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  • 特許-竹製飲用ストロー及びその製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-03
(45)【発行日】2022-02-14
(54)【発明の名称】竹製飲用ストロー及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A47G 21/18 20060101AFI20220204BHJP
【FI】
A47G21/18
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019149516
(22)【出願日】2019-08-16
(65)【公開番号】P2021029312
(43)【公開日】2021-03-01
【審査請求日】2021-10-01
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】309004091
【氏名又は名称】株式会社ひろせプロダクト
(74)【代理人】
【識別番号】100149696
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 俊夫
(72)【発明者】
【氏名】鉄本 学
【審査官】大内 康裕
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2012/023002(WO,A1)
【文献】特開平10-119013(JP,A)
【文献】特開2004-249041(JP,A)
【文献】特開2014-155524(JP,A)
【文献】中国実用新案第209202703(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47G 21/18
A47G 21/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
竹稈の中空部を吸飲孔として用いることなく竹稈の木質部から形成された細長い円筒状体で構成されている竹製飲用ストローであって
前記円筒状体における外径から内径を除いた合計肉厚の平均が3mm以下であり、
前記円筒状体の内径が4mm以上5mm以下であり、
前記円筒状体における長さに対する内径の割合が1/50以上かつ1/40以下である、
竹製飲用ストロー。
【請求項2】
竹稈を長さ方向及び径方向に切断して複数の細長い円柱状の竹稈木質材を取得する工程と、
前記竹稈木質材の長さ方向の略全部を内部に嵌入可能な固定具で前記竹稈木質材を直線状に整形しながら固定する工程と、
前記固定具で固定された前記竹稈木質材に長さ方向に延びる貫通孔を吸飲孔として穿設する孔開け工程と、
を含み、
前記孔開け工程では、前記固定具の内部に嵌入されて固定された前記竹稈木質材の中心軸を回転軸として前記固定具を回転させ、回転している前記竹稈木質材に対して穿孔具を用いて前記吸飲孔を穿設する、
製飲用ストローの製造方法。
【請求項3】
前記竹稈木質材に前記吸飲孔が穿設された検査対象ストローの外周面及び長さ方向の両端面を複数のカメラで撮像する工程と、
前記撮像された画像により、前記検査対象ストローの両端面における前記吸飲孔の位置、前記検査対象ストローの外周面及び両端面のささくれ状態、又は前記検査対象ストローの外周面の表皮部の残留状態のいずれか一部又は全部を検査する検査工程と、
を更に含む請求項2に記載の竹製飲用ストローの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、竹製の飲用ストローに関する。
【背景技術】
【0002】
ほとんどの飲食店において珈琲やジュース等の飲料にはプラスチック製のストローが利用されている。しかしながら、プラスチック製ストローは使い捨てであるため、廃プラスチックによる環境汚染の問題の要因となり得る。
