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  • 特許-発泡を認識する装置および方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-02
(45)【発行日】2022-02-10
(54)【発明の名称】発泡を認識する装置および方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/17 20060101AFI20220203BHJP
   G01N 29/02 20060101ALI20220203BHJP
【FI】
G01N21/17 A
G01N29/02
【請求項の数】 12
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020172475
(22)【出願日】2020-10-13
(62)【分割の表示】P 2016530156の分割
【原出願日】2014-11-11
(65)【公開番号】P2021036236
(43)【公開日】2021-03-04
【審査請求日】2020-11-11
(31)【優先権主張番号】13192614.9
(32)【優先日】2013-11-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】508322864
【氏名又は名称】ビューヒ・ラボアテヒニーク・アクチェンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】BUECHI LABORTECHNIK AG
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ブルキ,マルティン
【審査官】横尾 雅一
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2008/0143828(US,A1)
【文献】独国特許出願公開第19617106(DE,A1)
【文献】実開平05-007301(JP,U)
【文献】特開2004-004023(JP,A)
【文献】特開平09-033662(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/00 - G01N 21/61
G01N 29/00 - G01N 29/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロセス容器と、前記プロセス容器からの蒸気を受入可能な蒸気導管(32)と、前記プロセス容器中の発泡を検出するための装置(1)とを備える蒸発システム(10)であって、前記装置は、信号を発生させるための発生源と、前記発生源から放出され、泡沫に反射された信号を検出するための検出器(3)と、前記検出器(3)により検出された信号を評価するための評価ユニットとを含み、前記発生源および前記検出器は、閉鎖されたユニット内に配置されており、前記閉鎖されたユニット内に、前記評価ユニットを配置可能であり、前記装置(1)は、前記閉鎖されたユニットが前記プロセス容器内に配置されるように、前記蒸気導管を通って前記プロセス容器内に到達する、蒸発システム(10)。
【請求項2】
前記蒸発システム(10)は、回転蒸発装置である、請求項1に記載の蒸発システム(10)。
【請求項3】
前記信号は、人間の目および/または人間の聴覚にとって知覚可能ではない、請求項1または2に記載の蒸発システム(10)。
【請求項4】
前記閉鎖されたユニットはロッド形状である、請求項1~3のいずれか1項に記載の蒸発システム(10)。
【請求項5】
前記ロッド形状の閉鎖されたユニットは、透明なガラスロッド(6)またはプラスチックロッドである、請求項4に記載の蒸発システム(10)。
【請求項6】
望ましくない散乱信号を遮蔽するために、受信制限器(17)が、前記検出器(3)の前に配置されている、請求項1~5のいずれか1項に記載の蒸発システム(10)。
【請求項7】
前記蒸発システム(10)は、前記プロセス容器内の泡沫を低減するための手段を備える、請求項1または6のいずれか1項に記載の蒸発システム(10)。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載の蒸発システム(10)によりプロセス容器中の発泡を検出するための方法であって、
前記プロセス容器内に配置されている前記閉鎖されたユニットの前記検出器(3)を用いて、泡沫によって反射された信号を検出する工程と、
発泡の進展を認識するために、前記検出された信号を、前記閉鎖されたユニットの前記評価ユニットを用いて所定の基準応じて評価する工程とを含む方法。
【請求項9】
