(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-03
(45)【発行日】2022-02-14
(54)【発明の名称】眼球運動測定装置及び眼球運動解析システム
(51)【国際特許分類】
G06F 3/01 20060101AFI20220204BHJP
G08G 1/16 20060101ALI20220204BHJP
A61B 3/113 20060101ALI20220204BHJP
G06F 3/0346 20130101ALI20220204BHJP
【FI】
G06F3/01 510
G08G1/16 F
A61B3/113
G06F3/0346 423
G06F3/01 560
(21)【出願番号】P 2018545003
(86)(22)【出願日】2017-10-10
(86)【国際出願番号】 JP2017036672
(87)【国際公開番号】W WO2018070379
(87)【国際公開日】2018-04-19
【審査請求日】2020-09-04
(31)【優先権主張番号】P 2016200411
(32)【優先日】2016-10-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000219738
【氏名又は名称】東海光学株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】500433225
【氏名又は名称】学校法人中部大学
(73)【特許権者】
【識別番号】390021751
【氏名又は名称】株式会社ナックイメージテクノロジー
(74)【代理人】
【識別番号】100082418
【氏名又は名称】山口 朔生
(74)【代理人】
【識別番号】100167601
【氏名又は名称】大島 信之
(74)【代理人】
【識別番号】100201329
【氏名又は名称】山口 真二郎
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 栄二
(72)【発明者】
【氏名】平田 豊
(72)【発明者】
【氏名】中村 祥悟
(72)【発明者】
【氏名】上田 慎一
(72)【発明者】
【氏名】山本 雅也
【審査官】田川 泰宏
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2008/0030685(US,A1)
【文献】特開2015-109984(JP,A)
【文献】特開2014-079374(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 3/01
G08G 1/16
A61B 3/113
G06F 3/0346
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
眼球を撮影する眼球撮影装置と、前記眼球撮影装置により撮影された眼球像に基づいて眼球運動を検出する眼球運動検出手段と、を備え、眼球の状態及び運動を検出する眼球運動測定装置であって、
前記眼球撮影装置は、
照明光により運転者等の眼球を照明する眼球照明手段と、
前記眼球照明手段により照明された眼球の眼球像を撮像する眼球像撮像手段と、
運転者等が前記眼球撮影装置を装着するときに、
前記眼球照明手段を眼球に照明光を照射可能な位置に配置し、前記眼球像撮像手段を眼球像を撮像可能な位置に配置する配置手段と、を備え
、
前記眼球像撮像手段は、環境光の少なくとも一部を吸収または反射し、前記眼球照明手段が発する照明光を選択的に透過するフィルタを備えたことを特徴とする、
眼球運動測定装置。
【請求項2】
眼鏡を装着する運転者等の眼球の状態及び運動を測定する眼球運動測定装置であって、
前記配置手段は、装着された眼鏡に対して、前記眼球照明手段及び前記眼球像撮像手段を配置することを特徴とする請求項1に記載の眼球運動測定装置。
【請求項3】
可視光を透過し、前記眼球照明手段から照射される照明光を反射し眼球に導くとともに、
前記眼球像撮像手段に撮像する眼球像を反射するための反射手段を備え、
前記配置手段は、前記反射手段に対して、前記眼球照明手段を眼球に照明光を照射可能な位置に配置し、前記眼球像撮像手段を前記反射手段により反射される眼球像を撮像可能な位置に配置し、
前記眼球像撮像手段は、前記眼球照明手段により照明された眼球の眼球像を、前記反射手段を介して眼球の後方または側方から撮像することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の眼球運動測定装置。
【請求項4】
