(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-02
(45)【発行日】2022-02-10
(54)【発明の名称】成型金型、成型方法
(51)【国際特許分類】
B30B 11/02 20060101AFI20220203BHJP
【FI】
B30B11/02 F
(21)【出願番号】P 2020170781
(22)【出願日】2020-10-08
(62)【分割の表示】P 2016199240の分割
【原出願日】2016-10-07
【審査請求日】2020-10-09
(31)【優先権主張番号】P 2016044521
(32)【優先日】2016-03-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】306000315
【氏名又は名称】株式会社ダイヤメット
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100175802
【氏名又は名称】寺本 光生
(74)【代理人】
【識別番号】100142424
【氏名又は名称】細川 文広
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【氏名又は名称】大浪 一徳
(72)【発明者】
【氏名】丸山 恒夫
(72)【発明者】
【氏名】田村 佳樹
(72)【発明者】
【氏名】坂井 秀男
【審査官】豊島 唯
(56)【参考文献】
【文献】特開昭48-059085(JP,A)
【文献】実開平04-067007(JP,U)
【文献】特開昭57-014500(JP,A)
【文献】特開昭61-201704(JP,A)
【文献】実開昭59-43106(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B30B 11/02
B30B 11/00
B30B 11/08
B30B 15/32
B22F 3/02 - 3/03
F16C 33/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
貫通孔を有する第1ダイと、前記貫通孔に挿入され、前記第1ダイに対して相対移動が可能な第2ダイと、前記貫通孔にそれぞれ挿入可能な第1パンチおよび第2パンチと、を備え、
前記第2ダイにはアンダーカット成型部が設けられ、
前記第1パンチの
前記貫通孔に対する挿脱方向の端面と、前記第2ダイの挿脱方向の端面とは互いに係合可能に形成され、
前記貫通孔の内側面、前記第2ダイ、前記第1パンチおよび前記第2パンチで囲まれたキャビティ内で、被成型物を圧縮成型することを特徴とする成型金型。
【請求項2】
前記第2ダイは、前記貫通孔の内側面に一部が接するように挿入されることを特徴とする請求項1記載の成型金型。
【請求項3】
前記キャビティ内に挿入可能なコアロッドを更に備えたことを特徴とする請求項1または2記載の成型金型。
【請求項4】
前記被成型物は粉体であることを特徴とする請求項1ないし3いずれか1項記載の成型金型。
【請求項5】
貫通孔を有する第1ダイと、前記貫通孔に挿入され、前記第1ダイに対して相対移動が可能な第2ダイと、前記貫通孔にそれぞれ挿入可能な第1パンチおよび第2パンチと、を備え、前記第2ダイにはアンダーカット成型部が設けられ、前記貫通孔の内側面、前記第2ダイ、前記第1パンチおよび前記第2パンチで囲まれたキャビティ内で、被成型物を圧縮成型する成型金型を用いた成型方法であって、
前記貫通孔の他方から挿脱方向に沿って前記第2パンチと前記第2ダイとを挿入した状態で、前記貫通孔内に前記被成型物を導入する導入工程と、
前記貫通孔の一方から前記第1パンチを挿入し、
前記第1パンチの挿脱方向の端面と前記第2ダイの挿脱方向の端面とを互いに係合させる挿入工程と、
前記第1パンチおよび前記第2パンチを互いに接近させて、前記キャビティ内で前記被成型物を圧縮成型し、成型体を成型する圧縮工程と、
前記成型金型から前記成型体を取り出す取出し工程と、
を少なくとも備えたことを特徴とする成型方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成型金型、およびこれを用いた成型方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、金属粉やセラミック粉など、被成型物として粉体原料を用いて金型成型を行い、得られた圧粉体(成型体)を高温で焼結することによって、高精度の部品などを製造する方法が知られている(例えば、特許文献1を参照)。一般に、粉末成型用の金型は、開口を備えた中空のダイと、このダイの開口からキャビティ内に挿入される上下パンチとから構成される。
