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特許7018470眼疾患を有する対象の治療に有用なバイオマーカー
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-02
(45)【発行日】2022-02-10
(54)【発明の名称】眼疾患を有する対象の治療に有用なバイオマーカー
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/68 20060101AFI20220203BHJP
   G01N 33/53 20060101ALI20220203BHJP
   A61P 27/02 20060101ALI20220203BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20220203BHJP
【FI】
G01N33/68
G01N33/53 D
A61P27/02
A61K45/00
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020082163
(22)【出願日】2020-05-07
(62)【分割の表示】P 2017544573の分割
【原出願日】2015-11-11
(65)【公開番号】P2021067668
(43)【公開日】2021-04-30
【審査請求日】2020-06-03
(31)【優先権主張番号】62/188,377
(32)【優先日】2015-07-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/078,138
(32)【優先日】2014-11-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】398076227
【氏名又は名称】ザ・ジョンズ・ホプキンス・ユニバーシティー
(73)【特許権者】
【識別番号】517159253
【氏名又は名称】ナキュイティ ファーマシューティカルズ, インク.
【氏名又は名称原語表記】NACUITY PHARMACEUTICALS, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100107984
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 雅紀
(74)【代理人】
【識別番号】100102255
【弁理士】
【氏名又は名称】小澤 誠次
(74)【代理人】
【識別番号】100096482
【弁理士】
【氏名又は名称】東海 裕作
(74)【代理人】
【識別番号】100131093
【弁理士】
【氏名又は名称】堀内 真
(74)【代理人】
【識別番号】100150902
【弁理士】
【氏名又は名称】山内 正子
(74)【代理人】
【識別番号】100141391
【弁理士】
【氏名又は名称】園元 修一
(74)【代理人】
【識別番号】100198074
【弁理士】
【氏名又は名称】山村 昭裕
(74)【代理人】
【識別番号】100096013
【氏名又は名称】富田 博行
(72)【発明者】
【氏名】カンポキアーロ ピーター エー.
(72)【発明者】
【氏名】ルー リリ
(72)【発明者】
【氏名】ローゼンフェルド クレイグ エス.
【審査官】海野 佳子
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-503895(JP,A)
【文献】国際公開第2013/057354(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2005/0112572(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0142550(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2003/0027745(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/48-33/98
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
目の酸化的ストレスの疾患を有する対象における酸化的ストレスを定量するための方法であって、
a)生物学的対象試料及び生物学的対照試料における、カルボニル付加物のレベルを測定するステップ、並びに
b)前記対象試料におけるa)の測定値を、a)の前記対照試料における測定値と比較するステップであって、カルボニル付加物レベルの増加が、目の酸化的ストレスの疾患を有する対象における酸化的ストレスの指標である、前記ステップ
を含み、前記試料が眼房水に由来する、
前記方法。
【請求項2】
さらに、ステップa)において、銅還元抗酸化能のレベル及び/又はGSH/GSSG比を測定し、ステップb)において、前記銅還元抗酸化能のレベル及び/又はGSH/GSSG比の測定値を比較し、前記銅還元抗酸化能のレベル及び/又はGSH/GSSG比の低下が、目の酸化的ストレスの疾患を有する対象における酸化的ストレスの指標であり、前記疾患が、加齢性黄斑変性症、糖尿病性網膜症、近視、強度近視、フックスジストロフィー、糖尿病性黄斑浮腫(DME)、地図状萎縮、シュタルガルト病、又は網膜静脈閉塞症(RVO)である、請求項に記載の方法。
【請求項3】
カルボニル付加物のレベルが、EIA(酵素免疫測定法)、ELISA(酵素結合免疫吸着測定法)、RIA(放射性免疫測定法)、間接競合免疫アッセイ、直接競合免疫アッセイ、非競合免疫アッセイ、サンドイッチ免疫アッセイ、凝集アッセイ、ウェスタンブロットアッセイ、スロットブロットアッセイ、蛍光偏光法、ラテックス凝集、ラテラルフローアッセイ、免疫クロマトグラフィーアッセイ、免疫チップ、ディップスティック免疫試験、又はビースをベースにした技術によって測定される、請求項又はに記載の方法。
【請求項4】
カルボニル付加物レベルの増加、GSSGに対するGSHの比の低下及び/又は銅抗酸化能の低下が、対象における酸化的ストレスの指標であるという知見に基づいて錐体細胞死を測定するステップをさらに含む、請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
目の酸化的ストレスの疾患を有する対象における酸化的ストレスを測定するためのキットであって、
a)対象の目の眼房水由来の生物学的試料のための第1の容器、
b)目の眼房水由来の対照生物学的試料のための第2の容器、
c)a)及びb)の前記試料におけるカルボニル付加物レベルを測定するための試薬を含むバイアル、並びに
d)前記対象の前記試料におけるカルボニル付加物レベルを、前記対照試料におけるカルボニル付加物レベルと比較するための指示書
を含み、カルボニル付加物レベルの増加が、目の酸化的ストレスの疾患を有する前記対象における酸化的ストレスの指標である、前記キット。
【請求項6】
a)及びb)の試料における銅還元抗酸化能及び/又はGSH/GSSG比を測定するための試薬を含む1若しくは2のバイアル、並びに対象の試料における、前記銅還元抗酸化能及び/又はGSH/GSSG比を対照試料の前記銅還元抗酸化能及び/又はGSH/GSSG比と比較するための指示書をさらに含み、前記銅還元抗酸化能及び/又はGSH/GSSG比の低下が、対象における酸化的ストレスの指標である、請求項に記載のキット。
【請求項7】
カルボニル付加物のレベルが、EIA(酵素免疫測定法)、ELISA(酵素結合免疫吸着測定法)、RIA(放射性免疫測定法)、間接競合免疫アッセイ、直接競合免疫アッセイ、非競合免疫アッセイ、サンドイッチ免疫アッセイ、凝集アッセイ、ウェスタンブロットアッセイ、スロットブロットアッセイ、蛍光偏光法、ラテックス凝集、ラテラルフローアッセイ、免疫クロマトグラフィーアッセイ、免疫チップ、ディップスティック免疫試験、又はビースをベースにした技術によって測定される、請求項又はに記載のキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的には酸化的ストレスの検出するための方法の分野、より詳細には体液中において酸化的ストレスを検出するための新規方法に関する。
【背景技術】
【0002】
網膜色素変性症(RP、retinitis pigmentosa)は、遺伝的に不均一なグループの遺伝性網膜変性症のために使用される用語である。所見は目に限定されることも、又は目の所見が症候群の一部であることもあり、症候群として最も一般的なのは、聴覚消失が網膜疾患を伴うアッシャー症候群である。それぞれの障害において、原因となる現象は、杆体光受容器の死滅を招き、最初に夜盲症を引き起こす変異である。杆体は、網膜における主な酸素消費体であり、杆体の欠損は網膜の外側における組織酸素レベルの増加を引き起こす。これはNADPHオキシダーゼを活性化し、細胞基質におけるスーパーオキシドラジカルの蓄積を引き起こし、錐体のミトコンドリアにおけるスーパーオキシドラジカルの生成も増加させる。過剰なスーパーオキシドラジカルはスーパーオキシドジスムターゼ1(SOD(superoxide dismutase)1)及びSOD2を圧倒し、ヒドロキシラジカル及びペルオキシナイトライトなどのスーパーオキシドラジカルよりもさらにいっそう損傷を与えるものを含む、その他のフリーラジカルを生成させることによって連鎖反応を引き起こす。フリーラジカルはタンパク質、脂質及びDNAを攻撃し、酸化的損傷が生じたことを示す特定の変化を引き起こす。脂質に対する酸化的損傷は、分解して4-ヒドロキシノネナール、マロンジアルデヒド(MDA、malondialdehyde)及びアクロレインを形成する脂質
