(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-03
(45)【発行日】2022-02-14
(54)【発明の名称】交換反応を可能にするボロン酸エステル官能基を含む架橋ポリマーを含むポリマー組成物、その調製方法及びその使用
(51)【国際特許分類】
C08L 23/00 20060101AFI20220204BHJP
C08L 101/02 20060101ALI20220204BHJP
C08K 5/55 20060101ALI20220204BHJP
C08J 3/24 20060101ALI20220204BHJP
C08F 8/00 20060101ALI20220204BHJP
C08L 33/14 20060101ALN20220204BHJP
【FI】
C08L23/00
C08L101/02
C08K5/55
C08J3/24 Z CES
C08F8/00
C08L33/14
(21)【出願番号】P 2018509514
(86)(22)【出願日】2016-08-22
(86)【国際出願番号】 EP2016069783
(87)【国際公開番号】W WO2017029413
(87)【国際公開日】2017-02-23
【審査請求日】2019-08-07
(32)【優先日】2015-08-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(32)【優先日】2015-10-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】515185843
【氏名又は名称】エコール・シュペリュール・ドゥ・フィシック・エ・ドゥ・シミー・アンデュストリエル・ドゥ・ラ・ヴィル・ドゥ・パリ
(73)【特許権者】
【識別番号】506316557
【氏名又は名称】サントル ナショナル ドゥ ラ ルシェルシュ シアンティフィック
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】リュドウィク・レイブレ
(72)【発明者】
【氏名】ルノー・ニコレ
(72)【発明者】
【氏名】マクス・ロットジェ
【審査官】中川 裕文
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/110642(WO,A1)
【文献】特開平06-340783(JP,A)
【文献】特開平03-021609(JP,A)
【文献】特開2014-227458(JP,A)
【文献】米国特許第04401797(US,A)
【文献】特表2018-525497(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08K 3/00- 13/08
C08L 1/00-101/14
C08F 6/00-246/00
C08J 3/24
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a) ボロン酸エステルメタセシス反応によって交換可能なペンダント連結基及び交換可能な架橋基を有する架橋ポリマーであって、ビニルポリマー又はポリオレフィンの中から選択される直鎖状又は分岐状ポリマーの架橋によって得られる架橋ポリマーと、
(b) 遊離の一官能性ボロン酸エステルと
を含む組成物であって、
前記一官能性ボロン酸エステルが、以下の式(EB1)及び(EB2)のジオキサボロラン環及びジオキサボリナン環:
【化1】
(式中、
Rx、Rw及びRvは、同一であるか又は異なり、それぞれが、水素原子若しくは炭化水素基を表すか、又は一対として一緒になって、脂肪族環若しくは芳香族環を形成し、
Ryは、炭素原子を介して共有結合によってジオキサボロラン環又はジオキサボリナン環のホウ素原子に連結されている炭化水素基である)
の中から選択される、組成物。
【請求項2】
(a) 直鎖状又は分岐状ポリマーの架橋によって得られる、ボロン酸エステルメタセシス反応によって交換可能なペンダント連結基及び交換可能な架橋基を有する架橋ポリマーと、
(b) 遊離の一官能性ボロン酸エステルと
を含み、
前記一官能性ボロン酸エステルが、請求項1で定義した式(EB1)及び(EB2)のジオキサボロラン環及びジオキサボリナン環の中から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記直鎖状又は分岐状ポリマーが、架橋前に、ポリマー1グラムあたり、1,2-ジオール及び1,3-ジオール官能基を1mmol未満しか含有しておらず、
組成物が、架橋後に、ポリマー1グラムあたり、1,2-ジオール及び1,3-ジオール官能基を0.5mmol未満しか含有していないことを特徴とする、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記直鎖状又は分岐状ポリマーが、架橋前に、
- ジオキサボロラン環若しくはジオキサボリナン環の少なくとも1個の炭素原子によってポリマーに連結している式(EB1)又は(EB2)のボロン酸エステル官能基、或いは
- ジオキサボロラン環若しくはジオキサボリナン環のホウ素原子によってポリマーに連結している式(EB1)又は(EB2)のボロン酸エステル官能基
を有する側鎖基を有する、請求項2又は3に記載の組成物。
【請求項5】
溶融状態又は溶液中の、
- ・ ジオキサボロラン環若しくはジオキサボリナン環の少なくとも1個の炭素原子によってポリマーに連結している式(EB1)又は(EB2)のボロン酸エステル官能基、或いは
・ ジオキサボロラン環若しくはジオキサボリナン環のホウ素原子によってポリマーに連結している式(EB1)又は(EB2)のボロン酸エステル官能基
を有する側鎖基を有する、少なくとも1つの直鎖状又は分岐状ポリマーP1;及び
- ポリマーP1の側鎖基と反応して、ボロン酸エステルメタセシス反応により交換可能なペンダント連結基及び架橋基を有する架橋ポリマー組成物を形成することが可能な、式(EB1)又は(EB2)の少なくとも2つのボロン酸エステル基を有する少なくとも1つの添加物
の混合物から生じる、請求項2から4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
前記架橋ポリマー組成物が架橋ネットワークを形成している、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
添加物が、
- 以下の式(Ia)、(Ib1)、又は(Ib2)の化合物:
【化2】
(式中、
nは、1~6の間の整数であり、
iは、1からnの間の整数であり、
kは、0又は1に等しく、
kiはそれぞれ、0又は1に等しく、
R
1、R'
1、R''
1、R
3i、R'
3i、R''
3i、R
5、R''
5、R
7i、R''
7iは、同一であるか又は異なり、それぞれが、相互に独立して、水素原子又は炭化水素基を表し、
R
6、各R
8iは、同一であるか又は異なり、それぞれが、炭化水素基を表し、
{R
1、R'
1、R"
1}は、対で一緒になって、脂肪族環又は芳香族環を形成することができ、
{R
3i、R'
3i、R"
3i}は、対で一緒になって、脂肪族環又は芳香族環を形成することができ、
{R
5、R''
5}は、一緒になって、脂肪族環又は芳香族環を形成することができ、
{R
7i、R''
7i}は、一緒になって、脂肪族環又は芳香族環を形成することができ、
R
2及びR
4は、同一であるか又は異なり、それぞれが、炭化水素基を表し、
R
2は、炭素原子を介して共有結合によってホウ素原子に連結しており、
R
6、各R
8iは、炭素原子を介して共有結合によってホウ素原子に連結している);
- ・ ジオキサボロラン環若しくはジオキサボリナン環の少なくとも1個の炭素原子によってポリマーに連結している式(EB1)又は(EB2)のボロン酸エステル官能基、或いは
・ ジオキサボロラン環若しくはジオキサボリナン環のホウ素原子によってポリマーに連結している式(EB1)又は(EB2)のボロン酸エステル官能基
を有する直鎖状又は分岐状ポリマーP2;及び
- これらの混合物
の中から選択されることを特徴とする、請求項5又は6に記載の組成物。
【請求項8】
溶融状態又は溶液中の、
- グラフト化を可能にする官能基を含有する、少なくとも1つの直鎖状又は分岐状ポリマーP1';及び
- 一方の末端に、ポリマーP1'へのその分子の共有結合を可能にする官能基、もう一方の末端に、ジオキサボロラン環又はジオキサボリナン環の少なくとも1個の炭素原子によって分子の残りの部分に連結している式(EB1)又は(EB2)のボロン酸エステル官能基、及びそのホウ素原子によって分子の残りの部分に連結している式(EB1)又は(EB2)のボロン酸エステル官能基の中から選択される官能基を含む分子、
並びに/又は、
その2つの両末端にポリマーP1'にその分子が共有結合することを可能にする官能基を含み、その2つの末端の間に式(EB1)又は(EB2)のボロン酸エステル官能基を含む分子
の組合せ物であって、グラフト化して、ボロン酸エステルメタセシス反応によって交換可能なペンダント連結基及び架橋基を生成することが可能な組合せ物
の混合物から生じることを特徴とする、請求項2から4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか一項に記載の架橋ポリマー組成物を調製する方法であって、
- グラフト化を可能にする官能基を含有する、直鎖状又は分岐状ポリマーP1'を選択する工程;
- 一方の末端に、ポリマーP1'へのその分子の共有結合を可能にする官能基、もう一方の末端に、ジオキサボロラン環又はジオキサボリナン環の少なくとも1個の炭素原子によって分子の残りの部分に連結している請求項1で定義した式(EB1)又は(EB2)のボロン酸エステル官能基、及びそのホウ素原子によって分子の残りの部分に連結している式(EB1)又は(EB2)のボロン酸エステル官能基の中から選択される官能基を含む分子、
並びに/又は、
その2つの両末端に、ポリマーP1'にその分子が共有結合することを可能にする官能基を含み、その2つの末端の間に、式(EB1)又は(EB2)のボロン酸エステル官能基を含む分子
の組合せ物であって、グラフト化して、ボロン酸エステルメタセシス反応によって交換可能なペンダント連結基及び架橋基を生成することが可能な組合せ物
を選択する工程:及び
- 溶融状態又は溶液中で、前記ポリマーP1'と前記組合せ物を混合して組成物を得る工程と
を含む、方法。
【請求項10】
請求項1から8のいずれか一項に記載の組成物から得られる材料。
【請求項11】
請求項1から8のいずれか一項に記載の組成物を含む配合物。
【請求項12】
請求項5又は7で定義した添加物又は請求項8で定義した組合せ物の使用であって、
ボロン酸エステルメタセシス反応によって交換可能なペンダント連結基及び架橋基を有する架橋ポリマーと、
請求項1で定義した式(EB1)又は(EB2)の遊離の一官能性ボロン酸エステルと
を含む組成物を形成するための、
・ ジオキサボロラン環若しくはジオキサボリナン環の少なくとも1個の炭素原子によってポリマーに連結している式(EB1)又は(EB2)のボロン酸エステル官能基、或いは
・ ジオキサボロラン環若しくはジオキサボリナン環のホウ素原子によってポリマーに連結している式(EB1)又は(EB2)のボロン酸エステル官能基
を有する側鎖基を有する、少なくとも1つの直鎖状又は分岐状ポリマーP1;又は、
- グラフト化を可能にする官能基を含有する、直鎖状又は分岐状ポリマーP1'
の存在下における、使用。
【請求項13】
前記架橋ポリマーが架橋ネットワークを形成している、請求項12に記載の使用。
【請求項14】
直鎖状又は分岐状ポリマーを架橋するための組合せ物であって、
- A+B、
- A及び/又はB+C、
- A+請求項
7で定義した式(Ia)の化合物、又は
- B+請求項
7で定義した式(Ib1)又は(Ib2)の化合物
を含む、組合せ物の中から選択され、
A、B及びCは、以下の式:
【化3】
(式中、
G
1、G
2、G
3及びG
4は、それぞれ、相互に独立して、官能基化されるべきポリマー鎖へのその分子の共有結合形成を可能にする官能基を表し、
Rx、R''x及びRy、R'y、R''yは、炭化水素基であり、
R'v、R'w及びR'xは、同一であるか又は異なり、それぞれが、水素原子、炭化水素基を表すか、又は一対として一緒になって、脂肪族環若しくは芳香族環を形成し、
RvとRw、又はR''vとR''wは、同一であるか又は異なり、水素原子、炭化水素基を表すか、或いはそれらは一緒になって、又はRx若しくはR"xとそれぞれ一緒になって、脂肪族環又は芳香族環を形成し、
Ry、R'y、R''yは、炭素原子を介してホウ素に連結している)
に対応する、組合せ物。
【請求項15】
前記直鎖状又は分岐状ポリマーが、
・ ジオキサボロラン環若しくはジオキサボリナン環の少なくとも1個の炭素原子によってポリマーに連結している式(EB1)又は(EB2)のボロン酸エステル官能基、或いは
・ ジオキサボロラン環若しくはジオキサボリナン環のホウ素原子によってポリマーに連結している式(EB1)又は(EB2)のボロン酸エステル官能基
を有する側鎖基を有する、直鎖状又は分岐状ポリマーP1;又は、
- グラフト化を可能にする官能基を含有する、直鎖状又は分岐状ポリマーP1'
であることを特徴とする、請求項14に記載の
組合せ物。
【請求項16】
・ ジオキサボロラン環若しくはジオキサボリナン環の少なくとも1個の炭素原子によってポリマーに連結している式(EB1)又は(EB2)のボロン酸エステル官能基、或いは
・ ジオキサボロラン環若しくはジオキサボリナン環のホウ素原子によってポリマーに連結している式(EB1)又は(EB2)のボロン酸エステル官能基
を有する側鎖基を有する、少なくとも1つの直鎖状又は分岐状ポリマーP1;又は、
- グラフト化を可能にする官能基を含有する、直鎖状又は分岐状ポリマーP1'
の存在下での、請求項14に記載の組合せ物の使用であって、
ボロン酸エステルメタセシス反応によって交換可能なペンダント連結基及び架橋基を有する架橋ポリマーと、請求項1で定義した式(EB1)又は(EB2)の遊離の一官能性ボロン酸エステルとを含む組成物を形成するための使用。
【請求項17】
前記ポリマーP1又はP1'を含む組成物のレオロジーを、その組成物に請求項14に記載の組合せ物を添加することにより改変するための請求項16に記載した
組合せ物の使用であり、
レオロジーが、前記組合せ物の濃度を選択することによって改変される、使用。
【請求項18】
前記組成物が油又は塗料であることを特徴とする、請求項17に記載の
組合せ物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、交換反応を可能にするボロン酸エステル官能基を含む架橋ポリマーと、遊離の一官能性ボロン酸エステルとを含むポリマー組成物に関する。
【0002】
前記ポリマー組成物を製造するための2つの実施形態が、本明細書において開示されている。本発明は、特許請求の範囲の実施形態を対象とする。
【0003】
一実施形態では、これらの組成物は、重合性基を含有しない少なくとも1つのペンダント(pending)ボロン酸エステル基を含む、熱可塑性ポリマーのための前駆体モノマーと、ボロン酸エステルメタセシス反応によって交換可能なペンダント官能基及び架橋基を含有する架橋ポリマーのネットワークの形成を可能にする、少なくとも1つのボロン酸エステル基を含む架橋剤との重合から生じる。
【0004】
別の実施形態では、これらの組成物は、官能基化されているボロン酸エステル添加物によるポリマーの修飾(modification)から得られる。このポリマーは、予め官能基化されているボロン酸エステルであることができ、或いは前記添加物の添加時に官能基化され得る。特に、本発明は、ポリマーの挙動を官能性添加物の添加によって改変する(modify)ことを可能にする方法、すなわち、交換可能なボロン酸エステル連結基を含有する架橋ネットワークの形成を可能にする方法に関する。
【背景技術】
【0005】
驚くべきことに、室温で行うことができる、触媒を使用する又は使用しない、新規で、迅速なボロン酸エステルメタセシス反応が発見された。更に、この反応は、有利なことに、定量的である。
【0006】
本発明による「ボロン酸エステル」は、ジオキサボロラン基又はジオキサボリナン基を含む化合物を表す。
【0007】
本発明による「ジオキサボロラン」は、以下の式の基:
【0008】
【0009】
を表す。
【0010】
本発明による「ジオキサボリナン」は、以下の式の基:
【0011】
【0012】
を表す。
【0013】
本発明によるジオキサボロラン環及びジオキサボリナン環上の置換基は、ジオキサボロラン環及びジオキサボリナン環を構成する炭素原子及びホウ素原子に結合している基を表す。
【0014】
本発明によるボロン酸エステルは、ジオキサボロラン又はジオキサボリナン:
【0015】
【0016】
(式中、Rx、Rw及びRvは、同一であるか又は異なり、それぞれが、水素原子若しくは炭化水素基を表すか、又は一対として一緒になって、以下に定義されている脂肪族環若しくは芳香族環を形成する)
である。Ryは、以下に定義されている炭化水素基である。本発明によれば、Ry基は、炭素原子を介して共有結合によってボロン酸エステル官能基に結合している。
【0017】
本発明によれば、ボロン酸エステルのメタセシス反応により、ボロン酸エステル環上の置換基間の交換反応が可能になり、この反応は、以下の通り表すことができる:
【0018】
【0019】
「交換反応」は、式(EB1)又は(EB2)のボロン酸エステル官能基を含有する、有機分子、オリゴマー、ポリマー又はポリマーネットワークが、ボロン酸エステルメタセシス反応によってそれらの置換基を交換することができることを表す。これらの置換基は、炭化水素基、オリゴマー鎖又はポリマー鎖とすることができる。これらの基は、交換反応の前及び後に、共有結合によって、ジオキサボロラン環又はジオキサボリナン環の少なくとも1個の炭素原子及びジオキサボロラン環又はジオキサボリナン環のホウ素原子に結合する。ジオキサボロラン環又はジオキサボリナン環のホウ素原子に結合している置換基は、炭素原子を介して共有結合によって結合している。
【0020】
ボロン酸エステルメタセシス反応は、水分子を放出せず、水が存在することを必要としない。とりわけ、「交換反応」は、本発明のポリマーが、ボロン酸エステルメタセシス反応によって、それらが有するボロン酸エステル官能基(EB1)又は(EB2)の置換基をそれら自体の間で交換することができることを表す。本発明によれば、これらの官能基は、ペンダント基とすることができ、又はとりわけ官能基が架橋基の一部を形成する場合、ポリマー鎖の一部を形成することができる。好ましくは、これらの官能基は、ペンダント基であるか、又は架橋基の一部を形成する。このように、ポリマーは、それら自体の間で、化学結合を交換することが可能である。
【0021】
メタセシス反応は、触媒の存在下又は非存在下で実施することができる。好ましくは、触媒は、安定で、容易に入手可能であり、安価で非毒性である。
【0022】
