(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-03
(45)【発行日】2022-02-14
(54)【発明の名称】空調設備
(51)【国際特許分類】
F24F 3/14 20060101AFI20220204BHJP
F24F 5/00 20060101ALI20220204BHJP
F24F 11/79 20180101ALI20220204BHJP
F24F 7/007 20060101ALI20220204BHJP
【FI】
F24F3/14
F24F5/00 K
F24F11/79
F24F7/007 B
(21)【出願番号】P 2018030803
(22)【出願日】2018-02-23
【審査請求日】2020-10-26
(73)【特許権者】
【識別番号】390002886
【氏名又は名称】株式会社長府製作所
(73)【特許権者】
【識別番号】500353554
【氏名又は名称】株式会社安成工務店
(73)【特許権者】
【識別番号】399005873
【氏名又は名称】株式会社デコス
(73)【特許権者】
【識別番号】504145342
【氏名又は名称】国立大学法人九州大学
(74)【代理人】
【識別番号】100090697
【氏名又は名称】中前 富士男
(74)【代理人】
【識別番号】100176142
【氏名又は名称】清井 洋平
(72)【発明者】
【氏名】堀本 智
(72)【発明者】
【氏名】安成 信次
(72)【発明者】
【氏名】芳西 直史
(72)【発明者】
【氏名】岡川 智嘉
(72)【発明者】
【氏名】尾崎 明仁
【審査官】村山 美保
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-166779(JP,A)
【文献】特開2006-112210(JP,A)
【文献】実開昭63-058103(JP,U)
【文献】特開平11-181901(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0081468(US,A1)
【文献】特開平01-088053(JP,A)
【文献】特開昭57-074533(JP,A)
【文献】特開2011-133199(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 3/14
F24F 5/00
F24F 11/79
F24F 7/007
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
屋根部を有する建屋の室内空間を空調する空調設備において、
前記建屋内に前記屋根部から間隔を空けて配されて、該屋根部との間に前記室内空間の空気が流入可能な通気部を設ける吸放湿部材と、
夏季に、前記通気部内の水分ポテンシャルが前記室内空間の水分ポテンシャルより低いと判定した際、前記室内空間内の空気を前記通気部経由で屋外に排出する空気搬送装置と
、
前記通気部内の温度を計測する通気部温度計と、
前記室内空間の空気を屋外に排出する換気手段と、
前記空気搬送装置が前記室内空間内の空気を前記通気部経由で屋外に排出しているのを検出し、前記換気手段を停止、又は、該換気手段の空気排出量を減少させる制御手段とを備え
、
夏季に、前記通気部温度計の計測温度が所定温度以下である際、前記空気搬送装置は、前記室内空間の空気を前記通気部経由で前記室内空間に戻すことを特徴とする空調設備。
【請求項2】
請求項1記載の空調設備において
、前記空気搬送装置は、前記通気部温度計の計測温度に基づいて前記通気部内の水分ポテンシャルが前記室内空間の水分ポテンシャルより低いと判定することを特徴とする空調設備。
【請求項3】
請求項2記載の空調設備において、前記室内空間の温度を計測する室内温度計を更に備え、前記空気搬送装置は、前記通気部温度計の計測温度及び前記室内温度計の計測温度に基づいて前記通気部内の水分ポテンシャルが前記室内空間の水分ポテンシャルより低いと判定することを特徴とする空調設備。
【請求項4】
請求項1記載の空調設備において
