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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-02
(45)【発行日】2022-02-10
(54)【発明の名称】クロスダイポールアンテナ
(51)【国際特許分類】
   H01Q 21/26 20060101AFI20220203BHJP
   H01Q 5/371 20150101ALI20220203BHJP
   H01Q 19/10 20060101ALI20220203BHJP
【FI】
H01Q21/26
H01Q5/371
H01Q19/10
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021169219
(22)【出願日】2021-10-15
【審査請求日】2021-10-15
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】591149089
【氏名又は名称】株式会社MARUWA
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】特許業務法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】永島 壮太
(72)【発明者】
【氏名】山口 真功
【審査官】岸田 伸太郎
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第6342867(US,B1)
【文献】特表2008-544670(JP,A)
【文献】特開2002-11348(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01Q 21/26
H01Q 5/371
H01Q 19/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
頂面、側面および底部を有する柱形状を有し、誘電体材料からなるコアと、
前記コアの底部に配置された反射板と、
前記コアの外面に形成され、前記コアの頂面の中心部から第1の長さL1および幅W1で略直線状に延伸し、互いに直交配置された4本の第1エレメントで構成され、第1の共振周波数f1で共振する第1エレメント群と、
前記コアの外面に形成され、前記コアの頂面の中心部から第2の長さL2および幅W2で略直線状に延伸し、前記第1エレメントと重合しないように互いに直交配置された4本の第2エレメントで構成され、第2の共振周波数f2で共振する第2エレメント群と、
前記第1および第2エレメント群の各エレメントに電力を伝送する給電線と、を備え、
前記第1エレメントおよび前記第2エレメントは、それぞれ前記コアの外面に沿って頂面から側面へと折れ曲がって延伸し、
前記第1の長さL1が、前記第1の共振周波数f1に対応する第1の波長λ1の1/4よりも小さく、前記第2の長さL2が、前記第2の共振周波数f2に対応する第2の波長λ2の1/4よりも小さいことを特徴とするクロスダイポールアンテナ。
【請求項2】
前記各第1エレメントは、隣接する前記第2エレメントの1つに前記中心部側の端部で電気的に接続されていることを特徴とする請求項1に記載のクロスダイポールアンテナ。
【請求項3】
前記誘電体材料の誘電率が2~78であることを特徴とする請求項1または2に記載のクロスダイポールアンテナ。
【請求項4】
前記第1の長さL1が、前記第1の波長λ1の1/8よりも小さく、前記第2の長さL2が、前記第2の波長λ2の1/8よりも小さいことを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載のクロスダイポールアンテナ。
【請求項5】
前記コアの頂面と前記反射板との距離が第1の波長λ1の1/4および第2の波長λ2の1/4よりも小さいことを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載のクロスダイポールアンテナ。
【請求項6】
前記コアの外面に形成され、前記コアの頂面の中心部から第3の長さL3および幅W3で略直線状に延伸し、前記第1エレメントおよび前記第2エレメントと重合しないように互いに直交配置された4本の第3エレメントで構成され、第3の共振周波数で共振する第3エレメント群をさらに備えることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載のクロスダイポールアンテナ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クロスダイポールアンテナに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、クロスダイポールアンテナは、主に、車載や船舶向けのGPS、各種固定局などの円偏波の使用に適した用途に用いられている。クロスダイポールアンテナは、中心から4方向に延びるように十字状に4本のアンテナエレメントを直交配置して給電位相差を90度とすることで、円偏波を発生させるように構成されている。