メタセシス反応は、溶媒中、又はバルク中、すなわち溶媒の非存在下で行うことができる(carried)。
【0023】
これらのボロン酸エステルメタセシス反応により、熱硬化性ポリマー及び熱可塑性ポリマーの特性を示し、かつ不溶性で温かい時には展性となり得る、ポリマー組成物を得ることが可能となる。
【0024】
ボロン酸エステル及び1,2-ジオール又は1,3-ジオールはまた、エステル交換反応によって、それらの置換基を交換することができる。とはいえ、それらの反応性により、1,2-ジオール及び1,3-ジオールは、カルボン酸基又はエステル基を含有するポリマー物質中で、エーテル化又はエステル化反応等の、多数の寄生反応(parasite reaction)をもたらす。1,2-ジオール及び1,3-ジオールはまた、対象とする別の官能基と反応することができる。前述のカルボン酸官能基及びエステル官能基に加えて、エポキシド、イソシアネート及び無水物官能基及びハロゲン化誘導体を挙げることができ、この列挙は、排他的なものではない。更に、有機ポリマー配合物中の1,2-ジオール及び1,3-ジオールの存在によって引き起こされる寄生反応は、該ポリマーが、たいていの場合、架橋過程の間、使用及び/若しくは成形の間、又は再利用の間、より高い温度に晒されるので、ますます起こる。更に、アクリレート又はメタクリレート等のある種の対象となるビニルモノマーは、1,2-ジオール官能基又は1,3-ジオール官能基を有する場合、重合条件下で安定性に乏しいか又は不安定である。この理由のため、1,2-ジオール又は1,3-ジオール官能基は、多くの場合、重合工程中に保護されて、次に、ポリマーが一旦、合成されると脱保護する必要がある。このように、有機ポリマー上のペンダント1,2-ジオール又は1,3-ジオール官能基の存在は、寄生反応をもたらす、配合物中に組み込むことができる官能基を制限する、及び重合後の脱保護工程を追加することにより、ポリマー製造工程を複雑にする恐れがある。このことを考慮して、本発明者らは、架橋反応及び交換反応が、1,2-ジオール又は1,3-ジオールを含まない、架橋ポリマー組成物を開発した。
【0025】
定義によって、熱硬化性樹脂は、特に熱の作用時に、エネルギーの投入後に硬化するポリマーである。熱硬化性樹脂は、従来、そのポリマーマトリックスのガラス転移温度(Tg)に応じて、2種のファミリーに分類される。そのマトリックスが、作動温度よりも高いTgを有する熱硬化性樹脂は、硬質熱硬化性樹脂と呼ばれる一方、そのマトリックスが、作動温度よりも低いTgを有する熱硬化性樹脂は、エラストマーと呼ばれる。本発明によれば、熱硬化性樹脂は、硬質熱硬化性樹脂及びエラストマーの両方を表す。熱硬化性ポリマーから製造される材料は、高い機械的、熱的及び化学的耐性をそれらにもたらすように、硬化することが可能であるという利点を有しており、この理由のため、上記の材料は、ある種の用途において、金属に置きかえることができる。上記の材料は、金属よりも軽いという利点を有する。上記の材料はまた、コンポジット材料中のマトリックスとして使用することもできる。従来の熱硬化性樹脂は製造されなければならない:特に、それらは、鋳型成形されて、その開始時から最終使用までの間、適切な形状を有していなければならない。それらは、一旦重合すると、機械加工以外の変性(transformation)は不可能であり、その脆弱性のため、機械加工さえも困難である。熱硬化性樹脂をベースとする、軟質及び硬質部分並びにコンポジットは、変性又は成形することができず、又は再利用もすることができない。熱可塑性樹脂は、ポリマー材料の別のクラスに属する。熱可塑性樹脂は、鋳型成形又は射出成形(injection)によって高温で成形することができるが、熱硬化性樹脂ほど魅力のある、機械特性、並びに熱的耐性及び化学的耐性を有していない。更に、熱可塑性樹脂の成形は、多くの場合、非常に狭い温度範囲でしか行うことができない。熱可塑性樹脂が加熱されると、それらは液体になり、その流動性は、融解/ガラス転移温度あたりで急激に変わり、これにより、例えば、ガラス及び金属の場合に存在する、幅広い変性方法の適用ができない。
【0026】
架橋ポリマーを含む新規ポリマー組成物は、熱可塑性樹脂のように使用されながらも、熱硬化性樹脂の機械特性と不溶性を併せもつことができる。このように、熱硬化性樹脂の機械特性及び不溶性を示すが、硬化後の熱時に変性され得るポリマー組成物を開発することが可能である。特に、破壊、又はそれらの構造の分解を受けることなく、液体になる温度まで加熱することができる材料を開発することが可能である。更に、環境的理由のため、本ポリマー組成物は、好ましくは、再利用可能である。
【0027】
架橋及び交換可能な連結基の生成によって、ポリマー挙動、とりわけ熱可塑性挙動を改変することが可能な方法を開発することができる。有利には、これらの改変は、前記ポリマーを成形する操作の間、例えば押出成形、射出成形又は圧縮成形の間に、ポリマーに行うことができる。
【0028】
モノマーから調製される、ボロン酸エステルメタセシス反応により交換可能なペンダント連結基を含む連結基による架橋/連結ネットワークを可能にする重合方法を開発することも可能である。有利には、本発明は、考えられる熱可塑性ポリマーを調製するために通常、使用されるモノマーと組み合わせて使用される添加物を提案する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0029】
【文献】Mechanical Properties of Solid Polymers、著者:I. M. Ward、J. Sweeney;編集者: Wiley-Blackwell;版:第3版; Print ISBN: 9781444319507; DOI: 10.1002/9781119967125
【文献】Charles E. Hoyle、Christopher N. Bowman、Angew. Chem. Int. Ed. 2010、49、1540~1573頁
【文献】Kemal Arda Gunay、Patrick Theato、Harm-Anton Klok、Journal of Polymer Science Part A: Polymer Chemistry 2013、51、1~28頁
【文献】Brian D. Mather、Kalpana Viswanathan、Kevin M. Miller、Timothy E. Long、Prog. Polym. Sci. 2006、31、487~531頁
【文献】Charles E. Hoyle、Andrew B. Lowe、Christopher N. Bowman、Chem. Soc. Rev.、2010、39、1355~1387頁
【文献】G. Moad、Prog. Polym. Sci. 1999、24、81~142頁
【文献】Elisa Passagliaa、Serena Coiai、Sylvain Augier、Prog. Polym. Sci. 2009、34、911~947頁
【文献】T. C. Chung、Prog. Polym. Sci. 2002、27、39~85頁
【文献】Chulsung Bae、John F. Hartwig、Hoyong Chung、Nicole K. Harris、Karen A. Switek、Marc A. Hillmyer、Angew. Chem. Int. Ed. 2005、44、6410~6413頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0030】
このように、本発明の目的は、熱硬化特性と熱可塑特性とを併せもつことができる、ポリマー組成物であって、以下の方法によって調製することができる、ポリマー組成物を提案することである:
- ポリマーを、1つ又は複数の添加物と混合して、ボロン酸エステルメタセシス反応により交換可能なペンダント連結基及び架橋基を含有する、架橋ポリマー組成物、好ましくは架橋ネットワークの形成を可能にすることによる方法であり、架橋工程において、1,2-ジオール官能基又は1,3-ジオール官能基を含有するポリマー又は添加物を使用することを必要としない方法。本発明のポリマーは、前記添加物の添加前に、ボロン酸エステルで官能基化されてもよく、又は前記添加物の添加は、ポリマーのボロン酸エステル官能基化及び架橋を可能にすることができる。
- ボロン酸エステルメタセシス反応により交換可能なペンダント連結基及び架橋基を含有する、架橋ネットワークをもたらす、以下に記述するモノマー及び化合物の重合によるものである。ここでもやはり、1,2-ジオール官能基又は1,3-ジオール官能基の存在は、架橋及び交換反応に必要とされない。
【0031】
更に、本発明の目的は、ポリマーを含む組成物に、1つ又は複数の添加物を添加することによる、このようなポリマーの挙動、例えば、レオロジーを改変する方法である。この添加物又はこれらの添加物は、官能基化されているボロン酸エステルであり、ボロン酸エステルメタセシス反応によって、交換可能な連結基を含有する架橋ポリマー、好ましくは架橋ネットワークの組成物の形成を可能にする。本ポリマーは、前記添加物の添加前に、ボロン酸エステルで官能基化されていてもよく、又は前記添加物の添加は、ポリマーのボロン酸エステル官能基化及び架橋を可能にしてもよい。
【0032】
本発明の別の目的は、ボロン酸エステルメタセシス反応により交換可能なペンダント連結基及び架橋基を含有する架橋ネットワークをもたらす、重合方法である。
【0033】
これを行うためには、本発明者らは、交換可能な架橋基及びペンダント官能基を含有する、架橋ポリマー組成物、好ましくはポリマーネットワークを得ることを可能にする組成物であると考え、これを開発した。
【0034】
架橋基内の交換可能なペンダント官能基及び交換可能な官能基の存在により、形成されるポリマーネットワークの巨視的挙動を、架橋度とは無関係に、容易に制御することが可能となる。このように、所与の架橋度、所与の温度及び所与の歪みの場合に、本発明のポリマーネットワークは、より多くの交換可能なペンダント官能基を含有すると、応力をより迅速に緩和するであろう。同様に、所与の架橋度、所与の温度及び所与のせん断の場合に、本発明のネットワークは、より多くの交換可能なペンダント官能基を含有すると、より迅速に流動するであろう。
【0035】
本発明者らは、高温でさえも不溶性でありながら、流動することができ、かつ展性がある熱硬化系を得る目的で、ペンダントアルコール官能基、及びエステル官能基を含有する架橋基を含有する、メタクリレート及びスチレンポリマーネットワークを調製しようとしたが、成功しなかった。
【0036】
これを行うため、とりわけ、2-ヒドロキシエチルメタクリレート又は4-ビニルベンジルアルコール等のアルコール官能基、及びとりわけ、エチレングリコールジメタクリレート、1,4-ブタンジオールジメタクリレート、1,6-ヘキサンジオールジメタクリレート又はビスフェノールAジメタクリレート等のエステル官能基を含有する架橋剤を有するモノマーのラジカル重合によって調製されるポリマーネットワークを、とりわけ、酢酸亜鉛、チタン(IV)エトキシド、チタン(IV)イソプロポキシド、トリフェニルホスフィン又はトリアザビシクロデセン等の様々なエステル交換用触媒の存在下で調製してきた。様々な配合物を試験したが、それらの構造の分解を示すことなく硬化した後も高温で依然として変性可能でありつつも、熱硬化性樹脂の機械特性を示す、又はその機械特性の顕著な損失なしに再利用することができる、ポリマー組成物の調製は可能にはならなかった。
【0037】
本発明者らはまた、高温でさえも不溶性でありながら、流動することができ、かつ展性がある熱硬化系を得る目的で、ペンダント一級アミン官能基を含有するモノマー又はポリマーに由来するイミン官能基を組み込んだ架橋基を含有するメタクリレートポリマーネットワークを調製しようとしたが、成功しなかった。
【0038】
これを行うために、イミン官能基を組み込んだ架橋基を含有するメタクリレートポリマーネットワークを、2-アミノエチルメタクリレート、2-アミノエチルメタクリルアミド又は4-ビニルベンジルアミン等の一級アミン官能基を有するモノマーであるメタクリル酸メチル、及び式(I)CF1の化合物等のイミン官能基を含有する架橋剤、及び/又はテレフタルアルデヒドからのラジカル重合によって調製してきた。様々な配合物を試験したが、それらの構造の分解を示すことなく硬化した後も高温で依然として変性可能でありつつも、熱硬化性樹脂の機械特性を示す、又はその機械特性の顕著な損失なしに再利用することができる、ポリマー組成物の調製は可能にはならなかった。
【0039】
同様に、本発明者らは、高温でさえも不溶性でありながら、流動することができ、かつ展性がある熱硬化系を得る目的で、ペンダント1,2-ジオール及び/若しくは1,3-ジオール官能基、及びボロン酸エステル官能基(EB1)若しくは(EB2)を含有する架橋基を含有する、メタクリレートポリマーネットワークネットワークを調製しようとしたが、成功しなかった。
【0040】
これを行うために、ボロン酸エステル官能基を組み込んだ架橋基を含有するメタクリレートポリマーネットワークを、5,6-ヘキサンジオールメタクリレート及びジメタクリレート等の1,2-ジオール官能基を有するモノマーであるメタクリル酸メチル、又はラジカル経路によって重合可能な2つの官能基間、すなわち2つのメタクリレート官能基間、又はメタクリレート官能基とスチレン官能基との間に、ボロン酸エステル官能基(EB1)又は(EB2)を含有するメタクリレート-スチレン架橋剤からのラジカル重合により調製してきた。様々な配合物を試験したが、硬化した後も高温で依然として変性可能である、熱硬化性樹脂の機械特性を示す、又はその機械特性の顕著な損失なしに再利用することができる、ポリマー組成物を調製することができなかった。
【0041】
予期せぬことに、本発明者らは、ペンダントボロン酸エステル官能基及びボロン酸エステルを組み込んだ架橋基を含有するポリマーネットワークを調製することに成功した。こうして、本発明者らは、高温でさえも不溶性でありながら、流動することができ、かつ展性がある、熱硬化系を調製することができることに成功した。
【0042】
熱硬化性樹脂の機械特性及び不溶性を示すが、ガラス転移温度(Tg)又は融解温度(Tf)が25℃よりも低い場合、ポリマーのガラス転移温度又は融解温度よりも高い温度、好ましくはTg又はTf+10℃より高い、より好ましくはTg又はTf+20℃より高い、更により好ましくはTg又はTf+40℃より高い、更により好ましくはTg又はTf+80℃より高い温度で硬化した後に、構造の破壊又は分解を受けることなく変性可能であり、その機械特性の顕著な損失なしに再利用することができるポリマー組成物を調製することが可能である。
【課題を解決するための手段】
【0043】
本発明の目的は、
(a)以下に記載されている共重合によって得られることが好ましい、ボロン酸エステルメタセシス反応によって交換可能なペンダント連結基及び交換可能な架橋基を含有する架橋ポリマーと、
(b)遊離の一官能性ボロン酸エステルと
を含む組成物であって、前記ボロン酸エステルが、以下の式(EB1)及び(EB2)のジオキサボロラン環及びジオキサボリナン環:
【0044】
【0045】
(式中、
Rx、Rw及びRvは、同一であるか又は異なり、それぞれが、水素原子若しくは炭化水素基を表すか、又は一対として一緒になって、脂肪族環若しくは芳香族環を形成し、
Ryは、炭素原子を介して共有結合によってジオキサボロラン環又はジオキサボリナン環のホウ素原子に連結されている炭化水素基である)
の中から選択される、組成物である。
【0046】
好ましくは、本組成物は、架橋後、ポリマー1グラムあたり、1,2-ジオール及び1,3-ジオール官能基を0.5mmol未満しか含有しない。
【0047】
第1の実施形態では、架橋ポリマーである組成物(a)は、以下の化合物:
(a)重合性基を含有しない少なくとも1つのペンダントボロン酸エステル基を含む、熱可塑性ポリマーのための前駆体モノマー、
(b)ボロン酸エステルメタセシス反応によって交換可能なペンダント官能基及び架橋基を含有する架橋ポリマーのネットワークの形成を可能にする、少なくとも1つのボロン酸エステル基を含む架橋剤、
〔ここで、前記ボロン酸エステルは、以下の式(EB1)及び(EB2)の下記ジオキサボロラン環及びジオキサボリナン環:
【0048】
【0049】
(式中、
Rx、Rw及びRvは、同一であるか又は異なり、それぞれが、水素原子若しくは炭化水素基を表すか、又は一対として一緒になって、脂肪族環若しくは芳香族環を形成し、
Ryは、炭素原子を介して共有結合によってジオキサボロラン環又はジオキサボリナン環のホウ素原子に連結されている炭化水素基である)
の中から選択される。〕
(c)場合により(possibly)、式(EB1)又は(EB2)のボロン酸エステル基を含まない、熱可塑性ポリマーのための前駆体であるモノマー
の共重合によって調製される。
【0050】
架橋剤は、
・ 以下の式(Ia)又は(Ib)の化合物:
【0051】
【0052】
(式中、n、i、k、ki、R1、R'1、R''1、R3i、R'3i、R''3i、R5、R''5、R7i、R''7i、R6、各R8i、R2及びR4は、以下に定義されている。R2は、炭素原子を介して共有結合によってボロン酸エステル官能基に連結している。R6、各R8iは、炭素原子を介して共有結合によってホウ素原子に連結している)
・ モノマーあたり少なくとも1つのボロン酸エステル官能基を含み、かつ少なくとも1つの重合性基を有する、熱可塑性ポリマー又は熱硬化性樹脂のための前駆体であるボロン酸エステル官能性化合物である、モノマー(b)、
・ 及びそれらの混合物
の中から選択される。
【0053】
特に、モノマー(b)は、以下の式(IIIa)、(IIIb1)又は(IIIb2)である:
【0054】
【0055】
(式中、R31、R'31、R''31、R35、R''35、R36、R32及びR34、GFP3、m3、kは、以下に定義する通りである。R32は、炭素原子を介して共有結合によってボロン酸エステル官能基に連結している。R36は、炭素原子を介して共有結合によってホウ素原子に連結している)。
【0056】
特に、モノマー(b)は、以下の式(IVa)又は(IVb):
【0057】
【0058】
(式中、R41、R''41、R45、R''45、R42、R'42、R46及びR44、GFP4、GFP'4、m4及びkは、以下に定義する通りである。R42は、炭素原子を介して共有結合によってボロン酸エステル官能基に連結している。R46は、炭素原子を介して共有結合によってホウ素原子に連結している)
を有する。
【0059】
好ましくは、モノマー(a)、(b)及び(c)は、単一重合性基を含み、重合は、ラジカル重合、配位による重合若しくは開環重合であるか、又はモノマー(a)、(b)及び(c)は、2つの重合可能な基だけを含み、重合は、重付加又は重縮合である。
【0060】
本発明によれば、含まれるモノマー重合様式によって2つの付加反応又は縮合反応を生じることができるいかなる官能基も、2つの重合可能な基と等価である。
【0061】
第2の実施形態では、本発明の目的は、