オーバーグラスが前記配置手段を構成することを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1つに記載の眼球運動測定装置。
【請求項5】
クリップオングラスが前記配置手段を構成することを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1つに記載の眼球運動測定装置。
【請求項6】
前記眼球照明手段が発する照明光は不可視光である近赤外光であることを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか1つに記載の眼球運動測定装置。
【請求項7】
前記眼球照明手段が発する照明光は不可視光である紫外光であることを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか1つに記載の眼球運動測定装置。
【請求項8】
前記反射手段は、近赤外光を選択的に反射する反射膜であることを特徴とする請求項6に記載の眼球運動測定装置。
【請求項9】
眼鏡、オーバーグラス及びクリップオングラスのいずれかのレンズは、近赤外線を吸収する材料からなることを特徴とする請求項8に記載の眼球運動測定装置。
【請求項10】
前記眼球照明手段による照明光の照射方向と、前記眼球像撮像手段の視野方向と、は略同一方向であることを特徴とする請求項1ないし請求項9のいずれか1つに記載の眼球運動測定装置。
【請求項11】
請求項1ないし請求項
10のいずれか1つに記載の眼球運動測定装置と、
前記眼球運動検出手段により検出された眼球運動に基づいて運転者等の意識状態等の状態を検知する人状態検知手段と、
を備えた眼球運動解析システム。
【請求項12】
車両の運転者に用いられ、
前記解析手段は、運転者の覚醒度、漫然状態等の意識状態を検知することを特徴とする請求項
11に記載の眼球運動解析システム。
【請求項13】
前記解析手段が運転者の意識状態が所定の状態であると判断したときに、音声、振動等により運転者に警告する警告手段を備えたことを特徴とする請求項
12に記載の眼球運動解析システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の運転者等が装着し、運転者等の眼球運動を測定するための眼球運動測定装置及び眼球運動測定装置により取得された眼球運動に基づき、運転者等の意識状態の解析等、各種解析を行うための眼球運動解析システムに関する。
【背景技術】
【0002】
車両の運転者等のヒューマンエラーに起因する事故の低減などを目的として、運転者等の状態をモニタリングする技術開発の要請がある。運転者等の眼球運動は、覚醒度や漫然度など、運転者等の意識状態を反映することが知られており、眼球運動を測定し、運転者等の状態を検知することが試みられてきた。このような眼球運動を測定するための装置として、対象者の眼球を含む顔面に検知光を照射して、目を撮像する装置が提案されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来、提案されている撮像装置は、眼球に正対するようにあらかじめ車両に配置する、などの状態で使用される。そのため、運転者等が頭部を動かすことにより、撮像装置と眼球との位置関係が変化し、眼球が撮像装置の視野から外れること等があり、安定した撮像ができないおそれがあった。また、環境光が撮像装置に入射し、鮮明な画像が取得できないおそれがあった。
【0005】
ハーフミラーを用いたゴーグルタイプの撮像装置では、撮像装置と眼球との位置関係を所定の関係に維持できるが、構成が複雑で大型になるとともに、上述の撮像装置同様に、環境光が撮像装置に入り込み、鮮明な画像が取得できないおそれがあった。
【0006】
そこで、本発明では、運転者等が容易に着脱可能なコンパクトな構成であるとともに、環境光の効果を低減し、高精度で眼球運動を測定することができる眼球運動測定装置及び眼球運動測定装置により取得された眼球運動に基づき、運転者等の意識状態の解析等、各種解析を行うための眼球運動解析システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の発明では、眼球を撮影する眼球撮影装置と、前記眼球撮影装置により撮影された眼球像に基づいて眼球運動を検出する眼球運動検出手段と、を備え、眼球の状態及び運動を検出する眼球運動測定装置であって、前記眼球撮影装置は、照明光により運転者等の眼球を照明する眼球照明手段と、前記眼球照明手段により照明された眼球の眼球像を撮像する眼球像撮像手段と、運転者等が前記眼球撮影装置を装着するときに、前記眼球照明手段を眼球に照明光を照射可能な位置に配置し、前記眼球像撮像手段を眼球像を撮像可能な位置に配置する配置手段と、を備えた、という技術的手段を用いる。
