(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-02
(45)【発行日】2022-02-10
(54)【発明の名称】電子契約プログラム、情報処理装置及び情報処理方法
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/18 20120101AFI20220203BHJP
G06Q 10/10 20120101ALI20220203BHJP
【FI】
G06Q50/18
G06Q10/10 310
(21)【出願番号】P 2020125476
(22)【出願日】2020-07-22
【審査請求日】2021-03-08
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】505392916
【氏名又は名称】弁護士ドットコム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002815
【氏名又は名称】IPTech特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】橋詰 卓司
【審査官】竹下 翔平
(56)【参考文献】
【文献】特表2004-531918(JP,A)
【文献】特開2012-145996(JP,A)
【文献】特開2003-050844(JP,A)
【文献】特開2005-056105(JP,A)
【文献】特表2019-526115(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロセッサとメモリとを備えるコンピュータによって実行される電子契約プログラムであって、
前記プロセッサに、
組織に属するユーザのうち、電子契約を締結することが可能な1または複数の受信者を特定する情報であって、前記組織、および前記組織において前記受信者の個人を識別する電子メールアドレスである第1の情報を前記メモリに記憶させるステップと、
送信者により指定された、契約締結を依頼する前記組織に属する受信者を特定する情報である第2の情報と第1の情報とを照合するステップと、
前記照合をすることにより、前記依頼にかかる受信者が前記電子契約を締結する権限があると判定された場合に、契約締結を依頼する通知を前記受信者に送信するステップと、
前記照合をすることにより、前記依頼にかかる受信者が前記電子契約を締結する権限がないと判定された場合に、前記受信者または当該受信者が属する組織の意思にかかわらず、当該電子契約の締結を停止するステップと、
前記照合をすることにより、前記依頼にかかる受信者が前記電子契約を締結する権限がないと判定された場合に、契約締結を依頼する通知を、第1の情報に関連付けられ前記電子契約を締結する権限がある受信者に、送信するステップと、
をコンピュータに実行させる電子契約プログラム。
【請求項2】
前記プロセッサに、
前記照合をすることにより、前記依頼にかかる受信者が前記電子契約を締結する権限がないと判定された場合に、前記依頼にかかる受信者から契約締結に合意する操作を受け付けたときに、
契約締結に合意するか否かの通知を、第1の情報に関連付けられ前記電子契約を締結する権限がある受信者に、送信するステップと、
をコンピュータに実行させる請求項1記載の電子契約プログラム。
【請求項3】
前記プロセッサに、
第1の情報に関連付けられ前記電子契約を締結する権限がある受信者が、前記電子契約を締結するステップと、
をコンピュータに実行させる請求項1または2記載の電子契約プログラム。
【請求項4】
プロセッサとメモリとを備えるコンピュータによって実行される電子契約プログラムであって、
前記プロセッサに、
組織に属するユーザのうち、電子契約を締結することが可能な1または複数の受信者を特定する情報であって、前記組織、および前記組織において前記受信者の個人を識別する電子メールアドレスである第1の情報を前記メモリに記憶させるステップと、
送信者により指定された、契約締結を依頼する前記組織に属する受信者を特定する情報である第2の情報と第1の情報とを照合するステップと、
前記照合をすることにより、前記依頼にかかる受信者が前記電子契約を締結する権限があると判定された場合に、契約締結を依頼する通知を前記受信者に送信するステップと、
前記照合をすることにより、前記依頼にかかる受信者が前記電子契約を締結する権限がないと判定された場合に、前記受信者または当該受信者が属する組織の意思にかかわらず、当該電子契約の締結を停止するステップと、
当該電子契約の締結が停止された場合に、第1の情報に関連付けられた受信者側の組織の管理者に対して、当該電子契約の締結が停止されたことを通知するステップと、
をコンピュータに実行させる電子契約プログラム。
【請求項5】
前記電子メールアドレスは、前記組織に対応するドメイン情報を含む請求項1から4のいずれかに記載の電子契約プログラム。
【請求項6】
前記送信者により指定された前記受信者の前記ドメイン情報が、あらかじめ指定されたドメイン情報に一致する場合には、前記電子契約を依頼する通知を前記受信者に送信するステップを含む請求項5に記載の電子契約プログラム。
【請求項7】
第1の情報が、前記電子メールアドレスに代えて、当該電子メールアドレスに紐づいた第1の受信者識別情報であ
り、
第2の情報は電子メールアドレスであり、
前記照合するステップは、第2の情報と第1の情報とを照合するのに代えて、第2の情報と第1の受信者識別情報に紐づいた電子メールアドレスとを照合し、
第2の情報と、第1の受信者識別情報に紐づいた電子メールアドレスとの比較により前記権限の有無を判定する、
請求項1から
6のいずれかに記載の電子契約プログラム。
【請求項8】
前記受信者から第1の情報を受け付けて前記メモリを更新するステップをさらに含む請求項1から
7のいずれかに記載の電子契約プログラム。
【請求項9】
制御部とメモリとを備える情報処理装置であって、
前記制御部は、
組織に属するユーザのうち、電子契約を締結することが可能な1または複数の受信者を特定する情報であって、前記組織、および前記組織において前記受信者の個人を識別する電子メールアドレスである第1の情報を前記メモリに記憶させるステップと、
送信者により指定された、契約締結を依頼する前記組織に属する受信者を特定する情報である第2の情報と第1の情報とを照合するステップと、
前記照合をすることにより、前記依頼にかかる受信者が前記電子契約を締結する権限があると判定された場合に、契約締結を依頼する通知を前記受信者に送信するステップと、
前記照合をすることにより、前記依頼にかかる受信者が前記電子契約を締結する権限がないと判定された場合に、前記受信者または当該受信者が属する組織の意思にかかわらず、当該電子契約の締結を停止するステップと、
前記照合をすることにより、前記依頼にかかる受信者が前記電子契約を締結する権限がないと判定された場合に、契約締結を依頼する通知を、第1の情報に関連付けられ前記電子契約を締結する権限がある受信者に、送信するステップと、
