(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-02
(45)【発行日】2022-02-10
(54)【発明の名称】心腔内において人工心臓弁装置を再配置するための再配置ワイヤおよび再配置方法、ならびに関連するシステム、装置、および方法。
(51)【国際特許分類】
A61F 2/24 20060101AFI20220203BHJP
【FI】
A61F2/24
(21)【出願番号】P 2021513773
(86)(22)【出願日】2019-09-13
(86)【国際出願番号】 US2019050978
(87)【国際公開番号】W WO2020056234
(87)【国際公開日】2020-03-19
【審査請求日】2021-05-06
(32)【優先日】2018-09-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2019-09-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】517290947
【氏名又は名称】4シー メディカル テクノロジーズ,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001612
【氏名又は名称】きさらぎ国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】ディダリング,ジェイソン エス.
(72)【発明者】
【氏名】クマール,サラヴァナ ビー.
【審査官】中村 一雄
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2008/0262592(US,A1)
【文献】特表2013-517890(JP,A)
【文献】特表2014-500071(JP,A)
【文献】特開平10-137344(JP,A)
【文献】特表2008-529719(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0127032(US,A1)
【文献】特開2014-121612(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 2/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の心腔内に折り畳み可能かつ拡張可能なステントを送達、配置、および/または再配置するためのシステムであって、前記システムは、
ループなしワイヤとループ付きワイヤとを含む少なくとも1つのループなしワイヤおよびループ付きワイヤの対と、
近位端および遠位端を有する管腔を備えた送達カテーテルと
を備え、
前記ワイヤの対の遠位端は、前記ステントの少なくとも1つの支柱
と解放可能に接続され、
前記ワイヤの対のうちの各ワイヤの近位端は、前記患者の外側に延在し、
前記ワイヤの対のうちの各ワイヤは、前記送達カテーテルの前記管腔を通って並進移動し、前記管腔内で回転するように適合されて
おり、
前記ワイヤの対のうちの各ワイヤの近位端は、操作者によって個々に移動および/または回転されるように構成されている
システム。
【請求項2】
前記少なくとも1つのループなしワイヤおよびループ付きワイヤの対は、2つの支柱間の接合部
と接続される、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記ループなしワイヤは、前記接合部の周りに巻き付いて、前記ループ付きワイヤの遠位端に形成されたループを通って延びる、請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
少なくとも3つのワイヤの対を備え、
各ワイヤの対は、他のワイヤの対から離れた位置で少なくとも1つの支柱に係合する、
請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記少なくとも1つのループなしワイヤおよびループ付きワイヤの対のうちの各ループ付きワイヤの近位端に、解放可能な
ルアーロックをさらに備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記少なくとも1つのループなしワイヤおよびループ付きワイヤの対のうちの各ループなしワイヤの近位端に、解放可能な
ルアーロックをさらに備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記少なくとも1つのループなしワイヤおよびループ付きワイヤの対のうちの各ループ付きワイヤの近位端に、解放可能な
ルアーロックをさらに備える、請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
前記各ワイヤの対のうちの前記ループ付きワイヤおよび前記ループなしワイヤは、前記解放可能な
ルアーロックがロック解除されているときには、互いに対して独立して並進移動するように適合されている、請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
