(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-03
(45)【発行日】2022-02-14
(54)【発明の名称】積み重ねられたオービタルシェーカのうちのどれが不均衡であるかを判定するための積重ねオービタルシェーカ・デバイスの自動速度制御のための方法
(51)【国際特許分類】
B01F 31/00 20220101AFI20220204BHJP
【FI】
B01F11/00 B
(21)【出願番号】P 2019520630
(86)(22)【出願日】2017-10-20
(86)【国際出願番号】 EP2017076882
(87)【国際公開番号】W WO2018073428
(87)【国際公開日】2018-04-26
【審査請求日】2020-06-22
(32)【優先日】2016-10-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】501186645
【氏名又は名称】エッペンドルフ・ソシエタス・エウロパエア
【氏名又は名称原語表記】Eppendorf SE
(74)【代理人】
【識別番号】100112737
【氏名又は名称】藤田 考晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136168
【氏名又は名称】川上 美紀
(74)【代理人】
【識別番号】100196117
【氏名又は名称】河合 利恵
(72)【発明者】
【氏名】リチャード ザノーニ
【審査官】河野 隆一朗
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-168345(JP,A)
【文献】特開平07-047255(JP,A)
【文献】米国特許第04047704(US,A)
【文献】特表2014-515310(JP,A)
【文献】特開2007-237174(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0056059(US,A1)
【文献】米国特許第03430926(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01F 11/00
B01F 15/00
B01L 9/00 - 9/06
B01L 99/00
C12M 1/00 - 1/42
A01H 1/00 - 1/08
Japio-GPG/FX
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
積み重ねられた少なくとも2つのオービタルシェーカ・デバイス(10、11、12)のうちの不均衡状態で動作している1つを判定するための前記オービタルシェーカ・デバイス(10、11、12)の自動速度制御のための方法であって、
a) 第1のオービタルシェーカ・デバイス(10)を起動するステップと、
b) 前記第1のオービタルシェーカ・デバイス(10)を加速させるステップと、
c) 前記第1のオービタルシェーカ・デバイス(10)の振動レベルを判定するステップと、
d) ステップc)において判定された前記振動レベルが既定の第1の閾値を超えていた場合に前記第1のオービタルシェーカ・デバイス(10)の速度を自動的に下げるステップと、
を含み、前記ステップa)からd)が、前記第1のオービタルシェーカ・デバイス(10)とは独立して第2のオービタルシェーカ・デバイス(11)に対して追加的に実行され
、
各前記オービタルシェーカ・デバイスの速度が異なる比率で加速及び/または異なる値で低下されかつ同期しないため、各前記オービタルシェーカ・デバイスの速度はそれぞれ異なり、不均衡状態をもたらしている根源の前記オービタルシェーカ・デバイスを判定することができる方法。
【請求項2】
前記ステップa)からd)が、前記第1のオービタルシェーカ・デバイス(10)および/または前記第2のオービタルシェーカ・デバイス(11)とは独立して第3のオービタルシェーカ・デバイス(12)に対して追加的に実行される請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ステップb)において、前記第1のオービタルシェーカ・デバイス(10)および/または前記第2のオービタルシェーカ・デバイス(11)および/または第3のオービタルシェーカ・デバイス(12)が、所定範囲内で選択された無作為な比率で加速される請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