を実行する情報処理装置。
【請求項10】
制御部とメモリとを備える情報処理装置に処理を実行させるための情報処理方法であって、前記制御部に、
組織に属するユーザのうち、電子契約を締結することが可能な1または複数の受信者を特定する情報であって、前記組織、および前記組織において前記受信者の個人を識別する電子メールアドレスである第1の情報を前記メモリに記憶させるステップと、
送信者により指定された、契約締結を依頼する前記組織に属する受信者を特定する情報である第2の情報と第1の情報とを照合するステップと、
前記照合をすることにより、前記依頼にかかる受信者が前記電子契約を締結する権限があると判定された場合に、契約締結を依頼する通知を前記受信者に送信するステップと、
前記照合をすることにより、前記依頼にかかる受信者が前記電子契約を締結する権限がないと判定された場合に、前記受信者または当該受信者が属する組織の意思にかかわらず、当該電子契約の締結を停止するステップと、
当該電子契約の締結が停止された場合に、第1の情報に関連付けられた受信者側の組織の管理者に対して、当該電子契約の締結が停止されたことを通知するステップと、
を実行させる情報処理方法。
【請求項11】
制御部とメモリとを備える情報処理装置であって、
前記制御部は、
組織に属するユーザのうち、電子契約を締結することが可能な1または複数の受信者を特定する情報であって、前記組織、および前記組織において前記受信者の個人を識別する電子メールアドレスである第1の情報を前記メモリに記憶させるステップと、
送信者により指定された、契約締結を依頼する前記組織に属する受信者を特定する情報である第2の情報と第1の情報とを照合するステップと、
前記照合をすることにより、前記依頼にかかる受信者が前記電子契約を締結する権限があると判定された場合に、契約締結を依頼する通知を前記受信者に送信するステップと、
前記照合をすることにより、前記依頼にかかる受信者が前記電子契約を締結する権限がないと判定された場合に、前記受信者または当該受信者が属する組織の意思にかかわらず、当該電子契約の締結を停止するステップと、
前記照合をすることにより、前記依頼にかかる受信者が前記電子契約を締結する権限がないと判定された場合に、契約締結を依頼する通知を、第1の情報に関連付けられ前記電子契約を締結する権限がある受信者に、送信するステップと、
を実行する情報処理装置。
【請求項12】
制御部とメモリとを備える情報処理装置に処理を実行させるための情報処理方法であって、前記制御部に、
組織に属するユーザのうち、電子契約を締結することが可能な1または複数の受信者を特定する情報であって、前記組織、および前記組織において前記受信者の個人を識別する電子メールアドレスである第1の情報を前記メモリに記憶させるステップと、
送信者により指定された、契約締結を依頼する前記組織に属する受信者を特定する情報である第2の情報と第1の情報とを照合するステップと、
前記照合をすることにより、前記依頼にかかる受信者が前記電子契約を締結する権限があると判定された場合に、契約締結を依頼する通知を前記受信者に送信するステップと、
前記照合をすることにより、前記依頼にかかる受信者が前記電子契約を締結する権限がないと判定された場合に、前記受信者または当該受信者が属する組織の意思にかかわらず、当該電子契約の締結を停止するステップと、
当該電子契約の締結が停止された場合に、第1の情報に関連付けられた受信者側の組織の管理者に対して、当該電子契約の締結が停止されたことを通知するステップと、
を実行させる情報処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電子契約プログラム、情報処理装置及び情報処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
契約書の電子データをインターネット上で交換して電子署名を施すことで契約を締結し、企業のサーバやクラウドストレージなどに電子データを保管しておく技術がある。
【0003】
特許文献1には、管理者が、電子契約を締結するユーザの電子身分証明カード情報を登録及び管理することについて記載され、また本人の身分等を相手方に表示することにより、電子契約の際に身分を証明することについて記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1のように電子契約の締結の際に電子身分証明カードに基づいて身分確認をする構成とした場合、(1)電子身分証明カードの管理が煩雑化すること、(2)電子身分証明カードそれ自体の信用性、(3)電子身分証明カードの取得・維持コスト負担が発生するという問題点がある。
【0006】
たとえば、管理者からすると、電子身分証明カードの情報が正しく入力され、誤入力がないかをチェックすることで正確性を担保するためのメンテナンス作業が煩雑となる。
【0007】
また、契約を締結する相手方からすると、その電子身分証明カードに記録された身分等が真正であるかどうかを自身が判断し、自身のリスクでそのカードの持ち主と電子契約を締結するかしないかを判断することとなり、電子身分証明カードの信用性があったとしても、当該人物がその契約を締結する権限を有していないまま電子契約を締結する可能性があり、これを防止することが必要である。
【0008】
さらに、自身にとっても相手方にとっても、電子身分証明カードの取得・維持にあたり本人確認や身分証明書等の提示に基づく審査プロセスに時間と手間、さらには手数料等が徴収されることになりかねない。
【0009】
そこで本開示は、電子契約システムにおいて、組織に属する者等電子契約システムのユーザ同士が権限なく電子契約を締結することを簡素な構成により低コストに防止することができる別の技術の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
一実施形態によると、プロセッサとメモリとを備えるコンピュータによって実行される電子契約プログラムが提供される。この電子契約プログラムは、プロセッサに、電子契約を締結することが可能な1または複数の受信者を特定する情報であって、組織、および当該組織において受信者の個人を識別する電子メールアドレスである第1の情報をメモリに記憶させるステップと、送信者により指定された、契約締結を依頼する受信者を特定する情報と第1の情報とを照合するステップと、照合をすることにより、依頼にかかる受信者が電子契約を締結することができる場合に、契約締結を依頼する通知を受信者に送信するステップと、照合をすることにより、依頼にかかる受信者が電子契約を締結する権限がない場合に、受信者または当該受信者が属する組織の意思にかかわらず、当該電子契約の締結を停止するステップと、をコンピュータに実行させる。