前記各ワイヤの対のうちの前記ループ付きワイヤおよび前記ループなしワイヤは、前記解放可能な
ルアーロックがロックされているときには、互いに対して独立して並進移動することが防止される、請求項8に記載のシステム。
【請求項10】
前記折り畳み可能かつ拡張可能なステントは、上端および下端を備え、
前記少なくとも1つのループなしおよびループ付きワイヤの対の前記遠位端は、前記折り畳み可能かつ拡張可能なステントの下端
で接続される、
請求項1に記載のシステム。
【請求項11】
前記折り畳み可能かつ拡張可能なステントは、前記折り畳み可能かつ拡張可能なステントの外面の少なくとも一部を覆うファブリックスカートを備え、
前記少なくとも1つのループなしおよびループ付きワイヤの対のうちの前記ループなしワイヤは、前記ファブリックスカートを通って延び、前記接合部の周りに巻き付けられ、前記少なくとも1つのループなしおよびループ付きワイヤの対のうちの前記ループ付きワイヤの遠位端に形成されたループを通って延びる、
請求項10に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2019年9月12日に出願され、「REPOSITIONING WIRES AND METHODS FOR REPOSITIONING PROSTHETIC HEART VALVE DEVICES WITHIN A HEART CHAMBER AND RELATED SYSTEMS,DEVICES AND METHODS」と題された米国実用特許出願(U.S.Utility Application)第16/568903号に対する優先権を主張し、また2018年9月14日に出願され、「REPOSITIONING WIRES AND METHODS FOR REPOSITIONING PROSTHETIC HEART VALVE DEVICES WITHIN A HEART CHAMBER」と題された米国特許仮出願第62/731,230号の便益を主張する。これらの出願の全内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
連邦政府による資金提供を受けた研究開発の記載
該当せず
【0003】
参照による援用
本明細書に記載されている刊行物、特許出願および特許を含むがこれらに限定されないすべての参考文献は、各参考文献が参照により組み込まれることが具体的かつ個別に示されている場合と同一の程度および同一の効果で、参照により本明細書に組み込まれる。
【0004】
本明細書に記載される本発明は、心臓弁を送達および/または配置するための送達システム、装置、および方法に関する。
【背景技術】
【0005】
ヒトの心臓は、心臓を通る血液の順方向(順行性)の流れを助ける4つの心腔と4つの心臓弁とを備えている。心腔には、左心房、左心室、右心房、および右心室が含まれる。4つの心臓弁には、僧帽弁、三尖弁、大動脈弁、肺動脈弁が含まれる。
【0006】
僧帽弁は左心房と左心室との間に位置し、左心房への逆流を防ぐための一方向弁として機能することにより、左心房から左心室への血流の制御を助ける。同様に、三尖弁は右心房と右心室との間に位置し、一方、大動脈弁および肺動脈弁は、心臓から血液を流す動脈内に位置する半月弁である。弁はすべて一方向弁であり、順方向(順行性)の血流を可能にするように開放する弁尖を有する。正常に機能している弁尖は、逆流した血液によって加えられる圧力を受けて閉鎖し、血液が流出したばかりの心腔内への血液の逆流(逆行)を防止する。
【0007】
生来の心臓弁は、疾患、外傷、先天性奇形、および加齢を含むがこれらに限定されない様々な理由および/または状態のために機能不全であるか、または機能不全になる可能性がある。この種の状態により、弁構造が適切に開放することができなくなったり(狭窄障害)、かつ/または適切に閉鎖することができなくなったりする(逆流)可能性がある。
【0008】
僧帽弁逆流症は、僧帽弁の機能不全に起因する特定の問題である。僧帽弁逆流症は、右心房から左心房へ戻る少なくともいくらかの逆行した血流を許容する僧帽弁に起因する。この血液の逆流は、僧帽弁逆流症の長期の臨床経過中にかなり変化する、心室腔の大きさおよび形状のリモデリングを含む、一連の左心室の代償的適応および調整につながり得る体積負荷で左心室に負担をかける。
【0009】
したがって、一般に、僧帽弁などの生来の心臓弁は、部分的または完全な置換を含む、機能的修復および/または補助を必要とすることがある。そのような介入は、開心術および置換心臓弁の開心移植を含むいくつかの形態をとり得る。侵襲性が高く、患者のリスクを伴い、長期の入院だけでなく非常に痛みを伴う回復期間も必要とする処置については、例えば、米国特許第4,106,129号(Carpentier)を参照されたい。
【0010】
