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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-02
(45)【発行日】2022-02-10
(54)【発明の名称】シークエンシング用デバイス
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/00 20060101AFI20220203BHJP
   C12M 1/00 20060101ALN20220203BHJP
【FI】
G01N27/00 Z
G01N27/00 J
C12M1/00 A
【請求項の数】 22
(21)【出願番号】P 2019568752
(86)(22)【出願日】2019-02-13
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-08-27
(86)【国際出願番号】 US2019017814
(87)【国際公開番号】W WO2019160925
(87)【国際公開日】2019-08-22
【審査請求日】2019-12-26
(31)【優先権主張番号】62/710,350
(32)【優先日】2018-02-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500358711
【氏名又は名称】イルミナ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100189555
【弁理士】
【氏名又は名称】徳山 英浩
(72)【発明者】
【氏名】ボイヤン・ボヤノフ
(72)【発明者】
【氏名】イェンス・グントラッハ
【審査官】今浦 陽恵
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2016/0231307(US,A1)
【文献】特開2014-190891(JP,A)
【文献】特表2003-531592(JP,A)
【文献】特表2017-523424(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/00 - 27/10
G01N 27/14 - 17/24
G01N 33/48 - 33/98
C12M 1/00 - 3/10
C12Q 1/00 - 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
デバイスであって、
シス電極に関連付けられたシスウェルと、
トランス電極に関連付けられたトランスウェルと、
前記シスウェルと前記トランスウェルとの間に配置された電界効果トランジスタ(FET)と、を備え、
前記電界効果トランジスタ(FET)は、その中に画定された流体システムを備え、 前記流体システムは、
前記シスウェルに面した第1の空洞であって、前記第1の空洞は、入口端および前記入口端と反対側の出口端を有する、第1の空洞と、
前記トランスウェルに流体接続された第2の空洞と、
前記第1の空洞の出口端から前記電界効果トランジスタを通ってベース基板層まで延びる貫通ビアであって、前記ベース基板層は、前記貫通ビアと前記第2の空洞との間に配置されている、貫通ビアと、を備え、
前記デバイスは、
前記シスウェルと前記第1の空洞とを流体接続する第1のナノスケール開口部であって、前記第1のナノスケール開口部は、内径を有する、第1のナノスケール開口部と、
前記ベース基板層の厚さを通して画定される第2のナノスケール開口部であって、前記第2のナノスケール開口部は、前記貫通ビアと前記第2の空洞とを流体接続し、前記第2のナノスケール開口部は、内径を有する、第2のナノスケール開口部と、を備え、
前記第2のナノスケール開口部内径は、前記第1のナノスケール開口部内径よりも大きい、デバイス。
【請求項2】
前記第2のナノスケール開口部内径は、前記第1のナノスケール開口部内径よりも少なくとも約2倍大きく、
前記第1のナノスケール開口部内径は、約1nm~約3nmの範囲であり、かつ、
前記第2のナノスケール開口部内径は、約2nm~約20nmの範囲である、請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
前記第2のナノスケール開口部内径は、前記第1のナノスケール開口部内径の約2倍から前記第1のナノスケール開口部内径の約5倍大きい範囲である、請求項1に記載のデバイス。
【請求項4】
前記第1のナノスケール開口部内径は、約0.5nm~約3nmの範囲であり、かつ、
前記第2のナノスケール開口部内径は、約10nm~約20nmの範囲である、請求項1に記載のデバイス。
【請求項5】
前記デバイスは、前記シスウェルと前記第1の空洞との間に配置された膜をさらに備え、前記第1のナノスケール開口部は、前記膜を通って延びる、請求項1ないしのうちいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項6】
前記膜は、脂質および脂質の生体模倣同等物からなる群から選択される、請求項に記載のデバイス。
【請求項7】
前記第1のナノスケール開口部は、膜に配置された、ポリヌクレオチドナノポア、ポリペプチドナノポア、またはカーボンナノチューブを通って延びる、請求項に記載のデバイス。
【請求項8】
前記膜は、合成膜であり、前記第1のナノスケール開口部は、固体ナノポアである、請求項に記載のデバイス。
【請求項9】
前記第1のナノスケール開口部は、可変の電気抵抗を有し、前記第2のナノスケール開口部は、少なくとも実質的に固定された電気抵抗を有する、請求項1ないしのうちいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項10】
前記デバイスは、ナノポアシーケンサを備える、請求項1ないしのうちいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項11】
請求項10に記載の複数のデバイスであって、
前記複数のデバイスは、アレイに配置された複数のナノポアシーケンサを含み、
前記複数のナノポアシーケンサのそれぞれは、共通のシス電極および共通のトランス電極を共有するか、または、
前記複数のナノポアシーケンサのそれぞれは、別個のシス電極および別個のトランス電極を有するか、または、
前記複数のナノポアシーケンサのそれぞれは、共通のシス電極を共有し、別個のトランス電極を有するか、または、
前記複数のナノポアシーケンサのそれぞれは、別個のシス電極を有し、共通のトランス電極を共有する、複数のデバイス
【請求項12】
請求項1ないし11のうちいずれか1項に記載のデバイスまたは複数のデバイスを使用する方法であって、前記方法は、
シスウェル、トランスウェル、第1の空洞、FET貫通ビア、および第2の空洞のそれぞれに電解質を導入するステップと、
電圧バイアスを、第1のナノスケール開口部を通してポリヌクレオチドを駆動するのに十分にシス電極とトランス電極との間に印加するステップであって、前記第1のナノスケール開口部の電気抵抗は、前記ポリヌクレオチドの塩基の同一性に応じて変化し、前記FET貫通ビア内の電解質の電位は、前記第1のナノスケール開口部の電気抵抗の変動に応じて変化する、ステップと、
前記ポリヌクレオチドが前記第1のナノスケール開口部を通って駆動されるときのFETの応答を測定して、ポリヌクレオチドの塩基を識別するステップと、を含む方法。
【請求項13】
前記FETは、ソース、ドレイン、およびチャネルをさらに備え、前記FETの応答を測定するステップは、
ソース-ドレイン電流を測定するステップ、または、
ソース、ドレイン、またはソースとドレインの両方の電位を測定するステップ、または、
チャネルの抵抗を測定するステップ、または、
その組み合わせと、を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
デバイスの製造方法であって、前記方法は、
電界効果トランジスタを製造するステップと、
その中に流体システムを画定するステップと、を含み、
前記流体システムは、
入口端と前記入口端の反対側の出口端を有する第1の空洞と、
前記第1の空洞に対向する第2の空洞と、を含み、
前記方法は、
前記第1の空洞の出口端から前記第2の空洞に向かってベース基板までの前記電界効果トランジスタを通る貫通ビアを画定するステップであって、前記ベース基板は、前記貫通ビアと前記第2の空洞との間に配置される、ステップと、
前記第1の空洞の入口端を覆う膜を画定するステップであって、前記膜は、それを通る第1のナノスケール開口部を有し、前記第1のナノスケール開口部は、内径を有する、ステップと、
前記貫通ビアを前記第2の空洞に流体接続させるために、前記電界効果トランジスタの前記ベース基板の厚さを通る第2のナノスケール開口部を画定するステップであって、前記第2のナノスケール開口部は、内径を有し、前記第2のナノスケール開口部内径は、前記第1のナノスケール開口部内径より大きい、ステップと、を含む方法。
【請求項15】
前記方法は、
シスウェルを前記第1のナノスケール開口部に流体接続するステップであって、前記シスウェルは、シス電極に関連付けられる、ステップと、
トランスウェルを前記第2の空洞に流体接続するステップであって、前記トランスウェルは、トランス電極に関連付けられ、それにより、ナノポアシーケンサを形成する、ステップと、
前記ナノポアシーケンサを電解質に浸漬するステップと、をさらに含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記電界効果トランジスタを製造するステップは、
シリコンオンインシュレータ基板の2つのシリコン層のうちの1つに、ソース、ドレイン、およびチャネルを画定するステップであって、前記シリコンオンインシュレータ基板は、前記2つのシリコン層の間に絶縁体層を含む層状構造である、ステップと、
前記2つのシリコン層のうちの1つの表面を酸化して、ソース、ドレイン、およびチャネル上にゲート酸化物を形成するステップと、
前記チャネル上の前記ゲート酸化物上に犠牲層を形成するステップと、
エッチング停止材料を堆積して、前記ソース上および前記ドレイン上の前記ゲート酸化物上、および前記犠牲層上に層を形成し、ベース基板を形成するステップと、
垂直相互接続アクセス(ビア)および絶縁材料に部分的にカプセル化された金属相互接続を製造するステップであって、前記ビアは、前記ソースおよびドレインを前記金属相互接続に電気的に接続する、ステップと、を含む、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記エッチング停止材料を堆積するステップの前に、前記方法は、前記シリコンオンインシュレータ基板の前記絶縁体層まで前記2つのシリコン層のうちの他方の一部をエッチングすることにより、前記流体システムの前記第2の空洞を画定するステップをさらに含み、前記エッチング除去された部分は、前記チャネルに対向している、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記エッチング停止材料は、前記2つのシリコン層のうちの他方および前記絶縁体層の露出部分上に堆積されて前記ベース基板を形成する固体材料である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記第2のナノスケール開口部は、前記固体材料の一部を通してエッチングすることにより画定される、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記第1の空洞を画定するステップは、
前記絶縁材料の領域を前記犠牲層までエッチングするステップであって、前記領域は、前記チャネルに接する、ステップと、