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、インターネットを介し、メールアドレスを用いて締結する電子契約システムにおいて、組織に属する者等電子契約システムのユーザ同士が権限なく電子契約を締結することを簡素な構成により低コストに防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】電子契約システム1の全体の構成を示す図である。
【
図2】実施の形態1の電子契約システム1を構成する端末装置10のブロック図である。
【
図5】サーバ20が記憶するデータの構造を示す図である。
【
図6】電子契約を締結可能な者の登録を行う処理を示すフローチャートである。
【
図7】電子契約の依頼を行う処理を示すフローチャートである。
【
図8】権限を有しない受信者への電子契約の依頼を中止する際の画面例を示す図である。
【
図9】電子契約を締結可能な受信者とそうでない者を区別して一覧表示する画面例を示す図である。
【
図10】権限の有無に応じた電子契約の依頼の転送を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。以下の説明では、同一の部品には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同じである。したがって、それらについての詳細な説明は繰り返さない。
【0014】
<1 電子契約システム全体の構成>
図1は、電子契約システム1の全体の構成を示す図である。
【0015】
図1に示すように、電子契約システム1は、複数の端末装置(
図1では端末装置10Aおよび端末装置10Bを示している。以下、総称して「端末装置10」ということもある)と、サーバ20とを含む。端末装置10とサーバ20とは、ネットワーク80を介して通信接続する。
【0016】
端末装置10は、各ユーザが操作する装置である。端末装置10は、移動体通信システムに対応したスマートフォン、タブレット等の携帯端末などにより実現される。この他に、端末装置10は、例えば据え置き型のPC(Personal Computer)、ラップトップPCであるとしてもよい。
図1に端末装置10Bとして示すように、端末装置10は、通信IF(Interface)12と、入力装置13と、出力装置14と、メモリ15と、記憶部16と、プロセッサ19とを備える。サーバ20は、通信IF22と、入出力IF23と、メモリ25と、ストレージ26と、プロセッサ29とを備える。
【0017】
端末装置10は、ネットワーク80を介してサーバ20と通信可能に接続される。端末装置10は、5G、LTE(Long Term Evolution)などの通信規格に対応した無線基地局81、IEEE(Institute of Electrical and Electronics Engineers)802.11などの無線LAN(Local Area Network)規格に対応した無線LANルータ82等の通信機器と通信することによりネットワーク80に接続される。
【0018】
通信IF12は、端末装置10が外部の装置と通信するため、信号を入出力するためのインタフェースである。入力装置13は、ユーザからの入力操作を受け付けるための入力装置(例えば、タッチパネル、タッチパッド、マウス等のポインティングデバイス、キーボード等)である。出力装置14は、ユーザに対し情報を提示するための出力装置(ディスプレイ、スピーカ等)である。メモリ15は、プログラム、および、プログラム等で処理されるデータ等を一時的に記憶するためのものであり、例えばDRAM(Dynamic Random Access Memory)等の揮発性のメモリである。記憶部16は、データを保存するための記憶装置であり、例えばフラッシュメモリ、HDD(Hard Disc Drive)である。プロセッサ19は、プログラムに記述された命令セットを実行するためのハードウェアであり、演算装置、レジスタ、周辺回路などにより構成される。
【0019】
サーバ20の通信IF22は、サーバ20が外部の装置と通信するため、信号を入出力するためのインタフェースである。入出力IF23は、ユーザからの入力操作を受け付けるための入力装置、および、ユーザに対し情報を提示するための出力装置とのインタフェースとして機能する。メモリ25は、プログラム、および、プログラム等で処理されるデータ等を一時的に記憶するためのものであり、例えばDRAM(Dynamic Random Access Memory)等の揮発性のメモリである。ストレージ26は、データを保存するための記憶装置であり、例えばフラッシュメモリ、HDD(Hard Disc Drive)である。プロセッサ29は、プログラムに記述された命令セットを実行するためのハードウェアであり、演算装置、レジスタ、周辺回路などにより構成される。
【0020】
なお、図示する例では、端末装置10は、サーバ20を介して互いに通信可能であることとしているが、サーバ20を介さず、近距離無線通信により複数の端末装置10が互いに直接通信することとしてもよい。
【0021】
<1.1 端末装置10の構成>
図2は、実施の形態1の電子契約システム1を構成する端末装置10のブロック図である。
図2に示すように、端末装置10は、複数のアンテナ(アンテナ111、アンテナ112)と、各アンテナに対応する無線通信部(第1無線通信部121、第2無線通信部122)と、操作受付部130(タッチ・センシティブ・デバイス131およびディスプレイ132を含む)と、音声処理部140と、マイク141と、スピーカ142と、位置情報センサ150と、カメラ160と、記憶部180と、制御部190と、を含む。端末装置10は、
図2では特に図示していない機能及び構成(例えば、電力を保持するためのバッテリ、バッテリから各回路への電力の供給を制御する電力供給回路など)も有している。端末装置10に含まれる各ブロックは、バス等により電気的に接続される。
【0022】
アンテナ111は、端末装置10が発する信号を電波として放射する。また、アンテナ111は、空間から電波を受信して受信信号を第1無線通信部121へ与える。
【0023】
アンテナ112は、端末装置10が発する信号を電波として放射する。また、アンテナ112は、空間から電波を受信して受信信号を第2無線通信部122へ与える。
【0024】
第1無線通信部121は、端末装置10が他の無線機器と通信するため、アンテナ111を介して信号を送受信するための変復調処理などを行う。第2無線通信部122は、端末装置10が他の無線機器と通信するため、アンテナ112を介して信号を送受信するための変復調処理などを行う。第1無線通信部121と第2無線通信部122とは、チューナー、RSSI(Received Signal Strength Indicator)算出回路、CRC(Cyclic Redundancy Check)算出回路、高周波回路などを含む通信モジュールである。第1無線通信部121と第2無線通信部122とは、端末装置10が送受信する無線信号の変復調や周波数変換を行い、受信信号を制御部190へ与える。