機能不全の心臓弁を置換するための低侵襲性の方法および装置も知られており、経皮的アクセスおよび置換弁のカテーテル促進送達(catheter-facilitated delivery)が含まれる。これらの解決策のほとんどは、当技術分野で一般に知られているステントなどの構造的支持体、または送達カテーテルからの解放時に拡張するように設計された他の形態のワイヤネットワークに取り付けられた置換心臓弁を含む。例えば、米国特許第3,657,744号(Ersek)、米国特許第5,411,552号(Andersen)を参照されたい。支持ステントの自己拡張型の変形例は、対象となる心腔または血管内において、弁を配置し、拡張した装置を適所に保持するのを助ける。この自己拡張形態はまた、よくあることだが、最初の配置の試みで装置が適切に配置されず、したがって装置を再捕捉して位置を調整する必要がある場合に問題を呈する。完全にまたは部分的にでも拡張した装置の場合のこの再捕捉プロセスは、操作者が折り畳まれた装置を送達シースまたはカテーテルに引き戻し、装置の到着位置を調整し、次いで位置調整された装置を送達シースまたはカテーテルから遠位に再展開することにより、適切な位置に再拡張できるようになる程度に、装置を再び折り畳むことを必要とする。拡張したステントまたはワイヤネットワークは、一般に、収縮力または折り畳み力にも耐える拡張状態を達成するように設計されているため、すでに拡張した装置を折り畳むことは困難である。
【0011】
上記の開心外科的アプローチに加えて、目的の弁へのアクセスを得ることは、少なくとも以下の既知のアクセス経路、すなわち、経心尖送達技術、経大腿送達技術、経心房送達技術、および経中隔送達技術のうちの1つによって、経皮的に行われる。
【0012】
一般に、当技術分野は、上述の公知のアクセス経路のうちの1つを使用して、折り畳まれた弁装置の部分的な送達を可能にするシステムおよび方法に焦点を合わせており、
この場合、装置の一端は送達シースまたはカテーテルから解放され、初期の配置のために拡張され、その後、適切な配置が行われると完全に解放され拡張される。例えば、米国特許第8,852,271号(Murray、III)、米国特許第8,747,459号(Nguyen)、米国特許8,814,931号(Wang)、米国特許9,402,720号(Richter)、米国特許8,986,372号(Murray、III)および米国特許9,277,991号(Salahieh)、ならびに米国特許出願公開第2015/0272731号(Racchini)および米国特許出願公開第2016/0235531号(Ciobanu)を参照されたい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【文献】米国特許第4,106,129号明細書
【文献】米国特許第3,657,744号明細書
【文献】米国特許第5,411,552号明細書
【文献】米国特許第8,852,271号明細書
【文献】米国特許第8,747,459号明細書
【文献】米国特許第8,814,931号明細書
【文献】米国特許第9,402,720号明細書
【文献】米国特許第8,986,372号明細書
【文献】米国特許第9,277,991号明細書
【文献】米国特許出願公開第2015/0272731号明細書
【文献】米国特許出願公開第2016/0235531号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかしながら、既知の送達システム、装置、および方法は、とりわけ、配置、再配置、および/または再捕捉の能力および効率を含む、送達手法における重大な不具合に依然として悩まされている。
【0015】
本明細書に開示されるいくつかの本発明の様々な実施形態は、とりわけ、これらの問題に対処する。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、拡張可能な人工心臓弁を患者の心腔内に送達、配置、および/または再配置するための方法、装置、およびシステムを提供する。少なくとも1つの、ループなしワイヤ(non-looped wire)およびループ付きワイヤ(looped wire)の対は、拡張した人工心臓弁フレームと動作可能に接続され、拡張した人工心臓弁フレームは、その遠位端が対象の心腔内に配置された送達カテーテル管腔内で折り畳まれる。折り畳まれた人工心臓弁フレームは、送達カテーテル管腔を通って並進移動され(translated)、送達カテーテル管腔の遠位端に入り、この遠位端から出て、そこで人工心臓弁は作動構成に拡張する。ループなしおよびループ付きワイヤの対のうちのワイヤは、拡張した人工ステントを所定の位置に配置または再配置するために近接して引っ張るか、または遠位に押すことによって操作され、次いで配置されたステントとの接続から解放され、患者から抜去される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の一実施形態の遠位端の斜視図である。
【
図3】本発明の一実施形態の近位端の側面切断図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の様々な実施形態は、図に開示されており、少なくとも以下の既知のアクセス経路、すなわち、経心尖送達技術、経大腿送達技術、経心房送達技術、および経中隔送達技術のうちの1つによって、目的の弁への経皮的アクセスを提供するためのものである。これらのアクセス経路のそれぞれは、本明細書に開示される実施形態に用いることができる。