ステップd)において、前記速度が、所定範囲内で選択された無作為な値によって下げられる請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
e) ステップd)において前記速度を自動的に下げた後に前記第1のオービタルシェーカ・デバイス(10)の前記振動レベルを判定するステップと、
f) ステップe)において判定された前記振動レベルが既定の第2の閾値を超えていない場合に前記第1のオービタルシェーカ・デバイス(10)を自動的に加速させるステップと
をさらに含む請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
ステップf)において、前記第1のオービタルシェーカ・デバイス(10)および/または前記第2のオービタルシェーカ・デバイス(11)および/または前記第3のオービタルシェーカ・デバイス(12)が、所定範囲内で選択された低下された無作為な比率で加速される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
請求項6の前記低下された無作為な比率が、ステップb)における
前記第1のオービタルシェーカ・デバイス(10)および/または前記第2のオービタルシェーカ・デバイス(11)および/または第3のオービタルシェーカ・デバイス(12)の加速のために使用される
所定範囲内で選択された無作為な比率よりも常に小さく、かつ、ステップd)における
前記速度の減速のために使用される
所定範囲内で選択された無作為な値よりも小さい、請求
項6に記載の方法。
【請求項8】
ステップb)および/またはd)および/またはf)において、同一の乱数生成器および所定範囲が適用され、ステップf)のための前記低下された無作為な比率が、前記乱数生成器から得られた結果に既定の係数を乗算することによって決定される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記第1の閾値が、前記第2の閾値よりも大きい、請求項5から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
g) 前記第1のオービタルシェーカ・デバイス(10)および/または前記第2のオービタルシェーカ・デバイス(11)および/または前記第3のオービタルシェーカ・デバイス(12)がユーザによって設定された目標速度で作動しているかどうかを判定するステップをさらに含む、請求項5から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記第1のオービタルシェーカ・デバイス(10)および/または前記第2のオービタルシェーカ・デバイス(11)および/または前記第3のオービタルシェーカ・デバイス(12)が前記目標速度未満の速度で作動している場合に、ステップe)およびf)が繰り返される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
ステップe)において判定された前記振動レベルが前記既定の第2の閾値を超えていた場合に、ステップf)において、前記自動速度制御のための方法が減速状態に入り、前記第1のオービタルシェーカ・デバイス(10)および/または前記第2のオービタルシェーカ・デバイス(11)および/または前記第3のオービタルシェーカ・デバイス(12)が、前記振動レベルが前記第2の閾値を超えない間、それぞれの低下された速度で作動し続ける、請求項5から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記減速状態において、前記振動レベルが、連続的に判定されて前記第2の閾値と比較され、前記振動レベルが前記第2の閾値未満であった場合に、前記第1のオービタルシェーカ・デバイス(10)および/または前記第2のオービタルシェーカ・デバイス(11)および/または前記第3のオービタルシェーカ・デバイス(12)の前記速度が、自動的に高められる、
