(-)端子に接続される導電性材料が前記第二の表面領域を形成し、スペーサが、前記第一と前記第二の表面領域の間の軸方向の空間を提供するが、前記第一の表面領域が、前記第二のセンサ部品の前記個々の接触構造によって、作用され、前記異なるセンサ領域に対し、前記(-)端子と前記プロセッサユニットとの間の前記電気回路を閉じるとき、前記個々の導電性センサ領域を所持する前記第一の表面領域の個々のサブ領域が撓んで、前記異なる個々の導電性センサ領域が前記第二の表面領域と電気接触するようにもたらす。電源ユニットの導電性表面領域は、前記第二の表面領域を構成してもよい。
【0045】
スペーサは、固体または液体または気体の状態にある任意の種類の材料を含みうる。
【0046】
本発明の別の態様によれば、上述のモジュールは、ハウジングと、変位可能なピストンを有する薬剤充填非交換式カートリッジと、出口と、前記ピストンを変位させるために、前記ピストンに向かう方向に前進し、ゆえに用量の薬剤を前記出口を介して、前記カートリッジから放出するピストンロッドであって、軸方向移動中に前記ピストンおよび前記ハウジングに対して回転するピストンロッドとを含む、ペン式薬剤送達装置であって、前記ハウジングと前記第一のセンサ部品との間の相対的回転が不可能であるように、モジュールの前記第一のセンサ部品が直接または間接的に前記ハウジングに係合し、前記ピストンロッドと前記第二のセンサ部品との間の相対的回転が不可能であるように、モジュールの前記第二のセンサ部品が直接または間接的に前記ピストンロッドに係合する、ペン式薬剤送達装置と組み合わせて提供される。
【0047】
本発明のなおさらなる態様によれば、変位可能なピストンを有する薬剤充填カートリッジと出口と用量放出中前記ピストンに対して回転するピストンロッドを有し、前記ピストンを前記出口に向かって駆動して変位させ、それにより前記出口を通して用量の薬剤を放出する用量放出手段とを含むペン式薬剤送達装置中の用量サイズを感知するための回転式用量センシングモジュールが提供される。センサモジュールは回転軸を画定し、(+)と(-)端子を有する電源ユニットと、(-)および(+)端子に接続されたプロセッサユニットと、回転軸に平行に延びる円筒面の周りにパターンで配置された複数の個々の導電性センサ領域を有する第一の円筒形回転センサ部品を含むセンサユニットであって、各センサ領域は、電源ユニットの(-)端子に接続されているセンサユニットとを含む。前記第一の回転センサ部品は、用量放出中にその回転に従うために、ピストンロッドに間接的または直接的に固定されるよう適合される。センサモジュールは、用量放出中に回転しない前記送達装置の一部に直接的または間接的に固定されるように適合された第二の固定センサ部品であって、あるパターンで配置される複数の接触構造であって、それぞれがプロセッサユニットに接続されている接触構造が配置される、第一の表面を有する、可撓性プリント回路基板シートを含む、前記固定センサ部品を含み、前記接触構造が、前記第一のセンサ部品と前記第二のセンサ部品の間の相対的回転運動のとき、異なる個々の導電性センサ領域を前記プロセッサユニットに電気的に接続し、ゆえに、前記特定の導電性センサ領域に対し、前記(-)端子と前記プロセッサユニットの間の電気回路を閉じ、各電気的接続が、電気信号を前記プロセッサユニットに生成し、前記第一のセンサ部品と前記第二のセンサ部品間の前記回転位置を示すように、回転式および固定センサ部品が、同軸方向におよび少なくともそれぞれの内部に部分的に配置され、前記プロセッサユニットが前記信号を処理し、前記第一のセンサ部品と前記第二のセンサ部品の間の相対的回転量を決定し、ゆえに、前記決定した相対的回転量に基づいて、放出する用量サイズを計算するように適合されている。
【0048】
本発明の本発明のさらなる態様によれば、変位可能なピストンおよび出口および前記ピストンを変位させるため、前記ピストンに向かう方向に軸方向に前進し、ゆえにカートリッジから前記出口を介して用量の薬剤を放出するピストンロッドであって、軸方向移動中に前記ピストンに対して回転する、ピストンロッドを有する薬剤充填カートリッジを備えたペン式薬剤送達装置用の用量センシングモジュールが提供される。前記モジュールは、用量放出中に回転しない前記送達装置の一部に直接的または間接的に固定されるように適合された第一のセンサ部品であって、複数の個々の導電性センサ領域を含む第一のセンサ部品と、前記ピストンロッドに直接的または間接的に固定され、用量放出中に前記ピストンロッドの回転に従うように適合された、第二のセンサ部品とを含む、用量センサユニットを含み、前記第一のセンサ部品と前記第二のセンサ部品がお互いに対し回転可能であり、お互いに対し軸方向にオフセットされ、回転軸に対し垂直に配置される。前記モジュールは、プロセッサユニットと、少なくとも前記用量センサユニットおよびプロセッサユニットをオンするように適合された電源ユニットと、前記複数の個々の導電性センサ領域および電気的導体が、前記複数の個々の導電性センサ領域、前記プロセッサユニットおよび電源ユニットの間に電気的接続を提供するため、配置される、可撓性プリント回路基板シートとをさらに含む。前記センサユニットの前記第二のセンサ部品が、前記個々の導電性センサ領域とともに、前記第一のセンサ部品と前記第二のセンサ部品の間の相対的回転運動のとき、前記センサユニットの前記第二のセンサ部品の間の相対的回転位置を示す電気信号を提供するように構成された個々の構造を含む。前記プロセッサユニットは前記信号を受け取り処理し、相対的回転量を決定する。