【0019】
図1は、一組の配置/解放ワイヤおよびループの対を含む、システム100の例示的な実施形態の遠位端を示している。一組の配置/解放ワイヤおよびループの対は、送達カテーテルまたはシースの管腔内で並進移動可能かつ回転可能であり、送達カテーテルまたはシース102および送達カテーテルまたはシース102を通って画定された管腔104の遠位端から遠位方向外方に延びている。各対は、ループ付きワイヤLとループなしワイヤWとからなる。示したように、ループなしワイヤWとループ付きLワイヤとの3つの対が備えられているが、当業者には、わずか1つおよび4つ以上のワイヤの対を用いてもよいことが分かるであろう。各ループなしワイヤWは、例示的なステントの1つまたは複数の支柱の周りに通されるか、または他の場合にはそのような1つまたは複数の支柱に動作可能に接続され、さらにループ付きワイヤLの遠位端に形成されたループに通されて、好ましくは、以下でさらに議論するように、ステントセルの一部を形成する2つの支柱間の接合部で、ループなしおよびループ付きワイヤの対を形成してもよい。
【0020】
配置および再配置の観点から、ステントが心腔内に送達され拡張されたならば、ステントフレーム上の離れた位置にループなしワイヤWおよびループ付きワイヤLの対の接続を提供して、拡張するフレームまたは拡張したフレームの位置を変更する操作者の能力を最適化することが有利である。よって、第1のワイヤの対をステントフレームの一方の側に提供することができ、第2のワイヤの対をステントフレームの他方の側に提供することができる。このシステムでは、これで、操作者が、ワイヤおよび/もしくはループならびに/またはワイヤおよびループの対のうちの1つまたは複数を近位方向に引っ張ること、および/または遠位方向に押すことによって、拡張したステントフレームの位置を操作することが可能となる。第3のワイヤの対は、再配置および操作能力をさらに強化するために、例えば、拡張したステントの上部近くなど、第1のワイヤの対および第2のワイヤの対から離れた別の位置に提供され得る。これらの接続位置は単なる例示であり、当業者には、複数のそのような位置が可能であり、それらの位置のそれぞれが本発明の範囲内にあることが分かるであろう。
【0021】
図2は、相互接続されたループなしワイヤWおよびループ付きワイヤLと、セルCを形成または画定する支柱202を相互接続することによって形成されたステントフレーム201によって画定される拡張可能かつ折り畳み可能な人工僧帽弁200の拡張したステントフレーム200との接続とを含む、そのようなループなしワイヤWおよびループ付きワイヤLの対Pの1つを示している。セルCは、示したように、2つの支柱202が動作可能に係合または相互接続されている接合点Jによって形成されている。
図2の例示的な人工心臓弁では、下部外面204の一部は、ファブリックスカート206によって覆われており、関連する人工弁尖(図示せず)が取り付けられる弁支持体208は、ステントフレーム201によって画定される内部I内に配置されている。よって、例示的な人工僧帽弁は、上部領域210から下部領域212への一方向の流れを提供し、当業者には分かるように、弁尖が弁機能を行う。よって、拡張した例示的な人工僧帽弁は左心房をふさぎ、下面214は左心房内の上部環状面(upper annular surface(上部弁輪面))上に存在し、弁支持体は、弁尖を通り、弁輪へ、そして弁輪を通って左心室に通じる流路を提供する。
【0022】
この例示的な図示された場合では、接続されたワイヤの対Pを形成するワイヤおよびループの接続は、人工心臓弁の下部領域212内の下端または遠位端で行われ、示したように、2つの支柱202間の接合部Jに動作可能に係合および接続する。ファブリックスカート206が対象の支柱202およびそれらの間に形成された接合部Jを覆っているので、ループなしワイヤWおよび/またはループ付きワイヤLは、ファブリックを貫通して対象の支柱に到達し、対象の支柱と接続することができる。さらに、示したように、上記のワイヤおよびループの接続は、好ましくは、2つの支柱202の接合部Jで行われ、接合部Jの周りに巻き付いて、ファブリックスカート206の望ましくない引き裂きを生じ得る、支柱202に沿った接続の双方の望ましくない摺動を防止する。上記で論じたように、2つ以上、または複数の、ループなしおよびループ付きワイヤの対Pはまた、同一または同様の方法で、第1のループなしおよびループ付きワイヤの対Pに対して間隔を置いて接続され得る。ループなしおよびループ付きワイヤの対Pは、示したように、人工僧帽弁装置の遠位端または下端で支柱接合部Dに動作可能に接続されるので、左心房への経中隔送達では、ステント201の上部領域210が、ステントの遠位端もしくは下端または遠位領域もしくは遠位領域212の前に、最初に送達カテーテル102の管腔104を退出して左心房に入る。接続されたワイヤの対Pを使用して、下面214が左心房内の上部環状面と少なくとも部分的に係合するように、拡張したステント201を転回させて配置することができる。
【0023】
