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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-03
(45)【発行日】2022-02-14
(54)【発明の名称】梁開孔補強構造
(51)【国際特許分類】
   E04C 3/20 20060101AFI20220204BHJP
【FI】
E04C3/20
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2017203603
(22)【出願日】2017-10-20
(65)【公開番号】P2019078008
(43)【公開日】2019-05-23
【審査請求日】2020-08-27
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 2017年度大会(中国)学術講演梗概集・建築デザイン発表梗概集 DVD(発行日:平成29年7月20日)
(73)【特許権者】
【識別番号】390036515
【氏名又は名称】株式会社鴻池組
(73)【特許権者】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000148346
【氏名又は名称】株式会社錢高組
(73)【特許権者】
【識別番号】303056368
【氏名又は名称】東急建設株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】596117821
【氏名又は名称】コーリョー建販株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100129425
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 護晃
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100096769
【弁理士】
【氏名又は名称】有原 幸一
(74)【代理人】
【識別番号】100107319
【弁理士】
【氏名又は名称】松島 鉄男
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 聡二
(74)【代理人】
【識別番号】100166268
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 祐
(74)【代理人】
【識別番号】100168642
【弁理士】
【氏名又は名称】関谷 充司
(74)【代理人】
【識別番号】100170379
【弁理士】
【氏名又は名称】徳本 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100180231
【弁理士】
【氏名又は名称】水島 亜希子
(74)【代理人】
【識別番号】100118692
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 菜穂恵
(74)【代理人】
【識別番号】100087505
【弁理士】
【氏名又は名称】西山 春之
(72)【発明者】
【氏名】村上 秀夫
(72)【発明者】
【氏名】木村 匠
(72)【発明者】
【氏名】五十嵐 治人
(72)【発明者】
【氏名】白都 滋
(72)【発明者】
【氏名】大田 真司
【審査官】新井 夕起子
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-087504(JP,A)
【文献】特開2016-008460(JP,A)
【文献】特開2016-160721(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第103590535(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04C 5/18
E04C 3/20
E04G 21/12
E02D 27/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建造物の水平方向に沿って配置される鉄筋コンクリートの梁に、その幅方向に貫通すると共に円形状又は多角形状の横断面を有する開孔を形成して、前記梁の開孔周辺部を補強するように構成される梁開孔補強構造であって、
前記梁の長手方向に延びる複数の主筋と、
前記開孔を囲むように配置される開孔補強部材と、
前記長手方向に直線状に延び、かつ前記開孔に対して上側及び下側にそれぞれ配置される上側及び下側の水平補強筋と、
前記上側の水平補強筋を囲み、かつ前記開孔に対して上側に配置される上側の開口補強筋と、
前記下側の水平補強筋を囲み、かつ前記開孔に対して下側に配置される下側の開口補強筋と、
前記複数の主筋を囲み、かつ前記開孔に対して前記長手方向の左右両側にそれぞれ配置される左外側及び右外側の孔際補強筋と、
前記複数の主筋を囲み、かつ前記左外側及び右外側の孔際補強筋に対してそれぞれ前記長手方向にて前記開孔から離れる側に配置される左外側及び右外側のせん断補強筋と
を備え、
前記梁の高さが前記開孔の直径に対して2.5倍以上かつ3倍未満であり、
各種水平補強筋が、前記長手方向にて前記開孔に合わせて配置される中央部と、該中央部に対して前記長手方向の両側にそれぞれ配置される両端部とを有し、
各種水平補強筋の両端部が定着であり、
各種水平補強筋の長さをLとし、前記開孔の横断面の直径をDとし、各種水平補強筋の鉄筋径をdとし、所定の係数をαとし、かつ各種水平補強筋の長さが、
L = D+2×α×d ・・・(式1)
に基づいて定められ、
Dが500mm~750mmであり、
dが各種孔際補強筋の鉄筋径以上かつ前記主筋の鉄筋径以下であり、
αが14.4~21になっている、梁開孔補強構造。
【請求項2】
前記開孔補強部材が、前記梁の幅方向に間隔を空けるように2つ以上設けられ、
各種水平補強筋が、前記幅方向に互いに間隔を空けるように2つ以上設けられ、
各種開口補強筋が、前記長手方向に互いに間隔を空けるように2つ以上設けられ、
各種孔際補強筋が、前記長手方向にて所定のピッチ間隔を空けるように3つ以上設けられ、