【0003】
このような構成の粉末成型用の金型では、例えば、ダイの一方(下側)の開口からキャビティの一部に下パンチを嵌合させた状態で、キャビティ内に原料粉末が充填される。次に、ダイの他方(上側)の開口からキャビティ内に上パンチを挿入し、上パンチと下パンチとの間のキャビティ内の原料粉末を加圧することで、キャビティの形状を象った圧粉体を形成する。次に、ダイのいずれかの開口から一方のパンチを離間させた後、他方のパンチがキャビティ内で成型された圧粉体を押し出す。これにより、圧粉体をキャビティ内から取り出す(離型する)ことができる。
【0004】
ところで、圧粉体(成型体)として、上下パンチの移動方向に対して交差する方向に延びる凹凸などのアンダーカット形状を有するものを成型する場合、従来は、複数に分割可能なダイを備えた金型を用いることが一般的であった。また、簡易な形状に成型した成型体を、更に機械的にアンダーカット加工を行うことによって、アンダーカット形状を含む成型体を製造している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、複数に分割可能なダイを備えた金型は、得られた圧粉体がダイの分割部分で線状の突起が形成されやすい。従って、後工程で成型面の仕上げ加工などを必要とすることが多く、低コストで効率的に圧粉体を製造することが難しかった。また、ダイの分割時に圧粉体(成型体)が破損しやすく、効率的に圧粉体を製造することが難しかった。
【0007】
本発明は、上述した事情に鑑みなされたものであって、アンダーカット形状を含む成型体を、高精度に、かつ容易に成型することが可能な成型金型、およびこれを用いた成型方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち、本発明の成型金型は、以下の構成を有する。
貫通孔を有する第1ダイと、前記貫通孔に挿入され、前記第1ダイに対して相対移動が可能な第2ダイと、前記貫通孔にそれぞれ挿入可能な第1パンチおよび第2パンチと、を備え、前記第2ダイにはアンダーカット成型部が設けられ、前記第1パンチの前記貫通孔に対する挿脱方向の端面と、前記第2ダイの挿脱方向の端面とは互いに係合可能に形成され、前記貫通孔の内側面、前記第2ダイ、前記第1パンチおよび前記第2パンチで囲まれたキャビティ内で、被成型物を圧縮成型することを特徴とする。
【0009】
このような構成の成型金型によれば、アンダーカット成型部を備えた第2ダイを第1ダイの貫通孔に挿入して成型するだけで、アンダーカット形状を備えた成型体を容易に、かつ高精度に成型することができる。そして、こうした成型体を、第2ダイとともに第1ダイの貫通孔から取り出すだけで、成型体を第2ダイから容易に離型させることができ、アンダーカット部分を破損させることなく成型体を高精度に成型することが可能になる。
【0010】
前記第2ダイは、前記貫通孔の内側面に一部が接するように前記貫通孔に挿入されることを特徴とする。
【0011】
また、本発明は、前記キャビティ内に挿入可能なコアロッドを更に備えたことを特徴とする。
【0012】
また、本発明は、前記被成型物は粉体であることを特徴とする。
【0013】
本発明の成型方法は、以下の構成を有する。
即ち、貫通孔を有する第1ダイと、前記貫通孔に挿入され、前記第1ダイに対して相対移動が可能な第2ダイと、前記貫通孔にそれぞれ挿入可能な第1パンチおよび第2パンチと、を備え、前記第2ダイにはアンダーカット成型部が設けられ、前記貫通孔の内側面、前記第2ダイ、前記第1パンチおよび前記第2パンチで囲まれたキャビティ内で、被成型物を圧縮成型する成型金型を用いた成型方法であって、前記貫通孔の他方から挿脱方向に沿って前記第2パンチと前記第2ダイとを挿入した状態で、前記貫通孔内に前記被成型物を導入する導入工程と、前記貫通孔の一方から前記第1パンチを挿入し、前記第1パンチの挿脱方向の端面と前記第2ダイの挿脱方向の端面とを互いに係合させる挿入工程と、前記第1パンチおよび前記第2パンチを互いに接近させて、前記キャビティ内で前記被成型物を圧縮成型し、成型体を成型する圧縮工程と、前記成型金型から前記成型体を取り出す取出し工程と、を少なくとも備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明の成型金型、成型方法によれば、アンダーカット形状を含む成型体を、高精度に、かつ容易に成型することが可能な成型金型、およびこれを用いた成型方法を提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の実施形態に係る成型金型を示す断面図である。