請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記減速状態において、前記振動レベルが、連続的に判定されて前記第1の閾値と比較され、前記振動レベルが前記第1の閾値を超えていた場合に、前記第1のオービタルシェーカ・デバイス(10)および/または前記第2のオービタルシェーカ・デバイス(11)および/または前記第3のオービタルシェーカ・デバイス(12)の前記速度が、自動的に下げられる、請求項12または13に記載の方法。
【請求項15】
オービタルシェーカ・デバイス(10、11、12)であって、該オービタルシェーカ・デバイス(10、11、12)の振動レベルを判定するための加速度計(13)を備え、請求項1から14のいずれか一項に記載の方法による自動速度制御のための速度制御ユニット(14)をさらに備え、前記加速度計(13)が、前記速度制御ユニット(14)と電気
的に通信している、オービタルシェーカ・デバイス(10、11、12)。
【請求項16】
多積層オービタルシェーカ組立体(100)であって、請求項15に記載のオービタルシェーカ・デバイス(10、11、12)を積重ね構成で少なくとも2つ備え、各オービタルシェーカ・デバイス(10、11、12)が、前記自動速度制御のための方法のステップを各オービタルシェーカ・デバイス(10、11、12)上で独立して実行するために、別個の加速度計(13)および別個の速度制御ユニット(14)を備える、多積層オービタルシェーカ組立体(100)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積み重ねられた少なくとも2つのオービタルシェーカ・デバイスのうちの不均衡状態で動作している1つを判定するための、オービタルシェーカ・デバイスの自動速度制御のための方法に関する。
【0002】
本発明は、さらにオービタルシェーカ・デバイスの振動レベルを判定するための加速度計を備えるオービタルシェーカ・デバイスに関し、このオービタルシェーカ・デバイスは、積み重ねられた少なくとも2つのオービタルシェーカ・デバイスのうちの不均衡状態で動作している1つを判定するために、自動速度制御のための速度制御ユニットをさらに備える。
【0003】
さらに、本発明は、少なくとも2つのオービタルシェーカ・デバイスを積重ねた構成で備える多積層オービタルシェーカ組立体に関し、各オービタルシェーカ・デバイスは、不均衡状態にあるオービタルシェーカ・デバイスを判定するための自動速度制御のための方法を実行するために、別個の加速度計および別個の速度制御ユニットを備える。
【背景技術】
【0004】
オービタルシェーカ・デバイスは、台上で様々な液体を保持するビーカおよびフラスコなどの混合容器または攪拌容器のために特に科学的用途で使用される、混合デバイスまたは攪拌デバイスである。特に、オービタルシェーカ・デバイスは、x-y面における台の上面上の全ての点が、共通の半径を有する円形経路で移動するように、台を平行移動させる。一般に、ビーカ、フラスコ、および他の容器は、混合を強めかつ液体と局所的な気体環境との間の相互作用または交換を強めるために、その中に収容された液体が容器の内部側壁のまわりで旋回されるように台の上面に取り付けられる。
【0005】
動作にあたって、全軌道回転質量(total orbitally-rotating mass)から生じる力は、オービタルシェーカ・デバイスの基部の望ましくない運動をもたらすことが多く、それにより、追加の運動成分が液体および容器に加えられて、望ましくない乱流またはしぶきが引き起こされ得る。
【0006】
この望ましくない運動を減少させるために、オービタルシェーカ装置の非回転支持構造の質量は、回転質量によって生じる力に抵抗するように増大されなければならない。これは、振動に対処するためだけにシェーカ・デバイスの全重量を増加させるという望ましくない効果をもたらす。あるいは、軌道回転質量から生じる力に対向するかまたはその力を相殺するために、釣り合い重りが用いられてきた。
【0007】
釣り合い重りと台上のフラスコまたは他の容器の荷重との間の静的不釣り合いによって一般に生じる不安定性を軽減するための装置を含むオービタルシェーカ・デバイスが開示されている(例えば、特許文献1参照)。さらに、特許文献1は、オービタルシェーカ装置の軌道直径を変化させるための装置に関する。
【0008】