各種せん断補強筋が、前記長手方向にて所定のピッチ間隔を空けるように複数設けられ、
各種孔際補強筋のピッチ間隔が各種せん断補強筋のピッチ間隔よりも小さくなっている、請求項1に記載の梁開孔補強構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建造物における鉄筋コンクリートの梁の開孔周辺部を補強する梁開孔補強構造に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄筋コンクリート造の建造物等には、水平方向に沿って延びる鉄筋コンクリートの基礎梁が設けられる。この基礎梁には、設備配管の保守、点検等のために人が通り抜けることができるように基礎梁の幅方向に貫通すると共に円形の横断面を有する開孔が形成されることがあり、開孔は人、機材等が通り抜けできるような大きさを有することが求められることがある。このような開孔は「人通孔」と呼ばれる。
【0003】
しかしながら、開孔を基礎梁に形成した場合、基礎梁の強度が低下し、特に、基礎梁のせん断終局強度が低下する。また、基礎梁の開孔周辺部には、応力集中によってヒビ割れが発生し易くなる。そのため、基礎梁の強度を十分に確保すべく、開孔の直径は基礎梁の高さ、すなわち、梁せいに対して1/3以下とすることが望ましいとされており、言い換えれば、梁せいは開孔の直径に対して3倍以上とすることが望ましいとされている。また、基礎梁の開孔周辺部を補強するために、基礎梁の内部における開孔の周囲に補強筋が設置されることがある。(例えば、非特許文献1を参照。)
【0004】
例えば、補強筋としては、基礎梁の長手方向に沿って直線状に延びると共に開孔に対して上側及び下側のそれぞれに配置される(フックなし型の)水平補強筋が挙げられる。このような水平補強筋において、基礎梁の長手方向にて開孔に合わせて配置される中央部の長手方向両端から長手方向両側にそれぞれ延びる両端部は、定着(いわゆる、直線定着)となっている。
【0005】
一般的に、このような条件下における定着の長さは、定着に用いられる補強筋の鉄筋径に対して35倍以上確保することが望ましいとされている。(例えば、非特許文献2を参照。)そのため、水平補強筋の各端部の長さは、その鉄筋径に対して35倍以上確保することが望ましいとされている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【文献】鉄筋コンクリート構造計算規準・同解説、第8版、社団法人 日本建築学会、1971年 5月20日、第354頁~第355頁
【文献】国土交通省大臣官房官庁営繕部、公共工事標準仕様書(建築工事編) 平成28年版、平成28年 3月31日、第28頁~第29頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述のような基礎梁において、開孔の大きさを、人、機材等が通り抜けできるように確保し、かつ梁せいを開孔の直径に対して3倍以上とする条件においては、梁せいが、構造計算に基づいて定まる断面寸法ではなく、開孔の直径に基づいて定められる。この場合、梁せいが部分的な開孔のために増加することとなるので、基礎梁が大型化する。このことは、建造物の工事コストの増加につながるので、好ましくない。
【0008】
また、鉄筋コンクリート造の建造物においては、鉄筋を取り扱い易くする観点、鉄筋の材料を削減する観点等から、鉄筋の長さ、特に、鉄筋の定着の長さを短くすることを望まれる場合がある。そのため、基礎梁の開孔周辺部に設けられる水平補強筋においても、特に、水平補強筋を定着した位置の近傍に別の開孔を設けたい場合に、定着の長さ、すなわち、各端部の長さを短くすることを望まれる場合がある。
【0009】
よって、建造物における鉄筋コンクリートの梁の開孔周辺部を補強する梁開孔補強構造において、梁の強度を効率的に確保しながら、梁の大型化を防ぎ、梁の開孔周辺部に設けられる水平補強筋の定着の長さを短くすることが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決すべく、一態様に係る梁開孔補強構造は、建造物の水平方向に沿って配置される鉄筋コンクリートの梁に、その幅方向に貫通すると共に円形状又は多角形状の横断面を有する開孔を形成して、前記梁の開孔周辺部を補強するように構成される梁開孔補強構造であって、前記梁の長手方向に延びる複数の主筋と、前記開孔を囲むように配置される開孔補強部材と、前記長手方向に直線状に延び、かつ前記開孔に対して上側及び下側にそれぞれ配置される上側及び下側の水平補強筋と、前記上側の水平補強筋を囲み、かつ前記開孔に対して上側に配置される上側の開口補強筋と、前記下側の水平補強筋を囲み、かつ前記開孔に対して下側に配置される下側の開口補強筋と、前記複数の主筋のうち前記梁の上側領域のものを囲み、かつ前記開孔に対して前記長手方向の左右両側にそれぞれ配置される左側及び右側の孔際補強筋と、前記複数の主筋のうち前記梁の下側領域のものを囲み、かつ前記左外側及び右外側の孔際補強筋に対してそれぞれ前記長手方向にて前記開孔から離れる側に配置される左側及び右側のせん断補強筋とを備え、前記梁の高さが前記開孔の直径に対して2.5倍以上かつ3倍未満であり、各種水平補強筋が、前記長手方向にて前記開孔に合わせて配置される中央部と、該中央部に対して前記長手方向の両側にそれぞれ配置される両端部とを有し、各種水平補強筋の両端部が定着であり、各種水平補強筋の長さをLとし、前記開孔の横断面の直径をDとし、各種水平補強筋の鉄筋径をdとし、所定の係数をαとし、かつ各種水平補強筋の長さが、下記(式1)に基づいて定められ、Dが500mm~750mmであり、dが各種孔際補強筋の鉄筋径以上かつ前記主筋の鉄筋径以下であり、αが14.4~21になっている。
【0011】
L = D+2×α×d ・・・(式1)
【発明の効果】
【0012】
上記一態様に係る梁開孔補強構造によれば、梁の強度を効率的に確保しながら、梁の大型化を防ぐことができ、梁の開孔周辺部に設けられる水平補強筋の定着の長さを短くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本実施形態に係る梁開孔補強構造を有する梁を概略的に示す正面図である。
図2図1のA-A線断面図である。