そこで、以下の特許文献1には、紙製の飲料用ストローが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】実用新案登録第3216663号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、紙製ストローは、水分を吸収して柔らかくなってしまう等、性能面において問題がある。更に、コスト面においてもプラスチック製ストローよりも高額となるという問題がある。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、プラスチック製ストローと同等の性能を有しながらコストを抑えた竹製飲用ストローを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の各側面では、上述した課題を解決するために、以下の構成をそれぞれ採用する。
本発明の一側面は竹製飲用ストローであり、当該一側面に係る竹製飲用ストローは、竹稈の中空部を吸飲孔として用いることなく竹稈の木質部から形成された細長い円筒状体で構成されており、その円筒状体における外径から内径を除いた合計肉厚の平均が3mm以下であり、その円筒状体の内径が4mm以上5mm以下であり、その円筒状体における長さに対する内径の割合が1/50以上かつ1/40以下である。
【0006】
本発明の他の側面は竹製飲用ストローの製造方法であり、当該側面に係る竹製飲用ストローの製造方法は、竹稈を長さ方向及び径方向に切断して複数の細長い円柱状の竹稈木質材を取得する工程と、その竹稈木質材の長さ方向の略全部を内部に嵌入可能な固定具でその竹稈木質材を直線状に整形しながら固定する工程と、当該固定具で固定された竹稈木質材に長さ方向に延びる貫通孔を吸飲孔として穿設する孔開け工程と、を含み、その孔開け工程では、当該固定具の内部に嵌入されて固定された竹稈木質材の中心軸を回転軸として当該固定具を回転させ、回転している竹稈木質材に対して穿孔具を用いて吸飲孔を穿設する
【発明の効果】
【0007】
上記各側面によれば、プラスチック製ストローと同等の性能を有しながらコストを抑えた竹製飲用ストローを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本実施形態に係る飲用ストローの正面図である。
図2】本実施形態に係る飲用ストローの長さ方向の一端面を示す図である。
図3】本実施形態に係る飲用ストローの製造工程の一部を示す模式図である。
図4】本実施形態に係る飲用ストローの検査工程を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態について説明する。なお、以下に挙げる実施形態は例示であり、本発明は以下の実施形態の構成に限定されない。
【0010】
まずは、本実施形態に係る飲用ストロー1(以降、本ストロー1と表記する場合もある)の構成について図1及び図2を主に用いて説明する。図1は、本実施形態に係る飲用ストロー1の正面図であり、図2は、本実施形態に係る飲用ストロー1の長さ方向の一端面を示す図である。
本ストロー1は、図1に示されるとおり、竹製の細長い円筒状体10で構成されている。
本明細書において「円筒状」とは、中空を持つ形状であり、中空を持たない「円柱状」とは区別して使用することとする。
【0011】
このように円筒状体10を竹製とすることで、紙製ストローのように水分を吸収して柔らかくなることもないため、飲用ストローとしてプラスチック製ストローと同等の性能を実現することができる。また、チップ状にすることなくそのままの形で用いられる竹材は基本的に木材と比較して吸水性が低いため、仮に木製のストローが存在したとしても、その木製ストローよりもカビが生じ難く、飲用ストローに適しているといえる。
また、竹は、3年から4年で竹材として利用できる程成長が早いため、木材のような資源の枯渇についての問題がない材料である。このため円筒状体10を竹製とすることで、資源の枯渇の問題を気にする必要もない。
【0012】
ここで、竹稈20は、図3に示されるように、中空部21と木質部22とからなり、木質部22は外表面が緑色の表皮部で覆われており、節を持つ。
本実施形態では、円筒状体10は、切削加工された木質部22に貫通孔が吸飲孔15として穿設されることで形成されている。このため、円筒状体10の長さLと吸飲孔15の長さとは等しくなり、以降、吸飲孔15の長さLと表記する場合もある。
このように円筒状体10を木質部22に吸飲孔15を穿設して形成することで、真竹や孟宗竹のような大型種を竹材として利用することができるため、竹稈20の中空部21をそのまま吸飲孔15として用いる形態と比較して大量生産が可能であり、コストを大幅に低下させることができる。