【0003】
例えば、特許文献1は、円偏波の軸比を向上させることを目的としたクロスダイポールアンテナを開示する。以下、当該段落において、()内に特許文献1の符号を示す。クロスダイポールアンテナ(1)は、略直交配置された2つのダイポールアンテナと反射板(6)とから構成されている。反射板(6)は、略円形とされておりその直径(D)は、使用周波数帯域における中心周波数の波長をλとした際に、約λ/2~λとされている。略直交配置された2つのダイポールアンテナは、第1逆U字形ダイポールアンテナと第2逆U字形ダイポールアンテナとが略直交配置されて構成されている。第1逆U字形ダイポールアンテナは、それぞれ逆U字形に折曲されたダイポールエレメント(2a)とダイポールエレメント(2b)とから構成され、第2逆U字形ダイポールアンテナは、それぞれ逆U字形に折曲されたダイポールエレメント(2c)とダイポールエレメント(2d)とから構成されている。ダイポールエレメント(2a)~ダイポールエレメント(2d)の長さは約λ/4とされている。すなわち、第1逆U字形ダイポールアンテナと第2逆U字形ダイポールアンテナは、半波長ダイポールアンテナとされている。また、クロスダイポールアンテナ(1)において、ダイポールエレメント(2a)~ダイポールエレメント(2d)の一端と、反射板(6)との間隔L1は約λ/4とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2001-257524号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のクロスダイポールアンテナでは、使用周波数帯域に従って、ダイポールアンテナのダイポールエレメントの長さをλ/4とし、かつ、アンテナ頂部のダイポールエレメントと反射盤との間隔をλ/4とする必要があった。そのため、衛星通信のような1GHz~1.5GHz程度の使用周波数帯域でクロスダイポールアンテナを使用する場合、λが数百mmとなり、アンテナ自体を大型化せざるを得ないことが課題であった。さらに、特許文献1のクロスダイポールアンテナでは、1つの使用周波数帯域に対応するのみであることがもう1つの課題として挙げられる。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、2以上の周波数帯域に対応可能であり、かつ、より小型化可能な構造を有するクロスダイポールアンテナを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一形態のクロスダイポールアンテナは、頂面、側面および底部を有する柱形状を有し、誘電体材料からなるコアと、
前記コアの底部に配置された反射板と、
前記コアの外面に形成され、前記コアの頂面の中心部から第1の長さL1および幅W1で略直線状に延伸し、互いに直交配置された4本の第1エレメントで構成され、第1の共振周波数f1で共振する第1エレメント群と、
前記コアの外面に形成され、前記コアの頂面の中心部から第2の長さL2および幅W2で略直線状に延伸し、前記第1エレメントと重合しないように互いに直交配置された4本の第2エレメントで構成され、第2の共振周波数f2で共振する第2エレメント群と、
前記第1および第2エレメント群の各エレメントに電力を伝送する給電線と、を備え、
前記第1エレメントおよび前記第2エレメントは、それぞれ前記コアの外面に沿って頂面から側面へと折れ曲がって延伸し、
前記第1の長さL1が、前記第1の共振周波数f1に対応する第1の波長λ1の1/4よりも小さく、前記第2の長さL2が、前記第2の共振周波数f2に対応する第2の波長λ2の1/4よりも小さいことを特徴とする。
【0008】
すなわち、本発明のクロスダイポールアンテナは、第1の共振周波数f1で共振する第1エレメント群と、第2の共振周波数f2で共振する第2エレメント群とがコアに形成されたことにより、少なくとも2つの周波数帯域に対応可能であるように構成された。また、誘電体材料からなるコアの外面に第1エレメント群および第2エレメント群が形成されたことにより、第1の長さL1が、第1の共振周波数f1に対応する第1の波長λ1の1/4よりも小さく、第2の長さL2が、第2の共振周波数f2に対応する第2の波長λ2の1/4よりも小さくなるように構成された。そして、第1エレメントおよび第2エレメントを、それぞれコアの外面に沿って頂面から側面へと折れ曲げて配置したことにより、クロスダイポールアンテナを従来よりも小型化することを実現した。したがって、本発明のクロスダイポールアンテナは、小型化と複数の周波数帯域への対応とを併せて実現したものである。