(a)直鎖状又は分岐状ポリマーの架橋によって得られる、ボロン酸エステルメタセシス反応によって交換可能なペンダント連結基及び交換可能な架橋基を含有する架橋ポリマーと、
(b)遊離の一官能性ボロン酸エステルと
を含む組成物であって、前記ボロン酸エステルが、以下の式(EB1)及び(EB2)のジオキサボロラン環及びジオキサボリナン環:
【0062】
【0063】
(式中、
Rx、Rw及びRvは、同一であるか又は異なり、それぞれが、水素原子若しくは炭化水素基を表すか、又は一対として一緒になって、脂肪族環若しくは芳香族環を形成し、
Ryは、炭素原子を介して共有結合によってジオキサボロラン環又はジオキサボリナン環のホウ素原子に連結されている炭化水素基である)
の中から選択される、組成物である。
【0064】
直鎖状又は分岐状ポリマーは、架橋前に、ポリマー1グラムあたり、1,2-ジオール及び/又は1,3-ジオール官能基を1mmol未満しか好ましくは含有しておらず、本組成物は、架橋後に、ポリマー1グラムあたり、1,2-ジオール及び/又は1,3-ジオール官能基を0.5mmolしか好ましくは含有しない。
【0065】
好ましくは、架橋前のこのポリマーは、
- ジオキサボロラン環若しくはジオキサボリナン環の少なくとも1個の炭素原子によってポリマーに連結している式(EB1)又は(EB2)のボロン酸エステル官能基、或いは
- ジオキサボロラン環若しくはジオキサボリナン環のホウ素原子によってポリマーに連結している式(EB1)又は(EB2)のボロン酸エステル官能基
を有する側鎖基を有する直鎖状又は分岐状ポリマーである。
【0066】
本発明の一実施形態では、本組成物は、溶融状態又は溶液中の、
- 少なくとも1つの直鎖状又は分岐状ポリマーであって、
・ ジオキサボロラン環若しくはジオキサボリナン環の少なくとも1個の炭素原子によってポリマーに連結している式(EB1)又は(EB2)のボロン酸エステル官能基、或いは
・ ジオキサボロラン環若しくはジオキサボリナン環のホウ素原子によってポリマーに連結している式(EB1)又は(EB2)のボロン酸エステル官能基
を有する側鎖基を有する、少なくとも1つの直鎖状又は分岐状ポリマーP1と、
- ポリマーP1の側鎖基と反応して、ボロン酸エステルメタセシス反応により交換可能なペンダント連結基及び架橋基を有する架橋ポリマー組成物、好ましくは架橋ネットワークを形成することが可能な式(EB1)又は(EB2)の少なくとも2つのボロン酸エステル基を有する、少なくとも1つの添加物と
の混合物から生じる。
【0067】
添加物又は架橋剤は、好ましくは、上記及び下記に記載されている、式(Ia)又は(Ib)の化合物である。
【0068】
添加物はまた、
- ジオキサボロラン環若しくはジオキサボリナン環の少なくとも1個の炭素原子によってポリマーに連結している式(EB1)又は(EB2)のボロン酸エステル官能基、或いは
- ジオキサボロラン環若しくはジオキサボリナン環のホウ素原子によってポリマーに連結している式(EB1)又は(EB2)のボロン酸エステル官能基
を有する直鎖状又は分岐状ポリマーP2とすることもできる。
【0069】
本発明の一実施形態では、本組成物は、溶融状態又は溶液中の、
- グラフト化を可能にする官能基を含有する、少なくとも1つの直鎖状又は分岐状ポリマーP1'と、
- 一方の末端に、ポリマーP1'へその分子の共有結合を可能にする官能基、もう一方の末端に、ジオキサボロラン環又はジオキサボリナン環の少なくとも1個の炭素原子によって分子の残りの部分に連結している式(EB1)又は(EB2)のボロン酸エステル官能基、及びそのホウ素原子によって分子の残りの部分に連結している式(EB1)又は(EB2)のボロン酸エステル官能基の中から選択される官能基を含む分子、並びに/又は、その2つの両末端にポリマーP1'にその分子が共有結合することを可能にする官能基を含み、その2つの末端の間に式(EB1)又は(EB2)のボロン酸エステル官能基を含む分子の組合せ物であって、グラフト化して、ボロン酸エステルメタセシス反応によって交換可能なペンダント連結基及び架橋基を生成することが可能な組合せ物と
の混合物から生じる。
【0070】
直鎖状又は分岐状ポリマー、好ましくはP1、P1'又はP2は、好ましくは、ビニルポリマー、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリシロキサン又はシリコーン及び多糖類の中から選択されるポリマーである。
【0071】
本発明の別の目的は、
- 直鎖状又は分岐状ポリマーP1を選択する工程であって、直鎖状又は分岐状ポリマーP1が、
・ ジオキサボロラン環若しくはジオキサボリナン環の少なくとも1個の炭素原子によってポリマーに連結している式(EB1)又は(EB2)のボロン酸エステル官能基、或いは
・ ジオキサボロラン環若しくはジオキサボリナン環のホウ素原子によってポリマーに連結している式(EB1)又は(EB2)のボロン酸エステル官能基
を有する側鎖基を有する、工程と、
- ポリマーP1の側鎖基と反応して、ボロン酸エステルメタセシス反応により交換可能な連結基及び架橋基を含有する架橋ポリマー組成物、好ましくは架橋ネットワークを形成することが可能な式(EB1)又は(EB2)の少なくとも2つのボロン酸エステル基を有する、少なくとも1つの添加物を選択する工程と、
- 溶融状態又は溶液中で、前記ポリマーP1と前記添加物を混合して、前記組成物を得る工程と
を含む、架橋ポリマー組成物を調製する方法である。
【0072】
本発明の別の目的は、
- グラフト化を可能にする官能基を含有する、直鎖状又は分岐状ポリマーP1'を選択する工程と、
- 一方の末端に、ポリマーP1'へのその分子の共有結合を可能にする官能基、もう一方の末端に、ジオキサボロラン環又はジオキサボリナン環の少なくとも1個の炭素原子によって分子の残りの部分に連結している式(EB1)又は(EB2)のボロン酸エステル官能基、及びそのホウ素原子によって分子の残りの部分に連結している式(EB1)又は(EB2)のボロン酸エステル官能基の中から選択される官能基を含む分子、並びに/又は、その2つの両末端にポリマーP1'にその分子が共有結合することを可能にする官能基を含み、その2つの末端の間に式(EB1)又は(EB2)のボロン酸エステル官能基を含む分子の組合せ物であって、グラフト化して、ボロン酸エステルメタセシス反応によって交換可能なペンダント連結基及び架橋基を生成することが可能な組合せ物を選択する工程と
- 溶融状態又は溶液中で、前記ポリマーP1'と前記組合せ物を混合する工程と
を含む、架橋ポリマー組成物を調製する方法である。
【0073】
本発明の別の目的は、本発明による組成物から得られる材料である。本発明の別の目的は、本発明による組成物を含む配合物である。
【0074】
本発明の別の目的は、ボロン酸エステルメタセシス反応によって交換可能なペンダント連結基及び架橋基を含有する架橋ポリマー、好ましくは架橋ネットワークと、式(EB1)又は(EB2)の遊離の一官能性ボロン酸エステルとを含む組成物を形成するための、直鎖状若しくは分岐状ポリマーP1又はP1'の存在下における、本発明において定義されているもの等の添加物、又は本発明において定義されているもの等の組合せ物の使用である。
【0075】
本発明の別の目的は、直鎖状又は分岐状ポリマーを架橋するための組合せ物であって、前記組合せ物は、
- A+B、
- A及び/又はB+C、
- A+式(Ia)の化合物、又は
- B+式(Ib)の化合物
を含む、組合せ物の中から選択される。
【0076】
A、B及びCは、以下の式:
【0077】
【0078】
(式中、
G1、G2、G3及びG4は、それぞれ、相互に独立して、官能基化されるべきポリマー鎖へのその分子の共有結合形成を可能にする官能基を表し、
Rx、R''x及びRy、R'y、R''yは、炭化水素基であり、
R'v、R'w及びR'xは、同一であるか又は異なり、それぞれが、水素原子、炭化水素基を表すか、又は一対として一緒になって、脂肪族環若しくは芳香族環を形成し、
RvとRw、又はR''vとR''wは、同一であるか又は異なり、水素原子、炭化水素基を表すか、或いはそれらは一緒になって、又はRx若しくはR"xとそれぞれ一緒になって、脂肪族環又は芳香族環を形成し、
Ry、R'y、R''yは、炭素原子を介してホウ素に連結している)
に対応する。
【0079】
本発明の別の目的は、ボロン酸エステルメタセシス反応によって交換可能なペンダント連結基及び架橋基を含有する架橋ポリマー、好ましくは架橋ネットワークと、式(EB1)又は(EB2)の遊離の一官能性ボロン酸エステルとを含む組成物を形成するため、特に、前記ポリマーP1又はP1'を含む油又は塗料等の組成物のレオロジーを、本組成物に本発明による組合せ物を添加することによって改変するための、本発明による組合せ物の直鎖状若しくは分岐状ポリマーP1又はP1'の存在下での使用である。レオロジーは、前記組合せ物の濃度を選択することによって改変される。
【0080】
定義:
ポリマー、直鎖状ポリマー、分岐状ポリマーの定義:
ポリマーは、様々な分子寸法、とりわけ様々なモル質量からなる一式のポリマー鎖を含む。ポリマー鎖は、多数の、繰り返し単位と呼ばれるモノマー単位の共有結合性構築物(assembly)からなる。そのように定義されているポリマー鎖は、単一分子のものよりもかなり大きな分子寸法(そのモル質量によって特徴付けられる)を有しており、5超のモノマー単位、好ましくは20超のモノマー単位、更により好ましくは50超のモノマー単位からなる共有結合性構築物からなる。
【0081】
単一の種類のモノマー単位を含むポリマー鎖は、ホモポリマーと呼ばれる。いくつかの種類のモノマー単位を含むポリマー鎖は、コポリマーと呼ばれる。本発明によれば、ポリマー及びポリマー鎖は、ホモポリマーとコポリマーの両方を表す。
【0082】
ポリマー鎖を構成するモノマー単位は、様々な数の他のモノマー単位に連結され得る。モノマー単位が連結される他のモノマー単位の数が、価数と呼ばれる。他の1つのモノマー単位に連結しているモノマー単位は、価数1を有しており、ポリマー鎖の末端に相当する。2つの他のモノマー単位に連結しているモノマー単位は、価数2を有しており、ポリマー鎖の直鎖状配列に対応する。他の2超のモノマー単位に連結しているモノマー単位は、2超の価数を有しており、分岐点に相当する。2つの末端を有するポリマー鎖は、直鎖状ポリマー鎖である。したがって、直鎖状ポリマー鎖は、価数2を有するモノマー単位、及び価数1を有する2つの単位からなる。2つ超の末端を有しており、そのモル質量が限定値を有するポリマー鎖は、分岐状ポリマー鎖である。したがって、分岐状ポリマー鎖は、価数2を有するモノマー単位、価数2超のモノマー、及び価数1を有する2つ超のモノマー単位からなる。
【0083】
本発明によれば、ポリマー及びポリマー鎖は、直鎖状ポリマー鎖と分岐状ポリマー鎖の両方を表す。
【0084】
ボロン酸エステルの定義:
本発明による「ボロン酸エステル」は、背景技術で定義されている通り、ジオキサボロラン基又はジオキサボリナン基を含む化合物を表す。
【0085】
1,2-ジオール及び1,3-ジオールの定義:
本発明による「1,2-ジオール」は、遊離の有機分子、オリゴマー、ポリマー又はポリマーネットワークであるかに関わらず、隣接炭素原子又はビシナル炭素原子上に、2つのヒドロキシル(-OH)基を含有する化合物を表す。非限定例には、エタン-1,2-ジオール又はエチレングリコール(HO-(CH2)2-OH)又はプロパン-1,2-ジオール(又はプロピレングリコール、HO-CH2-CH(OH)-CH3)が含まれる。
【0086】
本発明による「1,3-ジオール」は、遊離の有機分子、オリゴマー、ポリマー又はポリマーネットワークであるかに関わらず、1個の原子によって分離されている炭素原子上に、2つのヒドロキシル(-OH)基を含有する、化合物を表す。非限定例には、プロパン-1,3-ジオール(HO-(CH2)3-OH)又はブタン-1,3-ジオール(HO-(CH2)2-CH(OH)-CH3)が含まれる。
【0087】
ペンダント官能基の定義:
ボロン酸エステル官能基(EB1)又は(EB2)が、1超の価数を有するモノマー単位に、その炭化水素置換基Rx又はRy(以下の定義を参照されたい)の1つだけによる共有結合によって、又はその置換基{Rx、Rw}若しくは{Rx、Rv}が一緒になって、脂肪族環若しくは芳香族環を形成する場合は、これらの置換基によって連結している場合、ボロン酸エステル官能基(EB1)又は(EB2)はペンダントである。言い換えると、官能基が、その炭化水素置換基Rx又はRy(以下の定義を参照されたい)の1つだけによるポリマー鎖への共有結合によって、又はその置換基{Rx、Rw}若しくは{Rx、Rv}が一緒になって、脂肪族環又は芳香族環を形成する場合、及びポリマー鎖の末端を構成していない場合に、これらの置換基によって連結している場合、上記の官能基はペンダントである。
【0088】
ボロン酸エステル官能基(EB1)又は(EB2)が、1に等しい価数を有するモノマー単位に、その炭化水素置換基Rx又はRy(以下の定義を参照されたい)の1つだけによる共有結合によって、又はその置換基{Rx、Rw}若しくは{Rx、Rv}が一緒になって、脂肪族環又は芳香族環を形成する場合は、これらの置換基によって連結している場合、ボロン酸エステル官能基(EB1)又は(EB2)は末端である、又は末端鎖を構成している。
【0089】
ボロン酸エステル官能基(EB1)又は(EB2)が、前記ボロン酸エステル官能基を含まない少なくとも2つの他のモノマー単位に共有結合しているモノマー単位に、その炭化水素置換基Rxによって共有結合により連結している場合、及びボロン酸エステル官能基(EB1)又は(EB2)が、前記ボロン酸エステル官能基を含まない少なくとも2つの他のモノマー単位に共有結合しているモノマー単位に、その炭化水素置換基Ryによって共有結合により連結している場合、ボロン酸エステル官能基(EB1)又は(EB2)は、架橋基の一部を形成している。
【0090】
置換基{Rx、Rw}又は{Rx、Rv}が一緒になって、脂肪族環又は芳香族環を形成する場合、ボロン酸エステル官能基(EB1)又は(EB2)はまた、前記ボロン酸エステル官能基を含まない少なくとも2つの他のモノマー単位に共有結合しているモノマー単位に、それらがその置換基{Rx、Rw}又は{Rx、Rv}によって連結している場合、及びそれらが、前記ボロン酸エステル官能基を含まない少なくとも2つの他のモノマー単位に共有結合しているモノマー単位に、その炭化水素置換基Ryによって共有結合により連結している場合、架橋基の一部を形成することができる。
【0091】
このように、本発明による用語「ペンダント基」は、ポリマー鎖の側鎖基を表す。本発明による「側鎖基」は、オリゴマー又はポリマーではない、置換基を表す。側鎖基は、ポリマーの主鎖とは一体化されていない。本発明による「ペンダントボロン酸エステル基」は、ジオキサボロラン官能基又はジオキサボリナン官能基を含む側鎖基を表す。このように、式(EB1)又は(EB2)のボロン酸エステルがペンダントである場合、その2つの置換基Rx又はRyの一方は、それ自体のボロン酸エステル官能基を介する場合を除いて、ポリマー鎖に連結してない。更に、式(EB1)又は(EB2)のボロン酸エステルがペンダントである場合、置換基Rv及びRwは、前記ボロン酸エステル官能基を介する場合を除いて、ポリマー鎖に連結しておらず、それらの1つが、ジオキサボロラン環又はジオキサボリナン環の別の炭素原子上のRx置換基を有する脂肪族環又は芳香族環を形成しない限り、前記Rx置換基は、ポリマー鎖に連結している。式(EB1)又は(EB2)のボロン酸エステルは、そのジオキサボロラン環若しくはジオキサボリナン環のホウ素原子によって、そのジオキサボロラン環若しくはジオキサボリナン環の炭素原子の1つによって、又はこれらが一緒になって、脂肪族環若しくは芳香族環を形成する場合、そのジオキサボロラン環若しくはジオキサボリナン環の炭素原子の2個又は3個によって、側鎖基に連結することができる。
【0092】
「ペンダントボロン酸エステル官能基」という表現が、モノマーと見なすために使用される場合、それは、本発明によれば、前記モノマーの重合後に、前記ボロン酸エステル官能基はペンダントとなるか、又は連結基の一部を形成することを表す。このように、「ペンダントボロン酸エステル官能基を有するモノマー」という表現は、考えられるボロン酸エステル官能基は、前記モノマーの重合後に、得られたポリマーの主鎖の一部を形成しないことを示す。
【0093】
遊離分子の定義:
本発明によれば、分子は、組成物のポリマーへの共有結合によって連結していない場合、「遊離」という。
【0094】
本発明によれば、「遊離の一官能性ボロン酸エステル」は、1つだけのボロン酸エステル官能基(EB1)又は(EB2)を含有する遊離分子である。「遊離の一官能性ボロン酸エステル」は、これらが、ボロン酸エステル官能基(式(EB1)又は(EB2)以外のボロン酸エステルを含む)、ボロン酸、1,2-ジオール又は1,3-ジオールではない限り、1つ若しくは複数の他の官能基を含有してもよく、又は含有していなくてもよい。
【0095】
架橋の定義:
架橋又はポリマー鎖架橋は、最初は共有結合によって他に連結されていないポリマー鎖間の化学的な共有結合の生成からなる。架橋は、ポリマーを構成する様々な鎖の間に、共有結合によって、結合の増加を伴う。直鎖状又は分岐状ポリマー鎖の架橋は、鎖、とりわけモル質量の分子寸法の増加を伴い、架橋ポリマーのネットワークの取得をもたらすことができる。架橋ポリマーのネットワークの架橋は、以下に提示されている定義による、非反応性良溶媒に不溶な質量分率の増加を伴う。
【0096】
本発明によれば、架橋は、ポリマーのペンダント基上、及び/又はポリマー内のペンダント基上、及び以下に定義されている式(Ia)又は(Ib)の化合物上の、ボロン酸エステル官能基(EB1)と(EB2)との間のメタセシス反応の結果であり、とりわけそれが原因である。好ましくは、架橋は、ポリマーのペンダント基上及び/又はポリマー内のペンダント基上、及び式(Ia)若しくは(Ib)の化合物上の、ボロン酸エステル官能基間のメタセシス反応の結果である。このように、ボロン酸エステル官能基間のメタセシス反応によるそれぞれの架橋反応に関すると、1当量の遊離の一官能性ボロン酸エステルが、相補的(complementary)なペンダントジオキサボロラン官能基によって官能基化された直鎖状ポリマーのメタセシス反応による架橋の場合、
図3に例示されている通り、生成する。好ましくは、架橋は、ポリマーのペンダント基上及び/又はポリマー内のペンダント基上、及び式(Ia)若しくは(Ib)の化合物上の、ボロン酸エステル官能基間のメタセシス反応にもっぱら起因する。
【0097】
本発明による「架橋ネットワーク」は、架橋ポリマーのネットワークを表す。
【0098】