【
図2】成型金型の第2ダイを上部から見た時の要部拡大断面図である。
【
図4】アンダーカット成型部の形状例を示す平面図である。
【
図5】本発明の第一実施形態に係る成型方法を段階的に示した断面図である。
【
図6】本発明の第一実施形態に係る成型方法を段階的に示した断面図である。
【
図7】本発明の第二実施形態に係る成型方法を段階的に示した断面図である。
【
図8】本発明の第二実施形態に係る成型方法を段階的に示した断面図である。
【
図9】本発明の他の実施形態に係る成型金型を示す上断面図である。
【
図10】本発明の他の実施形態に係る成型金型を示す上断面図、および成型体を示す外観斜視図である。
【
図11】本発明の他の実施形態に係る成型金型を示す上断面図、および成型体を示す外観斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を適用した一実施形態である成型金型、成型方法について図面を参照して説明する。なお、以下に示す実施形態は、発明の趣旨をより良く理解させるために具体的に説明するものであり、特に指定のない限り、本発明を限定するものではない。また、以下の説明で用いる図面は、本発明の特徴をわかりやすくするために、便宜上、要部となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率などが実際と同じであるとは限らない。
【0017】
図1は本発明の一実施形態に係る成型金型を示す断面図である。また、
図2は、成型金型の第2ダイを上部から見た時の要部拡大断面図である。
成型金型10は、例えば、被成型物の一例として粉体を用い、圧縮成型によって成型体の一例である圧粉体を形成する金型である。
成型金型10は、第1ダイ11、第1ダイ11に対して相対移動が可能な第2ダイ12、第1パンチ13、第2パンチ14、第3パンチ15、およびコアロッド16を備えている。
【0018】
第1ダイ11は、例えば、外形が略円筒形を成し、一方の開口11aおよび他方の開口11bの間を貫通する貫通孔22が形成されている。本実施形態においては、貫通孔22は、4つの内側面22a~22dで囲まれた直方体空間を成す。
【0019】
第2ダイ12は、例えば、板状を成し、挿脱方向Yに対して交差する方向に延びる凹凸31を備えたアンダーカット成型部32が形成されている。本実施形態においては、アンダーカット成型部32に形成される凹凸31は、水平方向に沿って突出する断面半円形の3本の突条からなる。なお、本実施形態における挿脱方向Yとは、第1パンチ13、第2パンチ14、第2ダイ12を第1ダイ11の貫通孔22に挿入および離脱される方向である。
このようなアンダーカット成型部32は、後述する成型方法において、圧粉体に対してアンダーカット形状を付与する。
【0020】
第2ダイ12は、成型時において、第1ダイ11の貫通孔22の内側面22aに外面12aが接するように、貫通孔22内に挿入される。
また、第2ダイ12は、後述する第1パンチ13の周面13bに接し、かつ、第1パンチ13に対して、挿脱方向Yに沿って摺動可能に形成されている。
【0021】
第1パンチ13は、成型時に、第1ダイ11の貫通孔22の一部に挿入され、被成型物の一例である粉体を挿脱方向Yに沿って圧縮する。第1パンチ13は、例えば外形が略直方体を成し、内部に貫通孔13aが形成される。この貫通孔13aには、後述するコアロッド16の一部が挿脱可能にされる。
【0022】
第2パンチ14は、第1ダイ11の貫通孔22を介して第1パンチ13に対面するように形成されている。第2パンチ14は、成型時おいては、第1ダイ11の貫通孔22に挿入され、挿脱方向Yに沿って、第1パンチ13との間で被成型物である粉体を挟み込むように圧縮する。第2パンチ14は、例えば外形が略直方体を成し、内部に貫通孔14aが形成される。この貫通孔14aには、後述するコアロッド16の一部が挿脱可能にされる。