【0025】
操作受付部130は、ユーザの入力操作を受け付けるための機構を有する。具体的には、操作受付部130は、キーボード等の入力装置を含む。操作受付部130は、マウス、タッチパッド、タッチパネル等のポインティングデバイスとして構成されることとしてもよい。また、操作受付部130は、タッチスクリーンとして構成され、タッチ・センシティブ・デバイス131と、ディスプレイ132とを含む。タッチ・センシティブ・デバイス131は、端末装置10のユーザの入力操作を受け付ける。タッチ・センシティブ・デバイス131は、例えば静電容量方式のタッチパネルを用いることによって、タッチパネルに対するユーザの接触位置を検出する。タッチ・センシティブ・デバイス131は、タッチパネルにより検出したユーザの接触位置を示す信号を入力操作として制御部190へ出力する。
【0026】
ディスプレイ132は、制御部190の制御に応じて、画像、動画、テキストなどのデータを表示する。ディスプレイ132は、例えばLCD(Liquid Crystal Display)や有機EL(Electro-Luminescence)ディスプレイによって実現される。
【0027】
音声処理部140は、音声信号の変復調を行う。音声処理部140は、マイク141から与えられる信号を変調して、変調後の信号を制御部190へ与える。また、音声処理部140は、音声信号をスピーカ142へ与える。音声処理部140は、例えば音声処理用のプロセッサによって実現される。マイク141は、音声入力を受け付けて、当該音声入力に対応する音声信号を音声処理部140へ与える。スピーカ142は、音声処理部140から与えられる音声信号を音声に変換して当該音声を端末装置10の外部へ出力する。
【0028】
位置情報センサ150は、端末装置10の位置を検出するセンサであり、例えばGPS(Global Positioning System)モジュールである。GPSモジュールは、衛星測位システムで用いられる受信装置である。衛星測位システムでは、少なくとも3個または4個の衛星からの信号を受信し、受信した信号に基づいて、GPSモジュールが搭載される端末装置10の現在位置を検出する。
【0029】
カメラ160は、受光素子により光を受光して、撮影画像として出力するためのデバイスである。カメラ160は、例えば、カメラ160から撮影対象までの距離を検出できる深度カメラである。
【0030】
記憶部180は、例えばフラッシュメモリ等により構成され、端末装置10が使用するデータおよびプログラムを記憶する。ある局面において、記憶部180は、ユーザ情報181を記憶する。ユーザ情報181は、電子契約システム1を利用するユーザの情報である。
【0031】
制御部190は、記憶部180に記憶されるプログラムを読み込んで、プログラムに含まれる命令を実行することにより、端末装置10の動作を制御する。制御部190は、例えばアプリケーションプロセッサである。制御部190は、プログラムに従って動作することにより、入力操作受付部191と、送受信部192と、データ処理部193と、報知制御部194としての機能を発揮する。
【0032】
入力操作受付部191は、タッチ・センシティブ・デバイス131等の入力装置に対するユーザの入力操作を受け付ける処理を行う。入力操作受付部191は、タッチ・センシティブ・デバイス131に対してユーザが指などを接触させた座標の情報に基づき、ユーザの操作がフリック操作であるか、タップ操作であるか、ドラッグ(スワイプ)操作であるか等の操作の種別を判定する。
【0033】
送受信部192は、端末装置10が、サーバ20等の外部の装置と、通信プロトコルに従ってデータを送受信するための処理を行う。データ処理部193は、端末装置10が入力を受け付けたデータに対し、プログラムに従って演算を行い、演算結果をメモリ等に出力する処理を行う。
【0034】
データ処理部193は、端末装置10が入力を受け付けたデータに対し、プログラムに従って演算を行い、演算結果をメモリ等に出力する処理を行う。
【0035】
報知制御部194は、ユーザに対し、視聴覚等の五感を通じて情報を報知する処理を行う。報知制御部194は、表示画像をディスプレイ132に表示させる処理、音声をスピーカ142に出力させる処理、振動をバイブレータに発生させる処理を行う。
【0036】
<1.2 サーバ20の機能的な構成>
図3は、サーバ20の機能的な構成を示す図である。
図3に示すように、サーバ20は、通信部201と、記憶部202と、制御部203としての機能を発揮する。
【0037】
通信部201は、サーバ20が外部の装置と通信するための処理を行う。
【0038】
記憶部202は、サーバ20が使用するデータ及びプログラムを記憶する。記憶部202は、ユーザ情報281と、組織情報282と、契約可能ユーザ情報283と、通知情報284と、契約情報285等を記憶する。
【0039】
ユーザ情報281は、電子契約システム1のユーザの情報を保持するためのデータベースである。
【0040】
組織情報282は、電子契約を行うユーザが属する組織(例えば会社等の企業組織)を示す情報である。
【0041】
契約可能ユーザ情報283は、ユーザが属する各々の組織において電子契約の締結を行う権限を有する者を示す情報である。
【0042】
通知情報284は、電子契約締結の依頼に関する情報であって、依頼を通知した日時等を契約に紐づけて管理するための情報である。
【0043】
契約情報285は、送信者および受信者の電子契約締結の合意の状態、電子契約の内容等を示す情報である。
【0044】
制御部203は、サーバ20のプロセッサがプログラムに従って処理を行うことにより、各種モジュールとして示す機能を発揮する。制御部203の操作内容取得モジュール2041は、ユーザの操作内容を取得する。受信制御モジュール2042は、サーバ20が外部の装置から通信プロトコルに従って信号を受信する処理を制御する。送信制御モジュール2043は、サーバ20が外部の装置に対し通信プロトコルに従って信号を送信する処理を制御する。
【0045】
権限管理モジュール2044、契約締結処理モジュール2045については、以下の電子契約の概念図に続いて説明する。
【0046】
図4は、電子契約を説明するための概念図である。本実施形態において「電子契約」とは、契約書の電子データをインターネット上で交換し、契約当事者が合意の意思表示を行い、その電子署名を契約書の電子データに付与することをいう。また「電子署名」とは、電子署名及び電子署名法2条1項に定義される、電子データの作成者を表示し、電子データが改ざんされていないことを証明するための仕組みのことをいう。
【0047】
まず契約書送信者は、端末装置10Aを操作することにより、契約書の電子データを例えばクラウド上のサーバ20にアップロードする。端末装置10は、この契約書について合意をすることを示す操作を端末装置10のユーザから受け付ける。サーバ20は、契約書送信者が合意した契約書の電子データに対し、契約書送信者の電子署名を付与する。