【0049】
第一のセンサとピストンもしくはハウジングとの間および第二のセンサ部品とピストンロッドとの間の係合を防ぐ回転は、任意の適切な摩擦または形式ベースの係合に基づいてもよい。特に、エラストマーピストンへの係合は、接着剤、または、モジュールの突出部によって、ピストン内に貫通するか、またはピストンとモジュールとの間の相対的回転を防ぐ十分な摩擦を提供することに基づいてもよい。
【0050】
上記に基づき、前記送達装置が投薬データ(サイズおよび時間)を正確に検出し、これらのデータを前記ペン式装置に取り付けられたアドオンアクセサリを必要とせずに、外部装置にさらに伝達することを可能にする、コスト効果の高い、信頼性の高い、コンパクトなモジュールが提供されている
【0051】
さらに、装置への統合が装置の変更をほとんど要求しないモジュールが提供される。
【0052】
コンパクトで安価な構造のためにモジュールは使い捨て装置で使用することが意図されているが、これは耐久性が高くより高価なペン式薬剤送達装置で実施できることも理解されるべきである。
【0053】
本明細書中で使用される場合、用語「薬剤」は、液体、溶液、ゲルまたは細かい懸濁液のような制御された様式でカニューレまたは中空針のような送達手段を通過し得、そして一つまたは複数の薬剤物質を含有し得る医薬製剤を包含することを意味する。薬剤は、単一の貯蔵部からの単一の薬剤化合物または予混合物または配合された複数の薬剤化合物薬剤物質であってもよい。代表的な薬剤としては、固体(分散)または液体の両方の形態における、ペプチド(例えば、インスリン、インスリン含有薬剤、GLP-1含有薬剤ならびにその誘導体)、タンパク質およびホルモンなどの医薬品、生物由来または活性物質、ホルモンおよび遺伝子に基づく物質、栄養処方ならびに固体(調剤)または液体形態の他の物質が挙げられる。典型的実施形態の記載において、インスリンおよびGLP-1含有薬剤の使用、これらの類似物、ならびに一つまたは複数のその他の薬剤との組み合わせを含むことが挙げられる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
以下の発明において、図面を参照しながらさらに説明する。
【
図1】
図1は、薬剤カートリッジを有する使い捨てのペン式薬剤送達装置を示す。
【
図2】
図2は、本発明によるセンサモジュールの実施形態を有する
図1に示すペンの断面図を示す。
【
図3】
図3a~3cは、
図2のペンに配置されたモジュールの図を示す。
【
図4】
図4は、本発明によるモジュールの別の実施形態を示す。
【
図5】
図5は、本発明によるモジュールの第三の実施形態を示す。
【
図6】
図6a~6cは、本発明によるモジュールの第四の実施形態を示す。
【
図7】
図7は、ペン式薬剤送達装置の内側に配置された
図6a-cに示すモジュールの断面図を示す。
【
図8】
図8は、ペン式薬剤送達装置の内側に配置された
図7に示すモジュールの第二のセンサ部品を示す。
【
図10】
図10a~10hは、本発明によるモジュールの接続順序の例を示す。
【
図11】
図11は、本発明によるさらなる回転センサモジュールの分解図を示す。
【
図12】
図12a~12bは、本発明による回転センサモジュールの典型的実施形態の断面図を示す。
【
図13】
図13a~13bは、本発明による回転センサモジュールのための電気回路の実施例を示す。
【
図14】
図14a~14dは、異なる断面を有するセンタリング要素の異なる実施形態を示す。
【
図15】
図15は、本発明による回転センサモジュールの別の実施形態の分解図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0055】
図1を参照すると、使い捨てのペン式薬剤送達装置100が示されており、これとともにが本発明によるモジュールを使用してもよい。装置は一般の薬剤送達装置を代表してもよいが、
図1に示すものはNovo Nordisk A/Sによって販売されたFlexTouch(登録商標)事前充填のペン式薬剤送達装置である。このペンはばね駆動のペンであり、例えば国際出願公開第2014/161952号に詳細に記載されており、その開示内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0056】
より具体的には、ペン式装置は、その中に薬剤放出機構が配置または一体化されているハウジング110を備えた近位本体または駆動アセンブリ部分を有する主要部分と、変位可能なピストン(図示せず)を有する薬剤充填透明カートリッジ130と遠位の針貫通可能な隔壁140とを保持する遠位のカートリッジホルダ部分120とを含む。カートリッジホルダは、カートリッジの一部分を検査することができる開口部150を有する。カートリッジは、例えば、インスリン、GLP-1または成長ホルモン製剤を含みうる。最も近位の回転可能な用量リング部材160は、表示ウィンドウ170に示される望ましい用量の薬剤を手動で設定し、その後、解放ボタン180が作動した時に放出されうる。
【0057】
