(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-02
(45)【発行日】2022-02-10
(54)【発明の名称】破裂型油導流板を備えた電気設備
(51)【国際特許分類】
H01F 27/12 20060101AFI20220203BHJP
H01F 27/02 20060101ALI20220203BHJP
H01F 30/10 20060101ALI20220203BHJP
【FI】
H01F27/12 Z
H01F27/02 E
H01F27/02 150
H01F30/10 S
(21)【出願番号】P 2020563975
(86)(22)【出願日】2019-05-22
(86)【国際出願番号】 IB2019054245
(87)【国際公開番号】W WO2019224747
(87)【国際公開日】2019-11-28
【審査請求日】2020-11-12
(32)【優先日】2018-05-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】519431812
【氏名又は名称】ヒタチ・エナジー・スウィツァーランド・アクチェンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】HITACHI ENERGY SWITZERLAND AG
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ブロデューア,サミュエル
(72)【発明者】
【氏名】ラモット,パトリス
(72)【発明者】
【氏名】コテ,アレクサンドル
(72)【発明者】
【氏名】ランベール,クロード
【審査官】秋山 直人
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-525283(JP,A)
【文献】実公昭58-18264(JP,Y2)
【文献】特開昭62-229911(JP,A)
【文献】特開平7-220934(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 27/12
H01F 27/02
H01F 30/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気設備であって、
側壁を有し、冷却油を収容するためのタンクと、
前記タンクに取り付けられ、前記冷却油を封入するための上部カバーと、
前記タンクと前記上部カバーとの間の弱化領域とを含み、前記弱化領域は、前記タンクに過圧状態が生じる場合、破裂することによって圧力を解放し、
前記上部カバーの少なくとも一部に沿って延在し、前記弱化領域の外側に設けられた導流板を含み、
前記弱化領域が破裂するときに、前記冷却油の少なくとも一部が圧力によって噴出され、噴出された冷却油が前記導流板の内面に当たると、前記導流板は、前記冷却油が外側に噴出しないように前記冷却油の方向を変更する、電気設備。
【請求項2】
前記上部カバーは、前記タンクに溶接される、請求項1に記載の電気設備。
【請求項3】
前記導流板は、前記タンクに取り付けられる、請求項1に記載の電気設備。
【請求項4】
前記タンクは、上部にフランジを含み、
前記上部カバーは、前記フランジに取り付けられる、請求項1に記載の電気設備。
【請求項5】
前記導流板は、前記フランジに取り付けられる、請求項4に記載の電気設備。
【請求項6】
前記導流板は、ねじ付き締結具を介して前記フランジに取り付けられ、これによって、前記導流板は、出荷時に前記タンクから取り外され、使用場所で前記タンクに取り付けられるように構成される、請求項5に記載の電気設備。
【請求項7】
前記弱化領域の下方且つ前記導流板と前記タンクとの間に設けられた空間をさらに含み、
前記空間は、前記冷却油が前記空間を通って前記タンクの前記側壁に流下するように構成される、請求項1に記載の電気設備。
【請求項8】
前記タンクに取り付けられ、互いに離間したブロックをさらに含み、
前記導流板は、前記ブロックに取り付けられ、
前記空間は、前記離間したブロックの間および前記タンクと前記導流板との間に設けられる、請求項7に記載の電気設備。
【請求項9】
前記タンクは、上部にフランジを含み、
前記ブロックは、前記フランジの底部に取り付けられ、
前記導流板は、前記ブロックの底部に取り付けられる、請求項8に記載の電気設備。
【請求項10】
前記タンクの基部を取り囲む収容構造をさらに含み、
前記収容構造は、前記タンクから流出した冷却油を収容するように構成され、
前記導流板は、前記収容構造の内部に流入するように、前記流出した冷却油の方向を変更する、請求項1に記載の電気設備。
【請求項11】
前記導流板は、前記弱化領域から横方向に離れた垂直部を含む、請求項1に記載の電気設備。
【請求項12】
前記導流板は、前記弱化領域の上方に配置され、前記タンクの中心に向かって内側に延在する張出部を含む、請求項1に記載の電気設備。
【請求項13】
前記側壁は、対向する短側壁と、対向する長側壁とを含み、
前記導流板は、対向する前記長側壁に沿って各々設けられ、対向する前記短側壁に沿って設けられない、請求項1に記載の電気設備。
【請求項14】
前記導流板は、前記側壁のうちの1つの長さの少なくとも50%に沿って延在する、請求項1に記載の電気設備。
【請求項15】
前記導流板は、前記側壁のうちの1つの長さの少なくとも75%に沿って延在する、請求項14に記載の電気設備。
【請求項16】