、冬季に、前記通気部温度計の計測温度が所定温度以上である際、前記空気搬送装置は、前記室内空間の空気を前記通気部経由で前記室内空間に戻すことを特徴とする空調設備。
【請求項5】
屋根部を有する建屋の室内空間を空調する空調設備において、
前記建屋内に前記屋根部から間隔を空けて配されて、該屋根部との間に前記室内空間の空気が流入可能な通気部を設ける吸放湿部材と、
夏季に、前記通気部内の水分ポテンシャルが前記室内空間の水分ポテンシャルより低いと判定した際、前記室内空間内の空気を前記通気部経由で屋外に排出する空気搬送装置と
、
前記通気部内の温度を計測する通気部温度計と、
前記室内空間の温度を計測する室内温度計と、
前記室内空間の空気を屋外に排出する換気手段と、
前記空気搬送装置が前記室内空間内の空気を前記通気部経由で屋外に排出しているのを検出し、前記換気手段を停止、又は、該換気手段の空気排出量を減少させる制御手段とを備え
、
夏季に、前記通気部温度計の計測温度が前記室内温度計の計測温度より所定温度以上低い際、前記空気搬送装置は、前記室内空間の空気を前記通気部経由で前記室内空間へ戻すことを特徴とする空調設備。
【請求項6】
請求項
5記載の空調設備において
、冬季に、前記通気部温度計の計測温度が前記室内温度計の計測温度より所定温度以上高い際、前記空気搬送装置は、前記室内空間の空気を前記通気部経由で前記室内空間へ戻すことを特徴とする空調設備。
【請求項7】
請求項1~
6のいずれか1項に記載の空調設備において、吸い込み部から取り込んだ空気を冷却又は加熱して前記室内空間に吹き出す温調装置を更に備え、前記空気搬送装置は、前記通気部内の空気を、前記吸い込み部が配置された空間に移送、又は、前記吸い込み部に接続されたダクト経由で該吸い込み部に直接移送することを特徴とする空調設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建屋内の空調を行う空調設備に関する。
【背景技術】
【0002】
建屋内の室内空間の除湿には、例えば特許文献1、2に記載されているようなデシカント式の除湿装置が用いられる。当該除湿装置は、吸湿部で空気中の水分を吸収することによって、室内空間の湿度を低下させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-21706号公報
【文献】特開2017-101898号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、デシカント式の除湿装置は、水分を吸収した吸湿部から水分を蒸発させるために電力消費を伴って作動する機構が必要であり、除湿効率の向上には多大な電力消費が伴うという課題があった。
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたもので、除湿効率の向上に要する電力消費を抑制可能な空調設備を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記目的に沿う第1の発明に係る空調設備は、屋根部を有する建屋の室内空間を空調する空調設備において、前記建屋内に前記屋根部から間隔を空けて配されて、該屋根部との間に前記室内空間の空気が流入可能な通気部を設ける吸放湿部材と、夏季に、前記通気部内の水分ポテンシャルが前記室内空間の水分ポテンシャルより低いと判定した際、前記室内空間内の空気を前記通気部経由で屋外に排出する空気搬送装置と、前記通気部内の温度を計測する通気部温度計と、前記室内空間の空気を屋外に排出する換気手段と、前記空気搬送装置が前記室内空間内の空気を前記通気部経由で屋外に排出しているのを検出し、前記換気手段を停止、又は、該換気手段の空気排出量を減少させる制御手段とを備え、夏季に、前記通気部温度計の計測温度が所定温度以下である際、前記空気搬送装置は、前記室内空間の空気を前記通気部経由で前記室内空間に戻す。
ここで、水分ポテンシャルとは、温度、相対湿度、絶対湿度等から求められるエネルギー量で、空気が流通可能な2つの空間では、水分ポテンシャルが高い空間から低い空間に空気中の水分が移動する(特開2017-166779号公報参照)。