図3図1のB-B線断面図である。
図4図1のC-C線断面図である。
図5】本実施形態に係る上側開口補強筋を分解した状態で示す側面図である。
図6】本実施形態に係る上側開口補強筋の変形例を概略的に示す側面図である。
図7】本実施形態に係る上側開口補強筋の変形例を分解した状態で示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本実施形態に係る梁開孔補強構造について以下に説明する。
【0015】
図1図4に示すように、建造物の鉄筋コンクリートの梁1に、本実施形態に係る梁開孔補強構造2が設けられる。梁1は建造物の水平方向に沿って配置される。特に、梁1は水平方向に沿って略直線状に延びるとよく、さらに、梁1は略四角形状の横断面を有するとよい。梁1はまた、建造物の柱下の基礎(図示せず)を連結する水平部材として構成された基礎梁であると好ましい。
【0016】
かかる梁1は、コンクリート材料を用いて作製され、かつ梁1の外形を形作るコンクリート部分11を有する。なお、図1図4においては、コンクリート部分11と、当該コンクリート部分11により構成される梁1の構成要素とを二点鎖線により示す。また、梁1の内部は、コンクリート部分11によって覆われた部分を意味するものとする。このようなコンクリート部分11に用いられるコンクリート材料は、普通コンクリート、高強度コンクリート等であるとよい。本実施形態によれば、コンクリート材料が普通コンクリートである場合においても、梁開孔補強構造2の強度を十分に得ることができる。
【0017】
図1及び図2に示すように、梁1はまた、当該梁1の幅方向(以下、必要に応じて、単に「幅方向」という)に貫通する開孔1aを有する。開孔1aの横断面は略円形状に形成される。開孔1aは、人、機材等が通り抜けることができるような大きさに形成されており、具体的には、開孔1aの直径Dが約500mm~約750mmとなっている。なお、開孔の横断面は略多角形状に形成されてもよく、この場合、開孔の外接円の直径が開孔の直径として定義されるとよい。
【0018】
再び図1図4に示すように、このような梁1において、梁開孔補強構造2は、開孔1aの周辺に位置する開孔周辺部1bを補強するようになっている。なお、本実施形態に係る梁1において、開孔周辺部1bに対して梁1の長手方向(以下、必要に応じて、単に「長手方向」という)の一方側、すなわち、左側(矢印V1により示す)に位置する部分を左側一般部1cと呼び、かつ開孔周辺部1bに対して長手方向の他方側、すなわち、右側(矢印V2により示す)に位置する部分を右側一般部1dと呼ぶ。
【0019】
梁開孔補強構造2は、梁1の内部で開孔周辺部1b並びに左側及び右側一般部1c,1dに跨って長手方向に延びる複数の主筋21と、梁1の開孔周辺部1bの内部で開孔1aを囲むように配置される開孔補強部材22とを備える。
【0020】
梁開孔補強構造2はまた、梁1の開孔周辺部1bの内部で長手方向に直線状に延びる上側及び下側水平補強筋23,24と、梁1の開孔周辺部1bの内部でそれぞれ上側及び下側水平補強筋23,24を囲む上側及び下側開口補強筋25,26とを備える。上側水平補強筋23及び上側開口補強筋25は開孔1aに対して上側に配置され、かつ下側水平補強筋24及び下側開口補強筋26は開孔1aに対して下側に配置される。
【0021】
さらに、梁開孔補強構造2は、梁1の開孔周辺部1bの内部で複数の主筋21のうち少なくとも一部を囲み、かつ開孔1aに対して長手方向の一方側(矢印V1により示す)に配置される左外側及び左内側孔際補強筋27,28と、複数の主筋21のうち少なくとも一部を囲み、かつ梁1の開孔周辺部1bの内部で開孔1aに対して長手方向の他方側(矢印V2により示す)に配置される右外側及び右内側孔際補強筋29,30とを備える。左右外側孔際補強筋27,29は、梁1の内部で梁1の外周縁に沿って延びる。左右内側孔際補強筋28,30は、それぞれ、左右外側孔際補強筋27,29の幅方向の内側に位置する。
【0022】
梁開孔補強構造2は、左外側及び左内側孔際補強筋27,28に対して長手方向の一方側(矢印V1により示す)にて、梁1の左側一般部1cの内部に配置される左外側及び左内側せん断補強筋31,32と、右外側及び右内側孔際補強筋29,30に対して長手方向の他方側(矢印V2により示す)にて、梁1の右側一般部1dの内部に配置される右外側及び右内側せん断補強筋33,34とを備える。左右外側せん断補強筋31,33は、梁1の内部で梁1の外周縁に沿って延びる。左右内側せん断補強筋32,34は、それぞれ、左右外側せん断補強筋31,33の幅方向の内側に位置する。
【0023】
なお、梁開孔補強構造は、左右内側孔際補強筋を有さない構造とすることもできる。しかしながら、特に、開孔1aを有する梁1、特に、開孔周辺部1bを効率的に補強する観点においては、梁開孔補強構造2が、左右外側孔際補強筋27,29に加えて、左右内側孔際補強筋28,30を有すると好ましい。また、梁開孔補強構造は、左右内側せん断補強筋を有さない構造とすることもできる。しかしながら、特に、開孔1aを有する梁1を効率的に補強する観点においては、梁開孔補強構造2が、左右外側せん断補強筋31,33に加えて、左右内側せん断補強筋32,34を有すると好ましい。さらには、開孔周辺部を効率的に補強する観点において、梁開孔補強構造は、左右外側孔際補強筋に加えて、左右内側孔際補強筋を有する一方で、左右外側せん断補強筋に加えて、左右内側せん断補強筋を有さない構造とすることもできる。
【0024】
このような梁開孔補強構造2において、主筋21、開孔補強部材22、及び各種補強筋23~34は、丸鋼、異形棒鋼等の鉄筋材料を用いて作製される。梁開孔補強構造2のさらなる詳細について以下に説明する。
【0025】
[主筋の詳細について]
主筋21の詳細について説明する。本実施形態においては、図2図4に示すように、梁開孔補強構造2が16個の主筋21を備える。梁1の内部において、4個の主筋21を含む4つの主筋列、すなわち、第1~第4主筋列R1~R4が、上方から下方に向かって順に配置されている。第1~第4主筋列R1~R4は、互いに上下方向に間隔を空けて位置する。各主筋列R1~R4の4つの主筋21は、幅方向に互いに間隔を空けながら並んでいる。以下、必要に応じて、各主筋列の4つの主筋を、幅方向の正面側(矢印W1により示す)から他方側(矢印W2により示す)に向かって順に第1~第4主筋と呼ぶ。
