(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-03
(45)【発行日】2022-02-14
(54)【発明の名称】先端工具
(51)【国際特許分類】
B25B 21/00 20060101AFI20220204BHJP
B25F 3/00 20060101ALI20220204BHJP
【FI】
B25B21/00 H
B25F3/00 Z
(21)【出願番号】P 2017252181
(22)【出願日】2017-12-27
【審査請求日】2020-11-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000161909
【氏名又は名称】京都機械工具株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】今井 大介
(72)【発明者】
【氏名】山▲崎▼ 恭一
(72)【発明者】
【氏名】中村 鉄夫
(72)【発明者】
【氏名】大西 俊輔
【審査官】山内 康明
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-175523(JP,A)
【文献】特開2004-276225(JP,A)
【文献】特開2002-103243(JP,A)
【文献】特開2010-089168(JP,A)
【文献】特開平06-226651(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25B 21/00
B25F 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転工具に装着され
、回転対象物に回転力を伝達する先端工具であって、
上記回転工具に装着されるか又は上記回転対象物に嵌合する筒状のソケットと、
上記ソケットに圧入により結合され
、上記ソケットが上記回転工具に装着される場合は上記回転対象物と係合する一方、上記ソケットが上記回転対象物に嵌合する場合は上記回転工具に装着される軸体とを備え、
上記ソケットの筒内には、上記軸体が圧入され
た被圧入部と、上記回転工具もしくは上記
回転対象物に嵌合する嵌合口とが形成され、
上記軸体は
、上記ソケット
に圧入結合された結合部と、
該結合部よりも細くかつ該結合部から上記嵌合口とは反対側に向かって延びかつ該結合部とは反対側の端部が上記回転工具もしくは上記回転対象物と係合する軸部とを有し、
上記軸体が上記ソケットに上記嵌合口側から挿し込まれて、上記結合部が上記被圧入部に圧入固定されて構成されており、
上記ソケットの筒内において、上記被圧入部に対して上記嵌合口と反対側には、上記軸体が上記ソケットに挿し込まれる際に上記軸体を上記ソケットの軸心方向に沿って案内する、上記被圧入部よりも小径
でかつ上記軸部よりも大径なガイド部が設けられていることを特徴とする先端工具。
【請求項2】
請求項1に記載の先端工具において、
上記軸体の上記軸部における上記結合部の近傍部分は、上記被圧入部の一部及び上記ガイド部と径方向に重複
した重複部であり、
上記重複部は、上記被圧入部の内周面及び上記ガイド部の内周面に対して上記径方向に隙間を空けて位置し、
上記被圧入部の内周面と上記重複部との間の隙間には、上記ソケットと上記軸体との相対的なぶれを抑制するための緩衝部材が設けられていることを特徴とする先端工具。
【請求項3】
請求項2に記載の先端工具において、
上記緩衝部材は、上記軸体が上記ソケットに圧入される際に、上記被圧入部の内周面から剥離される剥離部材であることを特徴とする先端工具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転工具に装着される先端工具に関する技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
従来より、回転工具に装着される先端工具が知られている。
【0003】
特許文献1には、回転工具に連結できる接続軸部(軸体)と、ナット等に嵌合可能な受入口を有するソケット部と、ソケット部の基端側と接続軸部とを連結する連結部材を有し、連結部材が金属製の筒体で構成され、連結部材の内部で接続軸部の外周に落下防止用のストッパーリングを設けた先端工具が開示されている。
【0004】
