IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ジャパンパイル株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-ケーシング支持具 図1
  • 特許-ケーシング支持具 図2
  • 特許-ケーシング支持具 図3
  • 特許-ケーシング支持具 図4
  • 特許-ケーシング支持具 図5
  • 特許-ケーシング支持具 図6
  • 特許-ケーシング支持具 図7
  • 特許-ケーシング支持具 図8
  • 特許-ケーシング支持具 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-03
(45)【発行日】2022-02-14
(54)【発明の名称】ケーシング支持具
(51)【国際特許分類】
   E02D 5/34 20060101AFI20220204BHJP
   E02D 7/00 20060101ALI20220204BHJP
   E02D 13/00 20060101ALI20220204BHJP
【FI】
E02D5/34 Z
E02D7/00 Z
E02D13/00 Z
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020001496
(22)【出願日】2020-01-08
(65)【公開番号】P2021110124
(43)【公開日】2021-08-02
【審査請求日】2020-10-14
(73)【特許権者】
【識別番号】515277300
【氏名又は名称】ジャパンパイル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087712
【弁理士】
【氏名又は名称】山木 義明
(72)【発明者】
【氏名】北平 彰彦
(72)【発明者】
【氏名】吉田 高明
【審査官】柿原 巧弥
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-234535(JP,A)
【文献】特開2016-118075(JP,A)
【文献】特開2000-291362(JP,A)
【文献】国際公開第2016/159437(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 5/34
E02D 7/00
E02D 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
略鉛直に形成された略平坦な背面を有する固定部と、
前記背面に対して略垂直方向かつ前記背面と反対側に、略水平に形成された略平坦な底面を有する支持部を備え、
前記背面の略中央に、前記背面に対して略垂直方向に伸びる中心軸を有し、ケーシングチューブのジョイント部に設けられたピン孔の内径と略同一の内径の貫通孔が設けられ、
前記支持部は、略水平に設けられた板状に形成され、
前記固定部は、前記支持部の上面の長さ方向の一方の端部に接合され、前記支持部の上面から略鉛直に立設された板状に形成され、
前記背面は、前記固定部の一方の板面と前記支持部の長さ方向の一方の端面によって形成され、
前記底面は、前記支持部の底部によって形成され、
前記貫通孔は、前記固定部の板面の略中央に、前記固定部を厚さ方向に貫通するように形成された
ことを特徴とするケーシング支持具。
【請求項2】
略鉛直に形成された略平坦な背面を有する固定部と、
前記背面に対して略垂直方向かつ前記背面と反対側に、略水平に形成された略平坦な底面を有する支持部を備え、
前記背面の略中央に、前記背面に対して略垂直方向に伸びる中心軸を有し、ケーシングチューブのジョイント部に設けられたピン孔の内径と略同一の内径の貫通孔が設けられ、
前記固定部は、略鉛直に立設された板状に形成され、
前記支持部は、前記固定部の一方の板面の下端部に接合され、前記固定部の一方の板面から略水平に設けられた板状に形成され、
前記背面は、前記固定部の他方の板面によって形成され、
前記底面は、前記固定部の下端面と前記支持部の底部によって形成され、
前記貫通孔は、前記固定部の板面の略中央に、前記固定部を厚さ方向に貫通するように形成された
ことを特徴とするケーシング支持具。
【請求項3】
前記支持部と前記固定部の接合部の幅方向の両端部に補強部が設けられた