ループなしおよびループ付きの対Pは、送達カテーテル102に沿った対象の心腔への並進移動送達(translational delivery)のために人工心臓弁ステントフレーム201を送達カテーテル102の近位端および管腔104内に折り畳む前に接続され、人工心臓弁フレームの拡張は、人工心臓弁フレームが送達カテーテル102の管腔104の遠位端から解放されるときに起こることを理解されたい。よって、ループなしおよびループ付きワイヤの対Pは、送達カテーテル102の管腔104を通って延在し、遠位端が対象の心腔に到達でき、一方、操作者がワイヤの対Pにおいて接続されたループなしワイヤWおよびループ付きワイヤLの近位端を操作できるようにする長さを備え得る。さらに、いくつかの実施形態では、2本以上のループなし配置ワイヤWをループ付きワイヤWと組み合わせてもよい。他の実施形態では、2本以上のループ付きワイヤLを1本のループなしワイヤWと組み合わせてもよい。
【0024】
したがって、このシステムでは、近位端からステントの位置を操作するために、ループなしワイヤWおよびループ付きワイヤLを、プッシュワイヤおよび/またはプルワイヤとして、互いに対して移動するワイヤの対Pおよび/または互いに対して移動する個々のループなしワイヤWおよびループ付きワイヤLのいずれかとして使用して、拡張したステント201を、1つまたは複数の平面において操作することができることが当業者には分かるであろう。
【0025】
図3は、2つの再配置/解放ワイヤおよびループの対Pを示す送達装置100の例示的な近位端を示している。対Pの各ループ付きワイヤLは、対PのループなしワイヤWおよびループ付きワイヤLの一方または双方をロックまたはロック解除/解放するために用いることができるルアーロックまたは同等の装置120に接続され得る。対Pの一方または双方のワイヤL、Wをロックすると、ロックされたワイヤの相対的な位置および移動は、ロックが解除されるか、または解放されるまで固定される。操作者は、ワイヤの対Pのうちの1つまたは複数を押すことおよび/または引くことによって、すべてのロック102が係合されている場合には、ステント201の位置を操作することができる。対Pの一方または双方のワイヤL、Wのロックを解除することにより、操作者は、近位端からワイヤL、Wを押すことおよび/または引っ張ることが可能となり、したがって、ワイヤおよびループの対Pが接続された拡張するステントおよび/または拡張したステントを配置および/または再配置できるようになる。上記で論じたように、装置内には、1つ、2つ、3つ、またはそれ以上のそのようなワイヤおよびループの対Pが存在し得る。対Pの双方のワイヤL、Wのロックを解除することにより、各ワイヤL、Wの並進移動および回転、ならびに互いに対する並進移動および回転が可能になる。
【0026】
本明細書でさらに論じられるように、
図2の拡張可能かつ折り畳み可能なステントフレーム201を含む例示的な人工心臓弁200は、拡張した心臓弁の下部または遠位領域212と接続された1つまたは複数のワイヤおよびループの対Pを含み得る。次に、拡張した人工心臓弁は、送達カテーテル管腔104内でその近位端において折り畳まれ、折り畳まれた構成で患者の左心房に並進移動され、そこで解放され、
図2に示すような作動構成に拡張される。上端もしくは上部領域210、または下端もしくは遠位領域212のいずれかが最初に折り畳まれて、送達カテーテル102の管腔104内に導入され得る。ステントフレーム201が送達カテーテル102の管腔104の遠位端から出現するか、または出現し始めたときに、ワイヤの対Pを使用して、拡張するステントフレームまたは拡張したステントフレーム201の位置を操作または変更して、ステントの下面214ならびに関連する弁支持体208および人工弁尖を、生来の弁輪および僧帽弁と向きを合わせることができる。この配置は、ステント200およびそれを通る流体流路を生来の弁輪と整合させて、生来の弁輪との流体連通および生来の弁輪を通る流体連通を可能にするために、ワイヤおよびループの対P、および/または個々のループなしワイヤWおよびループ付きワイヤLを操作することによって行うことができる。さらに、人工弁装置200の初期の配置が最適でない場合には、ワイヤおよびループの対P、および/または個々のループなしワイヤWおよびループ付きワイヤLを使用して、最適な配置が得られるまで、操作および再配置を行うことができる。最適な配置が得られた時点で、ワイヤおよびループの対Pは、ステントフレーム201から切り離され、送達カテーテル管腔104を通して近位方向に抜去され得る。
【0027】
本明細書に記載の本発明およびその用途の説明は例示的なものであり、本発明の範囲を限定することを意図するものではない。様々な実施形態の特徴は、本発明の企図の範囲内において他の実施形態と組み合わせることができる。本明細書に開示される実施形態の変形および修正が可能であり、実施形態の様々な要素の実際的な代替物および均等物は、この特許文献を検討することにより当業者には理解されよう。本明細書に開示される実施形態のこれらおよび他の変形および修正は、本発明の範囲および趣旨から逸脱することなく行うことができる。