多積層オービタルシェーカ組立体では、個々のオービタルシェーカ・デバイスの構造は、機械的に接続される。したがって、1つのオービタルシェーカ・デバイスの不均衡状態が、多積層組立体内の他のオービタルシェーカ・デバイスの振動を引き起こす。この状況は、積重ね内の釣り合いのとれたオービタルシェーカ・デバイスにおける振動閾値の構成成分トリッピング(constituent tripping)をもたらし得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【発明の概要】
【0010】
本発明は、オービタルシェーカ・デバイスのうちの1つへの手作業でのいかなる相互作用も必要とせずに、積み重ねられた少なくとも2つのオービタルシェーカ・デバイスのうちの不均衡状態で動作している1つを判定するための、オービタルシェーカ・デバイスの自動速度制御のための方法を提案する。
【0011】
したがって、本発明は、積み重ねられた少なくとも2つのオービタルシェーカ・デバイスのうちの不均衡状態で動作している1つを判定するためのオービタルシェーカ・デバイスの自動速度制御のための方法を提案し、この方法は、
a) 第1のオービタルシェーカ・デバイスを起動するステップと、
b) 第1のオービタルシェーカ・デバイスを加速させるステップと、
c) 第1のオービタルシェーカ・デバイスの振動レベルを判定するステップと、
d) ステップc)において判定された振動レベルが既定の第1の閾値を超えていた場合に第1のオービタルシェーカ・デバイスの速度を自動的に下げるステップと、
を含む。
【0012】
本発明によれば、ステップa)からd)は、第1のオービタルシェーカ・デバイスとは独立して少なくとも第2のオービタルシェーカ・デバイスに対して追加的に実行される。
【0013】
本発明は、オービタルシェーカ・デバイスの振動レベルを判定するための加速度計を備えるオービタルシェーカ・デバイスをさらに提案し、このオービタルシェーカ・デバイスは、積み重ねられた少なくとも2つのオービタルシェーカ・デバイスのうちの1つを判定するための方法による自動速度制御のための速度制御ユニットをさらに備える。
【0014】
本発明は、積重ね構成で配置された少なくとも2つのオービタルシェーカ・デバイスを備える多積層オービタルシェーカ組立体をさらに提案し、この多積層オービタルシェーカ組立体では、各オービタルシェーカ・デバイスは、不均衡状態で動作している多積層組立体の1つのオービタルシェーカ・デバイスを判定するための自動速度制御のための方法を実行するために、別個の加速度計および別個の速度制御ユニットを備える。
【0015】
以下、本発明の好ましい実施形態に基づいて、本発明が説明される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図2】3つのオービタルシェーカ・デバイスを積み重ねた多積層オービタルシェーカ組立体の図である。
【
図3】積み重ねられた少なくとも2つのオービタルシェーカ・デバイスのうちの1つを判定するための自動速度制御のための方法の基本的方法ステップを含む流れ図である。
【
図4】積み重ねられた少なくとも2つのオービタルシェーカ・デバイスのうちの1つを判定するための好ましい自動速度制御のための方法の流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
自動速度制御のための方法の全ての方法ステップは、積重ね関係で配置された異なるオービタルシェーカ・デバイス上で同時にまた特に各オービタルシェーカ・デバイス上で互いに独立して実行され得る。例えば、ステップb)では、オービタルシェーカ・デバイスは、必ずしも同じペースで加速されない。さらに、ステップd)では、速度は、必ずしも各オービタルシェーカ・デバイスにおいて同じペースで低下されない。
【0018】
多積層オービタルシェーカ組立体では、複数のオービタルシェーカ・デバイスが、積重ね構成で配置される。したがって、互いに積み重ねられたオービタルシェーカ・デバイスは、互いに機械的に接続される。1つのオービタルシェーカ・デバイスの振動が、他のオービタルシェーカ・デバイスの振動を引き起こし、また、他のオービタルシェーカ・デバイスの振動に影響を与える。1つのオービタルシェーカ・デバイスの不均衡状態が、他のオービタルシェーカ・デバイスの振動を引き起こす。したがって、不均衡状態で動作している根源のオービタルシェーカ・デバイスを判定するのは、困難である。通常、ユーザは、不均衡状態をもたらしている根源のオービタルシェーカ・デバイスを判定するために、オービタルシェーカ・デバイスを手作業で順々にオフにしなければならないはずである。あるいは、ユーザは、不均衡状態をもたらしている根源のオービタルシェーカ・デバイスを特定しようとして、個々のオービタルシェーカ・デバイスの目標速度を手作業で順番に下げることもあり得る。