【0008】
請求項1に記載の発明によれば、眼球撮影装置は、眼球照明手段により照明光で眼球を照明し、眼球像撮像手段により眼球照明手段により照明された眼球の眼球像を撮像することができる。そして、眼球運動検出手段により、眼球撮影装置により撮影された眼球像に基づいて眼球運動を検出することができる。また、配置手段により、眼球照明手段及び眼球像撮像手段を容易に所定の位置に配置することができる。
これにより、運転者等が容易に着脱可能なコンパクトな構成であるとともに、環境光の効果を低減し、安定した条件で眼球運動を測定することができる眼球運動測定装置とすることができる。ここで、「運転者等」とは、車両の運転者、装置の操作者等を示す。
【0009】
また、請求項1に記載の発明では、前記眼球像撮像手段は、前記眼球照明手段が発する不可視光を透過するとともに、可視光領域の環境光の少なくとも一部を吸収または反射するフィルタを備えた、という技術的手段を用いる。
【0010】
請求項1に記載の発明によれば、撮像に用いる不可視光を透過するとともに、撮像手段に入射する可視光領域の環境光を減じることができるので、環境光の影響を低減し、高精度で眼球を撮像することができる。
【0011】
請求項2に記載の発明では、請求項1に記載の眼球運動測定装置において、眼鏡を装着する運転者等の眼球の状態及び運動を測定する眼球運動測定装置であって、前記配置手段は、装着された眼鏡に対して、前記眼球照明手段及び前記眼球像撮像手段を配置する、という技術的手段を用いる。
【0012】
請求項2に記載の発明によれば、運転者等が普段使用している眼鏡を装着したまま、眼球運動を測定することができる。
【0013】
請求項3に記載の発明では、請求項1または請求項2に記載の眼球運動測定装置において、可視光を透過し、前記眼球照明手段から照射される照明光を反射し眼球に導くとともに、前記眼球像撮像手段に撮像する眼球像を反射するための反射手段を備え、前記配置手段は、前記反射手段に対して、前記眼球照明手段を眼球に照明光を照射可能な位置に配置し、前記眼球像撮像手段を前記反射手段により反射される眼球像を撮像可能な位置に配置し、前記眼球像撮像手段は、前記眼球照明手段により照明された眼球の眼球像を、前記反射手段を介して眼球の後方または側方から撮像する、という技術的手段を用いる。
【0014】
請求項3に記載の発明によれば、反射手段により眼球照明手段から照射される不可視光を反射し眼球に導くとともに眼球像を反射し、眼球像撮像手段により眼球照明手段により照明された眼球の眼球像を眼球の後方または側方から撮像することができる。これにより、眼球撮影装置を、よりコンパクトな構成とすることができる。また、環境光の影響をより低減し、高精度で眼球運動を測定することができる眼球運動測定装置とすることができる。
ここで、「眼球の後方または側方」とは、運転者等の顔面から表出する眼球面を基準とした位置関係を示している。
【0015】
請求項4に記載の発明では、請求項1ないし請求項3のいずれか1つに記載の眼球運動測定装置において、オーバーグラスが前記配置手段を構成する、という技術的手段を用いる。
【0016】
請求項5に記載の発明では、請求項1ないし請求項3のいずれか1つに記載の発明の眼球運動測定装置において、クリップオングラスが前記配置手段を構成する、という技術的手段を用いる。
【0017】
請求項4、5に記載の発明のように、配置手段を構成するものとして、オーバーグラスやクリップオングラスを好適に用いることができる。
【0018】
請求項6に記載の発明では、請求項1ないし請求項5のいずれか1つに記載の眼球運動測定装置において、前記眼球照明手段が発する照明光は不可視光である近赤外光である、という技術的手段を用いる。
【0019】
請求項6に記載の発明のように、照明光として、夜間での撮像も可能な不可視光である近赤外光を採用することができる。
【0020】
請求項7に記載の発明では、請求項1ないし請求項4のいずれか1つに記載の眼球運動測定装置において、前記眼球照明手段が発する照明光は不可視光である紫外光である、という技術的手段を用いる。
【0021】
一般的な眼鏡のレンズが紫外線の透過率が低く、環境光の影響を受けにくいので、請求項7に記載の発明のように、照明光として不可視光である紫外光を採用することができる。
【0022】
請求項8に記載の発明では、請求項6に記載の眼球運動測定装置において、前記反射手段は、近赤外光を選択的に反射する反射膜である、という技術的手段を用いる。