ヒドロペルオキシドを生じる。酸化的損傷によるタンパク質の最も一般的な変化は、カルボニル付加物の形成である。これらの変化は高分子の機能を損ない、内在性の修復方法はあるもののそれらは過酷な酸化的ストレスによって圧倒されて、細胞機能の低下、最終的にはアポトーシスを引き起こす。杆体が光受容体層から消失した後、網膜の外側における酸化的ストレスは過酷で、錐体細胞のゆっくりした死滅を引き起こし、これは錐体密度が低い中間周辺部で通常開始し、その後末梢及び後極部に広がる。錐体死の後極部への広がりは、視野狭窄、最終的に視力のセントラルアイランド化を引き起こし、その消失は失明の原因となる。
【0003】
RPの臨床徴候には、血管周辺に多く、「骨小体様色素沈着」が特徴の網膜の色素変化、網膜血管の狭窄及び視神経乳頭蒼白が含まれる。スペクトル領域光干渉断層撮影は、光受容体細胞欠損領域における網膜の菲薄化を示すことができ、セグメンテーションでは欠損は外顆粒層に見られる。
【0004】
視野試験は視野狭窄を示し、網膜電図はa及びb波の振幅低下を示す。
【0005】
現在、疾患の進行を停止するか、又は視力を回復する療法は承認されていない。治療的アプローチは、日光の防御及びビタミンA補給による変性プロセスの遅延、合併症(白内障及び黄斑浮腫)の治療並びに失明の社会的及び心理的影響に対処するための患者の支援に限られている。人工網膜システムArgis IIは、重篤なRPの成人を治療するための埋植デバイスとして2013年にFDAによって承認されたが、光感覚を生成して、それによって患者が物体及び人の位置又は動きを確認するのを助けるのみで、このデバイスは疾患を変更しない。
【0006】
新規治療を試験するためには、疾患進行のしっかりとした尺度が欠かせない。疾患進行の最も広く受け入れられている機能的尺度は視野の欠損であるが、視野を評価する方法はいくつかあり、疾患の段階が異なればそれらの値も異なることがある。ゴールドマン視野
は、周辺視野の評価として優れており、錐体細胞欠損の早期段階において有用である。全視野ERGによる網膜機能の評価はまた、シグナルが低く疾患後期では記録不可能であることが多いので、疾患早期において最も有用である。網膜感受性の自動測定によって後極部網膜における測定値がもたらされ、その測定値は疾患早期においては正常であるが、疾患後期においてはゴールドマン視野よりも敏感で定量的である。
【0007】
スペクトラルドメインOCTによって完全な内節エリプソイドゾーンの中心窩の幅の年間変化率を測定することによって、比較的進行した疾患における疾患進行のかなり敏感な解剖学的測定値がもたらされる。これらの結果判定全てに共通の問題は経時的な変化率が低いことで、治療効果検出を可能にするためには長期臨床試験が必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、薬物活性、生物学的利用率及び適合性の暫定測定値として役立つバイオマーカーを同定し開発することは、臨床試験を計画し実施するための大きな利点となるだろう。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、RPの患者において、進行中の酸化的ストレスが、分泌された高分子及び細胞内で保持された高分子に酸化的損傷を引き起こすことを測定した(determined)。したがって、酸化的ストレスの新規マーカーは、例えば、網膜色素変性症、加齢性黄斑変性症、糖尿病性網膜症、近視、強度近視、フックスジストロフィー、糖尿病性黄斑浮腫(DME、diabetic macular edema)、地図状萎縮、シュタルガルト病又は網膜静脈閉塞症(RVO、retinal vein occlusion)の患者の眼房水及び血清中で検出可能で、正常な対照患者の眼房水及び血清における基準レベルよりも大きくなければならない。さらに、錐体死が進行するにつれて酸化的ストレスは増加するので、酸化的損傷のいかなる特定のマーカーのレベルもRP患者では経時的に増加しやすく、RP患者の集団では、酸化的損傷マーカーのレベルと疾患の段階との間には正の相関がある。
【0010】
したがって、一態様では、本発明は、患者の眼房水及び血清中における酸化的ストレスの増加又は減少を示すマーカーを測定することによって、疾患を診断された患者においてRPの重症度又は段階を評価するための方法を提供する。本明細書で開示した方法はまた、患者における疾患の進行を経時的にモニターし、治療のコースが目における疾患の進行を遅延又は停止させるのに有効であるかどうかを判定するために使用することができる。
【0011】
一実施形態では、本発明は、限定はしないが、網膜色素変性症、加齢性黄斑変性症、糖尿病性網膜症、近視、強度近視、フックスジストロフィー、糖尿病性黄斑浮腫(DME)、地図状萎縮、シュタルガルト病又は網膜静脈閉塞症(RVO)を含む酸化的ストレス又は損傷によって引き起こされる眼疾患を有すると診断された対象における眼疾患の重症度を定量又は段階分けするための方法であって、a)対象から生物学的試料を入手するステップ、b)対照生物学的試料を提供するステップ、c)a)及びb)の試料中における、銅還元抗酸化能(cupric reducing antioxidant capacity)、GSH/GSSG比及びカルボニル付加物レベルの1又は2以上を測定するステップ、d)対象の試料中におけるc)の1又は2以上の測定値を対照試料と比較するステップ、並びにe)銅還元抗酸化能のレベル及び/若しくはGSH/GSSG比が対照試料よりも低い場合、並びに/又はカルボニル付加物レベルのレベルが対照試料よりも高い場合、段階が進行している、又は重症度が上昇しているものとして、対象における疾患の重症度を定量又は段階分けするステップを含む方法を提供する。
【0012】
したがって、別の実施形態では、本発明は、酸化的ストレス又は損傷によって引き起こ
された目の損傷、例えば、網膜色素変性症、加齢性黄斑変性症、糖尿病性網膜症、近視、強度近視又はフックスジストロフィーを有する対象の治療するための方法であって、a)対象から生物学的試料を入手するステップ、b)対照生物学的試料を提供するステップ、c)a)及びb)の試料中における、銅還元抗酸化能、GSH/GSSG比及びカルボニル付加物レベルの1又は2以上を測定するステップ、d)対象の試料中におけるc)の1又は2以上の測定値を対照試料と比較するステップ、e)銅還元抗酸化能のレベル及び/若しくはGSH/GSSG比が対照試料よりも低い場合、並びに/又はカルボニル付加物レベルのレベルが対照試料よりも高い場合、段階が進行しているか、又は重症度が上昇しているものとして、対象における疾患の重症度を定量又は段階分けするステップ、並びにf)e)で示された疾患の段階又は重症度に基づく対象における疾患のための治療のコースを選択するステップを含む方法を提供する。
【0013】
したがって、別の実施形態では、本発明は、酸化的ストレスを定量するための方法であって、a)対象から生物学的試料を入手するステップ、b)対照生物学的試料を提供するステップ、c)a)及びb)の試料中における、銅還元抗酸化能、GSH/GSSG比及びカルボニル付加物レベルの1又は2以上を測定するステップ、並びにd)対象の試料中におけるc)の1又は2以上の測定値を対照試料と比較するステップを含み、カルボニル付加物レベルの増加、GSSGに対するGSHの比の低下、及び/又は銅抗酸化能(cupric antioxidant capacity)の低下が酸化的ストレスの指標である方法を提供する。一態
様では、試料は対象の目の眼房水に由来する。別の態様では、試料は対象の血液又は血漿に由来する。別の態様では、試料は、網膜色素変性症、加齢性黄斑変性症、糖尿病性網膜症、近視、強度近視、フックスジストロフィー、糖尿病性黄斑浮腫(DME)、地図状萎縮、シュタルガルト病又は網膜静脈閉塞症(RVO)を有することが疑われる対象に由来する。別の態様では、タンパク質カルボニルレベルのレベルは、酵素免疫測定法(EIA、enzyme immunoassay)、酵素結合免疫吸着測定法(ELISA、enzyme linked immunosorbent assay)、放射性免疫測定法(RIA、radioimmunoassay)、間接競合免疫アッ
セイ、直接競合免疫アッセイ、非競合免疫アッセイ、サンドイッチ免疫アッセイ、凝集アッセイ、ウェスタンブロットアッセイ、スロットブロットアッセイ、蛍光偏光法、ラテックス凝集、ラテラルフローアッセイ、免疫クロマトグラフィーアッセイ、免疫チップ、ディップスティック免疫試験又はビースをベースにした技術によって測定する(determine
)。別の態様では、この方法はさらに、カルボニル付加物レベルの増加、GSSGに対するGSHの比の低下及び/又は銅抗酸化能の低下の所見によって錐体細胞死を測定するステップを含み、これらは対象における酸化的ストレスの指標である。
【0014】
したがって、別の実施形態では、本発明は、酸化的ストレスを測定する(determine)