ことを特徴とする請求項又はに記載のケーシング支持具。
【請求項4】
前記補強部の間を架け渡すように吊下部が設けられた
ことを特徴とする請求項に記載のケーシング支持具。
【請求項5】
前記貫通孔の内周面の前記背面の開口部の近傍に、前記貫通孔の内周面の円周方向に沿って、前記貫通孔の内周面から前記貫通孔の中心方向へ突出する肉盛部が設けられた
ことを特徴とする請求項1からのいずれかに記載のケーシング支持具。
【請求項6】
前記貫通孔の内周面がテーパ状に形成された
ことを特徴とする請求項1からのいずれかにに記載のケーシング支持具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、場所打ち杭工法において、杭孔の表層部分に設置されたケーシングを支持するために用いられる、ケーシング支持具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
施工現場で杭を造成する場所打ち杭工法(特許文献1の図1参照)においては、杭孔の内径よりわずかに大きな外径の円筒状のケーシングを、杭孔の表層部分に嵌入するようにして設置することにより、重機の重さ、振動、地盤構成、地下水位の影響等によって作業中に杭孔の壁面が崩れないように保護していた。
【0003】
そのような孔壁の保護を必要とする場所打ち杭工法において用いられるケーシングは、中心軸の軸線方向に所定の高さ寸法を有する円筒状のケーシングチューブ(特許文献2参照)を複数用意し、これらを高さ方向に連結することにより形成されていた。
【0004】
そのようなケーシングチューブは、図8に示すように、ケーシングチューブ2の高さ方向(図8(b)中上下方向)の一方の端部(上端部)に雄ジョイント4、他方の端部(下端部)に雌ジョイント6がそれぞれ設けられており、これらの雄ジョイント4と雌ジョイント6は、雄ジョイント4の外径と雌ジョイント6の内径が略同一に形成されると共に、雄ジョイント4と雌ジョイント6のそれぞれの高さ途中部に、それらの雄ジョイント4や雌ジョイント6を半径方向に貫通する断面円形のピン孔4a,6aが、それぞれの円周方向に沿って所定の間隔をおいて複数設けられていた。
【0005】
これにより、ケーシングチューブ2は、あるケーシングチューブ2の上端部に設けられた雄ジョイント4を、別のケーシングチューブ2の下端部に設けられた雌ジョイント6に嵌合させることができるようになっていた。
【0006】
そして、嵌合されたケーシングチューブ2の雄ジョイント4と雌ジョイント6の連結部において、雄ジョイント4のピン孔4aと雌ジョイント6のピン孔6aの円周方向の位置が揃って、雄ジョイント4のピン孔4aと雌ジョイント6のピン孔6aが連通するようになっていた。
【0007】
そして、そのようにして嵌合されたケーシングチューブ2の連結部は、ロックピンと呼ばれる締結具(特許文献3の図4参照)を用いて固定されるようになっていた。
【0008】
すなわち、ロックピンナットを連結部の雄ジョイントのピン孔の内側(ケーシングチューブの中心軸側)の開口部に固定し、これと連通する雌ジョイントのピン孔の外側(ケーシングチューブの外周面側)の開口部からロックピン本体とロックピンボルトを挿入して、ロックピン本体がロックピンナットに接近するようにロックピンボルトを締め付けて固定していた。
【0009】
場所打ち杭工法においては、このようなケーシングチューブを複数用意して施工現場に搬入し、それらを高さ方向に連結しながら、パワージャッキ(ケーシングチューブの外周部分を挟み込むように保持して上下方向に圧入、引き抜きを行う装置)等を用いて、杭孔の表層部分に嵌入するようにして設置していた。
【0010】
このとき、単に、ケーシングを杭孔に嵌入して配置しただけでは、作業中にケーシングより下側の杭孔の壁面が崩れたときに、ケーシングが杭孔内に落下してしまうおそれがあり、落下したケーシングを除去するためには膨大なコストを要するため、場所打ち杭工法の施工中は、ケーシングが杭孔内に落下しないように、何らかの方法でケーシングを支持する必要があった。
【0011】
そのため、従来は、図9に示すように、H形鋼を短く切断したケーシング支持具12を複数(2つ)用意し、地表面3から突出するケーシング8の上端部の外周面にケーシング支持具12を溶接して固定し、それぞれのケーシング支持具12を、地表面3の上に設置された支持装置10(ジャーナルジャッキ等)を用いて支持することにより、ケーシング8が支持されるようになっていた。