【0023】
反射手段は、請求項8に記載の発明のように、近赤外光を選択的に反射する反射膜とすることができる。
【0024】
請求項9に記載の発明では、請求項8に記載の眼球運動測定装置において、眼鏡、オーバーグラス及びクリップオングラスのいずれかのレンズは、近赤外線を吸収する材料からなる、という技術的手段を用いる。
【0025】
請求項9に記載の発明によれば、レンズが近赤外線を吸収するため、環境光に含まれる近赤外光の影響を低減して、高精度で眼球を撮像することができる。
【0026】
請求項10に記載の発明では、請求項1ないし請求項9のいずれか1つに記載の眼球運動測定装置において、前記眼球照明手段による照明光の照射方向と、前記眼球像撮像手段の視野方向と、は略同一方向である、という技術的手段を用いる。
【0027】
請求項10に記載の発明によれば、眼球像撮像手段の視野方向に対して、十分な照度の不可視光を照射することができるので、眼球への照明光の照射効率がよくなり、鮮明な画像を取得することができる。
【0028】
請求項11に記載の発明では、眼球運動解析システムが、請求項1ないし請求項10のいずれか1つに記載の眼球運動測定装置と、前記眼球運動検出手段により検出された眼球運動に基づいて運転者等の意識状態等の状態を検知する人状態検知手段と、を備えた、という技術的手段を用いる。
【0029】
請求項11に記載の発明によれば、眼球運動解析システムが、眼球運動測定装置と人状態検知手段とを備えているので、眼球運動検出手段により検出された眼球運動に基づいて人状態検知手段により運転者等の意識状態等の状態を検知することができる。
【0030】
請求項12に記載の発明では、請求項11に記載の眼球運動解析システムにおいて、車両の運転者に用いられ、前記解析手段は、運転者の覚醒度、漫然状態等の意識状態を検知する、という技術的手段を用いる。
【0031】
請求項12に記載の発明のように、眼球運動解析システムによれば、車両の運転においてヒューマンエラーの原因となる運転者の覚醒度、漫然状態等の意識状態を解析することができる。
【0032】
請求項13に記載の発明では、請求項12に記載の眼球運動解析システムにおいて、前記解析手段が運転者の意識状態が所定の状態であると判断したときに、音声、振動等により運転者に警告する警告手段を備えた、という技術的手段を用いる。
【0033】
請求項13に記載の発明によれば、警告手段は、運転者の意識状態が車両の運転において危険な意識状態であるなどの所定の状態であると判断したときに、警告を発して注意喚起することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1】第1実施形態の眼球撮影装置及び眼球運動解析システムの構成を模式的に示す説明図である。
【
図2】運転者等の眼球に対する眼球照明手段、眼球像撮像手段及び反射手段の配置を模式的に示す説明図である。
【
図3】第2実施形態の眼球撮影装置及び眼球運動解析システムの構成を模式的に示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
(第1実施形態)
本発明の眼球運動解析システムSについて、図を参照して説明する。
図1に示すように、眼球運動解析システムSは、車両の運転者、装置の操作者等(以下、運転者等、という)の眼球を撮影する眼球撮影装置1と、眼球撮影装置1により撮影された眼球像に基づいて眼球運動を検出する眼球運動検出手段2と、眼球運動検出手段2により検出された眼球運動に基づいて運転者等の意識状態等の状態を検知する人状態検知手段3と、を備えている。また、人状態検知手段3により検出された運転者等の状態に基づき、警告を発する警告手段4を備えている。ここで、眼球撮影装置1と、眼球運動検出手段2と、が眼球運動測定装置を構成する。
【0036】
第1実施形態の眼球撮影装置1は、運転者等が装着している眼鏡Gを覆って装着されるオーバーグラス10と、不可視光により眼球を照明する眼球照明手段11と、眼球照明手段11により照明された眼球の眼球像を撮像する眼球像撮像手段12と、眼球照明手段11から照射される不可視光を反射し眼球に導くとともに、眼球像撮像手段12に撮像する眼球像を反射するための反射手段13と、眼鏡Gに対して、眼球照明手段11、眼球像撮像手段12、反射手段13を所定の位置に配置する配置手段と、を備えている。
【0037】
ここで、配置手段は、反射手段13に対して、眼球照明手段11を不可視光で眼球を照射可能な位置に配置し、眼球像撮像手段12を反射手段13により反射される眼球像を撮像可能な位置に配置する。
【0038】