【0026】
第1及び第2主筋列R1,R2は、開孔1aに対して上方に位置する梁1の上側領域1eに配置される。具体的には、第1主筋列R1は、上側領域1e内で梁1の上面に沿って配置される。第2主筋列R2は、第1主筋列R1と上側領域1eの上下方向の中心との間に配置される。第3及び第4主筋列R3,R4は、開孔1aに対して下方に位置する梁1の下側領域1fに配置される。具体的には、第3主筋列R3は下側領域1f内で梁1の下面に沿って配置される。第4主筋列R4は、下側領域1fの上下方向の中心と第3主筋列R3との間に配置される。
【0027】
第1主筋列R1の第1主筋21は、幅方向にて第2主筋列R2の第1及び第2主筋21間に位置する。第1主筋列R1の第2及び第3主筋21は、幅方向にて第2主筋列R2の第2及び第3主筋21間に位置する。第1主筋列R1の第4主筋21は、幅方向にて第2主筋列R2の第3及び第4主筋21間に位置する。
【0028】
第2及び第3主筋列R2,R3の第1主筋21は、梁1の正面に沿って並んでいる。第2及び第3主筋列R2,R3の第2主筋21は上下方向に並んでいる。第2及び第3主筋列R2,R3の第3主筋21もまた上下方向に並んでいる。第2及び第3主筋列R2,R3の第4主筋21は、梁1の背面に沿って並んでいる。
【0029】
第4主筋列R4の第1主筋21は、幅方向にて第3主筋列R3の第1及び第2主筋21間に位置する。第4主筋列R4の第2及び第3主筋21は、幅方向にて第3主筋列R3の第2及び第3主筋21間に位置する。第4主筋列R4の第4主筋21は、幅方向にて第3主筋列R3の第3及び第4主筋21間に位置する。
【0030】
本実施形態では、各主筋21に用いられる鉄筋材料は同じであると好ましい。例えば、かかる鉄筋材料は、JIS G 3112に規定される丸鋼又は異形棒鋼、約980N/mm級の異形棒鋼であるとよい。
【0031】
しかしながら、主筋は、上記に限定されるものでなく、次のようになっていてもよい。主筋の本数は、16個でなくともよく、梁の構造、梁の強度等に応じて適宜定められるとよい。梁の内部に、5つ以上の主筋列が上方から下方に向かって順に配置されてもよい。また、各主筋列は少なくとも2個の主筋を含んでいればよい。
【0032】
[開孔補強部材の詳細について]
開孔補強部材22の詳細について説明する。本実施形態においては、図2に示すように、梁開孔補強構造2は3つの開孔補強部材22を備える。3つの開孔補強部材22は、互いに幅方向に間隔を空けながら並んでいる。特に、3つの開孔補強部材22は、幅方向にて等間隔に並ぶと好ましい。以下、必要に応じて、3つの開孔補強部材を、幅方向の正面側(矢印W1により示す)から背面側(矢印W2により示す)に向かって順に第1~第3開孔補強部材と呼ぶ。
【0033】
第1開孔補強部材22は梁1の正面に沿って配置される。第2開孔補強部材22は梁1の幅方向の略中央に配置される。第3開孔補強部材22は梁1の背面に沿って配置される。
【0034】
図1及び図2を参照して、各開孔補強部材22の好ましい形状について次に述べる。3つの開孔補強部材22は実質的に同様の形状に形成されている。各開孔補強部材22は、開孔1aを囲むように形成される内側リング筋22aと、この内側リング筋22aを囲むように形成される外側リング筋22bとを有する。内側リング筋22aは略四角形状、特に、略正方形状に延びるとよく、かつ外側リング筋22bは略八角形状に延びるとよい。この場合、内側リング筋22aが、その一対の対角部分を上下方向に沿わせるように配置され、外側リング筋22bが、その一対の対辺部分を上下方向に沿わせるように配置されて、このような内側リング筋22aの一対の対角部分が、それぞれ、内側リング筋22aの一対の対角部分に溶接されると好ましい。また、開孔周辺部1bにて開孔1aから延びるヒビ割れを防ぐ観点、特に、かかるヒビ割れの幅を抑える観点においては、内側リング筋22aの鉄筋径が外側リング筋22bの鉄筋径よりも大きくなっているとよい。
【0035】
本実施形態では、3つの開孔補強部材22に用いられる鉄筋材料は同じになっている。開孔補強部材22に用いられる鉄筋材料の鉄筋径は、各種孔際補強筋27~30に用いられる鉄筋材料の鉄筋径以上であるとよい。例えば、このような鉄筋材料は、SD295A、SD345等のようにJIS G 3112に規定される異形棒鋼等の鉄筋材料、又は約785N/mm級の高強度異形棒鋼等の鉄筋材料であるとよい。さらに、開孔補強部材22に用いられる鉄筋材料は、各種孔際補強筋27~30に用いられる鉄筋材料の強度以上の強度を有するものであるとよい。
【0036】
しかしながら、開孔補強部材は、上記に限定されることなく、次のようになっていてもよい。開孔補強部材の数は、梁の構造、梁の強度等に応じて2つ以上に定められるとよく、梁開孔補強構造は、それぞれ梁の正面及び背面に沿って配置される2つの開孔補強部材を少なくとも有すればよい。開孔補強部材の内側リング筋及び外側リング筋が、連続する1本の鉄筋材料を用いて一筆書き状に形成されてもよく、この場合、開孔補強部材に用いられる鉄筋材料は、特に、KSS785又はMK785であるとよい。開孔補強部材が、内側及び外側リング筋の間に位置する中間リング筋を有してもよく、この場合、中間リング筋が略八角形状に延びると好ましい。複数の開孔補強部材のうち少なくとも1つの形状が、複数の開孔補強部材のうち残りの形状と異なっていてもよい。複数の開孔補強部材のうち少なくとも1つの鉄筋材料が、複数の開孔補強部材のうち残りの鉄筋材料と異なっていてもよい。
【0037】
このような開孔補強部材22は、特に、コーリョー建販株式会社製のダイヤレン(登録商標)又はダイヤレンNSであると好ましい。
【0038】
[水平補強筋の詳細について]
上側及び下側水平補強筋23,24の詳細について説明する。本実施形態においては、図2に示すように、梁開孔補強構造2は、2つの上側水平補強筋23と、2つの下側水平補強筋24とを備える。なお、上側水平補強筋23の数は下側水平補強筋24の数と同じであると好ましい。
【0039】
