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▶ チャンシャー ホーズ バイオサイエンス アンド テクノロジー シーオー.,エルティーディーの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-02
(45)【発行日】2022-02-10
(54)【発明の名称】化合物及びその薬学での応用
(51)【国際特許分類】
   C07D 239/545 20060101AFI20220203BHJP
   A61K 31/513 20060101ALI20220203BHJP
   A61P 17/06 20060101ALI20220203BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20220203BHJP
   A61P 15/00 20060101ALI20220203BHJP
   A61P 15/14 20060101ALI20220203BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20220203BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20220203BHJP
【FI】
C07D239/545 CSP
A61K31/513
A61P17/06
A61P17/00
A61P15/00
A61P15/14
A61P35/00
A61P43/00 111
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020540380
(86)(22)【出願日】2018-12-05
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-04-30
(86)【国際出願番号】 CN2018119300
(87)【国際公開番号】W WO2019141009
(87)【国際公開日】2019-07-25
【審査請求日】2020-08-17
(31)【優先権主張番号】201810038937.6
(32)【優先日】2018-01-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】520264472
【氏名又は名称】チャンシャー ホーズ バイオサイエンス アンド テクノロジー シーオー.,エルティーディー
(74)【代理人】
【識別番号】100088904
【弁理士】
【氏名又は名称】庄司 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100124453
【弁理士】
【氏名又は名称】資延 由利子
(74)【代理人】
【識別番号】100135208
【弁理士】
【氏名又は名称】大杉 卓也
(74)【代理人】
【識別番号】100163544
【弁理士】
【氏名又は名称】平田 緑
(74)【代理人】
【識別番号】100183656
【弁理士】
【氏名又は名称】庄司 晃
(72)【発明者】
【氏名】リー,ション
(72)【発明者】
【氏名】シャ,グオジーアン
【審査官】松澤 優子
(56)【参考文献】
【文献】特表2009-526865(JP,A)
【文献】特表2012-515776(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
A61K
A61P
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
化合物及びその薬学的に許容される塩であって、前記化合物の化学式は、
【化1】

である化合物及びその薬学的に許容される塩。
【請求項2】
前記薬学的に許容される塩は、塩化物、臭化物、ヨウ化物、リン酸塩、硫酸塩、炭酸塩、重炭酸塩、ギ酸塩、酢酸塩、プロピオン酸塩、安息香酸塩、ピコリン酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、リンゴ酸塩、コハク酸塩、メタンスルホン酸塩、トシル酸塩、トリフルオロメタンスルホン酸塩、テトラフルオロホウ酸塩またはヘキサフルオロ硫酸塩であることを特徴とする請求項に記載の化合物及びその薬学的に許容される塩。
【請求項3】
請求項1または2に記載の化合物及びその薬学的に許容される塩をふくむ骨髄過形成症候群、乾癬、瘢痕過形成、前立腺過形成、乳房過形成、血液腫瘍又は固形癌の治療薬。
【請求項4】
UHRF1および/またはHDAC1阻害剤を調製するための請求項1または2に記載の化合物及びその薬学的に許容される塩の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化合物及びその薬学での応用に関し、特に、デュアルターゲティングUHRF1及びHDAC1を通っての化学小分子とその薬学での応用に関する。