薬剤送達装置に具体化されている放出機構のタイプに応じて、放出機構は、
図1に示されているペンのように、用量設定中に歪んでから解放されてピストンロッドをペンの遠位端に向かって駆動してピストンをカートリッジ内に前進させ、それによって解放ボタンが作動されると用量を放出するばねを含み得る。別の方法として、放出機構は完全に手動であってもよい。
【0058】
図2は、
図1に示すペンの断面図を示し、(ここではペンはキャップ部品190も含む)、本発明によるモジュールが配置されている。モジュール(
図3a~3cに詳細に示されている)は、ピストンロッド201とカートリッジ203のピストン202との間に配置され、モジュールのセンサユニットの第一のセンサ部品210は、ハウジング204を介してカートリッジ内にピストン202に回転方向にロックされる。
【0059】
第二のセンサ部品220(「ワイパー」)は、ピストンロッド201の先端部に回転方向にロックされる。第一のセンサ部品210と第二のセンサ部品220とは互いに対して回転することができ、用量放出中にピストン202が回転しないので、用量放出中のピストンロッド201の回転運動は第二のセンサ部品220を第一のセンサ部品210に対して回転させる。
【0060】
図3a~3cは、
図2にも示されているモジュールを示しているが、セルコイン電池の形態で可撓性プリント回路基板シート200が電池206の周りに折り畳まれた状態でとなる。すなわち
図3cに示すように、電池は折り畳まれたシート200の二つの層の間に配置されることを意味する。シートは、電池の両側に接着されうる。モジュールのこの造形上の一つの利点は、ピストンロッドがモジュールに力を及ぼし、カートリッジ内のピストンを軸方向に前進させて、薬剤の用量を放出するとき、モジュールの主負荷受け部品として電池が使用されることである。
【0061】
第二のセンサ部品220は、第一のセンサ部品210の異なる導電性センサ領域305を撓ませて電池の表面306(例えば(-)端子)と接触するように適合された三つの可撓性アームの形態の個々の接触構造308を有する。それにより、第一のセンサ部品210と第二のセンサ部品220とが互いに対して回転するとき、(-)端子とプロセッサユニット207との間の電気回路を閉じて電気信号を提供する。
【0062】
第一のセンサ部品210は、ペンに配置された時に、ハウジング部分204を経由して、カートリッジ203のピストン202と非回転係合する。
【0063】
可撓性PCBシート上の導体は、プロセッサユニットが時間を追跡するために電池206がプロセッサユニット207に連続的な低い「スリープ電流」を送達することを可能にする接続を提供することができるが、それは、モジュールが最初に使用される時、最初に起動してもよい。
【0064】
可撓性プリント回路基板シートはまた、外部装置へのデータの無線通信(例えば、
図6bを参照)のための手段を備えてもよく、例えば、アンテナがシート上に配置されてもよい。
【0065】
図3cは、組み立てられたモジュールの側面図を示す。用量放出中に第一のセンサ部品210および第二のセンサ部品220が互いに対して回転すると、モジュールがペンの中に配置されている場合、第二のセンサ部品の個々の構造308は、第一のセンサ部品の導電性センサ領域305を、表面がセルコイン電池の(-)または(+)端子である、電池の表面306と接続するように撓ませる。この図では、センサ領域305と表面306との間に小さな空間があるので、示されているセンサ領域305はまだ接続状態に曲がっていない。しかし、構造308が第一のセンサ部品と第二のセンサ部品との間の相対的回転の際にセンサ領域305と重なるとき、それは接続するように撓む。
【0066】
センサ領域305および構造308は、第一のセンサ部品と第二のセンサ部品との間の回転位置を示す接触位置のパターンを作り出すように構成される。次に、プロセッサユニット207は、第一のセンサ部品と第二のセンサ部品との間の相対的回転位置を示す受信電気信号を処理して相対的回転量を決定し、それに基づいて対応する放出量を計算し、このデータを記憶することができる。
【0067】
図4に示す他の実施形態では、第二のセンサ部品407の電気的に接続された接触構造408は、第一のセンサ部品と第二のセンサ部品との間の相対的回転時に第一のセンサ部品401の複数の個々の導電性センサ領域405に直接導電的に接続するように適合する。この実施形態の利点は、構造がセンサ領域405を撓ませる必要がないので、第二のセンサ部品の構造に適用されるトルクが低いことである。
【0068】
電池410は、折り畳まれた可撓性プリント回路基板シート400の空間413内に位置付けられることが意図されている。可撓性プリント回路基板シート400、電池410およびプロセッサユニット411を収容するためにハウジング415が設けられ、ハウジングは表面416が空間414内に位置決めされ、したがって第一のセンサ部品401の第一の表面を下で支持するように配置される。第一のセンサ部品の小さい導電性センサ領域は、プロセッサユニットに接続され、大きなセンサ領域は、電池410の(-)端子に接続される。この実施形態では、第二のセンサ部品は、(-)端子に接続されてもよいが、必ずしも接続されなくてもよい。
【0069】