また、円筒状体10は、木質部22の節の部分を含んでいてもよいし、含まなくてもよい。これにより、竹稈20における円筒状体10の採取部分の制限を少なくすることができるため、竹稈20を有効活用することができ、ひいてはコストを低下させることができる。
【0013】
更に言えば、円筒状体10は、竹稈20の木質部22から表皮部及び中空部21を画定する内周面部が除かれてなる竹稈木質材25で形成される。
ここで「竹稈木質材」とは、竹稈20の木質部22を切削加工して得られる、表皮部及び内周面部が取り除かれておりかつ吸飲孔15が穿設されていない竹材の意味で用いられる造語である。
上述のように、円筒状体10を木質部22から表皮部を除いた部分で形成することで、本ストロー1に緑系の色を残さないため、消費者にカビ等の付着と誤解されるのを防ぐことができる。
一方で、竹稈20の組織は、長手方向に平行に並んでおり、竹稈20を半径方向で切断した輪切り断面において、外側の表皮部に近い程、繊維密度が高く、しなやかで折れ難い性質を持ち、内側の内周面部に近い程、繊維密度が低く、柔らかいことが知られている。このため、円筒状体10を木質部22から内周面部を除くことで、本ストロー1の強度を維持することができる。
なお、本ストロー1の製造方法の詳細については後述する。
【0014】
ところが、円筒状体10を上述のように木質部22から得られる竹稈木質材25から形成しようとして、円筒状体10のサイズが増大してしまっては別の問題が生じる。円筒状体10のサイズが本ストロー1のサイズとなるため、そのサイズが増大すると、本ストロー1の保管コストや流通コストが増大することになるからである。
吸飲孔15は飲料をスムーズに通す必要があるため、対象とする飲料種によってその断面面積は所定の大きさとする必要がある。例えば、一般的なプラスチック製ストローの吸飲孔の断面直径は約5mmであり、タピオカドリンク等のような含有物を含む飲料用のストローでは約9.5mmの断面直径を有するものがある。
【0015】
本ストロー1では、円筒状体10における外径Gから内径Nを除いた合計肉厚の平均が3mm以下とされることが好ましい。
ここで外径Gは、円筒状体10における長さ方向に直交する断面の外周円(外周表面)の直径を意味し、内径Nは、その断面の内周円(吸飲孔15を画定する内壁面)の直径を意味する。以降、円筒状体10の内径Nは、吸飲孔15の径Nと表記する場合もある。
合計肉厚の平均は、円筒状体10の長さ方向の両端面での合計肉厚の平均(2で除算して得られる値)であってもよいが、当該両端面での合計肉厚に加えて円筒状体10の長さ方向の一以上の各部での当該断面の合計肉厚を対象とした平均であることが好ましい。
上記の合計肉厚の平均の上限値(3mm)は、吸飲孔15の径Nを必要な大きさとして本ストロー1のサイズを想定した場合における本ストロー1の保管コスト及び流通コストを抑制し得る値として本発明者により算出された値である。当該合計肉厚の平均の下限値は、吸飲孔15を穿設するための穿孔具(例えばドリル)の性能や本ストロー1の強度によって設定されればよく、例えば、0.7mm以上2mm以下に設定されればよい。
円筒状体10の合計肉厚をこのような値とすることで、飲用ストローとしての性能を維持しつつ、本ストロー1のサイズを抑えて、本ストロー1の保管コストや流通コストを抑制することができる。
【0016】
このように円筒状体10の合計肉厚の平均を3mm以下と抑えつつ吸飲孔15を穿設する場合には、吸飲孔15の径Nと円筒状体10の長さLとの関係が技術的に重要となる。当該竹稈木質材25に対して貫通孔を穿設するのに、吸飲孔15の径Nが小さくかつ長さLが長くなる程、穿孔が難しくなるからである。具体的には、吸飲孔15の径N及び長さLは、ドリルのような穿孔具の径及び長さに依存するが、竹稈木質材25のような硬さのものに対して利用する場合に、穿孔具は、一般的に、小径かつ長いものほど、折れ易くなるからである。
【0017】
そこで、本ストロー1では、円筒状体10における長さL(吸飲孔15の長さL)に対する内径N(吸飲孔15の径N)の割合が1/50以上であることが好ましい。例えば、本ストロー1において、円筒状体10の内径N(吸飲孔15の径N)が5mmとされる場合、円筒状体10の長さL(吸飲孔15の長さL)は250mm以下とされることが好ましい。逆に、円筒状体10の長さL(吸飲孔15の長さL)が200mmとされる場合、円筒状体10の内径N(吸飲孔15の径N)は4mm以上とされることが好ましい。