さらに、前記プロセス容器中に配置されている前記閉鎖されたユニットの前記発生源(4)から、信号を送信する工程を含む請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記発生源(4)は、赤外領域または音波のうちの少なくとも1つにおいて信号を放射する、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
泡沫が存在する際に、泡沫を低減する工程を含む、請求項8~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
さらに、
前記プロセス容器中の圧力を上昇させる工程、および/または
プロセス温度を低減させる工程、および/または
前記プロセス容器の移動パラメータを変更する工程を含む、請求項11に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、独立請求項の前提部に記載の発泡を認識する装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に流通している蒸発システムの作動時には、蒸発するべき媒体は、プロセス容器の加熱により、固体相および/または液体相から気相へと移行する。多くの場合、蒸発するべき媒体は、気泡を積み上げる、ないし泡沫が媒体の表面上に発生する。これは、大概、蒸発するべき媒体に、および、適用される方法パラメータに依存する。発泡を認識する装置は、液体、液体混合物、物質および物質混合物の気化、蒸発および蒸留時に採用される。この際、発生する発泡を認識し、場合によってはこれを防ぎ、または、泡沫の噴出を防ぐことが必要である。泡沫が蒸気導管または蒸留物の収集容器に入ることは回避されるべきである。とりわけ回転蒸発装置の作動時には、発泡を回避するべきであるが、この理由は、発泡噴出により、および泡沫が収集容器中に入ることにより、蒸留液が汚染されてしまい、ないし残滓の物質が失われてしまうからである。
【0003】
発泡をただ回避する装置および方法、ならびに、これに次に続く方策でもって発泡を低減させるために発泡を認識する装置および方法は公知である。発泡を回避する方法および装置は、例えば、蒸発するべき媒体を蒸気ピストン中に所定の間隔で添加する方策を利用し、これにより発泡が回避される。これは、US2003/0111185A1号に示されている。発泡を認識する光学泡沫センサは、DE10 2010 007 559 A1号に記載されている。この際、光源とセンサとからなる光学系が窓中に配置されていて、この窓が生物反応器の容器中の壁内に入れられている。反射された制御信号を用いて泡沫の発生を認識した場合には、発泡に対抗する消泡剤を添加する。
【0004】
しかし、発泡の光学的認識に基づく上述の装置は、とりわけ特別な容器壁を備えた特別な容器を使用する。この際、1つまたは複数の窓および/または開口を、容器の壁中に入れ、その壁中に光学系の部材が入れられ、これにより、光学的な認識を行うことができるようにする。動作中に、窓および/または開口に沈殿物および汚れが生じることがありえ、これが、発泡の認識にとって悪影響を与える。これに加えて、回転する容器を備えたシステムの使用は除外されている。
【0005】
US5,453,832A号は、固体粒子および気泡を含有する液体サンプルの濁りを測定する装置について記載している。この装置は、濁りを導き出すべき液体の流路中に、配置されている。
【0006】
US2011/273710 A1号は、濁りセンサ用のヘッドユニットおよび濁りセンサについて記載している。
【0007】
EP 2 570 784 A2号は、容器の充填高さ検出器、および、容器中の泡沫検出方法について記載している。この充填高さ検出器は、容器の壁部を通って容器の内側中に設けられている。
【0008】
US6,435,710 B1号は、泡沫との接触時に測定表面の温度差を導き出す泡沫認識装置を記載している。
【0009】
DE100 54 924 A1号は、泡沫形成時に、泡沫を形成する物質中のセル開口を検出する方法を示している。
【0010】
DE101 14 434 A1号は、回転容器中で泡沫形成を検出するために、外側に配置された2つの泡沫センサを備えた装置を記載している。
【0011】
上述の装置は、液体の濁りを測定し、濁りセンサが液体中に位置付けられているので、または、装置が容器の壁中に入れられていて、もしくは、容器の外側に位置付けられていて、もしくは、測定のための熱交換に基づいているので欠点がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