本実施形態では、眼球照明手段11として、照明光として不可視光である近赤外光を発する近赤外光LED11aを採用する。近赤外光は、夜間での撮像も可能であり、好適に用いることができる。また、不可視光は、運転者等が眼球を照明されていることを知覚しないため、視覚、集中力などを阻害することがないので、好適に用いることができる。近赤外光LED11aは、固定部材14により、運転者等の視野を遮らない位置に、オーバーグラス10のレンズ部10aに設けられた反射手段13に向かって近赤外光を照射可能な方向で、オーバーグラス10のテンプル10bに取り付けられている。ここで、固定部材14は、近赤外光LED11a及び近赤外光カメラ12aの向きを調整する調整機構を備えている。
【0039】
本実施形態では、眼球像撮像手段12として、近赤外光カメラ12aを採用する。近赤外光カメラ12aは、近赤外光LED11aとともに、固定部材14によりオーバーグラス10のテンプル10bに取り付けられている。ここで、近赤外光LED11aによる近赤外光の照射方向と、近赤外光カメラ12aの視野方向と、は略同一方向である。このような配置によれば、眼球像撮像手段12の視野方向に対して、十分な照度の不可視光を照射することができるので、眼球への不可視光の照射効率がよくなり、鮮明な画像を取得することができる。
【0040】
近赤外光カメラ12aは、人状態検出のために必要な撮像周期及び精度を備えている。例えば、フレームレートが200フレーム毎秒であり、分解能が0.05°で撮像可能なカメラとして構成されている。
【0041】
本実施形態では、反射手段13は、可視光を透過し近赤外光の反射率が選択的に高い反射膜13aとして、オーバーグラス10のレンズ部10aの眼球側の面に形成されている。反射膜13aとしては、近赤外光を反射する公知のコーティング膜、例えば、特開2015-148643号公報に開示されたコーティング膜等を採用することができる。
【0042】
図2に運転者等の右目Rに対する近赤外光LED11a、近赤外光カメラ12a及び反射膜13aの配置を示す。
図2は、運転者等の頭上から眼球撮影装置1を見たときの配置を模式的に示す。なお、簡単のため、眼鏡Gの図示は省略する。
【0043】
近赤外光LED11aは、反射膜13aを介して右目Rの眼球、少なくとも光彩及び瞳孔に、経路Aのように近赤外光を照射可能な位置に配置されている。
【0044】
右目Rに照射された近赤外光は、経路Bのように反射膜13aを介して近赤外光カメラ12aに入射し、眼球像として撮像される。
【0045】
本実施形態では、近赤外光LED11a及び近赤外光カメラ12aを配置する固定部材14、固定部材14が取り付けられるテンプル10bと反射膜13aを配置するレンズ10aとを備えたオーバーグラス10が配置手段に相当する。
【0046】
オーバーグラス10は眼鏡Gとの位置関係が一定であるため、本実施形態では、近赤外光LED11a及び近赤外光カメラ12aを配置する固定部材14、固定部材14が取り付けられるテンプル10bと反射膜13aを配置するレンズ10aとを備えたオーバーグラス10が配置手段に相当する。
【0047】
このように、第1実施形態の眼球撮影装置1によれば、近赤外光LED11a、近赤外光カメラ12a及び反射膜13aはオーバーグラス10に配置されるため、運転者等の頭部が動いてもその動きに追従し、眼球との位置関係が変化することがない。また、運転者等の視界を遮ることがない。
【0048】
また、不可視光である近赤外光で眼球を照明するため、運転者等が眼球の撮像を意識することがなく前方を注視して、車両の運転や装置の操作等を行うことができる。
【0049】
オーバーグラス10は、レンズ10aが外界からの近赤外光を吸収、遮断するレンズ、例えば、銅イオンが導入されたレンズからなる構成を採用することができる。これによれば、オーバーグラス10の前方から環境光に含まれる近赤外光がレンズ10aを透過して近赤外光カメラ12aに入射することを抑制することができるので、眼球の撮像における環境光の影響を低減し、高精度で眼球を撮像することができる。また、環境光の影響を低減することができるので、眼球に照射する近赤外光の照射強度を低減することもできる。
【0050】
眼球運動検出手段2及び人状態検知手段3は、コンピュータ、スマートフォン等の携帯端末、など演算処理機能を備えた装置により構成されている。眼球運動検出手段2及び人状態検知手段3は、当該手段に記録されたプログラムに従って、それぞれ眼球撮影装置1により撮影された眼球像に基づいた眼球運動の検出、眼球運動検出手段2により検出された眼球運動に基づいた運転者等の意識状態等の状態の検知、を行う。
【0051】