【0048】
次に、契約書送信者は、契約書受信者に合意締結を依頼するための操作を行う。電子契約システム1は、契約書電子データにアクセスするための情報(リンク)を契約書受信者に電子メールで送付する。
【0049】
契約書受信者は、端末装置10Bにおいて受信した電子メールに記載されたリンクをクリックし、オンラインでサーバ20上の契約書電子データの内容を確認して、合意締結することができる。この時点で契約内容に意図しない条件の記載や瑕疵があるような場合、サーバ20は、契約書受信者から、契約に合意をしない旨の操作を受け付けることとしてもよい。
【0050】
契約書受信者が合意した場合、契約書の電子データには、契約書受信者の電子署名が付与される。契約書の電子データは、サーバ20に保管される。契約当事者双方の電子署名が付与されることで、契約書の改ざんは防止される。
【0051】
本実施形態は、このようなクラウド型の電子契約サービスを実現するものである。以下の実施形態では、契約締結の権限に関して、組織に属する者が権限なく電子契約を締結することを防止するための技術について説明する。
【0052】
このためサーバ20の権限管理モジュール2044(
図3参照)は、組織内において契約締結が可能な者の情報(すなわち本実施形態でいうところの権限情報)を管理し、同権限を有しない者による合意締結の操作を防止する処理を行う。
【0053】
契約締結処理モジュール2045は、上記の権限管理以外の電子契約処理全般を担う。すなわち、契約締結処理モジュール2045は、上記のように契約書送信者の操作に基づき契約書電子データをサーバ20に記録させる処理、契約書電子データにアクセスするためのリンクを生成する処理、契約書受信者に契約締結のための電子メールを送信する処理、契約書受信者からの当該リンクに基づくアクセスを受け付けて契約締結のための操作を受け付ける処理その他の処理を行う。
【0054】
<2 データ構造>
図5は、サーバ20が記憶するユーザ情報281、組織情報282、契約可能ユーザ情報283、通知情報284、契約情報285のデータ構造を示す図である。
【0055】
図5に示すように、ユーザ情報281のレコードのそれぞれは、ユーザを識別する情報それぞれについて、項目「ID」と、項目「ユーザ名」と、項目「組織ID」等を含む。
【0056】
項目「ID」は、ユーザ情報281のそれぞれを識別する情報(ユーザID)である。ユーザIDによって特定されるユーザ情報281のテーブルの一行は、電子契約システム1の一のユーザ(送信者、受信者、ならびに組織の管理者となりうる)を表す。項目「ユーザ名」は、そのユーザIDの氏名等の表示情報である。項目「組織ID」は、組織情報282における組織IDであって、ユーザ情報281は、この組織IDにより組織情報282に関連付けられる。
【0057】
ユーザ情報281は、ユーザの情報として図示する例の他に、そのユーザの電子メールアドレス、パスワードといったそのユーザに固有の情報や、本実施形態に係る電子契約システム1のサービス利用に関して管理するべき、種々のユーザ属性を含む。
【0058】
組織情報282のそれぞれは、項目「ID」、項目「組織名」等を含む。項目「ID」は、組織情報282のそれぞれを識別する情報(組織ID)である。組織IDによって特定される組織情報282のテーブルの一行は、電子契約システム1のユーザが属する一の組織を表す。項目「組織名」は、その組織IDの名称等の表示情報である。
【0059】
組織情報282は、組織の情報として、図示する例の他、会社所在地等といったその組織に固有の情報や、本実施形態に係る電子契約システム1のサービス利用に関して管理するべき、種々の組織属性の情報(例えば、組織構造、部署名等の情報)を含んでもよい。
【0060】
契約可能ユーザ情報283のそれぞれは、項目「ID」、項目「電子メールアドレス」等を含む。
【0061】
項目「ID」は、契約可能ユーザ情報283のそれぞれを識別する情報(契約可能ユーザID)である。契約可能ユーザIDによって特定される契約可能ユーザ情報283のテーブルの一行は、その組織において電子契約の締結が可能な者(「契約可能ユーザ」ということもある)の一の電子メールアドレスを表す。
【0062】
契約可能ユーザ情報の登録がなされていない状態では契約可能ユーザ情報283のテーブルは空である。本実施形態に係る処理により電子契約システム1において登録がなされることで、項目「ID」で識別される、電子契約を締結可能なユーザに関する情報が追加される。
【0063】
管理者等の指示により、本システム1において契約可能ユーザの登録が抹消されると、これに該当する項目「ID」は、契約可能ユーザ情報283から削除される。項目「電子メールアドレス」は、契約可能ユーザの電子メールアドレスである。
【0064】
通知情報284のそれぞれは、項目「ID」、項目「送信者ID」、項目「受信者ID」、項目「依頼通知日時」、項目「契約ID」等を含む。
【0065】
項目「ID」は、通知情報284のそれぞれを識別する情報(通知ID)である。通知IDによって特定される通知情報284のテーブルの一行は、本システム1における契約締結の依頼に関する一件の通知を表す。
【0066】
項目「送信者ID」は、契約合意を依頼する通知において、送信者のユーザIDを示す。項目「受信者ID」は、当該通知の受信者のユーザIDである。項目「依頼通知日時」は、当該依頼に係る通知が行われた年月日および時刻を表す。項目「契約ID」は、契約情報285における契約IDであって、通知情報284は、この契約IDにより契約情報285に関連付けられる。
【0067】
契約情報285のそれぞれは、項目「ID」、項目「送信者ID」、項目「送信者合意」、項目「受信者ID」、項目「受信者合意」、項目「契約内容」等を含む。
【0068】
項目「ID」は、契約情報285のそれぞれを識別する情報(契約ID)である。契約IDによって特定される契約情報285のテーブルの一行は、本システム1における一件の契約を表す。
【0069】
項目「送信者ID」は、契約の締結のために契約書の電子データをサーバ20にアップロードし、受信者に対して契約締結の依頼を行うユーザ(すなわち送信者)のユーザIDである。項目「送信者合意」は、項目「送信者ID」に示される送信者が、当該契約の内容(つまり、契約書)への合意が済んでいるか、それとも未だである(未済)であるかを表す。
【0070】
項目「受信者ID」は、送信者からの通知により契約合意の依頼を受け付ける側のユーザ(すなわち受信者)のユーザIDである。項目「受信者合意」は、項目「受信者ID」に示される受信者が、当該契約の内容(つまり、契約書)への合意が済んでいるか、それとも未だである(未済)であるかを表す。
【0071】