【0012】
また、その他の方法としては、ケーシングチューブを杭孔に嵌入するために用いたパワージャッキをそのまま利用して、ケーシングの上端部をパワージャッキに保持させ続けることにより、ケーシングを支持することもあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【文献】特開平3-76923号公報
【文献】特開平10-131182号公報
【文献】特開2013-185334号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかしながら、上述したようなH形鋼を用いてケーシングを支持する方法(図9参照)では、ケーシングの外周面にH形鋼を溶接する作業は、縦向きの溶接姿勢で精度の良い溶接を行う必要があり、高度な溶接技能を有する者が作業を行う必要があるため、施工期間の長期化や施工コストの増加を招くという問題があった。
【0015】
また、ケーシングに溶接されたH形鋼は最終的には取り外す必要があり、その場合、H形鋼を取り外した後に溶接箇所を補修する作業が必要になることもあるため、一層、施工期間の長期化や施工コストの増加を招くおそれがあった。
【0016】
その一方で、上述したようなパワージャッキをそのまま利用する方法では、複数の場所で同時に作業するためには、複数のパワージャッキが必要になるため、パワージャッキの損料が大幅に増加するという問題があった。
【0017】
また、パワージャッキの構造上、ケーシングを保持するためには、地表面からケーシングの上端部がある程度の高さ寸法(1500mm程度)突出している必要があるため、その後の工程の作業の邪魔になって、施工効率の低下を招くおそれがあった。
【0018】
そこで本発明は、上記問題点に鑑みて、ケーシングに対して容易かつ短時間に取り付け、又は取り外しが可能であると共に、施工コストの低減と施工効率の向上を図ることができるケーシング支持具を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明の請求項1及び2によるケーシング支持具は、上記課題を解決するために、
略鉛直に形成された略平坦な背面を有する支持部と、
前記背面に対して略垂直方向かつ前記背面と反対側に、略水平に形成された略平坦な底面を有する固定部を備え、
前記背面の略中央に、前記背面に対して略垂直方向に伸びる中心軸を有し、ケーシングチューブのジョイント部に設けられたピン孔の内径と略同一の内径の貫通孔が設けられた ことを特徴とするものである。
【0020】
上記構成のケーシング支持具によれば、図4に示すように、ケーシング支持具22がロックピン9によってケーシングチューブ2のジョイント部(雄ジョイント4)のピン孔4aに固定されるようになっているため、高度な技能を有する者でなくとも、取り付け又は取り外しの作業を行うことができる。
【0021】
また、上記構成のケーシング支持具によれば、ケーシング支持具22を溶接せずにケーシング8に取り付けることができるため、ケーシング支持具22の取り付け又は取り外しの作業時間を大幅に短縮することができると共に、ケーシング支持具22の取り外した後に溶接箇所を補修する必要がなく、更に、取り外したケーシング支持具22を再び使用することができる。
【0022】
また、上記構成のケーシング支持具によれば、ケーシング支持具22をケーシング8に取り付けるには、地表面3からケーシング8の上端部のジョイント部(雄ジョイント4)が突出するようにケーシング8が配置されていればよいため、地表面3から突出するケーシング8の高さ寸法を小さくすることができ、それにより、施工中、地表面3から突出するケーシング8の上端部が作業の邪魔になって施工効率が低下することを防止することができる。
【0023】
また、本発明の請求項によるケーシング支持具は、
前記支持部は、略水平に設けられた板状に形成され、
前記固定部は、前記支持部の上面の長さ方向の一方の端部に接合され、前記支持部の上面から略鉛直に立設された板状に形成され、
前記背面は、前記固定部の一方の板面と前記支持部の長さ方向の一方の端面によって形成され、