【0006】
第1の発明に係る空調設備において、前記空気搬送装置は、前記通気部温度計の計測温度に基づいて前記通気部内の水分ポテンシャルが前記室内空間の水分ポテンシャルより低いと判定するのが好ましい。
【0007】
第1の発明に係る空調設備において、前記室内空間の温度を計測する室内温度計を更に備え、前記空気搬送装置は、前記通気部温度計の計測温度及び前記室内温度計の計測温度に基づいて前記通気部内の水分ポテンシャルが前記室内空間の水分ポテンシャルより低いと判定するのが好ましい。
【0008】
【0009】
第1の発明に係る空調設備において、冬季に、前記通気部温度計の計測温度が所定温度以上である際、前記空気搬送装置は、前記室内空間の空気を前記通気部経由で前記室内空間に戻すのが好ましい。
【0010】
前記目的に沿う第2の発明に係る空調設備は、屋根部を有する建屋の室内空間を空調する空調設備において、前記建屋内に前記屋根部から間隔を空けて配されて、該屋根部との間に前記室内空間の空気が流入可能な通気部を設ける吸放湿部材と、夏季に、前記通気部内の水分ポテンシャルが前記室内空間の水分ポテンシャルより低いと判定した際、前記室内空間内の空気を前記通気部経由で屋外に排出する空気搬送装置と、前記通気部内の温度を計測する通気部温度計と、前記室内空間の温度を計測する室内温度計と、前記室内空間の空気を屋外に排出する換気手段と、前記空気搬送装置が前記室内空間内の空気を前記通気部経由で屋外に排出しているのを検出し、前記換気手段を停止、又は、該換気手段の空気排出量を減少させる制御手段とを備え、夏季に、前記通気部温度計の計測温度が前記室内温度計の計測温度より所定温度以上低い際、前記空気搬送装置は、前記室内空間の空気を前記通気部経由で前記室内空間へ戻す。
【0011】
第2の発明に係る空調設備において、冬季に、前記通気部温度計の計測温度が前記室内温度計の計測温度より所定温度以上高い際、前記空気搬送装置は、前記室内空間の空気を前記通気部経由で前記室内空間へ戻すのが好ましい。
【0012】
第1、第2の発明に係る空調設備において、吸い込み部から取り込んだ空気を冷却又は加熱して前記室内空間に吹き出す温調装置を更に備え、前記空気搬送装置は、前記通気部内の空気を、前記吸い込み部が配置された空間に移送、又は、前記吸い込み部に接続されたダクト経由で該吸い込み部に直接移送するのが好ましい。
【0013】
【発明の効果】
【0014】
第1、第2の発明に係る空調設備は、建屋内に配されて、屋根部との間に室内空間の空気が流入可能な通気部を設ける吸放湿部材と、夏季に、通気部内の水分ポテンシャルが室内空間の水分ポテンシャルより低いと判定した際、室内空間内の空気を通気部経由で屋外に排出する空気搬送装置とを備えるので、通気部内の水分ポテンシャルが室内空間の水分ポテンシャルより低いと判定された際、室内空間内の空気から吸放湿部材に吸収された水分は、通気部内に放出され、室内空間内から通気部経由で屋外に排出される空気の流れによって、屋外に排出されることとなる。そのため、水分ポテンシャルの差を利用した室内空間の除湿が可能となり、除湿効率の向上に要する電力消費を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の第1の実施の形態に係る空調設備の説明図である。
【
図2】空気搬送装置の接続を示すブロック図である。
【
図3】空気搬送装置が通気部の空気を屋外に排出する様子を示す説明図である。
【
図4】空気搬送装置が通気部の空気を屋根裏空間に送る様子を示す説明図である。
【
図5】本発明の第2の実施の形態に係る空調設備の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
続いて、添付した図面を参照しつつ、本発明を具体化した実施の形態につき説明し、本発明の理解に供する。