前記犠牲層をエッチングして、前記チャネル上の前記ゲート酸化物を露出させるステップと、を含み、
前記貫通ビアを画定するステップは、
前記ゲート酸化物、前記シリコンオンインシュレータ基板の前記2つのシリコン層のうちの1つ、および前記シリコンオンインシュレータ基板の前記絶縁体層のそれぞれの一部をエッチングして、前記固体材料を露出させるステップを含む、請求項18または19に記載の方法。
【請求項21】
前記方法は、
前記貫通ビア内の前記シリコンオンインシュレータ基板の前記2つのシリコン層のうちの1つの露出部分を酸化するステップをさらに含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記方法は、
前記貫通ビア内の前記シリコンオンインシュレータ基板の前記2つのシリコン層のうちの1つの露出部分上に絶縁層を堆積または成長させるステップをさらに含む、請求項20に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願へのクロスレファレンス
本出願は、2018年2月16日に出願された米国仮出願第62/710,350号の利益を主張し、その内容は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
様々なポリヌクレオチドシークエンシング技術は、局所的な支持体表面上または事前定義された反応チャンバ内で多数の制御された反応を実行することを伴う。次に、指定された反応が観察または検出され、その後の分析により、反応に関与するポリヌクレオチドの特性を特定または明らかにすることができる。イオン電流のチャネルを提供できるナノポアを利用する別のポリヌクレオチドシークエンシング技術が開発された。ポリヌクレオチドはナノポアを通過し、ポリヌクレオチドがナノポアを通過すると、ナノポアを通る電流が乱される。通過する各ヌクレオチド、または一連のヌクレオチドは、特徴的な電流を生成し、電流レベルの記録は、ポリヌクレオチドの配列に対応する。
【発明の概要】
【0003】
本明細書で開示される第1の態様は、デバイスである。一例では、デバイスは、シス電極に関連付けられたシスウェルと、トランス電極に関連付けられたトランスウェルと、シスウェルとトランスウェルとの間に配置された電界効果トランジスタ(FET)と、を備え、電界効果トランジスタ(FET)は、その中に画定された流体システムを備え、流体システムは、シスウェルに面した第1の空洞と、トランスウェルに流体接続された第2の空洞と、第1の空洞から電界効果トランジスタを通って延びる貫通ビアと、を備え、デバイスは、シスウェルと第1の空洞を流体接続する第1のナノスケール開口部であって、第1のナノスケール開口部は、内径を有する、第1のナノスケール開口部と、貫通ビアと第2の空洞とを流体接続する第2のナノスケール開口部であって、第2のナノスケール開口部は、内径を有する、第2のナノスケール開口部と、を備え、第2のナノスケール開口部内径は、第1のナノスケール開口部内径よりも大きい。
【0004】
デバイスの一例では、第2のナノスケール開口部内径は、第1のナノスケール開口部内径より少なくとも約2倍大きい。第1のナノスケール開口部内径は、約1nm~約3nmの範囲である。第2のナノスケール開口部内径は、約2nm~約20nmの範囲である。
【0005】
デバイスの一例では、第2のナノスケール開口部内径は、第1のナノスケール開口部内径の約2倍から第1のナノスケール開口部内径の約5倍大きい範囲である。
【0006】
デバイスの一例では、第1のナノスケール開口部内径は約0.5nm~約3nmの範囲である。第2のナノスケール開口部内径は、約10nm~約20nmの範囲である。
【0007】
デバイスの一例では、第2のナノスケール開口部内径は、第1のナノスケール開口部内径よりも約3倍大きい。第1のナノスケール開口部内径は、約1nm~約2nmの範囲である。第2のナノスケール開口部内径は、約10nm~約20nmの範囲である。
【0008】
デバイスの一例は、シスウェルと第1の空洞との間に配置された膜をさらに備え、第1のナノスケール開口部は膜を通って延びる。一例として、膜は、脂質および脂質の生体模倣同等物からなる群から選択されてもよい。この一例では、第1のナノスケール開口部は、膜に配置された、ポリヌクレオチドナノポア、ポリペプチドナノポアまたはカーボンナノチューブを通って延びている。他の例として、膜は合成膜であり、第1のナノスケール開口部は、固体ナノポアである。
【0009】
デバイスの一例では、第1のナノスケール開口部は可変の電気抵抗を有する。第2のナノスケール開口部は、少なくとも実質的に固定された電気抵抗を有する。
【0010】
一例では、デバイスはナノポアシーケンサを備える。この例では、アレイは、複数のナノポアシーケンサを含むことができ、複数のナノポアシーケンサのそれぞれは共通のシス電極と共通のトランス電極を共有する。または、複数のナノポアシーケンサのそれぞれは、別個のシス電極と別個のトランス電極を有する。または、複数のナノポアシーケンサのそれぞれは、共通のシス電極を共有し、別個のトランス電極を有する。または、複数のナノポアシーケンサのそれぞれは、別個のシス電極を有し、共通のトランス電極を共有する。
【0011】
本明細書に開示されるデバイスおよび/またはアレイの任意の特徴は、任意の望ましい方法および/または任意の構成で一緒に組み合わせることができることを理解されたい。
【0012】
本明細書で開示される第2の態様は、本明細書で開示されるデバイスの例を使用する方法である。一例では、デバイスを使用する方法は、シスウェル、トランスウェル、第1の空洞、FET貫通ビア、および第2の空洞のそれぞれに電解質を導入するステップと、電圧バイアスを、第1のナノスケール開口部を通してポリヌクレオチドを駆動するのに十分にシス電極とトランス電極の間に印加するステップであって、第1のナノスケール開口部の電気抵抗は、ポリヌクレオチドの塩基の同一性に応じて変化し、FET貫通ビアの電解質の電位は、第1のナノスケール開口部の電気抵抗の変動に応じて変化する、ステップと、ポリヌクレオチドが第1のナノスケール開口部を通って駆動されるときのFETの応答を測定して、ポリヌクレオチドの塩基を識別するステップと、を含む。
【0013】
デバイスを使用する方法の一例では、FETは、ソース、ドレイン、およびチャネルをさらに備え、FETの応答を測定するステップは、ソース-ドレイン電流を測定するステップ、または、ソース、ドレイン、またはソースとドレインの両方の電位を測定するステップ、または、チャネルの抵抗を測定するステップ、またはその組み合わせを含む。
【0014】
デバイスを使用する方法の任意の特徴は、任意の望ましい方法で一緒に組み合わせることができることを理解されたい。さらに、この方法および/またはデバイスおよび/またはアレイの特徴の任意の組み合わせを一緒に使用してもよく、および/または本明細書に開示した例のいずれかと組み合わせてもよいことを理解されたい。
【0015】
本明細書で開示される第3の態様は方法である。一例では、この方法は、電界効果トランジスタを製造するステップと、その中に流体システムを画定するステップと、を含み、流体システムは、入口端と出口端を有する第1の空洞と、第1の空洞に対向する第2の空洞と、を含み、この方法は、第1の空洞出口端から第2の空洞に向かって電界効果トランジスタを通る貫通ビアを画定するステップと、第1の空洞の入口端を覆う膜を画定するステップであって、膜は、それを通る第1のナノスケール開口部を有し、第1のナノスケール開口部は、内径を有する、ステップと、貫通ビアを第2の空洞に流体接続させるために、電界効果トランジスタのベース基板を通る第2のナノスケール開口部を画定するステップであって、第2のナノスケール開口部は、内径を有し、第2のナノスケール開口部内径は、第1のナノスケール開口部内径より大きい、ステップと、を含む。
【0016】
この方法の一例は、シスウェルを第1のナノスケール開口部に流体接続するステップであって、シスウェルは、シス電極に関連付けられる、ステップと、トランスウェルを第2の空洞に流体接続するステップであって、トランスウェルは、トランス電極と関連付けられ、それにより、ナノポアシーケンサを形成する、ステップと、ナノポアシーケンサを電解質に浸漬するステップと、をさらに含む。
【0017】
この方法の一例では、電界効果トランジスタを製造するステップは、シリコンオンインシュレータ基板のシリコン層にソース、ドレイン、およびチャネルを画定するステップと、シリコン層の表面を酸化して、ソース、ドレイン、およびチャネル上にゲート酸化物を形成するステップと、チャネル上のゲート酸化物上に犠牲層を形成するステップと、エッチング停止材料を堆積して、ソース上およびドレイン上のゲート酸化物上、および犠牲層上に層を形成し、ベース基板を形成するステップと、垂直相互接続アクセス(ビア)および絶縁材料に部分的にカプセル化された金属相互接続を製造するステップであって、ビアは、ソースおよびドレインを金属相互接続に電気的に接続する、ステップと、を含む。
【0018】
この例では、エッチング停止材料を堆積する前に、この方法は、絶縁体基板上のシリコンの絶縁体層まで第2のシリコン層の一部をエッチングすることにより、流体システムの第2の空洞を画定するステップをさらに含み、エッチング除去された部分は、チャンネルに対向している。
【0019】
この例では、エッチング停止材料は、第2のシリコン層および絶縁体層の露出部分上に堆積されて、ベース基板を形成する固体材料である。この例では、第2のナノスケール開口部は、固体材料の一部をエッチングすることにより画定される。
【0020】
また、この例では、第1の空洞を画定するステップは、絶縁層の領域を犠牲層までエッチングするステップであって、領域は、チャネルに接する、ステップと、犠牲層をエッチングして、チャネル上のゲート酸化物を露出させるステップと、貫通ビアを画定するステップは、ゲート酸化物、シリコンオンインシュレータ基板のシリコン層、およびシリコンオンインシュレータ基板の絶縁層のそれぞれの一部をエッチングして、固体材料を露出させるステップを含むことができる。この方法のこの例は、貫通ビア内のシリコンオンインシュレータ基板のシリコン層の露出部分を酸化するステップをさらに含むことができる。この方法のこの例は、貫通ビア内のシリコンオンインシュレータ基板のシリコン層の露出部分上に絶縁層を堆積または成長させるステップをさらに含むことができる。
【0021】
この方法の特徴は、望ましい方法で組み合わせることができることを理解されたい。さらに、任意のこの方法および/またはデバイスの使用方法および/またはデバイスおよび/またはアレイの特徴の組み合わせは、一緒に使用することができ、および/または本明細書に開示される例のいずれかと組み合わせることができることを理解されたい。
【0022】
さらに、任意のデバイスおよび/またはアレイおよび/または任意の方法の任意の特徴または特徴の組み合わせは、任意の望ましい方法で一緒に組み合わせることができ、および/または本明細書に開示される例のいずれかと組み合わせることができることを理解されたい。
【0023】
本開示の例の特徴は、以下の詳細な説明および図面を参照することにより明らかになるであろう。図面では、同様の参照番号は、おそらく同一ではないが類似の構成要素に対応する。簡潔にするために、前述の機能を有する参照番号または特徴は、それらが現れる他の図面に関連して説明されてもされなくてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1A】電界効果トランジスタが組み込まれていないナノポアセンサアレイの概略部分断面図である。
図1B】“図1B参照”と表示された図1Aの部分の拡大図である。図1のナノポアセンサーにおけるイオン流のバランスを模式的に示している。