【0009】
本発明のさらなる形態において、前記各第1エレメントは、隣接する前記第2エレメントの1つに前記中心部側の端部で電気的に接続されていることを特徴とする。1本の給電線を第1エレメントおよび第2エレメントで共用することが可能となり、給電線の本数を8本から4本へと減らし、部品点数を削減するとともに構造を簡易化することができる。その結果、クロスダイポールアンテナをより小型化することが可能となる。
【0010】
本発明のさらなる形態において、前記誘電体材料の誘電率が2~78であることを特徴とする。すなわち、誘電率が2~78の誘電体材料を採用したことにより、エレメントの長さL1、L2を50%以上短くすることが可能となる。
【0011】
本発明のさらなる形態において、前記第1の長さL1が、前記第1の波長λ1の1/8よりも小さく、前記第1の長さL1が、前記第1の波長λ1の1/8よりも小さいことを特徴とする。
【0012】
本発明のさらなる形態において、前記コアの頂面と前記反射板との距離が第1の波長λ1の1/4および第2の波長λ2の1/4よりも小さいことを特徴とする。すなわち、誘電体材料からなるコアの外面上に第1エレメントおよび第2エレメントを形成したことにより、コアの頂面(エレメントの基端側)と反射板との間の利得のための最適な距離を短くして、クロスダイポールアンテナを小型化することが可能である。
【0013】
本発明のさらなる形態において、前記コアの外面に形成され、前記コアの頂面の中心部から第3の長さL3および幅W3で略直線状に延伸し、前記第1エレメントおよび前記第2エレメントと重合しないように互いに直交配置された4本の第3エレメントで構成され、第3の共振周波数で共振する第3エレメント群をさらに備えることを特徴とする。すなわち、本発明のクロスダイポールアンテナは、3以上の周波数帯域への対応をも可能とするものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、複数の周波数で通信可能であり、且つ、より小型化可能な構造を有するクロスダイポールアンテナを提供するものである。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施形態のクロスダイポールアンテナの概略斜視図。
図2図1のクロスダイポールアンテナの平面図。
図3図1のクロスダイポールアンテナの正面図。
図4図1のクロスダイポールアンテナの底面図。
図5図1のクロスダイポールアンテナの第1および第2エレメントの展開図。
図6】本実施形態のクロスダイポールアンテナの誘電率(εr)とアンテナコア径(D1)との関係を示すグラフ。
図7】本発明の変形例のクロスダイポールアンテナの第1~第3エレメントの展開図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の例示として一実施形態について説明する。ただし、下記の説明は、本発明を限定することを目的とするものではない。また、以下の説明において参照する各図の形状は、好適な形状寸法を説明する上での概念図又は概略図であり、寸法比率等は実際の寸法比率とは必ずしも一致しない。つまり、本発明は、図面における寸法比率に限定されるものではない。
【0017】
本実施形態のクロスダイポールアンテナ100は、第1の共振周波数f1(=1575MHz)を略中心周波数として含む第1の周波数帯域と、第2の共振周波数f2(=1200MHz)を略中心周波数として含む第2の周波数帯域とで使用されるように構成された。第1の共振周波数f1に対応する第1の波長λ1は、190mmであり、第2の共振周波数f2に対応する第2の波長λ2は、250mmである。また、第1の周波数帯域は、例えば、1575MHzの信号、1553~1561MHzの信号および1605MHzの信号を含む3種の周波数信号に対応するように、1553MHz~1605MHzの範囲に設定され得る。第2の周波数帯域は、例えば、1227MHzの信号および1176MHzの信号を含む2種の周波数信号に対応するように、1176MHz~1227MHzの範囲に設定され得る。なお、第1の共振周波数f1および第2の共振周波数f2の値は、通信用途等に応じて適宜選択または変更されてもよい。
【0018】
図1は、本発明の一実施形態のクロスダイポールアンテナ100の概略斜視図である。図2は、クロスダイポールアンテナ100の平面図である。図3は、クロスダイポールアンテナ100の正面図である。図4は、クロスダイポールアンテナ100の底面図である。