【背景技術】
【0002】
HDACファミリー分子とDNMT1は、エピジェネティクスの重要な調節因子であり、いくつかの腫瘍組織で高度に発現していますが、さまざまな程度で異なる正常組織および器官で発現されます。HDAC阻害剤であるボリノスタットまたはキダニリンは、臨床的に皮膚T細胞リンパ腫に対して、5-ザシチジンやデシタビン等のDNMT1阻害剤は、骨髄異形成症候群に対して優れた治療効果を示していますが、しかしながら、それらは様々な程度の副作用を示すため、固形腫瘍へのそれらの応用は、制限されています。UHRF1はエピジェネティクスにおけるDNAメチル化を調節する重要な遺伝子であり、DNA複製およびDNA損傷修復の調節にも関与しています。UHRF1も癌遺伝子であり、正常組織では発現が低く(HDAC1およびDNMT1と比較して、5~70倍で低い)、さまざまな血液腫瘍や固形癌組織では高発現であるため、非常に理想的な抗癌剤ターゲットです。RNAi干渉を使用してUHRF1をノックダウンすると、放射線療法および化学療法に対する細胞の敏感性が促進されました。したがって、有効な化学小分子のターゲティングUHRF1及びHDAC1を発展して、単独または他の方法と組み合わせた増殖性異常病気および障害の治療に使われて、骨髄異形成症候群、乾癬、瘢痕過形成、前立腺または乳房過形成等の他の増殖性疾患、良性腫瘍、血液腫瘍及び神経内分泌変換を含む癌の種類の固形癌を含むが、これらに限定されない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明によって解決される技術的問題は、デュアルターゲティングUHRF1及びHDAC1を通っての化学小分子またはその薬学的に許容される塩を対応する阻害剤或いは病気を治療する薬として、単独でまたは他の方法と組み合わせて、前述した病気を治療することに使われて、関連薬の有効性を改善する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の技術方案は、化合物及びその薬学的に許容される塩であって、前記化合物の化学式は、
【化1】


であって、
ここで、nは、1~7の正の整数から選択されて、Rは、以下置換基から選択される:
-H、-F、-Cl、-Br、-I、-NH2、-OH、-CN、-SH、 -CF3、-CH3、-CH2CH3
【化2】
【0005】
上記の一般式において、R基の変化は、化合物の溶解度と結晶化性能に影響を与える可能性がある。
【0006】
好ましくは、前記の化合物の化学式は、
【化3】
である。
【0007】
好ましくは、前記薬学的に許容される塩は、塩化物、臭化物、ヨウ化物、リン酸塩、硫酸塩、炭酸塩、重炭酸塩、ギ酸塩、酢酸塩、プロピオン酸塩、安息香酸塩、ピコリン酸塩、フマル酸塩、 マレイン酸塩、リンゴ酸塩、コハク酸塩、メタンスルホン酸塩、トシル酸塩、トリフルオロメタンスルホン酸塩、テトラフルオロホウ酸塩またはヘキサフルオロ硫酸塩である。
【0008】
本発明は、また、前記化合物およびその薬学的に許容される塩で骨髄異形成症候群、乾癬、瘢痕過形成、前立腺過形成、乳房過形成、血液腫瘍および腫瘍(主に固形癌を指す)を調製治療する応用を提供する。
【0009】
本発明は、また、前記化合物およびその薬学的に許容される塩でUHRF1および/またはHDAC1阻害剤を調製する応用を提供する。
【0010】
前記化合物の合成経路は同じであり、nの値および置換基Rの変化は、前記合成経路に影響を与えない。
目標化合物 を例にとると、合成経路は、
【化4】
である。
【発明の効果】
【0011】
本発明の有益な効果は、本発明の化合物およびその薬学的に許容される塩類は、同時に、UHRF1やHDAC1がターゲットとして、対応する薬剤の調製に使用される。これらの薬剤は、単独または他の方法と組み合わせて、骨髄異形成症候群、乾癬、瘢痕過形成、前立腺または乳房過形成等の他の増殖性疾患、良性腫瘍、血液腫瘍及び神経内分泌変換を含む癌の種類の固形癌を含むがこれらに限定されない増殖性異常病気および障害を治療し、しかも治療効果は非常に良好である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、異なる用量の対照薬物化合物M1(公表されているUHRF1の小分子阻害剤、NSC232003(2016、European Journal of Medicinal Chemistry、114:390-396))の応用と、実施例1で調製された化合物M3の分子のターゲット性の実験結果を示す図である。
図2-1】図2a及び図2b:それぞれは、本発明の化合物が選択的に異なる癌細胞を殺すIC50値を示す図である。図2aは、RWPE1セルであり、図2bは、HPrECセルであり、図2cは、PC3セルあり、図2dは、DU145セルである。