特許文献2には、回転工具に装着される回転工具装着軸部(軸体)と、ナット等の嵌合口を有するソケット部とを備え、回転工具装着軸部におけるソケット部との結合部において、結合部に周溝を形成した先端工具が開示されている。特許文献2では、回転工具装着軸部は、ソケット部における嵌合口とは反対側からソケット部に圧入されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2012-143855号公報
【文献】特開平6-226651号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1及び2に記載のような先端工具では、軸体にはソケット部に結合する結合部と、結合部よりも細い軸部とが設けられる一方、ソケット部には回転工具や締結部品に嵌合する嵌合口と、結合部が圧入固定される被圧入部が設けられる。そして、先端工具の製造時には、一般に、特許文献2に記載のように、ソケット部の嵌合口とは反対側から軸体を圧入させる。
【0007】
特許文献1に記載のように軸体が回転工具に装着される部分として構成され、ソケット部が締結部品等に作用する部分として構成される場合、ソケット部の嵌合口は締結部品等と嵌合するように構成される。このような先端工具を製造する際には、軸部の反ソケット部側の端部から軸体を圧入することになる。このとき、軸部が折れ曲がってしまうおそれがある。
【0008】
一方で、ソケット部が回転工具に装着される部分であり、軸体が締結部品等に作用する部分である場合もある。この場合、軸体の反ソケット部側の端部には作用部(締結部材等に作用する部分)が形成され、ソケット部の嵌合口は回転工具に嵌合するように構成される。このような先端工具を製造する際には、プレス機のパンチと作用部とを当接させて、該作用部から力を入力することになる。このため、作用部に直接的に負荷がかかってしまい作用部が変形してしまうおそれがある。
【0009】
上述のような、軸体をソケット部に圧入する際の該軸体の変形を抑制するための方法として、軸体をソケット部の嵌合口側から挿し込んで、軸体の結合部をソケットの被圧入部に圧入固定する方法が考えられる。このような方法で、軸体をソケットに挿し込む場合、圧入に伴い軸体が嵌合口とは反対側に向かって移動できるように、軸体における挿込方向の端部は浮いた状態にされる。このため、圧入時に軸体がぶれて、ソケット部の軸心と軸体の軸心とがずれてしまうおそれがある。
【0010】
本発明は、斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、軸体が圧入される被圧入部と、回転工具又は回転工具により回転される部品に嵌合する嵌合口とが形成されたソケットに対して、軸体をソケットの嵌合口側から挿し込んで構成される先端工具において、ソケットの軸心と軸体の軸心とがずれることを抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明は、回転工具に装着され、回転対象物に回転力を伝達する先端工具を対象として、上記回転工具に装着されるか又は上記回転対象物に嵌合する筒状のソケットと、上記ソケットに圧入により結合され、上記ソケットが上記回転工具に装着される場合は上記回転対象物と係合する一方、上記ソケットが上記回転対象物に嵌合する場合は上記回転工具に装着される軸体とを備え、上記ソケットの筒内には、上記軸体が圧入された被圧入部と、上記回転工具もしくは上記回転対象物に嵌合する嵌合口とが形成され、上記軸体は、上記ソケットに圧入結合された結合部と、該結合部よりも細くかつ該結合部から上記嵌合口とは反対側に向かって延びかつ該結合部とは反対側の端部が上記回転工具もしくは上記回転対象物と係合する軸部とを有し、上記軸体が上記ソケットに上記嵌合口側から挿し込まれて、上記結合部が上記被圧入部に圧入固定されて構成されており、上記ソケットの筒内において、上記被圧入部に対して上記嵌合口と反対側には、上記軸体が上記ソケットに挿し込まれる際に上記軸体を上記ソケットの軸心方向に沿って案内する、上記被圧入部よりも小径でかつ上記軸部よりも大径なガイド部が設けられている、という構成とした。
【0012】