2つの上側水平補強筋23は、それぞれ、梁1の幅方向の正面及び背面に沿って配置される。2つの下側水平補強筋24もまた、それぞれ、梁1の正面及び背面に沿って配置される。さらに、梁1の正面に沿った各種水平補強筋23,24は、幅方向にて第1開孔補強部材22に対応して位置する。梁1の背面に沿った各種水平補強筋23,24もまた、幅方向にて第3開孔補強部材22に対応して位置する。上側水平補強筋23は、上下方向においては、開孔1aと各開孔補強部材22の上端との間に位置し、かつ下側水平補強筋24は、上下方向において、開孔1aと各開孔補強部材22の下端との間に位置する。
【0040】
図1に示すように、各水平補強筋23,24は、長手方向にて開孔1aに合わせて配置される中央部23a,24aと、この中央部23a,24aに対して長手方向の一方側(矢印V1により示す)に配置される一方端部23b,24bと、中央部23a,24aに対して長手方向の他方側(矢印V2により示す)に配置される他方端部23c,24cとを有する。各水平補強筋23,24の長手方向の両端部23b,23c,24b,24cはフック形状に形成されておらず、各水平補強筋23,24はフックなし型の水平補強筋となっている。各水平補強筋23,24の一方端部23b,24b及び他方端部23c,24cは定着となっている。
【0041】
このような各種水平補強筋23,24に用いられる鉄筋材料は同じであると好ましい。また、各種水平補強筋23,24に用いられる鉄筋材料の鉄筋径は、各種孔際補強筋27~30に用いられる鉄筋材料の鉄筋径よりも大きいとよい。例えば、このような鉄筋材料は、SD295A、SD345等のようにJIS G 3112に規定される異形棒鋼等の鉄筋材料、又は約785N/mm級の高強度異形棒鋼等の鉄筋材料であるとよい。さらに、各種水平補強筋23,24に用いられる鉄筋材料は、各種孔際補強筋27~30に用いられる鉄筋材料の強度以上の強度を有するものであるとよい。特に、このような鉄筋材料は、SD345の異形棒鋼であると好ましい。
【0042】
しかしながら、上側及び下側水平補強筋は、上記に限定されることなく、次のようになっていてもよい。各種水平補強筋の数は、梁の構造、梁の強度等に応じて2つ以上に定められるとよい。特に、上側又は下側水平補強筋の数が3つ以上に定められる場合、梁開孔補強構造が、上述した2つの上側又は下側水平補強筋に加えて、幅方向にてこれらの間に位置する1つ以上の上側又は下側水平補強筋を有するとよい。
【0043】
[開口補強筋の詳細について]
上側及び下側開口補強筋25,26のそれぞれの詳細について説明する。本実施形態においては、図1に示すように、梁開孔補強構造2は、4つの上側開口補強筋25と、4つの下側開口補強筋26とを有する。なお、上側開口補強筋25の数は下側開口補強筋26の数と同じであると好ましい。
【0044】
4つの上側開口補強筋25は互いに長手方向に間隔を空けて配置され、かつ4つの下側開口補強筋26もまた互いに長手方向に間隔を空けて配置される。特に、4つの上側開口補強筋25は、開孔上側ピッチ長さS1にて略等間隔に配置されると好ましく、かつ4つの下側開口補強筋26は、開孔下側ピッチ長さS2にて略等間隔に配置されると好ましい。例えば、開孔上側及び下側ピッチ長さS1,S2のそれぞれは、主筋21の鉄筋径の7.5倍以下であると好ましい。
【0045】
さらに、各上側開口補強筋25は、第1及び第2主筋列R1,R2の主筋21と、上側水平補強筋23の中央部23aとを囲んでおり、かつ各下側開口補強筋26は、第3及び第4主筋列R3,R4の主筋21と、下側水平補強筋24の中央部24aとを囲んでいる。
【0046】
図2に示すように、各上側開口補強筋25は、第1主筋列R1の主筋21に上下方向にて対応して位置する上下外側端部(すなわち、上端部)25aと、上側水平補強筋23の中央部23aに上下方向にて対応して位置する上下中央側端部(すなわち、下端部)25bとを有する。各上側開口補強筋25はまた、第2主筋列R2の第1主筋21に幅方向にて対応して位置する正面側端部25cと、第2主筋列R2の第4主筋21に幅方向にて対応して位置する背面側端部25dとを有する。かかる上側開口補強筋25の外周縁は略四角形状に形成されると好ましい。
【0047】
各下側開口補強筋26は、第4主筋列R4の主筋21に上下方向にて対応して位置する上下外側端部(すなわち、下端部)26aと、下側水平補強筋24の中央部24aに上下方向にて対応して位置する上下中央側端部(すなわち、上端部)26bとを有する。各下側開口補強筋26はまた、第3主筋列R3の第1主筋21に幅方向にて対応して位置する正面側端部26cと、第3主筋列R3の第4主筋21に幅方向にて対応して位置する背面側端部26dとを有する。かかる下側開口補強筋26の外周縁は略四角形状に形成されると好ましい。
【0048】
図2及び図5を参照して、上側開口補強筋25の形状について次に述べる。なお、上側及び下側開口補強筋25,26は実質的に上下対称に形成されており、以下においては、上側開口補強筋25の好ましい形状について説明し、下側開口補強筋26の好ましい形状の説明は省略する。
【0049】
上側開口補強筋25は、梁1の上下方向の中央に向かって開口するように略U字形状に形成された本体部材41と、この本体部材41の開口に対応してコ字形状に形成されたキャップ部材42とを有する。図5に示すように、本体部材41は、梁1の上下方向の外側に位置する上下外側端部41aと、それぞれ梁1の正面側及び背面側に位置する正面側及び背面側端部41b,41cとを有する。
【0050】
本体部材41はまた、それぞれ正面側及び背面側端部41b,41cの先端から本体部材41の幅方向の中央側にて湾曲するように形成される正面側及び背面側フック部41d,41eを有する。正面側及び背面側フック部41d,41eは、それぞれ、正面側及び背面側の上側水平補強筋23の中央部23aに係合するようになっている。特に、正面側及び背面側フック部41d,41eのそれぞれの曲げ角度は、長手方向に対して135°又は180°であると好ましい。
【0051】
キャップ部材42は、本体部材41の開口に対応して幅方向に延びるキャップ部42aと、それぞれキャップ部42aの長手方向の正面側端及び背面側端から上下方向の外側に突出する正面側及び背面側腕部42b,42cとを有する。特に、正面側及び背面側腕部42b,42cのそれぞれの長さは、本体部材41の鉄筋径に対して約2.5倍以上であると好ましい。