本発明による「架橋ポリマーのネットワーク」は、構成されているポリマー及び/又はオリゴマー鎖にとって非反応性良溶媒に1/10の質量分率で浸漬されると、共有結合によって互いに連結されている一連のポリマー及び/又はオリゴマー鎖が、大気圧、及び融解温度と溶媒の沸点との間の温度で、48時間、浸漬した後に、0.1%超、好ましくは0.5%、1%、2%、5%、10%、20%、30%、40%、50%及び70%超の不溶性質量分率を示すことを示す。非反応性良溶媒は、ポリマー鎖を分解しない、とりわけエステル交換反応によってボロン酸エステル官能基を分解しない又はそれと反応しない良溶媒であり、かつボロン酸エステルメタセシス反応に関与しない良溶媒である。不溶性は、裸眼によって、又は0.2マイクロメートル、好ましくは0.4マイクロメートル、更により好ましくは1マイクロメートルの多孔度を有するフィルターに本配合物を通すことによって評価することができる。
【0099】
架橋は、少なくとも2つのポリマー鎖を互いに連結する架橋基の生成を伴う。これらの架橋基は、好ましくは、ボロン酸エステル官能基を含有する。こうして、本組成物は、架橋の後、架橋基内にボロン酸エステル官能基を含み、好ましくは、ポリマーは、ペンダントボロン酸エステル官能基を含む。
【0100】
ガラス転移の定義:
ガラス転移温度Tgは、減衰係数又は損失係数であり、tanδの値が、1Hzにおいて動的機械分析によって最大となる温度として定義される。減衰係数又は損失係数tanδは、損失弾性率E"の保存弾性率E'に対する比として定義される(Mechanical Properties of Solid Polymers、著者:I. M. Ward、J. Sweeney;編集者: Wiley-Blackwell;版:第3版; Print ISBN: 9781444319507; DOI: 10.1002/9781119967125)。
【0101】
ポリマー組成物の定義:
ポリマー組成物は、直鎖状若しくは分岐状ポリマーの均一又は非均一な混合物として定義され、これらのポリマーは、ボロン酸エステルメタセシス反応により交換可能なペンダント連結基及び架橋基を含有する架橋基によって連結されていてもよく、下記で定義されている通り、様々な充填物(charge)、添加物又は溶媒を可能性として有する。
【0102】
このように、「ポリマー組成物」は、溶媒をほとんど又は全く含まない固形配合物と、より多量の質量分率の溶媒を含有する液体配合物の両方を表す。
【0103】
このように、「配合物」は、固形配合物と液体配合物の両方を示す。
【0104】
本発明によれば、固形配合物は、30質量%未満の溶媒、好ましくは25質量%未満の溶媒、より好ましくは20質量%未満の溶媒、更により好ましくは15質量%未満の溶媒、更により好ましくは5質量%未満の溶媒、更により好ましくは2.5質量%未満の溶媒、更により好ましくは1質量%未満の溶媒、及び更により好ましくは0.5質量%未満の溶媒しか含有していない。
【0105】
本発明によれば、固形配合物は材料である。
【0106】
本発明によれば、液体配合物は、30質量%超の溶媒、好ましくは50質量%超の溶媒、より好ましくは60質量%超の溶媒、更により好ましくは70質量%超の溶媒、及び更により好ましくは75質量%超の溶媒を含有する。
【0107】
本発明によれば、液体配合物は、材料とすることができる。
【0108】
溶媒は、室温で液体であり、かつ、他の物質を化学的に修飾することなく、及びそれ自体修飾されることなく、それらを室温で溶解及び/又は希釈する特性を有する、分子又は分子の混合物として定義される。溶媒の中で、物質を化学的に修飾することなく、及びそれ自体修飾されることなく、室温でそれらを溶解する特性を呈する良溶媒と、物質を溶解することなく、物質を化学的に修飾することなく、及びそれ自体修飾されることなく、室温でそれらを希釈する特性を呈する貧溶媒との間に区別がなされる。
【0109】
したがって、ある溶媒は、1つの化合物にとって良溶媒となり得、他の化合物にとっては貧溶媒となり得る。
【0110】
溶媒の非限定例には、酢酸エチル、酢酸ブチル、アセトン、アセトニトリル、ベンジルアルコール、無水酢酸、アニソール、ベンゼン、ブタノール、ブタノン、クロロベンゼン、クロロホルム、シクロヘキサン、ジクロロエタン、ジクロロメタン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ジオキサン、水、エタノール、グリコールエーテル、ジエチルエーテル、エチレングリコール、ヘプタン、ヘキサン、鉱物油、天然油、合成油、炭化水素、メタノール、ペンタン、プロパノール、プロポキシプロパン、ピリジン、テトラクロロエタン、テトラクロロメタン、テトラヒドロフラン、トルエン、トリクロロベンゼン、キシレン及びそれらの混合物が含まれる。
【0111】
基の定義:
本発明による「炭化水素」基は、炭素原子及び水素原子からなる基である。この基はまた、ヘテロ原子を含んでもよく、かつ/又はハロゲンにより置換されていてもよい。炭化水素基は、好ましくは、1~50個、より好ましくは1~18個、更により好ましくは1~12個の炭素原子を含む。
【0112】
本発明による「ヘテロ原子」は、硫黄、窒素、酸素、ホウ素、リン又はケイ素の原子を表す。
【0113】
本発明による「ハロゲン」は、フッ素、塩素、臭素又はヨウ素の原子を表す。
【0114】
炭化水素基は、脂肪族であってもよく、又は芳香族であってもよい。
【0115】
本発明による「脂肪族」は、「アルキル」、「アルケニル」、「アルカンジイル」、「アルケンジイル」又は「シクロアルキル」基を表す。これらの基の価数は、個別に決定されよう。
【0116】
脂肪族基は、ヘテロ原子を含んでもよい。特に、脂肪族基は、エステル、アミド、エーテル、チオエーテル、二級又は三級アミン、カーボネート、ウレタン、カルボアミド又は無水物官能基を含んでもよい。適用可能な場合、脂肪族基は、とりわけ、ハロゲン、-Rz、-OH、-NH2、-NHRz、-NRzR'z、-C(O)-H、-C(O)-Rz、-C(O)-OH、-C(O)-NRzR'z、-C(O)-O-Rz、-O-C(O)-Rz、-O-C(O)-O-Rz、-O-C(O)-N(H)-Rz、-N(H)-C(O)-O-Rz、-O-Rz、-SH、-S-Rz、-S-S-Rz、-C(O)-N(H)-Rz、-N(H)-C(O)-Rz基(Rz、R'zは、同一であるか又は異なり、C1~C50アルキル基を表す)によって、又はラジカル重合による重合可能な官能基、及び式(EB1)若しくは(EB2)のボロン酸エステル官能基の中から選択される官能基によって置換されていてもよい。
【0117】
本発明による「アルキル」基は、好ましくは1~50個の炭素原子、より好ましくは1~18個の炭素原子、更により好ましくは1~12個の炭素原子を含む、飽和若しくは不飽和の、直鎖状又は分岐状炭化水素鎖であって、1個又は複数のヘテロ原子を含むことができる、炭化水素鎖を表す。このように、本発明によれば、「アルキル」はまた、その用語の厳密な意味を無視して、以下:
- 少なくとも1つの二重結合を含む炭化水素鎖である、「アルケニル」、
- 少なくとも1つのヘテロ原子を含む、上で定義されているアルキル基である、「ヘテロアルキル」
を含む。
【0118】
本発明による「アルカンジイル」基は、好ましくは1~50個の炭素原子、より好ましくは1~18個の炭素原子、更により好ましくは1~12個の炭素原子を含む、飽和若しくは不飽和の、直鎖状又は分岐状二価炭化水素鎖であって、1個又は複数のヘテロ原子を含むことができる、炭化水素鎖を表す。このように、本発明によれば、「アルカンジイル」はまた、その用語の厳密な意味を無視して、少なくとも1つの二重結合、例えばビニレン(エテニレン)基又はプロペニレン基を含む炭化水素鎖である「アルケンジイル」、及び少なくとも1個のヘテロ原子を含む、上で定義されているアルカンジイル基である「ヘテロアルカンジイル」を含む。
【0119】
本発明による「シクロアルキル」基は、環式アルキル鎖を表し、この環式アルキル鎖は、環中に3~10個の炭素原子を好ましくは含む、飽和であってもよく、又は一部が不飽和であってもよいが、芳香族ではない。アルキル鎖は、1個又は複数のヘテロ原子を含んでもよい。この場合、アルキル鎖は、「ヘテロシクロアルキル」と特に呼ばれる。この基は、1つ超の環を含んでいてもよく、このように、縮合環、連結環又はスピロ環を含む。例には、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、ピロリジニル、ピペリジニル、ピペラジニル又はモルホリニル基が含まれる。適用可能な場合、シクロアルキル基は、とりわけ、ハロゲン、-Rz、-OH、-NH2、-NHRz、-NRzR'z、-C(O)-H、-C(O)-Rz、-C(O)-OH、-C(O)-NRzR'z、-C(O)-O-Rz、-O-C(O)-Rz、-O-C(O)-O-Rz、-O-C(O)-N(H)-Rz、-N(H)-C(O)-O-Rz、-O-Rz、-SH、-S-Rz、-S-S-Rz、-C(O)-N(H)-Rz、-N(H)-C(O)-Rz基(Rz、R'zは、同一であるか又は異なり、C1~C50アルキル基を表す)によって、又はラジカル重合による重合可能な官能基、及び式(EB1)若しくは(EB2)のボロン酸エステル官能基の中から選択される官能基によって置換されていてもよい。適用可能な場合、シクロアルキル基は、二価であってもよく、この場合、シクロアルキル基は、「脂環式」基と好ましくは呼ばれる。
【0120】
本発明による「芳香族」は、芳香族炭化水素基を含む一価又は多価の基を表す。これらの基の価数は、個別に決定されよう。
【0121】
芳香族基は、ヘテロ原子を含んでもよい。この場合、芳香族基は「複素芳香族」基と呼ばれる。特に、芳香族基は、エステル、アミド、エーテル、チオエーテル、二級又は三級アミン、カーボネート、ウレタン、カルボアミド又は無水物官能基を含んでもよい。芳香族基は、縮合されているか、若しくは共有結合により連結されている1つ又は複数の環を含んでもよい。適用可能な場合、芳香族基は、とりわけ、ハロゲン、-Rz、-OH、-NH2、-NHRz、-NRzR'z、-C(O)-H、-C(O)-Rz、-C(O)-OH、-C(O)-NRzR'z、-C(O)-O-Rz、-O-C(O)-Rz、-O-C(O)-O-Rz、-O-C(O)-N(H)-Rz、-N(H)-C(O)-O-Rz、-O-Rz、-SH、-S-Rz、-S-S-Rz、-C(O)-N(H)-Rz、-N(H)-C(O)-Rz基(Rz、R'zは、同一であるか又は異なり、C1~C50アルキル基を表す)によって、又はラジカル重合による重合可能な官能基、及び式(EB1)若しくは(EB2)のボロン酸エステル官能基の中から選択される官能基によって置換されていてもよい。
【0122】
用語「芳香族」は、「アリール芳香族」基、すなわち、定義されている通り、少なくとも1つの芳香族基及び少なくとも1つの脂肪族基を含む基を含む。脂肪族基は、分子の1つの部分に、芳香族基は、分子の別の部分に連結していてもよい。この基は、2つの芳香族基を含んでもよく、それぞれは、分子の1つの部分に連結しており、脂肪族鎖によって、2つの芳香族基の間に連結されている。
【0123】
本発明による「アリール」は、芳香族炭化水素基を表す。用語「アリール」は、アラルキル及びアルキル-アリール基を含む。芳香族炭化水素基は、とりわけ、ハロゲン、-Rz、-OH、-NH2、-NHRz、-NRzR'z、-C(O)-H、-C(O)-Rz、-C(O)-OH、-C(O)-NRzR'z、-C(O)-O-Rz、-O-C(O)-Rz、-O-C(O)-O-Rz、-O-C(O)-N(H)-Rz、-N(H)-C(O)-O-Rz、-O-Rz、-SH、-S-Rz、-S-S-Rz、-C(O)-N(H)-Rz、-N(H)-C(O)-Rz基(Rz、R'zは、同一であるか又は異なり、C1~C50アルキル基を表す)によって、又はラジカル重合による重合可能な官能基、及び式(EB1)若しくは(EB2)のボロン酸エステル官能基の中から選択される官能基によって、1回又は1回超で置換されていてもよい。
【0124】
本発明による「アルキル-アリール」は、上で定義されている通り、芳香族基を介して、分子の残りの部分に連結している、上で定義されているアルキル基を表す。
【0125】
本発明による「アラルキル」は、上で定義されている通り、脂肪族基を介して、分子の残りの部分に連結している、上で定義されているアリール基を表す。
【0126】
本発明による「ヘテロアリール」は、芳香族環の原子の少なくとも1個がヘテロ原子である、アリール基を表す。本発明による「ヘテロアルキル-アリール」は、少なくとも1個のヘテロ原子によって置換されている、定義されている、アルキル-アリール基を表す。本発明による「ヘテロアラルキル」は、少なくとも1個のヘテロ原子によって置換されている、定義されている、アラルキル基を表す。
【0127】
ポリマー及び化合物中に存在しているボロン酸エステル官能基は、これ以降、式(EB1)及び(EB2)によって、一般に言及される。ボロン酸エステルの置換基の定義は、化合物の1つずつ、独立して様々となり得ることを理解すべきである。
【図面の簡単な説明】
【0128】
【
図1】官能基化、及びポリマーの一工程架橋に使用することができる分子の例を示す図である。
【
図2】ジオキサボロラン環式ボロン酸エステル(左)の場合には分子Aによる、又はジオキサボロラン環式ボロン酸エステル(右)の場合には分子Bによる、分子A又はBとポリマー鎖との間の共有結合の生成による直鎖状ポリマーの官能基化の概略図である。ジオキサボロラン環式ボロン酸エステル(左)の場合の分子Aの、又はジオキサボロラン環式ボロン酸エステル(右)の場合の分子Bのグラフト化を可能にする官能基は、主鎖(上)の一部を形成していても、官能基化されている主ポリマー鎖の側鎖基/ペンダント基(下)を形成していてもよい。
【
図3】相補的なペンダントジオキサボロラン官能基により官能基化された直鎖状ポリマーのメタセシス反応による架橋の概略図である。
【
図4】5℃の無水ヘキサン中、2つのフェニルボロン酸エステル間のメタセシスの間の、時間(横座標;分)における、様々なボロン酸エステルのモル百分率(縦座標;単位を含まない)の変化を示すグラフである。
【
図5】5℃の無水クロロホルム中、2つのフェニルボロン酸エステル間のメタセシスの間の、時間(横座標;分)における、様々なボロン酸エステルのモル百分率(縦座標;単位を含まない)の変化を示すグラフである。
【
図6】5℃の無水テトラヒドロフラン中、2つのフェニルボロン酸エステル間のメタセシスの間の、時間(横座標;分)における、様々なボロン酸エステルのモル百分率(縦座標;単位を含まない)の変化を示すグラフである。
【
図7】5℃の無水クロロホルム中、2つのフェニルボロン酸エステル間のメタセシスの間の、時間(横座標;分)における、様々なボロン酸エステルのモル百分率(縦座標;単位を含まない)の変化を示すグラフである。
【
図8】5℃の無水テトラヒドロフラン中、1mol%の無水トリエチルアミンの存在下での、2つのフェニルボロン酸エステル間のメタセシスの間の、時間(横座標;分)における、様々なボロン酸エステルのモル百分率(縦座標;単位を含まない)の変化を示すグラフである。
【
図9】5℃の無水テトラヒドロフラン中、1mol%の無水安息香酸の存在下での、2つのフェニルボロン酸エステル間のメタセシスの間の、時間(横座標;分)における、様々なボロン酸エステルのモル百分率(縦座標;単位を含まない)の変化を示すグラフである。
【
図10】室温の無水テトラヒドロフラン中、2つのアルキルボロン酸エステル間のメタセシスの間の、時間(横座標;分)における、様々なボロン酸エステルのモル百分率(縦座標;単位を含まない)の変化を示すグラフである。
【
図11】室温の無水テトラヒドロフラン中、アリールジオール置換基及びアルキルジオール置換基をそれぞれ含有する、ボロン酸エステル間のメタセシスの間の、時間(横座標;分)における、様々なボロン酸エステルのモル百分率(縦座標;単位を含まない)の変化を示すグラフである。
【
図12】室温の無水テトラヒドロフラン中、1,2-アルキルジオール置換基及び1,3-アルキルジオール置換基をそれぞれ含有する、ボロン酸エステル間のメタセシスの間の、時間(横座標;分)における、様々なボロン酸エステルのモル百分率(縦座標;単位を含まない)の変化を示すグラフである。
【
図13】2つの出発ボロン酸エステル、及び時間の関数(横座標;分)としての、60℃のバルク中、フェニルボロン酸エステルMR-02-66及びMR-2016aのメタセシス反応の間に形成される、2つのボロン酸エステルのモル百分率(縦座標;単位を含まない)の変化を示すグラフである。
【
図14】2つの出発ボロン酸エステル及び、時間の関数(横座標;分)としての、85℃で、バルク中、フェニルボロン酸エステルMR-02-66及びMR-2016aのメタセシス反応の間に形成される、2つのボロン酸エステルのモル百分率(縦座標;単位を含まない)の変化を示すグラフである。
【
図15】2つの出発ボロン酸エステル及び、時間の関数(横座標;分)としての、150℃で、バルク中、フェニルボロン酸エステルMR-02-66及びMR-2016aのメタセシス反応の間に形成される、2つのボロン酸エステルのモル百分率(縦座標;単位を含まない)の変化を示すグラフである。
【
図16】再利用されていない架橋ポリマーネットワークN1の試料(横座標、0)、1回、再利用した架橋ポリマーネットワークN1の試料(横座標、1)、2回、再利用した架橋ポリマーネットワークN1の試料(横座標、2)、3回、再利用した架橋ポリマーネットワークN1の試料(横座標、3)の破断応力(縦座標、MPa)を示すグラフである。
【
図17】再利用されていない架橋ポリマーネットワークN1の試料(横座標、0)、1回、再利用した架橋ポリマーネットワークN1の試料(横座標、1)、2回、再利用した架橋ポリマーネットワークN1の試料(横座標、2)、3回、再利用した架橋ポリマーネットワークN1の試料(横座標、3)の破断伸び(縦座標、%)を示すグラフである。
【
図18】架橋ポリマーネットワークN1の試料の、4つの温度(160℃が円;150℃が三角形;140℃が四角形;130℃が星型)の場合の、時間(横座標、分)の関数としての変形(縦座標、%)を表すグラフである。
【
図19】架橋ポリマーネットワークN2の試料の、160℃における、時間(横座標、分)での変形(縦座標、%)を示すグラフである。
【
図20】170℃(四角形)、150℃(円)、130℃(三角形)における、架橋ポリマーネットワークN1の試料の、時間の関数(横座標、秒間)としての、t=0における初期弾性率(縦座標、単位を含まない)によって正規化したせん断緩和弾性率を示すグラフである。
【
図21】架橋ポリマーネットワークN1(円)の試料、架橋ポリマーネットワークN2(三角形)の試料、架橋ポリマーネットワークN3(四角形)の試料の、150℃における時間の関数(横座標、秒間)としての、t=0における初期弾性率(縦座標、単位を含まない)によって正規化したせん断緩和弾性率を示すグラフである。
【
図22】150℃(四角形)における、架橋ポリマーネットワークNX1の試料の、時間の関数(横座標、秒間)としての、t=0における初期弾性率(縦座標、単位を含まない)によって正規化したせん断緩和弾性率を示すグラフである。
【