図2-2】図2c及び図2d:それぞれは、本発明の化合物が選択的に異なる癌細胞を殺すIC50値を示す図である。図2aは、RWPE1セルであり、図2bは、HPrECセルであり、図2cは、PC3セルあり、図2dは、DU145セルである。
図3図3a及び図3b:それぞれは、異なる化合物M1およびM3、ヌードマウスにおける移植された前立腺癌の成長に対する異なる用量の化合物M3の抑制効果のトレンドグラフを示す。
図4】本出願の化合物M3の化学構造式を示す図である。
図5-1】図5a及び図5b:それぞれは、化合物M3がヌードマウスの体重、心臓、肝臓、腎臓機能に対する効果を示す図である。
図5-2】図5c及び図5d:それぞれは、化合物M3がヌードマウスの体重、心臓、肝臓、腎臓機能に対する効果を示す図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明は、実施例で以下でさらに説明される。
実施例1:化合物M3の合成
合成経路は以下の通りである:
【化5】
1.無水スベリン酸の合成:スベリン酸(5.0g、28.7mmol)を10mLの無水酢酸に加えて、1時間で加熱して還流させ、そして、室温まで冷却して、減圧して溶剤を蒸発させ、黄色固体を得て、アセトニトリルで再結晶して、4.3 gの白色固体を得た(収率96%)。
1HNMR(400MHz、CDCl3):δ2.41(m、4H)、1.62(m、4H)、1.34(m、4H)
2.8-((2,4-ジオキソ-1,2,3,4-テトラヒドロピリミジン-5-イル)アミノ)-8-オキソオクタン酸(8-カルボニル(5-アミノウラシル)カプリル酸)の合成:無水スベリン酸(1.6 g、10.0 mmol)を20 mLのTHFに溶解して、氷浴で攪拌して、それにアミノウラシル(1.3 g、10.0 mmol)を加えて、そして室温で30分間攪拌して、混合物を水で希釈して、白色固体が分離され、濾過し固体を回収し、水で再結晶し、2.7 gの白色固体を得た(収率96%)。
1HNMR(400MHz、DMSO):δ12.05(br、1H)、11.47(br、1H)、10.66(s、1H)、9.07(s、1H)、8.09(s、1H)、8.06(s、1H)、 2.32-2.35(m、2H)、1.94-1.96(m、2H)、1.47-1.52(m、4H)、1.26-1.29(m、4H)。
3.N1-(カルボニル-5-アミノウラシル)-N8-オクチルヒドロキシアミドの合成:
8-((2,4-ジオキソ-1,2,3,4-テトラヒドロピリミジン-5-イル)アミノ)-8-オキソオクタン酸(8-カルボニル(5-アミノウラシル)カプリル酸)(1. 4 g、5.0 mmol)を20 mL無水のTHFに溶解して、温度を0℃まで制御し、クロロギ酸エチル(600 mg、6.0 mmol)とトリエチルアミン(0.7 mL)を加えて、混合物を10分間撹拌し、生成した固体を濾別して、新たに調製されたヒドロキシルアミンのメタノール溶液(2 mL中に170 mg、5.0 mmol)を加えて、反応液を室温で15分間攪拌した後、溶剤を蒸発させ、残留物をアセトニトリルで再結晶して、890mgの白色固体(収率60%)を得た。
ESI-MS:[M + H] + = 299.10; 1HNMR(400MHz、DMSO):δ11.41(br、1H)、10.65(br、1H)、10.37(s、1H)、9.06(s、1H)、8.68 (s、1H)、8.06(s、1H)、2.33-2.35(m、2H)、1.94(t、J = 8.0 Hz、2H)、1.46-1.52(m、4H)、1.22-1.52(m、4H) )。
【0014】
実施例2:生物学のアクティビティ検出
実験条件:
本発明は、それぞれ、前立腺癌細胞および前立腺癌細胞によって誘導された腫瘍移植モデルを使用して、UHRF1及びHDAC1に対する本発明の化合物M3の分子ターゲティング効果を検出し、本発明の化合物M3の異なる濃度は、前立腺癌細胞に対してと正常な細胞増殖に対照する影響について、体外の抗癌活性を評価し、その安全性を予測することで、本発明の化合物M3を服用させた、ヌードマウスにおける前立腺癌の移植腫瘍の成長影響を評価する。本発明の化合物M3の有効性および安全性をよりよく評価するために、公表したUHRF1の小分子阻害剤、NSC232003(2016,European Journal of Medicinal Chemistry, 114:390-396)を対照として応用し、以下のデータとアイコンではM1としてマークされている。
【0015】
実験の結果:
(1)本発明の化合物M3のUHRF1およびHDAC1分子に対するターゲティング性。