前記底面は、前記支持部の底部によって形成され、
前記貫通孔は、前記固定部の板面の略中央に、前記固定部を厚さ方向に貫通するように形成された
ことを特徴とするものである。
【0024】
上記構成のケーシング支持具によれば、市販の材料を用いて低コストで製造することができるため、多数のケーシング支持具22が必要となったとしても、コストが大幅に増加することを防止することができる。
【0025】
また、上記構成のケーシング支持具によれば、ケーシング支持具の固定部や、そこに固定されるケーシングによる荷重が、ケーシング支持具の支持部の上面に垂直方向にかかるようになっているため、大きな重量であっても確実に支持することができる。
【0026】
また、本発明の請求項によるケーシング支持具は、
前記固定部は、略鉛直に立設された板状に形成され、
前記支持部は、前記固定部の一方の板面の下端部に接合され、前記固定部の側面から略
水平に設けられた板状に形成され、
前記背面は、前記固定部の他方の板面によって形成され、
前記底面は、前記固定部の下端面と前記支持部の底部によって形成され、
前記貫通孔は、前記固定部の板面の略中央に、前記固定部を厚さ方向に貫通するように
形成された
ことを特徴とするものである。
【0027】
上記構成のケーシング支持具によれば、本発明の請求項によるケーシング支持具と同様に、市販の材料を用いて低コストで製造することができるため、多数のケーシング支持具22が必要となったとしても、コストが大幅に増加することを防止することができる。
【0028】
また、上記構成のケーシング支持具によれば、ケーシング支持具の背面の形状が、固定部の板面の形状のみによって決定されるため、ケーシング支持具の背面の形状が、ケーシングの側面に沿って湾曲するような複雑な形状であっても、比較的容易に形成することができる。
【0029】
また、本発明の請求項によるケーシング支持具は、
前記支持部と前記固定部の接合部の幅方向の両端部に補強部が設けられた
ことを特徴とするものである。
【0030】
上記構成のケーシング支持具によれば、支持部24と固定部26の接合部が補強部28によって補強されることにより、ケーシング支持具22の強度が向上するため、支持部24と固定部26の板厚を薄くすることができ、ケーシング支持具22の軽量化を図ることができる。
【0031】
また、本発明の請求項によるケーシング支持具は、
前記補強部の間を架け渡すように吊下部が設けられた
ことを特徴とするものである。
【0032】
上記構成のケーシング支持具によれば、吊下部30を手で保持したり、吊下部30にクレーン等のフックを掛けて吊り上げたりして、ケーシング支持具22を移動することができるため、現場におけるケーシング支持具22の取り回しが向上し、施工効率を向上させることができる。
【0033】
また、本発明の請求項によるケーシング支持具は、
前記貫通孔の内周面の前記背面の開口部の近傍に、前記貫通孔の内周面の円周方向に沿って、前記貫通孔の内周面から前記貫通孔の中心方向へ突出する肉盛部が設けられた
ことを特徴とするものである。
【0034】
上記構成のケーシング支持具によれば、図7(b)に示すように、肉盛部26bの部分だけ貫通孔26aの内径がわずかに小さくなり、肉盛部26bの先端部及びその周辺部にロックピン本体9bの外周面が接触するようになるため、貫通孔26a内周面とロックピン本体9bの外周面との接触面積が大きくなって、ロックピン9をより強固に固定することができる。
【0035】
また、上記構成のケーシング支持具によれば、肉盛部26bを肉盛溶接により形成することにより、ケーシング8のピン孔4aやロックピン9のロックピン本体9bの形状や大きさに応じて、肉盛部26bの形状や大きさを後から調整することができる。
【0036】
また、本発明の請求項によるケーシング支持具は、
前記貫通孔の内周面がテーパ状に形成された
ことを特徴とするものである。
【0037】
上記構成のケーシング支持具によれば、貫通孔26aの内周面の全面にロックピン本体9bの外周面が接触するようになるため、貫通孔26a内周面とロックピン本体9bの外周面との接触面積が大きくなって、ロックピン9をより強固に固定することができる。
【発明の効果】
【0038】