【0023】
第3パンチ15は、第2ダイ12の端部に対面するように形成された略板状の部材である。第3パンチ15は、成型時においては、第1ダイ11の貫通孔22の内側面22aに外面15aが接するように、貫通孔22内に挿入される。
また、第3パンチ15は、第2パンチ14の周面14bに対して接し、かつ、第2パンチ14に対して、挿脱方向Yに沿って摺動可能に形成されている。
【0024】
これら第1ダイ11の貫通孔22の内側面22b,22c,22d,第2ダイ12のアンダーカット成型部32,第1パンチ13の端面および第2パンチ14の端面によって囲われた空間がキャビティPとされる。こうしたキャビティP内で、被成型物である粉体Wを圧縮成型した圧粉体が成型される。
【0025】
コアロッド16は、例えば、細長い略板状の部材であり、第2パンチ14の貫通孔14aから、第1パンチ13の貫通孔13aに向けて、キャビティP内を貫通するように挿脱可能に配される。こうしたコアロッド16は、キャビティP内で形成される圧粉体に対して、断面矩形の貫通孔を形成する。
【0026】
なお、こうした成型金型10は、成型時においては、加圧機構50によって、第1パンチ13が第2パンチ14に向けて移動し、キャビティPを挿脱方向Yに沿って狭めて、被成型物である粉体Wを圧縮する。加圧機構50は、第1パンチ13だけを独立して上下動させることが可能な第1押圧部50aと、第2ダイ12だけを独立して上下動させることが可能な第2押圧部50bとを有する。
【0027】
図3は、このような構成の成型金型10を用いて形成した圧粉体(成型体)の一例を示す外観斜視図である。圧粉体40は略直方体を成し、中心には、コアロッド16(
図1、
図2参照)によって成型された断面矩形の貫通孔41が設けられている。また、圧粉体40の一面には、アンダーカット成型部32の凹凸31(
図1、
図2参照)によって成型された、断面略半円形の3本の溝33,33…が設けられている。こうした溝33,33…は、圧粉体40の成型時の挿脱方向Yに対して交差する方向に延びる凹凸であるアンダーカット形状を成す。
【0028】
なお、圧粉体(成型体)40に形成されるアンダーカット形状は、本実施形態では一方向に沿って延びる複数の溝33,33…としたが、アンダーカット形状はこれに限定されるものでは無い。
【0029】
図4に、圧粉体(成型体)に形成されるアンダーカット形状の具体例をいくつか示す。例えば、
図4(a)の圧粉体(成型体)71では、直交する2方向の溝が複数形成された格子状のアンダーカット形状72が成型されている。また、
図4(b)の圧粉体(成型体)73では、半球形の凹みが複数配列形成されたアンダーカット形状74が成型されている。また、
図4(c)の圧粉体(成型体)75では、くの字状に屈曲して延びる複数の溝が配列形成されたアンダーカット形状76が成型されている。
【0030】
これらそれぞれの実施形態のアンダーカット形状72,74,76の反転形状を、成型金型10の第2ダイ12のアンダーカット成型部32に設けることによって、
図4(a)~(c)にそれぞれ示す圧粉体(成型体)71,73,75を得ることができる。
【0031】
以上説明した本発明の成型金型の実施形態では、被成型物として粉体原料を用い、成型体の一例である圧粉体を得る成型金型の例を提示したが、被成型物は粉体に限定されるものでは無い。例えば、被成型物として、粗く成型された固形物を用いて、この固形物を本発明の成型金型のキャビティ内に導入して、所定の形状に成型させる、いわゆるサイジングにも、全く同様に適用することができる。
また、被成型物は、粉体や粗く成型された固形物以外にも、塊状体、顆粒状体など、各種形態のものを用いることができる。
【0032】
(成型方法:第一実施形態)
以上のような構成の成型金型を用いた、本発明の成型方法を説明する。
図5、
図6は、本発明の第一実施形態の成型方法を段階的に示した断面図である。
本発明の第一実施形態の成型方法によって、例えば、
図3に示すような、アンダーカット形状を有する圧粉体40を成型する際には、まず、
図5(a)に示すように、第1ダイ11の他方の開口11bから貫通孔22内に向けて、コアロッド16を挿入した状態の第2パンチ14、および第3パンチ15を挿入する(挿入工程)。この時、第2ダイ12および第1パンチ13は、第1ダイ11の上方に退避した位置にある。