ためのキットであって、a)対象の生物学的試料のための第1の容器、b)対照生物学的試料のための第2の容器、c)a)及びb)の試料中における銅還元抗酸化能、GSH/GSSG比及びカルボニル付加物レベルを測定する(determine)ための試薬を含む1又
は2以上のバイアル、並びにd)対象の試料中におけるc)の1又は2以上の測定値を対照試料と比較するための使用説明書を含み、カルボニル付加物レベルの増加、GSSGに対するGSHの比の低下、及び/又は銅抗酸化能の低下が酸化的ストレスの指標であるキットを提供する。一態様では、試料は対象の目の眼房水に由来する。別の態様では、生物学的試料は、網膜色素変性症、加齢性黄斑変性症、糖尿病性網膜症、近視、強度近視、フックスジストロフィー、糖尿病性黄斑浮腫(DME)、地図状萎縮、シュタルガルト病又は網膜静脈閉塞症(RVO)を有することが疑われる対象に由来する。別の態様では、タンパク質カルボニルレベルのレベルは、EIA(酵素免疫測定法)、ELISA(酵素結合免疫吸着測定法)、RIA(放射性免疫測定法)、間接競合免疫アッセイ、直接競合免疫アッセイ、非競合免疫アッセイ、サンドイッチ免疫アッセイ、凝集アッセイ、ウェスタンブロットアッセイ、スロットブロットアッセイ、蛍光偏光法、ラテックス凝集、ラテラルフローアッセイ、免疫クロマトグラフィーアッセイ、免疫チップ、ディップスティック
免疫試験又はビースをベースにした技術によって測定する(determine)。別の態様では
、使用説明書は、銅還元抗酸化能のレベル及び/若しくはGSH/GSSG比が対照試料よりも低い場合、並びに/又はカルボニル付加物レベルのレベルが対照試料よりも高い場合、疾患の段階が進行しているか、又は重症度が上昇していると同定され、或いは銅還元抗酸化能のレベル及び/若しくはGSH/GSSG比が対照試料よりも高い場合、並びに/又はカルボニル付加物レベルのレベルが対照試料よりも低い場合、疾患と同定され、疾患の段階が後退していると見なされるか、又は疾患の重症度が減少していると判定するために使用される。別の態様では、カルボニル付加物レベルの増加、GSSGに対するGSHの比の低下及び/又は銅抗酸化能の低下は網膜色素変性症における錐体細胞死の指標である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】眼房水及び血清におけるタンパク質のカルボニル含量の網膜色素変性症(RP)患者と対照との間の比較を示す図である。9人のRP患者及び9人の対照患者の眼房水試料のタンパク質カルボニル含量及び全タンパク質をアッセイした。対照患者は、黄斑パッカー又は黄斑円孔を有していたが、その他の眼疾患はなかった。8人のRP患者及び7人の対照患者の血清試料もアッセイした。各バーは、全タンパク質1mg当たり平均(±標準偏差)カルボニル含量を表し、統計学的比較は、対応のないスチューデントのt検定で行った。
図2】眼房水及び血清における還元型グルタチオン対酸化型グルタチオン比(GSH/GSSG)の網膜色素変性症(RP)患者と対照との間の比較を示す図である。7人のRP患者及び6人の対照患者の眼房水試料及び9人のRP患者及び7人の対照の血清試料のGSH/GSSG比をアッセイした。バーは、平均(±標準偏差)GSH/GSSH比を表し、統計学的比較は、スチューデントのt検定で行った。
図3】眼房水及び血清におけるマロンジアルデヒド(MDA)レベルの網膜色素変性症(RP)患者と対照患者との間の比較を示す図である。7人のRP患者及び6人の対照患者の眼房水試料及び8人のRP及び7人の対照の血清試料のMDAをアッセイした。バーは平均(±標準偏差)を表す。スチューデントのt検定による統計学的比較は、統計学的に有意な差がないことを示した。
図4】血清におけるスーパーオキシドジスムターゼ3(SOD3)レベルの網膜色素変性症(RP)患者と対照患者との間の比較を示す図である。8人のRP患者及び8人の対照患者の血清試料のSOD3をアッセイした。各バーは試料1ml当たりの平均(±標準偏差)SOD3を表す。スチューデントのt検定による統計学的比較は、有意な差がないことを示した。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の様々な実施形態の作製及び使用を以下に詳細に論じるが、本発明は、多種多様な具体的状況において実施することができる多くの応用可能な本発明の概念を提供することを理解されたい。本明細書で論じた具体的な実施形態は、本発明を実現し、使用するための具体的な方法を例示するのみであり、本発明の範囲を限定しない。
【0017】
本発明の理解を容易にするために、いくつかの用語を以下に定義する。本明細書で定義した用語は、本発明に関連する分野の当業者によって通常理解されている意味を有する。「a」、「an」及び「the」などの用語は、単数の実体のみを意味するだけではなく、具体的な例がその例示のために使用される場合がある一般クラスも含む。本明細書の専門用語は、本発明の具体的な実施形態を説明するために使用されているが、特許請求の範囲で概説されている場合を除いて、それらの使用によって本発明は限定されない。RP:網膜色素変性症;GSH:還元型グルタチオン;GSSG:酸化型グルタチオン;NADPH(nicotinamide adenine dinucleotide phosphate):ニコチンアミドアデニンジヌクレオ
チドリン酸;DNA:デオキシリボ核酸;MDA:マロンジアルデヒド;ELISA:酵
素結合免疫吸着測定法;SOD3:スーパーオキシドジスムターゼ3;TAC(total antioxidant capacity):総抗酸化能;PBS(phosphate-buffered saline):リン酸緩
衝生理食塩水。
【0018】
本発明には、酸化的ストレスを含む網膜疾患及び眼疾患の存在を検出するためのバイオマーカー及び方法が含まれる。
【0019】
本明細書で使用される場合、「網膜色素変性症」又は「RP」という用語は、杆体光受容器の死滅を引き起こし、初期に夜盲症の原因となる、遺伝的に不均一なグループの遺伝性網膜変性症を意味する。杆体は、網膜における主な酸素消費体であり、杆体の欠損は網膜の外側における組織酸素レベルの増加を引き起こす。
【0020】
本明細書で使用される場合、「加齢性黄斑変性症」又は「AMD」という用語は、加齢性眼疾患研究(AREDS、Age-Related Eye Disease Study)の研究で示されたように
、ドルーゼンと呼ばれる網膜における細胞外物質の少量の蓄積の存在を含み、酸化的ストレスも含む網膜の疾患を意味する。小さなドルーゼンは40~50の年齢では珍しくないが、大きなドルーゼンはAMDの典型的な指標である。AMDにおけるドルーゼンの形成機構は、完全には解明されていないが、その存在は杆体及び錐体への栄養素及び酸素の供給を妨害する。
【0021】
本明細書で使用される場合、「糖尿病性網膜症」という用語は、例えば、治療抵抗性の硝子体出血、牽引性網膜剥離又は糖尿病性黄斑症から生じる糖尿病の一般的な合併症を意味し、これらは網膜毛細血管閉塞又は漏出の結果であることが多く、酸化的ストレスが含まれる。合併症の程度はまちまちであるが、網膜に影響を及ぼす糖尿病性合併症は重篤な視力の欠損に至る。網膜疾患は、糖尿病のいくつかの合併症の1つであり、主に小さな血管の破裂及び新規血管の無秩序な増殖の結果である。場合によっては、これらの変化は、色及び視力に特化した網膜領域である黄斑に影響を及ぼす。
【0022】
本明細書で使用される場合、「フックスジストロフィー」又は「フックス内皮ジストロフィー」という用語は、酸化的ストレスが関連した角膜内皮の変性疾患であり、デスメ膜の局部的な伸長の蓄積及び肥厚を示し、角膜浮腫及び視力の喪失に至る。本発明で測定することができるその他の疾患には、糖尿病性黄斑浮腫(DME)、地図状萎縮、シュタルガルト病又は網膜静脈閉塞症(RVO)が含まれる。
【0023】
組織は、内在性抗酸化防御系によって酸化的ストレスと戦い、この系にはいくつかの構成要素がある。個体は、遺伝的性質に基づいて抗酸化防御系の有効性が異なる。患者は、食事中の抗酸化物質に関しても異なる。特に有効な抗酸化防御系を備え、及び/又は抗酸化物質の豊富な食事をしているRPの患者は、錐体細胞欠損が遅く、したがって疾患の進行の速度がより遅くなるはずである。疾患進行におけるこの変動は、疾患進行の治療の影響を評価しようとする試みには「雑音」となる。組織の総抗酸化能(TAC)としても知られている還元力の評価は、内在性抗酸化防御系、組織における外来性抗酸化物質のレベル及び酸化的ストレスの現在のレベルの測定値となる(抗酸化能は酸化的ストレスによって低下するので)。したがって、これは、個体が現在負荷されている組織中の酸化的ストレスにどのようにうまく対処しているかの評価となり得る。組織中の酸化的損傷を軽減する機会があれば、抗酸化療法の追加は、標的組織におけるTACを増加させるだろう。したがって、一部の実施形態では、基準を上回るTACの増加は、適合性及び生物学的利用率の評価をもたらし、治療効果を予測するバイオマーカーとして役立ち得る。
【0024】
血漿の鉄還元能(FRAP、ferric reducing ability of plasma)アッセイは、比較
的安価で便利なので有利である(Anal. Biochem. 1996;239:70-6)。FRAPを使用したT