眼球運動検出手段2及び人状態検知手段3は、同一の演算処理用コンピュータとして構成することができる。また、本システムを、例えば、自動車などの車両に搭載する場合には、エンジンコントロールユニット(ECU)を演算処理用コンピュータとして共用することもできる。
【0052】
眼球運動検出手段2は、眼球照明手段11及び眼球像撮像手段12に電力を供給し、それぞれの制御を行う。そして、所定の間隔で眼球像撮像手段12から眼球像を取得し、人状態検知手段3へ当該データを送出する。本実施形態では、眼球運動検出手段2が通信手段を備え、眼球運動検出手段2から人状態検知手段3へのデータの送出を無線通信で行っている。
【0053】
眼球運動検出手段2では、近赤外光LED11aにより近赤外光の照射については、近赤外光LED11aを常時点灯して行ってもよいし、近赤外光カメラ12aによる撮像周期と同期するよう、照射タイミングを制御してもよい。
【0054】
眼球の運動、瞳孔径の変化などの眼球の状態は、運転者等の意識状態と密接な関係がある。人状態検知手段3は、眼球運動検出手段2により検出された眼球運動に基づいて運転者等の意識状態等の状態を検知する。眼球の撮像データについて画像処理等の処理を行い各種パラメータを抽出し、そのパラメータの値、変化に基づいて、運転者等の覚醒度、漫然状態などの意識状態を検知することができる。
【0055】
人状態検知手段3には、各種解析に必要なセンサ類、例えば、ジャイロスコープを接続可能に構成されている。これら、センサ類からの出力信号を取得し、解析に用いることができる。
【0056】
運転者等の意識状態の検知としては、例えば、両眼の輻輳角、開散を検出することにより運転者等の漫然状態を検知することができる。
【0057】
また、車両の運転者の頭部に生じる直線加速度及び回転角速度を検出する、例えば、直線加速度を検出する3軸加速度センサ及び回転角速度を検出するジャイロスコープを付帯装置として用意し、前庭動眼反射(VOR)を検出し、この前庭動眼反射に基づいて眠気の予兆等、運転者の覚醒度を判定することができる。ここで、この解析に用いるパラメータは一方の眼球運動だけで算出することができるので、近赤外光LED11a、近赤外光カメラ12a及び反射膜13aは片眼分だけ用意すればよい。
【0058】
また、運転者等の視線方向を検出可能な、例えば、視線カメラを付帯装置として用意し、視線行動のデータと瞳孔径の変化率と組み合わせて運転者等の意識状態を検知することができる。
【0059】
警告手段4は、人状態検知手段3により検知された運転者等の状態に基づき、警告を発する。例えば、人状態検知手段3において、運転者等に眠気が生じていると判断されたときには、警告音、警告メッセージを発する、という構成を有する。ここで、警告の発し方は、ECUに接続し、車両のディスプレイに警告表示をする、空調、車内照明を変化させる、シートベルトを締める、など、種々の形態を採用することができる。
【0060】
(変更例)
眼鏡Gを使用しない運転者等については、オーバーグラス10を単独で用いることもできる。
【0061】
近赤外光カメラ12aは、可視光領域の環境光の少なくとも一部を吸収または反射し、近赤外光LED11aが発する近赤外線を選択的に透過するフィルタを備える構成とすることもできる。例えば、可視光吸収、近赤外線透過色素を添加した樹脂板や誘電体多層膜による可視光反射コートなどを採用することができる。これによれば、近赤外光カメラ12aに眼球の撮像に用いる近赤外光を選択的に入射させることができるので、環境光の影響を受けにくく、高精度で眼球を撮像することができる
。
【0062】
反射膜13aに代えて、近赤外光を選択的に反射するシールを眼鏡Gのレンズに貼り付けることにより、同様の構成とすることができる。シール以外には、近赤外光を反射する成分を含んだ液体を噴霧してレンズGaをコーティングすることもできる。
【0063】
不可視光として紫外光を用いることもできる。このとき、眼球照明手段11として紫外光LEDを、眼球像撮像手段12として紫外線カメラを、反射手段13として紫外光反射膜を用いる。オーバーグラス10のレンズ10aや眼鏡Gのレンズは、一般的に紫外光の透過率が低いため、眼球の撮像における環境光の影響を低減することができるので、好適である。
【0064】
眼球照明手段11による照明光として、不可視光ではなく可視光領域の照明光を用いることもできる。このとき、環境光の影響を低減するために、反射手段13は照明光の波長領域を選択的に反射する構成とすることが好ましい。
【0065】
(第2実施形態)
第2実施形態の眼球撮影装置5を