第二のセンサ部品407は、第二のセンサ部品とピストンロッドとの間での回転が不可能というわけではないように、ピストンロッド409と係合するようになっている。可撓性プリント回路基板シート400、電池410およびプロセッサユニット411を含むハウジング415は、ハウジングと第一のセンサ部品401との間の回転が可能ではないように、薬剤カートリッジ(図示せず)のピストンと係合するようになっている。
【0070】
第一のセンサ部品410と第二のセンサ部品407とが互いに対して回転するとき、接触構造408は、第一のセンサ部品の異なる導電性センサ領域405を電気的に接続する。それにより、(-)端子とプロセッサユニット411との間の電気回路を閉じて、電気信号をプロセッサユニットに提供し、第一のセンサ部品と第二のセンサ部品との間の回転位置を示す。プロセッサユニットは、信号を処理して、相対的回転量を決定し、それによって放出された用量サイズの量を計算するように適合されている。
【0071】
図5は、本発明によるモジュールの別の実施形態を示す。可撓性プリント回路基板シート200の詳細断面図で見られるように、用量センサユニットの第一のセンサ部品210は、個別に導電性センサ領域505が配置される第一の表面501を有する。第二の表面領域506は、領域505に軸方向にオフセットされ、第二のセンサ部品220の回転軸に対して垂直に配置され、導電性材料は第二の表面領域506を形成する。構造体508が第二のセンサ部品220の回転時に個々に導電性センサ領域505と重なると、構造は、電気回路を閉じて信号をプロセッサユニットに提供するために、センサ領域505を撓ませて、第二の表面領域506と導電性電気的接続させる。
【0072】
図6a~
図6cでは、モジュールの別の実施形態が示されている。
図6aは、領域625によって分離された個々の導電性センサ領域605、電気的導体606およびプロセッサユニット611を備える可撓性プリント回路基板シート600を示す。センサ領域605のそれぞれはプロセッサユニット611に接続されており、一方で領域625は導体に接続されておらず、したがって電気回路の一部ではない。通信ユニット617は、可撓性プリント回路基板シート上に配置され、データを外部装置に無線で通信するように適合される。
【0073】
スペーサ618、619は、導電性センサ領域605と第二の表面領域、この実施形態では、電池610の表面609との間の軸方向の空間を提供するように配置されており、
図6cを参照する。スペーサ618、619は、第二のセンサ部品607によって作用されたときに、個々のセンサ領域605が電池610の表面領域609と直流の導電接触することを依然として可能にしながら、望ましくない接続が生じるのを回避する軸方向の空間を提供する。第二のセンサ部品607は、三つの可撓性アーム(「ワイパー」)を持ち、それぞれが構造608がセンサ領域605と重なる時に、異なるセンサ領域605を撓ませて電池((-)端子)の表面609と接触させるように適合された構造608を有する。
【0074】
センサユニットが非アクティブ状態である時、アームの支持表面622のみが、
図6cの左端の図面に示す通り、電池の表面領域609に面する側と反対側で可撓性プリント回路基板シートと係合する。軸方向の力が第一のセンサ部品に向かう方向に、またはその逆に第二のセンサ部品に加えられると、すなわちモジュールが圧縮されると、アームは外側に撓み、それによって構造608を領域605および625と係合するように強制する。
【0075】
第二のセンサ部品607は、第二のセンサ部品とピストンロッドとの間の相対的回転が可能でないように、ピストンロッドに直接的または間接的に第二のセンサ部品を取り付けることを可能にする取り付け手段624を有する。
【0076】
+および-端子620、621は、電池610の端子への接続のための可撓性プリント回路基板シート上に設けられる。
【0077】
図7は、ペン式薬剤送達装置700の内側に配置された
図6a-cに示すモジュールの断面図を示す。
図2および
図3a~cに示す実施形態と比較して、
図7のモジュールは、薬剤充填カートリッジ710の端部と反対側のペンの近位端に位置付けられる。ペンは、望ましい用量の薬剤を手動で設定するよう機能する用量リング部材730を有する。ペンは、用量設定中に歪んでから、解放されて、ピストンロッド750をペンの遠位端に向かって回転方向軸方向に駆動してピストン720を前進させ、それによって解放ボタン760が軸方向770に作動すると用量を放出する、ばね740を有する。
【0078】
モジュールは、センサユニットの第二のセンサ部品607が要素706を介して駆動チューブ705に係合して回転方向にロックされ、駆動チューブは、用量放出中にピストンロッドを回転駆動するためにピストンロッド750と係合するように位置決めされているが、これは、第二のセンサ部品607がピストンロッドに間接的に固定され、用量放出中にその回転に追従することを意味する。センサユニットの第一のセンサ部品601は、第二のセンサ部品607に軸方向にオフセットされ、回転軸に対して垂直に配置され、用量放出中に回転しないようにペンに固定される。
【0079】
可撓性プリント回路基板シート600は、電池610の周りに折り畳まれる。
【0080】