ACの測定値は加齢と共に減少し、いかなる年齢でも様々な組織における抗酸化能と酸化的損傷との間に相関がある(Rejuvenation Res. 2006;9:470-4; Free Radic. Biol. Med. 2002;33:597-604; Ann. Biol. Clin. 2001;59:453-9)。銅還元抗酸化能(CUPRAC、cupric reducing antioxidant capacity)法はFRAPと類似しているが、反応速度が速く、再現性がより優れている(Free Radic. Res. 2005;39:949-61; Mol. Cell Biochem. 2009;323:139-42)。還元型グルタチオン(GSH)は主要な細胞内非タンパク質-SH化
合物であり、最も重要な細胞内親水性抗酸化物質である。酸化条件下では、GSHはグルタチオンジスルフィド(GSSG)に可逆的に酸化され、還元条件下ではGSHが再生する。したがって、GSH/GSSG比は、抗酸化能と類似の抗酸化状態の尺度となる(Rejuvenation Res. 2006;9:169-81)。
【0025】
したがって、1又は2以上の実施形態では、本発明は、CUPRAC及びGSH/GSSH比などのバイオマーカーを提供し、これらは、RPの眼房水中では低下することが示され、低下のレベルは錐体細胞欠損の段階の上昇と相関する。
【0026】
一実施形態では、本発明は、網膜色素変性症、黄斑変性症(例えば、加齢性黄斑変性症)、糖尿病性網膜症、近視、強度近視又はフックスジストロフィーなどの酸化的ストレスによって引き起こされるか、又は悪化する疾患又は病気と診断された対象における疾患の重症度の定量又は段階分けするための方法であって、a)対象から生物学的試料を入手するステップ、b)対照生物学的試料を提供するステップ、c)a)及びb)の試料中における、銅還元抗酸化能、GSH/GSSG比及びカルボニル付加物レベルの1又は2以上を測定するステップ、d)対象の試料中におけるc)の1又は2以上の測定値を対照試料と比較するステップ、並びにe)銅還元抗酸化能のレベル及び/若しくはGSH/GSSG比が対照試料よりも低い場合、並びに/又はカルボニル付加物レベルのレベルが対照試料よりも高い場合、段階が進行している、又は重症度が上昇しているものとして、対象における疾患の重症度を定量又は段階分けするステップを含む方法を提供する。
【0027】
したがって、別の実施形態では、本発明は、網膜色素変性症を有する対象の治療するための方法であって、a)対象から生物学的試料を入手するステップ、b)対照生物学的試料を提供するステップ、c)a)及びb)の試料中における、銅還元抗酸化能、GSH/GSSG比及びカルボニル付加物レベルの1又は2以上を測定するステップ、d)対象の試料中におけるc)の1又は2以上の測定値を対照試料と比較するステップ、e)銅還元抗酸化能のレベル及び/若しくはGSH/GSSG比が対照試料よりも低い場合、並びに/又はカルボニル付加物レベルのレベルが対照試料よりも高い場合、段階が進行している、又は重症度が上昇しているものとして、対象における疾患の重症度を定量又は段階分けするステップ、並びにf)e)で示された疾患の段階又は重症度に基づく対象における疾患のために治療のコースを選択するステップを含む方法を提供する。
【0028】
さらなる実施形態では、本発明は、網膜色素変性症を有する対象の治療をモニターするための方法であって、a)対象から生物学的試料を入手するステップ、b)対照生物学的試料を提供するステップ、c)a)及びb)の試料中における、銅還元抗酸化能、GSH/GSSG比、カルボニル付加物レベルの1又は2以上を測定するステップ、d)対象の試料中におけるc)の1又は2以上の測定値を対照試料と比較するステップ、e)対象における疾患の段階又は重症度を判定するステップであって、銅還元抗酸化能のレベル及び/若しくはGSH/GSSG比が対照試料よりも低い場合、並びに/又はカルボニル付加物レベルのレベルが対照試料よりも高い場合、疾患の段階が進行しているか、又は重症度が上昇していると同定され、或いは、銅還元抗酸化能のレベル及び/若しくはGSH/GSSG比が対照試料よりも高い場合、並びに/又はカルボニル付加物レベルのレベルが対照試料よりも低い場合、疾患の段階が後退しているか、又は重症度が減少していると同定されるステップ、f)e)で示された疾患の段階又は重症度に基づく対象における疾患の
ために治療のコースを選択するステップ、並びにg)治療のコースを対象に投与した後、ステップa)~f)を1又は2回以上反復するステップを含む方法を提供する。
【0029】
1又は2以上の実施形態では、本発明者らは、酸化的ストレスが目の錐体への主な障害であるので、眼房水中の高分子で測定した酸化的損傷の量は、錐体における進行中の酸化的損傷と相関し、したがって、これらはRPの対象の目における疾患活性の尺度となると決定した。このようにして、これらの独創的なマーカー(inventive markers)の重要性
は、疾患のいかなる段階においても、臨床医の治療目的が疾患活性とそれによる進行中の損傷を軽減することである点である。したがって、本発明によって、当業者は、特定の治療が対象の錐体機能欠損を遅延するかどうかを確認するのを待たずにより短い時間枠で、その治療が所望する効果を有するかどうかを判定することができる。
【0030】
例えば、RPの患者群を選択した後で、当業者は、治療前に基準活性の指標として、以下のマーカー、銅還元抗酸化能、GSH/GSSG比及びカルボニル付加物レベルの1又は2以上を対象の試料中で測定する。次に、治療をn-アセチルシステインアミド、又は別の適切な治療薬で開始し、その後療法中の様々な時点でさらに試料を採取する。マーカーが酸化的ストレスの減少を示せば、疾患活性の減少と相関している。その後、徐々に、疾患活性マーカーの低下は、対象における錐体機能の欠損速度の低下と相関するだろう。
【0031】
別の態様では、対象の試料中における銅還元抗酸化能、GSH/GSSG比及びカルボニル付加物レベルは、目における酸化的ストレスを軽減することができる、その他の可能性のある薬物のスクリーニングのために使用することができる。
【0032】
「薬剤」は、治療上活性のある化合物又は治療活性の可能性がある化合物、例えば、抗酸化物質を含むものと本明細書では理解される。薬剤は以前に知られている又は知られていない化合物であってもよい。本明細書で使用される場合、薬剤は通常、細胞をベースにしたものではない化合物であるが、薬剤は生物学的治療薬、例えば、ペプチド又は核酸治療薬、例えば、siRNA、shRNA、サイトカイン、抗体などを含むことができる。
【0033】
本明細書で使用される場合、「改善」又は「治療」は、特定の疾患又は病気の少なくとも1つの徴候、症状、指標又は影響を軽減又は減少させることを意味するものと理解される。例えば、網膜色素変性症(RP)の改善又は治療は、限定はしないが、夜間視力の低下、全体的な視力の低下、視野の縮小、網膜の1又は2以上の四分円における錐体密度の低下、網膜、特に外顆粒層の菲薄化、暗順応若しくは明順応網膜電図(ERG)におけるa若しくはb波振幅の低下又は病状若しくは疾患進行のいかなるその他の臨床的に許容される指標を含むRPの1又は2以上の徴候又は症状の、軽減、遅延又は消失であってもよい。改善及び治療には、単独又はその他の治療薬及び治療的介入と併用した1薬剤の2回以上の投与を必要としてもよい。改善又は治療は疾患又は病気を治癒させる必要はない。
【0034】
本明細書で使用される場合、「抗酸化物質」は、その他の分子の酸化を減速又は妨害することができる分子と理解される。酸化は、電子を物質から酸化剤に移す化学反応である。このような反応は、スーパーオキシドアニオン又はペルオキシドの生成によって促進され得る。酸化反応はフリーラジカルを生成することができ、フリーラジカルは、細胞を損傷させる連鎖反応を開始する。抗酸化物質は、フリーラジカル中間体を除去することによってこれらの連鎖反応を終結させ、それら自身を酸化することによってその他の酸化反応を阻害する。結果として、抗酸化物質はチオール、アスコルビン酸又はポリフェノールなどの還元剤であることが多い。抗酸化物質には、限定はしないが、α-トコフェロール、アスコルビン酸、Mn(III)テトラキス(4-安息香酸)ポルフィリン、α-リポ酸及
びn-アセチルシステインが含まれる。
【0035】
「同時投与(Co-administration)」とは、本明細書で使用される場合、薬剤が対象に
おいて同時に存在し、活性があるように、1又は2以上の薬剤を対象に投与することと理解される。同時投与は、薬剤の混合物の調製又は薬剤の一斉投与を必要としない。
【0036】
本明細書で使用される場合、「有効量(effective amount)」又は「有効用量(effective dose)」という用語は、企図した薬理学的、治療的又は予防的結果を生じる薬剤の量を意味する。薬理学的有効量は、疾患若しくは病気又は疾患若しくは病気の進行の1又は2以上の徴候又は症状の改善を生じ、疾患若しくは病気の退縮を引き起こす。例えば、治療有効量は、好ましくは、夜間視力の欠損、全体的な視力の欠損、視野の欠損を、未治療の対照対象と比較して少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%又はそれ以上、規定された期間、例えば、2週間、1カ月、2カ月、3カ月、6カ月、1年、2年、5年又はそれ以上減少させる治療薬の量を意味する。有効用量を提供するために2回以上の投与を必要としてもよい。