【0019】
しかし、本発明は、ユーザの相互作用を少しも必要とせずに不均衡状態をもたらしている根源のオービタルシェーカ・デバイスを判定するための、多積層シェーカ組立体の個々のオービタルシェーカ・デバイス上で実行することができる速度制御のための方法を提案する。ユーザは、オービタルシェーカ・デバイスをオフにする必要がない。さらに、ユーザは、不均衡状態をもたらしている根源のオービタルシェーカ・デバイスを判定するために、任意のオービタルシェーカ・デバイスの目標速度を手作業で変更するまたは下げる必要がない。したがって、本発明は、ユーザの干渉を必要とせずに、積重ねシェーカ組立体の円滑な作動を可能にする。
【0020】
これは、ステップb)において、あるオービタルシェーカ・デバイスの速度を積重ねのうちの別のオービタルシェーカ・デバイスの加速とは独立して自動的に高めることによって達せられる。次のステップにおいて、オービタルシェーカ・デバイスの振動レベルが、互いに独立して判定される。それぞれのオービタルシェーカ・デバイスの振動レベルは、加速度計を使用して判定される。したがって、各オービタルシェーカ・デバイスは、別個の加速度計を備え得る。振動レベルを検出する方法自体は、一般に知られた技法に基づき得る。より具体的には、加速度データは、時間領域で抽出され得る。次に、この時間抽出された(time sampled)データは、角度領域にマッピングされ得る。例えば、時間抽出されたデータは、駆動輪角度抽出された(drive wheel angle sampled)加速度データにマッピングされ得る。その後で、角度抽出されたデータは、フーリエ変換を適用することにより、周波数領域にマッピングされ得る。最後に、周波数領域から、360°の周期を持つ成分が選択されて、振動レベルを生成するために平均化され得る。
【0021】
ステップc)において判定された振動レベルが所定の第1の閾値を超えていた場合、ステップd)において、オービタルシェーカ・デバイスの速度が自動的に下げられる。同じことが、積重ねのうちの任意の他のオービタルシェーカ・デバイスにも同時にかつ第1のオービタルシェーカ・デバイスとは独立して起こる。特に、各オービタルシェーカ・デバイスの速度は、異なる値で下げられ得る。したがって、積重ね内のオービタルシェーカ・デバイスの速度は、同じペースで、相違してかつ同期せずに下げられる。それにより、不均衡状態をもたらしている根源のオービタルシェーカ・デバイスを判定することができる状態がもたらされる。
【0022】
自動速度制御のための方法のステップa)からd)は、第1のオービタルシェーカ・デバイスおよび/または第2のオービタルシェーカ・デバイスとは独立して第3のオービタルシェーカ・デバイス上で追加的に実行され得る。全ての方法ステップは、積重ね関係で配置された各オービタルシェーカ・デバイス上で独立して実行され得る。特に、異なるオービタルシェーカ・デバイス間には、電気的かつ/または論理的な通信が存在しない。方法は、各オービタルシェーカ・デバイス上で独立して実施される。
【0023】
ステップb)において、第1のオービタルシェーカ・デバイスおよび/または第2のオービタルシェーカ・デバイスおよび/または第3のオービタルシェーカ・デバイスは、所定範囲内で選択された無作為な比率で加速される。全てのシェーカは、互いに独立して無作為な比率で加速され得る。これは、全てのオービタルシェーカ・デバイスが、異なる比率で、したがって同期せずに加速され得ることを意味する。無作為な比率を決定するために、乱数生成器が使用され得る。毎回、オービタルシェーカ・デバイスを加速させるために無作為な比率が必要とされ、この無作為な比率は、乱数生成器によって決定される。方法ステップは各オービタルシェーカ・デバイス上で独立して実行されるので、対象のオービタルシェーカ・デバイスを加速させるための無作為な比率は、加速のための異なる無作為な値を別々にもたらす各オービタルシェーカ・デバイス上での方法によって決定される。所定範囲は、10から100RPMの間とされ得る。所定範囲は、20から80RPMの間とされ得ることが、より好ましい。所定範囲は、25から75RPMの間とされることが、さらに好ましい。