【0019】
本実施形態のクロスダイポールアンテナ100は、図1乃至図4に示すように、コア101と、該コア101の底部101cに配置された反射板102と、該コア101の外面(頂面101aおよび側面101b)に形成された4本の略直交する第1エレメント103からなる第1エレメント群と、該コア101の外面に形成された4本の略直交する第2エレメント104からなる第2エレメント群と、第1および第2エレメント群の各エレメント103,104に電力を伝送する給電線108と、を備える。以下、各構成要素について説明する。
【0020】
コア101は、頂面101a、側面101bおよび底部101cを有し、軸方向に延伸する円柱形状を有する。なお、本発明において、コアは円柱形状に限定されず、角柱などの他の形状であってもよい。コア101は、中空形状を有し、その頂面101aの中心部には貫通孔が形成されている。コア101の頂面101aの中心部には、貫通孔を介して芯部材107の基端部が固定されている。芯部材107は、硬質な任意の樹脂基板、例えば、FR-4,PTFEなどからなり、軸方向に連続する十字状の断面形状を有し、コア101の軸心に沿って配置されている。芯部材107の断面十字形状の交差部分4箇所には、4本の給電線108がそれぞれ配置される。つまり、芯部材107は、複数(4つ)の仕切り壁によって4本の給電線108を電気的に絶縁した状態で、コア101の頂面101aから底部101cへとガイドし得る。また、コア101の頂面101aおよび側面101bには、第1エレメント103および第2エレメント104の基端部位および先端部位がそれぞれ貼り付けて配置されている。そして、頂面101aの中心部で、第1エレメント103および第2エレメント104に給電線108が電気的に接続されている。
【0021】
図3に示すように、コア101は、径D1および高さHを有する円柱体である。直径D1は、円形状の頂面101aの外径である。また、高さHは、側面101bの軸方向の長さであり、頂面101a(エレメント103,104の基端部位)と底部101c(反射板102)までの距離を示す。クロスダイポールアンテナ100のサイズは、主にコア101の径D1および高さHによって決定される。本実施形態では、コア径D1が30mmであり、コア高さHが25mmである。
【0022】
また、コア101は、誘電体材料からなる。好ましくは、コア101は、セラミック材料によって形成される。本実施形態では、セラミック材料は、限定されないが、MgO-SiOを主成分とする焼結体であり、その誘電率は約38である。なお、コア101の誘電体材料の誘電率は、2~78であることが好ましい。誘電体材料の誘電率を2~78としたことにより、エレメントを(誘電体材料表面上でない)空中に配置したときと比べて、同じ共振周波数での誘電体材料表面上のエレメントの長さを約50%以上短くし、クロスダイポールアンテナ100の小型化を実現することが可能となる。一方で、誘電率が2より小さいと、小型化の効果が少なくなる。また、誘電率が78より大きいと、周波数帯域幅が狭くなり複数周波数に対応できなくなるとともに、誘電体損が大きくなって所望の利得が得られないことが分かった。
【0023】
反射板102は、コア101の底部101cに一体的に結合されている。反射板102は、直径D2(>D1)を有する円盤であり、コア101の底部101cを閉塞するように設けられている。直径D2は、ローノイズアンプ等の高周波回路を形成することが可能な最小サイズ、または任意のサイズから選択され得る。反射板102は、軸方向下方に向かう円偏波を軸方向上方に反射させ、利得を向上させるように金属板等によって構成される。一般的に、アンテナのエレメント103,104と反射板102との間にコア101のような誘電体材料が存在しない場合、エレメント103,104と反射板102との距離がλ/4のときに反射が最大になり、最も利得が良くなるとされる。本実施形態では、第2の共振周波数f2の利得が最大となるように、エレメント103,104と反射板102との距離がコア高さH(25mm)によって定められた。そして、誘電体材料の誘電率(38)に起因して、コア高さH(25mm)は、第1の波長λ1の1/4(47.5mm)、および、第2の波長λ2の1/4(62.5mm)よりも小さくなる。すなわち、誘電体材料のコア101によって、エレメント103,104と反射板102との距離を短くし、クロスダイポールアンテナ100を小型化することを実現した。
【0024】