図23】150℃(円)における、架橋ポリマーネットワークNX2の試料の、時間の関数(横座標、秒間)としての、t=0における初期弾性率(縦座標、単位を含まない)によって正規化したせん断緩和弾性率を示すグラフである。
【
図24】再利用されていない架橋ポリマーネットワークNY1の試料(横座標、0)、1回、再利用した架橋ポリマーネットワークNY1の試料(横座標、1)、2回、再利用した架橋ポリマーネットワークNY1の試料(横座標、2)、3回、再利用した架橋ポリマーネットワークNY1の試料(横座標、3)の平均破断応力(縦座標、MPa)を示すグラフである。
【
図25】再利用されていない架橋ポリマーネットワークNY1の試料(横座標、0)、1回、再利用した架橋ポリマーネットワークNY1の試料(横座標、1)、2回、再利用した架橋ポリマーネットワークNY1の試料(横座標、2)、3回、再利用した架橋ポリマーネットワークNY1の試料(横座標、3)の平均ヤング率(縦座標、GPa)を示すグラフである。
【
図26】再利用されていない架橋ポリマーネットワークNZ1の試料(横座標、0)、1回、再利用した架橋ポリマーネットワークNZ1の試料(横座標、1)、2回、再利用した架橋ポリマーネットワークNZ1の試料(横座標、2)、3回、再利用した架橋ポリマーネットワークNZ1の試料(横座標、3)の平均引張強度(縦座標、MPa)を示すグラフである。
【
図27】再利用されていない架橋ポリマーネットワークNZ1の試料(横座標、0)、1回、再利用した架橋ポリマーネットワークNZ1の試料(横座標、1)、2回、再利用した架橋ポリマーネットワークNZ1の試料(横座標、2)、3回、再利用した架橋ポリマーネットワークNZ1の試料(横座標、3)の平均ヤング率(縦座標、GPa)を示すグラフである。
【
図28】架橋HDPEネットワークNZ1の2つの個別のストリップ片(明灰色)上に架橋PMMAネットワークN6(暗灰色)の1つのストリップ片を置くことにより得られる、2つの単一重ねからなる、重ねジョイント(lab joint)の概略図であり、両方の重なり長さl
0は、1cmに等しい。
【
図29】190℃で、それぞれ、10分間(実線)、20分間(点線)、接着した架橋HDPEネットワークNZ1/架橋PMMAネットワークN6/架橋HDPEネットワークNZ1重ねジョイントのラップせん断試験の間の、位置(横座標、mm)の関数としての、幅(縦座標、kN/m)により正規化された力を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0129】
説明全体にわたり、用語「交換可能な連結基」は、ボロン酸エステルメタセシス反応により交換可能な連結基を意味する。これらの連結基は、ペンダント連結基内又は架橋基内に存在することができる。
【0130】
本発明の目的は、
(a)ボロン酸エステルメタセシス反応によって交換可能なペンダント連結基及び交換可能な架橋基を含有する架橋ポリマーと、
(b)遊離の一官能性ボロン酸エステルと
〔ここで、前記ボロン酸エステルが、以下の式(EB1)及び(EB2)のジオキサボロラン環及びジオキサボリナン環:
【0131】
【0132】
(式中、
Rx、Rw及びRvは、同一であるか又は異なり、それぞれが、水素原子若しくは炭化水素基を表すか、又は一対として一緒になって、脂肪族環若しくは芳香族環を形成し、
Ryは、炭素原子を介して共有結合によってジオキサボロラン環又はジオキサボリナン環のホウ素原子に連結されている炭化水素基である)
の中から選択される。〕
を含む組成物である。
【0133】
この組成物は、直鎖状又は分岐状ポリマーの架橋によって得ることができる。
【0134】
この組成物はまた、以下の化合物:
(a)重合性基を含有しない少なくとも1つのペンダントボロン酸エステル基を含む、熱可塑性ポリマーのための前駆体モノマー、
(b)ボロン酸エステルメタセシス反応によって交換可能なペンダント官能基及び架橋基を含有する架橋ポリマーのネットワークの形成を可能にする、少なくとも1つのボロン酸エステル基を含む架橋剤、
〔ここで、前記ボロン酸エステルが、以下の式(EB1)及び(EB2)の下記ジオキサボロラン環及びジオキサボリナン環:
【0135】
【0136】
(式中、
Rx、Rw及びRvは、同一であるか又は異なり、それぞれが、水素原子若しくは炭化水素基を表すか、又は一対として一緒になって、脂肪族環若しくは芳香族環を形成し、
Ryは、炭素原子を介して共有結合によってジオキサボロラン環又はジオキサボリナン環のホウ素原子に連結されている炭化水素基である)
の中から選択される。〕
(c)場合により、式(EB1)又は(EB2)のボロン酸エステル基を含まない、熱可塑性ポリマーのための前駆体であるモノマー
の共重合によって得ることができる。
【0137】
「前記ボロン酸エステル」という表現は、交換可能なペンダント連結基内、交換可能な架橋基内、及び遊離の一官能性ボロン酸エステル内に存在する、ボロン酸エステルを指す。
【0138】
好ましくは、各ボロン酸エステル基について独立して、Rx、Rw及びRvは、同一であるか又は異なり、それぞれが、アルキル、アリール、アラルキル、アルキル-アリール又はシクロアルキル基を表す。この基は、特に、O、N、S又はSiの中から選択されるヘテロ原子を含有していても、置換されていてもよい。特に、各ボロン酸エステル基の場合、独立して、Rx及び/又はRw及び/又はRvは、対で一緒になり、脂肪族環又は芳香族環を形成する。
【0139】
特に、これらのRx、Rw及びRv基は、エステル官能基又はアミド官能基等の官能基により置換されていてもよい。特に、これらの基は、ハロゲン、-Rz、-OH、-NH2、-NHRz、-NRzR'z、-C(O)-H、-C(O)-Rz、-C(O)-OH、-C(O)-NRzR'z、-C(O)-O-Rz、-O-C(O)-Rz、-O-C(O)-O-Rz、-O-C(O)-N(H)-Rz、-N(H)-C(O)-O-Rz、-O-Rz、-SH、-S-Rz、-S-S-Rz、-C(O)-N(H)-Rz、-N(H)-C(O)-Rz基(Rz、R'zは、同一であるか又は異なり、C1~C50アルキル基を表す)によって置換されていてもよい。特に、これらのRx、Rw及びRv基は、エステル、アミド、エーテル、チオエーテル、二級又は三級アミン、カーボネート、ウレタン、カルボアミド又は無水物官能基を含んでもよい。
【0140】
特に、各ボロン酸エステル基の場合、独立して、Ryは、アルキル、アリール、アラルキル、アルキル-アリール又はシクロアルキル基を表す。この基は、特に、O、N、S又はSiの中から選択されるヘテロ原子を含有することができる、及び/又は置換されていてもよい。特に、このRy基は、エステル官能基又はアミド官能基等の官能基により置換されていてもよい。特に、この基は、ハロゲン、-Rz、-OH、-NH2、-NHRz、-NRzR'z、-C(O)-H、-C(O)-Rz、-C(O)-OH、-C(O)-NRzR'z、-C(O)-O-Rz、-O-C(O)-Rz、-O-C(O)-O-Rz、-O-C(O)-N(H)-Rz、-N(H)-C(O)-O-Rz、-O-Rz、-SH、-S-Rz、-S-S-Rz、-C(O)-N(H)-Rz、-N(H)-C(O)-Rz基(Rz、R'zは、同一であるか又は異なり、C1~C50アルキル基を表す)によって置換されている。特に、このRy基は、エステル、アミド、エーテル、チオエーテル、二級又は三級アミン、カーボネート、ウレタン、カルボアミド又は無水物官能基を含んでもよい。
【0141】
これらのボロン酸エステル基は、以下に定義されている通り、ポリマー鎖又は官能基Gに、Rx及び/又はRyを介して、好ましくは連結されて、官能基化されるべきポリマー鎖へのその分子の共有結合連結を可能にする。これらの置換基{Rx、Rw}又は{Rx、Rv}が、一緒になって、脂肪族環又は芳香族環を形成する場合、ボロン酸エステル基は、以下に定義されている通り、ポリマー鎖又は官能基Gに、それらの置換基{Rx、Rw}又は{Rx、Rv}及び/又はRyを介して、連結されて、官能基化されるべきポリマー鎖へのその分子の共有結合連結を可能にする。
【0142】
本発明による組成物は、架橋後、ポリマー1グラムあたり、2mmol未満、より好ましくは1.5mmol未満、更により好ましくは1mmol未満、更により好ましくは0.8mmol未満、更により好ましくは0.6mmol未満、更により好ましくは0.4mmol未満、更により好ましくは0.2mmol未満、更により好ましくは0.1mmol未満、更により好ましくは0.05mmol未満、更により好ましくは0.025mmol未満、更により好ましくは0.02mmol未満、更により好ましくは0.01mmol未満、更により好ましくは0.005mmol未満の1,2-ジオール官能基及び/又は1,3-ジオール官能基しか含有しない。
【0143】
1.ポリマーの架橋による組成物の調製:
好ましくは、架橋工程は、1,2-ジオール官能基及び/又は1,3-ジオール官能基を含有するポリマー又は添加物の使用を必要としない。架橋は、以下に定義されている通り、ポリマーのペンダント基上、及び/又はポリマー中のペンダント基上、及び以下に定義されている式(Ia)又は(Ib)の化合物上の、エステル官能基間のメタセシス反応に一部、又はすべてが起因する。このように、ボロン酸エステル官能基間のメタセシス反応によるそれぞれの架橋反応について、相補的なペンダントジオキサボロラン官能基によって官能基化された(複数の)直鎖状ポリマーのメタセシス反応による架橋によって、1当量の遊離の一官能性ボロン酸エステルが、
図3に例示されている通り生成する。このような組成物は、ボロン酸エステルメタセシス反応により交換可能なペンダント連結基及び架橋基を含有する、直鎖状又は分岐状ポリマーのネットワークを好ましくは形成する。このような組成物は、架橋後、ポリマー1グラムあたり、2mmol未満、より好ましくは1.5mmol未満、更により好ましくは1mmol未満、更により好ましくは0.8mmol未満、更により好ましくは0.6mmol未満、更により好ましくは0.4mmol未満、更により好ましくは0.2mmol未満、更により好ましくは0.1mmol未満、更により好ましくは0.05mmol未満、更により好ましくは0.025mmol未満、更により好ましくは0.02mmol未満、更により好ましくは0.01mmol未満、更により好ましくは0.005mmol未満の1,2-ジオール官能基及び/又は1,3-ジオール官能基しか好ましくは含有しない。
【0144】
好ましくは、架橋前の本ポリマーは、以下:
- ジオキサボロラン環若しくはジオキサボリナン環の少なくとも1個の炭素原子によってポリマーに連結されている、式(EB1)又は(EB2)のペンダントボロン酸エステル官能基、或いは
- ジオキサボロラン基若しくはジオキサボリナン基のホウ素原子によってポリマーに連結されている、式(EB1)又は(EB2)のペンダントボロン酸エステル官能基
を有する、側鎖基を有する直鎖状又は分岐状ポリマーである。
【0145】
これらのポリマーは、架橋前及び/又は架橋中に、官能基化されて、ボロン酸エステルメタセシス反応により交換可能なペンダント連結基及び架橋基を含有する、架橋ポリマーのネットワークの形成を好ましくはもたらすことができる。
【0146】
直鎖状又は分岐状ポリマーのボロン酸エステルメタセシス反応により交換可能な側鎖基は、鎖全体に沿って均一又は非均一に分布されていてもよく、又はポリマー鎖の1つのセグメントに集中していてもよい。好ましくは、直鎖状又は分岐状ポリマーのボロン酸エステルメタセシス反応により交換可能な側鎖基は、鎖全体に沿って均一又は非均一に分布している。好ましくは、直鎖状又は分岐状ポリマーのボロン酸エステルメタセシス反応により交換可能な側鎖基は、ポリマー鎖のセグメント又はブロック中に分布している。この例は、ジブロック構造と呼ばれる。好ましくは、ボロン酸エステルメタセシス反応により交換可能な側鎖基は、ポリマー鎖に沿って、すべてランダムに分布している。好ましくは、ポリマーは、ポリマー鎖に沿ってすべてが分布している、ボロン酸エステルメタセシス反応により交換可能な側鎖基を含有するブロックを含む、マルチブロック構造を有する。
【0147】
このポリマーは、架橋前に、ポリマー1グラムあたり、4mmol未満、より好ましくは3mmol未満、更により好ましくは2mmol未満、更により好ましくは1.5mmol未満、更により好ましくは1mmol未満、更により好ましくは0.8mmol未満、更により好ましくは0.6mmol未満、更により好ましくは0.5mmol未満、更により好ましくは0.4mmol未満、更により好ましくは0.25mmol未満、更により好ましくは0.2mmol未満、更により好ましくは0.1mmol未満、更により好ましくは0.05mmol未満の1,2-ジオール官能基及び/又は1,3-ジオール官能基しか好ましくは含有しない。
【0148】
第1の実施形態では、ポリマーは、架橋前に官能基化されている。特に、本組成物は、溶融状態又は溶液中の、
- 以下:
・ ジオキサボロラン環若しくはジオキサボリナン環の少なくとも1個の炭素原子によってポリマーに連結している式(EB1)又は(EB2)のボロン酸エステル官能基、或いは
・ ジオキサボロラン環若しくはジオキサボリナン環のホウ素原子によってポリマーに連結している式(EB1)又は(EB2)のボロン酸エステル官能基
を有する側鎖基を有する、少なくとも1つの直鎖状又は分岐状ポリマーP1
- ポリマーP1のペンダント基と反応して、ボロン酸エステルメタセシス反応により交換可能なペンダント連結基及び架橋基を含有する架橋ポリマー組成物、好ましくは架橋ネットワークを形成することが可能な式(EB1)又は(EB2)の少なくとも2つのボロン酸エステル基を有する、少なくとも1つの添加物
からなる混合物から生じる。
【0149】
架橋ポリマー組成物、好ましくは架橋ポリマーネットワークの形成を可能にするために、そのままで、それ自体と反応して、その官能基を失わない架橋剤が、添加物として好ましくは使用される。このように、架橋剤は、以下:
- ジオキサボロラン環若しくはジオキサボリナン環の少なくとも1個の炭素原子によって架橋剤に連結されている、式(EB1)又は(EB2)のボロン酸エステル官能基、或いは
- ジオキサボロラン環若しくはジオキサボリナン環のホウ素原子によって架橋剤に連結されている、式(EB1)又は(EB2)のボロン酸エステル官能基
を有する。
【0150】
添加物(架橋剤)は、分子及び/又はポリマーであってよい。分子及び/又はポリマーの組合せ物が想定され得る。
【0151】
第1の実施形態では、添加物は、式(EB1)又は(EB2)の少なくとも2つのボロン酸エステル官能基を有する分子である。この添加物は、「二官能性又は多官能性架橋剤」とも呼ばれる。この添加物は、ジオキサボロラン環若しくはジオキサボリナン環の少なくとも1個の炭素原子によって分子の残りの部分にすべて連結している式(EB1)又は(EB2)のボロン酸エステル官能基、或いはジオキサボロラン環又はジオキサボリナン環のホウ素原子によって分子の残りの部分にすべてが連結しているボロン酸エステル官能基を含むことができる。
【0152】
この添加物は、好ましくは、以下の式(Ia)、(Ib1)又は(Ib2)の化合物:
【0153】
【0154】
(式中、
nは、1~6の間の整数であり、
iは、1からnの間の整数であり、
kは、0又は1に等しく、kiはそれぞれ、0又は1に等しい)である。このように、式(Ia)及び(Ib)の化合物が有するボロン酸エステル官能基は、ジオキサボロラン官能基及び/又はジオキサボリナン官能基であってもよい。
R1、R'1、R''1、R3i、R'3i、R''3i、R5、R''5、R7i、R''7iは、同一であるか又は異なり、それぞれが、相互に独立して、水素原子又は炭化水素基を表し、
{R1、R'1、R''1}は、対で一緒になって、脂肪族環又は芳香族環を形成することができ、
{R3i、R'3i、R''3i}は、対で一緒になって、脂肪族環又は芳香族環を形成することができ、
{R5、R''5}は、一緒になって、脂肪族環又は芳香族環を形成することができ、
{R7i、R''7i}は、一緒になって、脂肪族環又は芳香族環を形成することができ、
R2及びR4は、同一であるか又は異なり、それぞれが、炭化水素基を表し、R2は、炭素原子を介して、ボロン酸エステル官能基に連結しており、
R6、R8iは、同一であるか又は異なり、それぞれが、相互に独立して、炭化水素基を表し、R6、各R8iは、炭素原子を介して共有結合によってホウ素原子に連結している。
【0155】
これ以降、用語(Ib)は、式(Ib1)又は式(Ib2)のどちらかを表す。
【0156】
R2及びR4は、同一であるか又は異なり、したがって、場合によりその環の各炭素原子上にいくつかのブロックである[ボロン酸エステル]が存在していることが可能な環を特に表すことができる。
【0157】
ブロック[ボロン酸エステル]は、R2及びR4基上に可能な置換基の数に依存して、n回、存在する。したがって、化合物(Ia)及び(Ib)は、「星型」化合物とすることができる。
【0158】
nは、1~6の間、好ましくは1~4の間の整数である。
【0159】
iは、1からnの間の整数である。
【0160】
ki、R3i、R'3i、R''3i、R7i及びR''7iの定義は、1つのブロックから別のブロックまで(及び、iの異なる値の場合と同様に)、様々となり得、これは、それらのブロックが必ずしも互いに同じである必要がないことを意味する。
【0161】
R2及びR4は、同一であるか又は異なり、それぞれが、好ましくは、O、N、S又はSi等のヘテロ原子をやはり含有してもよい、脂肪族、芳香族、アリール脂肪族又は脂環式基である。好ましい実施形態では、R2及びR4は、同一であるか又は異なり、それぞれが、芳香族基又は複素芳香族基を表す。好ましくは、R2及びR4は、同一であるか又は異なり、それぞれが、C1~C12アルカンジイル基、ベンゼン環、ナフタレン環、C1~C6アルカンジイル基により連結されている2つのベンゼン環を含むアリール脂肪族基、ピリミジン環又はトリアジン環を表す。
【0162】
R1、R'1、R''1、R3i、R'3i、R''3i、R5、R''5、R7i及びR''7iは、同一であるか又は異なり、水素原子若しくはアルキル、アルケニル、アリール、シクロアルキル、ヘテロアリール、ヘテロアルキル若しくはヘテロシクロアルキル基を好ましくは表し、これらの基はそれぞれ、置換されていてもよいか、又はR1、R'1、R''1、若しくはR3i、R'3i、R''3i、若しくはR5、R''5、若しくはR7i、R''7iは、対で一緒になって、脂肪族環又は芳香族環を形成する。
【0163】
ボロン酸エステルメタセシス反応によって交換可能なペンダント連結基及び架橋基を含有する架橋ポリマー、好ましくは架橋ネットワークと、式(EB1)又は(EB2)の遊離の一官能性ボロン酸エステルとを含む組成物を得るための、式(Ia)の化合物又は式(Ib)の化合物の使用は、ペンダントボロン酸エステル官能基がそれを介してポリマーP1に連結する原子の性質に依存するであろう。
【0164】
このように、式(EB1)又は(EB2)のペンダントボロン酸エステル基が、ジオキサボロラン環又はジオキサボリナン環の少なくとも1個の炭素原子によってポリマーP1に連結している場合、式(Ia)の化合物は添加物として選択される。