この構成によると、軸体がソケットに嵌合口側から挿し込まれるため、軸体の結合部がソケットの被圧入部に圧入される時には、軸体の挿込方向の端部は浮いた状態される。このため、圧入時に軸体がぶれて、ソケットの軸心と軸体の軸心とがずれてしまうおそれがある。これに対して、本発明では、被圧入部よりも小径なガイド部が設けられているため、ソケットの軸心と軸体の軸心とのずれを抑制することができる。具体的には、ガイド部は被圧入部よりも小径であるため、軸体がソケットの径方向にぶれようとしても、軸部がガイド部に当接して、該径方向のぶれが抑えられる。これにより、軸体がソケットに挿し込まれる際には、軸体はガイド部によってソケットの軸心方向に沿って案内される。この結果、ソケットの軸心と軸体の軸心とのずれを抑制することができる。
【0013】
上記先端工具の一実施形態では、上記軸体の上記軸部における上記結合部の近傍部分は、上記被圧入部の一部及び上記ガイド部と径方向に重複した重複部であり、上記重複部は、上記被圧入部の内周面及び上記ガイド部の内周面に対して上記径方向に隙間を空けて位置し、上記被圧入部の内周面と上記重複部との間の隙間には、上記ソケットと上記軸体との相対的なぶれを抑制するための緩衝部材が設けられている。
【0014】
すなわち、軸体がソケットにスムーズに挿し込まれるように、通常、ガイド部は軸部よりも僅かに大径に形成される。このため、軸部の重複部は、ガイド部の内周面に対して径方向に隙間を空けて位置するようになる。ガイド部によって、ソケットの軸心と軸体の軸心とのずれは抑制することができるが、軸部とガイド部の内周面との間の隙間により、先端工具による実際の作業時に、ソケットと軸体との間に相対的なぶれが生じる可能性がある。実際の作業時には、軸体をソケットに挿し込む時よりも、ソケットの軸心と軸体の軸心との同軸性が求められる。
【0015】
そこで、本発明は、被圧入部の内周面と重複部との間の隙間に緩衝部材を配設することによって、ソケットと軸体との間に相対的なぶれを抑えている。具体的には、例えば、軸体に上記回転工具によって回転される部品に作用する作用部が設けられ、ソケットが上記回転工具に装着されるときは、軸体にソケットとは独立した径方向のぶれが生じやすい。軸体の径方向のぶれが生じたときには、軸部が径方向に変位して、軸部から緩衝部材にぶれに伴う力が入力される。緩衝部材は、軸部から入力された力に対する反発力を発生させて、該反発力によって軸部を押し戻す。これにより、軸部のぶれが抑えられる。
【0016】
また、逆に、ソケットに作用部が設けられ、軸体が上記回転工具に装着されるときは、ソケットに軸体とは独立した径方向のぶれが生じやすい。この場合でも、ソケットが径方向に変位したときには、ソケットから緩衝部材にぶれに伴う力が入力される。緩衝部材は、ソケットから入力された力に対する反発力でもってソケットを押し戻す。これにより、ソケットのぶれが抑えられる。したがって、実際の作業時においても、ソケットの軸心と軸体の軸心とのずれを抑制することができる。
【0017】
上記先端工具において、上記緩衝部材は、上記軸体が上記ソケットに圧入される際に、上記被圧入部の内周面から剥離される剥離部材である、ことが好ましい。
【0018】
この構成によると、剥離部材は、軸体がソケットに圧入される際に形成されるものであって、被圧入部と軸部との間の隙間における結合部の近傍部分に形成される。これにより、例えば、上述のように軸体にソケットとは独立した径方向にぶれが生じたときには、軸部のぶれの基点となる位置で、軸部のぶれを抑えることができる。この結果、実際の作業時におけるソケットの軸心と軸体の軸心とのずれをより効果的に抑制することができるようになる。
【0019】
また、剥離部材は、結合部に押し出されながら形成されるため、被圧入部の内周面と重複部と隙間内に密に詰まらない。このため、剥離部材は、軸部から上記ぶれに伴う力が入力されたときには、適度に弾性変形することができる。これにより、軸部の上記ぶれを適切に受け止めながら当該ぶれを抑えることができる。
【0020】
さらに、緩衝部材を別部材で構成する必要がなく、部品点数を削減することができる。
【発明の効果】
【0021】
以上説明したように、本発明に係る先端工具によると、ソケットの筒内に、被圧入部に対して嵌合口と反対側に被圧入部よりも小径なガイド部が設けられ、該ガイド部によって、軸体をソケットに挿し込む際に、軸体がソケットの軸心方向に沿って案内されるため、ソケットの軸心と軸体の軸心とがずれることを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の実施形態に係る先端工具を示す半断面図である。
【
図2】先端工具をソケット側から見た背面図である。