【0024】
ステップb)において、速度は、所定範囲内で選択された無作為な値によって低下され得る。速度を低下させるための無作為な値を生成するために、ステップb)において加速のために使用されたのと同じ乱数生成器が使用され得る。積重ね構成で配置された全てのシェーカの速度は、互いに独立して無作為な値によって低下され、結果的に異なる無作為な値がもたらされる。ステップd)において速度を低下させるための無作為な値の所定範囲は、ステップb)においてオービタルシェーカ・デバイスを加速させるために使用されたのと同じ所定範囲とされ得る。
【0025】
自動速度制御のための方法は、
e)ステップd)において速度を自動的に下げた後に、第1のオービタルシェーカ・デバイスの振動レベルを判定するステップと、
f)ステップe)において判定された振動レベルが既定の第2の閾値を超えていなかった場合に、第1のオービタルシェーカ・デバイスを自動的に加速させるステップと、
をさらに含み得る。
【0026】
ステップb)における加速中に振動が第1の閾値の限界を超えた場合、速度は、ステップd)において自動的に低下される。ステップe)において再び測定された振動レベルが依然として第2の閾値の限界未満であった場合、対象のオービタルシェーカ・デバイスは、ステップf)において再び加速され得る。ステップe)およびf)は、第2および第3のオービタルシェーカ・デバイス上で、同時にかつ互いに独立して実行され得る。
【0027】
対象のオービタルシェーカ・デバイスは、ステップf)において、所定範囲内で選択された低下された無作為な比率で加速され得る。したがって、ステップb)における加速およびステップd)における減速のために使用されたのと同じ所定範囲が使用され得る。さらに、ステップf)において対象のオービタルシェーカ・デバイスを加速させるために使用される低下された無作為な比率は、ステップb)において加速のために使用された無作為な比率よりも小さく、かつ、d)において速度を低下させるために使用された無作為な値よりも小さい。
【0028】
さらに、ステップf)において対象のオービタルシェーカ・デバイスを加速させるために使用される低下された無作為な比率は、ステップb)における加速のための無作為な比率よりも常に小さくてもよく、かつ、ステップd)において速度を低下させるために使用される無作為な値よりも常に小さくてもよい。ステップf)において使用される低下された無作為な比率が、ステップb)において使用される低下された無作為な比率、およびステップd)において使用される低下された無作為な値よりも常に小さいことを確実にするために、同一の所定範囲がステップb)、d)、およびf)の全てで使用されてもよく、この場合、低下された無作為な比率は、乱数生成器から得られた結果に既定の係数を乗算することによって決定される。係数は、得られる低下された無作為な比率が、ステップb)において使用される無作為な比率、およびステップd)において使用される無作為な値よりも常に小さくなることを確実にするように、選択され得る。例えば、既定の係数は、0.3未満とされ得る。既定の係数は、0.25よりも小さいことが好ましい。既定の係数は、約0.2であることがさらに好ましい。
【0029】
第1の閾値は、第2の閾値よりも大きくてよい。例えば、第1の閾値は、0.04から0.05gRMSの間とされ得る。第1の閾値は、約0.045gRMSであることがさらに好ましい。第2の閾値は、0.03から0.04gRMSの間とされ得る。第2の閾値は、約0.035gRMSであることがさらに好ましい。
【0030】
この方法は、
g)第1のオービタルシェーカ・デバイスおよび/または第2のオービタルシェーカ・デバイスおよび/または第3のオービタルシェーカ・デバイスがユーザによって設定された目標速度で作動しているかどうかを判定するステップをさらに含み得る。以下、目標速度は、設定値とも呼ばれる。対象のオービタルシェーカ・デバイスがユーザによって設定された目標速度に達した場合、ステップc)が繰り返され得る。これは、いったん対象のオービタルシェーカ・デバイスがユーザによって設定された目標速度通りに作動すると、振動レベルが第1の閾値を超えない限り、速度が自動的に変更されることはないことを意味する。