図7に示すモジュールを有するペンは、以下のように機能する。放出する薬剤の望ましい用量は、所望の用量がペン上のウィンドウに示されるまで、用量リング部材730を回転させることによって設定される。用量設定中、ばね740は、用量放出中にピストンロッド750を前方に駆動するのに必要な駆動力を造形するように歪む。用量設定中、導電性センサ領域に電気的接続はなく、センサユニットは駆動していない(「用量設定モード」)。
【0081】
設定用量を放出するために、注入ボタン760は方向770で軸方向に押され、それによって第一のセンサ部品601が電池とともに、第二のセンサ部品607に向かって軸方向に移動する。注入ボタンが距離761だけ動かされるとき、ばねはまだ解放されていない。しかし、構造608はそれぞれの導電性センサ領域605を表面606と接続するように撓ませてそれを電気回路に接続している。次に、センサユニットを作動させる(「用量放出モード」)。プロセッサユニットは、センサユニットの開始位置を示す信号を受け取る。注入ボタンがさらに軸方向に押されると、注入ボタン760および部品763の両方が距離762だけ一緒に移動し、ばね740が解放される。ここで、駆動チューブ706およびしたがってピストンロッド750が回転を開始し、ピストン720に向かって軸方向に進み、用量を放出するようになる。第二のセンサ部品607が駆動チューブを介してピストンロッドに回転方向にロックされると、それはピストンロッドと一緒に回転し始め、次に構造608はそれぞれの導電性センサ領域605を撓ませて電池の表面609に接続する。確立された接続は、上述のように電気信号をプロセッサユニットに生成し、前記信号は第一のセンサ部品と第二のセンサ部品の間の相対的回転位置を示す。
【0082】
図8は、ペン式薬剤送達装置700の内側に配置されたモジュールの第二のセンサ部品607を示す。構造608および支持表面622を備えた第二のセンサ部品607は、駆動チューブ705を介してピストンロッドに固定して取り付けられ、それによって駆動チューブ705およびそれによって用量放出中にピストンロッドの回転が続く。
【0083】
図9a~9hは、第一のセンサ部品と第二のセンサ部品が用量放出中に相互に対して回転する時の、
図6cのセンサユニットの接続順序を示す。
【0084】
図9aにおいて、センサユニットはその初期開始位置にある。ここでは、まだ薬剤は放出されていないが、第二のセンサ部品の一方の構造608は、導電性センサ領域を撓ませて、電池の導電性表面領域609((-)端子)との導電性電気的接続をさせることによって、(-)端子と導電性センサ領域605のプロセッサユニットとの間の電気回路を閉じる。ここで、センサユニットは「オン」になり、相対的回転を感知する準備が整う。第一のセンサ部品の他の導電性センサ領域のいずれも、この段階で電池の表面と導電性接続していない。
【0085】
図9bでは、第二のセンサ部品は、
図9aの位置合わせと比較して15度回転しており、別の構造608は別の導電性センサ領域605と表面領域609との間の導電性接続を提供している。
図9cでは、第二のセンサ部品は、
図9bなどの位置と比較して15度回転している。
【0086】
図10a~10hは、本発明によるモジュールの接続順序の実施例を示す。第一のセンサ部品は、円弧の周りに均等に分布された、すなわち、それぞれがプロセッサユニットに接続され、90度の間隔で、弧部分の形態の四つの導電性センサ領域1001(影付き)を持つ。他の4つの導電性センサ領域1002(影無し)は、電源ユニットの(-)端子に接続される。第二のセンサ部品は、それぞれが120度で位置付けられた三つのアーム1003を有する。
図10aでは、センサユニットはその初期開始位置にあり、薬剤は放出されない。
図10bでは、第二のセンサ部品は、
図10aの位置と比較して反時計回りに15度回転している。その結果、第二のセンサ部品の別の構造は、(-)端子とさらなる導電性センサ領域に対しプロセッサユニット(図示せず)との間の電気回路を閉じている。
図10cでは、第二のセンサ部品は、
図10bなどの位置と比較して、15度の反時計回りに回転されている。
【0087】
図に示すモジュールの実施形態のコードパターンは、各接続間で15度の回転の「旋回」に基づいている。これは、所与の薬剤配合および送達装置の組み合わせについて、1単位(IU)のインスリンに対応し得る、すなわち、ピストンロッドのフルの360度の旋回が24単位(IU)に対応する。
図9a~hおよび10a~hで分かる通り、三つのアーム(ワイパー)および四つまたは八個の導電性センサ領域を有するセンサ構成は、15度の八つの回転後に繰り返すパターンを作り出す、すなわち八単位のインスリンと等しい。ばね力が一般的に、ピストンロッドを第一の2~6ユニットの注入中に非常に高速に回転させる、ばね駆動ペン式装置では、センサユニットは一部の接続を飛ばしうる。しかしながら、示されているセンサ構成を使用することによって、センサの絶対配置が八単位しかないため、センサがいくつかの接続を飛び越えても、センサの第一のセンサ部品と第二のセンサ部品間の相対位置の決定は依然として信頼できる。
【0088】
さらに、三つのアームのみを使用することは、第一のセンサ部品と第二のセンサ部品間の摩擦力が低く保たれ(アームが少ないほど摩擦が低い)、アームが柔軟な材料で作られているかぎり、トルクが三つのアームすべてで同じである、という点で有利である。
【0089】