図1に示すように、本発明の第1の実施の形態に係る空調設備10は、屋根部Rを有する建屋Qの室内空間Pを空調する設備であって、建屋Q内に屋根部Rから間隔を空けて配されて、屋根部Rとの間に室内空間Pの空気が流入可能な通気部Tを設ける吸放湿部材11と、室内空間P内の空気を通気部T経由で屋外に排出可能な空気搬送装置12とを備えている。以下、詳細に説明する。
【0017】
空調設備10が設けられた建屋Qは、
図1に示すように、屋根部Rと、建屋Q内を屋根裏空間S及び室内空間Pに仕切る天井板Uと、室内空間Pを前後左右から囲む壁部Wとを有している。本実施の形態では、屋根部Rが矩形状の傾斜板R1及び傾斜板R1より小さい矩形状の傾斜板R2を具備し、屋根裏空間Sの最も高い位置には空気溜まり部Hが形成されている。天井板Uには、開口Mが形成されており、屋根裏空間S内の空気と室内空間P内の空気は開口Mを通って入れ替わることができる。
【0018】
吸放湿部材11は、セルロースファイバーを主原料とする、平面状に広がる吸放湿層13と、吸放湿層13が下から取り付けられた板状のベース材14とを備え、傾斜板R1の下方に傾斜板R1から距離を有して配置されている。吸放湿層13及びベース材14は、傾斜して配置され、それぞれ傾斜板R1に対して平行であり、ベース材14(吸放湿部材11)と傾斜板R1の間に平面状に広がった通気部Tが設けられている。通気部Tは一側が空気溜まり部Hに連通し、他側が室内空間Pに連通している。
【0019】
吸放湿層13は、周囲から湿気を吸収でき、かつ、吸収した湿気を周囲に放出できる吸放湿性を有している。ベース材14は、透湿性を有し、通気部Tと吸放湿層13との間に配されている。そのため、吸放湿層13は、屋根裏空間S内の空気から湿気を吸収でき、吸収した湿気をベース材14越しに通気部Tへ放出可能である(即ち、吸放湿部材11は、屋根裏空間S内の空気から湿気を吸収でき、吸収した湿気を通気部Tへ放出できる)。
【0020】
空調設備10は、吸放湿部材11に加え、空気溜まり部Hに配置されて、通気部T内の温度を計測する温度計15(通気部温度計)と、天井板Uに設けられたファン16を有する屋根裏空間Sに配置された空気搬送装置12と、壁部Wに設けられたファン17、18と、室内空間Pの冷房及び暖房を行う温調装置19を備えている。なお、ファン17は換気手段の一例である。
ファン16は、通常作動しており、作動によって屋根裏空間Sの空気を室内空間Pに送る。室内空間P内の空気は、ファン16の作動時、開口Mを通って屋根裏空間S内に流入するため、屋根裏空間Sの空気と室内空間Pの空気は常時入れ替わっている。
【0021】
ファン17、18は作動によって室内空間P内の空気を屋外に排出する。本実施の形態では、ファン17、18が居室及び浴室にそれぞれ設けられている。天井板Uには開口Mが形成されており、室内空間Pの空気は開口Mを通って屋根裏空間Sに流入でき、屋根裏空間Sの空気は開口Mを通って室内空間Pに流入可能である。
空気搬送装置12は、
図1、
図2に示すように、ファン16に加え、両端がそれぞれ空気溜まり部H及び屋外に配置された通気管20と、通気管20に設けられたファン21及びダンパ22と、一端が通気管20に接続された通気管23と、通気管23に設けられたダンパ24と、ファン16、21及びダンパ22、24を制御する制御部25を備えている。
【0022】
ファン21は、ダンパ22より空気溜まり部Hの近くに配置され、作動によって空気溜まり部H内の空気を通気管20に取り込んで空気溜まり部H外に送り出す。空気溜まり部H内の空気が通気管20に送り出されるのに伴って、通気部T内の空気は空気溜まり部H内に流入し、室内空間P内の空気は通気部Tに流入する。
通気管23は、一端がファン21とダンパ22の間で通気管20に接続され、他端が屋根裏空間S内に配置されている。
【0023】
ダンパ22は、閉状態となって通気管20のダンパ22の設置位置を空気が通らないようにし、開状態となって通気管20のダンパ22の設置位置を空気が通るようにする。ダンパ24は、閉状態となって通気管23のダンパ24の設置位置を空気が通らないようにし、開状態となって通気管23のダンパ24の設置位置を空気が通るようにする。ダンパ22、24は、制御部25から信号が送信されることによって、開閉状態が変えられる。