【0037】
本明細書で使用される場合、「有効な(effective)」及び「有効性(effectiveness)」という用語には、薬理学的有効性及び生理学的安全性の両方が含まれる。薬理学的有効性とは、患者において所望する生物学的効果を生じる治療の能力を意味する。
【0038】
生理学的安全性とは、治療の投与によって生じる細胞、器官及び/又は生物レベルでの毒性又はその他の有害な生理学的効果(しばしば副作用と呼ばれる)のレベルを意味する。他方では、用語「無効な」は、少なくとも層化されていない母集団において、有害作用が非存在であっても、治療が治療上有用であるために十分な薬理学的効果を提供しないことを示す。(そのような治療は発現プロファイル(複数可)によって同定することができる亜集団において無効であってもよい)。「有効性が低い」とは、治療が治療上有意に低レベルの薬理学的有効性及び/又は治療上高レベルの有害な生理学的効果、例えば、高い肝毒性を生じることを意味する。
【0039】
したがって、薬物の投与に関連して、疾患又は病気「に対して有効な」薬物とは、臨床上適切な形の投与が患者の少なくとも統計学的に有意な割合に対して、症状の改善、治癒、疾患徴候若しくは症状の軽減、寿命の延長、生活の質の向上又は疾患若しくは病気の特定の種類の治療に精通した医師によって好ましいと一般的に認識されるその他の効果などの有益な効果を生じることを示す。
【0040】
本明細書で使用される場合、「酸化的ストレスに関連した眼疾患」には、限定されないが、網膜色素変性症、浸出型及び萎縮型両方の加齢性黄斑変性症(AMD)を含む黄斑変性症、糖尿病性網膜症、レーベル視神経症、近視、強度近視及び視神経炎が含まれる。
【0041】
「ペルオキシダーゼ」又は「ペルオキシド代謝酵素」は、
ROOR+電子ドナー(2e-)+2H+→ROH+ROHの形態の反応を通常触媒する酵素の大きなファミリーである。
【0042】
これらの酵素の多くでは、最適な基質は各RがHである過酸化水素であるが、その他は脂質ペルオキシドなどの有機ヒドロペルオキシドでより活性がある。ペルオキシダーゼは、活性部位におけるヘム補因子又は酸化還元活性システイン又はセレノシステイン残基を含有することができる。
【0043】
語句「薬学的に許容される担体」は、当技術分野で認識されており、ほ乳類に本発明の
化合物を投与するために適した薬学的に許容される物質、組成物又は媒体を含む。担体には、対象薬剤を1器官、又は体の一部から別の器官又は体の一部に運搬又は輸送することに関連する液体若しくは固体充填剤、希釈剤、賦形剤、溶媒又は封入物質が含まれる。各担体は、製剤のその他の成分に適合し、患者に対して有害ではないという意味で「許容」されていなければならない。例えば、細胞の投与のための薬学的に許容される担体は通常、注射によって送達するために許容される担体であり、界面活性剤又は送達する細胞に損傷を与え得るその他の化合物などの薬剤を含まない。薬学的に許容される担体として役立ち得る物質のいくつかの例には、乳糖、グルコース及びスクロースなどの糖類、コーンスターチ及び馬鈴薯デンプンなどのデンプン、カルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロース及び酢酸セルロースなどのセルロース並びにその誘導体、粉末トラガカント、麦芽、ゼラチン、タルク、カカオ脂及び座剤用ワックスなどの賦形剤、ピーナツ油、綿実油、ベニバナ油、ゴマ油、オリーブ油、トウモロコシ油及びダイズ油などの油、プロピレングリコールなどのグリコール、グリセリン、ソルビトール、マンニトール及びポリエチレングリコールなどのポリオール、オレイン酸エチル及びラウリン酸エチルなどのエステル、寒天、水酸化マグネシウム及び水酸化アルミニウムなどの緩衝剤、アルギン酸、発熱物質除去水、等張生理食塩水、リンゲル溶液、エチルアルコール、リン酸緩衝溶液並びに医薬製剤で使用されるその他の非毒性適合物質、特に眼内送達に好ましいリン酸緩衝生理食塩水溶液が含まれる。
【0044】
ラウリル硫酸ナトリウム及びステアリン酸マグネシウムなどの湿潤剤、乳化剤及び滑沢剤並びに着色剤、離型剤、コーティング剤、甘味剤、矯臭剤及び香料、保存剤及び抗酸化物質も組成物に存在することができる。
【0045】
薬学的に許容される抗酸化物質の例には、アスコルビン酸、システイン塩酸塩、硫酸水素ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウムなどの水溶性抗酸化物質、パルミチン酸アスコルビル、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA、butylated hydroxyanisole)、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT、butylated hydroxytoluene)、レシチン、没食子酸プロピル、α-トコフェロールなどの油溶性抗酸化物質及びクエン酸、エチレンジアミン四酢酸(EDTA、ethylenediamine tetraacetic acid)、ソルビトール、酒石酸、リン酸などの金属キレート剤が含まれる。
【0046】
本発明の製剤には、経口、鼻腔、局所、経皮、頬側、舌下、筋肉内、腹腔内、眼内、硝子体内、網膜下及び/又はその他の非経口投与経路に適したものが含まれる。投与の特定の経路は特に標的とする特定の細胞に依存する。製剤は、単位投与形態で便利に提示することができ、製薬業界では周知のいかなる方法によっても調製することができる。単回投与形態を製造するために、担体物質と一緒にすることができる活性成分の量は、一般的に治療効果を生じる化合物の量である。
【0047】
用語「複数」は、2つ以上を意味するものと理解される。例えば、複数とは、少なくとも2、3、4、5又はそれ以上を意味する。
【0048】
本明細書で使用される場合、用語「予防」とは、特に疾患又は障害を発症する傾向がある対象における疾患又は病気の少なくとも1つの徴候又は症状の制限、発生速度又は程度の低下、或いは発症の阻害と理解される。例えば、オプシン遺伝子などの遺伝子に変異を有する対象はRPを発症しやすい。疾患の1又は2以上の症状の発生年齢はときどき、特定の変異によって決定されることがある。予防には、RPの1又は2以上の徴候又は症状の発生の遅延を含んでいてもよく、対象の生涯を通じて疾患の少なくとも1つの徴候又は症状の出現を予防する必要はない。予防は、薬剤又は治療薬の2回以上の投与を必要としてもよい。
【0049】
本明細書で使用される場合「低分子」は、約1500Da、1000Da、750Da又は500Da以下の分子量を有する化合物、通常は有機化合物と理解される。一実施形態では、低分子には、天然のアミノ酸及び/又はヌクレオチドのみを含むポリペプチド又は核酸は含まれない。
【0050】
本明細書で使用される場合「対象」とは、生きた生物を意味する。ある特定の実施形態では、生きた生物は動物で、ある特定の好ましい実施形態では、対象はほ乳類で、ある特定の実施形態では、対象は家畜化されたほ乳類又は非ヒト霊長類を含む霊長類である。対象の例には、ヒト、サル、イヌ、ネコ、マウス、ラット、ウシ、ウマ、ヤギ及びヒツジが含まれる。ヒト対象はまた、患者と呼ばれることもある。
【0051】
本明細書で使用される場合、特定の疾患、病気又は症候群を「罹患しているか、又は罹患していることが疑われる」対象は、十分な数の危険因子を有するか、或いは疾患、病気又は症候群の徴候又は症状の十分な数又は組合せを提示しており、したがって、判断能力のある個体は、対象が疾患、病気又は症候群に罹患していると診断するか、又は疑うだろう。RP及び加齢性黄斑変性症(AMD)などの病気を罹患している、又は罹患していることが疑われる対象の確認方法は、当業者の能力の範囲内である。特定の疾患、病気又は症候群に罹患している、及び罹患していることが疑われる対象は、2つの別個の群である必要はない。
【0052】
本明細書で使用される場合、「スーパーオキシドジスムターゼ」は、スーパーオキシドを酸素及び過酸化水素に不均化する酵素と理解される。例には、限定はしないが、SOD1、SOD2及びSOD3が含まれる。SOD1及びSOD3は、ほ乳類に存在するCu-Zn含有スーパーオキシドジスムターゼ酵素の2つのアイソフォームである。Cu-Zn-SOD又はSOD1は、細胞内の空間に見いだされ、細胞外SOD(ECSOD又はSOD3)は主にほとんどの組織の細胞外マトリックスに見いだされる。
【0053】
本明細書で使用される場合「治療有効量」とは、細胞又は対象に単回又は複数回投与すると、このような障害を有する患者の生存の延長、障害の1又は2以上の徴候又は症状の軽減、このような治療の非存在で予測されるものを上回る予防又は遅延などにおいて有効な薬剤の量を意味する。
【0054】
薬剤又はその他の治療的介入は、単独で、或いは1又は2以上の追加的治療薬又は治療的介入と組み合わせて、従来の賦形剤、例えば、薬学的に許容される担体と混合した医薬組成物又は治療的処置として対象に投与することができる。
【0055】
医薬品は、例えば、本明細書に関連部分が参照により組み込まれたRemington's Pharmaceutical Sciences(Mack Pub. Co., Easton, PA, 1985)に記載されたように、単位投与形態で適宜投与することができ、製薬業界で周知の方法のいずれかによって調製することができる。