二倍濃度を有する薬剤配合については、各用量ステップが1IUのかわりに、2IUに等しくないならば。7.5度の回転の旋回が、1IUのインスリンに対応する用量ステップを登録するために必要である。
【0090】
特に、特に大きい場合には、所与の薬剤の用量は分割され、所与の休止で注射されるので、モジュールは、一回の用量として、所与の時間枠内、例えば15分で、放出された二回の用量をログするようプログラムされてもよい。
【0091】
図11において、本発明による回転センサモジュールの分解図が示されている。回転センサモジュールは、第一のセンサ部品の中心軸B1121の周りに円周方向に分配された24個の個々の導電性センサ領域1105を有する表面1122を有する可撓性プリント回路基板シートの形態の第一のセンサ部品1110を備える。そのうちのいくつかは(-)端子に接続されており、いくつかはプロセッサユニットに接続されている。第一のセンサ部品は、薬剤充填カートリッジのピストン202を直接的にまたは間接的に係合させるように適合され、それによって第一のセンサ部品1105とピストン202との間の係合を提供し、それによってそれらの間の相対的回転が不可能である。
【0092】
回転センサモジュールは、第一のセンサ部品1110の前記表面1122に対向して配置され、用量放出中にピストンロッドの回転に追従するようにその遠位先端部1125でピストンロッド201に取り付けられる第二のセンサ部品1120をさらに含む。ピストンロッドは、中心軸A1128を持ち、その周りに用量放出中に回転する。
【0093】
第二のセンサ部品は、電池の(-)端子に接続され、第一のセンサ部品の異なる個々の導電性センサ領域1105を、第一のセンサ部品と第二のセンサ部品との間の相対的回転運動のとき、プロセッサユニットに係合して電気的に接続し、ゆえに、(-)とプロセッサユニットとの間の電気回路を閉じるように適合された二つの電気的に接続された可撓性アームの形態の接触構造1108を有する。これらの電気的接続の各々は、プロセッサユニットに電気信号を生成し、第一のセンサ部品と第二のセンサ部品の間の回転位置を示す。
図13a~bに関連してこれについての詳細な説明を参照する。
【0094】
ピストンロッドをセンタリングし、および、ゆえに、第一のセンサ部品1110に対して第二のセンサ部品1120をセンタリングするために、センタリング要素1126が第一のセンサ部品と第二のセンサ部品との間に設けられるが、これは、回転センサがピストンロッドとピストンとの間の正しい相対的回転量を測定するために不可欠である。センタリング要素1126は、ピストンロッドの遠位部分、この状況では、第二のセンサ部品1120の一部を、軸1121、1128が一致している位置に維持するため、中心軸C1129を有する軸受カップ部品1127を備える。
【0095】
適切なセンタリングを提供するために、軸受カップ部品1127は、
図14a~dに図示したような異なる形態を持ちうる。
【0096】
図12aでは、回転センサモジュールの典型的実施形態の断面図が示され、第二のセンサ部品1220は、ピストンロッドの遠位部分1225に取り付けられ、ピストンロッドの回転に従う。センタリング要素1226は、軸受カップ部品の中心軸が第一のセンサ部品の中心軸と一致するように、第一のセンサ部品1210に取り付けられる。遠位先端部は、軸受カップ部品を介して中心としており、それによって第一のセンサ部品とピストンロッドおよびゆえ第二のセンサ部品との間の完全な整列が達成される。整列は、接触構造1208が常に表面1222と接触し、それによって、センサ部品間の各々の、すべての単一の相互の相対的回転運動のための適切な信号を生成することを確実にする。センタリング要素がないと、ピストンロッドが回転するときに二つのセンサ部品が互いに対してがたつくことがあり、それによって第二のセンサ部品の構造が第一のセンサ部品の導電性センサ領域のいくつかを飛び越えて故障または無信号を引き起こすことがある。
【0097】
用量放出中に、ピストンロッドを回転させ、ピストンをカートリッジ内で前進させるためにピストン方向に軸方向軸方向に進める。したがって、ピストンロッドは回転センサモジュールを介してピストンに軸方向の力を及ぼし、センタリング要素が互いに対して回転する部品の間で機械的接触が回転軸に保たれるのを確実にするので、センタリング要素によって、ピストンロッドをピストンに対して回転させるのに必要なトルクが最小限に抑えられる。必要とされるトルクは、センタリング要素の設計に応じてさらに最小化されうるが、
図14a~dを参照のこと。
【0098】
センタリング要素は、リベット、はんだ付け、または接着剤付けなど、異なる適切な手段によって第一のセンサ部品に固定して取り付けられうる。はんだ付けされた場合、
図12bに示し説明した通り、センタリング要素は例えば、(-)端子と第二のセンサ部品との間の電気接点として機能することができる。
【0099】
図12bでは、回転センサモジュールの別の典型的実施形態の断面図が示され、第二のセンサ部品1220は、ピストンロッドの遠位部分1225に取り付けられ、ピストンロッドの回転に従う。この実施形態では、センタリング要素1226および軸受カップ部品1227は、導電性材料で作製され、電池の(-)端子に電気的に接続される(図示せず)。第二のセンサ部品は、図示されるように軸受カップ部品に電気的に接続され、これが電気接地信号をセンタリング要素を介して第二のセンサ部品に通過させることを可能にする。