したがって、本発明の課題は、従来技術の欠点を克服することである。とりわけ、本発明の課題は、プロセス容器中で発泡を認識する装置および方法を提供することであって、製造コストを下げ、システムとりわけ蒸発システムを後の時点でコスト効率良く改造可能であり、効率を改善し利用者が容易に適用することができる装置および方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この課題は、独立請求項中で定義された特徴により達成される。
本発明は、プロセス容器中の発泡を認識する装置であって、電磁信号および/または音響信号を検出する検出器を備えた装置に関する。本発明は、この装置がプロセス容器中に配置可能であることを特徴とする。このようにして、発泡を認識する装置をプロセス容器中に配置して、この中で作動させることができるので、コスト効率良いシステムの拡張が確保される。したがって、泡沫認識に合わせた特別なプロセス容器、例えば、窓および/または開口を容器壁に設けたプロセス容器は必要ではない。さらに、この検出器を用いて、プロセス容器内で、すなわち発生場所の近くで、発泡を認識可能である。容器壁の汚れは、したがって悪影響を及ぼさない。
【0014】
この装置は、さらに加えて、検出器により検出された信号を評価する評価ユニットを備えている。したがって、この装置は、この評価された信号を、制御ないしさらに処理するために利用可能である。この分野で一般的である評価ユニットは、増幅器と相関器とを含む。増幅器を用いて、信号は振幅値にまで上昇し、その結果、そのさらなる処理は容易に実現可能である。相関器は、信号のノイズ成分をフィルタリングして取り除く。あるいは、高域フィルタ、低域フィルタまたは帯域通過フィルタを、使用される信号のタイプに応じて使用することができる。最も単純な実施形態では、この信号は、比較器を用いてデジタル化され、その結果、泡沫の存在/非存在のみを示す。当然複雑な評価ユニットも考えられる。好ましくは、この評価ユニットは、唯一の導体基板上に、とりわけ検出器と同じ導体基板上に配置されている。
【0015】
評価ユニットは、検出された信号を装置中でその場で処理し、それに応じて評価された信号を転送する。評価された信号は、アナログでまたはデジタル化して転送することができる。検出された信号自体は、感度が高いか、またはノイズを受けやすい。この欠点は、評価ユニットが集積されることにより回避されるが、この理由は、信号が転送される前に評価が行われるからである。さらに、閉鎖されたユニット中に配置することにより、すでに評価され場合によってはデジタル化された信号を転送するための容易なインタフェースが利用可能となる。これにより、装置の取り扱いが、これ以外の公知のセンサ、例えば温度センサまたは圧力センサと類似または同様となる。
【0016】
評価された信号のデータ伝送のために、離散信号伝送またはこれ以外の形態のデータ伝送を行うこともできる。これに応じて、この装置は、評価された信号を伝送するためのデータインタフェースを有することができる。
【0017】
この装置は、さらに加えて電磁信号および/または音響信号を発生させるための発生源を有することができる。これにより、予め定義された電磁信号および/または音響信号を発生させることができ、これが、プロセス容器内で検出器により直接および/または間接的に検出される。したがって、この装置は、外部の、または追加的な発生源に依存しない。したがって、泡沫認識の信頼性が改良される。
【0018】
発生源から発生した信号、とりわけパルス信号は、人間の目および/または人間の聴覚にとって知覚可能ではない信号でありえる。この信号は、赤外光の使用に基づきうる。この際、発生源は、例えば850nmの領域での伝送窓を有する。この検出器は、とりわけ730~1010nmの伝送窓を有する受信領域を含む。当然この信号は、電磁波としてとりわけラジオ周波数(無線波)領域内の様々な周波数帯域または高周波域、とりわけ0.1~100GHzの範囲内で送信されうる。当然この信号は、超音波としても送信されうる。パルス信号を使用することにより、信号対雑音比(signal-to-noise-ratio)を改良できる。
【0019】
検出器の前に相応のフィルタを置いて狭帯域信号を使用することにより、信号対雑音比(signal-to-noise)を改良可能である。
【0020】
さらに、信号を発生源の側で変調して、検出器の側で相応に復調することも可能であり、これも、信号対雑音比(signal-to-noise-ratio)の改良に繋がる。
【0021】
最後に、疑似無作為信号(スペクトラム拡散)を用いることができる。検出器の後方で相関器を組み合わせることにより、これも信号対雑音比を改良し、外部信号に対する雑音排除性を改良することができる。
【0022】
検出器の前方に設置されたまたは下流で接続された応用特有のフィルタまたは前置フィルタは、泡沫の特徴的で無作為的な反射挙動に対して最適化されていることができる。この場合、最も簡単な実施形態は、高域フィルタの使用である。
【0023】