反射板102の底面中心には貫通孔が形成され、当該貫通孔を介して芯部材107の先端部が固定されている。また、反射板102の底面には、不平衡回路と平衡回路との変換を行うバラン111、直交するエレメントで90度の位相をずらすための90度位相分配器112、および、アンテナエレメントからの信号を増幅するローノイズアンプ(LNA)113が設けられている。反射板102底面には、2つのバラン111,111が設置され、直線配列した2つのエレメント103,103(または104,104)に接続された2本の給電線108,108が、1組となって1つのバラン111に接続されている。そして、2組の給電線108が、それぞれ、2つのバラン111を介して90度位相分配器112の一端側の2つの接点に接続されている。90度位相分配器112の他端側の接点には、ローノイズアンプ(LNA)113の第1の接点が接続されている。そして、ローノイズアンプ(LNA)113の第2の接点には、導線を介してケーブル115が接続されている。ケーブル115は同軸ケーブルであり、その端部には、内部導線に接続された信号端子116、及び、外周導体に接続されたグランド端子117が設けられている。
【0025】
第1のエレメント群は、第1の共振周波数f1(=1575MHz)で共振して円偏波を発生させるように構成された。第1のエレメント群は、コア101の外面(頂面101aおよび側面101b)上に形成され、コア101の頂面101aの中心部から第1の長さL1および幅W1で略直線状に延伸し、互いに直交配置された4本の第1エレメント103からなる。各第1エレメント103は、細長い線状の導電板(銅板)からなり、コア101外面に貼り付けられて形成された。各第1エレメント103の基端が、コア101の頂面101aの中心部に配置され、給電線108に電気的に接続される。また、各第1エレメント103は、コア101の外面に沿って頂面101aから側面101bへと折れ曲がって延伸している。そして、各第1エレメント103の先端が、コア101の側面101bの軸方向中央付近に位置している。
【0026】
第2のエレメント群は、第2の共振周波数f2(=1200MHz)で共振して円偏波を発生させるように構成された。第2のエレメント群は、コア101の外面(頂面101aおよび側面101b)上に形成され、コア101の頂面101aの中心部から第2の長さL2および幅W2で略直線状に延伸し、互いに直交配置された4本の第2エレメント104からなる。各第2エレメント104は、細長い線状の導電板(銅板)からなり、コア101外面に貼り付けられて形成された。各第2エレメント104の基端が、コア101の頂面101aの中心部に配置され、給電線108に電気的に接続される。また、各第2エレメント104は、コア101の外面に沿って頂面101aから側面101bへと折れ曲がって延伸している。そして、各第2エレメント104の先端が、コア101の側面101bの軸方向中央付近に位置している。ここで、第2エレメント104は、第1エレメント103と重合しないように、周方向に45度ずれた位置に配置されている。
【0027】
また、各第1エレメント103は、隣接する第2エレメント104の1つに中心部側の端部で連結部105を介して電気的に接続されている。そして、連結部105に隣接して、給電線108が電気的に接合される接合部106が設けられている。接合部106は、給電線108と連結部105とを半田接合された箇所である。すなわち、一対の第1エレメント103および第2エレメント104が、共通する1本の給電線108によって同時に給電され得る。これにより、本実施形態のクロスダイポールアンテナ100では、4対の第1エレメント103および第2エレメント104に給電するために4本の給電線108が配線されればよい。
【0028】
次に、第1エレメント103および第2エレメント104の長さ特性について説明する。図5は、コア101の頂面101aおよび側面101bに貼り付けられた第1エレメント103および第2エレメント104を平面上に展開した概略図である。図5に示すように、第1の長さL1は、コア101の中心から第1エレメント103の先端までの最短距離であり、第2の長さL2は、コア101の中心から第2エレメント104の先端までの最短距離である。一方で、中心からエレメント103、104の先端までの対角距離が最長距離となる。幅W1、W2を大きくすることで、最長距離も大きくなる。一般的に、4本のダイポールアンテナエレメントが空中に直交設置された場合、各エレメントは、λ/4の長さを有することが必要となる。これを本実施形態の第1および第2の共振周波数f1、f2の波長λ1、λ2に当て嵌めると、必要なエレメントの長さはそれぞれ47.5mm、62.5mmとなる。これに対し、本実施形態では、誘電率38の誘電体材料からなるコア101の表面上にエレメント103,104を形成したことにより、第1エレメント103の第1の長さL1が21.5mmに抑えられたとともに、第2エレメント104の第2の長さのL2が24mmに抑えられた。よって、第1の長さL1が、第1の波長λ1の1/8よりも小さく、第2の長さL2が、第2の波長λ2の1/8よりも小さい。すなわち、コア101表面上のエレメント103,104の長さを約50%以上短くし、クロスダイポールアンテナ100の小型化の実現が可能となる。