【0100】
図13a~13bを参照すると、第一のセンサ部品の導電性センサ領域(ENC1、ENC2、ENC3、ENC4)は、プロセッサユニットを介して電源1330(「VCC」、(+)端子)に接続され、導電性センサ領域(1305a、1305b、1305c、1305d)が(-)端子1331(グランド)に接続されている。第二のセンサ部品の接触構造1308は、第一のセンサ部品と第二のセンサ部品が互いに対して回転するにつれて、異なる導電性センサ領域(ENC1、ENC2、ENC3、ENC4)を接続し、(-)端子とプロセッサユニット間の電気回路を閉じる。センサ領域(ENC1、ENC2、ENC3、ENC4)がグランドに接続されているため、電気回路が閉じられ、特定のセンサ領域が「オン」になり、信号がプロセッサユニットに生成される。オンになっている特定のセンサ領域の読み取り値は「1」となり、オフになるセンサ領域の読み取り値は「0」である。
図13aの例では、接触構造1308が(-)端子およびプロセッサユニットへの電気回路を閉じるので、「ENC2」が接続されている。ゆえに、第一のセンサ部品と第二のセンサ部品間のこの特定の相対位置に対するプロセッサユニット内の読み取り値が、センサ領域ENC1、ENC2、ENC3、ENC4についてそれぞれ、「0」、「1」、「0」、「0」になる。読み取り値に基づいて、プロセッサユニットは、センサ部品間の、それによって注射装置のピストンロッドとピストンの間の相対的回転量を決定することができる。ピストンロッドとピストンの間の相対的回転量を知ることで、注射装置から放出される用量のサイズを決定し、プロセッサユニット内に保存することができる。
【0101】
電力を節約するために、プロセッサユニットは、センサ領域(ENC1、ENC2、ENC3、ENC4)の読み取り値を登録した直後に、その特定のセンサ領域に電気回路「オフ」を切り替える。これは、
図13aの図に示されており、ここで電気スイッチ機構1340は、ENC2に対し「開」である。電気スイッチ機構は、電気回路が閉じられ、センサ領域に対しプロセッサユニットによって電気信号が受信された後、電気回路をセンサ領域に開くプルアップ抵抗器の形態であり得る。プルアップ抵抗器はプロセッサユニットによって制御される。センサの移行をモニタリングするためのすべての時間、センサ領域に電源をいれる必要があるわけではないため、これは効果的に電力を節約することになる。ところが、この特定のセンサ領域の次の移行の検出は、プルアップ抵抗器によって電気回路が開いているので検出されない。この問題を減少させる方法は、プルアップ抵抗器のインテリジェント制御を実施することである。最初に、すべての開放電気回路のプルアップ抵抗器のみが起動される。センサ移行が検出されると、すべてのプルアップ抵抗器が起動され、プロセッサユニット内のソフトウェアがすべてのセンサ移行を検出し、タイマが起動されるようになる。センサ移行が検出されるたびに、タイマは元の値にリセットされ、タイマがタイムアウトになると、システムは、開いた電気回路のプルアップ抵抗器のみが起動するように戻る。センサは、検出された遷移の間および直後に電力を消費するが、静的なときは電力ゼロである。
【0102】
図13bは、
図3bに示すセンサモジュールの実施形態の電子回路を示す。このより単純な実施形態では、接地(-)端子1331は、第二のセンサ部品のみに接続されており、すなわち、第一のセンサ部品の導電性センサ領域のいずれもグランドに接続されていない。第二のセンサ部品への接地(-)接続は、例えば、上述の
図13bに示されるようにセンタリング要素を介してもよい。
【0103】
図14a~dは、本発明によるセンタリング要素の軸受カップ部品の様々な断面図を示す。断面図の選択は、軸受カップ部品の中央部分と摩擦力との間の機械的な働きのレベル、ゆえにセンタリング要素によって、ピストンに対してピストンロッドを回転するように加えられるトルク間の妥協である。最小限の摩擦およびトルクを加えながら、後者は薬剤の用量を放出するために必要な低注射力として得られるように、最良の可能性のあるセンタリングを有することが好ましい。
【0104】
図14aは、V字型断面1427aを示しており、これはベアリングにおける機械的働きがほとんどないまたはまったくない適切なセンタリングを確保する。
【0105】
図14bは、U字形状の断面1427bを示しており、これは非常に少ない機械的働きを有し、ピストンロッドとセンタリング要素間の摩擦を減少させる単一の点のみを有する適切なセンタリングを確保する。
【0106】
図14cは、台形の形状1427cを示しており、これはセンタリングを改善するが、一部の機械的働きを可能にする。
【0107】
図14dは、正方形状1427dを示しており、センタリングを改善するが、一部の機械的働きを可能にする。
【0108】
図15は、本発明による回転センサモジュールの代替的な実施形態の分解図を示す。ピストンロッドに接続される第一の円筒形回転センサ部品1520は、部品1529の円筒面の周りに間隔を空けてあるパターンで配置され、ピストンロッドの回転軸に対して平行に延びる複数の個々の導電性センサ領域1505(この例では九個のセンサ領域)を含む。回転センサ部品1520は、二つの構成要素、つまり、導電性センサ領域1505を有する金属部品1529および非導電性プラスチック部品1530から成る。組み立てられたバージョンでは、金属部品1529は、非導電性プラスチック部品上にモジュール化される。