発生源は、狭帯域の光を発する発光ダイオード(LED、light-emitting-diode)、赤外線送信器、レーザダイオード、圧電スピーカ、圧電水晶発振器または圧電セラミック発振器でありえる。これに応じて、検出器は、例えばフォトダイオード、フォトトランジスタ、フォトレジスタ(LDR、光依存性抵抗(light dependent resistor))、赤外線受信器または圧電センサ(指向性マイク)として構成されうる。この検出器は、容量性の検出器との組み合わせとして構成可能で、例えば赤外線検出器と容量性の検出器との組み合わせとして構成可能である。
【0024】
当然、プロセス容器中の動きを認識するために、1次元および/または2次元(1Dおよび2D)センサ、例えばCCD(電荷結合素子)画像センサを備えることができる。この際、好ましくは、画像センサは、動き、とりわけ発泡の認識を検出するために、十分な焦点深度を有する。
【0025】
この装置は、中に発生源と検出器とが配置されているユニットを有しうる。この際、このユニットは、個別のアセンブリとして構成可能であり、組み合わせられたセンサを用いることができる。このユニット内では、発生源と検出器とが互いに隣接して、または、間隔を空けて配置可能である。したがって、発生源と検出器とが隣接して位置付けられている場合には、泡沫から反射される信号を検出可能である。発生源と検出器とが距離を空けて互いに配置されている場合には、好ましくは1~5cmの範囲で距離を空けている場合
には、主に泡沫を透過した信号が検出される。後者の場合は、装置の発生源または検出器を含む領域が、プロセス容器のあるゾーンで、泡沫が存在するまたは泡沫が発生するゾーンに、位置付けられていることを前提とする。
【0026】
この装置のユニットはロッド形状で構成されていることができ、とりわけカプセル化されて、信号が透過するロッド中とりわけガラスロッドまたはプラスチックロッド中に配置されている。このようにして、このユニットは、プロセス容器内部に、とりわけ縦長に構成されたプロセス容器内部に、最適に位置付け可能であり、および/または、さらに続く構成部品、とりわけ蒸発システム、例えば蒸気導管などを貫通することができる。ロッド中にカプセル化されたユニットは、簡単に洗浄可能であるので有利である。例えば、このユニットは、信号が透過する管中に、好適にはガラス管またはプラスチック管中に押し込まれている。さらに、還流する凝縮物がカプセル化されたユニットを洗浄する。この際、同様に有利であるのは、カプセル化により、プロセス容器中の媒体が、管のガラスまたはプラスチックのみに接触しうるという点である。
【0027】
検出器が、泡沫から反射された信号および/または泡沫を透過した信号を検出するように、発生源と検出器とは、互いに対して相対的に配置可能である。このようにして、泡沫と相互作用した後に反射されまたは透過した信号は、検出器により検出されうる。受信信号に基づいて発泡が認識される。上述の泡沫は、ある物質もしくは物質混合物からなる媒体、および/または、ある液体もしくはある液体混合物からなる媒体、とりわけ一般的な溶剤を含む溶剤または溶剤混合物に由来する。
【0028】
通常蒸発システム中で利用される溶剤の一例は、アセトン、ベンゼン、クロロベンゼン、1,2-ジクロロエタン、ジクロロメタン、ジエチルエーテル、ジオキサン、酢酸、エタノール、酢酸エチル、へプタン、ヘキサン、メタノール、ペンタン、n-プロピルアルコール、テトラクロロエチレン、トルオール、トリクロロエチレン、トリクロロメタン、水およびキシロールである。当業者にはさらなる一般的な溶剤も公知である。
【0029】
検出器の前方には、絞り、鏡筒、光学系および/または望ましくない散乱信号を遮蔽し取り除くフィルタが配置可能である。同様に、これらに追加してまたはこれらに代えてグリッドおよび/またはマスクを使用することも可能である。この種の配置は、発生源の前方についても考えることができる。このようにして、受信信号および/または送信信号は、必然的にフィルタリングされうる。とりわけ、散乱光の検出および望ましくない反射が低減される。この結果、信号対雑音比が改良される。さらに、反射系では、発生源から検出器への直接的な透過的なクロストークを防ぐことができる。
【0030】
好適には、発生源は、赤外LED(発光ダイオード)として、放射角度が30°(±15°)でありえる。これに応じて、検出器は、絞りと赤外フィルタとを備えたフォトトランジスタである。
【0031】
この装置は、さらに加えてプロセス容器中および/または蒸発システム中の温度を検出する温度センサを有しうる。検出された温度は、蒸発システムの作動をオープンループ制御またはクローズドループ制御するために考慮されうるが、これは、プロセス特有のパラメータを予め定義された値に設定することにより行われる。蒸発システムのプロセス特有のパラメータには、加熱装置の温度、プロセス容器の回転速度および/またはシステム中にかけられる圧力が含まれる。このようにして、蒸発システムは、媒体を蒸発させるための最適な作動条件に設定可能である。別個の温度センサを追加することは必要ではない。