【0024】
ダンパ22、24がそれぞれ開状態及び閉状態で、ファン21が作動することによって、空気溜まり部H内の空気は、
図3に示すように、通気管20を通って屋外に排出される。そして、ダンパ22、24がそれぞれ閉状態及び開状態で、ファン21が作動することによって、空気溜まり部H内の空気は、
図4に示すように、通気管20、23を通って屋根裏空間S内に送られる。
【0025】
制御部25は、
図2に示すように、ファン21及びダンパ22、24に加え、温度計15に接続されており、温度計15の計測温度を取得可能である。本実施の形態では、制御部25が、主として、CPU、メモリ、メモリにインストールされたソフトウェアによって構成されているが、これには限定されない。
また、温調装置19は、屋根裏空間S(吸い込み部19aが配置された空間の一例)内の空気を吸い込み部19aから取り込んで冷却又は加熱した後、その空気を室内空間P内に吹き出す。なお、
図1では、温調装置19の室外機の記載を省略している。
【0026】
制御部25は、間欠的に温度計15の計測温度を取得し、取得した温度計15の計測温度に基づいて通気部T内の水分ポテンシャルが室内空間Pの水分ポテンシャルより低いか否かを判定する。本実施の形態では、温度計15の計測温度が温度t1以上であるときに、制御部25は、通気部T内の水分ポテンシャルが室内空間Pの水分ポテンシャルより低いと判定する。制御部25には温度t1が設定可能で、温度t1として、夏季に通気部T内の水分ポテンシャルが室内空間Pの水分ポテンシャルより低いと考えられる、通気部T内の温度(例えば30~50℃の範囲の所定温度)が設定される。
【0027】
屋根裏空間S内の空気と室内空間P内の空気とは通常、ファン16の作動によって入れ変えが行われているため、屋根裏空間Sと室内空間Pとは温度、相対湿度、絶対湿度及び水分ポテンシャルが近似化されている。閉空間において温度が上昇すると水分ポテンシャルは低下することから、傾斜板R1が日中に太陽熱を吸収し、通気部Tの温度が高くなると、通気部T内の水分ポテンシャルが低下し、通気部T内の水分ポテンシャルは室内空間P及び屋根裏空間Sの水分ポテンシャルより低くなる。
【0028】
そのため、吸放湿層13に吸収されていた水分はベース材14を通って通気部Tに移動し、屋根裏空間Sの湿気(空気中の水分)は吸放湿層13に吸収され、室内空間Pの湿気は屋根裏空間Sに移動するという現象が生じる。よって、室内空間Pの湿気は、屋根裏空間Sに移動し、屋根裏空間Sから吸放湿部材11を経由して、通気部Tに移動することとなる。
【0029】
制御部25は、夏季に、温度計15の計測温度を基に通気部T内の水分ポテンシャルが室内空間P及び屋根裏空間Sの水分ポテンシャルより低いと判定した際、ダンパ22、24をそれぞれ開状態及び閉状態にし、ファン21を作動させ、これによって、
図3に示すように、室内空間P内の空気を、通気部T、空気溜まり部H及び通気管20経由で屋外に排出するようにする。このとき、通気部Tの水分ポテンシャルは屋根裏空間Sの水分ポテンシャルより低いことから、屋根裏空間Sの湿気は吸放湿部材11を通して通気部Tに移動し、通気部T内の空気と共に、空気溜まり部H及び通気管20を経由して屋外に排出される。その結果、室内空間Pの湿気は屋外に排出され、室内空間Pは除湿される。
【0030】
制御部25には、
図2に示すように、ファン17に接続された制御手段26が接続されている。制御手段26は、主としてCPU、メモリ及びソフトウェアによって構成でき、ファン17の動作を制御し、制御部25からファン21及びダンパ22、24の動作状況に関する情報を取得可能である。居室に設置されたファン17は、通常、所定の回転数で回転して、室内空間Pを換気している。なお、浴室に設置されたファン18は手動の操作によって回転及び停止が切り替えられる。
【0031】
制御手段26は、制御部25から取得した情報から、ダンパ22、24がそれぞれ開状態及び閉状態で、ファン21が作動している(即ち、室内空間P内の空気が、通気部T、空気溜まり部H及び通気管20経由で屋外に排出されている)のを検知した際、ファン17を停止、又は、ファン17の回転速度を低下させて空気排出量を減少させる。