【0029】
上記のように構成された本実施形態のクロスダイポールアンテナ100は、1553MHz~1605MHzの第1の周波数帯域および1176MHz~1227MHzの第2の周波数帯域の両方において、所望の利得性能を有することが確認された。
【0030】
図6は、所望の利得性能を有することが確認されたクロスダイポールアンテナ100の誘電率(εr)とアンテナコア径(D1)との関係を示すグラフである。ここで、所望の利得性能は、1553MHz~1605MHzの第1の周波数帯域における利得の変化率が7%以下であり、1176MHz~1227MHzの第2の周波数帯域における利得の変化率が48%以下である条件(規格)を満たすものとする。図6によれば、周波数帯域幅および誘電体損が許容され得る誘電率が約78では、コア径D1を20mmとすることができ、より小型のクロスダイポールアンテナ100を得られることが確認できた。一方で、周波数帯域幅および誘電体損に余裕を持たせるべく、誘電率を上昇させた場合、誘電率が約21では、40mmのコア径D1が必要となり、そして、誘電率が約2では、約75mmのコア径D1が必要となることが確認された。すなわち、複数周波数に対応する周波数帯域幅を確保するために、誘電体材料の誘電率が2~78の範囲で定められた場合、アンテナサイズを示すコア径D1が20mm~75mmの範囲の小型のクロスダイポールアンテナ100が得られることが確認された。
【0031】
したがって、本発明のクロスダイポールアンテナ100は、2以上の周波数帯域に使用可能であり、かつ、より小型化した構造を有している。
【0032】
本発明は、上記実施形態に限定されず、本発明の技術的範囲の下で、種々の実施形態や変形例を取り得る。
【0033】
[変形例]
(1)本発明のクロスダイポールアンテナは、2種の使用周波数帯域に対応するように構成されたが、本発明において、N(≧3)種の使用周波数帯域に対応するように構成されてもよい。図7は、3種の使用周波数帯域に対応するように構成されたクロスダイポールアンテナの第1エレメント103、第2エレメント104および第3エレメント109を示す展開図である。すなわち、クロスダイポールアンテナは、コアの外面に形成され、コアの頂面の中心部から第3の長さL3および幅W3で略直線状に延伸し、第1エレメントおよび第2エレメントと重合しないように互いに直交配置された4本の第3エレメントで構成され、第3の共振周波数で共振する第3エレメント群をさらに備えてもよい。
【0034】
本発明は上述した実施形態や変形例に限定されるものではなく、本発明の技術的範囲に属する限りにおいて種々の態様で実施しうるものである。すなわち、本発明は、技術的範囲を逸脱することなく、当業者によって修正又は改変されてもよい。
【符号の説明】
【0035】
100 クロスダイポールアンテナ
101 コア
101a 頂面
101b 側面
101c 底部
102 反射板
103 第1エレメント
104 第2エレメント
105 連結部
106 接合部
107 芯部材
108 給電線
109 第3エレメント
111 バラン
112 位相分配器
113 ローノイズアンプ(LNA)
115 ケーブル
116 信号端子
117 グランド端子
L1 第1の長さ
L2 第2の長さ
W1 第1の幅
W2 第2の幅
D1 径(コア径)
D2 径(反射板径)
H 高さ
【要約】
【課題】複数の周波数で通信可能であり、且つ、より小型化可能な簡易な構造を有するクロスダイポールアンテナを提供する。
【解決手段】クロスダイポールアンテナ100は、誘電体材料からなるコアと、反射板と、コアの外面に形成され、第1の長さL1で延伸し、直交配置された4本の第1エレメントで構成された第1エレメント群と、コアの外面に形成され、第2の長さL2で延伸し、直交配置された4本の第2エレメントで構成され、第2の共振周波数f2で共振する第2エレメント群と、各エレメントに電力を伝送する給電線と、を備える。第1エレメントおよび第2エレメントは、それぞれコアの外面に沿って頂面から側面へと折れ曲がって延伸する。第1エレメントの第1の長さL1が、第1の共振周波数f1に対応する第1の波長λ1の1/4よりも小さく、第2エレメントの第2の長さL2が、第2の共振周波数f2に対応する第2の波長λ2の1/4よりも小さい。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7