【0052】
本体部材41の上下外側端部41aは上側開口補強筋25の上下外側端部25aに相当する。本体部材41の正面側及び背面側フック部41d,41eと、キャップ部材42のキャップ部42aとは、上側開口補強筋25の上下中央側端部25bに相当する。本体部材41の正面側端部41bと、キャップ部材42の正面側腕部42bとは、上側開口補強筋25の正面側端部25cに相当する。本体部材41の背面側端部41cと、キャップ部材42の背面側腕部42cとは、上側開口補強筋25の背面側端部25dに相当する。
【0053】
さらに、本実施形態の変形例において、上側及び下側開口補強筋は、上述のように本体部材41及びキャップ部材42を有する形状の代わりに、次のような形状に形成することができる。なお、本実施形態の変形例においても、上側及び下側開口補強筋は実質的に上下対称に形成されており、以下においては、上側開口補強筋の好ましい形状について説明し、下側開口補強筋の好ましい形状の説明は省略する。
【0054】
図6及び図7に示すように、上側開口補強筋25’は、梁1の背面側に向かって開口するように略U字形状に形成された正面側部材51と、梁1の正面側に向かって開口するように略U字形状に形成された背面側部材52とを有する。正面側部材51は、梁1の正面側に位置する正面側端部51aと、梁1の上下方向の外側に位置する上下外側端部51bと、梁1の上下方向の中央側に位置する上下中央側端部51cとを有する。背面側部材52は、梁1の背面側に位置する背面側端部52aと、梁1の上下方向の外側に位置する上下外側端部52bと、梁1の上下方向の中央側に位置する上下中央側端部52cとを有する。
【0055】
正面側部材51の上下外側端部51bは正面側部材51の上下中央側端部51cよりも長くなっていると好ましい。背面側部材52の上下外側端部52bは背面側部材52の上下中央側端部52cよりも長くなっていると好ましい。正面側及び背面側部材51,52の上下外側端部51b,52bの長さは略等しくなっていると好ましい。
【0056】
正面側及び背面側部材51,52の上下外側端部51b,52bは上側開口補強筋25’の上下外側端部25a’に相当する。正面側及び背面側部材51,52の上下中央側端部51c,52cは上側開口補強筋25’の上下中央側端部25b’に相当する。正面側部材51の正面側端部51aは上側開口補強筋25’の正面側端部25c’に相当する。背面側部材52の背面側端部52aは上側開口補強筋25’の背面側端部25d’に相当する。
【0057】
このような各種開口補強筋25,25’,26に用いられる鉄筋材料は同じであると好ましい。また、各種開口補強筋25,25’,26に用いられる鉄筋材料は、各種孔際補強筋27~30に用いられる鉄筋材料と同鋼種以上のものであるとよい。例えば、このような鉄筋材料は、SD295A、SD345等のようにJIS G 3112に規定される異形棒鋼等の鉄筋材料、又は約785N/mm級の高強度異形棒鋼等の鉄筋材料であるとよい。さらに、各種開口補強筋25,25’,26に用いられる鉄筋材料は、各種孔際補強筋27~30に用いられる鉄筋材料の強度以上の強度を有するものであるとよい。特に、このような鉄筋材料は、SD345の異形棒鋼であると好ましい。
【0058】
しかしながら、上側及び下側開口補強筋は、上記に限定されることなく、次のようになっていてもよい。各種開口補強筋の数は、梁の構造、梁の強度等に応じて2つ以上に定められるとよい。また、上側及び下側開口補強筋が上下非対称に形成されてもよい。
【0059】
[各種孔際補強筋の詳細について]
左外側及び左内側孔際補強筋27,28並びに右外側及び右内側孔際補強筋29,30の詳細について説明する。本実施形態においては、図1に示すように、梁開孔補強構造2は、3つの左外側孔際補強筋27と、3つの右外側孔際補強筋29とを有する。梁開孔補強構造2は、3つの左内側孔際補強筋28と、3つの右内側孔際補強筋30とを有する。左外側孔際補強筋27の数、左内側孔際補強筋28の数、右外側孔際補強筋29の数、及び右内側孔際補強筋30の数は同じであると好ましい。なお、各種孔際補強筋の数は、梁の構造、梁の強度等に応じて3つ以上に定められるとよい。
【0060】
3つの左外側孔際補強筋27は互いに幅方向に間隔を空けて配置され、かつ3つの左内側孔際補強筋28は互いに幅方向に間隔を空けて配置される。各左外側孔際補強筋27と各左内側孔際補強筋28とは、幅方向にて開孔1aと各開孔補強部材22の長手方向の一方端との間に位置する。3つの右外側孔際補強筋29は互いに幅方向に間隔を空けて配置され、かつ3つの右内側孔際補強筋30は互いに幅方向に間隔を空けて配置される。各右外側孔際補強筋29と各右内側孔際補強筋30とは、幅方向にて開孔1aと各開孔補強部材22の長手方向の他方端との間に位置する。
【0061】
3つの左外側孔際補強筋27は、それぞれ、幅方向にて3つの左内側孔際補強筋28に対応して位置する。3つの右外側孔際補強筋29は、それぞれ、幅方向にて3つの右内側孔際補強筋30に対応して位置する。特に、3つの左外側孔際補強筋27は、左側孔際ピッチ長さT1にて略等間隔に配置されると好ましく、かつ3つの右外側孔際補強筋29は、右側孔際ピッチ長さT2にて略等間隔に配置されると好ましい。さらに、左側及び右側孔際ピッチ長さT1,T2は略等しくなっていると好ましい。左側及び右側孔際ピッチ長さT1,T2のそれぞれは、開孔上側及び下側ピッチ長さS1,S2のそれぞれよりも小さくなっていると好ましい。
【0062】
各種外側孔際補強筋27,29は、すべての主筋21を囲んでいる。各種内側孔際補強筋28,30は、第1~第4主筋列R1~R4の第2及び第3主筋21を囲んでいる。
【0063】
図3を参照して、左外側及び左内側孔際補強筋27,28の形状について次に述べる。なお、左外側及び左内側孔際補強筋27,28は、それぞれ、右外側及び右内側孔際補強筋29,30と実質的に同様に形成されており、以下においては、左外側及び左内側孔際補強筋27,28の好ましい形状について説明し、右外側及び右内側孔際補強筋29,30の好ましい形状の説明は省略する。
【0064】