項目「契約内容」は、本件契約に係るタイトル、契約条件等の契約内容を詳細に示す情報である。図示していないが、契約書のリンク情報や、契約書の電子データの実体などが含まれる。
【0072】
<3 動作>
図6は、電子契約を締結可能な者の登録を行う処理を示すフローチャートである。この登録は、本実施形態に係る電子契約システム1を利用した契約を行う前に、本システム1に対してユーザが事前に行っておく。
【0073】
ステップS601において、ユーザの端末装置10では、例えば組織の管理者または従業員であるユーザが、電子契約の締結をすることが可能な者の電子メールアドレスを入力する。
【0074】
ステップS602において、サーバ20の権限管理モジュール2044は、ステップS601で入力された電子契約の締結をすることが可能なユーザの電子メールアドレスを端末装置10から受信し、記憶部202の契約可能ユーザ情報283に登録する。
【0075】
これにより、
図5に示したように、サーバ20は、契約可能ユーザ情報283において、「株式会社A」の「M下 M昭」の電子メールアドレスである「miya@dnameA.jp」が登録され、「株式会社B」の「Y口 J子」の電子メールアドレスである「yama@dnameB.jp」が登録され、「株式会社C」の「H岡M喜夫」の電子メールアドレスである「hira@dnameC.jp」を登録する。
【0076】
なお本例において、「株式会社B」の「N沢 T幸」は、契約可能ユーザ情報283に登録がなく、電子契約の締結を行う権限を有しない。
【0077】
図7は、電子契約の依頼を行う処理を示すフローチャートである。以下の説明では、契約締結の契機となる送信側のユーザの端末装置10Aと、受信側のユーザの端末装置10Bとが、サーバ20を介して契約を締結するものとして説明する。
【0078】
ステップS701において、送信者の端末装置10Aは、契約を依頼する受信者のユーザを指定する。例えば、端末装置10Aがサーバ20にブラウザ等でアクセスすることにより、契約を依頼する受信者のユーザの電子メールアドレスを指定するための画面を端末装置10Aのディスプレイ132に表示させる。端末装置10Aは、送信者のユーザから指定を受け付けた、受信者のユーザの電子メールアドレスの情報をサーバ20へ送信する。
【0079】
ステップS702において、サーバ20の権限管理モジュール2044は、送信者の端末装置10Aにおいて指定された受信者のユーザと、電子契約を締結することが可能な受信者のユーザの情報とを照合する。具体的には、サーバ20は、送信者のユーザによって指定された受信者のユーザの電子メールアドレスと一致するものが、サーバ20の契約可能ユーザ情報283に登録されている電子メールアドレスの一覧に存在するかどうかを判定する。
【0080】
ステップS703において、サーバ20の権限管理モジュール2044は、ステップS702の照合により、契約可能ユーザ情報283に登録されている電子メールアドレスと一致するものがあると判定した場合(ステップS702において一致の場合)、契約締結を依頼された受信者のユーザは電子契約を締結することができると判定する。サーバ20は、契約締結を依頼する通知を受信者の端末装置10Bに送信する。例えば電子契約システム1を構成するサーバ20から、当該電子メールアドレス宛てに、当該通知を含む電子メールを送信することによって行われる。また、サーバ20は、当該通知を含む電子メールアドレスを受信者のユーザの端末装置10Bに送信するとともに、当該通知に関する情報を、通知情報284に記録する。
【0081】
ステップS704において、受信者の端末装置10Bは、上記のステップS703の通知によって依頼された契約の処理を行う。具体的には、端末装置10Bは、受信者のユーザの操作に応答して、上記通知を含む電子メールをディスプレイ132に表示する。端末装置10Bは、受信者のユーザから、電子契約システム1から受信した電子メールに記載されたリンクを選択する操作を受け付けることにより、サーバ20へアクセスし、当該通知にかかる契約締結に関する情報(契約書類の内容等)を表示する。端末装置10Bは、受信者のユーザから、契約書類の内容に合意する旨の操作等を受け付けることにより、サーバ20に対し、契約締結に合意したことを示す情報等を送信する。サーバ20は、端末装置10Bから、契約締結に合意したことを示す情報等を受診することにより、契約情報285を更新し、送信者のユーザの電子メールアドレスに対し、受信者のユーザが契約締結に合意したこと等の通知を送信する。
【0082】
ステップS705において、サーバ20の権限管理モジュール2044は、上記のステップS702の照合により、送信者によって指定された受信者の電子メールアドレスと一致するものが、サーバ20の契約可能ユーザ情報283に登録されている電子メールアドレスの一覧に存在しない場合(ステップS702において一致しない場合)、依頼にかかる受信者のユーザは電子契約を締結する権限がないと判定する。サーバ20は、当該電子契約の締結を停止する。この停止は、受信者または当該受信者が属する組織の意思にかかわらず行われ得る。
【0083】
サーバ20は、当該停止をする場合に、受診者として指定されたユーザの電子メールアドレスのドメインの情報に基づいて、当該電子メールアドレスに関する組織のユーザ(例えば、管理者)を特定し、当該管理者に、電子契約の締結を停止したことを通知する(例えば管理者の電子メールアドレスに宛てて当該通知を送信する)こととしてもよい。これにより、受信者側の組織の管理者等が、送信側のユーザが指定した電子メールアドレスのユーザでは契約締結の権限がないこと、また、送信側のユーザの組織と契約締結をしようとする事業活動があったことを認知することができ、電子契約の管理をよりいっそう容易にすることができる。
【0084】
ここで、サーバ20は、受信者のユーザが契約締結の権限がないために電子契約の締結を停止した場合に、契約情報285において、電子契約の締結を停止しているか否かと、当該停止をしたタイミングを保持させることとしてもよい。これにより、送信者のユーザが端末装置10Aでサーバ20にアクセスした際に、電子契約の締結が停止している契約があることを通知することができ、電子契約の締結が停止してから一定期間が経過した際に、リマインダー等の通知をすることとしてもよい。これにより、電子契約の締結を引き続き推し進めるか(受信者側のユーザに、契約締結の権限があるユーザを割り当ててもらう等)等を、送信者側のユーザが検討することができる。
【0085】
ステップS706において、送信者の端末装置10Aは、ディスプレイ132等において、受信者のユーザが電子契約の締結の権限がない旨、または、受信者のユーザが電子契約の締結の権限を有しているかを通知することなく電子契約の締結でエラーがあったことを送信者のユーザに通知する。端末装置10Aは、送信者のユーザから、電子契約を締結可能な受信者のユーザの再指定をする操作、契約自体をキャンセルする操作等を受け付ける。
【0086】
<4 画面例>