【0165】
このように、式(EB1)又は(EB2)のペンダントボロン酸エステル基が、ジオキサボロラン環又はジオキサボリナン環のホウ素原子によってポリマーP1に連結されている場合、式(Ib)の化合物は添加物として選択される。
【0166】
第2の実施形態では、添加物は、
- ジオキサボロラン環若しくはジオキサボリナン環の少なくとも1個の炭素原子によってポリマーに連結している式(EB1)又は(EB2)のボロン酸エステル官能基、或いは
- ジオキサボロラン環若しくはジオキサボリナン環のホウ素原子によってポリマーに連結している式(EB1)又は(EB2)のボロン酸エステル官能基
を有するポリマーP2である。
【0167】
ペンダントボロン酸エステル官能基がそれを介してポリマーP2に連結されている原子の性質の選択は、ペンダントボロン酸エステル官能基がそれを介して連結されるポリマーP1に連結されている原子の性質に依存するであろう。
【0168】
このように、ペンダントボロン酸エステル基がジオキサボロラン環又はジオキサボリナン環の少なくとも1個の炭素原子によってポリマーP1に連結している場合、ジオキサボロラン環又はジオキサボリナン環のホウ素原子によってポリマーP2に連結されているペンダントボロン酸エステル官能基を含有するポリマーは、ポリマーP2として選択される。
【0169】
このように、ペンダントボロン酸エステル基がジオキサボロラン環又はジオキサボリナン環のホウ素原子によってポリマーP1に連結している場合、ジオキサボロラン環又はジオキサボリナン環の少なくとも1個の炭素原子によってポリマーP2に連結されているペンダントボロン酸エステル官能基を含有するポリマーは、ポリマーP2として選択される。
【0170】
したがって、本発明により、ポリマーの化学的性質が異なるか、又は互換性がない(incompatible)場合でさえも、2つの直鎖状又は分岐状ポリマーをボロン酸エステルメタセシス反応によって組み合わせて構築(assemble)することが可能になる。このように、本発明により、2つの熱硬化性ポリマーを組み合わせて構築することが可能になる。直鎖状又は分岐状ポリマーP2による本発明によるポリマー組成物の構築体もまた、同じ原理に沿って想定され得る。この原理は、組み合わせて構築することが可能な、本発明による2つの組成物に拡張することさえできる。
【0171】
第2の実施形態では、官能基化及び架橋は、同時に行われる。
【0172】
特に、本組成物は、溶融状態又は溶液中の、
- グラフト化を可能にする官能基を含有する、少なくとも1つの直鎖状又は分岐状ポリマーP1'
- 一方の末端に、ポリマーP1'へのその分子の共有結合を可能にする官能基、もう一方の末端に、ジオキサボロラン環又はジオキサボリナン環の少なくとも1個の炭素原子によって分子の残りの部分に連結しているジオキサボロラン又はジオキサボリナンボロン酸エステル官能基 (A)、及びジオキサボロラン環又はジオキサボリナン環のホウ素原子によって分子の残りの部分に連結している式(EB1)又は(EB2)のボロン酸エステル官能基(B) の中から選択される官能基を含む分子、並びに/又は、その2つの両末端に、ポリマーP1'にその分子が共有結合することを可能にする官能基を含み、その2つの末端の間に、式(EB1)又は(EB2)のボロン酸エステル官能基を含む分子(C)の組合せ物であって、グラフト化、並びにボロン酸エステルメタセシス反応により交換可能なペンダント連結基及び架橋基を生成することが可能な組合せ物
からなる混合物から生じる。
【0173】
このように、ポリマーP1'は、官能基化されていてもよく、添加物の添加時に架橋されてもよい。これに関すると、ポリマーは、例えば、その主鎖中、又はその側鎖基/ペンダント基上に、グラフト化を可能にする官能基を含有する。
【0174】
図1は、官能基化、及びポリマーの一工程架橋に使用することができる分子を示している。文字G
1、G
2、G
3及びG
4は、この分子から官能基化されるべきポリマー鎖への共有結合形成を可能にする官能基を表す。官能基G
1、G
2、G
3及びG
4は、官能基化されるポリマーの官能基、これらのポリマーへのグラフト化を可能にする官能基、及びグラフト化条件(温度、反応媒体(溶融状態又は溶液中)、速度、触媒の使用等)の関数として選択される。好ましくは、G
1、G
2、G
3及びG
4基は、同じである。
【0175】
非限定例として、官能基Gは、ポリブタジエン、ポリイソプレン及びそれらのコポリマー、ペンダントアルケン基を有するビニルコポリマー、又は開環メタセシス重合(ROMP)若しくは非環式ジエンメタセシス(ADMET)(Charles E. Hoyle、Christopher N. Bowman、Angew. Chem. Int. Ed. 2010、49、1540~1573頁;Kemal Arda Gunay、Patrick Theato、Harm-Anton Klok、Journal of Polymer Science Part A: Polymer Chemistry 2013、51、1~28頁)により得られるポリオレフィン等のポリジエン類のアルケン結合の官能基化を可能にする、チオール官能基とすることができる。官能基Gはまた、ポリエチレン及びポリプロピレンへのラジカルグラフト化を可能にするよう、マレイミド、又はメタクリル酸エステル、アクリル酸エステル、スチレン系(styrenic)エステル若しくはマレイン酸エステルの官能基であってもよい(例えば、G. Moad、Prog. Polym. Sci. 1999、24、81~142頁: Elisa Passagliaa、Serena Coiai、Sylvain Augier、Prog. Polym. Sci. 2009、34、911~947頁)。官能基Gは、官能基化されるポリマー上のペンダントアルコール、アミン又はチオール基と反応するイソシアネート官能基とすることができる(Kemal Arda Gunay、Patrick Theato、Harm-Anton Klok、Journal of Polymer Science Part A: Polymer Chemistry 2013、51、1~28頁;Charles E. Hoyle、Andrew B. Lowe、Christopher N. Bowman、Chem. Soc. Rev.、2010、39、1355~1387頁)。官能基Gはまた、チオール、一級若しくは二級アミン、又はホスフィン等の求核剤によるマイケル付加を受けることができる求電子性オレフィンとすることができる(Brian D. Mather、Kalpana Viswanathan、Kevin M. Miller、Timothy E. Long、Prog. Polym. Sci. 2006、31、487~531頁)。求電子性オレフィンのうち、非限定例には、アクリレート、アクリルアミド、マレイミド、メタクリレート及びビニルスルホンが含まれる。官能基Gはまた、求核置換反応又は開環反応をもたらすことができる、アルコール、チオール、アミン又はカルボン酸等の求核性官能基とすることもできる(Kemal Arda Gunay、Patrick Theato、Harm-Anton Klok、Journal of Polymer Science Part A: Polymer Chemistry 2013、51、1~28頁)。これらの官能基は、エポキシ化天然ゴムに見いだされるもの等のポリマーの主鎖中に存在するエポキシド、又はメタクリル酸グリシジルを用いて調製されるビニルコポリマーに見いだされるもの等のペンダントエポキシド官能基のを、例えば、開環することができる。官能基Gはまた、ペンダントエステル又は活性化エステル官能基と反応して、新しいエステル、チオエステル又はアミド官能基をもたらすことができる、アルコール、チオール又はアミン官能基とすることができる。この手法は、例えば、ポリ(メタクリル酸メチル)等の、ペンダントエステル官能基を有するビニルポリマーを官能基化するためにとりわけ使用することができる。したがって、ボロン酸エステル官能基を含有する分子がポリマーP1'に共有結合により連結することを可能にする官能基は、多数あり、かつ様々であり、当業者は、ポリマーP1'上に存在する官能基及びグラフト化条件(温度、反応媒体(溶融状態又は溶液中)、速度、触媒の使用等)に応じて、最適な官能基を選択する方法を認識している。
【0176】
図1は、分子(A)、(B)及び(C)を定義しており、文字G
1、G
2、G
3及びG
4は、これらの分子を官能基化されるべきポリマー鎖に共有結合によって連結することを可能にする官能基を表し、Rx、R''x及びRy、R'y、R''yは、炭化水素基であり、R'v、R'w及びR'xは、同一であるか又は異なり、それぞれが、水素原子若しくは炭化水素基を表すか、又は対で一緒になって、脂肪族環又は芳香族環を形成し、RvとRw、及びR''vとR''wは、同一であるか又は異なり、水素原子又は炭化水素基を表すか、或いはそれらは一緒になって、又はR
X若しくはR"xとそれぞれ一緒になって、脂肪族環又は芳香族環を形成する。炭化水素基Ry、R'y及びR''yは、炭素原子を介して、ジオキサボロラン環及びジオキサボリナン環のホウ素に連結している。標識「Rx」、「Rw」、「Rv」及び「Ry」は、本発明によるボロン酸エステルの定義と同様に使用され、必ずしも同一である必要はない。
【0177】
特に、Rx、R'x及びR''xはそれぞれ、相互に独立して、脂肪族、芳香族、アリール脂肪族又は脂環式基を表す。この基は、特に、O、N、S又はSiの中から選択されるヘテロ原子を含有することができ、かつ/あるいは置換されていてもよい。
【0178】
特に、Rx、R'x及びR''xは、相互に独立して、それぞれが、エステル官能基又はアミド官能基等の官能基によって置換されていてもよい。特に、この基は、ハロゲン、-Rz、-OH、-NH2、-NHRz、-NRzR'z、-C(O)-H、-C(O)-Rz、-C(O)-OH、-C(O)-NRzR'z、-C(O)-O-Rz、-O-C(O)-Rz、-O-C(O)-O-Rz、-O-C(O)-N(H)-Rz、-N(H)-C(O)-O-Rz、-O-Rz、-SH、-S-Rz、-S-S-Rz、-C(O)-N(H)-Rz、-N(H)-C(O)-Rz基(Rz、R'zは、同一であるか又は異なり、C1~C50アルキル基を表す)によって置換されている。特に、このRx、R'x又はR''x基は、エステル、アミド、エーテル、チオエーテル、二級又は三級アミン、カーボネート、ウレタン、カルボアミド又は無水物官能基を含んでもよい。
【0179】
特に、Ry、R'y及びR''yはそれぞれ、相互に独立して、炭素原子を介してジオキサボロラン環又はジオキサボリナン環のホウ素原子に連結している、脂肪族、芳香族、アリール脂肪族又は脂環式基を表す。この基Ry、R'y又はR''yは、特に、O、N、S又はSiの中から選択されるヘテロ原子を含有することができ、かつ/あるいは置換されていてもよい。特に、このRy、R'y又はR''y基は、エステル官能基又はアミド官能基等の官能基により置換されていてもよい。特に、このRy、R'y又はR''y基は、ハロゲン、-Rz、-OH、-NH2、-NHRz、-NRzR'z、-C(O)-H、-C(O)-Rz、-C(O)-OH、-C(O)-NRzR'z、-C(O)-O-Rz、-O-C(O)-Rz、-O-C(O)-O-Rz、-O-C(O)-N(H)-Rz、-N(H)-C(O)-O-Rz、-O-Rz、-SH、-S-Rz、-S-S-Rz、-C(O)-N(H)-Rz、-N(H)-C(O)-Rz基(Rz、R'zは、同一であるか又は異なり、C1~C50アルキル基を表す)によって置換されている。特に、このRy、R'y又はR''y基には、エステル、アミド、エーテル、チオエーテル、二級又は三級アミン、カーボネート、ウレタン、カルボアミド又は無水物官能基が含まれ得る。
【0180】
図2は、分子A又はBとポリマー鎖との間の共有結合の生成による直鎖状ポリマーの官能基化を概略して示したものである。官能基化は、ジオキサボロラン環式ボロン酸エステルの場合は、分子Aにより、ジオキサボロラン環式ボロン酸エステルの場合には、分子Bによる。
【0181】
ポリマーの一工程での架橋及び官能基化を可能にする組合せ物は、以下の通りである:
- A+B:ジオキサボロラン環又はジオキサボリナン環の少なくとも1個の炭素原子によりそのポリマーに結合している式(EB1)又は(EB2)のペンダントボロン酸エステル官能基(A)によって官能基化されているポリマー + ジオキサボロラン環又はジオキサボリナン環のホウ素原子によりそのポリマーに結合している式(EB1)又は(EB2)のペンダントボロン酸エステル官能基(B)によって官能基化されているポリマー。ジオキサボロラン環式ボロン酸エステルの場合において
図3に例示されている通りの、ボロン酸エステルメタセシス反応による架橋の組合せ物である。ボロン酸エステル間のメタセシス反応は、これらの官能基がそれぞれのポリマー上にグラフトする前に、AとBとの間で行うことができる(これにより、分子C及び遊離の一官能性ボロン酸エステルに等価な分子が生成する)。
- A+C:分子(C)によって架橋されているポリマー + ジオキサボロラン環又はジオキサボリナン環の少なくとも1個の炭素原子によりそのポリマーに結合している式(EB1)又は(EB2)のペンダントボロン酸エステル官能基(A)によって官能基化されているポリマー。ボロン酸エステル間のメタセシス反応は、これらの官能基がポリマー上にグラフトする前に、AとCとの間で行うことができる。
- B+C
- A+B+C
【0182】
要約すると、ポリマー鎖1つ当たりに平均で少なくとも2つのボロン酸エステル官能基がグラフト化されて、ジオキサボロラン環又はジオキサボリナン環の少なくとも1個の炭素原子によって主鎖に連結することとなる組合せ物、及びポリマー鎖1つ当たりに2つのボロン酸エステル官能基がグラフト化されて、ジオキサボロラン環又はジオキサボリナン環のホウ素原子によって主鎖に連結することとなる組合せ物の任意のものである。
【0183】
上で定義されている式(Ia)又は(Ib)の化合物が使用される場合、他の組合せ物が可能である:
- A+化合物(Ia)。このように、オキサボロラン環又はジオキサボリナン環の少なくとも1個の炭素原子によって主鎖に連結している式(EB1)又は(EB2)のペンダントボロン酸エステル官能基(A)により官能基化されているポリマーが調製され、次に、そのペンダント官能基と化合物(Ia)の間のボロン酸エステルメタセシス反応によって、架橋が行われる。ボロン酸エステル間のメタセシス反応は、これらの官能基がポリマー上にグラフトする前に、Aと化合物(Ia)との間に行うことができる。
- B+化合物(Ib)
【0184】
やはり、ポリマー鎖1つ当たりに(A又はBを介して)グラフト化されている、平均で少なくとも2つの交換可能なペンダント官能基が存在しなければならない。化合物(Ia)又は化合物(Ib)の量は、その官能基によって様々となろう。とはいえ、化合物(Ia)及び(Ib)はやはり、ポリマー鎖鎖1つ当たりに、平均で、式(EB1)又は(EB2)の少なくとも2つのボロン酸エステル官能基を供給しなければならないと言うことができる。化合物(Ia)及び(Ib)の官能基は、ポリマー(A又はBを介して)上にグラフト化された官能基と相補的でなければならない。
【0185】
本発明による組成物では、ポリマーは、式(EB1)又は(EB2)のペンダントボロン酸エステル官能基を含む。それらまた、それらの側鎖形成架橋基の一部、好ましくはすべてに、式(EB1)又は(EB2)のボロン酸エステル官能基を含む。これにより、ボロン酸エステル間の交換が可能となり、ポリマーの架橋が改善される。本発明者らは、組成物それ自体が、熱硬化性樹脂のように不溶性である場合、ボロン酸エステル間の交換反応により、架橋基の循環が可能になり、かつ、その熱可塑性挙動が説明され得ると考えている。
【0186】
本組成物はまた、架橋基の生成の間に形成される、式(EB1)又は(EB2)の遊離の一官能性エステルを含む。
【0187】
式(EB1)又は(EB2)の単一のボロン酸エステル官能基を有する化合物はまた、これまでに記載した組成物のいずれに加えてもよい。この追加の化合物により、ポリマー組成物の特性、とりわけ粘度を調節することが可能である。
【0188】
ポリマーP1又はP1'、及び適用可能な場合、ポリマーP2は、好ましくは熱可塑性ポリマー又は熱硬化性ポリマーである。
【0189】
本発明による方法によって、熱硬化性樹脂及び熱可塑性樹脂の特性を有するポリマー調製物を、任意の熱可塑性ポリマーから調製することができる。
【0190】
ポリマーは、以下の中から選択することができる:
- ビニル体(vinylics)、特に、ポリスチレン、ポリ(メタ)アクリレート、ポリ(メタ)アクリルアミド、ポリジエン(ポリイソプレン及びポリブタジエン等)、ポリ(ビニルクロライド)、ポリフルオロ化ポリマー、ポリ(ビニルアセテート)、ポリビニルピロリドン又はポリビニルカルバゾール、
- ポリオレフィン、特に、ポリエチレン及びポリプロピレン、
- 不飽和ポリオレフィン、
- ポリアミド、
- 多糖類、
- ポリシロキサン又はシリコーン。
【0191】
これらのポリマーは、式(EB1)又は(EB2)のペンダントボロン酸エステル官能基化側鎖基を導入するように官能基化され得、あるいはグラフト化を可能にする基若しくは官能基を導入するように官能基化され得る。これらのペンダントボロン酸エステル官能基化側鎖基の導入は、当業者に公知の様々な方法によって行うことができる:ポリマー-前駆体モノマーとボロン酸エステル官能基化モノマーとの共重合(ボロン酸エステル官能基は、形成されるポリマーの主鎖に一体化されることはないが、ペンダント側鎖基に見いだされる)、ポリマーの反応性基上へのグラフト化、ポリマー-前駆体モノマーと、ポリマーの形成後に、ペンダントボロン酸エステル官能基をグラフト化するよう働く1つ又は複数の官能基を含有するモノマーとの共重合。ペンダントボロン酸エステル官能基をグラフト化するよう働くこれらの官能基は、重合反応に関連しない官能基であってもよく、又は重合反応に関連するが、モノマー混合物の化学量論/官能基により、若しくは重合性官能基すべての完全な変換(conversion)前に重合が停止されるかのいずれかにより、重合の終了時に未反応のままである官能基であってもよい。このような方法は、当業者に公知であり、とりわけ、重縮合により及び重付加によるポリマーの合成に使用される。例えば、ポリマーP1は、モノマー前駆体、及びボロン酸エステル官能基化側鎖基を有するモノマーの、熱可塑性ポリマーへの、共重合によって、ラジカル経路によって又は重縮合によって、配位による重合によって、又は重付加によって、又は開環によって得られる。例えば、ポリマーP1'は、モノマー前駆体、及びボロン酸エステル官能基を含有する分子をグラフト化することが可能な側鎖基を有するモノマーの、熱可塑性ポリマーへの、共重合によって、ラジカル経路によって又は重縮合によって、配位による重合によって、又は重付加によって、又は開環によって得られる。同様に、グラフト化を可能にする基又は官能基の導入は、当業者に公知の様々な方法によって行うことができる(Charles E. Hoyle、Christopher N. Bowman、Angew. Chem. Int. Ed. 2010、49、1540~1573頁;Kemal Arda Gunay、Patrick Theato、Harm-Anton Klok、Journal of Polymer Science Part A:Polymer Chemistry 2013、51、1~28頁;G. Moad、Prog. Polym. Sci. 1999、24、81~142頁;Elisa Passagliaa、Serena Coiai、Sylvain Augier、Prog. Polym. Sci. 2009、34、911~947頁;Charles E. Hoyle、Andrew B. Lowe、Christopher N. Bowman、Chem. Soc. Rev.、2010、39、1355~1387頁;Brian D. Mather、Kalpana Viswanathan、Kevin M. Miller、Timothy E. Long、Prog. Polym. Sci. 2006、31、487~531頁;T. C. Chung、Prog. Polym. Sci. 2002、27、39~85頁.Chulsung Bae、John F. Hartwig、Hoyong Chung、Nicole K. Harris、Karen A. Switek、Marc A. Hillmyer、Angew. Chem. Int. Ed. 2005、44、6410~6413頁)。