各左外側孔際補強筋27は、第1主筋列R1のすべての主筋21に上下方向にて対応して位置する上端部27aと、第4主筋列R4のすべての主筋21に上下方向にて対応して位置する下端部27bとを有する。各左外側孔際補強筋27はまた、第1~第4主筋列R1~R4の第1主筋21に幅方向にて対応して位置する正面側端部27cと、第1~第4主筋列R1~R4の第4主筋21に幅方向にて対応して位置する背面側端部27dとを有する。このような各左外側孔際補強筋27は略四角形状に延びると好ましい。
【0065】
各左内側孔際補強筋28は、第1主筋列R1の第2及び第3主筋21に上下方向にて対応して位置する上端部28aと、第4主筋列R4の第2及び第3主筋21に上下方向にて対応して位置する下端部28bとを有する。各左内側孔際補強筋28はまた、第1~第4主筋列R1~R4の第2主筋21に幅方向にて対応して位置する正面側端部28cと、第1~第4主筋列R1~R4の第3主筋21に幅方向にて対応して位置する背面側端部28dとを有する。このような各左内側孔際補強筋28は略四角形状に延びると好ましい。
【0066】
各種孔際補強筋27~30に用いられる鉄筋材料は同じであると好ましい。例えば、各種孔際補強筋27~30に用いられる鉄筋材料は、SD295A、SD345等のようにJIS G 3112に規定される異形棒鋼等の鉄筋材料、又は約785N/mm級の高強度異形棒鋼等の鉄筋材料であるとよい。特に、このような鉄筋材料は、SD345の異形棒鋼であると好ましい。
【0067】
[各種せん断補強筋の詳細について]
左外側及び左内側せん断補強筋31,32並びに右外側及び右内側せん断補強筋33,34の詳細について説明する。本実施形態においては、図1に示すように、梁開孔補強構造2は、複数の左外側せん断補強筋31と、複数の右外側せん断補強筋33とを有する。梁開孔補強構造2は、複数の左内側せん断補強筋32と、複数の右内側せん断補強筋34とを有する。左外側せん断補強筋31の数、左内側せん断補強筋32の数、右外側せん断補強筋33の数、及び右内側せん断補強筋34の数は同じであると好ましい。
【0068】
複数の左外側せん断補強筋31は互いに幅方向に間隔を空けて配置され、かつ複数の左内側せん断補強筋32は互いに幅方向に間隔を空けて配置される。複数の右外側せん断補強筋33は互いに幅方向に間隔を空けて配置され、かつ複数の右内側せん断補強筋34は互いに幅方向に間隔を空けて配置される。複数の左外側せん断補強筋31は、それぞれ、幅方向にて複数の左内側せん断補強筋32に対応して位置する。複数の右外側せん断補強筋33は、それぞれ、幅方向にて複数の右内側せん断補強筋34に対応して位置する。特に、複数の左外側せん断補強筋31は、左側あばらピッチ長さU1にて略等間隔に配置されるとよく、かつ複数の右外側せん断補強筋33は、右側あばらピッチ長さU2にて略等間隔に配置されるとよい。さらに、左側及び右側あばらピッチ長さU1,U2のそれぞれは、左側及び右側孔際ピッチ長さT1,T2のそれぞれよりも大きくなっている。左側及び右側あばらピッチ長さU1,U2は略等しくなっていると好ましい。
【0069】
各種外側せん断補強筋31,33は、すべての主筋21を囲んでいる。各種内側せん断補強筋32,34は、第1~第4主筋列R1~R4の第2及び第3主筋21を囲んでいる。
【0070】
図4を参照して、左外側及び左内側せん断補強筋31,32の形状について次に述べる。なお、左外側及び左内側せん断補強筋31,32は、それぞれ、右外側及び右内側せん断補強筋33,34と実質的に同様に形成されており、以下においては、左外側及び左内側せん断補強筋31,32の好ましい形状について説明し、右外側及び右内側せん断補強筋33,34の好ましい形状の説明は省略する。
【0071】
各左外側せん断補強筋31は、第1主筋列R1のすべての主筋21に上下方向にて対応して位置する上端部31aと、第4主筋列R4のすべての主筋21に上下方向にて対応して位置する下端部31bとを有する。各左外側せん断補強筋31はまた、第1~第4主筋列R1~R4の第1主筋21に幅方向にて対応して位置する正面側端部31cと、第1~第4主筋列R1~R4の第4主筋21に幅方向にて対応して位置する背面側端部31dとを有する。このような各左外側せん断補強筋31は略四角形状に延びると好ましい。
【0072】
各左内側せん断補強筋32は、第1主筋列R1の第2及び第3主筋21に上下方向にて対応して位置する上端部32aと、第4主筋列R4の第2及び第3主筋21に上下方向にて対応して位置する下端部32bとを有する。各左内側せん断補強筋32はまた、第1~第4主筋列R1~R4の第2主筋21に幅方向にて対応して位置する正面側端部32cと、第1~第4主筋列R1~R4の第3主筋21に幅方向にて対応して位置する背面側端部32dとを有する。このような各左内側せん断補強筋32は略四角形状に延びると好ましい。
【0073】
各種せん断補強筋31~34に用いられる鉄筋材料は同じであると好ましい。また、各種せん断補強筋31~34に用いられる鉄筋材料の鉄筋径は、各種孔際補強筋27~30に用いられる鉄筋材料の鉄筋径以下であってもよい。例えば、各種せん断補強筋31~34に用いられる鉄筋材料は、SD295A、SD345等のようにJIS G 3112に規定される異形棒鋼等の鉄筋材料、又は約785N/mm級の高強度異形棒鋼等の鉄筋材料であるとよい。さらに、各種せん断補強筋31~34に用いられる鉄筋材料は、各種孔際補強筋27~30に用いられる鉄筋材料の強度以下の強度を有するものであってもよい。特に、このような鉄筋材料は、SD345の異形棒鋼であると好ましい。
【0074】
[各構成要素の結束について]
各構成要素の結束について説明する。なお、結束には、結束線(図示せず)が用いられると好ましい。第1開孔補強部材22は、正面側の上側及び下側水平補強筋23,24と、左右外側孔際補強筋27,29の正面側端部27cとに当接かつ結束される。第3開孔補強部材22は、背面側の上側及び下側水平補強筋23,24と、左右外側孔際補強筋27,29の背面側端部27dとに当接かつ結束される。
【0075】