図8は、権限を有しない受信者への電子契約の依頼を中止する際の画面例を示す図である。
【0087】
図8の画面例は、送信者が受信者に対して電子契約の依頼を行う際に、電子契約の権限を有しない者を受信者として指定してしまったとき(すなわち
図7のステップS705)に表示される。
【0088】
例えば、「株式会社A」から「株式会社B」に合意締結の依頼を行う場合であって、「株式会社A」の「M下 M昭」が送信者であり、この送信者が「株式会社B」の「N沢 T幸」を受信者に指定したとする。上述したように、「株式会社B」の「N沢 T幸」は、契約に同意する権限を有しない。
【0089】
このとき、送信者である「M下 M昭」の端末装置10Aのダイアログ画面300には、「指定されたN沢 T幸(nishi@dnameB.jp)様は契約を締結する権限をお持ちでないため処理を継続できません」とのメッセージ300Aが表示される。
【0090】
送信者である「M下 M昭」は、このメッセージの確認のためのOKボタン300Bを押下することしかできず、依頼の処理を継続することはできない。
【0091】
図9は、電子契約を締結可能な受信者のユーザと、そうでないユーザとを区別して一覧表示する画面例を示す図である。
【0092】
この
図9の画面例のように、送信者が受信者に対して電子契約の依頼を行う際に、受信者側の各ユーザについて契約に同意する権限の有無を送信者に対して明示してもよい。例えば、サーバ20は、各組織の管理者から、契約締結の権限があるユーザの情報を、他の組織に公開するか否かの設定をする操作を受け付ける。例えば、ある組織において契約締結の権限があるユーザの情報を、特定の企業(例えば、グループ会社間での契約締結)に対しては公開することがあり得る。
【0093】
例えば、「株式会社A」から「株式会社B」に合意締結の依頼を行う場合であって、「株式会社A」の「M下 M昭」が送信者であるとする。
【0094】
この送信者が「株式会社B」において合意締結の依頼を行うため、その受信者を指定する際にダイアログ画面400を表示してもよい。
【0095】
ダイアログ画面400には、「株式会社B 契約締結が可能な方:Y口 J子(yama@dnameB.jp)・・・」、「契約締結の権限をお持ちでない方:N沢 T幸(nishi@dnameB.jp)・・・」とのメッセージ400Aを表示する。
【0096】
ここで、送信者は選択ボタン400Bを押下することにより、「株式会社B」において契約締結が可能な「Y口 J子(yama@dnameB.jp)」を選択することができる。
【0097】
図8に示した画面例は、権限を有しない受信者への電子契約の依頼を送信者側で中止するものであり、
図9に示した画面例は、受信者側の各ユーザについて契約に同意する権限の有無を送信者に対して明示するものであった。しかし、契約締結の依頼先である受信者が権限を有するか否かを送信者が意識することなく、処理を進められるようにして利便性を向上してもよい。このような実施形態に適用される、権限の有無に応じた電子契約の依頼の転送について
図10を参照して説明する。
【0098】
送信者A(500A)がサーバ20を介して受信者B(500B)に対して電子契約の締結依頼を行う。受信者B(500B)は契約締結の権限を有しないものとする。送信者A(500A)において、この締結依頼はサーバ20に受け付けられる。
【0099】
サーバ20の契約管理モジュール2044は、受信者B(500B)が契約締結の権限を有しないことを契約可能ユーザ情報283に基づいて判定する。ここで、契約管理モジュール2044は、受信者B(500B)と同一組織内の受信者X(500X)に契約締結依頼を転送。受信者Xは例えば法務部に所属しており、契約締結の権限を有するものとする。契約管理モジュール2044は、契約締結の権限を有しない受信者B(500B)から、契約締結に合意する操作を受け付けることに応答して、当該受信者B(500B)が合意する操作をしたことをサーバ20に記録させ、契約締結の権限を有する受信者X(500X)に、契約締結に合意するか否かの通知をする。サーバ20では、組織が最終的に契約締結に合意したか否かのステータスを契約ごとに管理するように構成されている。契約締結の権限を有する受信者X(500X)は、ブラウザ等によりサーバ20にアクセスすることにより、権限を有しない受信者B(500B)等が同意したが組織として最終的に契約締結の合意のステータスに至っていない契約の一覧を受信者X(500X)の端末に表示させる。
【0100】
この転送は、サーバ20の契約締結処理モジュール2045が備える転送機能によって自動的に行われてもよいし、契約締結処理モジュール2045から促されることによるユーザからの指示に応じて手動介入により行われてもよい。転送を受けた受信者X(500X)は、受信者B(500B)に代わって送信者Aに対する合意の意思表示をする。具体的には、合意ボタンを押下する。
【0101】
この
図10の例によれば、権限を有しない受信者Bによる合意締結を防止するという本実施形態の効果を奏するとともに、ユーザが当惑してしまったり、契約締結のフローが滞ってしまったりすることを回避できる。
【0102】
以上のように、本実施形態に係る電子契約システム1によれば、組織に属する者等電子契約システムのユーザ同士が権限なく電子契約を締結することを防止することができる。このような本実施形態は、電子契約の締結の際に電子身分証明カードに基づいて身分確認をするものとは異なり、構成を簡素なものとすることができる。また電子身分証明カードを用いる構成では、その取得・維持にあたり本人確認や身分証明書等の提示に基づく審査プロセスに時間と手間、さらには手数料等が徴収されることが想定されるが、本実施形態ではそのようなことがなく、低コストに実現することが可能である。
【0103】
<5 変形例>
以下、本実施形態の変形例を説明する。
【0104】
(1)ドメインによる権限
契約可能ユーザ情報283の電子メールアドレスは、組織に対応するドメイン情報を含み得る。送信者のユーザにより指定された受信者のドメイン情報が、あらかじめ指定されたドメイン情報に一致する場合には、電子契約を依頼する通知を受信者のユーザに送信する構成としてもよい。
【0105】
この場合、あらかじめ指定されたドメイン情報とは、例えば、組織においてトップレベルのドメインであったり、組織内の特定の部署に該当するサブドメインであったりする。このようなサブドメインの具体例としては、例えば法務部が挙げられる。上述した「株式会社B」の例では、法務部に該当するサブドメイン、例えば「legal.dnameB.jp」を契約可能ユーザ情報283に登録する構成としてもよい。
【0106】
そうすると、契約可能なユーザの各電子メールアドレスを登録する手間を軽減して、組織内の特定部署に契約締結の権限を一括して付与することができ、しかも本実施形態に係る権限を有しない者による契約締結を防止することができる。
【0107】