【0032】
制御手段26は、この制御によって、室内空間P内の空気が、通気部T、空気溜まり部H及び通気管20経由で屋外に排出される前と後で、単位時間内に建屋Q内から屋外に排出される空気量が同等となるように調整する。そして、制御手段26は、ダンパ22、24がそれぞれ開状態及び閉状態で、ファン21が作動している状態が解除されたのを検知すると、ファン17の回転を再開、又は、ファン17の回転速度を通常時の値まで戻す。
【0033】
また、制御部25は、夏季に、温度計15の計測温度が温度t2(例えば、20~25℃の範囲の所定温度)以下である際、通気部T内の温度が屋根裏空間Sの温度より低いと判定して(即ち、通気部T内の温度が温調装置19が空気を取り込む空間の温度より低いと判定して)、ダンパ22、24をそれぞれ閉状態及び開状態にし、ファン21を作動させ、
図4に示すように、通気部T内の空気を屋根裏空間S(温調装置19の吸い込み部19aが配置された空間)に送るようにする。通気部T内の空気が屋根裏空間Sに送られることにより室内空間Pから通気部T内に空気が取り込まれ、屋根裏空間S内の空気はファン16によって室内空間Pに送られることから、空気搬送装置12は室内空間Pの空気を通気部T経由で室内空間Pに戻すこととなる。
【0034】
これは、夏季の夜間に、通気部T内の空気を室内空間Pに送って室内空間Pの室温を低下させるためであり、傾斜板R1の放射冷却により温度が低下した通気部T内の空気を屋根裏空間Sに送って屋根裏空間Sの温度を低下させ、温調装置19の冷房の負荷を低減するためである。
なお、制御部25には、温度t2として、夏季に通気部T内の温度が屋根裏空間S(温調装置19が空気を取り込む空間)の温度より低いと考えられる温度(例えば20~25℃の範囲の温度)が設定される。
【0035】
そして、制御部25は、冬季に、温度計15の計測温度を基に通気部T内の温度が温度t3(所定温度の一例)以上である際、ダンパ22、24をそれぞれ閉状態及び開状態にし、ファン21を作動させ、通気部T内の空気を屋根裏空間S(温調装置19の吸い込み部19aが配置された空間)に送るようにする。よって、空気搬送装置12は室内空間Pの空気を通気部T経由で室内空間Pに戻すこととなる。これは、冬季の日中に、太陽熱で傾斜板R1が温められて通気部Tの温度が上昇した際、通気部T内の空気を室内空間Pに送って室内空間Pの室温を上昇させるためであり、温度が上昇した通気部T内の空気を屋根裏空間Sに送って屋根裏空間Sの温度を上昇させ、温調装置19の暖房の負荷を低減するためである。
【0036】
制御部25には、温度t3として、冬季に通気部T内の温度が屋根裏空間Sの温度より高いと考えられる温度(例えば15~25℃の範囲の温度)が設定される。なお、制御部25に、現在が夏季か冬季であることを検知させる方法には様々な方法が存在し、例えば、制御部25にインターネット経由で季節の情報を取得させるようにしてもよいし、制御部25にカレンダー機能を設けるようにしてもよいし、制御部25に夏季か冬季かを検知させるための切り替えスイッチを接続してもよい。
【0037】
次に、
図5を参酌して、本発明の第2の実施の形態に係る空調設備30について説明する。なお、空調設備30において、空調設備10と同様の構成については同じ符号を付して詳しい説明を省略する。
空調設備30は、
図5に示すように、吸放湿部材11、空気溜まり部H内の空気を送り出す空気搬送装置31、屋根裏空間Sの空気を加熱又は冷却して室内空間Pに送る温調装置32を備えている。
【0038】
空気搬送装置31は、ファン16と、空気溜まり部Hの空気を屋外に排出するファン34と、空気溜まり部Hの空気を通気管(ダクト)35経由で温調装置32に移送するファン36を備えている。通気管35の一端は、温調装置32の空気の吸い込み部32aに接続されている。夏季に、温度計15の計測温度が所定温度以下である際、ファン36が作動して、通気部T内の空気を通気管35経由で温調装置32の空気の吸い込み部32aに直接移送し、冬季に、温度計15の計測温度が所定温度以上である際、ファン36が作動して、通気部T内の空気を通気管35経由で温調装置32の空気の吸い込み部32aに直接移送する。これによって、温調装置32の冷房運転の負荷又は暖房運転の負荷を軽減することができる。