【
図3】先端工具を製造する途中であって、軸体の結合部をソケットの被圧入部に圧入する前の状態を示す断面図である。
【
図4】
図3の状態から軸体の結合部をソケットの被圧入部に圧入した状態を示す断面図である。
【
図5】先端工具におけるソケットと軸体との結合部分の周辺を拡大した部分断面図である。
【
図6】実施形態2に係る先端工具を示す半断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0024】
図1は、本実施形態に係る先端工具1を示す。この先端工具1は回転工具に装着される工具である。上記回転工具は手動式及び電動式のものを含み、例えば、ラチェットハンドルやインパクトレンチ等である。
【0025】
先端工具1は、筒状のソケット2と、ソケット2に圧入により結合される長尺状の軸体4とを備えている。
図1に示すように、軸体4は、ソケット2の軸心方向の一端から、該軸心方向の一側に向かって延びている。
【0026】
ソケット2は、本実施形態では、上記回転工具に装着される部分として構成されている。ソケット2は、
図1に示すように、円筒状に形成されている。詳しくは、ソケット2は、相対的に外径の大きい第1円筒部21と、第1円筒部21の軸心方向の一端から、該軸心方向の一側に向かって縮径しながら延びる縮径部22と、縮径部22の軸心方向の一端から、上記一側に向かって延びる第2円筒部23とを有している。第1円筒部21、縮径部22及び第2円筒部23は同軸になっている。第1円筒部21の外周には、2つの溝部21aが形成されている。この2つの溝部21aは、上記回転工具から先端工具1を取り外す際に指や取外用の工具を引っ掛けやすくするための溝部である。ソケット2は、金属で構成されている。
【0027】
ソケット2の筒内には、軸体4が圧入される被圧入部31と、上記回転工具と嵌合する嵌合口33とが形成されている。嵌合口33は、
図1に示すように、第1円筒部31内に形成されている。被圧入部31は、嵌合口33の上記軸心方向の一端から延びており、第1円筒部21におけるソケット2の軸心方向の一側の部分と、縮径部32と、ガイド部32の上記軸心方向の他側の部分とに亘って形成されている。嵌合口33には、上記回転工具のチャックと係合する複数の係合穴33aが周方向に並んで形成されている。嵌合口33を上記回転工具と嵌合させたときには、上記回転工具の上記チャックが係合穴33aと係合することで、先端工具1が上記回転工具から抜け落ちないようにロックされる。
【0028】
ソケット2の筒内には、被圧入部31に対して嵌合口33と反対側に、被圧入部31よりも小径なガイド部32が設けられている。ガイド部32は、被圧入部31の上記軸心方向の一端から延びており、第2円筒部23内に形成されている。詳しくは後述するが、ガイド部32は、軸体4がソケット2に挿し込まれる際に、軸体4を上記軸心方向に沿って案内するものである。
【0029】
被圧入部31の直径は、
図2に示すように、軸体4の後述する結合部42の対角間距離よりも短くかつ対面間距離よりも長い。また、被圧入部31の直径は、軸体4の後述する軸部41の直径よりも大きい。ガイド部32の直径は、軸体4の軸部41の直径よりも僅かに大きい。さらに、被圧入部31の上記軸心方向の長さL1は、
図5に示すように、上記結合部42の上記軸心方向の長さL2よりも長い。
【0030】
軸体4は、本実施形態では、六角穴付ボルトを回転させるための工具本体として構成されている。軸体4は、細長い軸部41と、軸部41の一端部に形成されかつソケット2と結合される結合部42と、軸部41の他端部に形成され、六角穴付ボルトと係合して該六角穴付きボルトに作用する作用部43とを有している。軸部41は断面円形をなし、結合部42及び作用部43は断面六角形状をなしている。結合部42は、その断面積が軸部41の断面積よりも大きくなるように構成されている。一方で、作用部43は、その断面積が軸部41の断面積よりも小さくなっている。軸部41及び作用部43は、断面六角形の金属棒を切削して形成されている。具体的には、先ず、断面積が結合部42と同じ断面六角形の金属棒を切削して軸部41を形成し、その後、軸部41における結合部42とは反対側の端部を切削して作用部43が形成される。軸体4は、ソケット2よりも剛性の高い金属で構成されている。
【0031】