【0192】
上述した通り、ポリマーは、添加物の添加時に、官能基化され、架橋されてもよい。
【0193】
直鎖状若しくは分岐状ポリマーP1、P1'又はP2(すなわち、架橋前)の数平均モル質量Mnは、好ましくは2000g/mol~2500000g/molの間、より好ましくは5000g/mol~750000g/molの間、及び更により好ましくは10000g/mol~400000g/molの間である。
【0194】
直鎖状又は分岐状ポリマーP1、P1'又はP2(すなわち、架橋前)の分散度D=Mw/Mnは、好ましくは1.01~15の間、より好ましくは1.03~10の間、更により好ましくは1.05~7.5の間である。
【0195】
本発明では、[ペンダントボロン酸エステル官能基を含有しないポリマーP1又はP1'の繰り返し単位]/[ペンダントボロン酸エステル官能基を含有するポリマーP1又はP1'の繰り返し単位]のモル比は、好ましくは0.01~1000の間、より好ましくは0.1~250の間、及び更により好ましくは1~100の間である。「ペンダントボロン酸エステル官能基」は、本明細書では、ボロン酸エステル官能基、又はこのようなボロン酸エステル官能基のグラフト化を可能にする官能基のどちらかを意味する。
【0196】
[式(Ia)の化合物]/[ペンダントボロン酸エステル官能基を含有するポリマーP1又はP1'の繰り返し単位]のモル比は、好ましくは5~0.001の間、より好ましくは1~0.005の間、更により好ましくは0.5~0.01の間である。「ペンダントボロン酸エステル官能基」は、本明細書では、ボロン酸エステル官能基、又はこのようなボロン酸エステル官能基のグラフト化を可能にする官能基のどちらかを意味する。
【0197】
[式(Ib)の化合物]/[ペンダントボロン酸エステル官能基を含有するポリマーP1又はP1'の繰り返し単位]のモル比は、好ましくは5~0.001の間、より好ましくは1~0.005の間、更により好ましくは0.5~0.01の間である。「ペンダントボロン酸エステル官能基」は、本明細書では、ボロン酸エステル官能基、又はこのようなボロン酸エステル官能基のグラフト化を可能にする官能基のどちらかを意味する。
【0198】
本発明では、[ペンダントボロン酸エステル官能基を含有しないポリマーP2の繰り返し単位]/[ペンダントボロン酸エステル官能基を含有するポリマーP2の繰り返し単位]のモル比は、好ましくは0.01~1000の間、更に好ましくは0.1~250の間、更により好ましくは1~100の間である。
【0199】
[ペンダントボロン酸エステル官能基を含有するポリマーP2の繰り返し単位]/[ペンダントボロン酸エステル官能基を含有するポリマーP1又はP1'の繰り返し単位]のモル比は、好ましくは2500~0.0004の間、より好ましくは250~0.004の間、更により好ましくは100~0.01の間である。「ペンダントボロン酸エステル官能基」は、本明細書では、ボロン酸エステル官能基、又はこのようなボロン酸エステル官能基のグラフト化を可能にする官能基のどちらかを意味する。
【0200】
本発明のポリマーの物理的及び化学的特性は、使用される化合物、特に、ポリマーP1及びP1'、並びに適用可能な場合、P2に強く依存する。
【0201】
とはいえ、本発明による組成物は、熱可塑性ポリマーP1又はP1'から始めて、熱可塑性ポリマーの特性と熱硬化性樹脂の特性とを併せもつ。特に、本発明による組成物は、熱硬化性樹脂の様に不溶性であるが、再利用することができ、かつ/或いは、ポリマーP1若しくはP1'、適用可能な場合、p2のガラス転移温度(Tg)又は融解温度(Tf)が25℃より低い場合、それらのガラス転移温度又は融解温度よりも高い温度、好ましくは、Tg又はTf+10℃よりも高い温度、より好ましくはTg又はTf+20℃よりも高い温度、更により好ましくはTg又はTf+40℃より高い温度、更により好ましくはTg又はTf+80℃より高い温度で再成形され得る。
【0202】
2.モノマーの共重合による組成物の調製:
本発明の目的は、架橋ポリマーのネットワークを含むポリマー組成物である。前記ネットワークは、以下の化合物の共重合によって調製される:
(a)重合性基を含有しない少なくとも1つのペンダントボロン酸エステル基を含む、熱可塑性ポリマーのための前駆体モノマー、
(b)ボロン酸エステルメタセシス反応によって交換可能なペンダント官能基及び架橋基を含有する架橋ポリマーのネットワークの形成を可能にする、少なくとも1つのボロン酸エステル基を含む架橋剤、
(ここで、前記ボロン酸エステルは、以下の式(EB1)及び(EB2)の下記ジオキサボロラン環及びジオキサボリナン環:
【0203】
【0204】
(式中、
Rx、Rw及びRvは、同一であるか又は異なり、それぞれが、水素原子若しくは炭化水素基を表すか、又は一対として一緒になって、脂肪族環若しくは芳香族環を形成し、
Ryは、炭素原子を介して共有結合によってジオキサボロラン環又はジオキサボリナン環のホウ素原子に連結されている炭化水素基である)
の中から選択される)
(c)適用可能な場合、式(EB1)又は(EB2)のボロン酸エステル基を含まない、熱可塑性ポリマーのための前駆体であるモノマー。
【0205】
重合は、好ましくは、ラジカル重合、配位による重合、開環重合、重付加又は重縮合である。
【0206】
モノマー(a):
ボロン酸エステル官能性化合物であるモノマー(a)は、モノマーあたり、式(EB1)又は(EB2)のペンダントボロン酸エステル官能基を少なくとも1つ含み、少なくとも1つの重合性官能基を有する。ペンダントボロン酸エステル官能基は、重合性基を含まない。
【0207】
表現「重合性基を含有しない少なくとも1つのペンダントボロン酸エステル基を含むモノマー」は、ペンダントボロン酸エステル基が、式(EB1)又は(EB2)であること、及びRx、Rw、Rv又はRyのいずれも、モノマーを構成するもの(単数又は複数)以外の重合性基を有していないことを意味する。
【0208】
表現「重合性基を含有していない前記ペンダントボロン酸エステル基」は、考えられる系に使用される重合機構によって重合可能な基ではないことを意味する。
【0209】
重合性官能基は、好ましくは、ラジカル重合により、配位による重合により、開環重合により、重付加により又は重縮合により重合可能な官能基である。例として、アルコール、エポキシド、カルボン酸、エステル、一級又は二級アミン、イソシアネート又はビニル官能基を挙げることができる。
【0210】
モノマー(a)は、好ましくは、たった1つ又は2つの重合性基を含む。特に、:
- モノマー(a)は、重合性基が、ラジカル重合により、配位による重合により、又は開環重合により重合可能な場合、単一の重合性基を含む。
- モノマー(a)は、重合性基が重付加により又は重縮合により重合可能な場合、これらの重合性基を2つだけ含む。
【0211】
モノマー(a)は、好ましくは、以下の式(IIa)又は(IIb):
【0212】
【0213】
(式中、
R21、R'21、R''21、R25、R''25は、同一であるか又は異なり、それぞれが、相互に独立して、水素原子又は炭化水素基を表し、
R26は、炭化水素基を表し、
R22及びR24は、同一であるか又は異なり、それぞれが、炭化水素基を表し、R22は、炭素原子を介して共有結合によりボロン酸エステル官能基に連結している
{R21、R'21、R''21}は、対で一緒になって、脂肪族環又は芳香族環を形成することができ、
{R24、R'25、R''25}は、対で一緒になって、脂肪族環又は芳香族環を形成することができ、
R26は、炭素原子を介して共有結合によってホウ素原子に連結しており、
kは、0又は1に等しく、
GFP2は、既に記載されている重合性官能基を表し、
m2は、1又は2に等しい)
を有する。
【0214】
これ以降、用語(IIb)は、式(IIb1)又は式(IIb2)のどちらかを表す。
【0215】
好ましくは、GFP2が、重付加により又は重縮合により重合可能な場合、m2は2に等しい。好ましくは、GFP2が、ラジカル重合により、配位による重合により、又は開環重合により重合可能である場合、m2は1に等しい。
【0216】
R21、R'21、R''21、R22、R24、R25、R''25又はR26基のいずれも、GFP2を重合するために使用される重合様式によって重合可能な官能基を有していない。
【0217】
R22及びR24は、同一であるか又は異なり、場合によりその環の各炭素原子上にいくつかのブロックである[ボロン酸エステル]が存在することが可能な環、又は場合によりその鎖の異なる炭素原子上にいくつかのブロックである[ボロン酸エステル]が存在することが可能な炭化水素鎖を、特に表すことができる。
【0218】
R22及びR24は、同一であるか又は異なり、それぞれが、好ましくは、O、N、S又はSi等のヘテロ原子をも含有していてもよい、脂肪族、芳香族、アリール脂肪族又は脂環式基である。好ましい実施形態では、R22及びR24は、同一であるか又は異なり、それぞれが、芳香族基又は複素芳香族基を表す。
【0219】
好ましくは、R22及びR24は、同一であるか又は異なり、それぞれが、C1~C12アルカンジイル基、ベンゼン環、ナフタレン環、C1~C6アルカンジイル基により連結されている2つのベンゼン環を含むアリール脂肪族基、ピリミジン環又はトリアジン環を表す。
【0220】
特に、R22又はR24基は、特にO、N、S又はSiの中から選択される、ヘテロ原子を含有することができ、かつ/あるいは置換されていてもよい。特に、この基は、エステル官能基又はアミド官能基等の官能基が、重合反応に関与しないという条件で、これらの官能基等の官能基により置換されていてもよい。特に、この基は、以下の基が重合反応に関与しないという条件で、ハロゲン、-Rz、-OH、-NH2、-NHRz、-NRzR'z、-C(O)-H、-C(O)-Rz、-C(O)-OH、-C(O)-NRzR'z、-C(O)-O-Rz、-O-C(O)-Rz、-O-C(O)-O-Rz、-O-C(O)-N(H)-Rz、-N(H)-C(O)-O-Rz、-O-Rz、-SH、-S-Rz、-S-S-Rz、-C(O)-N(H)-Rz、-N(H)-C(O)-Rz基(Rz、R'zは、同一であるか又は異なり、C1~C50アルキル基を表す)によって置換されている。特に、この基は、エステル、アミド、エーテル、チオエーテル、二級又は三級アミン、カーボネート、ウレタン、カルボアミド又は無水物官能基を含んでもよい。
【0221】
R21、R'21、R''21、R25、R'25は、同一であるか又は異なり、水素原子若しくはアルキル、アルケニル、アリール、シクロアルキル、ヘテロアリール、ヘテロアルキル若しくはヘテロシクロアルキル基を好ましくは表し、これらの基はそれぞれ、置換されていてもよく、あるいは、R21、R'21、R''21、若しくはR24、R25、R''25は、対で一緒になって、脂肪族環又は芳香族環を形成してもよい。
【0222】
非限定例として、少なくとも1つのペンダントボロン酸エステル基を含む熱可塑性ポリマーのための前駆体である7つのモノマー(a)を、以下に示す。前記ペンダントボロン酸エステル基は、考えられる系におけるいかなる重合性基も含有しない。
【0223】
【0224】
モノマーM1、M1OH M3及びM3COOHは、ペンダントジオキサボロラン基を含むポリメタクリレートへの前駆体であり、前記ペンダントジオキサボロラン基は、重合性基を含んでいない。これらのモノマーの重合は、ラジカル重合によって行われる。この場合、モノマーM1OH及びM3COOHのペンダントジオキサボロラン基がそれぞれ有しているアルコール官能基及びカルボン酸官能基は、これらの官能基が重合反応に関与しないので、重合性基ではない。
【0225】
モノマーMXは、ホウ素原子によりモノマーに連結しているペンダントジオキサボロラン基を含むポリアミド前駆体である。この場合、一級アミン官能基は、単一の縮合反応しか生じ得ない官能基である。モノマーMYは、これが、ホウ素原子によってそのモノマーに連結しているペンダントジオキサボロラン基を含むジエポキシドモノマーと共重合される場合、熱可塑性ポリエポキシドへの前駆体となる。この場合、一級アミン官能基は、エポキシド環上で2つの縮合反応を生じ得る官能基となる。
【0226】
モノマーMZは、ホウ素原子によりそのモノマーに連結しているペンダントジオキサボロラン基を含むポリエステル及びポリウレタン前駆体である。ポリエステルの合成は、アルコール官能基を有するモノマーと、例えばカルボン酸又はエステル官能基を有するモノマー(これらの官能基は非限定的であり、ポリエステルの合成に使用することができる官能基だけではない)との間の重縮合によって行われる。ポリウレタンの合成は、アルコール官能基を有するモノマーと、イソシアネート官能基を有するモノマーとの間の重付加により行われる。これらの2つの場合、アルコール官能基が重合反応に関与するので、アルコール官能基は重合性基となる。
【0227】
非限定例として、モノマーは、当業者に公知の方法に従って調製することができる、例えば、1つ又は2つの重合性官能基GFP2及びハロゲンを有する試薬と、ボロン酸エステル官能基及びアルコール官能基を有する別の試薬とをカップリングすることにより調製することができる。このモノマーはまた、当業者に公知の方法に従って、例えば、1つ又は2つの重合性官能基GFP2及びハロゲンを有する試薬と、ボロン酸エステル官能基及びカルボン酸官能基を有する別の試薬とをカップリングすることにより調製することができる。
【0228】
このモノマーはまた、当業者に公知の方法に従って、例えば、1つ又は2つの重合性官能基GFP2及び無水物官能基を有する試薬と、ボロン酸エステル官能基及びアルコール官能基を有する別の試薬とをカップリングすることにより調製することができる。このモノマーはまた、当業者に公知の方法に従って、例えば、1つ又は2つの重合性官能基GFP2及び無水物官能基を有する試薬と、ボロン酸エステル官能基及び一級アミン官能基を有する別の試薬とをカップリングすることにより調製することができる。
【0229】
このモノマーはまた、当業者に公知の方法に従って、例えば、1つ又は2つの重合性官能基GFP2及びカルボン酸又はハロゲン化アシル官能基を有する試薬と、ボロン酸エステル官能基及びアルコール官能基を有する別の試薬とをカップリングすることにより調製することができる。このモノマーはまた、当業者に公知の方法に従って、例えば、1つ又は2つの重合性官能基GFP2及びカルボン酸又はハロゲン化アシル官能基を有する試薬と、ボロン酸エステル官能基及び一級アミン官能基を有する別の試薬とをカップリングすることにより調製することができる。
【0230】
このモノマーはまた、当業者に公知の方法に従って、例えば、1つ又は2つの重合性官能基GFP2及びアルコール官能基を有する試薬と、ボロン酸エステル官能基及びカルボン酸又はエステル官能基を有する別の試薬とをカップリングすることにより調製することができる。このモノマーはまた、当業者に公知の方法に従って、例えば、1つ又は2つの重合性官能基GFP2及び一級アミン官能基を有する試薬と、ボロン酸エステル官能基及びカルボン酸又はエステル官能基を有する別の試薬とをカップリングすることにより調製することができる。
【0231】
このモノマーはまた、当業者に公知の方法に従って、例えば、1つ又は2つの重合性官能基GFP2及びアミン官能基を有する試薬と、ボロン酸エステル官能基及びアクリレート官能基を有する別の試薬とをカップリングすることにより調製することができる。
【0232】
このモノマーはまた、当業者に公知の方法に従って、例えば、1つ又は2つの重合性官能基GFP2及びイソシアネート官能基を有する試薬と、ボロン酸エステル官能基及びアルコール官能基を有する別の試薬とをカップリングすることにより調製することができる。
【0233】
これらの最初の試薬は、市販されているか、又は当業者に公知の方法に従って、合成することができる。
【0234】
架橋剤(b):
既に記述した添加物についてみると、交換可能なペンダント連結基及び架橋基を有する架橋ポリマーネットワークの形成を可能にするためには、そのままでそれ自体と反応せず、その官能基を失わない架橋剤が、好ましくは使用される。このように、架橋剤は、以下のペンダント官能基及び/又は末端官能基を有する:
- ジオキサボロラン環又はジオキサボリナン環の少なくとも1個の炭素原子によって連結されているボロン酸エステル官能基、又は
- ジオキサボロラン環又はジオキサボリナン環のホウ素原子によって連結されているボロン酸エステル官能基。
第1の使用可能な架橋剤は、少なくとも2つのボロン酸エステル官能基を含む化合物である。この第1の架橋剤は、「二官能性又は多官能性架橋剤」と呼ばれる。この架橋剤はまた、モノマーであってもポリマーであってもよい。これらのすべての場合において、ボロン酸エステル官能基のホウ素原子は、炭素原子を介する共有結合によって炭化水素基に連結している。
【0235】
第1の実施形態では、架橋剤は、少なくとも2つのボロン酸エステル官能基を含む化合物である。
【0236】
この化合物は、実行する(put into play)モノマーの重合の様式によって重合可能な官能基を含んでもよく、含まなくてもよい。
【0237】
架橋剤は、好ましくは、上述した式(Ia)又は(Ib)の化合物である。
【0238】