【0056】
非経口投与用の製剤は、滅菌水又は生理食塩水、ポリエチレングリコールなどのポリアルキレングリコール、植物由来の油、水素化ナフタレンなどのような一般的な賦形剤を含有することができる。特に、生体適合性、生分解性ラクチドポリマー、ラクチド/グリコリドコポリマー又はポリエチレン-ポリオキシプロピレンコポリマーは、特定の薬剤の放出を制御するために有用な賦形剤であり得る。
【0057】
一部の実施形態では、RPを有すると同定された対象の治療は、N-アセチルシステイン(NAC、N-acetyl cysteine)、N-アセチルシステインアミド(NACA、N-acetyl cysteine amide)、アスコルビン酸、システイン塩酸塩、硫酸水素ナトリウム、メタ重
亜硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウムなどの抗酸化療法、パルミチン酸アスコルビル、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、レシチン、没食子酸プロピル、α-トコフェロールなどの油溶性抗酸化物質、クエン酸、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ソルビトール、酒石酸、リン酸などの金属キレート剤を含むことができる。
【0058】
その他の実施形態では、RPを有すると同定された対象の治療は、国際出願PCT/US2013/076433で教示され、本明細書にその全体が参照により組み込まれたように、ヒトグルタミン酸システインリガーゼ及びヒトグルタチオン合成酵素をコードする単離されたポリヌクレオチドを発現コンストラクトに入れて投与するステップを含むことができる。
【0059】
一部の実施形態では、1又は2以上の抗酸化物質は眼内、網膜下、硝子体内、経口、静脈内、筋肉内、髄内、クモ膜下腔内、心室内、経皮、皮下、腹腔内、鼻腔内、経腸、局所、舌下又は直腸内に投与する。
【0060】
所与の療法で使用される活性化合物又は薬剤の実際に好ましい量は、例えば、利用する特定の化合物、製剤した特定の組成物、投与様式及び対象の特徴、例えば、対象の種、性別、体重、全身の健康状態及び年齢によって変化することは理解されたい。投与の所与の方法に最適な投与速度は、前記の指針に関して実施した従来の投薬量決定試験を使用して当業者によって容易に確認することができる。
【0061】
薬剤は、例えば、注射、眼内、硝子体内、網膜下、静脈内、動脈内、真皮下、腹腔内、筋肉内若しくは皮下又は経口、頬側、経鼻、経粘膜によって、カテーテルによって直接疾患器官に、局所的に、又は眼科用調製物で、体重1kg当たり約0.001~約100mgの範囲の投薬量で、又は特定の薬物の必要条件に従って、より好ましくは体重1kg当たり0.5~10mgで投与することができる。化合物を直接目に送達するとき、体重などの考慮はあまり用量と関係がないと理解される。
【0062】
投与の頻度は、投与した薬剤、対象における疾患又は病気の進行及び当業者に公知のその他の考慮すべき事項に左右される。例えば、目に送達する組成物は、眼内の区画に送達する組成物であっても、薬物動態及び薬力学的考慮は異なっており、例えば、網膜下空間でのクリアランスは非常に低い。したがって、投与は、月1回、3カ月に1回、6カ月に1回、1年に1回、5年に1回又はそれより少ない頻度であってもよい。抗酸化物質の全身投与を、網膜下空間への発現コンストラクトの投与と併用して実施するならば、抗酸化物質の投与頻度は、発現コンストラクトよりも多く、例えば、1日1又は2回以上、週に1又は2回以上であることが予測される。
【0063】
投与は、疾患の1又は2以上の徴候又は症状、例えば、視力、視野、夜間視力などのモニタリングと併用して決定することができる。単回投与形態を生成するために担体物質と一緒にすることができる活性成分の量は、治療される宿主(host treated)及び特定の投与様式に応じて変化するだろう。典型的な調製物は、約1%~約95%の活性化合物(w/w)を含有する。
【0064】
或いは、このような調製物は、約20%~約80%の活性化合物を含有する。上に列挙したものよりも低い又は高い用量を必要とすることもある。いかなる特定の患者についても特定の投薬及び治療計画は、使用する特定の化合物の活性、年齢、体重、全身的な健康状態、性別、食事内容、投与時間、排泄速度、薬物の組合せ、疾患、病気又は症状の重症度及び経過、疾患、病気又は症状に対する患者の素質及び担当医師の判断を含む様々な要素に左右される。
【0065】
一部の実施形態では、本明細書で教示した方法は、様々なRP治療薬の投薬量を管理するため、及び視力のいかなる物理学的測定値も明らかになるよりかなり前に、治療が目の酸化生成物を低下させる効果を有するかどうかを判定するために有用である。したがって、本発明の方法は、疾患をよりよく管理するために、様々なRP治療と併せて使用することができる。
【0066】
医薬組成物は、滅菌した注射可能な調製物の形態、例えば、滅菌した注射可能な水性又は油性懸濁液であってよい。この懸濁液は、適切な分散剤又は湿潤剤(例えば、TWEEN(
登録商標)80など)及び懸濁剤を使用して当技術分野で公知の技術に従って製剤化することができる。滅菌した注射可能な調製物はまた、非毒性の非経口的に許容される希釈剤又は溶媒中の滅菌した注射可能な溶液又は懸濁液、例えば、1,3-ブタンジオールの溶液としてであってもよい。許容される媒体及び溶媒の中でも使用できるのは、マンニトール、水、リンゲル溶液及び等張性塩化ナトリウム溶液である。さらに、滅菌した不揮発性油は溶媒又は懸濁媒として以前から使用されている。このために、合成モノ若しくはジグリセリドを含むいかなる無刺激性の不揮発性油も使用することができる。オレイン酸及びそのグリセリド誘導体などの脂肪酸、特にそれらのポリオキシエチレン化種は、オリーブ油又はヒマシ油などの天然の薬学的に許容される油であるので、注射可能な調製物において有用である。これらの油溶液又は懸濁液はまた、長鎖アルコール希釈剤又は分散剤又はカルボキシメチルセルロース又はエマルジョン及び/若しくは懸濁液などの薬学的に許容される投与形態の製剤において通常使用される類似の分散剤を含有していてもよい。TWEEN(登録商標)若しくはSPAN(登録商標)などのその他の一般的に使用される界面活性剤
及び/又は薬学的に許容される固形物、液体若しくはその他の投与形態の製造において一般的に使用されるその他の類似の乳化剤又は生物学的利用率増強剤も製剤のために使用することができる。
【0067】
本明細書で使用される場合、特定の疾患又は病気などに「感受性のある」又は「傾向がある」又は「罹りやすい」とは、遺伝、環境、健康状態及び/又はその他の危険因子に基づいて、一般集団よりも疾患又は病気を発症しやすい個体を意味する。疾患を発症する可能性の増加は、約10%、20%、50%、100%、150%、200%又はそれ以上の増加であってもよい。
【0068】
眼房水及び血清MDA、カルボニル含量、CUPRAC並びにGSH/GSSHは、RP患者及び対照において測定する。血清ビリルビンは、RP患者及び対照において測定する。
【0069】
RP患者及び対照において測定される眼房水及び血清MDA、カルボニル含量、CUPRAC並びにGSH/GSSHの評価するための方法は、いかなる特定のアッセイ又は方法にも限定されることなく、いかなる公知の分析方法も使用できることを当業者ならば理解するだろう。
【実施例
【0070】
対象。この試験は、clinicaltrials.gov(CT01949623)に登録され、そのプロトコールはJohns Hopkins University治験審査委員会によって承認されており、参加する患者全てからインフォームドコンセントを得た。RPの診断は、遺伝性網膜変性症(HPS)の専門知識を備えた網膜専門医によって、目の検査、網膜電図検査、視野試験及び光干渉断層撮影に基づいて行われた。9人のRPの患者をこの試験に含めた。眼房水試料は、局所麻酔及び5%ポビドンヨード1滴を被験眼に投与し、開瞼器を入れ、1mlのシリンジが付いた30ゲージの針を角膜輪部の前房に挿入し、ゆっくり眼房水を吸引することによって採取した。試料は凍結し、アッセイするまで-80℃で保存した。血液試料も採取し、凝固
後、血液を遠心分離した。血清は小さな試験管に入れ、アッセイするまで-80℃で保存した。黄斑パッカー又は黄斑円孔のために硝子体手術を受けたが、その他の網膜若しくは癌疾患を有さない11人の対照患者も含めた。目を麻酔し、ポビドンヨードで洗浄してから手術を開始するときに、1mlシリンジの付いた30ゲージの針を角膜輪部の前房に挿入し、眼房水を吸引した。血清試料は、11人の患者のうち7人で入手し、2人の患者は静脈アクセスが不十分なため血液採取せず、2人の患者では溶血があり、試料を利用できなかった。眼房水試料を解凍したとき、体積は50~150μlの範囲で、少量の試料でアッセイを全て行うことはできなかったことに注意されたい。各試料のタンパク質濃度は、タンパク質アッセイキット(Bio-Rad社、Hercules, CA)により、製造元の使用説明書を使用して測定した。
【0071】
タンパク質カルボニル含量の測定。タンパク質カルボニル含量は、OxiSelect Protein Carbonyl ELISAキット(Cell Biolabs, Inc.社、San Diego, CA)により、製造元の使用