同じ数量の前立腺癌細胞株DU145を6ウェルの培養皿に植えて、24の時間に細胞が壁に付着した後、異なる用量の本発明の化合物M3(50、100及び150μM)を応用して、前立腺癌細胞株DU145を処置し、化合物M1を対照薬物とする。24時間後、細胞を回収してウエスタンブロット(Western blot)を行い、UHRF1、ヒストンH3、アセチル化のH3のタンパク質レベルを検出した。結果は、本発明の化合物M3が、用量依存的な方法で特異的に前立腺癌細胞での発癌遺伝子UHRF1のタンパク質レベルを示して、同時に、ヒストンH3のアセチル化のレベルは、増加したが、総ヒストンH3のレベルには、影響がなかった。この薬はUHRF1とHDAC1にデュアルターゲティング効果を持っているため、共同の下流遺伝子DNMT1のタンパク質の発現は大幅に減少した(図1)。この実験の結果は、本発明の化合物の特異性のデュアルターゲティングUHRF1およびHDAC1分子を確認している。
(2)本発明の化合物M3は、用量依存的な方法で前立腺癌細胞を殺すが、正常細胞に対する毒性は低い。
前立腺癌細胞PC3およびDU145細胞、ならびに非癌性正常細胞(5000細胞/ウェル)を96ウェル細胞培養皿に植えて、本発明の化合物M3の異なる用量を応用して、前立腺癌細胞PC3およびDU145細胞、ならびに前立腺癌の正常細胞RWPE1及びHPrECを処置した。薬物で72時間処置して、MTSの方式を使用して細胞の生存率を検出し、ソフトウェアを使用して、本発明の化合物M3の、異なる細胞におけるIC50値を計算した。
結果は、本発明の化合物が前立腺癌細胞PC3およびDU145に対して明らかな細胞毒性を有することを示して、半数阻害濃度(IC50)は、50μM未満であったが、正常な前立腺癌上皮細胞前立腺癌の正常細胞RWPE1及びHPrECの半数阻害濃度(IC50)に対して、大幅に増加し、すべてが300μMを超えている。比較を通して、本発明の化合物M3は、前立腺癌細胞を殺すことに対して良好な選択性を有することが見出された。 (図2a-図2dを参照)
(3)本発明の化合物M3は、ヌードマウスの前立腺癌移植腫瘍の成長に対して明らかな抑制効果を持つ。
前立腺癌DU145細胞(1 x 106)を使用して、皮下注射による免疫不全のマウスの皮下移植腫瘍モデルを確立しました。約2~3週の時間で、移植された腫瘍のサイズが約250mm3ぐらいに達する時、本発明の化合物(100mg / kg /日)で強制経口投与を行い、1日に1回、週に5日間、2日間の休憩時間で、合計4週間の連続で処置を行った。化合物M1と溶媒DMSOを対照とする。腫瘍サイズは、治療前および治療後3日ごとに測定された。腫瘍のサイズは、式V =長さ×幅2/2に従って計算された。
結果は、前立腺癌細胞DU145によって確立された移植腫瘍モデルにおいて、本発明の実施例1の化合物M3は、対照する薬物M1と比較して、腫瘍増殖を明らかに減少させたことを示した。(図3aおよび図3b)。本発明の化合物は、非常に明らかな抗腫瘍活性を示す。
実験の結論:体外細胞実験と動物実験により、本発明の化合物M3がUHRF1及びHDAC1分子に対して良好なターゲティング効果を有することが確認された。前立腺癌細胞に非常に特異的な殺害効果があり、ヌードマウスの前立腺癌移植腫瘍の成長を明らかに阻害する。
(4)本発明の化合物M3は、明らかな安全性を有する。
免疫不全のマウスに、本発明の化合物M3(200mg / kg /日)で強制経口投与を行って、1日に1回、週に5日間、2日間の休憩時間で、合計4週間の連続で処置を行い、溶媒DMSOを対照とする。マウスの体重を治療前および治療後3日ごとに測定する。実験の終わりに、血液を採取し、血清を分離し、生化学的指標の変化を検出する。具体的には次のものが含まれた:肝機能アラニンアミノトランスフェラーゼ(AST)及びアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(ALT)、腎機能尿素窒素(BUN)及びクレアチニン(CREA)及び心機能心機能クレアチンキナーゼ(CK)及び乳酸脱水素酵素(LDH-L)、化合物M3が心臓、肝臓、腎臓の機能に及ぼす影響を評価する。
結果は、本発明の実施例1の化合物M3(用量200mg / kg /日)がヌードマウスの体重を明らかに減少させなかったことを示した(図5a)。肝臓、腎臓、心臓の機能に大きな影響はなかった(図5b、5c、5d)。
実験の結論:体外細胞実験と動物実験により、本発明の化合物M3が明らかな安全性を有することが確認された。
【0016】
実施例と同じな調製方法で調整した構造が類似な派生物は、
【化6】
これらの派生物と化合物M3の違いは、側鎖の長さにありますが、予備実験によると、これらの派生物の薬物活性は、同じなモデルでは理想的ではなく、側鎖の長さが薬物活性により大きな影響を与えることを示している。
図1
図2-1】
図2-2】
図3
図4
図5-1】
図5-2】