【0032】
さらに、発生源と検出器とは、測距システムとして構成可能である。この種のシステムは、例えば飛行時間型レーザ測距センサとして公知である。この場合、泡沫が存在しない
場合、第1の障害物(これは、容器壁である)までの距離が計測されうる。泡沫が生じる際には、この計測距離はより短くなり、これにしたがって泡沫が検出される。測距を処理するために、距離制限が導入可能であり、この制限は、例えば容器壁までの距離以下である。帯域と付値関数とを用いた従来のシステムにおける処理も同様に可能である。計測信号は、誤った結果を導きうる不純物からの反射を防ぐために、妥当性と関連付けて試験される。これは、とりわけ比較器を用いて達成可能である。これは、それぞれ最小の距離に対して、および、最大の距離に対して行われる。泡沫認識は、その後、とりわけ距離信号が最小距離と最大距離との間にある場合にのみ行われる。比較器の前には、ノイズを回避するために、低域フィルタが設置されうる。
【0033】
この種の測距システムは、例えば、オイルタンク中などの産業用応用における充填レベル表示を行うために使用される大きなセンサ(10×5×5cm)において公知である。しかし、これは、通常ガラス壁の後ろに位置付けられ、従来、実験装置とりわけ蒸発システムには応用不可能であった。
【0034】
本発明は、さらに装置の使用にも関し、この装置はプロセス容器中に配置されている。この装置は上述の通りである。この装置をプロセス容器内に使用することにより、泡沫および/または発泡をプロセス容器中で直接認識することができ、早期に反応可能である。したがって、ノイズの影響が低減される。
【0035】
本発明のさらなる態様は、プロセス容器と、電磁信号および/または音響信号を検出する検出器を備えた発泡を認識する装置とを有する、蒸発システムとりわけ回転蒸発装置に関する。この際、この発泡を認識する装置は、プロセス容器中に配置可能でありまたは配置されている。さらに加えて、この装置は、検出器により検出された信号を評価するための評価ユニットを備えている。このようにして、発泡は、蒸発システムの動作中に、とりわけ物質または物質混合物が蒸発システム中で蒸発および/または気化する際に認識される。この装置は、上述のように構成可能で、これにしたがって上述の利点も有する。
【0036】
この際、さらに加えて、温度センサが、蒸発システム中とりわけプロセス容器中に配置可能である。プロセス容器の検出された温度は、蒸発システムにかけられるプロセスパラメータの制御、とりわけ加熱装置の温度、プロセス容器の回転速度および/または加圧の制御のために考慮可能である。
【0037】
この装置は、静的にまたは蒸気ピストンを用いて回転するように装着可能である。好適な設置の場合、この装置は、蒸発システムとりわけ回転蒸発装置の静的な部材に装着可能であり、蒸気導管を通ってプロセス容器中にまで達することができる。このようにして、蒸発システムとりわけ回転蒸発装置は、本発明による装置を用いて拡張可能である。
【0038】
蒸発システムは、プロセス容器中の泡沫を低減する手段を有しうる。上述の手段は、プロセス容器中の圧力を上昇させる装置、プロセス温度とりわけ加熱装置の温度を下降させる装置、プロセス容器の回転速度を変える装置および/または消泡剤を添加する装置を含む。上述の手段ないし方策により、認識された泡沫を低減させることができる。
【0039】
本発明のさらなる態様は、とりわけ蒸発システムのプロセス容器中の発泡を認識する方法であって、これは、発泡認識をするための装置または蒸発システムを備える。この装置または蒸発システムは、上述のように構成可能である。この際、この方法は、
i)プロセス容器中に配置されている装置の検出器を用いて、電磁信号および/または音響信号を検出する工程と、
ii)発泡を認識するために、検出された信号を、装置の評価ユニットを用いて所定の基準に応じて評価する工程とを
含む。この装置をプロセス容器中に配置することにより、泡沫および/または発泡を、プロセス容器中で直接認識でき、早い時点で反応することができる。ノイズの影響は低減される。この基準には、例えば信号および/もしくは信号強度とりわけ送信パルスの変化、ならびに/または、ノイズの規則的な減衰を含む。
【0040】
この方法は、プロセス容器中に配置されている発生源から、電磁信号および/または音響信号を送信する工程を含む。このようにして、送信される信号は、泡沫および/または発生した泡沫により変えられ、装置の検出器により検出されうる。泡沫の検出は、これにより、外部の発生源に依存せず、したがってノイズ影響はより少ない。