先端工具1は、軸体4が、軸部41がガイド部32を挿通するように、ソケット2の嵌合口33側から該ソケット2内に挿し込まれて、結合部42が被圧入部21に圧入固定されることで構成されている。以下、先端工具1の製造方法について、詳しく説明する。
【0032】
先端工具1を製造する際には、プレス装置100が用いられる。プレス装置100は、ソケット2を保持するダイ101と、軸体4の結合部42をソケット2の被圧入部31に圧入するための昇降可能なパンチ102とを備えている。
図3及び4に示すようにダイ101には、軸体4を受けるための受入穴103が形成されている。受入孔103の深さは、軸体4をソケット2に圧入する際に、軸体4がソケット2に対して相対的に移動する分の移動代を考慮した深さに設定されている。
【0033】
先端工具1を製造する際には、先ず、
図3に示すように、ソケット2を嵌合口33側がパンチ102側になるようにダイ101にセットする。
【0034】
次に、軸体4をソケット2の嵌合口33側から該ソケット2内に挿し込む。このとき、軸体4は、軸部41がガイド部32を挿通するようにソケット2の嵌合口33側から挿し込まれる。これにより、
図3に示すように、作用部43及び軸部41の一部は、被圧入部31及びガイド部32を挿通して、受入穴103内に位置する。上述したように、被圧入部31の直径は、軸体4の結合部42の対角間距離よりも短いため、圧入前の段階では、
図3に示すように、被圧入部31の嵌合口33側の他端に引っ掛かった状態となる。軸体4の作用部43は支持されずに浮いた状態となっている。
【0035】
次いで、パンチ102を下降させて、結合部42を挿込方向に押圧して、結合部42を被圧入部31に圧入していく。このとき、軸体4はソケット2よりも剛性の高い金属であるため、結合部42によって被圧入部31の内周部の一部が剥離されていく。また、このときにも、作用部43は支持されずに浮いた状態となっている。
【0036】
結合部42の被圧入部31への圧入は、パンチ102が嵌合口33の上記軸心方向の一端と当接する前に終了される。これは、パンチ102が嵌合口33等と当接することによって、ソケット2の筒内が傷つくのを防止するためである。圧入が、パンチ102が嵌合口33の上記軸心方向の一端と当接する前に終了されるため、結合部42は、嵌合口33側の端部が被圧入部31から嵌合口33側に突出した状態となる。
【0037】
そして、結合部42の被圧入部31への圧入後は、パンチ102を上昇させて、ソケット2をダイ101から取り出せば、先端工具1の製造が完了する。
【0038】
上述のように、軸体4をソケット2の嵌合口33側から該ソケット2内に挿し込んで、結合部42を被圧入部31に圧入固定するようにすれば、軸体4の作用部43には直接的な負荷がかからない。このため、圧入時に作用部43が変形してしまうリスクを回避することができる。
【0039】
一方で、軸体4をソケット2の嵌合口33側から該ソケット2内に挿し込む場合、ダイ102の受入穴103には、上記移動代を設けておく必要がある。このため、上述したように、結合部42の被圧入部31への圧入時において、軸体4の挿込方向の端部、すなわち、軸体2の作用部43は支持されずに浮いた状態となる。この結果、圧入時に軸体4がぶれて、ソケット2の軸心と軸体4の軸心とがずれてしまうおそれがある。
【0040】
そこで、本実施形態1では、被圧入部31よりも小径なガイド部32が設けることで、ソケット2の軸心と軸体4の軸心とがずれるのを抑制するようにしている。具体的には、ガイド部32は被圧入部31よりも小径であるため、軸体4をソケット2に挿し込む際に、軸体4がソケット2の径方向にぶれようとしても、軸部41がガイド部32に当接して、該径方向のぶれが抑えられる。これにより、軸体4がソケット2に挿し込まれる際には、軸体4はガイド部32によってソケット2の軸心方向に沿って案内される。この結果、ソケット2の軸心と軸体4の軸心とのずれを抑制することができる。
【0041】
ガイド部32が設けられていることにより、ソケット2と軸体4との結合後の状態において、軸体4の軸部41における結合部42の近傍部分には、
図5に示すように、ソケット2の筒内における被圧入部31の一部及びガイド部32と、ソケット2の径方向に重複する重複部44が形成される。被圧入部31の直径は、軸体4の軸部41の直径よりも大きいため、重複部44は、