説明書を使用して測定した。9人のRPの患者及び9人の対照患者の眼房水試料をアッセイした。血清試料は、8人のRPの患者及び7人の対照患者から入手可能であった。簡単に説明すると、各試料(眼房水及び血清)又はタンパク質カルボニル標準液50μlを96ウェルプレートのウェルに添加し、4℃で一晩インキュベートした。方法の項を通じて洗浄は全て、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)で実施した。各ウェルを洗浄後、ジニトロフェニルヒドラジン100μlを添加し、室温で45分間インキュベートした。3回洗浄後、ブロック溶液を各ウェルに添加し、プレートを室温で1時間インキュベートした。3回洗浄後、1次抗体を各ウェルに添加し、室温で1時間インキュベートした。ウェルを3回洗浄し、2次抗体を添加し、プレートを室温で1時間インキュベートした。ウェルを3回洗浄後、基質100μlを各ウェルに添加し、プレートを室温で25分間インキュベートし、反応は停止溶液100μlを各ウェルに添加することによって停止させた。450nmでの吸光度はプレートリーダーで読み取った。標準液の測定値を使用して標準曲線を作成し、タンパク質1mg当たりnmolの各試料のタンパク質カルボニル含量は、その吸光度値を標準曲線にプロットすることによって決定した。各バーは、タンパク質1mg当たりの平均(±標準偏差)タンパク質カルボニル含量を表し、統計学的比較は、スチューデントのt検定によって行った。
【0072】
GSH/GSSG比の測定。7人のRP患者及び6人の対照患者のアッセイのために眼房水試料の体積は十分であった。血清試料は、9人のRPの患者及び7人の対照患者から入手可能であった。GSH/GSSH比は、GSH及びGSSGの別々の測定によって測定した。GSHの測定では、各試料(眼房水又は血清)50μl、GSH標準液(3~320pmolの範囲)又はPBSブランクを96ウェルプレートのウェルに添加した。2-ニトロ安息香酸、NADPH、PBS及びGSHレダクターゼの混合物100μlを添加後、プレートを室温で2分間インキュベートし、次いで405nmの吸光度をプレートリーダーで読み取った。標準液の吸光度値をプロットして標準曲線を作成し、各試料のGSHレベルを計算するために使用した。GSSGの測定では、各試料(眼房水又は血清)50μl、GSSG標準液(3~320pmolの範囲)又はPBS緩衝液ブランクを96ウェルプレートのウェルに添加した。2-ビニルピリジン2μl及びトリエタノールアミン6μlの混合物を各ウェルに添加した。各ウェルに2-ニトロ安息香酸、NADPH、PBS及びGSHレダクターゼの混合物100μlを添加後、プレートを室温で2分間インキュベートし、次いで405nmの吸光度をプレートリーダーで読み取った。各試料のGSSGのレベルは、標準曲線と比較することによって計算した。バーは、平均(±標準偏差)GSH/GSSH比を表し、統計学的比較は、対応のないt検定によって行った。
【0073】
MDAの測定。7人のRP患者及び7人の対照患者のアッセイのために眼房水試料の体積は十分であった。血清試料は、8人のRPの患者及び7人の対照患者から入手可能であ
った。各試料中のMDAの濃度は、以前に記載したように測定した。マロンアルデヒドビスジメチル(Sigma社、Saint Louis, MO)を、0から20μΜの間の既知のMDA濃度の試料を調製して標準曲線を作成するために使用した。血清10μl又は眼房水15μlを100%メタノール90μl又は85μlに添加し、次に硫酸第1鉄(FeSO4; Sigma
社、Saint Louis, MO)2μmolを含有する20%トリクロロ酢酸(Sigma社、Saint Louis, MO)200μl及び0.67%チオバルビツール酸(Sigma社、Saint Louis, MO)
100μlを各試験管に添加した。試料を100℃で30分間インキュベートし、4℃で10分間冷却後、クロロホルム200μlを添加し、試料を充分混合し、4℃で16,000×gで10分間遠心分離した。上清を96ウェルプレートのウェルに移し、2%(エタノール中において)ブチル化ヒドロキシアニソール(Sigma社、Saint Louis, MO)1μlを各ウェルに添加した。試料及び標準液の532nmでの吸光度を測定し、各試料のMDA濃度は吸光度を標準曲線にプロットすることによって決定した。バーは平均(±標準偏差)を表す。統計学的比較は、スチューデントのt検定によって行った。
【0074】
血清SOD3。血清SOD3は、SOD3 ELISAキット(Abnova社、Taipei, Taiwan)を使用して製造元の使用説明書に従って測定した。血清試料は、7人のRPの患者及び7人の対照患者から得た。簡単に説明すると、各血清試料又はSOD3標準液100μlを96ウェルプレートのウェルに2連で添加し、室温で2時間インキュベートした。洗浄後、使用する2次抗体溶液100μlを各ウェルに添加し、室温で1時間インキュベートした。3回洗浄後、ブロック溶液を各ウェルに添加し、プレートを室温で1時間インキュベートした。3回洗浄後、1次抗体を各ウェルに添加し、室温で1時間インキュベートした。3回洗浄後、「使用するAV-HRP」溶液100μlを各ウェルに添加し、プレートを室温で30分間インキュベートした。ウェルを3回洗浄後、基質100μlを各ウェルに加え、プレートを室温で10分間インキュベートし、反応は停止溶液100μlを添加することによって停止させた。450nmでの吸光度はプレートリーダーで読み取った。標準液の測定値を使用して標準曲線を作成し、各試料のSOD3は、その吸光度値を標準曲線にプロットすることによって決定した。各バーは、試料1ml当たりの平均(±標準偏差)SOD3を表し、統計学的比較はスチューデントのt検定によって行った。
【0075】
タンパク質に対する酸化的損傷は、カルボニル基の側鎖への導入の原因となり、カルボニル付加物のELISAは組織中のタンパク質に対する酸化的損傷の定量的測定値となる。黄斑パッカー又は黄斑円孔のために硝子体手術を受けた対照患者の眼房水試料と比較して、RPの患者の眼房水試料は、タンパク質の平均カルボニル含量が有意に上昇していた(図1)。対照と比較してRP患者では血清タンパク質のカルボニル含量には有意な差はなかった。脂質に対する酸化的損傷は、分解して4-ヒドロキシノネナール、MDA及びアクロレインを形成する脂質ヒドロペルオキシドを生じる。対照と比較してRP患者の眼房水又は血清のMDAの平均レベルに有意な差はなかった(図2)。
【0076】
RP患者の眼房水における還元型グルタチオンの減少。還元型グルタチオン(GSH)は主要な細胞内非タンパク質-SH化合物であり、最も重要な細胞内親水性抗酸化物質である。酸化条件下では、GSHはグルタチオンジスルフィド(GSSG)に可逆的に酸化され、還元条件下ではGSHが再生する。したがって、GSH/GSSG比は進行中の酸化的ストレスの尺度となる。平均眼房水GSH/GSSG比は、対照と比較してRPの患者で有意に低下していたが、平均血清GSH/GSSG比には有意な差はなかった(図3)。
【0077】
RP患者対対照患者における血清SOD3レベルには差はない。以前の研究で、対照患者と比較して、RPの患者の群は血清SOD3レベルが有意に低下していることが示された。したがって、血清SOD3レベルを測定したが、我々の患者集団では、RP患者と対照との間には有意な差はないことが見いだされた(図4)。
【0078】
RPのマウス及びブタモデルでは、杆体光受容器が死滅後、最初に錐体、次に網膜内層の細胞に酸化的損傷が進行する。この研究では、本発明者は、ヒトRP患者はまた、対照患者と比較して、眼房水において酸化的損傷の影響を受けたタンパク質のレベルが増加したので、眼の酸化的損傷の証拠が認められることを示す。これらの患者はまた、対照と比較して、眼房水において還元型グルタチオンが有意に減少していたので、進行中の酸化的ストレスの証拠が認められる。これらのデータは、眼房水MDAレベルはRPの患者では変化しないことを示している。血清タンパク質に対する酸化的損傷の増加も、血清GSH/GSSG比の低下もなかったので、RPの患者の目における酸化的ストレスは、目にも影響を及ぼす全身性の問題では説明することはできない。これらのデータは、RPの患者の目における進行中の酸化的ストレス及び酸化的損傷を示している。
【0079】
この研究におけるRP患者は、対照と比較して血清マロンジアルデヒド(MDA)レベルに差はなかったので、末梢における脂質過酸化の増加はなかったことが示唆される。対照と比較して、この研究のRPの患者は、血清タンパク質カルボニル含量に有意な増加を示さなかったので、体全体のタンパク質への全般的な酸化的損傷はないことが示され、また血清GSH/GSSGには有意な減少はなかったので、全身性の酸化的ストレスはないことが示される。この研究では、RPの患者は対照と比較して血清SOD3は有意に低下していなかった。
【0080】
したがって、以前の報告(Martinez-Fernandez de la Camara C, Salom D, Sequedo MD,
Hervas D, Marin-Lambies C, Aller E, Jaijo T, Diaz-LLopis M, Millan JM, and Rodrigo R. Altered antioxidant-oxidant status in the aqueous humor and peripheral blood of patients with retinitis pigmentosa. Plos One 8: e74223: 1-8, 2013)で研究