一方で、吸飲孔15の長さLが長くても吸飲孔15の径Nが大きい場合には、穿孔具(ドリル)の強度も増すため、当該割合の重要性は薄まる。但し、仮に当該割合の上限を定めるとすれば、例えば、1/40以下とされてもよい。
本ストロー1において円筒状体10における長さL(吸飲孔15の長さL)に対する内径N(吸飲孔15の径N)の割合がこのような範囲とされることで、当該竹稈木質材に対して適切に吸飲孔15を穿設することができる。
【0018】
更に、本ストロー1では、円筒状体10の含水率が5%以上であり14%以下とされることが好ましい。
含水率が15%を超えると、竹製の円筒状体10にカビが生じる可能性がかなり高まり、逆に、含水率が5%よりも低くなると、ささくれが生じ安くなってしまうからである。
本ストロー1の製造段階で円筒状体10の含水率をこのような値域内に設定することで、その後の流通段階及び消費段階においてもその含水率を自然に保つことができる。結果、プラスチック製ストローと同等の清潔感及び安全性で竹製の飲用ストローを実現することができる。
【0019】
次に、本ストロー1の製造方法について主に図3及び図4を用いて説明する。図3は、本実施形態に係る飲用ストロー1の製造工程の一部を示す模式図であり、図4は、本実施形態に係る飲用ストロー1の検査工程を示す模式図である。
【0020】
本製造方法では、まず、竹稈木質材25を取得する工程が実施される。
本工程では、所定の太さ及び所定の長さとなるように竹稈20を長さ方向及び径方向に切断して複数の竹ひご状の竹材を取得し、当該竹材を煮沸し乾燥させた後、表皮部及び内周面部が少なくとも除外されるように、当該竹材を削ることで、複数の細長い円柱状の竹稈木質材25を取得する。
当該竹ひご状の竹材は、木質部22における表皮部から内表面部にかけて一つ抽出されてもよいし(図3に示される例)、木質部22における表皮部から内表面部にかけて複数抽出されてもよい。後者の方法で抽出された当該竹材は、表皮部を含み内表面部を含まないものと、表皮部を含まず内表面部を含むものとが少なくとも存在することになる。
当該竹材を煮沸することで竹臭さを抜くことができ、その後、竹材を所定の方法で乾燥させることで、上述した通り、完成品の本ストロー1の円筒状体10の含水率を5%以上14%以下とすることができる。
【0021】
次に、竹材支持装置31で竹稈木質材25を固定する工程、及び固定された竹稈木質材25に吸飲孔15を穿設する孔開け工程が実施される。
本実施形態では、竹稈木質材25を固定する工程及び孔開け工程が孔開け装置30により実施される。
孔開け装置30は、竹材支持装置31と複数のドリル(穿孔具)36とから構成される。
竹材支持装置31は、モータのような駆動源(図示せず)と、駆動源の動力で回転する複数の回転板32とを少なくとも含む。回転板32ごとに駆動源が設けられてもよいし、回転板32の数よりも少ない数の駆動源が設けられてもよい。各回転板32には回転板32の回転軸を中心軸とする円柱状の固定具33がそれぞれ固設されており、各固定具33は回転板32と共に回転板32と同軸でそれぞれ回転する。
複数のドリル36は、固定具33に対して一対一に設けられており、各ドリル36の中心軸が各固定具33の回転軸(中心軸)の延長線上に一致するように設けられている。各ドリル36の直径は吸飲孔15の径Nに対応するサイズとされ、各ドリル36の長さは吸飲孔15(円筒状体10)の長さL以上とされており、回転せず固定されている。
【0022】
固定具33は、竹稈木質材25の長さ方向(軸方向)の中心軸Cを固定具33の中心軸(回転軸)と一致させた状態で竹稈木質材25の長さ方向の略全部を嵌入可能であり、竹稈木質材25を長さ方向に直線状に整形しつつ固定可能に形成されている。本実施形態では、図3に示されるように、竹稈木質材25の長さ方向の一端部がわずかに固定具33から外側に出た状態で竹稈木質材25は固定具33に固定されているが、竹稈木質材25の長さ方向の全部が固定具33の内部に嵌入された状態で固定されてもよい。
【0023】
これにより、竹稈木質材25を固定する工程は、竹稈木質材25の長さ方向の略全部を嵌入可能な固定具33で竹稈木質材25を直線状に整形しながら固定する工程と表記することができる。