図2A】本明細書に開示されるデバイスの一例の切断概略図および部分断面図である。
図2B】本明細書に開示されるデバイスの他の例の切断概略図および部分断面図である。
図3図2Bの線3-3で取られた上部断面図であり、ソースおよびドレイン、ゲート酸化物および貫通ビアの例を示している。
図4】使用中に概略的に示された、図2Aのデバイスの例の切断概略図および部分断面図である。
図5】寿命(時間単位、Y軸)対電極直径(ミクロン単位、X軸)を示すグラフである。
図6A】例示的デバイスの例示的アレイの切断概略図および部分断面図である。
図6B】例示的なデバイスのアレイの例示的な構成の概略ブロック図である。
図6C】例示的なデバイスのアレイの例示的な構成の概略ブロック図である。
図6D】例示的なデバイスのアレイの例示的な構成の概略ブロック図である。
図6E】例示的なデバイスのアレイの例示的な構成の概略ブロック図である。
図7図4のデバイスに関連する本明細書で開示される方法の一例を示すフロー図である。
図8A】デバイスの一例の電界効果トランジスタ部分の一例を製造する方法の一例を共に示している。
図8B】デバイスの一例の電界効果トランジスタ部分の一例を製造する方法の一例を共に示している。
図8C】デバイスの一例の電界効果トランジスタ部分の一例を製造する方法の一例を共に示している。
図8D】デバイスの一例の電界効果トランジスタ部分の一例を製造する方法の一例を共に示している。
図8E】デバイスの一例の電界効果トランジスタ部分の一例を製造する方法の一例を共に示している。
図8F】デバイスの一例の電界効果トランジスタ部分の一例を製造する方法の一例を共に示している。
図8G】デバイスの一例の電界効果トランジスタ部分の一例を製造する方法の一例を共に示している。
図8H】デバイスの一例の電界効果トランジスタ部分の一例を製造する方法の一例を共に示している。
図8I】デバイスの一例の電界効果トランジスタ部分の一例を製造する方法の一例を共に示している。
図8J】デバイスの一例の電界効果トランジスタ部分の一例を製造する方法の一例を共に示している。
図8K】デバイスの一例の電界効果トランジスタ部分の一例を製造する方法の一例を共に示している。
図8L】デバイスの一例の電界効果トランジスタ部分の一例を製造する方法の一例を共に示している。
図8M】デバイスの一例の電界効果トランジスタ部分の一例を製造する方法の一例を共に示している。
【発明を実施するための形態】
【0025】
ナノポアセンサアレイAの概略部分断面図を図1Aに示す。ナノポアセンサアレイAは、シス/上部電極30を備えた共通のシスウェル14と、個別にアドレス可能なトランス/下部電極34を備えたトランスウェル16のアレイとを備える。ナノポア18は、シスウェル14とそれぞれのトランスウェル16とを流体接続し、電解質20は、シスウェル14とトランスウェル16内にある。電流は、各ナノポア18を通過し、下部電極34によって測定される。
【0026】
個別にアドレス指定可能なトランス電極を使用すると、場合によっては、図1Aに示すアーキテクチャのスケーラビリティが制限されることがある。電極での関連する電気化学的半反応式の例は次のとおりである。
【0027】
シス(カソード):AgCl+e>Ag+Cl
【0028】
トランス(アノード):Ag+Cl>AgCl+e
【0029】
電流の単位電荷ごとに、トランス電極で1つのCl原子が消費される。しかしながら、ナノポア18によって運ばれる電流は、KおよびClイオンから等しく構成される。これにより、図1Bに概略的に示すように、トランスウェル内のClの供給と消費の間に不均衡が生じる。
【0030】
時間の経過とともに、トランスウェル内のClは、電気化学反応によって枯渇して電流が流れる。センサアレイAがスケーリングされると、各トランスウェル16の体積は、通常、ウェル寸法の3乗として枯渇する(一定のアスペクト比が維持されると仮定)。図5に示すように、センサアレイAの使用可能寿命の結果として生じる減少は、著しい場合がある。実用的なセンサの寿命(例えば、約48時間)を達成するために、トランスウェルの直径は100μm以上に維持される。しかしながら、電流の測定に使用される回路のピッチを10μm以下に減らすことができるため、センサアレイAの全体的なスケーラビリティは、電流を流す必要性によって制限される場合がある。
【0031】
上記の説明は、NaClまたはKCl溶液中のAg/AgCl電極に関するものであるが、これらの考慮事項は、電流を流すために使用できる電極/電解質のペアに適用されることを理解されたい。トランス電極34上で電解質の消費があり、利用可能な電解質20の体積は、センサアレイAの寿命の制限因子である。
【0032】
以下でさらに詳細に説明するように、本開示によるデバイスおよび方法の例は、FETを組み込み、個別にアドレス可能なトランスウェルおよび電極を含む必要はない。したがって、本開示の例によるトランスウェルは、センサアレイAのトランスウェルよりもはるかに大きくなる可能性があり、それにより、デバイスの寿命を改善するための望ましいスケーリングが可能になる。
【0033】
ナノポアシークエンシングの手法では、電流の変化を使用してヌクレオチド塩基を区別する。上記のように、ナノポアシーケンサでは、システムを通るファラデー電流をサポートするために、1つの電解質酸化還元試薬がトランスウェル(またはチャンバ)電極で部分的に消費される場合がある。部分的に消費された電解質酸化還元試薬は、ナノポアを介したイオン輸送阻害に一部起因して、対応するシスウェル電極に効率的に補充されない場合がある。例えば、塩化物アニオンは、めっきのためにトランス側で部分的に枯渇し、シス側では完全に補充されない場合がある。電解質酸化還元試薬(例えば、カチオンとアニオンなど)の両方で濃度勾配が発生し、トランス側の部分的に枯渇した試薬の濃度がはるかに低くなると新しい平衡が確立される。図1Bに示すように、ナノポアを通る電解質酸化還元試薬の輸送とトランス電極上の試薬の1つの部分的な消費の不均衡は、電流ドリフトを引き起こし、ヌクレオチド塩基を区別する能力に悪影響を及ぼす可能性がある。
【0034】
電解質酸化還元試薬の部分的な消費は、電解質酸化還元試薬の開始濃度、ナノポアを通過する電流、およびトランスチャンバのサイズなどを含むいくつかの要因に依存する(例えば、より大きなチャンバは、一般的に試料の消費量が少なく、チャンバが小さいほど、一般的に試薬の消費量が増加する)。
【0035】
部分的な消費は、初期試薬濃度の減少によって証明される場合があり、その減少は10倍よりも大きくなる。場合によっては、減少の範囲は20倍から100倍である。例えば、10μmトランスウェルで約300mMの初期塩化物濃度を有する電解質の塩化物濃度は、約10mMに低下する可能性があり、したがって、初期濃度は約30分の1に減少する。他の例では、10μmトランスウェルで約10mMの初期塩化物濃度を有する電解質の塩化物濃度は、約0.1mMにまで低下する可能性があり、したがって、初期濃度は約100分の1に減少する。部分的な消費/枯渇は100%に近づく(すなわち、システムに残っている電解質酸化還元試薬が0%に近づく)ことができるが、部分的に消費される試薬のそのような低レベルであっても、電解質酸化還元試薬間で平衡が確立されることを理解されたい。
【0036】
前述のように、ナノポアシークエンシングの手法では、電流の変化を利用してヌクレオチド塩基を区別する。電解質種の枯渇は、電流の減少(または望ましくないシフト)をもたらし、ヌクレオチド塩基の正確な電流測定値を取得する能力に悪影響を及ぼす。本開示の例示的なデバイスによって可能にされたより大きなトランスチャンバ/ウェルを有する能力は、経時的により多くの試薬が存在することをもたらす(例えば、上述の例示的なセンサアレイAと比較して)。そのため、試薬の消費または枯渇の影響が最小限に抑えられ、電流ドリフトが軽減され、電解質、トランス電極、およびトランスウェルの寿命が長くなる。したがって、本明細書で開示されるシークエンシング用デバイスおよび方法の例は、例示的なデバイスの寿命を延ばし(例えば、図5を参照)、センサアレイの密度の100倍(100倍)を超える低減を可能にする。
【0037】
本明細書で使用される用語は、他に特定されない限り、関連技術における通常の意味をとることを理解されたい。ここで使用されるいくつかの用語とその意味を以下に示す。
【0038】
単数形“a”、“an”、および“the”には、文脈からそうでないことが明確に示されていない限り、複数の指示対象が含まれる。
【0039】
これらの用語のさまざまな形式を備える、含む、含む、およびこれらの用語は、互いに同義語であり、等しく広いことを意味する。さらに、そうではないと明示的に述べられない限り、特定の特性を有する要素または複数の要素を備える、含む、または有する例は、追加の要素がその特性を有するかどうかにかかわらず、追加の要素を含み得る。
【0040】
本明細書で使用される“流体接続”、“流体連通”、“流体結合”などの用語は、液体または気体が2つの空間領域間を流れるように接続される2つの空間領域を指す。例えば、シスウェル/ウェルは、電解質の少なくとも一部が接続されたウェル間を流れることができるように、第1の空洞、貫通ビア、および第2の空洞を介してトランスウェル/ウェルに流体接続されてもよい。2つの空間領域は、第1および第2のナノスケール開口部を介して、または1つまたは複数のバルブ、リストリクタ、またはシステムを通る流体の流れを制御または調整する他の流体コンポーネントを介して流体連通していてもよい。
【0041】
本明細書で使用する“間質領域”という用語は、基板/固体支持体または膜の領域、または支持体または膜または表面に関連する他の領域、領域、特徴を分離する表面上の領域を指す。例えば、膜の間質領域は、アレイの1つのナノポアをアレイの別のナノポアから分離することができる。他の例として、基板の間質領域は、あるトランスウェルを別のトランスウェルから分離することができる。互いに分離されている2つの領域は、個別である場合がある。すなわち、互いに物理的に接触していない場合がある。多くの例では、間質領域は連続的であるのに対し、例えば、そうでなければ連続膜に定義された複数のナノポアの場合、またはそうでなければ連続基板/支持体に定義された複数のウェルの場合のように、領域は離散的である。間質領域によって提供される分離は、部分的または完全な分離になる。間質領域には、表面に定義された特徴の表面材料とは異なる表面材料が含まれている場合がある。例えば、間質領域の表面材料は脂質材料であってもよく、脂質材料に形成されたナノポアは、間質領域に存在する量または濃度を超えるポリペプチドの量または濃度を有し得る。いくつかの例では、ポリペプチドは、間質領域に存在しなくてもよい。
【0042】
本明細書で使用される場合、“膜”という用語は、その中に同じ組成物または異なる組成物を含むことができる2つの液体/ゲルチャンバ(例えば、シスウェルおよび流体空洞)を分離する非透過性または半透過性バリアまたは他のシートを指す。特定の種に対する膜の透過性は、膜の性質に依存する。いくつかの例では、膜は、イオン、電流、および/または流体に対して非透過性であってもよい。例えば、脂質膜は、イオン不透過性(すなわち、それを通るイオン輸送を一切許可しない)であってもよいが、少なくとも部分的に水透過性であってもよい(例えば、水拡散率は約40μm/s~約100μm/sの範囲である)。他の例として、その一例が窒化ケイ素である合成/固体膜は、イオン、電荷、および流体に対して不浸透性であり得る(すなわち、これらの種すべての拡散はゼロである)。膜が膜貫通ナノスケール開口部を含むことができ、膜全体で電位差を維持できる限り、任意の膜を本開示に従って使用することができる。膜は、単層または多層膜であってもよい。多層膜は2つ以上の層を含み、それぞれが非透過性または半透過性の材料である。