【0031】
ステップe)およびf)は、第1のオービタルシェーカ・デバイスおよび/または第2のオービタルシェーカ・デバイスおよび/または第3のオービタルシェーカ・デバイスが目標速度未満の速度で作動している場合、繰り返され得る。
【0032】
自動速度制御のための方法は、ステップe)において判定された振動レベルが既定の第2の閾値を超えていた場合、ステップf)において減速状態に入り、この状態では、第1のオービタルシェーカ・デバイスおよび/または第2のオービタルシェーカ・デバイスおよび/または第3のオービタルシェーカ・デバイスは、振動レベルが第2の閾値を超えない間、それぞれの低下された速度で作動し続ける。低下された速度は、第2の閾値を超えることのない安全速度または最大可能速度と考えられる。
【0033】
ステップd)またはステップf)において速度が低下されたが、振動レベルが依然として第2の閾値を超えている場合、対象のオービタルシェーカ・デバイスは、不均衡状態で動作していた根源のオービタルシェーカ・デバイスとして判定される。対象のオービタルシェーカ・デバイス、または対象のオービタルシェーカ・デバイス上で実施中の方法は、ユーザがオービタルシェーカ・デバイスを止めるか、または目標速度を第2の閾値によって課せられた速度限界よりも低下させるまで、減速状態のままでいることになる。
【0034】
振動レベルは、減速状態において連続的に判定して第2の閾値と比較することができ、振動レベルが第2の閾値未満であるか第2の閾値よりも下がっていた場合、第1のオービタルシェーカ・デバイスおよび/または第2のオービタルシェーカ・デバイスおよび/または第3のオービタルシェーカ・デバイスの速度は自動的に高められる。これは、低下された速度を、不均衡状態で動作していた対象のオービタルシェーカ・デバイスの最大可能速度に維持することを確実にする。それぞれのオービタルシェーカ・デバイスの速度は、振動レベルが第2の閾値未満であるか第2の閾値よりも下がっていた場合、所定範囲内で選択された無作為な比率によって自動的に高められ得る。
【0035】
さらに、減速状態では、振動レベルを連続的に判定して第1の閾値と比較することができ、振動レベルが第1の閾値を超えていた場合、対象のオービタルシェーカ・デバイスの速度は自動的に下げられる。これは、対象のオービタルシェーカ・デバイスが不均衡状態で再び動作するのを避けるために、振動レベルが第1の閾値を再び超えないことを確実にする。振動レベルが第1の閾値を超えていた場合、それぞれのオービタルシェーカ・デバイスの速度は、低下された無作為な比率によって自動的に下げられ得る。
【0036】
本発明の好ましい実施形態
図1は、オービタルシェーカ・デバイス10、11、12の回転台15上の容器20を含む、オービタルシェーカ・デバイスの簡易化した構造を示す。オービタルシェーカ・デバイス10、11、12は、対象のオービタルシェーカ・デバイス10、11、12の振動レベルを判定するために、加速装置センサなどの加速度計13を備える。加速度計13は、原則的な3つの方向X、Y、Zにおける静的および動的な不釣り合いに敏感である。さらに、オービタルシェーカ・デバイス10、11、12は、既定の自動速度制御のための方法による自動速度制御のための速度制御ユニット14を備える。加速度計13は、速度制御ユニット14と電気的かつ/または論理的に通信している。
【0037】
図2は、積み重ねられた3つのオービタルシェーカ・デバイス10、11、12で構成されている多積層オービタルシェーカ組立体100の主たる構成を示す。各オービタルシェーカ・デバイス10、11、12は、別個の加速度計13および別個の速度制御ユニット14を備える。これは、不均衡状態で動作している根源のオービタルシェーカ・デバイス10、11、12を判定するために、自動速度制御のための方法が各オービタルシェーカ・デバイス10、11、12上で独立してかつ同時に実行され得ることを可能にする。
【0038】
図3は、オービタルシェーカ・デバイス10、11、12上で実行される自動速度制御のための基本的な方法ステップの簡易化したフローチャートを示す。基本的方法は、
オービタルシェーカ・デバイス10、11、12を起動するステップaと、