本発明によるケーシング支持具によれば、ケーシングに対して容易かつ短時間に取り付け、又は取り外しが可能であると共に、施工コストの低減と施工効率の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
図1】本発明の一実施の形態に係るケーシング支持具22を示す斜視図である。
図2図1に示すケーシング支持具22を示す図であって、図2(a)はその正面図であり、図2(b)はその右側面図である。
図3図1に示すケーシング支持具22を示す図であって、図3(a)はその平面図であり、図3(b)は図3(a)のA-A線矢視断面図である。
図4】ケーシング支持具22をケーシング8に固定する手順を説明するための概略拡大断面図である。
図5】ケーシング支持具22を用いて、ケーシング8を支持する手順を説明するための概略断面図である。
図6】ケーシング支持具22を用いて、ケーシング8を支持する別の手順を説明するための概略断面図である。
図7】ケーシング支持具22の固定部26に設けられた貫通孔26aの内周面の、他の形態について説明するための断面図である。
図8】ケーシングチューブ2を示す図であって、図8(a)はその平面図であり、図8(b)は図8(a)のB-B線矢視断面図である。
図9】従来のケーシング支持具12を用いて、ケーシング8を支持する手順を説明するための概略側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下、本発明によるケーシング支持具を実施するための形態について、図面に基づいて具体的に説明する。
【0041】
図1ないし図5は、本発明の一実施の形態に係るケーシング支持具22について説明するために、参照する図である。なお、図8及び図9に示す従来の構成と同様の部分には、一部を除き同じ符号を付して説明するものとする。
【0042】
本実施の形態に係るケーシング支持具22は、図1に示すように、略水平に設けられた板状の支持部24と、支持部24の長さ方向の一方の端部に接合され、略鉛直に立設された板状の固定部26と、これら支持部24と固定部26の接合部の両端部に設けられた板状の2つの補強部28と、これら2つの補強部28の間を架け渡すように設けられた吊下部30を備えている。
【0043】
支持部24は、図2(b)に示すように、図中上下方向に所定の厚さ寸法T1を有し、図3(a)に示すように、その外形が、図中上下方向に所定の長さ寸法L、図中左右方向に所定の幅寸法W1を有する略長方形の板状に形成されている。
【0044】
固定部26は、図2(b)に示すように、図中左右方向に所定の厚さ寸法T2を有し、図2(a)に示すように、その外形が、図中上下方向に所定の高さ寸法H、図中左右方向に所定の幅寸法W2を有する略長方形の板状に形成され、この固定部26の幅寸法W2は支持部24の幅寸法W1と略同一に形成されている(図2(a)及び図3(a)参照)。
【0045】
そして、図2(a)に示すように、固定部26の板面の略中央には、固定部26を厚さ方向に貫通する断面円形の貫通孔26aが形成され、この貫通孔26aの内径は、ケーシングチューブのジョイント部(図8に示すケーシングチューブ2の雄ジョイント4や雌ジョイント6)に設けられたピン孔の内径と略同一に形成されている。
【0046】
そして、図2(b)に示すように、固定部26は、固定部26の高さ方向(図中上下方向)の下端部に固定部26の幅方向(図の紙面に垂直方向)に沿って形成される固定部26の下端面が、支持部24の長さ方向(図中左右方向)の一方(図中右方)の端部に支持部24の幅方向(図の紙面に垂直方向)に沿って形成される支持部24の辺部に沿って、支持部24の上面に接触するように配置されて、溶接等により、支持部24に一体的に固定されている。
【0047】
これにより、図2(b)に示すように、ケーシング支持具22には、固定部26の一方(図中右方)の板面と支持部24の長さ方向(図中左右方向)の一方(図中右方)の端面によって、略鉛直に形成された略平坦な背面22aと、支持部24の底部によって、背面22aの下端部から、背面22aに対して略垂直方向かつ背面22aと反対側に、略水平に形成された略平坦な底面22bを備え、固定部26に設けられた貫通孔26aは、背面22aに対して略垂直方向に伸びる中心軸を有し、背面22aの略中央に開口するように形成されるようになっている。
【0048】