図5に示すように、被圧入部31の内周面に対して隙間34を空けて、該ソケット2内に位置する。また、ガイド部32の直径は、軸体4の軸部41の直径も僅かに大きいため、重複部44は、
図5に示すように、ガイド部32の内周面に対して隙間35を空けて、該ソケット2内に位置する。さらに、被圧入部31の上記軸心方向の長さL1は、上記結合部42の上記軸心方向の長さL2よりも長いため、被圧入部31と軸部41との間の隙間における上記軸心方向の長さL3は、結合部41の被圧入部41の上記他端からの突出量L4よりも大きくなる。
【0042】
ソケット2の内周面と軸体4の軸部41との間に隙間34,35があると、ガイド部32と軸部41の重複部44との間に隙間35が形成されていると、先端工具1による実際の作業時に、ソケット2と軸体4との間に相対的なぶれが生じる可能性がある。実際の作業時には、作業精度及び作業効率の低下を抑制するために、軸体4をソケット2に挿し込む時よりも、ソケット2の軸心と軸体4の軸心との同軸性が求められる。
【0043】
ガイド部32と軸部41との間の隙間35は、軸体4をソケット2にスムーズに挿し込むために必要であるため、隙間35を無くすことは好ましくない。
【0044】
そこで、本実施形態1では、重複部44と被圧入部31の内周面との間の隙間34に、軸体4の軸部41の上記径方向のぶれを抑制するための緩衝部材50を設けて、ソケット2と軸体4との間の相対的なぶれを抑制している。
【0045】
具体的には、結合部42を被圧入部31に圧入した際に、被圧入部31の内周部から剥離された剥離部材51を緩衝部材50として構成している。剥離部材51は、
図5に示すように、隙間34における結合部42の近傍部分に形成される。
【0046】
緩衝部材50としての剥離部材51が設けられていると、ソケット2とは独立して、軸部41に上記径方向のぶれが生じたときには、軸部41が上記径方向に変位して、軸部41から剥離部材51に上記ぶれに伴う力が入力される。剥離部材51は、軸部41から入力された力に対する反発力を発生させて、該反発力によって軸部41を押し戻す。これにより、軸部41のぶれが抑えられる。特に、剥離部材51は、被圧入部31と軸部41との間の隙間34における結合部42の近傍部分に形成されるため、軸部41の上記径方向のぶれの基点となる位置で、軸部41のぶれを抑えることができる。この結果、ソケット2と軸体4との相対的なぶれを、効果的に抑制することができるようになる。
【0047】
以上のことから、実際の作業時においても、ソケット2の軸心と軸体4の軸心とのずれを抑制することができる。
【0048】
また、剥離部材51は、結合部42に押し出されながら形成されるため、隙間34内に密に詰まらない。このため、剥離部材51は、軸部41から上記ぶれに伴う力が入力されたときには、適度に弾性変形することができる。これにより、軸部41の上記ぶれを適切に受け止めながら当該ぶれを抑えることができる。
【0049】
さらに、剥離部材51を緩衝部材50とすることで、緩衝部材50を別部材で構成する必要がなく、部品点数を削減することができる。
【0050】
したがって、本実施形態1に係る先端工具1は、筒状のソケット2と、ソケット2に圧入により結合される軸体4とを備え、ソケット2の筒内には、軸体4が圧入される被圧入部31と、上記回転工具に嵌合する嵌合口33とが形成され、軸体3は、軸部41と、該軸部41の一端に設けられかつソケット2と結合される結合部42とを有し、軸体4がソケット2に嵌合口32側から挿し込まれて、結合部42が被圧入部31に圧入固定されて構成されており、ソケット2の筒内において、被圧入部31に対して嵌合口33と反対側には、軸体4がソケット2に挿し込まれる際に軸体4をソケット2の軸心方向に沿って案内する、被圧入部31よりも小径なガイド部32が設けられているため、ソケット2の軸心と軸体4の軸心とがずれることを抑制することができる。
【0051】
(実施形態2)
以下、実施形態2について、図面を参照しながら詳細に説明する。尚、以下の説明において実施形態1と共通の部分については、同じ符号を付して、その詳細な説明を省略する。
【0052】
図6は、本実施形態2に係る先端工具201を示す。この先端工具201も、上記実施形態1と同様に、回転工具に装着される工具である。
【0053】
先端工具201では、ソケット202に作用部24が設けられ、軸体204が上記回転工具に装着される部分として構成されている。
【0054】