(2)データ構造の変形例(契約可能ユーザ情報)
受信者を特定する情報を、電子メールアドレスに代えて、当該電子メールアドレスに紐づいた受信者識別情報としてもよい。すなわち、契約可能ユーザ情報283は、電子メールアドレスに紐づく別の情報とするように種々変形することができる。受信者識別情報としては、上述のユーザIDそれ自体、あるいは本システム1とは別の外部のID管理システムで管理しているIDなどが想定され、いずれにしてもユーザ情報281において管理する。
【0108】
この変形例(2)では、次の2つのシステム例が考えられる。
【0109】
システム例1:送信者は電子メールアドレスを指定する。電子契約システム1は受信者識別情報に基づいて権限の有無を判定する
【0110】
システム例2:送信者は受信者識別情報を指定する。電子契約システム1は電子メールアドレスに基づいて権限の有無を判定する
【0111】
(2-1)システム例1では、契約可能ユーザ情報283が受信者識別情報を記憶する。サーバ20の権限管理モジュール2044は、受信者識別情報に紐づいた電子メールアドレスをユーザ情報281に基づいて特定する。次に権限管理モジュール2044は、この特定された電子メールアドレスと、送信者が指定した電子メールアドレスとの比較により、権限の有無を判定する。
【0112】
(2-2)システム例2では、送信者は受信者識別情報を指定する。契約可能ユーザ情報283は電子メールアドレスを記憶する。
【0113】
サーバ20の権限管理モジュール2044は、送信者が指定した受信者識別情報に紐づいた電子メールアドレスをユーザ情報281に基づいて特定する。次に権限管理モジュール2044は、この特定された電子メールアドレスと、契約可能ユーザ情報283に記憶された電子メールアドレスとの比較により、権限の有無を判定する。
【0114】
このように、権限有無の判定に電子メールアドレスを用いるもののみに限定されず、これに代わる別の識別情報を用いる構成とすることができる。
【0115】
(3)契約可能なユーザの情報のアップデート
組織には新たに所属することになる従業員もいれば、退職する従業員もいる。そこで、組織の従業員のデータベースが更新されることに応答して、電子契約の締結が可能なユーザの情報(契約可能ユーザ情報283)をアップデートすることとしてもよい。
【0116】
例えば、組織の人事労務部門において、従業員の情報(氏名、所属、社員番号など)を管理するデータベースを更新している。サーバ20は、端末装置10Bに対するユーザの操作に応答して(または、組織のコンピュータが管理する従業員のデータベースが更新されることもしくは一定期間ごとに)、電子契約の締結が可能なユーザの電子メールアドレスの情報を取得し、契約可能ユーザ情報283を更新することとしてもよい。
【0117】
例えば、端末装置10Bにおいて、組織の管理者等が、退職した社員、休職中の社員等の情報を指定することに応答して、サーバ20において、当該ユーザの電子メールアドレスについて契約締結の権限を失効させるよう、契約可能ユーザ情報283を更新することとしてもよい。一方、端末装置10Bにおいて、組織の管理者等が、新たに特定の組織に所属することになった社員(例えば法務部門、経営管理部門等)、または、新たな役職に就任した社員(組織の管理者等)の情報を指定することに応答して、当該社員の電子メールアドレス等の情報をサーバ20に送信することとしてもよい。サーバ20において、当該ユーザの電子メールアドレスについて契約締結の権限を付与するよう、契約可能ユーザ情報283を更新することとしてもよい。
【0118】
<6 付記>
以上の各実施形態で説明した事項を以下に付記する。
【0119】
(付記1) プロセッサ(29)とメモリ(25)とを備えるコンピュータ(20)によって実行される電子契約プログラムが提供される。電子契約プログラムは、プロセッサ(29)に、電子契約を締結することが可能な1または複数の受信者を特定する情報であって、組織、および当該組織において受信者の個人を識別する電子メールアドレスである第1の情報をメモリ(25)に記憶させるステップ(S702)と、送信者により指定された、契約締結を依頼する受信者を特定する情報と第1の情報とを照合するステップ(S703)と、照合をすることにより、依頼にかかる受信者が電子契約を締結することができる場合に、契約締結を依頼する通知を受信者に送信するステップ(S704)と、照合をすることにより、依頼にかかる受信者が電子契約を締結する権限がない場合に、受信者または当該受信者が属する組織の意思にかかわらず、当該電子契約の締結を停止するステップ(S705)と、を実行させる。
【0120】
これにより、組織に属する者等電子契約システムのユーザ同士が権限なく電子契約を締結することを簡素な構成により低コストに防止することができる。
【0121】
(付記2) 電子メールアドレスは、組織に対応するドメイン情報を含む(付記1)に記載の電子契約プログラム。
【0122】
(付記3) 送信者により指定された受信者のドメイン情報が、あらかじめ指定されたドメイン情報に一致する場合には、電子契約を依頼する通知を受信者に送信するステップ(S703)を含む(付記2)に記載の電子契約プログラム。
【0123】
(付記4) 受信者には電子契約を締結する権限がないことを示すメッセージ(300)を出力するステップ(S703)をさらに含む(付記1)から(付記3)のいずれかに記載の電子契約プログラム。
【0124】
(付記5) 受信者を特定する情報が、電子メールアドレスに代えて、当該電子メールアドレスに紐づいた受信者識別情報である(付記1)から(付記4)のいずれかに記載の電子契約プログラム。
【0125】
(付記6) 送信者が指定した電子メールアドレスと、受信者識別情報に紐づいた電子メールアドレスとの比較により権限の有無を判定する(付記5)に記載の電子契約プログラム。
【0126】
(付記7) 送信者が指定した受信者識別情報に紐づいた電子メールアドレスと、メモリに記憶された電子メールアドレスとの比較により、権限の有無を判定する(付記5)に記載の電子契約プログラム。
【0127】
(付記8) 第1の情報に基づいて、電子契約を締結する権限を有する者と、電子契約を締結する権限を有しない者とを区別して表示(400)するステップをさらに含む(付記1)から(付記7)のいずれかに記載の電子契約プログラム。
【0128】
(付記9) 受信者から第1の情報を受け付けてメモリ(25)を更新するステップ(S602)をさらに含む(付記1)から(付記8)のいずれかに記載の電子契約プログラム。
【符号の説明】
【0129】
10A,10B 端末装置、12 通信IF、13 入力装置、14 出力装置、15 メモリ、16 記憶部、19 プロセッサ、20 サーバ、22 通信IF、23 入出力IF、25 メモリ、26 ストレージ、29 プロセッサ、80 ネットワーク、81 無線基地局、82 無線LAN基地局、130 操作受付部、132 ディスプレイ