【0041】
この際、この発生源は、赤外領域の信号とりわけパルス信号で、とりわけ700~1400nmの波長領域とりわけ850nmの領域で、および/または、音波とりわけ20kHz~1GHzの周波数領域の超音波を放射可能である。この検出器は、送信信号領域を含む受信領域を有し、例えば730~1010nmの範囲である。パルス信号の使用により、信号対雑音比(signal-to-noise-ratio)は改良される。当然、この信号は、電磁波としてとりわけラジオ周波数(無線波)中の様々な周波数帯域または高周波領域、とりわけ0.1~100GHzの範囲内で送信されうる。検出器はこれに対して合わせられうる。発生源は、狭帯域の光を送信する発光ダイオード(LED、light-emitting-diode)、赤外線送信器、レーザダイオード、圧電スピーカまたは圧電水晶発振器または圧電セラミック発振器でありえ、検出器はフォトダイオード、フォトトランジスタ、フォトレジスタ(LDR、光依存性抵抗(light dependent resistor))、赤外線受信器または圧電センサでありえる。
【0042】
検出器は、発生源から送信されかつプロセス容器中の泡沫で反射および/または透過することにより変えられた信号を検出可能である。このようにして、この信号は、媒体(とりわけ発生した泡沫)での反射後に、検出器を用いて検出されうる。
【0043】
この方法は、さらに、泡沫の存在時に泡沫を低減させる工程を含むが、これは、例えばプロセス容器中の圧力を上昇させる工程ならびに/またはプロセス温度を下降させる工程、とりわけプロセス容器中の温度および/もしくは冷却装置中の温度を下降させる工程、ならびに/またはプロセス容器の移動パラメータを変更する工程、ならびに/または消泡手段の導入も含む。
【0044】
泡沫認識の計測原理のある一例は、以下の通り実施される。パルスタイマーが、IR-LEDをオンにする。所定の調整時間後にAD変換器がトリガされ、受信器からの信号を計測する。その後、送信器がオフされる。実施形態に応じて、送信器用の増幅器および/または受信器用の増幅器が必須となる。AD変換器後の離散時間信号がさらに処理される。低域フィルタTP1を用いて、第1の計測信号の「DC値」が求められる。フィルタリングされた第2の有効計測信号のために、第1の計測信号から「DC値」を引き、2乗し、第2の低域フィルタTP2へ転送される。2乗することにより、正の値のみが生成され、例えばRMS検出器のように、より大きい信号をより強く重み付けする。低域フィルタTP2は高周波ノイズ成分を、フィルタリングして取り除き、低域フィルタTP1よりも高い制限周波数を有する。低域フィルタTP1は、非常に低い周波数成分をフィルタリングする。同時に動的閾値を導き出し、これは、センサの老化および不純物などを補償しうる。そのために、この計測信号をさらなる低域フィルタTP3でフィルタリングし、非線形の特性曲線で評価する。低域フィルタTP3は、フィルタTP1およびTP2よりも実質的により遅く設定され、したがって、時折泡沫が存在することにより影響を受けない。あるいは、非常に濃密な泡沫の場合、泡沫が存在しないある時点で(例えば、蒸留開始前)に、固定した閾値が導き出され、これが、全蒸留過程に渡って一定に保たれる。2つの方法を組み合わせることも可能である。フィルタリングされた有効な計測信号から、閾値
が導き出される。減算の結果が>0の場合、泡沫が存在する。
【0045】
相関器を使った泡沫認識のある例示的な計測原理を以下で説明する。相関器を用いると、ノイズ光ないし散乱光に対する感度がさらに低減されうる。このために、送信信号は、パルスがオンされている間に、変調器で変調信号の形態に変調される。これは、単純な倍率器でありえる。この際、変調信号は、ノイズ光ないし散乱光を可能な限り持たない周波数領域中にある。あるいは、広い周波数成分を有する変調信号、例えば疑似無作為信号が用いられうる。変調された信号は、送信され、再度受信され、AD変換器で走査される。AD変換器のサンプル周波数は、この際、変調信号中の最大の周波数成分の少なくとも2倍である。このようにして走査された信号は、相互相関器に供給され、この相互相関器がこの信号を変調信号のコピーと比較する。パルス長に応じて、相互相関器は、1つまたは複数のピークを有し、これらのピークが、最大値検出器または知的検出器に供給される。その際、パルス長は、最も低い変調信号中の周波数成分の周期長の少なくとも2倍の長さである。この検出器の結果は、反射される光信号に比例し、ノイズ光の影響は最低限となる。相互相関器と検出器とは、各パルス後に再び初期化される。
【0046】
本発明を、以下に、例示的なある実施形態の図面に基づいてより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0047】