【0043】
膜は、生物学的または非生物学的起源の材料で形成されてもよい。生物学的起源の材料とは、生物や細胞などの生物学的環境に由来する、またはそれらから分離された材料、または生物学的に利用可能な構造の合成製造バージョン(例えば、生体模倣材料など)を指す。
【0044】
生物学的起源の材料から作られた膜の例には、ボラ脂質によって形成された単層が含まれる。生物学的起源の材料から作られた他の例示的な膜には、脂質二重層が含まれる。適切な脂質二重層には、例えば、細胞の膜、細胞小器官の膜、リポソーム、平面脂質二重層、および支持脂質二重層が含まれる。脂質二重層は、例えば、リン脂質の2つの相対する層から形成できる。これらの層は、疎水性の尾部基が互いに向かい合って疎水性の内部を形成し、一方、脂質の親水性の頭部基が二重層の各側の水性環境に向かって外向きになるように配置されている。脂質二重層は、例えば、脂質単層が水溶液/空気界面に運ばれて、その界面に垂直な開口部の両側を通過する方法によって形成することもできる。脂質は、通常、最初に有機溶媒に溶解し、次に、開口部の両側の水溶液の表面で溶媒の液滴を蒸発させることにより、電解質水溶液の表面に加えられる。有機溶媒が少なくとも部分的に蒸発すると、開口部の両側の溶液/空気界面は、二重層が形成されるまで開口部を物理的に上下に移動する。二重層形成の他の適切な方法には、チップ浸漬、二重層の塗装、およびリポソーム二重層のパッチクランプが含まれる。脂質二重層を取得または生成する他の方法も使用できる。
【0045】
生物学的起源ではない材料も膜として使用できる。これらの材料のいくつかは固体材料であり、固体膜を形成でき、これらの材料の他は、薄い液体フィルムまたは薄膜を形成できる。固体膜は、支持基板(すなわち、固体支持体)上のコーティングまたはフィルム、または自立要素などの単層であり得る。固体膜は、サンドイッチ構成の多層材料の複合体であってもよい。結果として生じる膜が膜貫通ナノスケール開口部を含むことができ、膜全体で電位差を維持できる限り、生物学的起源ではない任意の材料を使用してもよい。膜は、有機材料、無機材料、またはその両方を含んでもよい。適切な固体材料の例には、例えば、マイクロエレクトロニクス材料、絶縁材料(例えば、窒化ケイ素(Si)、酸化アルミニウム(Al)、酸化ハフニウム(HfO)、五酸化タンタル(TA)、酸化ケイ素(SiO)など)、一部の有機および無機ポリマ(例えば、ポリアミド、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などのプラスチック、または2成分付加硬化型シリコーンゴムなどのエラストマ)、およびガラスが含まれる。さらに、固体膜は、グラフェンの単層から作成できる。グラフェンは、2次元のハニカム格子、グラフェンの多層、または他の個体材料の1つまたは複数の層と混合されたグラフェンの1つまたは複数の層に密に詰め込まれた炭素原子の原子的に薄いシートである。グラフェン含有固体膜は、グラフェンナノリボンまたはグラフェンナノギャップである少なくとも1つのグラフェン層を含むことができ、これは標的ポリヌクレオチドを特徴付ける電気センサとして使用することができる。固体膜は、任意の適切な方法、例えば、化学気相成長法(CVD)によって作成できることを理解されたい。一例では、グラフェン膜は、CVDまたはグラファイトからの剥離のいずれかにより調製することができる。使用できる適切な薄い液体フィルム材料の例には、両親媒性PMOXA-PDMS-PMOXAABAトリブロック共重合体などのジブロックコポリマーまたはトリブロックコポリマーが含まれる。
【0046】
本明細書で使用される“ナノポア”という用語は、イオン、電流、および/または流体が膜の一方の側から膜の他方の側に交差することを可能にする、膜とは別個の、または膜で画定され、膜を横切って延びる中空構造を意味するものとする。例えば、イオンまたは水溶性分子の通過を阻害する膜は、膜の一方の側から膜の他方の側へのイオンまたは水溶性分子の通過(ナノポア構造を通って延びるナノスケール開口/チャネルを通る)を可能にするために、膜を横切って延びるナノポア構造を含むことができる。ナノポア構造を貫通するナノスケールの開口部/チャネルの直径は、その長さに沿って(すなわち、膜の一方の側から膜の他方の側に)変化するが、任意の点でナノスケールにある(すなわち、約1nm~約100nm、または1000nm未満)。ナノポアの例には、例えば、生物学的ナノポア、固体状態のナノポア、生物学的および固体ハイブリッドナノポアが含まれる。
【0047】
本明細書で使用される“直径”という用語は、ナノスケール開口の断面の重心を通るナノスケール開口の断面に刻むことができる最長の直線を意味することを意図している。ナノスケール開口部は、円形または実質的に円形の断面を有していても有していなくてもよいことを理解されたい(ナノスケール開口部の断面は、シス/トランス電極と実質的に平行である)。さらに、断面は規則的または不規則な形状であってもよい。
【0048】
本明細書で使用される“生物学的ナノポア”という用語は、その構造部分が生物学的起源の材料から作られているナノポアを意味することを意図している。生物学的起源とは、生物や細胞などの生物学的環境、または生物学的に利用可能な構造の合成的に製造されたバージョンに由来する、またはそれらから分離された材料を指す。生物学的ナノポアには、例えば、ポリペプチドナノポアおよびポリヌクレオチドナノポアが含まれる。
【0049】
本明細書で使用される“ポリペプチドナノポア”という用語は、膜を横切って延び、イオン、電流、および/または流体が膜の一方の側から膜の他方の側に流れることを可能にするタンパク質/ポリペプチドを意味するものとする。ポリペプチドナノポアは、モノマ、ホモポリマ、またはヘテロポリマであり得る。ポリペプチドナノポアの構造には、例えば、α-ヘリックスバンドルナノポアおよびβ-バレルナノポアが含まれる。ポリペプチドナノポアの例には、α-溶血素、マイコバクテリウムスメグマチスポリン(Mycobacterium smegmatis porin) A(MspA)、グラミシジンA、マルトポリン、OmpF、OmpC、PhoE、Tsx、F-pilusなどが含まれる。タンパク質α-溶血素は、細胞膜に自然に存在し、そこで、細胞内外に輸送されるイオンまたは分子のチャネルとして機能する。マイコバクテリウムスメグマチスポリンA(MspA)は、マイコバクテリアによって生成される膜ポリンであり、これにより、親水性分子が細菌に侵入する。MspAは、密に相互接続されたオクタマと膜貫通ベータバレルを形成し、ゴブレットに似ており、中央のチャネル/ポアを含んでいる。
【0050】
ポリペプチドナノポアは合成であり得る。合成ポリペプチドナノポアには、自然界には存在しないタンパク質様アミノ酸配列が含まれている。タンパク質様アミノ酸配列には、存在することが知られているがタンパク質の基礎を形成しないアミノ酸の一部(すなわち、非タンパク質構成アミノ酸)が含まれる場合がある。タンパク質様アミノ酸配列は、生物で発現させるのではなく人工的に合成し、精製/単離することができる。
【0051】
本明細書で使用する“ポリヌクレオチドナノポア”という用語は、膜を横切って延び、イオン、電流、および/または流体が膜の一方の側から膜の他方の側に流れることを可能にするポリヌクレオチドを含むことを意図する。ポリヌクレオチドポアは、例えば、ポリヌクレオチドオリガミ(例えば、ナノポアを作成するためのDNAのナノスケール折り畳み)を含むことができる。
【0052】
また、本明細書で使用される“固体ナノポア”という用語は、その構造部分が固体状態の膜によって定義され、非生物学的起源の材料を含むナノポアを意味することを意図している(すなわち、生物学的起源でない)。固体ナノポアは、無機または有機材料で形成することができる。固体ナノポアには、例えば、窒化ケイ素ナノポア、二酸化ケイ素ナノポア、およびグラフェンナノポアが含まれる。
【0053】
本明細書に開示されるナノポアは、ハイブリッドナノポアであってもよい。“ハイブリッドナノポア”とは、生物学的および非生物学的起源の両方の材料を含むナノポアを指す。ハイブリッドナノポアの例には、ポリペプチド固体ハイブリッドナノポアおよびポリヌクレオチド固体ナノポアが含まれる。
【0054】
本明細書で使用される“ナノポアシーケンサ”という用語は、ナノポアシークエンシングに使用できる本明細書で開示されるデバイスのいずれかを指す。本明細書に開示される例では、ナノポアシークエンシング中に、ナノポアが本明細書に開示される電解質の例に浸漬され、電位差が膜全体に印加される。一例では、電位差は、電位差または電気化学的電位差である。シスウェルまたは1つまたは複数のトランスウェルに含まれる電解質のイオンの少なくとも1つに電流を注入または投与する電圧源を介して、膜全体に電位差をかけることができる。電気化学的電位差は、電位と組み合わせたシスおよびトランスウェルのイオン組成の違いによって確立できる。異なるイオン組成は、例えば、各ウェル内の異なるイオン、または各ウェル内の同じイオンの異なる濃度であり得る。
【0055】
ナノポアにわたる電位差の印加は、第1のナノスケール開口部23を通る核酸の移動を強制し得る(例えば、図2Aおよび以下で詳しく説明する)。ナノポアを介したヌクレオチドの転座に対応する1つまたは複数の信号が生成される。したがって、標的ポリヌクレオチドとして、または標的ポリヌクレオチドまたはモノヌクレオチドに由来するモノヌクレオチドまたはプローブとして、ナノポアを通過すると、狭窄の塩基依存性(またはプローブ依存性)遮断により膜を横切る電流が変化する。電流の変化からの信号は、さまざまな方法のいずれかを使用して測定できる。各信号は、結果として生じる信号を使用してポリヌクレオチドの特性を決定できるように、ナノポア内のヌクレオチド(またはプローブ)の種に固有のものである。例えば、特徴的な信号を生成するヌクレオチド(またはプローブ)の1つまたは複数の種の同一性を決定することができる。
【0056】
本明細書で使用される“ヌクレオチド”には、窒素含有複素環式塩基、糖、および1つまたは複数のリン酸基が含まれる。ヌクレオチドは、核酸配列の単量体単位である。ヌクレオチドの例には、例えば、リボヌクレオチドまたはデオキシリボヌクレオチドが含まれる。リボヌクレオチド(RNA)では、糖は、リボースであり、デオキシリボヌクレオチド(DNA)では、糖は、デオキシリボース、すなわち、リボースの2’位置に存在するヒドロキシル基を欠く糖である。窒素含有複素環式塩基は、プリン塩基またはピリミジン塩基であり得る。プリン塩基には、アデニン(A)およびグアニン(G)、およびそれらの修飾誘導体または類似体が含まれる。ピリミジン塩基には、シトシン(C)、チミン(T)、およびウラシル(U)、およびそれらの修飾誘導体または類似体が含まれる。デオキシリボースのC-1原子は、ピリミジンのN-1またはプリンのN-9に結合している。リン酸基は、一リン酸、二リン酸、または三リン酸の形であってもよい。これらのヌクレオチドは、天然のヌクレオチドであるが、非天然のヌクレオチド、修飾ヌクレオチド、または前述のヌクレオチドの類似体も使用できることをさらに理解されたい。
【0057】
本明細書で使用される“信号”という用語は、情報を表す指標を意味することを意図している。信号には、例えば、電気信号と光信号が含まれる。“電気信号”という用語は、情報を表す電気的品質の指標を指す。指標は、例えば、電流、電圧、トンネリング、抵抗、電位、電圧、コンダクタンス、または横方向の電気的効果である。“電子電流”または“電流”とは、電荷の流れを指す。一例では、電気信号は、ナノポアを通過する電流であってもよく、電位差がナノポアに印加されると電流が流れてもよい。