【0109】
モジュールは、ピストンロッドの回転軸に平行に延長する接触構造1508が位置する、可撓性プリント回路基板シート1500を含む、第二の固定センサ部品1510をさらに備える。可撓性シート1500は、セルコイン電池1506(
図16を参照)の周りに折り畳まれ、接触構造はプロセッサユニット1507を介して(+)端子1528に接続される。第二のセンサ部品は、ピストンとセンサ部品の間の回転を許容しない方法で、カートリッジ203内のピストンに固定されるように適合される。
【0110】
センタリング要素1526は、二つのセンサ部品の間に位置し、導電性材料で作製される。組み立てられた時(
図16を参照)、センタリング要素は、電池の、(-)端子1531と、直接またはセンタリング要素と(-)端子1531との間に位置する導電性材料を有する、可撓性シート1500を介して、係合する。それによって、センサ領域1505は、(-)端子1531に接続される。センタリング要素はさらに、ピストンロッド201およびゆえにセンサ部品1510に関連してセンサ部品1520をセンターに置き、センサ部品の間の適切な整列およびゆえに、センサモジュールから正確な読み取り値を確実にする。
【0111】
モジュールはまた、モジュールから外部装置へデータ(用量サイズ、タイムスタンプ)を無線通信するための通信ユニットを備えることが好ましい。
【0112】
図16は、ペン式薬剤送達装置内に位置付けられた
図15のセンサモジュールの断面図を示し、第一の回転センサ部品は同軸であり、第二の固定センサ部品の内側に部分的に位置する。
【0113】
用量放出中にピストンロッドが回転するにつれて、接触構造1508(合計で四つ)は、異なる個別の導電性センサ領域1505に電気的に接続される。
図16では、接触構造(またはスイッチ)1508a(円形の金属ボール)がセンサ領域1505aと電気的に接触していることが分かる。それによって、電気は、(-)端子1531から、導電性センタリング要素1526を介して、接触構造1508aおよびプロセッサユニット1507までずっと導通される。すなわち、電気回路は閉じられており、プロセッサは、例えば、この特定のセンサ領域1505aに対する「オン」または「1」を示す電気信号を受信する。右側には、接触構造1508bは、非導電領域と接触し、すなわち、開いていて、プロセッサユニットはそれを「オフ」または「0」として認識する。接触構造がセンサ領域に接続するたびに、電気回路は閉じられ、プロセッサユニットは電気信号を受信し、各電気信号は第一のセンサ部品と第二のセンサ部品の間の回転位置を示す。これは、薬剤の注入中に、第一のセンサ部品と第二のセンサ部品の間の相互位置に応じて電気回路を閉じるか、または開き、プロセッサユニットに電気信号を生成することを意味する。これらの位置のそれぞれは、第一のセンサ部品と第二のセンサ部品との間の相対的回転量およびゆえにピストンロッドの回転数に変換される。ピストンロッドの回転数に基づいて、放出された薬剤の用量は、プロセッサユニットによって決定されうる。この情報は、注入が行われた時のタイムスタンプとともに、受信ユニット、例えば、携帯電話ユーザーに無線で移動することができる。
【0114】
上述された実施形態のいずれにおいても、導電性センサ領域および接触構造は、第一のセンサ部品と第二のセンサ部品の間の回転位置を示す接触位置のコードパターン(エンコーダ)を作り出すように構成される。インデックスコードパターンは、グレーコードシステムまたは直交コードシステムまたはその他任意の関連システムに基づいてもよい。グレーコードは、例えば、4ビット72の増分エンコーダシステムであってもよく、ここでパターンは360度回転ごとに9回繰り返される。
【0115】
典型的実施形態の上記の説明では、異なる構成要素に対して説明された機能を提供する異なる構造および手段は、本発明の概念が同業者に明らかとなる程度まで説明されてきた。異なる構成要素の詳細な構造および仕様は、本明細書に記載されるラインに沿って当業者によって実施される通常の設計手順の対象とみなされる。
符号説明
100、700:ペン式薬剤送達装置
130、203、710:カートリッジ
202、720:ピストン
201、409、750:ピストンロッド
206、410、610、1506:電源ユニット
207、411、611、1507:プロセッサユニット
210、401、601、1110、1210:第一のセンサ部品
200、400、600、1500:可撓性プリント回路基板シート
305、405、505、605、1105、1505:複数の個々の導電性センサ領域
220、407、607、1120、1220:第二のセンサ部品
308、408、1108、1208、1508:複数の電気的に接続された接触構造
1340:電気スイッチ機構
A:ピストンロッドの回転軸
B:複数の個々の導電性センサ領域の中心軸
C:センタリング要素の中心軸
1126、1226、1526:センタリング要素
1127、1227:軸受カップ部品:
617:通信ユニット
110:ハウジング