ソケット202は、上記実施形態1と同様に、相対的に外径の大きい第1円筒部21と、第1円筒部21の軸心方向の一端から、該軸心方向の一側に向かって縮径しながら延びる縮径部22と、縮径部22の軸心方向の一端から、上記一側に向かって延びる第2円筒部23とを有している。第1円筒部21及び第2円筒部23は共に、上記実施形態1のものよりも軸心方向の長さが長くなっている。ソケット202は、実施形態1と同様に、金属で構成されている。
【0055】
ソケット202の筒内には、上記実施形態1と同様に、軸体204が圧入される被圧入部31と、上記回転工具により回転される部品と嵌合して該部品に作用する作用部24(嵌合口)とが形成されている。被圧入部31に対して嵌合口33と反対側には、被圧入部31よりも小径なガイド部32が設けられている。本実施形態2でも、上記実施形態1と同様に、このガイド部32は、軸体204がソケット202に挿し込まれる際に、軸体204をソケット202の軸心方向に沿って案内するものである。
【0056】
被圧入部31の直径は、軸体204の結合部42の対角間距離よりも短くかつ対面間距離よりも長い。また、被圧入部31の直径は、軸体204の軸部141の対角間距離よりも大きい。ガイド部32の直径は、軸体204の軸部141の対角間距離よりも僅かに大きい。
【0057】
本実施形態2では、
図6に示すように、作用部24は、第1円筒部21内の作用部24よりも上記軸心方向の上記一側の部分に形成されている。作用部24は、ボルトやナットの外径と合致する内径に形成されており、例えば、断面六角形をなしている。
【0058】
軸体204は、ソケット202よりも剛性の高い金属で構成されている。軸体204は、細長い軸部241と、軸部241の一端部に形成されかつソケット202と結合される結合部42とを有している。本実施形態2では、軸部241及び結合部42は共に断面六角形状をなしている。結合部42は、その断面積が軸部241の断面積よりも大きくなるように構成されている。
【0059】
本実施形態2では、軸部241には上記回転工具のチャック(図示省略)と係合するための係合溝45が、軸部241の外周を一周して形成されている。軸部241を上記回転工具に挿し込んだときには、上記回転工具の上記チャックが係合溝45と係合することで、先端工具201が上記回転工具から抜け落ちないようにロックされる。
【0060】
本実施形態2でも、上記実施形態1と同様に、先端工具201は、軸部241がガイド部32を挿通するようにソケット202の作用部24側から該ソケット202内に挿し込まれて、結合部42が被圧入部21に圧入固定されることで構成される。これにより、結合部42の被圧入部31への圧入時に、軸部241が折れ曲がってしまうリスクを回避することができる。
【0061】
本実施形態2では、重複部244における被圧入部31内に位置する部分には、重複部244の他の部分よりも細い破断部46と、該破断部46よりも上記軸心方向の上記一側に形成されかつ重複部244の他の部分よりも太い段差部47とが形成されている。破断部46は係合溝45が形成された部分よりも細くなっている。段差部47の直径は、被圧入部31の直径よりも小さくかつガイド部32の直径よりも大きい。
【0062】
破断部46は、軸体204の他の部分よりも脆弱になっているため、先端工具201によりボルト等の締め付け作業を行う際に、締付トルクによって軸体204が破断する場合には、破断部46の位置で破断しやすい。これにより、軸体204が破断するときには特定の位置で破断させることができる。そして、軸体204が破断部46で破断したときには、軸体204がソケット202から抜けようとするが、段差部47がガイド部32に引っ掛かって、軸体204はソケット202からは抜けない。これにより、軸体204が破断したときにソケット202が落下してしまうことを防止することができる。つまり、本実施形態2では、ガイド部32は軸体204を係止する係止部としての役割も果たしている。
【0063】
本実施形態2でも、被圧入部31よりも小径なガイド部32が設けられているため、軸体204がソケット202に挿し込まれる際には、軸体204はガイド部32によってソケット202の軸心方向に沿って案内される。これにより、軸部241をソケット202の作用部24側から該ソケット202の筒内に挿し込んだとしても、ソケット202の軸心と軸体204の軸心とのずれを抑制することができる。
【0064】