【0058】
“基材”という用語は、水性液体に不溶性であり、開口部、ポート、または他の同様の液体導管がない液体を通過させることができない剛性の固体支持体を指す。本明細書に開示される例では、基板は、その中に画定されたウェルまたはチャンバを有してもよい。適切な基板の例には、ガラスおよび改質または機能化ガラス、プラスチック(アクリル、ポリスチレン、スチレンと他の材料の共重合体、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリブチレン、ポリウレタン、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)(ChemoursのTEFLON(登録商標)など)、環状オレフィン/シクロオレフィンポリマ(COP)(ZeonのZEONOR(登録商標)など)、ポリイミドなどを含む)、ナイロン、セラミック、シリカまたはシリカベースの材料、シリコンおよび修飾シリコン、炭素、金属、無機ガラス、光ファイバーバンドルが含まれる。
【0059】
本明細書では、上部、下部、下側、上側、上などの用語を使用して、デバイス/ナノポアシーケンサおよび/またはデバイスのさまざまな構成要素を説明する。これらの方向の用語は、特定の方向を意味するものではなく、構成要素間の相対的な方向を指定するために使用されることを理解されたい。方向性のある用語の使用は、本明細書で開示される例を特定の方向に限定するものと解釈されるべきではない。
【0060】
本明細書で使用される場合、“ウェル”、“空洞”および“チャンバ”という用語は、同義語として使用され、流体(例えば、液体、ゲル、気体など)を含むことができるデバイスで定義された個別の機能を指す。シスウェルは、シス電極を含むか、またはシス電極によって部分的に定義されたチャンバであり、トランスウェル/チャンバに流体接続されているFETの流体システムにも流体接続されている。本デバイスのアレイの例は、1つのシスウェルまたは複数のシスウェルを有し得る。トランスウェルは、それ自身のトランス電極を含むか、それによって部分的に画定された単一のチャンバであり、シスウェルにも流体接続されている。複数のトランスウェルを含む例では、各トランスウェルは他のトランスウェルから電気的に絶縁されている。さらに、少なくとも部分的にウェルを画定する基板の表面に平行に取ったウェルの断面は、曲線、正方形、多角形、双曲線、円錐形、角形などであり得ることを理解されたい。
【0061】
本明細書に記載され、特許請求の範囲に列挙される態様および例は、上記の定義を考慮して理解することができる。
【0062】
図2Aおよび図2Bを参照すると、本開示の一例に係るデバイス10が示されている。例示的なデバイス10は、シスウェル14を含む。これは、シス電極30と関連付けられたシスウェル14と、トランス電極34と関連付けられたトランスウェル16と、シスウェル14とトランスウェル16との間に配置された電界効果トランジスタ(FET)22とを含む。FET22は、ソース50、ドレイン52、およびチャネル54(例えば、図3に見られるように)を含む。
【0063】
FET22の一例は、その中に画定された流体システムをさらに含む。流体システムは、シスウェル14に面する第1の空洞15を含む。第2の空洞17は、トランスウェル16に流体接続されており、貫通ビア21は、第1の空洞15からFET22を通って延びている。
【0064】
デバイス10の例は、シスウェル14と第1の空洞15とを流体接続する第1のナノスケール開口部23をさらに含み、第1のナノスケール開口23は、内径23’を有する。第2のナノスケール開口部25は、貫通ビア21と第2の空洞17とを流体接続し、第2のナノスケール開口部25は、内径25’を有する。第2のナノスケール開口部内径25’は、第1のナノスケール開口部内径23’よりも大きい。
【0065】
一例では、第2のナノスケール開口部内径25’は、第1のナノスケール開口部内径23’よりも少なくとも約2倍大きい。他の例では、第2のナノスケール開口部内径は、第1のナノスケール開口部内径23’より約3倍大きい。さらに他の例では、第2のナノスケール開口部内径25’は、第1のナノスケール開口部内径23’の約2倍から第1のナノスケール開口部内径23’の約5倍の範囲である。
【0066】
一例では、第2のナノスケール開口部25の面積は、第1のナノスケール開口部23の面積よりも約5倍から約10倍大きい。
【0067】
さらに、一例では、第1のナノスケール開口部内径23’は、約0.5nm~約3nmの範囲であり、第2のナノスケール開口部内径25’は、約10nm~約20nmの範囲である。他の例では、第1のナノスケール開口部内径23’は、約1nm~約2nmの範囲であり、第2のナノスケール開口部内径25’は、約10nm~約20nmの範囲である。さらに他の例では、第1のナノスケール開口部内径23’は、約1nm~約3nmの範囲であり、第2のナノスケール開口部内径25’は、約2nm~約20nmの範囲である。
【0068】
例示的なデバイス10は、シスウェル14と第1の空洞15との間に配置された膜24をさらに含む。第1のナノスケール開口部23は、膜24を通って延びている。本明細書に記載されるように、膜24は、任意の適切な天然または合成材料から形成され得ることが理解されるべきである。一例では、膜24は、脂質および脂質の生体模倣同等物からなる群から選択され、その例は上で議論されている。さらなる例において、膜24は合成膜(例えば、一例は、窒化ケイ素である固体膜)であり、第1のナノスケール開口部23は、図2Bに示されるように、膜24を貫通する固体ナノポア18’である。
【0069】
図3は、図2Bの線3-3で取られた上部断面図であり、貫通ビア21の側壁上のソース50およびドレイン52、ならびにゲート酸化物56’の例を示している。図3の例示目的のために、絶縁材料68は、チャネル54上には示されていない。貫通ビア21内の電解質20も、この図で見ることができる(貫通ビア21内の点描された領域)。
【0070】
一例では、第1のナノスケール開口部23は、例えば、ポリヌクレオチドナノポア、ポリペプチドナノポア、または膜に配置されたカーボンナノチューブを通って延びる。ポリヌクレオチドナノポア/ポリペプチドナノポアが図2Aの18で概略的に示されており、例えば、カーボンナノチューブなどの固体ナノポアが、図2Bの18’で模式的にかつ仮想線で示されている。
【0071】
一例では、デバイス10は、ナノポアシーケンサである。
【0072】
基板12(図2Bに断面図および仮想線で示されている)は、その中に画定されたトランスウェル16を含むことができる。一例では、トランスウェル16は、FET22の流体システムと、それぞれの第2のナノスケール開口部25および第1のナノスケール開口部23とによって、シスウェル14に流体接続される。1つの共通のシスウェル14と1つの共通のトランスウェル16が図2Aに示されているが、デバイス10のアレイ100(例えば、図6Aを参照)は、互いに流体的に隔離され、互いに流体的に隔離されて基板12に画定されたそれぞれの1つまたは複数のトランスウェル16に流体接続されるいくつかのシスウェル14を含むことができることを理解されたい。例えば、単一の基板12上の複数のサンプルの測定を可能にするために、複数のシスウェル14が望ましい場合がある。
【0073】
第1のナノスケール開口部23/ナノポア18を介した流体連通は、図6Aの矢印で示されている。また、図6Aに示されるように、膜24は、シスウェル14と第1の空洞15との間に配置され、ナノポア18は、膜24内に配置され、膜24を貫通して延び、シスウェル14および第1の空洞15との間に流体接続を確立する。
【0074】
シスウェル14は、例えば、基板12に接続された側壁13によって基板12の一部上に画定される流体チャンバである。いくつかの例では、側壁13および基板12は、それらが連続的な材料片(例えば、ガラスまたはプラスチック)から形成されるように一体的に形成されてもよい。他の例では、側壁13および基板12は、互いに結合される別個の構成要素であってもよい。一例では、側壁13は、フォトパターン化可能なポリマである。
【0075】
図6Aに示す例では、シスウェル14は、側壁13によって画定される内壁26、26’、シス電極30によって画定される上面28、および膜24および間質領域32によって画定される下面28’を有する。したがって、シスウェル14は、シス電極30、基板12の一部、および膜24によって画定される空間内に形成される。下面28’は、膜24を通って延びる第1のナノスケール開口部23を通る開口部を有することを理解されたい。シスウェル14は、任意の適切な寸法を有し得る。一例では、シスウェル14は、約1mm×1mm~約3cm×3cmの範囲である。
【0076】
内面がシスウェル14の上面28であるシス電極30は、側壁13に物理的に接続することができる。シス電極30は、例えば、接着剤または他の適切な締結機構により、側壁13に物理的に接続されてもよい。シス電極30と側壁13との間の界面は、シスウェル14の上部を封止し得る。
【0077】
使用されるシス電極30は、少なくとも部分的に、電解質20中の酸化還元対に依存する。例として、シス電極30は、金(Au)、白金(Pt)、炭素(C)(例えば、グラファイト、ダイヤモンドなど)、パラジウム(Pd)、銀(Ag)、銅(Cu)などであり得る。一例では、シス電極30は、銀/塩化銀(Ag/AgCl)電極であり得る。
【0078】
シスウェル14は、電解質20を第1のナノスケール開口部23と接触状態に維持することができる。一例では、シスウェル14は、ナノポア18のアレイと接触しており、したがって、アレイ内のナノポア18のそれぞれと接触する電解質20を維持することができる。
【0079】
図6Aに示されるように、デバイス10/アレイ100は、共通のトランスウェル16を含む。トランスウェル16は、基板12の一部に画定され得る流体チャンバである。トランスウェル16は、基板12の厚さを貫通して延びてもよく、基板12の対向する端部(例えば、上端部38および下端部40)に開口部を有してもよい。図6Aに仮想線で示すように、デバイス10/アレイ100’のさらなる例では、2つ以上のトランスウェル16がある。各トランスウェル16は、基板12および/または基板12の間質領域32によって画定される側壁31、31’、トランス電極34によって画定される下面36、およびベース基板62'によって画定される上面36’を有する。(以下でさらに詳細に議論される)。したがって、各トランスウェル16は、トランス電極34、基板12の他の部分および/または間質領域32、およびベース基板62’によって画定される空間内に形成される。上面36’は、ベース基板62’を貫通する第2のナノスケール開口部25を含み、FET22の流体システムへの流体連通を提供することを理解されたい。
【0080】
内面がトランスウェル16の下面36であるトランス電極34は、基板12(例えば、間質領域32(存在する場合)または基板12の内壁)に物理的に接続することができる。トランス電極34は、基板12を形成するプロセスで(例えば、トランスウェル16の形成中に)製造することができる。基板12およびトランス電極34を形成するために使用され得る微細加工技術には、リソグラフィ、金属堆積およびリフトオフ、乾燥および/またはスピンオン膜堆積、エッチングなどが含まれる。トランス電極34と基板12との間の界面は、トランスウェル16の下部を密封し得る。
【0081】
使用されるトランス電極34は、少なくとも部分的に、電解質20中の酸化還元対に依存する。例として、トランス電極34は、金(Au)、白金(Pt)、炭素(C)(例えば、グラファイト、ダイヤモンドなど)、パラジウム(Pd)、銀(Ag)、銅(Cu)などであり得る。一例では、トランス電極34は、銀/塩化銀(Ag/AgCl)電極であり得る。