オービタルシェーカ・デバイス10、11、12を加速させるステップbと、
対象のオービタルシェーカ・デバイス10、11、12の振動レベルを判定するステップcと、
ステップc)において判定された振動レベルが既定の第1の閾値を超えていた場合に対象のオービタルシェーカ・デバイス10、11、12の速度を自動的に下げるステップdと、
を含む。
【0039】
これらの方法ステップa)からd)を含む上記の方法は、オービタルシェーカ・デバイス10、11、12のそれぞれにおいて独立して実行される。
【0040】
図4は、好ましい自動速度制御のための方法のステップを含むフローチャートを示す。
図3におけるように、
図4に示されたこの方法は、オービタルシェーカ・デバイス10、11、12のそれぞれにおいて独立して実行され得る。
図4のフローチャートに示された好ましい方法は、
オービタルシェーカ・デバイス10、11、12を起動するステップaと、
既定範囲内で選択された無作為な比率で対象のオービタルシェーカ・デバイス10、11、12を加速させるステップbと、
対象のオービタルシェーカ・デバイス10、11、12の振動レベルを判定し、この判定された振動レベルを第1の閾値と比較するステップcと、
ステップc)において判定された振動レベルが既定の第1の閾値を超えていた場合に対象のオービタルシェーカ・デバイス10、11、12の速度を自動的に下げ、速度が、所定範囲内で選択された無作為な値によって自動的に下げられるステップdと、
対象のオービタルシェーカ・デバイス10、11、12の振動レベルを判定し、判定された振動レベルを第2の閾値と比較するステップeと、
所定範囲内で選択された低下された無作為な比率で対象のオービタルシェーカ・デバイス10、11、12を自動的に加速させるステップfと、
対象のオービタルシェーカ・デバイス10、11、12の速度を判定し、この判定された速度を、目標速度と、言い換えればユーザによって設定された設定値と比較するステップgと、
を含む。
【0041】
対象のオービタルシェーカ・デバイス10、11、12の速度が目標速度に達していた場合、振動レベルを判定するステップe)は繰り返される。
【0042】
ステップd)における減速および/またはステップf)における加速の後に、対象のオービタルシェーカ・デバイス10、11、12の判定された振動レベルが依然として第2の閾値を上回る場合、方法は、減速状態(RS状態)に入る。減速状態(RS状態)では、対象のオービタルシェーカ・デバイス10、11、12は、もともと不均衡状態で動作していた根源のオービタルシェーカ・デバイスとして認識される。減速状態(RS状態)では、対象のオービタルシェーカ・デバイス10、11、12は、第2の閾値によって設定された振動レベルを超えない最大可能速度で作動し続ける。方法は、ユーザが対象のオービタルシェーカ・デバイス10、11、12を停止させるかまたは対象のオービタルシェーカ・デバイス10、11、12のための目標速度を第2の閾値によって課せられた速度限界未満に低下させるまで、対象のオービタルシェーカ・デバイス10、11、12に対してこの減速状態(RS状態)を続ける。減速状態(RS状態)において、振動レベルは、連続的に判定されて、第1の閾値および第2の閾値と比較される。いったん振動レベルが第2の閾値よりも下がると、対象のオービタルシェーカ・デバイス10、11、12に対して速度が高められる。振動レベルが第1の閾値を超えると、対象のオービタルシェーカ・デバイス10、11、12に対して速度が自動的に低下される。
【符号の説明】
【0043】
100 多積層オービタルシェーカ組立体
10 第1のオービタルシェーカ・デバイス
11 第2のオービタルシェーカ・デバイス
12 第3のオービタルシェーカ・デバイス
13 加速度計
14 速度制御ユニット
15 台
20 容器
RS状態 減速状態
ステップa) オービタルシェーカ・デバイスを起動する
ステップb) オービタルシェーカ・デバイスを加速させる
ステップc) オービタルシェーカ・デバイスの振動レベルを判定する
ステップd) オービタルシェーカ・デバイスの速度を自動的に下げる
ステップe) オービタルシェーカ・デバイスの振動レベルを判定する
ステップf) オービタルシェーカ・デバイスを自動的に加速させる
ステップg) オービタルシェーカ・デバイスが目標速度で作動しているかどうかを判定する