【0033】
次に、第1ダイ11の貫通孔22内に、被成型物である粉体Wを充填(導入)する(導入工程)。充填する粉体Wは、例えば、金属を主成分とする鉄粉や銅粉、それらの混合粉などが挙げられる。
【0034】
次に、
図5(b)に示すように、加圧機構50を動作させて、第1パンチ13および第2ダイ12を降下させ、第1ダイ11の一方の開口11aから貫通孔22内にこれら第1パンチ13および第2ダイ12を同時に挿入させる(挿入工程)。一方、第2ダイ12は、第3パンチ15を押し下げるように降下し、第2ダイ12のアンダーカット成型部32が充填された粉体Wに接する。これにより、貫通孔22に、貫通孔22の内側面22b,22c,22d,第2ダイ12のアンダーカット成型部32,コアロッド16の全周面、第1パンチ13の端面および第2パンチ14の端面によってキャビティPが形成される。
【0035】
このように、貫通孔22にキャビティPが形成された状態で、加圧機構50は更に第1パンチ13を押し下げて粉体Wを圧縮する(圧縮工程)。圧縮工程によって、キャビティP内で粉体Wが圧縮され、キャビティPの内部形状を象った圧粉体(成型体)40が成型される。また、コアロッド16を象った断面矩形の貫通孔41も同時に成型される。
【0036】
こうした粉体Wの圧縮時に、第2ダイ12のアンダーカット成型部32に圧縮された粉体が押し付けられ、挿脱方向Yに対して交差する方向に突出した凹凸31が転写される。そして、圧粉体(成型体)40に断面略半円形のアンダーカット形状を成す3本の溝33,33…が成型される。
【0037】
圧粉体(成型体)40の成型が完了したら、
図5(c)に示すように、第1パンチ13で圧粉体40を押さえつつ、第2パンチ14、および第3パンチ15を上昇させ、第1パンチ13、第2ダイ12、および圧粉体40を貫通孔22から引き出す(取出し工程)。この時、圧粉体40にアンダーカット形状の溝33,33…を形成したアンダーカット成型部32を持つ第2ダイ12は、第3パンチ15の押し上げによって、凹凸31が圧粉体40の溝33,33…に密着した状態で貫通孔22から押し出される(
図6(a)を参照)。また、コアロッド16は、第1ダイ11と同じ位置に固定される。
【0038】
そして、
図6(b)に示すように、圧粉体40が第1パンチ13および第2ダイ12に保持された状態のまま、加圧機構50が上部に移動する。
この後、加圧機構50のうち、第2ダイ12に接する第2押圧部50bだけを僅かに下降させることにより、第1パンチ13に対して第2ダイ12および圧粉体40を相対移動させて圧粉体40の上部を第1パンチ13の下端面から離型させる。(
図6(c)を参照)。
【0039】
この後、第2ダイ12に対して圧粉体40を挿脱方向Yに交差する方向に沿って相対移動させ、圧粉体40を第2ダイ12から取り外す。これにより、
図3に示すような、アンダーカット形状の溝33,33…が形成され、また、貫通孔41も同時に形成された圧粉体(成型体)40を得ることができる。
【0040】
以上のように、本発明の成型金型および成型方法によれば、アンダーカット成型部32を持つ第2ダイ12を第1ダイ11の貫通孔22に挿入して成型するだけで、圧粉体(成型体)40に対して、高精度なアンダーカット形状(本実施形態では溝33)を容易に成型することができる。
【0041】
そして、こうしたアンダーカット形状を持つ圧粉体(成型体)40を、第1パンチ13および第2ダイ12とともに第1ダイ11の貫通孔22から取り出すことによって、アンダーカット形状を破損させることなく圧粉体(成型体)40を離型させることができる。
【0042】
これにより、従来のように、分割可能なダイを備えた金型などを用いなくても、容易に、かつ高精度にアンダーカット形状を持つ圧粉体(成型体)40を成型することが可能になる。
【0043】
上述した実施形態の成型金型や成型方法では、第1ダイに対して相対移動が可能な、アンダーカット成型部を持つダイとして第2ダイだけを用いているが、更に、アンダーカット成型部を持つ複数のダイを第1ダイの貫通孔に挿入して、より複雑な形状のアンダーカット形状を持つ成型体を成型することもできる。
【0044】
(成型方法:第二実施形態)
本発明の第二実施形態の成型方法は、第一実施形態においては上側に配されていた第2ダイ12を下側に配した例である。
図7、
図8は、本発明の第二実施形態の成型方法を段階的に示した断面図である。