されたRP患者の集団については、対照と比較して、血清中におけるチオバルビツール酸反応性物質が有意に上昇し、体全体の脂質に対する酸化的損傷の増加が示唆されたので、何か異常なことがあったようである。したがって、以前の研究に含まれたRP患者は、研究のいかなる発見の解釈も困難にする体全体に広がる酸化的ストレスを引き起こす全身性の問題を有していたかもしれない。
【0081】
本発明は、眼房水タンパク質カルボニル含量及びGSH/GSSG比がRPの個々の患者における疾患活性のバイオマーカーであることを示す。本発明は、RPの患者の機能的転帰に対する抗酸化療法の効果を試験する臨床試験における眼房水タンパク質カルボニル含量及びGSH/GSSG比の測定を含む。この方法の第1のステップは、療法によって基準眼房水タンパク質カルボニル含量が低下し、GSH/GSSG比が増加するかどうか、もしそうならば、これらのパラメータの何パーセントの変化が機能的有益性と相関するかを判定することである。疾患活性のバイオマーカーとしてのパラメータの検証は、RP患者の治療を大いに促進する。例えば、眼房水タンパク質カルボニル含量及びGSH/GSSG比の連続測定を、視野の縮小及び/又は光干渉断層撮影におけるエリプソイドゾーンの長さの短縮と相関させる長期研究も実施することができる。
【0082】
この研究は、RPの患者の眼房水における酸化的損傷及び進行中の酸化的ストレスを示し、酸化的ストレスがRPの錐体細胞死に関与するという仮説を支持する。これは、RPの患者において強力な抗酸化物質の効果を調査する臨床試験を推進し、眼房水タンパク質カルボニル含量及びGSH/GSSG比を潜在的バイオマーカーとして試験することを示唆している。
【0083】
本明細書で引用した刊行物、特許出願及び特許を含む参考文献は全て、それぞれ個々の参考文献が参照により組み込まれることが具体的かつ個々に示され、その全内容が本明細書に記載されているのと同程度に、本明細書に参照により組み込まれる。
【0084】
本明細書で論じたいかなる実施形態も本発明のいかなる方法、キット、試薬又は組成物に関して実施することができ、逆の場合も同じであると考えられる。さらに、本発明の組成物は、本発明の方法を実現するために使用することができる。
【0085】
本明細書で記載した特定の実施形態は例示のために示されており、本発明を限定するものではないことを理解されたい。本発明の主要な特色は、本発明の範囲を逸脱することなく、様々な実施形態で使用することができる。当業者であれば、日常操作的な実験のみを使用して、本明細書で記載した特定の手順には数多くの同等物があることを認識するか、又は確認することができるであろう。このような同等物は、本発明の範囲内であると考えられ、特許請求の範囲の対象となる。
【0086】
特許請求の範囲及び/又は明細書において「含む(comprising)」という用語と併用して使用するとき、「a」又は「an」という語の使用は、「1つ(one)」を意味してもよいが、「1又は2以上(one or more)」、「少なくとも1つの(at least one)」及び「
1又は1より多い(one or more than one)」の意味とも合致する。特許請求の範囲における「又は」という用語の使用は、開示が選択肢のみ及び「及び/又は」を意味する定義を支持していても、選択肢のみを意味しているか、又は選択肢が互いに排他的であることが明示的に示されていなければ、「及び/又は」を意味するために使用される。本明細書全体にわたって、「約」という用語は、値の測定に使用されたデバイス、方法に本来備わっている誤差の変動、又は研究対象間に存在する変動が値に含まれることを示すために使用される。
【0087】
本明細書で言及した刊行物及び特許出願は全て、本発明が関係する当業者の技術レベルの指標となる。刊行物及び特許出願は全て、それぞれ個々の刊行物又は特許出願が参照により組み込まれることが具体的かつ個々に示されるのと同程度に、本明細書に参照により組み込まれる。
【0088】
本明細書及び特許請求の範囲で使用したように、「含む(comprising)」(及び「含む(comprise)」及び「含む(comprises)」などの含む(comprising)のいかなる形態)
、「有する(having)」(及び「有する(have)」及び「有する(has)」などの有する
(having)のいかなる形態)、「含む(including)」(及び「含む(includes)」及び
「含む(include)」などの含む(including)のいかなる形態)又は「含有する(containing)」(及び「含有する(contains)」及び「含有する(contain)」などの含有する
(containing)のいかなる形態)の用語は包括的又はオープンエンドであり、列挙されていない付加的な要素又は方法ステップを排除しない。本明細書で規定した組成物及び方法のいずれかの実施形態において、「含む(comprising)」は、「から本質的になる(consisting essentially of)」又は「からなる(consisting of)」と置換することができる。本明細書で使用される場合、「から本質的になる(consisting essentially of)」と
いう語句は、特定の整数又はステップ並びに特許請求された発明の特質又は機能に実質的に影響を及ぼさないものを必要とする。本明細書で使用される場合、用語「からなる」は、引用した整数(例えば、特色、要素、特徴、特性、方法/方法ステップ又は制限)又は整数の群(例えば、特色、要素、特徴、特性、方法/方法ステップ又は制限)のみの存在を示すために用いられる。
【0089】
本明細書で使用される場合「又はそれらの組合せ(or combinations thereof)」とい
う用語は、用語の前に挙げた事項の配列及び組合せ全てを意味する。例えば、「A、B、C又はそれらの組合せ」は、A、B、C、AB、AC、BC又はABCのうちの少なくとも1つを含むことを意図しており、特定の文脈において順番が重要ならば、BA、CA、CB、CBA、BCA、ACB、BAC又はCABも含むことを意図する。この例に続い
て、BB、AAA、AB、BBC、AAABCCCC、CBBAAA、CABABBなどの1又は2以上の事項又は用語の反復を含有する組合せも明らかに含まれる。当業者であれば、文脈から明らかでない限り、通常、いかなる組合せにおいても事項又は用語の数には制限がないことが理解されよう。
【0090】
本明細書で使用される場合、限定はしないが、「約(about)」、「実質的(substantial)」又は「実質的に(substantially)」などの近似を示す語は、そのように修飾され
たとき絶対的又は完全である必要はないと思われるが、提示したような条件を指定することが正当であると当業者にとってほぼ考えられる条件を意味する。記載の変動可能な範囲は、変化がどのような大きさで起こり得るかに左右され、変更された特徴が変更していない特徴の必要な特徴及び能力をまだ備えていることをまだ当業者が認識できる範囲である。一般的に、しかし前述の考察次第で、「約(about)」などの近似の語によって修飾さ
れた本明細書の数値は、提示された値から少なくとも±1、2、3、4、5、6、7、10、12又は15%変化していてもよい。
【0091】
さらに、本明細書の項目の見出しは、米国特許法施行規則第1.77条の提案との整合性を保つために提供されるか、又はその他の組織的な手がかりを提供する。これらの見出しは、本開示から生じ得るいかなる請求項においても記載される本発明を限定又は特徴付けるものではない。特に例としては、見出しが「技術分野」を意味していても、このような特許請求の範囲は、この見出しの下におけるいわゆる技術分野を説明するための言葉によって限定されるべきではない。さらに、「背景技術」の項目における技術の記載は、技術が本開示のいかなる発明に対しても先行技術であることを承認すると解釈されるものではない。「概要」も、提示された特許請求の範囲に記載した本発明を特徴付けるものと見なされるものではない。さらに、本開示において単数形の「発明」のいかなる参照も、本開示における新規な点が1つのみであることを主張するために使用するべきではない。本開示による複数の請求項の制限に従って複数の発明を記載することができ、したがってこのような請求項はそれによって保護される本発明及びその同等物を規定する。いかなる場合においても、このような請求項の範囲は、本開示を考慮してそれらの長所に関して検討されるが、本明細書で記載した見出しによって制約されるべきではない。
【0092】
本明細書で開示し、請求した組成物及び/又は方法は全て、本開示に関して不必要な実験を行うことなく作製し、実行することができる。本発明の組成物及び方法は好ましい実施形態を用いて記載したが、当業者であれば、本発明の概念、精神及び範囲を逸脱することなく、本明細書で記載した組成物及び/又は方法及びステップ又は方法のステップの順番に変更を加えることができることを理解するだろう。添付の特許請求の範囲によって定義したように、当業者に明らかなこのような類似の置換及び改変は全て、本発明の精神、範囲及び概念内にあると見なされる。
図1
図2
図3
図4