【0082】
規則的、反復的、および非規則的パターンを含む、第1のナノスケール開口部23の多くの異なるレイアウトが想定され得る。一例では、第1のナノスケール開口部23は、密充填および改善された密度のために六角形グリッドに配置される。他のレイアウトには、例えば、直線(すなわち、長方形)レイアウト、三角形レイアウトなどが含まれる場合がある。例として、レイアウトまたはパターンは、行および列にある第1のナノスケール開口部23のx-y形式であり得る。いくつかの他の例では、レイアウトまたはパターンは、第1のナノスケール開口部23および/または間質領域32の繰り返し配列であり得る。さらに他の例では、レイアウトまたはパターンは、第1のナノスケール開口部23および/または間質領域32のランダムな配置であり得る。パターンには、スポット、ポスト、ストライプ、渦巻き、線、三角形、長方形、円、円弧、チェック、格子縞、対角線、矢印、正方形、および/またはクロスハッチが含まれる。
【0083】
レイアウトは、第1のナノスケール開口部23の密度(すなわち、基板12の画定された領域内の第1のナノスケール開口部23の数)に関して特徴付けられてもよい。例えば、第1のナノスケール開口部23は、1mm当たり約10個の第1のナノスケール開口部23から1mm当たり約1,000,000個の第1のナノスケール開口部23の範囲の密度で存在し得る。密度は、例えば、少なくとも約10個/mm、約5,000個/mm、約10,000個/mm、約0.1百万個/mm、または以上の密度を含む異なる密度に調整することができる。代替的または追加的に、密度は、1mm当たり約1,000,000ウェル、1mm当たり約0.1百万、1mm当たり約10,000、1mm当たり約5,000、または以下となるように調整することができる。基板12の第1のナノスケール開口部23の密度は、上記の範囲から選択される下限値の1つと上限値の1つとの間であり得ることがさらに理解されるべきである。
【0084】
レイアウトは、さらにまたは代替的に、平均ピッチ、すなわち、第1のナノスケール開口部23の中心から隣接する第1のナノスケール開口部23の中心までの間隔(中心間間隔)に関して特徴付けられてもよい。パターンは、平均ピッチの周りの変動係数が小さいように規則的であるか、パターンが不規則である場合があり、その場合、変動係数は比較的大きくなる可能性がある。一例では、平均ピッチは、約100nm~約500μmの範囲であり得る。平均ピッチは、例えば、少なくとも約100nm、約5μm、約10μm、約100μm、またはそれ以上であり得る。代替的または追加的に、平均ピッチは、例えば、最大で約500μm、約100μm、約50μm、約10μm、約5μm、またはそれ以下であり得る。デバイス10の例示的なアレイ100の平均ピッチは、上記の範囲から選択されたより低い値の1つとより高い値の1つとの間であり得る。一例では、アレイ100は、約10μmのピッチ(中心間間隔)を有する。他の例では、アレイ100は、約5μmのピッチ(中心間間隔)を有する。さらに他の例では、アレイ100は、約1μm~約10μmの範囲のピッチ(中心間間隔)を有する。
【0085】
トランスウェル16は、マイクロウェル(ミクロンスケールで少なくとも1つの寸法、例えば、約1μmまで、ただし、1000μmを除く)またはナノウェル(ナノスケールで少なくとも1つの寸法、例えば、約10nmまで、ただし、1000nmを除く)であってもよい。各ウェル16は、そのアスペクト比(例えば、この例では、幅または直径を深さまたは高さで割ったもの)によって特徴付けられてもよい。
【0086】
一例では、各トランスウェル16のアスペクト比は、約1:1~約1:5の範囲であり得る。他の例では、各トランスウェル16のアスペクト比は、約1:10~約1:50の範囲であり得る。一例では、トランスウェル16のアスペクト比は約3.3である。
【0087】
望ましいアスペクト比を得るために、深さ/高さと幅/直径を選択することができる。各トランスウェル16の深さ/高さは、少なくとも約0.1μm、約1μm、約10μm、約100μm、またはそれ以上であり得る。代替的または追加的に、深さは、最大で約1,000μm、約100μm、約10μm、約1μm、約0.1μm、またはそれ以下であり得る。各トランスウェル16の幅/直径は、少なくとも約50nm、約0.1μm、約0.5μm、約1μm、約10μm、約100μm、またはそれ以上であり得る。代替的または追加的に、幅/直径は、最大で約1,000μm、約100μm、約10μm、約1μm、約0.5μm、約0.1μm、約50nm、またはそれ以下であり得る。
【0088】
各トランスウェル16は、第2の空洞17に関連付けられるのに十分な大きさの開口部(例えば、FET22の第2の空洞17に流体接続され、それに面する)を有する。
【0089】
シスウェル14およびトランスウェル16は、例えば、フォトリソグラフィ、ナノインプリントリソグラフィ、スタンピング技術、エンボス技術、成形技術、マイクロエッチング技術などを含む様々な技術を使用して製造することができる。当業者によって理解されるように、使用される技術は、基板12および側壁13の組成および形状に依存するであろう。一例では、シスウェル14は、基板12の端部38で側壁13によって画定されてもよく、トランスウェル16は、基板12を通して画定されてもよい。
【0090】
膜24は、本明細書に記載の非透過性または半透過性材料のいずれでもよい。膜24は、シスウェル14と第1の空洞15との間に配置され、したがって、それらの間にバリアを提供する。
【0091】
ナノポア18は、本明細書に記載の生物学的ナノポア、固体ナノポア、ハイブリッドナノポア、および合成ナノポアのいずれでもよい。本明細書で言及されるように、各ナノポア18は、第1の空洞15をシスウェル14に流体接続する。
【0092】
ナノポア18は、2つの開口端と、2つの開口端を接続する中空コアまたは穴(すなわち、第1のナノスケール開口23)を有する。膜24に挿入されると、ナノポア18の開口端の一方は、シスウェル14に面し、ナノポア18の開口端の他方は、第1の空洞15に面する。場合によっては、第1の空洞15に面するナノポア18の開口端は、貫通ビア21に流体接続され、貫通ビア21の少なくとも一部と位置合わせされてもよい。他の例では、第1の空洞15に面するナノポア18の開口端は、貫通ビア21に流体接続されるが、貫通ビア21と整列しない。ナノポア18の中空コアは、シスウェル14と第1の空洞15との間の流体的および電気的接続を可能にする。中空コアの直径は、約1nm~1μmまでの範囲であり、ナノポア18の長さに沿って変化してもよい。いくつかの例では、シスウェル14に面する開口端は、空洞15に面する開口端より大きくてもよい。他の例では、シスウェル14に面する開口端は、第1の空洞15に面する開口端より小さくてもよい。いずれにせよ、上記の第1のナノスケール開口部内径23’の例の範囲は、ナノポア18を通るナノスケール開口部23の最小直径であることが意図されている。
【0093】
ナノポア18は、膜24に挿入されてもよく、または、膜24は、ナノポア18の周りに形成されてもよい。一例では、ナノポア18は、形成された脂質二重層(膜24の一例)にそれ自体を挿入することができる。例えば、モノマ形態またはポリマ形態(例えば、オクタマ)のナノポア18は、それ自体を脂質二重層に挿入し、膜貫通ポアに組み立てることができる。他の例では、ナノポア18は、それが脂質二重層に挿入される望ましい濃度で脂質二重層の接地側に追加されてもよい。さらに他の例では、脂質二重層は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)フィルムの開口部を横切って形成され、シスウェル14と第1の空洞15の間に配置されてもよい。ナノポア18は、接地されたシス区画に追加されてもよく、PTFE開口部が形成される領域で脂質二重層に挿入されてもよい。なおさらなる例では、ナノポア18は、固体支持体(例えば、シリコン、酸化ケイ素、石英、酸化インジウムスズ、金、ポリマなど)につながれてもよい。ナノポア18自体の一部であっても、ナノポア18に付着していてもよいテザリング分子は、ナノポア18を固体支持体に付着させてもよい。テザリング分子を介した付着は、単一のポア18が固定されるようなものであり得る(例えば、シスウェル14と第1の空洞15との間に)。次いで、ナノポア18の周りに脂質二重層が形成され得る。
【0094】
デバイス10の例には、シスウェル14内の電解質20、第1の空洞15、貫通ビア21、第2の空洞17、およびトランスウェル16が含まれる。電解質20は、対イオン(カチオンおよびその関連アニオン)に解離することができる任意の電解質であり得る。例として、電解質は、カリウムカチオン(K)またはナトリウムカチオン(NA)に解離することができる任意の電解質であり得る。このタイプの電解質には、カリウムカチオンと関連アニオン、またはナトリウムカチオンと関連アニオン、またはそれらの組み合わせが含まれる。カリウム含有電解質の例には、塩化カリウム(KCl)、カリウムフェリシアニド(K[Fe(CN)]・3HOまたはK[Fe(CN)]・3HO)、または他のカリウム含有電解質(例えば、重炭酸塩(KHCO)またはリン酸塩(例えば、KHPO、KHPO、KPO)が含まれる。ナトリウム含有電解質の例には、塩化ナトリウム(NaCl)または重炭酸ナトリウム(NaHCO)などの他のナトリウム含有電解質、リン酸ナトリウム(例えば、NaHPO、NaHPOまたはNaPO)が含まれる。他の例として、電解質は、ルテニウム含有カチオン(例えば、[Ru(NH2+または[Ru(NH3+などのルテニウムヘキサミン)に解離することができる任意の電解質であってもよい。リチウムカチオン(Li)、ルビジウムカチオン(Rb)、マグネシウムカチオン(Mg)、またはカルシウムカチオン(Ca)に解離することができる電解質も使用できる。
【0095】
再び図6Aを参照すると、デバイス10のアレイ100が概略的に示されている。上述のように、デバイス10は、ナノポアシーケンサであってもよい。アレイ100の一例では、複数のデバイス10/ナノポアシーケンサのそれぞれは、図6Aおよび図6Bに概略的に示されるように、共通のシス電極30および共通のトランス電極34を共有する。アレイ100’の他の例では、複数のデバイス10/ナノポアシーケンサのそれぞれは、図6Aおよび図6Cに概略的に示されるように、共通のシス電極30を共有し、別個のトランス電極34を有する。アレイ100”のさらに他の例では、複数のデバイス10/ナノポアシーケンサのそれぞれは、図6Dに概略的に示されるように、別個のシス電極30および別個のトランス電極34を有する。アレイ100’’’のさらに他の例では、複数のデバイス10/ナノポアシーケンサのそれぞれは、図6Eに概略的に示されるように、別個のシス電極30を有し、共通のトランス電極34を共有する。
【0096】
図4および図7を参照すると、デバイス10の例を使用する等価回路図および動作原理/方法200が示されている。電解質20は、シスウェル14、トランスウェル16、第1の空洞15、FET貫通ビア21、および第2の空洞17(図7のボックス202に示す)のそれぞれに導入される。電圧バイアス27は、第1のナノスケール開口部23を通してポリヌクレオチド29を駆動するのに十分にシス電極30とトランス電極34との間に印加される。第1のナノスケール開口部23の電気抵抗Rは、ポリヌクレオチド29の塩基の同一性に応じて変化する。FET貫通ビア21内の電解質20の電位は、第1のナノスケール開口部23の電気抵抗Rの変動に応じて変化する(図7のボックス204に示す)。例示的な方法200は、ポリヌクレオチド29が第1のナノスケール開口部23を通って駆動されるときのFET22の応答を測定して、ポリヌクレオチド29の塩基を識別することをさらに含む(図7のボックス206に示す)。