補強部28は、図2(a)に示すように、図中左右方向に所定の厚さ寸法を有し、図2(b)に示すように、その外形が、直角を挟む2つの辺(図中右辺及び下辺)を有する略台形の板状に形成されている。
【0049】
そして、図2(a)及び図3(a)に示すように、2つの補強部28が、支持部24と固定部26の接合部を補強するように、支持部24や固定部26の幅方向の両側に設けられている。
【0050】
そして、図2(b)に示すように、それぞれの補強部28は、補強部28の直角を挟む2つの辺部に沿って形成された補強部28の端面が、支持部24の上面と固定部26の背面22aと反対側の板面にそれぞれ接触するよう配置されて、溶接等により、支持部24や固定部26に一体的に固定されている。
【0051】
吊下部30は、図2(a)に示すように、図中左右方向に所定の長さ寸法を有し、図2(b)に示すように、その断面が、略円形の丸棒状に形成され、この吊下部30の長さ寸法は、固定部26の幅方向W2の寸法と略同一に形成されている。
【0052】
そして、図2(a)及び(b)に示すように、吊下部30は、吊下部30の長さ方向の両端部の外周面が、それぞれの補強部28の固定部26と反対側の端面の上端部寄りの位置に接触するように配置されて、溶接等により、それぞれの補強部28に一体的に固定されている。
【0053】
このようなケーシング支持具22は、十分な強度を有する鋼材を用いて形成され、例えば、鋼板材を適当な形状に切断して支持部24、固定部26、補強部28を作成すると共に、棒鋼材を適当な長さに切断して吊下部30を作成し、それらの部材を溶接して接合することにより形成されるようになっている。
【0054】
次に、本実施の形態に係るケーシング支持具22を用いてケーシングを支持する手順について以下に説明する。
【0055】
まず、図8に示すケーシングチューブ2を複数連結してケーシング8を形成し、そのケーシング8を、パワージャッキ等を用いて杭孔の表層部分に嵌入し、ケーシング8の上端部が地表面3より上方に突出するように設置する。
【0056】
そして、図4に示すように、本実施の形態に係るケーシング支持具22を、ケーシング支持具22の背面22aが、ケーシング8の上端部の雄ジョイント4、すなわち、ケーシング8の最上部に連結されたケーシングチューブ2の上端部に設けられた雄ジョイント4の外周面に対向して接触し、ケーシング支持具22の固定部26に設けられた貫通孔26aが、ケーシング8の上端部の雄ジョイント4に設けられたピン孔4aと連通するように配置し、ロックピン9を用いて固定する。
【0057】
ロックピン9は、ロックピンナット9aをケーシング8の上端部の雄ジョイント4のピン孔4aの内側(ケーシング8の中心軸側)の開口部に固定し、これと連通するケーシング支持具22の貫通孔26aの背面22aと反対側の開口部からロックピン本体9bとロックピンボルト9cを挿入して、ロックピン本体9bがロックピンナット9aに接近するようにロックピンボルト9cを締め付けて固定する。
【0058】
同じ様にして、複数のケーシング支持具22を、ケーシング8の上端部の雄ジョイント4に設けられた複数のピン孔4aのうちの他のいくつかのピン孔4a(例えば、ケーシング8の中心軸を挟んで対称となるような位置のピン孔4a)に固定する。
【0059】
そして、図5に示すように、それぞれのケーシング支持具22の底面22bを、ケーシング8の周囲の地表面3に沿って接触させることにより、地表面3からの反力によって、ケーシング8が支持されるようになっている。
【0060】
このような、本実施の形態に係るケーシング支持具22を用いることにより、ケーシングに容易かつ短時間にケーシング支持具を取り付け、又は取り外すことができる。
【0061】
すなわち、ケーシング支持具22は、ロックピンによってケーシングチューブのジョイント部のピン孔に固定されるようになっているため、高度な技能を有する者でなくとも、取り付け又は取り外しの作業を行うことができる。
【0062】
そして、ケーシング支持具22を溶接せずにケーシング8に取り付けることができるため、ケーシング支持具22の取り付け又は取り外しの作業時間を大幅に短縮することができると共に、ケーシング支持具22の取り外した後に溶接箇所を補修する必要がなく、更に、取り外したケーシング支持具22を再び使用することができる。
【0063】