なお、
図5、6に示す第一実施形態の成型方法と同一の構成には同一の番号を付し、重複する説明を省略する。
本発明の第二実施形態の成型方法によって、例えば、
図3に示すような、アンダーカット形状を有する圧粉体40を成型する際には、まず、
図7(a)に示すように、第1ダイ11の他方の開口11bから貫通孔22内に向けて、コアロッド16を挿入した状態の第2パンチ94、および第2ダイ12を挿入する(挿入工程)。この時、第1パンチ93は、第1ダイ11の上方に退避した位置にある。
【0045】
次に、第1ダイ11の貫通孔22内に、被成型物である粉体Wを充填(導入)する(導入工程)。充填する粉体Wは、例えば、金属を主成分とする鉄粉や銅粉、それらの混合粉などが挙げられる。
【0046】
次に、
図7(b)に示すように、加圧機構50を動作させて、第1パンチ93を降下させ、第1ダイ11の一方の開口11aから貫通孔22内に第1パンチ93を挿入させる(挿入工程)。第2ダイ12のアンダーカット成型部32に充填された粉体Wが押し付けられる。これにより、貫通孔22に、貫通孔22の内側面22b,22c,22d,第2ダイ12のアンダーカット成型部32,コアロッド16の全周面、第2パンチ94の端面および第1パンチ93の端面によってキャビティPが形成される。
【0047】
このように、貫通孔22にキャビティPが形成された状態で、加圧機構50は更に第1パンチ93を押し下げて粉体Wを圧縮する(圧縮工程)。圧縮工程によって、キャビティP内で粉体Wが圧縮され、キャビティPの内部形状を象った圧粉体(成型体)40が成型される。また、コアロッド16を象った断面矩形の貫通孔41も同時に成型される。
【0048】
こうした粉体Wの圧縮時に、第2ダイ12のアンダーカット成型部32に圧縮された粉体が押し付けられ、挿脱方向Yに対して交差する方向に突出した凹凸31が転写される。そして、圧粉体(成型体)40に断面略半円形のアンダーカット形状を成す3本の溝33,33…が成型される。
【0049】
圧粉体(成型体)40の成型が完了したら、
図7(c)に示すように、第2パンチ94で圧粉体40を支持しつつ、第1パンチ93、および第2ダイ12を上昇させ、第2パンチ94、第2ダイ12のアンダーカット成型部32、および圧粉体40を貫通孔22から引き出す(取出し工程)。圧粉体40にアンダーカット形状の溝33,33…を形成したアンダーカット成型部32を持つ第2ダイ12は、凹凸31が圧粉体40の溝33,33…に密着した状態で貫通孔22から押し出される(
図8(a)を参照)。また、コアロッド16は、第1ダイ11と同じ位置に固定される。
【0050】
そして、
図8(b)に示すように、第1パンチ93が上部に退避する。
この後、圧粉体(成型体)40を横方向に動かして、圧粉体40を第2パンチ94の上端面、および第2ダイ12のアンダーカット成型部32から離型させる。(
図8(c)を参照)。
【0051】
以上のような、本発明の第二実施形態の成型方法によれば、アンダーカット成型部32を持つ第2ダイ12を第1ダイ11の貫通孔22に挿入して成型するだけで、圧粉体(成型体)40に対して、高精度なアンダーカット形状(本実施形態では溝33)を容易に成型することができる。
【0052】
そして、こうしたアンダーカット形状を持つ圧粉体(成型体)40を、第1パンチ93および第2ダイ12とともに第1ダイ11の貫通孔22から取り出すことによって、アンダーカット形状を破損させることなく圧粉体(成型体)40を離型させることができる。これにより、従来のように、分割可能なダイを備えた金型などを用いなくても、容易に、かつ高精度にアンダーカット形状を持つ圧粉体(成型体)40を成型することが可能になる。
【0053】
図9は、本発明の成型金型の別な実施形態を示す上断面図である。なお、
図1に示す実施形態と同一の構成には同一の番号を付し、重複する説明を省略する。
図9に示す別な実施形態の成型金型60では、第1ダイ11の貫通孔22に挿入可能な第2ダイ12および第3ダイ62を備えている。第2ダイ12および第3ダイ62には、それぞれアンダーカット成型部32、63が形成されている。これによって、貫通孔22に、第1ダイ11の内側面、第2ダイ12、第3ダイ62、第1パンチの端面および第2パンチの端面で囲まれたキャビティPが形成される。
このような構成の成型金型60によれば、直方体状の成型体65の2つの側面に対してアンダーカット形状を形成することができる。