【0097】
方法200は、ナノポアシークエンシング操作中に実行され得る。ナノポア18を横切る電位の印加(すなわち、電流源としてのシスおよびトランス電極30、34によって提供されるバイアス)は、電荷を運ぶアニオンとともにナノポア18を通るヌクレオチド29の移動を強制する。バイアスに応じて、ヌクレオチド29は、シスウェル14から第1の空洞15へ、または第1の空洞15からシスウェル14へ輸送され得る。ヌクレオチド29がナノポア18を通過すると、例えば、狭窄の塩基依存性遮断により、バリアを横切る電流が変化する。その電流の変化からの信号は、FET22を使用して測定できる。
【0098】
電圧の範囲は、約-1Vから約1V以上まで選択できる。通常、電圧極性は、負に帯電した核酸が電気泳動的にナノポア18に駆動されるように適用される。場合によっては、適切な機能を促進するために、電圧を下げるか、極性を逆にすることができる。
【0099】
デバイス10の一例では、第1のナノスケール開口部23は、上述のように可変電気抵抗Rを有する。第2のナノスケール開口部25は、固定された、または少なくとも実質的に固定された電気抵抗Rを有する。
【0100】
FET22の応答を測定する例には、ソース50-ドレイン52電流を測定すること、または、ソース50および/またはドレイン52での電位を測定すること、または、チャネル54の抵抗を測定すること、またはその組み合わせが含まれる。
【0101】
非限定的な例では、第1のナノスケール開口部23/ナノポア18の抵抗は、Rが約0.5~約1ギガオーム(GΩ)であり、第2のナノスケール開口部25の抵抗Rは約50メガオーム(MΩ)である。Rは、第1のナノスケール開口部23を通過するDNA29の関数として変化する。
【0102】
分圧点Mの電位はRとともに変化し、FETゲート51の電位を変調する。固体ナノポアであってもよい第2のナノスケール開口部25の抵抗Rは、固定または少なくとも実質的に固定されており、第1のナノスケール開口部23を通過するDNA29によって変調されない。
【0103】
DNA29が第1のナノスケール開口部23の狭窄部に入ると、第1のナノスケール開口部23の抵抗Rは、DNA鎖29の塩基の同一性に基づいて変調される。抵抗Rは、大きく、異なるDNA塩基が第1のナノスケール開口部23を通過するときに30~40%変化する。前述のように、はるかに大きい第2のナノスケール開口部25/固体ナノポアの抵抗Rは、約10倍低く、ほぼ固定されている(変化しない)。
【0104】
得られる構造は、分圧器であり、点Mの電位は、貫通ビア21内の電解質20の電位である。この電位は、FET22の等価ゲート電位であり、その動作点を確立する。ポイントMの電位が塩基の同一性とともに変化すると、FET22を流れる電流が変化し、第1のナノスケール開口部23を流れる電流、したがって、DNA塩基の同一性が測定される。
【0105】
ナノポアセンサアレイA(図1Aに示すようなもの)では、トランス電極34は、ナノポア18を通してDNAを駆動するため、ならびにナノポア18に関連する電流を読み出すための両方に使用される。したがって、ナノポア18ごとに1つのトランス電極34が必要であり、結果として、前述のスケーラビリティに関する制限が生じる。対照的に、本明細書に開示される例示的なデバイス10では、トランス電極34は、第1のナノスケール開口23を通してDNA29を駆動するために使用されるが、第1のナノスケール開口部23を通って移動するDNA29に対する応答(例えば、ソース-ドレインでの電流)は、FET22センサ(トランス電極34ではない)で読み取られる。
【0106】
デバイス10の例における第2のナノスケール開口部25/固体ナノポアの機能は、分圧器に固定抵抗Rを提供することであるため(ただし、第1のナノスケール開口部23に関連する電流は読み出さない)、第2のナノスケール開口部25は、原子的に正確である必要はない。
【0107】
さらに、トランス電極34の個々のアドレス指定はもはや必要ではないため、センサアレイ100では、トランスウェル16をより大きくすることができ、したがって、電解質20の消費およびセンサ寿命の関連制限を緩和する。したがって、デバイス10の例のスケーラビリティは、はるかに高い。
【0108】
このように、本開示の例に係るデバイス10は、例えば、FET22および分圧器を組み込むことにより、より小さい個別にアドレス可能なトランスウェル16/電極34の代わりに、より大きな共通トランスウェル16を含むことにより、ナノポアセンサアレイ100のスケーラビリティを可能にする。
【0109】
図8Aから図8Mは、本明細書に開示されるデバイス10の例を作成する方法の例を示す。一般に、この方法は、電界効果トランジスタ22を製造するステップを含む。この方法は、その中に流体システムを画定するステップであって、流体システムは、入口端および出口端を有する第1の空洞15と、第1の空洞15に対向する第2の空洞17とを含む、ステップと、第1の空洞出口端76から第2の空洞17に向かって電界効果トランジスタ22を貫通する貫通ビア21を画定するステップと、第1の空洞15の入口端76を覆う膜24を画定するステップであって、膜24はそれを通る第1のナノスケール開口部23を有し、第1のナノスケール開口23は内径23’を有するステップと、電界効果トランジスタ22のベース基板62’を貫通する第2のナノスケール開口部25を画定して、貫通ビア21を第2の空洞17と流体接続するステップであって、第2のナノスケール開口部25は、内径25’を有するステップと、を含み、第2のナノスケール開口部内径25’は、第1のナノスケール開口部内径23’よりも大きい。
【0110】
電界効果トランジスタ22の形成は、図8Aから図8Hに示されている。図8Aから図8Hに示されるように、流体システム構成要素のいくつかは、電界効果トランジスタ22の形成中に形成され得る。
【0111】
電界効果トランジスタ22は、図8Aに示される基板42内および/または基板42上に部分的に製造されてもよい。いくつかの実装形態では、基板42は、シリコンオンインシュレーターウエハであり得る。図8Aに示すように、絶縁体上のシリコン(SOI)基板42は、2つのシリコン層46、48の間に絶縁体層44を含む層状構造である。シリコンオンインシュレータウエハが示されているが、他の適切な半導体基板を使用できることを理解されたい。図8Bに示されるように、ソース50、ドレイン52、およびチャネル54は、基板42のシリコン層46の1つに画定され得る。ソース50、ドレイン52、およびチャネル54は、シリコン層46をコンポーネント50、52、54のそれぞれについて望ましい深さにパターニング(例えば、エッチング)することにより形成され得る。図8Bに示すように、ソース50、ドレイン52、およびチャネル54の形成中、絶縁体層44は露出されない。
【0112】
ソース50、ドレイン52およびチャネル54が画定された後、シリコン層46の表面が酸化され得る。これにより、ソース50、ドレイン52およびチャネル54のそれぞれの表面にゲート酸化物56が形成される。酸化は、熱酸化によって達成することができ、この場合、基板42は、約700℃~約1000℃の範囲の温度の炉内で酸化される。湿式または乾式熱酸化を使用できる。一例では、ゲート酸化物56の厚さは、ソース50、ドレイン52、およびチャネル54にわたって実質的に均一であってもよい。他の例では、ソース50、ドレイン52およびチャネル54上にゲート酸化物56を堆積させることができる。堆積され得る適切なゲート酸化物材料の例には、HfO、Al、Taなどが含まれる。
【0113】
図8Eおよび図8Eに示されるように、この方法はさらに、チャネル54上のゲート酸化物56上に犠牲層58を形成することを含む。一例では、犠牲層58は、ゲート酸化物56の表面全体に堆積され(図8Dに示されるように)、次いで、パターン化され、i)ソース50およびドレイン52および部分を再露出する。ii)チャネル54上に形成されたゲート酸化物56上に犠牲層58の一部を残す。犠牲層58の堆積は、化学蒸着(CVD)または別の適切な堆積技術を使用して達成され得る。パターニングにより、ソース領域50およびドレイン領域52から犠牲層58が選択的に除去される。例では、パターニングは、反応性イオンエッチングプロセスを使用して達成される。他の例(図示せず)では、ソース50とドレイン52をマスクで覆い、犠牲層58をチャネル54の上にあるゲート酸化物56の部分に堆積させることができる。ポリシリコンなどの任意の適切な犠牲材料を層58に使用することができる。図8Eに示されるように、犠牲層58は、チャネル54の上にあるゲート酸化物56上に形成されるか、(パターニング後)上に残る。
【0114】
図8Fでは、流体システムの一部が定義されている。より具体的には、第2の空洞17が画定される。この例では、この方法は、基板42の第2のシリコン層48の一部を基板42の絶縁体層44までエッチングすることにより、流体システムの第2の空洞17を画定することを含み、エッチング除去された部分は、チャンネル54に対向する。ウェットエッチング(例えば、水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)、または硝酸、酢酸、フッ化水素酸の混合物)またはドライエッチング(例えば、HBrを使用)など、任意の適切なシリコンエッチング技術を使用できる。第2の空洞17の寸法は、比較的大きく、約100nm~約1μmの範囲であり得る。図示されるように、第2の空洞17の側壁は、テーパー状または角度を付けられてもよく、したがって、第2の空洞17の深さに沿った寸法は、変化してもよい。
【0115】
FET22の製造は、図8Gおよび図8Hに続く。図8Gでは、エッチング停止材料が堆積されて、ゲート酸化物56(ソース50およびドレイン52上に配置される)上および犠牲層58上に層60を形成し、ベース基板62’を形成する。いくつかの例では、図8Gに示すように、構造の前面と背面の両方に同時に、例えば、化学気相堆積(CVD)でエッチング停止材料を堆積させることができる。他の例では、エッチング停止材料を別個に堆積させて、構造の前面に層60を形成し、構造の背面にベース基板62'を形成してもよい。図8Gに示すように、エッチング停止材料(固体材料62として示される)は、第2のシリコン層48上および絶縁体層44の露出部分上に堆積して、(FET22の)ベース基板62'を形成する。層60およびベース基板62’のエッチング停止材料の例には、窒化ケイ素(Si)、炭化ケイ素(SiC)、酸化アルミニウム(Al)、酸化ハフニウム(HfO)、および五酸化タンタル(Ta)が含まれる。CVDに加えて、これらの材料に適した堆積技術の例には、原子層堆積(ALD)などが含まれる。
【0116】
図8Hに示されるように、垂直相互接続アクセス(ビア)64および絶縁材料68に部分的に封入された金属相互接続66を含むFET22の残りは、半導体処理方法により製造され得る。ビア64は、FETのソース50およびドレイン52を金属相互接続66に電気的に接続する。図8Hに示す例では、それぞれのビア64、64’は、ソース50およびドレイン52とそれぞれ電気的に接触して形成されてもよく、それぞれの金属相互接続66、66’は、それぞれのビア64、64’を外部回路(図示せず)に電気的に接続してもよい。ビア64、64’および金属相互接続66、66’は、任意の適切な金属(例えば、アルミニウム、銅、スズ、タングステン、亜鉛、金、ニッケルなど)、金属合金(例えば、AlSiCu)、または他の導電性であり得る。絶縁材料68は、ベース基板62’と所望のエッチング差を有する任意の適切な絶縁体(例えば、二酸化ケイ素、SiO)であり得る(以下により詳細に説明する)。