前記側壁は、前記弱化領域が破裂する前に、塑性変形することによって過圧を吸収する、請求項1に記載の電気設備。
【請求項17】
前記弱化領域の下方且つ前記導流板と前記タンクとの間に設けられた空間をさらに含み、
前記空間は、前記冷却油が前記空間を通って前記タンクの前記側壁に流下するように構成され、
前記タンクの基部を取り囲む収容構造をさらに含み、
前記収容構造は、前記タンクから流出した冷却油を収容するように構成され、
前記導流板は、前記収容構造の内部に流入するように、前記流出した冷却油の方向を変更する、請求項1に記載の電気設備。
【請求項18】
前記上部カバーは、前記タンクに溶接され、
前記導流板は、ねじ付き締結具を介して前記フランジに取り付けられ、これによって、前記導流板は、出荷時に前記タンクから取り外され、使用場所で前記タンクに取り付けられるように構成され、
前記導流板は、前記弱化領域の上方に配置され、前記タンクの中心に向かって内側に延在する張出部を含む、請求項17に記載の電気設備。
【請求項19】
前記タンクは、上部にフランジを含み、
前記上部カバーは、前記フランジに溶接され、
前記導流板は、前記フランジに取り付けられ、
前記側壁は、対向する短側壁と、対向する長側壁とを備え、
前記導流板は、対向する前記長側壁に沿って各々設けられ、対向する前記短側壁に沿って設けられず、
前記導流板は、前記側壁のうちの1つの長さの少なくとも75%に沿って延在する、請求項18に記載の電気設備。
【請求項20】
前記フランジの底部に取り付けられ、互いに離間したブロックをさらに含み、
前記導流板は、前記ブロックの底面に取り付けられ、
前記空間は、前記ブロックの間および前記タンクと前記導流板との間に設けられ、
前記側壁は、前記弱化領域が破裂する前に、塑性変形することによって過圧を吸収する、請求項19に記載の電気設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
背景
本発明は、電気設備に関し、より具体的には、流出した油の方向を変更するための導流板に関する。
【背景技術】
【0002】
大型の産業用電気設備、例えば、変圧器および分流リアクトルは、典型的にはタンクを備え、このタンクは、高圧素子と、高圧素子を冷却するための冷却油とを封入する。人が不用意に高圧素子または冷却油に触れてしまうことを防ぐために、タンクを密閉することによって、タンク内部への不用意なアクセスを防止する。
【0003】
産業用電気設備に関連するリスクの1つは、設備の内部に発生し得る電気故障である。故障が発生した場合、異なる電圧電位を有する高圧素子の間に、例えば高圧素子と(接地されている)タンク壁との間、または高圧素子とタンク内部の他の場所との間に電気アークが発生する可能性がある。アークが発生すると、アーク周囲の冷却油が蒸発し、設備タンク内部の圧力が上昇する。タンク内部の圧力が十分に高いレベルまで上昇すると、タンクは、タンク壁を破裂させることによって爆発する。
【0004】
タンク爆発の1つの結果として、タンク内部の冷却油が流出することである。冷却油の流出は、多くの理由で問題になる。例えば、油自体は、有害物質である可能性がある。場合によって、タンク側壁の全体が上部から底部まで割れてしまい、タンク内部の全ての冷却油が流出して、地面を汚染する。しかしながら、流出した油の量が少なくても、タンクから噴出された冷却油は、長い距離を経って地面に落下する。環境上の問題に加えて、噴出された油は、近寄りの人に触れた場合、安全上の問題になる。例えば、設備のタンクが爆発すると、噴出された高圧または高温の油は、近寄りの人に危害を与える可能性がある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
概要
過圧状態において、タンクの頂部に沿って破裂することによって、圧力を解放するように設計された電気設備が開示される。タンクが破裂すると、タンク内部の冷却油が破裂開口から噴出される。噴出された油がタンクから飛散することを防ぐために、タンクの上部に沿って導流板を設けることによって、噴出された油の方向を変更する。
【0006】
図面と併せて以下の説明を読むことによって、本発明をより完全に理解することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【発明を実施するための形態】
【0008】
詳細な説明
図面を参照して、特に、
図1は、電気設備10を示している。この実施形態において、電気設備は、変圧器10である。変圧器10は、タンク12を備え、タンク12は、基部16から上方に延在する側壁14を含む。タンク12の上部は、上部カバー18によって封止されている。当技術分野において分かるように、変圧器10は、タンク12の内部に配置された高圧素子および冷却油を含む。高圧素子は、典型的には、冷却油に浸漬されている。タンク12は、内部の高圧素子への不用意なアクセスを防止し、冷却油を収容している。油がタンク12から漏出または流出する場合に備えて、変圧器10の基部16の周囲に収容構造20を設けることができる。収容構造20は、例えば、変圧器10を取り囲む低壁20であってもよい。しかしながら、理解すべきことは、他の種類の収容構造20、例えば、油を地下リザーバに案内する排出管を使用することができることである。したがって、収容構造20は、流出した油を収集することによって、油が周囲の地面に流出することを防止する。好ましくは、収容構造20は、側壁14の高さの半分未満である。
【0009】