正面側の上側水平補強筋23は、上側開口補強筋25,25’の下端部25b,25b’、特に、本体部材41の正面側フック部41dと、左外側孔際及びせん断補強筋27,31の正面側端部27c,31cと、右外側孔際及びせん断補強筋29,33の正面側端部とに当接かつ結束される。背面側の上側水平補強筋23は、上側開口補強筋25,25’の下端部25b,25b’、特に、本体部材41の背面側フック部41eと、左外側孔際及びせん断補強筋27,31の背面側端部27d,31dと、右外側孔際及びせん断補強筋29,33の背面側端部とに当接かつ結束される。
【0076】
正面側の下側水平補強筋24は、下側開口補強筋26の上端部26b、特に、本体部材の正面側フック部と、左外側孔際及びせん断補強筋27,31の正面側端部27c,31cと、右外側孔際及びせん断補強筋29,33の正面側端部とに当接かつ結束される。背面側の下側水平補強筋24は、下側開口補強筋26の下端部26a、特に、本体部材の背面側フック部と、左外側孔際及びせん断補強筋27,31の背面側端部27d,31dと、右外側孔際及びせん断補強筋29,33の背面側端部とに当接かつ結束される。
【0077】
上側開口補強筋25,25’は、第1主筋列R1の少なくとも一部の主筋21と、第2主筋列R2の第1及び第4主筋21とに当接かつ結束される。下側開口補強筋26は、第3主筋列R3の第1及び第4主筋21と、第4主筋列R4の少なくとも一部の主筋21とに当接かつ結束される。
【0078】
各種外側孔際補強筋27,29は、第1主筋列R1の少なくとも一部の主筋21と、第2及び第3主筋列R2,R3の第1及び第4主筋21と、第4主筋列R4の少なくとも一部の主筋21とに当接かつ結束される。各種内側孔際補強筋28,30は、第1~第4主筋列R1の第2及び第3主筋21に当接かつ結束される。
【0079】
各種外側せん断補強筋31,33は、第1主筋列R1の少なくとも一部の主筋21と、第2及び第3主筋列R2,R3の第1及び第4主筋21と、第4主筋列R4の少なくとも一部の主筋21とに当接かつ結束される。各種内側せん断補強筋32,34は、第1~第4主筋列R1の第2及び第3主筋21に当接かつ結束される。
【0080】
[梁開孔補強構造の設計条件について]
梁開孔補強構造2の設計条件について説明する。梁1の高さHを開孔1aの直径Dに対して約2.5倍以上かつ約3倍未満とする。開孔1aの直径Dと、各種水平補強筋23,24の鉄筋径dと、所定の係数αと、各種水平補強筋23,24の長さLとの関係を、次の(式2)のように定義する。
【0081】
L = D+2×α×d ・・・(式2)
【0082】
この場合、Dを上述のように約500mm~約750mmとし、dを左外側及び左内側孔際補強筋27,28並びに右外側及び右内側孔際補強筋29,30のそれぞれの鉄筋径以上かつ各主筋21の鉄筋径以下とし、αを約14.4~約21とする。この場合、各主筋21の鉄筋径が、左外側及び左内側孔際補強筋27,28並びに右外側及び右内側孔際補強筋29,30のそれぞれの鉄筋径よりも大きいとよい。
【0083】
このような条件については、梁開孔補強構造2の強度を十分に得る観点から、梁1の高さHを開孔1aの直径Dに対して約2.5倍以上とする。梁1の高さHを従来のものよりも低くする観点から、開孔1aの直径Dに基づいて定められる梁1の高さHを開孔1aの直径Dに対して約3倍未満とする。人、機材等を通過可能とする観点から、開孔1aの直径Dを約500mm以上とする。開孔1aの直径Dに基づいて定められる梁1の高さHを低くする観点から、開孔1aの直径Dを約750mm以下とする。
【0084】
各水平補強筋23,24の降伏強度と、それに基づく梁開孔補強構造2の降伏強度とを十分に得る観点から、各水平補強筋23,24の鉄筋径dを左外側及び左内側孔際補強筋27,28並びに右外側及び右内側孔際補強筋29,30のそれぞれの鉄筋径以上とする。各水平補強筋23,24の靱性と、それに基づく梁開孔補強構造2の靱性とを十分に得る観点から、各水平補強筋23,24の鉄筋径dを各主筋21の鉄筋径以下とする。各水平補強筋23,24の各端部23b,23c,24b,24cが定着としての機能を十分に果たすための観点から、定数αを約14.4以上とする。特に、定着としての各水平補強筋23,24の各端部23b,23c,24b,24cを従来のものよりも短くする観点から、定数αを約21以下とする。
【0085】
以上、本実施形態に係る梁開孔補強構造2によれば、人、機材等が通り抜けることができる開孔1aを有する梁1において、上述のように梁の開孔周辺部1bに設置される開孔補強部材22と、各種水平補強筋23,24と、各種開口補強筋25,25’,26と、各種孔際補強筋27~30とによって、梁1が効率的に補強される。そのため、梁1の高さHを開孔1aの直径Dに対して2.5倍以上かつ3倍未満に収めて、梁1の高さHを従来よりも低くした場合であっても、梁1の強度を十分に確保することができる。特に、上記設計条件に基づく梁開孔補強構造2においては、各種水平補強筋23,24の端部23b,23c,24b,24cの長さ、すなわち、定着の長さを従来よりも短くした場合であっても、上述のような補強によって、梁1の強度を効率的に確保することができる。よって、梁1の強度を効率的に確保しながら、梁1の大型化を防ぐことができ、かつ梁1の開孔周辺部1bに設けられる各種水平補強筋23,24の定着の長さを短くすることができる。
【0086】
ここまで本実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明は、その技術的思想に基づいて変形及び変更可能である。
【符号の説明】
【0087】
1 梁
1a 開孔、1b 開孔周辺部
2 梁開孔補強構造
21 主筋(第1~第4主筋)
22 開孔補強部材(第1~第3開孔補強部材)
23 上側水平補強筋
23a 中央部、23b 一方端部、23c 他方端部
24 下側水平補強筋
24a 中央部、24b 一方端部、24c 他方端部
25,25’ 上側開口補強筋
26 下側開口補強筋
27 左外側孔際補強筋
28 左内側孔際補強筋
29 右外側孔際補強筋
30 右内側孔際補強筋
31 左外側せん断補強筋
32 左内側せん断補強筋
33 右外側せん断補強筋
34 右内側せん断補強筋
L 水平補強筋の長さ、H 梁の高さ、D 開孔の直径、d 水平補強筋の鉄筋径
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7