また、ケーシング支持具22の構造は、簡単な形状の鋼板や棒鋼を組み合わせた単純なものであるため、市販の材料を用いて低コストで製造することができ、それにより、1つのケーシングに複数のケーシング支持具22を取り付けたり、複数の場所で同時に施工したりするために、多数のケーシング支持具22が必要となったとしても、コストが大幅に増加することを防止することができる。
【0064】
また、ケーシング支持具22をケーシング8に取り付けるには、地表面3からケーシング8の上端部のジョイント部(雄ジョイント4)が突出するようにケーシング8が配置されていればよいため、地表面3から突出するケーシング8の高さ寸法を小さくすることができ、それにより、施工中、地表面3から突出するケーシング8の上端部が作業の邪魔になって施工効率が低下することを防止することができる。
【0065】
また、ケーシング支持具22は、図8に示すケーシングチューブ2の雄ジョイント4に設けられた複数のピン孔4aのうちの、いずれのピン孔4aに対しても取り付けることができるため、ケーシング8に取り付けるケーシング支持具22の取り付け位置を容易に変更することができ、それにより、ケーシング8の周囲の地表面3の状態に応じて、ケーシング支持具22を取り付けるピン孔4aを変更することができる。
【0066】
また、ケーシング8の大きさ(径や高さ寸法)から支持重量を計算して、その重量を支持するために必要かつ十分な個数のケーシング支持具22をケーシング8に取り付けることができるため、少ない数のケーシング支持具22で効率よく確実にケーシング8を支持することができる。
【0067】
したがって、このような本発明の一実施の形態に係るケーシング支持具22によれば、ケーシングに対して容易かつ短時間に取り付け、又は取り外しが可能であると共に、施工コストの低減と施工効率の向上を図ることができる。
【0068】
また、本実施の形態に係るケーシング支持具22は、支持部24と固定部26の接合部が補強部28によって補強されることにより、ケーシング支持具22の強度が向上するため、支持部24と固定部26の板厚を薄くすることができ、ケーシング支持具22の軽量化を図ることができる。
【0069】
また、本実施の形態に係るケーシング支持具22は、2つの補強部28の間を架け渡すように吊下部30が設けられたことにより、この吊下部30を手で保持したり、吊下部30にクレーン等のフックを掛けて吊り上げたりして、ケーシング支持具22を移動することができるため、現場におけるケーシング支持具22の取り回しが向上し、施工効率を向上させることができる。
【0070】
図6は、前記実施の形態に係るケーシング支持具22を用いて、ケーシング8を支持するための別の実施の形態について説明するために、参照する図である。
【0071】
本実施の形態によれば、図6に示すように、ケーシング8に固定されたケーシング支持具22の底面22bを、図9に示す従来の構成と同じように、地表面3の上に設置された支持装置10(ジャーナルジャッキ等)によって支持することにより、ケーシング8が支持されるようになっている。
【0072】
ケーシング支持具22の構成は、前記実施の形態と同様であるため、このような実施の形態であっても、ケーシングに対して容易かつ短時間に取り付け、又は取り外しが可能であると共に、施工コストの低減と施工効率の向上を図ることができる。
【0073】
そして、本実施の形態によれば、ケーシング8の周囲の地表面3の高さ位置が場所によって多少異なっていたとしても、支持装置10を調節することによって、その高さ位置の違いを吸収することができるため、ケーシング8に固定された一部のケーシング支持具22に負荷が集中することを防止することができるため、少ない数のケーシング支持具22で効率よく確実にケーシング8を支持することができる。
【0074】
なお、本発明は、前記実施の形態のみに限定されるものではなく、本発明と同一の目的を達成することができるものであれば、種々の変更が可能である。
【0075】
例えば、前記実施の形態に係るケーシング支持具22においては、支持部24は、外形が略長方形の板状に形成されているが、ケーシング支持具22に略平坦かつ略水平な底面22bが形成されていれば、支持部24はどのような形状に形成されていてもよい。
【0076】