変圧器10は、変圧器10内部の電気アークによって生じ得る過圧状態に応じて、段階的に反応するように設計される。例えば、第1の段階では、タンク12の側壁14は、破裂するのではなく、塑性変形することによって過圧状態を吸収するように設計される。側壁14に補強リブ24を追加し、側壁コーナ26を広げることによって、側壁14の破裂を防ぐことができる。
【0010】
図3に示されるように、第2段階では、弱化領域28は、破裂することによって、タンク12から圧力を逃がすことができる。好ましくは、上述したように、タンク12を破裂させることなく、塑性変形が過圧状態を食い止めるのに十分である場合、タンク12は、まず塑性変形する。しかしながら、過圧条件が非常に高い場合、制御された方法で破裂するように、タンク12を設計してもよい。これによって、変圧器10の故障によって引き起こされ得る損傷または被害を最小限に抑えることができる。
【0011】
図2および
図3に示すように、好ましくは、上部カバー18の周縁は、側壁14の上部のフランジ30に溶接28される。しかしながら、ボルトを介して、上部カバー18をフランジ30に取り付けてもよい。溶接部28は、特定の圧力レベルで破裂する弱化領域28として設けられてもよい。したがって、
図3に示すように、弱化領域28が破裂すると、溶接部28は、28Aおよび28Bに分離する。これによって、上部カバー18は、フランジ30から分離され、開口32を形成する。その結果、破裂開口32を介して、タンク12から圧力を解放することができる。好ましくは、弱化領域28は、変圧器10の上部に沿って設けられる。これによって、破裂しても、冷却油の大部分は、地面に流出することなくタンク12に残される。
【0012】
破裂開口32がタンク12の上部に設けられても、過圧状態において一部の油が破裂開口32から噴出する恐れがある。噴出された油に関連する環境問題または安全問題を最小限に抑えるために、
図1および
図2に示すような導流板34を設けることができる。導流板34は、好ましくは剛性であり、金属から形成される。
図1に示すように、導流板34は、好ましくは、変圧器10の長辺36のみに沿って設けられ、短辺38に沿って設けられない。その理由は、溶接部28の破裂開口32は、変圧器10の長辺36のみに沿って発生し、短辺38に沿って発生しないからである。さらに、配管および他の設備により容易にアクセスするために、導流板34によって遮れず、短辺38の上方を開放状態にしておくことが有用であり得る。破裂開口32を完全に覆うために、導流板34は、好ましくは、長辺36の長さの少なくとも50%に沿って延在し、より好ましくは、長辺36の長さの少なくとも75%に沿って延在する。
【0013】
図2に示すように、導流板34は、溶接部28から横方向外側に離れた垂直部40を有してもよい。また、導流板34は、溶接部28の上方に張出部32を有していてもよい。張出部32は、タンク12の中心に向かって内側に延在し、溶接部28を覆っている。したがって、油が溶接部28を通って破裂開口32から噴出される場合、噴出された油は、導流板34の内面に当たり、流れ方向が変更される。その結果、油の噴出が制限され、変圧器10から遠い距離への噴出が防止される。
【0014】
導流板34は、タンク12の上部のフランジ30に取り付けられてもよい。例えば、
図2に示すように、導流板34は、フランジ30の底部に取り付けられてもよい。
図3に示すように、好ましくは、フランジ30の底面に離間したブロック44を溶接する。次に、ブロック44の底面に導流板34を取り付けることができる。この構成は、導流板34に当たった後の油が流下するための経路を形成するため、好ましい。例えば、油は、導流板34の内面に当たった後、導流板34とフランジ30との間の横方向空間46を通って流下することができる。次に、油は、フランジ30と導流板34とブロック44との間の縦方向空間48を通って流れることができる。縦方向空間48をより明確に確認するために、導流板34の垂直部40および張出部42は、
図3において切り取られている。油は、タンク12の側壁14の外側に沿って下方に流れる。これによって、油は、無制御状態で収容構造20から漏出することなく、側壁14に沿って収容構造20に流入する。
【0015】
図3に示すように、好ましくは、導流板34は、ねじ付き締結具50を用いてタンク12(例えば、フランジ30)に取り付けられる。これによって、工場で導流板34を設置する必要がなく、変圧器10を使用する現場で導流板34を設置することができる。したがって、導流板34を設置せずに変圧器10を出荷することができる。これは、変圧器10を使用場所に輸送するために必要な輸送空間を減少するため、望ましい。
【0016】
以上、本発明の好ましい実施形態を説明したが、本発明は、それに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。本明細書に記載された各実施形態は、特定の特徴のみを言及し、他の実施形態に記載された全ての特徴を具体的に言及しないが、特に限定しない限り、特定の特徴を言及しなくても、本明細書に記載された特徴は、交換可能である。また、上述した利点は、必ずしも本発明の唯一の利点ではない。また、記載された全ての利点は、必ずしも本発明の全ての実施形態によって達成されるものではない。本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲によって規定され、文言または均等物によって、特許請求の範囲の意味に含まれる全ての装置および方法は、本発明に包含される。