【0054】
図10(a)は、本発明の成型金型の別な実施形態を示す上断面図である。また、
図10(b)は、本実施形態の成型金型によって得られる成型体の一例を示す外観斜視図である。なお、
図1に示す実施形態と同一の構成には同一の番号を付し、重複する説明を省略する。
図10に示す別な実施形態の成型金型70では、第1ダイ11に略円筒形の貫通孔71が形成され、この貫通孔71に挿入可能な第2ダイ72を備えている。第2ダイ72は、第1ダイ11に形成された貫通孔71の内側面71aに接する180°半円形に湾曲した板状部材である。第2ダイ72の内周面72aには、断面が半円形を成し、内周面72aの一方向に沿って延びるアンダーカット成型部73が形成されている。
【0055】
これによって、貫通孔71内に、第1ダイ11の内側面71a、アンダーカット成型部73が形成された第2ダイ72の内周面72a、第1パンチの端面および第2パンチの端面によって囲まれたキャビティPが形成される。また、このキャビティPの中心付近には、断面円形のコアロッド16が貫通している。
【0056】
このような構成の成型金型70を用いて、成型体75を成型後、成型体75とともに第2ダイ72を挿脱方向Yに沿って第1ダイ11から抜き出し、更に第2ダイ72を水平方向Lに沿って移動させれば、第2ダイ72から成型体75が離型される。そして、
図10(b)に示すように、円筒形の成型体75の周面75aのうち、半周分の範囲だけに断面半円形の溝からなるアンダーカット形状76を備え、また中心部分に貫通穴77が形成された成型体75を成型することができる。
【0057】
図11(a)は、本発明の成型金型の別な実施形態を示す上断面図である。また、
図11(b)は、本実施形態の成型金型によって得られる成型体の一例を示す外観斜視図である。なお、
図1に示す実施形態と同一の構成には同一の番号を付し、重複する説明を省略する。
図11に示す別な実施形態の成型金型80では、第1ダイ11に略直方体状の貫通孔81が形成され、この貫通孔81に挿入可能な第2ダイ82を備えている。第2ダイ82は、第1ダイ11に形成された貫通孔81を成す4面の内側面81a~81dのうちの3面の内側面81a~81cに接するコ字状に形成された板状部材である。この第2ダイ82には、断面が略台形を成し、内側面82a~82cの一方向に沿って延びるアンダーカット成型部83が形成されている。
【0058】
これによって、貫通孔81に、第1ダイ11の内側面81d、アンダーカット成型部83が形成された第2ダイ82の内側面82a~82c、第1パンチの端面および第2パンチの端面によってキャビティPが形成される。また、このキャビティPの中心付近には、断面円形のコアロッド16が貫通している。
【0059】
このような構成の成型金型80を用いて、成型体85を成型後、成型体85とともに第2ダイ82を挿脱方向Yに沿って第1ダイ11から抜き出し、更に第2ダイ82を水平方向Lに沿って移動させれば、第2ダイ82から成型体85が離型される。そして、
図11(b)に示すように、直方体の成型体85の4つの側面85a~85dのうち、3つの側面85a~85cに断面略台形の溝からなるアンダーカット形状86を備え、また中心部分に貫通穴87が形成された成型体85を成型することができる。
【0060】
以上説明した本発明の成型方法の実施形態では、被成型物として粉体原料を用い、成型体の一例である圧粉体を得る例を提示したが、被成型物は粉体に限定されるものでは無い。例えば、被成型物として、粗く成型された固形物を用いて、この固形物を本発明の成型金型のキャビティに導入して、所定の形状に成型させる、いわゆるサイジングにも、全く同様に適用することができる。
また、被成型物は、粉体や粗く成型された固形物以外にも、塊状体、顆粒状体など、各種形態のものを用いることができる。
【0061】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0062】
10,70,80 成型金型
11 第1ダイ
12,72,82 第2ダイ
13,93 第1パンチ
14,94 第2パンチ
15 第3パンチ
16 コアロッド
22,71,81 貫通孔
22a~22d,71a,81a~81d 内側面
32,63,76,86 アンダーカット成型部
40,65,75,85 圧粉体(成型体)
62 第3ダイ
P キャビティ