図1】本発明による装置の概略図である。
図2図1の装置を用いた泡沫認識を示す図である。
図3a】軸に沿った断面図で示した本装置を備えた回転蒸発装置の斜視図である。
図3b】この装置を備えた箇所を示す拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0048】
図1は、LEDの形態の発生源4と、フォトダイオードの形態の検出器3と、増幅器13と、相関器14と、比較器15とを備えた本発明による装置1の概略図である。あるいは、増幅器13、相関器14および比較器15の部材は、内部回路中に集積され、および/または、それらの機能は、ソフトウェアを用いて実施される。装置1は、ガラスロッド6中にカプセル化されて配置されていて、プロセス容器に配置可能または配置されている。発生源4の前には、絞り18が設置されていて、これにより、定義通りに集束させた信号20、とりわけ光線の送信が可能となる。あるいは、発生源4の前には、さらに加えてフィルタおよび/またはレンズ系および/またはミラー系を設置することが可能である。検出器3の前には、受信制限器17が設置されている。あるいは、検出器3の前には、さらに加えて絞りおよび/またはフィルタおよび/またはレンズ系および/またはミラー系が設置されうる。受信制限器17は、散乱光線の検出を低減し、場合によっては入力信号を集束させるように入射信号を制限する。
【0049】
発生源4から送信された信号20は、プロセス容器の壁16で反射され、選択された幾何学的な制限が故に、検出器3中に達しない。むしろこの信号は、検出器3とは逆側の遠い領域に導かれる。発生源4から送信された信号20が、検出器中に入射する信号路21との交差領域中で、媒体7とりわけ泡沫に当たった際には(図2参照)、この信号は、媒体7で反射され、検出器3により検出される。検出器3により検出された信号は、増幅器13中に導かれ、増幅される。増幅された信号は、直接比較器に供給されうる、または、図示したように、予め相関器14を用いてまたは高域フィルタを用いてフィルタリングされる。相関器14および/または比較器15は、動的閾値を有し、これは、例えばガラスロッドの汚れを補償する。さらなる信号処理は、同様にガラスロッド中に統合されたまたは外部に配置可能である電子系を用いて行われうる。導き出された泡沫認識に基づいて、発泡に対抗する工程を、自動的におよび/または手動で行うことができる。これらの工程は、例えばプロセス容器中で圧力を上げること、プロセス温度とりわけ加熱装置の温度を
下げること、プロセス容器の回転速度の変更および/または消泡剤の導入を含む。
【0050】
図2は、図1に示した装置1を用いた泡沫認識を示すが、この図では、発生源4と検出器3とのみを示す。発生源4は信号20を送信し、この信号が、絞り18を通って、有向ビームに形成される。この有向ビームは、とりわけ好ましくは850nmの波長を有するパルス赤外光の形態で送信されうる。送信された信号20は、検出器中に入射する信号路21との交差領域中で、媒体7とりわけ泡沫に当たる。信号20は、媒体7とりわけ泡沫において反射され、検出器3中に達するように方向転換される。この際、検出器3中に入射する信号は、前方に設置された受信制限器17により制限される。この検出器3は、730~1010nmの受信領域を有する。ここで検出された信号に基づき、発泡が認識されうる。さらに、周囲光やそれ以外のノイズの影響を減じるために、1つまたは複数の差計測を行い得る。この基準値を考慮して、発泡時に時間と共に変わる信号特性を評価するために考慮に入れることが可能である。発泡の監視は、蒸発プロセス時の1つもしくは複数の時点で、または、継続的に行いうる。
【0051】
図3aは、蒸発容器31と、蒸気導管32と、液体冷却部33と、はめ込み部35と、本発明による装置1とを備えた回転蒸発装置30を示す図である。本発明による装置は、ロッドとりわけ透明なロッド中にカプセル化されて構成されている。この装置1は、液体冷却部33の一方の側で、はめ込み部35(図3b参照)を用いて回転蒸発装置30に静的に装着されている。この装置1は、液体冷却部33と蒸気導管32とを通って、蒸発容器31中に入り込む。部分Aは、はめ込み部35(図3b参照)の部材を示す。
【0052】
図3bは、装置1の回転蒸発装置30への装着を、部分A(図3a参照)の拡大図として示す。はめ込み部35は、回転蒸発装置30に装着されていて、中にカプセル化された装置1が導入される空隙を有する。このはめ込み部35は、保持部材36(これは、回転蒸発装置30(図3a参照)の保持手段37の周囲に係合する)を用いて、回転蒸発装置に固定されている。カプセル化された装置1は、はめ込み部35内部で方向調整され、はめ込み部35を挟み込むクリップ部34を用いて、はめ込み部内に固定される。
図1
図2
図3a
図3b