また、前記実施の形態に係るケーシング支持具22においては、支持部24は、固定部26の下端部に設けられていたが、支持装置10を用いて支持部24の底面22bを支持した際に、固定部26の貫通孔26aやそこに挿入されたロックピン9に干渉することなくケーシング支持具22を支持することができていればよいため、例えば、固定部26の上端部に支持部24が設けられていてもよい。
【0077】
また、前記実施の形態に係るケーシング支持具22においては、固定部26は、外形が略長方形の板状に形成されているが、ケーシング支持具22に略平坦かつ略鉛直な背面22aが形成されていれば、固定部26はどのような形状に形成されていてもよい。
【0078】
また、前記実施の形態に係るケーシング支持具22においては、固定部26の背面22aは略平坦に形成されているが、背面22aの水平断面形状が、ケーシング8のジョイント部の外周面に沿うような円弧状に湾曲して形成されていてもよい。
【0079】
また、前記実施の形態に係るケーシング支持具22においては、支持部24と固定部26は、固定部26の下端面が、支持部24の上面の長さ方向の一方の端部に接触するように配置されて、溶接等により、一体的に固定されているが、ケーシング支持具22に略平坦かつ略鉛直な背面22aと略水平な底面22bが形成されていれば、支持部24と固定部26はどのように固定されていてもよく、例えば、固定部26の背面22aと反対側の板面の下端部に、支持部24の上面の長さ方向の一方の端面が接触するように配置されて、溶接等により、一体的に固定されていてもよい。
【0080】
また、前記実施の形態に係るケーシング支持具22においては、固定部26に設けられた貫通孔26aの内周面は、図3(b)に示すように、貫通孔26aの中心軸方向の一方から他方にかけて、貫通孔26aの内径が略一定の略円筒状に形成されているが、その場合、ロックピン9を用いてケーシング支持具22をケーシング8に固定した際に、図4に示すように、ケーシング支持具22の固定部26とロックピン9のロックピン本体9bのテーパ状の外周面との接触部が、貫通孔26aの背面22aと反対側の開口部の縁部の狭い範囲となってしまい、ロックピン9の固定力が低下してしまうおそれがあるため、貫通孔26a内周面の形状を、ロックピン本体9bの外周面との接触面積を大きくなるように形成して、ロックピン9をより強固に固定できるようにしてもよい。
【0081】
例えば、図7(a)に示すように、貫通孔26aの内周面の形状を、ロックピン9のロックピン本体9bのテーパ状の外周面の形状と一致するようなテーパ状に形成し、貫通孔26aの内周面の全面にロックピン本体9bの外周面が接触するようにしてもよい。
【0082】
または、図7(b)に示すように、貫通孔26aの円筒状の内周面の背面22aの開口部の近傍に、貫通孔26aの内周面の円周方向に沿って、貫通孔26aの内周面から貫通孔26aの中心方向へ突出する肉盛部26bを肉盛溶接等により設け、それにより、肉盛部26bの部分だけ貫通孔26aの内径がわずかに小さくなり、肉盛部26bの先端部及びその周辺部にロックピン本体9bの外周面が接触するようにしてもよい。
【0083】
また、前記実施の形態に係るケーシング支持具22においては、補強部28は、外形が略台形の板状に形成されているが、支持部24と固定部26の接合部を補強することができていれば、補強部28はどのような形状に形成されていてもよい。
【0084】
また、前記実施の形態に係るケーシング支持具22においては、補強部28は、支持部24と固定部26の接合部の両端部に設けられているが、支持部24と固定部26の接合部に設けられる補強部28の数は、2つより多くてもよいし少なくてもよい。また、補強部28が設けられていなくてもよい。
【符号の説明】
【0085】
2 ケーシングチューブ
3 地表面
4 雄ジョイント
4a ピン孔
6 雌ジョイント
6a ピン孔
8 ケーシング
9 ロックピン
9a ロックピンナット
9b ロックピン本体
9c ロックピンボルト
10 支持装置
12 ケーシング支持具
22 ケーシング支持具
22a 背面
22b 底面
24 支持部
26 固定部
26a 貫通孔
26b 肉盛部
28 補強部
30 吊下部
T1,T2 厚さ寸法
W1,W2 幅寸法
L 長さ寸法
H 高さ寸法
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9