【0039】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、本発明は、上記した形態に限定されるものでなく、要旨を逸脱しない条件の変更等は全て本発明の適用範囲である。
例えば、屋根裏空間が存在しない建屋に対して空調設備を設けることができる。屋根裏空間が存在しない建屋に空調設備を設ける場合、吸放湿部材を室内空間内で屋根部の近傍に配置して吸放湿部材と屋根部の間に通気部を形成し、吸放湿部材が室内空間から直接湿気を吸収するようにすることで、室内空間の湿気を吸放湿部材、通気部経由で屋外に排出することができる。
【0040】
また、屋根裏空間が存在しない建屋に、温調装置を備える空調設備を設ける場合、温調装置が空気を取り込む空間は室内空間(又は床下空間)となり、空気搬送装置は、夏季に、通気部内の温度が温調装置が空気を取り込む室内空間(又は床下空間)の温度より低いと判定した際、通気部内の空気を室内空間(又は床下空間)に送り、冬季に、通気部内の温度が温調装置が空気を取り込む室内空間(又は床下空間)の温度より高いと判定した際、通気部内の空気を室内空間(又は床下空間)に送る。
更に、通気部は、室内空間に直接、連通している必要はなく、室内空間に空気が流通する管や空間を介して連通していてもよい。
【0041】
また、制御部(即ち、空気搬送装置)は、通気部温度計の計測温度のみを基にして通気部内の水分ポテンシャルが室内空間の水分ポテンシャルより低いか否かの判定をしなくてもよい。例えば、通気部温度計に加えて、室内空間の温度を計測する室内温度計を設け、通気部温度計の計測温度が室内温度計の計測温度より高いことを検知することによって(即ち、通気部温度計の計測温度及び室内温度計の計測温度に基づいて)通気部内の水分ポテンシャルが室内空間の水分ポテンシャルより低いと判定してもよいし、室内空間及び通気部にそれぞれ湿度計を配置し、その2つの湿度計の計測値を基に、通気部内の水分ポテンシャルが室内空間の水分ポテンシャルより低いか否かを判定してもよい。
【0042】
そして、制御部は、夏季あるいは冬季に、通気部温度計の計測温度のみを基にして、通気部内の空気を温調装置が空気を取り込む空間に送ること(又は、通気部内の空気をダクト経由で温調装置に直接送ること)を決定する必要はない。例えば、通気部温度計の計測温度と温調装置が空気を取り込む空間の温度を計測する温度計の計測温度を比較して通気部内の空気を温調装置が空気を取り込む空間に送ることを決定してもよいし、制御部が外気温度を取得できるように設計し、制御部が、外気温度を基に、通気部内の空気を温調装置が空気を取り込む空間に送ることを決定してもよい。
【0043】
また、通気部温度計及び室内温度計を備える場合、夏季に、通気部温度計の計測温度が室内温度計の計測温度より所定温度(例えば、3~5℃の範囲の温度)以上低い際、空気搬送装置が室内空間の空気を通気部経由で室内空間へ戻すようにすることや、冬季に、通気部温度計の計測温度が室内温度計の計測温度より所定温度以上高い際、空気搬送装置が室内空間の空気を通気部経由で室内空間へ戻すようにすることができる。
【符号の説明】
【0044】
10:空調設備、11:吸放湿部材、12:空気搬送装置、13:吸放湿層、14:ベース材、15:温度計、16、17、18:ファン、19:温調装置、19a:吸い込み部、20:通気管、21:ファン、22:ダンパ、23:通気管、24:ダンパ、25:制御部、26:制御手段、30:空調設備、31:空気搬送装置、32:温調装置、32a:吸い込み部、34:ファン、35:通気管、36ファン、H:空気溜まり部、M:開口、P:室内空間、Q:建屋、R:屋根部、R1、R2:傾斜板、S:屋根裏空間、T:通気部、U:天井板、W:壁部