【0117】
図8Iおよび図8Jは共に、流体システムの第1の空洞15の形成を示している。第1の空洞15を画定することは、絶縁材料68の領域70を犠牲層58までエッチングすることであって、領域70は、チャネル54に接する(図8I)、ことと、犠牲層58をエッチングして、チャネル54上のゲート酸化物56を露出させる(図8J)ことと、を含む。絶縁材料68および犠牲層58のそれぞれに使用されるエッチング技術は、材料68、58に依存し得る。絶縁材料68が二酸化ケイ素である場合、エッチングは、例えば、フッ素化反応性イオンエッチング(例えば、CHF/O、C、C、およびC/CO/O/Ar)などの高い異方性を有するエッチャントを使用して実行され得る。領域70の寸法は、例えば、約1μmまで(例えば、第1の空洞15の入口端76で)比較的大きくてもよい。図示されるように、領域70の側壁は、ゲート酸化物56)に向かって内向きにテーパーが付けられてもよく、したがって、領域70の深さに沿った寸法は、変化し得る。犠牲層58(図8I)がポリシリコンである場合、エッチングは、例えば、ウェットエッチングまたは反応性イオンエッチングプロセスを使用して実行され得る。犠牲層58のエッチングは、チャネル54上のゲート酸化物56を再露出する。
【0118】
図8Kは、貫通ビア21の形成を示している。貫通ビア21は、最終的に、第1の空洞15を第2のナノスケール開口部25に流体接続する(図8Mを参照)。図8Kに示されるように、貫通ビア21を画定することは、ゲート酸化物56、基板42のシリコン層46、および基板42の絶縁層44のそれぞれの部分をエッチングして、ベース基板62’/固体材料62を露出させることを含む。使用される1つまたは複数のエッチング技術は、エッチングされる材料(例えば、56、46、44)に依存するであろう。ゲート酸化物56からシリコン層46へ、絶縁層44へ移動するときに、エッチング技術またはこの技術で使用されるエッチング液を切り替えることができる。一例では、貫通ビア21は、約35nm~約40nmの範囲の直径を有する。他の例では、貫通ビア21は約40nmの直径を有する。
【0119】
図8Kに示すように、ゲート酸化物56、シリコン層46、および絶縁層44のそれぞれの部分が除去されて、チャネル54およびFET22の他の層(例えば、56、44)を通る開口部を形成する。この開口部、すなわち、貫通ビア21は、第1の空洞15の出口端72を介して第1の空洞15と流体連通している。
【0120】
図8Lは、チャネル54/シリコン層46の露出部分74上の絶縁層56’の形成を示している。いくつかの例では、絶縁層56’は、貫通ビア21内の基板42のシリコン層46の露出部分74の酸化によって形成される。この酸化は、熱酸化を使用して実現できる。露出部分74の酸化が図8Lに示されているが、熱酸化を利用する場合、これらの構成要素は熱酸化の加熱条件に対して脆弱である可能性があるため、貫通ビア21を形成し、ビア64、64’および金属相互接続66、66’を製造する前に、部分74を酸化することが望ましい場合があることを理解されたい。他の例では、絶縁層56’は、貫通ビア21内の基板42のシリコン層46の露出部分74上に絶縁層56’を堆積または成長させることにより形成される。露出部分74上に絶縁層56’を形成するために堆積または成長技術が使用される場合、これらの技術は、ビア64、64’および金属相互接続66、66’(図示されるように)の製造後に行われても、ビア64、64’および金属相互接続66、66’の製造前に行われてもよい。ビア64、64’および金属相互接続66、66’の前に貫通ビア21および絶縁層56’を製造することは、絶縁層56’が形成のために高温酸化に曝される場合、または高密度化のために高温アニーリング(例えば、約700℃~約1000℃)に曝される場合、特に望ましい場合がある。
【0121】
上述のように、この方法は、電界効果トランジスタ22のベース基板62’(すなわち、固体材料62)を貫通する第2のナノスケール開口25を画定して、貫通ビア21を第2の空洞17と流体接続することを含む。第2のナノスケール開口部25は内径25’を有し、第2のナノスケール開口部内径25'は、第1のナノスケール開口部23の内径23’よりも大きい(例えば、図2Aおよび図2Bを参照)。第2のナノスケール開口部25の形成は、図8Mに示されている。図示されているように、第2のナノスケール開口部25は、固体材料62(すなわち、ベース基板62’)に画定されている。第2のナノスケール開口部25は、エッチング(ベース基板62’を形成するために使用されるエッチング停止材料に適切なエッチャントを使用)またはベース基板62’の一部を通るイオンミリングによって画定され得る。エッチングされる部分は、ベース基板62’の厚さを通って延び、形成される開口部25が貫通ビア21と第2の空洞17とを流体接続するようになっている。一例では、第2のナノスケール開口部25の内径25’は、約5nm~約10nmの範囲である。
【0122】
デバイス10を製造するとき、エッチング停止材料(層60およびベース基板62’を形成する)およびFET22の絶縁層68の材料は、材料間に著しいエッチング差があるように選択されることを理解されたい。絶縁層68のエッチング速度は、エッチング停止材料(すなわち、層60およびベース基板62’)のエッチング速度よりも高くなければならない。エッチング停止材料(すなわち、層60およびベース基板62’)および適切なエッチング差を提供する絶縁層68の適切な材料の組み合わせの例には、Si(層60およびベース基板62’)およびSiO(絶縁層68)、または、SiC(層60およびベース基板62’)およびAl(絶縁層68)が含まれる。
【0123】
図には示されていないが図8Aから図8Mまでの方法の例は、第1のナノスケール開口部23の形成をさらに含む(図2A図2B)。図8Mに示されるように、第1の空洞15は、入口端76(出口端72に対向する)を有する。膜24(図2Aおよび図2B)は、第1の空洞15の入口端76にわたって画定され得る。膜24は、それを通る第1のナノスケール開口部23を有し、第1のナノスケール開口部23は内径23’を有する。膜24および第1のナノスケール開口部23を形成するために使用される技術は、使用される膜24およびナノスケール開口部23のタイプに依存し得る。例として、ナノスケール開口部23を膜24に挿入してもよいし、ナノスケール開口部23の周囲に膜24を形成してもよい。一例では、ナノスケール開口部23は、形成された脂質二重層(膜24の一例)にそれ自体を挿入することができる。例えば、上記のように、そのモノマ形態またはポリマ形態(例えば、オクタマ)のナノスケール開口部23は、それ自体を脂質二重層に挿入し、膜貫通ポアに集合し得る。他の例では、ナノスケール開口部23は、脂質二重層にそれ自体を挿入する望ましい濃度で、脂質二重層の接地側に追加されてもよい。さらに他の例では、脂質二重層は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)フィルムの開口部を横切って形成され、第1の空洞15の入口端76に配置されてもよい。ナノスケール開口部23は、脂質二重層の接地側に追加されてもよく、PTFE開口部が形成される領域で脂質二重層に挿入されてもよい。さらに他の例では、ナノスケール開口部23は、固体支持体(例えば、シリコン、酸化ケイ素、石英、酸化インジウムスズ、金、ポリマなど)につながれていてもよい。ナノスケール開口部23自体の一部であっても、ナノスケール開口部23に付着していてもよいテザリング分子は、ナノスケール開口部23を固体支持体に付着させてもよい。テザリング分子を介した付着は、単一のナノスケールの開口部23が第1の空洞15の入口端76に固定されるようなものであってもよい。次に、ナノスケール開口部23の周囲に脂質二重層を形成することができる。ナノスケール開口部23は、固体開口部であってもよい。これらの実施例では、別の固体材料(例えば、62)を入口端76および絶縁材料68上に堆積させることができる。ナノスケール開口部23は、その内径が本明細書に開示される望ましい寸法を有するように、この固体材料で形成されてもよい。
【0124】
本明細書では、デバイス10の形成のためのいくつかの例示的な技術が提供されている。40nmより大きい最小寸法を有するデバイス10の特徴のいずれか(例えば、第1の空洞15、第2の空洞17)は、従来の(ドライ)193nmリソグラフィで製造できることを理解されたい。
【0125】
図示されていないが、この方法は、シスウェル(例えば、図2Aおよび図2Bのシスウェル14)を第1のナノスケール開口部23に流体接続することをさらに含み得る。シスウェル14は、シス電極(例えば、図2Aおよび図2Bのシス電極30)に関連付けられている。この方法は、トランスウェルを第2の空洞17に流体接続する(例:トランスウェル16、図2Aおよび図2B)ことを含み、トランスウェル16は、トランス電極(例えば、図2Aおよび図2Bのトランス電極34)に関連付けられ、それにより、デバイス10(例えば、ナノポアシーケンサ)の例を形成する。この方法は、ナノポアシーケンサ/デバイス10を電解質20に浸漬することを含む。シスウェル14、シス電極30、トランスウェル16、およびトランス電極34の構成は、本明細書で開示される例のいずれかに従うことができる。
【0126】
上記でより詳細に議論したように、電解質20は、対イオン(カチオンおよびその関連アニオン)に解離することができる任意の電解質であり得る。

その他の注意事項
【0127】
前述の概念および以下でより詳細に議論される追加の概念のすべての組み合わせ(そのような概念が相互に矛盾しないという条件で)は、本明細書に開示される本発明の主題の一部であると考えられる。特に、本開示の最後に現れるクレームされた主題のすべての組み合わせは、本明細書に開示された本発明の主題の一部であると考えられる。また、本明細書で明示的に使用される用語は、参照により組み込まれる任意の開示に現れる場合もあり、本明細書で開示される特定の概念と最も一致する意味が与えられるべきである。
【0128】
明細書全体で“一例”、“他の例”、“例”などへの言及は、例に関連して説明された特定の要素(例えば、機能、構造、および/または特性)が含まれることを意味するここに記載されている少なくとも1つの例であり、他の例には存在する場合と存在しない場合がある。加えて、文脈がそうではないことを明確に指示しない限り、任意の例について説明した要素は、様々な例において任意の適切な方法で組み合わせることができることを理解されたい。
【0129】
本明細書で提供される範囲には、あたかもそのような値またはサブ範囲が明示的に列挙されているかのように、述べられた範囲および述べられた範囲内の任意の値またはサブ範囲が含まれることを理解されたい。例えば、約2nm~約20nmの範囲は、明示的に記載された約2nm~約20nmの制限を含むだけでなく、約3.5nm、約8nm、約18.2nmなど、および約5nm~約10nmなどのサブ範囲などの個々の値も含むと解釈されるべきである。さらに、“約”および/または“実質的に”が値を説明するために使用される場合、これは、記載された値からのわずかな変動(最大+/-10%)を包含することを意味する。
【0130】
いくつかの例を詳細に説明したが、開示された例は修正できることを理解されたい。したがって、前述の説明は非限定的と見なされるべきである。
図1A
図1B
図2A
図2B
図3
図4
図5
図6A
図6B
図6C
図6D
図6E
図7
図8A
図8B
図8C
図8D
図8E
図8F
図8G
図8H
図8I
図8J
図8K
図8L
図8M