図3に示す。眼球撮影装置5は、オーバーグラス10に代えて、眼鏡GのレンズGaの前方に、レンズ50aをクリップ50bにより装着するクリップオングラス50を用いる。
【0066】
眼球照明手段11及び眼球像撮像手段12の構成は、第1実施形態の眼球撮影装置1と同様である。眼球照明手段11及び眼球像撮像手段12は、固定部材14により、眼鏡GのテンプルGbに取り付けられている。
【0067】
ここで、固定部材14は、クリップなどの公知の固定手段により眼鏡GのテンプルGbに脱着可能に形成されているとともに、近赤外光カメラ12aの向きを調整する調整機構を有する構成である。
【0068】
本実施形態では、反射手段13は、クリップオングラス50のレンズ50aに反射膜13aとして形成される。ここで、反射膜13aはレンズ50aの眼球側、眼球と反対側のいずれの面に形成してもよい。
【0069】
クリップオングラス50のレンズ50aは、オーバーグラス10のレンズ10a同様に、外界からの近赤外光を吸収、遮断するレンズ、例えば、銅イオンが導入されたレンズからなる構成を採用することができる。
【0070】
なお、本実施形態では、眼鏡GのレンズGaは眼球撮像用の近赤外光が透過するために、近赤外光を吸収または反射する機能を付与しないことが好ましい。
【0071】
(変更例)
クリップオングラス50のレンズ50aに形成する反射膜13aに代えて、近赤外光を選択的に反射するシールを眼鏡GのレンズGaに貼り付けることにより、眼鏡Gにクリップオングラス50を装着することなく、同様の構成とすることができる。これによれば、運転者等は普段からかけ慣れた眼鏡Gをそのまま使用することができる。シール以外には、近赤外光を反射する成分を含んだ液体を噴霧してレンズGaをコーティングすることもできる。また、眼鏡GのレンズGaオーバーグラス10のレンズ10a同様に、外界からの近赤外光を吸収、遮断するレンズ、例えば、銅イオンが導入されたレンズからなる構成を採用することができる。
【0072】
第1実施形態同様に、不可視光として紫外光を用いることもできる。また、眼球照明手段11による照明光として、不可視光ではなく可視光領域の照明光を用いることもできる。
【0073】
(その他の実施形態)
眼球像撮像手段12を配置手段により眼球の前方または側方に配置し、反射手段13を介さずに直接眼球を撮像する構成を採用することもできる。このとき、眼球撮影装置1には反射手段13を設ける必要はない。
【0074】
眼球運動解析システムSは、医療用の診断装置として、眼球運動に特徴的な挙動が認められるパーキンソン病、自閉症、統合失調症等の診断に用いることもできる。また、スポーツビジョン評価やトレーニング用装置としても用いることができる。
【0075】
(実施形態の効果)
本発明の眼球運動測定装置によれば、眼球撮影装置1は、眼球照明手段11により不可視光で眼球を照明し、反射手段13により眼球照明手段から照射される不可視光を反射し眼球に導くとともに眼球像を反射し、眼球像撮像手段12により眼球照明手段11により照明された眼球の眼球像を眼球の後方または側方から撮像することができる。そして、眼球運動検出手段2により、眼球撮影装置により撮影された眼球像に基づいて眼球運動を検出することができる。また、配置手段により、眼球照明手段11、眼球像撮像手段12及び反射手段13を容易に所定の位置に配置することができる。
これにより、運転者等が容易に着脱可能なコンパクトな構成であるとともに、環境光の効果を低減し、高精度で眼球運動を測定することができる眼球運動測定装置とすることができる。また、運転者等が普段使用している眼鏡を装着したまま、眼球運動を測定することができる。
また、眼球運動解析システムSによれば、眼球運動検出手段2により検出された眼球運動に基づいて人状態検知手段3により運転者等の意識状態等の状態を検知することができる。また、車両の運転においてヒューマンエラーの原因となる運転者の覚醒度、漫然状態等の意識状態を解析することができる。運転者の意識状態が車両の運転において危険な意識状態であるなどの所定の状態であると判断したときに、警告手段4により警告を発して注意喚起することができる。
【符号の説明】
【0076】
1…眼球撮影装置
2…眼球運動検出手段
3…人状態検知手段
4…警告手段
5…眼球撮影装置
10…オーバーグラス
10a…レンズ部
10b…テンプル
11…眼球照明手段
11a…近赤外光LED
12…眼球像撮像手段
12a…近赤外光カメラ
13…反射手段
13a…反射膜
14…固定部材
50…クリップオングラス
50a…レンズ
50b…クリップ
G…眼鏡
Ga…レンズ
Gb…テンプル
S…眼球運動解析システム