また、ガイド部32が設けられているため、本実施形態2でも、軸体204の軸部241における結合部42の近傍部分には、
図6に示すように、ソケット202の筒内における被圧入部31の一部及びガイド部32と、ソケット202の径方向に重複する重複部244が形成される。被圧入部31の直径は、重複部244における段差部47の直径よりも大きいため、重複部244は、
図6に示すように、被圧入部31の内周面と上記径方向に隙間34を空けて、ソケット202内に位置する。また、ガイド部32の直径は、軸体204の軸部241の対角間距離よりも僅かに大きいため、重複部244は、
図6に示すように、ガイド部32の内周面と上記径方向に隙間35を空けて、ソケット202内に位置する。本実施形態2でも、被圧入部31の内周面及びガイド部32の内周と、重複部244との間には隙間34,35が形成されるため、先端工具201による実際の作業時に、ソケット202と軸体204との間に相対的なぶれが生じて、作業精度及び作業効率が低下してしまうおそれがある。
【0065】
これに対して、本実施形態2でも、重複部244と被圧入部31の内周面との間の隙間35に、軸体204の軸部241の上記径方向のぶれを抑制するための緩衝部材50としての剥離部材51を設けて、ソケット202と軸体204との間に相対的なぶれを抑制している。剥離部材51は、軸体204がソケット202に圧入される際に、被圧入部31の内周面から剥離されて形成される。
【0066】
剥離部材51が設けられていることにより、軸体204とは独立して、ソケット202に上記径方向のぶれが生じたときには、ソケット202が上記径方向に変位して、ソケット202(特に第2円筒部23)から剥離部材51に上記ぶれに伴う力が入力される。剥離部材51は、ソケット202から入力された力に対する反発力を発生させて、該反発力によってソケット202を押し戻す。これにより、ソケット202のぶれが抑えられる。この結果、ソケット202と軸体204との相対的なぶれを抑制することができるようになる。この結果、本実施形態2でも、実際の作業時における、ソケット2の軸心と軸体4の軸心とのずれを抑制することができる。
【0067】
以上のことから、本実施形態2のように、ソケット202に作用部24が設けられ、軸体204が上記回転工具に装着される部分として構成されている場合であっても、ソケット2の軸心と軸体4の軸心とのずれを抑制することができる。
【0068】
また、本実施形態2では、先端工具201によりボルト等の締め付け作業を行う際に、締付トルクによって軸体204が破断する場合には、特定の位置で破断させることができる。さらに、軸体204が破断部46で破断したとしても、段差部47がガイド部32に引っ掛かることで、ソケット202が落下してしまうことを防止することができる。
【0069】
(その他の実施形態)
本発明は、上記実施形態に限られるものではなく、請求の範囲の主旨を逸脱しない範囲で代用が可能である。
【0070】
例えば、上述の実施形態1及び2では、緩衝部材50として剥離部材51を採用していたが、これに限らず、ゴム部材等で構成してもよい。
【0071】
また、上述の実施形態2では、破断部46を重複部244の他の部分よりも細くすることで形成していたが、これに限らず、重複部244における他の部分よりも破断しやすい構成にできれば、破断部46を重複部244の他の部分よりも細くする必要はない。
【0072】
さらに、上述の実施形態1及び2では、結合部42の形状を断面六角形状としていたが、ソケット2,202の被圧入部31に圧入できる形状のものであれば、断面六角形状でなくてもよい。
【0073】
上述の実施形態は単なる例示に過ぎず、本発明の範囲を限定的に解釈してはならない。本発明の範囲は請求の範囲によって定義され、請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明は、回転工具に装着される先端工具として有用である。
【符号の説明】
【0075】
1,201 先端工具
2,202 ソケット
4,204 軸体
24 作用部(嵌合口)
31 被圧入部
32 ガイド部
33 嵌合口
34 隙間(ガイド部の内周面と重複部との間の隙間)
35 隙間(被圧入部の内周面と重複部との間の隙間)
41,241 軸部
42 結合部
44,244 重複部
L3 軸部と被圧入部との間の隙間における軸心方向の長さ
L4 結合部の突出量