孔開け工程では、上述のように固定具33により長さ方向に直線状に整形された状態で固定されている竹稈木質材25に対して長さ方向に延びる貫通孔が吸飲孔15として穿設される。
【0024】
ここで、竹稈木質材25は竹稈20の木質部22から抽出され、木質部22は表皮部側と内表面部側とで繊維密度が異なることから、竹稈木質材25は、水分蒸発等によりわずかながらも湾曲することが多い。このように湾曲した状態では竹稈木質材25に対して貫通孔を穿設することはできない。
そこで、本製造方法では、上述したとおり、竹稈木質材25を固定具33で直線状に整形しながら固定した状態で、その竹稈木質材25に対して吸飲孔15が穿設されるため、竹稈木質材25が湾曲変形したとしても、吸飲孔15を適切に穿設して本ストロー1を製造することができる。
更に言えば、このような方法により、竹稈木質材25が木質部22における表皮部から内表面部にかけて複数抽出されることで各々の繊維密度が異なり湾曲状態が異なったとしても、適切に本ストロー1を製造することができるため、竹材を有効活用することができ、本ストロー1のコストを低減することができる。
【0025】
本実施形態では、竹材支持装置31の各固定具33がそれぞれ回転可能に形成されているため、当該孔開け工程では、竹稈木質材25を固定した状態の固定具33を竹稈木質材25の中心軸Cを回転軸として回転させることで、回転している竹稈木質材25に対してドリル(穿孔具)36を用いて吸飲孔15を穿設する。このとき、固定具33をドリル36に向けて移動させてもよいし、ドリル36を固定具33に向けて移動させてもよい。また、本実施形態のようにドリル36は回転せず固定されていてもよいし、回転していてもよい。
ドリル36の直径及び長さは、上述したとおり、吸飲孔15に対応するサイズとされ、それを竹稈木質材25に対する穿孔のために用いることから、大変折れ易いところ、本実施形態のように、直線状に整形しながら固定した状態で竹稈木質材25自体を回転させて穿孔具で竹稈木質材25に貫通孔を吸飲孔15として穿設することで、穿孔具を折ることなく、確実に吸飲孔15を穿設することができる。
【0026】
上述の孔開け工程の後、図4に示されるような検査工程を経ることで、本ストロー1の製造が完了する。本実施形態では、当該検査工程は検査装置40により実施される。以降の説明において、この検査工程で検査される対象を検査対象ストローと表記する場合がある。つまり、検査対象ストローは、竹稈木質材25に吸飲孔15が穿設されたものである。
【0027】
検査装置40は、円柱状の回転ドラム41、カメラ45、46及び47、検査コンピュータ(図示せず)等により構成されている。
回転ドラム41は、その側面(曲面)上に複数の検査対象ストローを等間隔に着脱自在に支持可能であり、駆動源(図示せず)の動力によりその中心軸を軸に回転する。更に、回転ドラム41の側面上には、検査対象ストローの中心軸Cを軸に検査対象ストローを回転可能に支持する複数の機構が設けられている。これにより、回転ドラム41に支持される検査対象ストローは、自身の中心軸Cを軸に回転しながら、回転ドラム41の回転により回転ドラム41の側面に沿って曲面(周)方向に移動する。
【0028】
カメラ45及び46は、回転ドラム41の側面上に支持され所定位置にある検査対象ストロー(TG)の長さ方向の両端面を撮像可能に設けられている。
カメラ47は、回転ドラム41の側面上に支持され自転する検査対象ストロー(TG)の外周面の全てを撮像可能に設けられている。
これらカメラ45、46及び47により、竹稈木質材25に吸飲孔15が穿設された検査対象ストローの外周面及び長さ方向の両端面の撮像工程が実施される。
【0029】
検査コンピュータは、ハードウェア構成として、CPU(Central Processing Unit)、メモリ、入出力インタフェース(I/F)ユニット等を備えており、CPUによりメモリに格納される検査プログラムが実行されることにより、検査処理を実行する。この検査処理により、入出力I/F経由でカメラ45、46及び47で撮像された画像が取得され、その画像に基づいて、検査対象ストローの両端面における吸飲孔15の位置、検査対象ストローの外周面及び両端面のささくれ状態、又は検査対象ストローの外周面の表皮部の残留状態のいずれか一部又は全部を検査する検査工程が実施される。本実施形態では、検査コンピュータは、検査処理によりそれら全部を検査する。
【0030】
より具体的には、検査コンピュータは、カメラ45及び46により撮像された検査対象ストローの両端面の画像に基づいて、検査対象ストローの両端面における吸飲孔15の位置及びささくれ状態を検査する。検査コンピュータは、カメラ45又は46から取得される画像に対して既知の画像認識を適用することによりその画像から端面を示す画像領域及び吸飲孔15を示す画像領域を検出し、端面に対して吸飲孔15が略中央に位置しているか否かを判定する。同様に、検査コンピュータは、検出された端面を示す画像領域及び吸飲孔15を示す画像領域においてささくれがあるか否かを判定する。位置ズレが判定された場合又はささくれがあると判定された場合、その検査対象ストローが検査不合格とされる。ささくれ状態は、端面を示す画像領域又は吸飲孔15を示す画像領域が画像認識で認識できなかった場合に、ささくれ有りと判定されてもよいし、当該画像領域の境界線の乱れによりささくれが検出されてもよい。このような具体的判定手法は制限されない。
【0031】
更に、検査コンピュータは、カメラ47により撮像された検査対象ストローの外周面の画像に基づいて、検査対象ストローの外周面のささくれ状態及び表皮部の残留状態を検査する。検査コンピュータは、カメラ47から取得される画像に対して既知の画像認識を適用することにより検査対象ストローの外周縁を検出し、その外周縁の乱れからささくれ状態を判定することができる。また、検査コンピュータは、当該画像認識により検査対象ストローを示す画像領域を検出し、その画像領域内における緑色成分の有無を判定し、緑色成分がある場合に表皮部が残留と判定することができる。
【0032】
このように、各検査対象ストローにおいて、両端面及び外周面にささくれがないか、吸飲孔15が正しい位置に穿設されているか、外周面に表皮部が残っていないかを自動で検査することができるため、本ストロー1の品質を向上させることができるだけでなく、検査コストも低減することができる。
【0033】
[変形例]
上述の実施形態は一例である。本ストロー1及びその製造方法は、上述の構成のみに限定されるわけではなく、上述の少なくとも一部の構成を有していれば、部分的に適宜変形されてもよい。
【0034】
例えば、本ストロー1は、上述の実施形態のように円筒状体10のみで構成されていてもよいし、円筒状体10を一部に含み他の部材との結合体として構成されてもよい。後者の例としては、例えば、上述の円筒状体10の一方の端部に吸い口用の部材が取り付け可能とされていてもよい。
また、上述の円筒状体10を複数(例えば2本)連結することで、一つの飲用ストローが構成されるようにしてもよい。言い換えれば、円筒状体10は、切断されていない一連なりの木質部22により形成されていてもよいし、一度は切断された二以上の木質部22を連結することで形成されていてもよい。この場合、前者の例のほうがコストをより低減させることができる。
【0035】
また、上述の製造方法では、竹稈木質材25の一方の端面から一つの穿孔具(ドリル)で竹稈木質材25に貫通孔が一度に穿設されたが、竹稈木質材25の両方の各端面からそれぞれ穿孔具(ドリル)で貫通孔が穿設されてもよい。
また、竹稈木質材25に穿孔具(ドリル)で吸飲孔15を穿設した後で、本ストロー1の合計肉厚の平均を3mm以下となり適正な位置に吸飲孔15が穿設されるように、吸飲孔15が穿設された竹稈木質材25の外周面を削るようにしてもよい。この場合、竹稈木質材25は、円柱状ではなく、角が削られる前の角材であってもよい。
【実施例
【0036】
本ストロー1の実施例として、例えば、次のように設定される。
L=200(mm)、G=7.5(mm)、N=5(mm)
また、タピオカドリンク等のような含有物を含む飲料用として、本ストロー1の寸法は次のように設定されてもよい。
L=200(mm)、G=12(mm)、N=10(mm)
但し、このような各実施例の寸法は一例であるに過ぎず、上述の実施形態で述べた内容に何ら制限を加えるものではない。
【符号の説明】
【0037】
1 本ストロー(本ストロー)、10 円筒状体、15 吸飲孔、20 竹稈、21 中空部、22 木質部、25 竹稈木質材、30 孔開け装置、31 竹材支持装置、32 回転板、33 固定具、36 ドリル(穿孔具)、40 検査装置、41 回転ドラム、45 カメラ、46 カメラ、47 カメラ
図1
図2
図3
図4