特定の実施形態では、{R1、R'1、R''1}基のうちの少なくとも1つ、及び{R3i、R'3i、R''3i}基のうちの少なくとも1つは、実行するモノマーの重合の様式によって重合可能な少なくとも1つの官能基を有しているか、あるいはR6基、及びR8i基の少なくとも1つは、実行するモノマーの重合様式によって重合可能な少なくとも1つの官能基を有している
【0239】
重合性官能基は、好ましくは、ラジカル重合により、配位による重合により、開環重合により、重付加により又は重縮合により重合可能な官能基である。例として、アルコール、エポキシド、カルボン酸、エステル、一級又は二級アミン、イソシアネート又はビニル官能基を挙げることができる。
【0240】
好ましくは、式(Ia)又は(Ib)中の基のいずれも、重合性官能基を有していない場合、
- モノマー(a)中のボロン酸エステル官能基が、ジオキサボロラン環又はジオキサボリナン環の少なくとも1個の炭素原子によって重合性基に、好ましくは式(IIb)の化合物に連結されている場合、架橋剤は、式(Ia)の化合物となる。
- モノマー(a)中のボロン酸エステル官能基が、ジオキサボロラン環又はジオキサボリナン環のホウ素原子、好ましくは式(IIa)の化合物に連結されている場合、架橋剤は、式(Ib)の化合物となる。
【0241】
第2の実施形態では、架橋剤はポリマーである。この第2の実施形態では、ポリマーは、ペンダントボロン酸エステル基を含む。このポリマーは、以下を有する:
- ジオキサボロラン環若しくはジオキサボリナン環の少なくとも1個の炭素原子によってそのポリマーに連結されている重合性基を含有していない、式(EB1)又は(EB2)のペンダントボロン酸エステル官能基、又は
- ジオキサボロラン環若しくはジオキサボリナン環のホウ素原子によってそのポリマーに連結されている重合性基を含有していない、式(EB1)又は(EB2)のペンダントボロン酸エステル官能基。
【0242】
ポリマー鎖は、ペンダントボロン酸エステル基により官能基化され得る、任意のポリマーであってよい。
【0243】
架橋剤としてポリマーを使用すると、重合されるべきモノマー組成物の粘度を調節することが可能となる。
【0244】
ペンダントボロン酸エステル官能基がそれを介してポリマーに連結される原子の性質の選択は、ペンダントボロン酸エステル官能基がそれを介してモノマー(a)の重合性基に連結されている原子の性質に依存する。
【0245】
このように、モノマー(a)中のペンダントボロン酸エステル基がジオキサボロラン環又はジオキサボリナン環の少なくとも1個の炭素原子によって重合性基に連結されている場合、好ましくは、式(IIb)の化合物の場合、ジオキサボロラン環又はジオキサボリナン環のホウ素原子によってポリマーに連結されているペンダントボロン酸エステル官能基を含有するポリマーが、ポリマーとして選択される。
【0246】
このように、モノマー(a)中のペンダントボロン酸エステル基がジオキサボロラン環又はジオキサボリナン環のホウ素原子によって重合性基に連結している場合、好ましくは式(IIa)の化合物の場合、ジオキサボロラン環又はジオキサボリナン環の少なくとも1個の炭素原子によってポリマーに連結されているペンダントボロン酸エステル官能基を含有するポリマーが、ポリマーとして選択される。
【0247】
第3の実施形態では、架橋剤は、ボロン酸エステル官能性化合物であって、モノマーあたり少なくとも1つのボロン酸エステル官能基を含み、かつ少なくとも1つの重合性基を有する、熱可塑性ポリマー又は熱硬化性樹脂への前駆体であるモノマーである。このモノマーは、これ以降、「モノマー(b)」と呼ぶことができる。
【0248】
モノマー(b)は、好ましくは、1又は2つだけの重合性基を含む。特に:
- モノマー(b)は、重合性基が、ラジカル重合により、配位による重合により、又は開環重合により重合可能な場合、単一の重合性基を含む、
- モノマー(b)は、重合性基が重付加により又は重縮合により重合可能な場合、2つの重合性基だけを含む。
【0249】
第1の実施形態では、モノマー(b)は、好ましくは、以下の式(IIIa)、(IIIb1)又は(IIIb2)である:
【0250】
【0251】
(式中、
R31、R'31、R''31、R35、R''35は、同一であるか又は異なり、それぞれが、相互に独立して、水素原子又は炭化水素基を表し、
R36は、炭化水素基を表し、
R32及びR34は、同一であるか又は異なり、それぞれが、炭化水素基を表し、R32をは、炭素原子を介して共有結合によりボロン酸エステル官能基に連結しており、
{R31、R'35、R''35}は、対で一緒になって、脂肪族環又は芳香族環を形成することができ、
{R34、R'35、R''35}は、対で一緒になって、脂肪族環又は芳香族環を形成することができ、
R36は、炭素原子を介して共有結合によってホウ素原子に連結しており、
R32及びR34は、同一であるか又は異なり、それぞれが、好ましくは、O、N、S又はSi等のヘテロ原子をも含有していてもよい、脂肪族、芳香族、アリール脂肪族又は脂環式基である。好ましい実施形態では、R32及びR34は、同一であるか又は異なり、それぞれが、芳香族基又は複素芳香族基を表す。
kは、0又は1に等しく、
GFP3は、既に記述した重合性官能基を表し、
m3は、1又は2に等しい)。
【0252】
これ以降、用語(IIIb)は、式(IIIb1)又は式(IIIb2)のどちらかを表す。
【0253】
好ましくは、GFP3が、重付加により又は重縮合により重合可能な場合、m3は2に等しい。好ましくは、GFP3が、ラジカル重合により、配位による重合により、又は開環重合により重合可能である場合、m3は1に等しい。
【0254】
R31、R'31、R''31、R35、R''35又はR36基のいずれも、GFP3を重合するために使用される重合様式によって重合可能な官能基を有していない。
【0255】
GFP3は別として、R32及びR34は、GFP3を重合するために使用される重合様式によって重合可能ないかなる他の官能基も有していない。
【0256】
R32及びR34は、同一であるか又は異なり、場合によりその環の各炭素原子上にいくつかのブロックである[ボロン酸エステル]が存在していることが可能な環、又は場合によりその鎖の異なる炭素原子上にいくつかのブロックである[ボロン酸エステル]が存在していることが可能な炭化水素鎖を特に示すことができる。
【0257】
R32及びR34は、同一であるか又は異なり、それぞれが、好ましくは、O、N、S又はSi等のヘテロ原子をも含有していてもよい、脂肪族、芳香族、アリール脂肪族又は脂環式基である。好ましい実施形態では、R32及びR34は、同一であるか又は異なり、それぞれが、芳香族基又は複素芳香族基を表す。
【0258】
好ましくは、R32及びR34は、同一であるか又は異なり、それぞれが、C1~C12アルカンジイル基、ベンゼン環、ナフタレン環、C1~C6アルカンジイル基により連結されている2つのベンゼン環を含むアリール脂肪族基、ピリミジン環又はトリアジン環を表す。
【0259】
特に、R32又はR34基は、特に、O、N、S又はSiの中から選択されるヘテロ原子を含有することができ、かつ/あるいは置換されていてもよい。特に、このRy基は、エステル官能基又はアミド官能基等の官能基が、重合反応に関与しないという条件で、これらの官能基等の官能基により置換されていてもよい。特に、この基は、以下の基が重合反応に関与しないという条件で、ハロゲン、-Rz、-OH、-NHRz、-NRzR'z、-C(O)-OH、-C(O)-NRzR'z、-C(O)-O-Rz、-O-C(O)-Rz、-O-C(O)-O-Rz、-O-C(O)-N(H)-Rz、-N(H)-C(O)-O-Rz、-O-Rz、-S-Rz、-C(O)-N(H)-Rz、-N(H)-C(O)-Rz基(Rz、R'zは、同一であるか又は異なり、C1~C50アルキル基を表す)によって置換されている。特に、この基は、エステル、アミド、エーテル、チオエーテル、二級又は三級アミン、カーボネート、ウレタン、カルボアミド又は無水物官能基を含んでいてもよい。
【0260】
R31、R'31、R''31、R35、R'35は、同一であるか又は異なり、水素原子若しくはアルキル、アルケニル、アリール、シクロアルキル、ヘテロアリール、ヘテロアルキル若しくはヘテロシクロアルキル基を好ましくは表し、これらの基はそれぞれ、置換されていてもよいか、あるいは、R31、R'31、R''31、若しくはR34、R35、R''35は、対で一緒になって、脂肪族環又は芳香族環を形成する。
【0261】
第2の実施形態では、モノマー(b)は、ボロン酸エステル官能基を含有する化合物であり、そのホウ素原子は、少なくとも1つの重合性基に連結されており、ボロン酸エステル環の少なくとも1個の炭素原子は、少なくとも1つの重合性基に連結されている。これらの重合性基は、モノマー(a)を重合するために使用されるものと同じ機構によって重合可能である。
【0262】
重合が重付加/重縮合タイプである場合、モノマー(b)は、ボロン酸エステル官能基を含有する化合物であり、そのホウ素原子は、2つの重合性基に連結されており、ボロン酸エステル環の少なくとも1個の炭素原子は、2つの重合性基に連結されている。重合の別のタイプでは、モノマー(b)は、ボロン酸エステル官能基を含有する化合物であり、そのホウ素原子は、1つの重合性基に連結されており、ボロン酸エステル環の少なくとも1個の炭素原子は、1つの重合性基に連結されている。
【0263】
好ましくは、モノマー(b)は、以下の式(IVa)又は(IVb):
【0264】
【0265】
(式中、
R41、R'41、R''41、R45、R''45は、同一であるか又は異なり、それぞれが、相互に独立して、水素原子又は炭化水素基を表し、
R46は、炭化水素基を表し、
R42、R'42及びR44は、同一であるか又は異なり、それぞれが、炭素原子を表し、R42及びR46は、炭素原子を介して共有結合によりボロン酸エステル官能基にそれぞれ連結しており、
{R41、R''41、R'42}は、対で一緒になって、脂肪族環又は芳香族環を形成することができ、
{R44、R45、R''45}は、対で一緒になって、脂肪族環又は芳香族環を形成することができ、
R'42、R42、R44及びR46は、同一であるか又は異なり、それぞれが、好ましくは、O、N、S又はSi等のヘテロ原子をも含有していてもよい、脂肪族、芳香族、アリール脂肪族又は脂環式基である)
を有する。好ましい実施形態では、R'42、R42、R44及びR46は、同一であるか又は異なり、それぞれが、芳香族基又は複素芳香族基を表し、
kは、0又は1に等しく、
GFP4及びGFP'4は、同一であるか又は異なり、それぞれが、既に記述した重合性官能基を表し、
m4は、1又は2に等しい。
【0266】
これ以降、用語(IV)は、式(IVa)又は式(IVb)のどちらかを表す。
【0267】
好ましくは、GFP4及びGFP'4が、重付加により又は重縮合により重合可能な場合、m4は2に等しい。好ましくは、GFP4及びGFP'4が、ラジカル重合により、配位による重合により、又は開環重合により重合可能である場合、m4は1に等しい。
【0268】
R42及びR44、R'42及びR46は、同一であるか又は異なり、それぞれが、好ましくは、O、N、S又はSi等のヘテロ原子をも含有していてもよい、脂肪族、芳香族、アリール脂肪族又は脂環式基である。好ましい実施形態では、R42及びR44は、同一であるか又は異なり、それぞれが、芳香族基又は複素芳香族基を表す。
好ましくは、R42及びR44、R'42及びR46は、同一であるか又は異なり、それぞれが、C1~C12アルカンジイル基、ベンゼン環、ナフタレン環、C1~C6アルカンジイル基により連結されている2つのベンゼン環を含むアリール脂肪族基、ピリミジン環又はトリアジン環を表す。特に、このR42又はR44、R'42又はR46基は、O、N、S又はSiの中から選択されるヘテロ原子を含有することができる、及び/又は置換されていてもよい。特に、このRy基は、エステル官能基又はアミド官能基等の官能基が、重合反応に関与しないという条件で、これらの官能基等の官能基により置換されていてもよい。特に、この基は、以下の基が重合反応に関与しないという条件で、ハロゲン、-Rz、-OH、-NHRz、-NRzR'z、-C(O)-OH、-C(O)-NRzR'z、-C(O)-O-Rz、-O-C(O)-Rz、-O-C(O)-O-Rz、-O-C(O)-N(H)-Rz、-N(H)-C(O)-O-Rz、-O-Rz、-S-Rz、-C(O)-N(H)-Rz、-N(H)-C(O)-Rz基(Rz、R'zは、同一であるか又は異なり、C1~C50アルキル基を表す)によって置換されている。特に、この基は、エステル、アミド、エーテル、チオエーテル、二級又は三級アミン、カーボネート、ウレタン、カルボアミド又は無水物官能基を含んでもよい。R41、R''41、R45、R''45は、同一であるか又は異なり、水素原子若しくはアルキル、アルケニル、アリール、シクロアルキル、ヘテロアリール、ヘテロアルキル若しくはヘテロシクロアルキル基を好ましくは表し、これらの基はそれぞれ、置換されていてもよく、あるいは、R41、R''41、R'42、若しくはR44、R45、R''45は、対で一緒になって、脂肪族環又は芳香族環を形成していてもよい。
【0269】
これらの実施形態の1つ又は他の実施形態において、重合性官能基は、好ましくは、ラジカル重合により、配位による重合により、開環重合により、重付加により又は重縮合による重合可能な官能基である。例として、アルコール、エポキシド、カルボン酸、エステル、一級又は二級アミン、イソシアネート又はビニル官能基を挙げることができる。
【0270】
特に、ボロン酸エステル官能基がジオキサボロラン環又はジオキサボリナン環のホウ素原子により重合性基に連結しているモノマー(a)、好ましくは式(IIa)のモノマー、及びボロン酸エステル官能基がジオキサボロラン環又はジオキサボリナン環の少なくとも1個の炭素原子により重合性基に連結しているモノマー(b)、好ましくは式(IIIb)のモノマーの存在下において、それぞれ、ボロン酸エステル官能基がジオキサボロラン環又はジオキサボリナン環の少なくとも1個の炭素原子により重合性基に連結しているモノマー(a)、好ましくは式(IIb)のモノマー、及びボロン酸エステル官能基がジオキサボロラン環又はジオキサボリナン環のホウ素原子により重合性基に連結しているモノマー(b)、好ましくは式(IIIa)のモノマーの存在下で重合が行われる場合、所望の熱硬化/熱可塑特性を表す架橋ポリマーを得ることができる。具体的には、ポリマーネットワークは、交換反応に利用可能な、小さなサイズ(すなわち、ポリマーの主鎖の一部を形成しない)のペンダントボロン酸エステル官能基を含有する。このような場合には、架橋、二官能性又は多官能性手段、例えば式(Ia)又は(Ib)の存在は、任意選択となる。
【0271】
特に、ボロン酸エステル官能基がホウ素原子により、又はジオキサボロラン環又はジオキサボリナン環の少なくとも1個の炭素原子により重合性基に連結しているモノマー(a)、好ましくは式(IIa)若しくは(IIb)と、式(IV)のモノマー(b)との存在下で、重合が行われる場合、所望の熱硬化/熱可塑特性を表す架橋ポリマーを得ることができる。具体的には、ポリマーネットワークは、交換反応に利用可能な、小さなサイズ(すなわち、ポリマーの主鎖の一部を形成しない)のペンダントボロン酸エステル官能基を含有する。このような場合には、架橋、二官能性又は多官能性手段、例えば式(Ia)又は(Ib)の存在は、任意選択となる。
【0272】
第1、第2及び第3の実施形態の架橋剤は、組み合わせて、特に対として、又は3つをすべて一緒に使用してもよい。
【0273】
それらは、公知方法により、とりわけモノマー(a)の調製に記述した方法によって合成することができる。
【0274】
共重合は、ボロン酸エステル基を含まない、熱可塑性ポリマーの前駆体であるモノマー(c)の存在下で好ましくは行われる。これらのモノマーは、市販されている。
【0275】
モノマー(c)は、好ましくは、1又は2つだけの重合性基を含む。特に、
- モノマー(c)は、重合性基が、ラジカル重合により、配位による重合により、又は開環重合により重合可能な場合、単一の重合性基を含み、
- モノマー(c)は、重合性基が重付加により又は重縮合により重合可能な場合、これらの重合性基を2つだけ含む。
【0276】
本発明による方法によって、熱硬化性樹脂及び熱可塑性樹脂の特性を有するポリマー調製物を、任意の熱可塑性ポリマー前駆体から調製することができる。
【0277】
例えば、対象となるポリマー前駆体は、スチレン及びその誘導体、アルキルメタクリレート、アリールアルキルメタクリレート、アルキルアクリレート、アリールアルキルアクリレート、アクリロニトリル、アクリルアミド、メタクリルアミド、エチレン、フルオロアルキルメタクリレート、フルオロアルキルアクリレート、ハロゲン化アルケン(テトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン)、アルキルジエン(ブタジエン、イソプレン)、酢酸ビニル、塩化ビニル、フッ化ビニリデン、無水マレイン酸、マレイミド、N-ビニルピロリドン、2-ビニルピリジン、4-ビニルピリジン、N-ビニルカルバゾール及び適切な混合物を含む群から選択される。「適切な混合物」は、共重合に適合性のある前駆体を表す。これは、当業者の一般的な知識に基づいて、当業者により容易に決定することができる。
【0278】
別の例では、対象のポリマー前駆体は、ポリオール、特に、ジ-アルコール、一級又は二級ポリアミン、特に、ジアミン、ジカルボン酸、ジエステル、ジエポキシド又はトリエポキシド及びジイソシアネートを含む群から選択される。
【0279】
別の例では、対象のポリマー前駆体は、ラクトン及びラクタムを含む群から選択される。
【0280】
別の例では、対象のポリマー前駆体は、ノルボルネン又はシクロオクテン等の環式アルケンの群から選択される。
【0281】
別の例では、対象のポリマー前駆体は、エチレン又はプロピレン等のオレフィンの群から選択される。
【0282】
これらのモノマーは、市販されている。
【0283】
対象となるポリマーのいくつかの異なるモノマー前駆体を使用することが完全に考えられる。当業者は、適合可能なモノマーを選択する方法を知っている。
【0284】
本発明のポリマーは、以下の重合によって調製することができる:
- モノマー(c)
- モノマー(a)、好ましくは式(IIa)又は(IIb)のモノマー、
- 既に定義した架橋剤、特に、式(Ia)若しくは(Ib)の化合物、又は、モノマー(b)、好ましくは、式(IIIa)若しくは(IIIb)若しくは式(IV)のモノマー。
【0285】
式(I)又は(III)の化合物の性質、したがって、式(Ia)又は(Ib)/(IIIa)又は(IIIb)の間の選択は、選択されるモノマー(a)に依存するであろう。このように、好ましくは、それぞれ、このモノマーが式(IIa)の化合物である場合、架橋剤は、式(Ib)又は(IIIb)であり、このモノマーが式(IIb)の化合物である場合、架橋剤は、式(Ia)又は(IIIa)である。式(IV)のモノマーは、任意のモノマー(a)と一緒に使用されてもよい。
【0286】
重合が、これらの化合物の存在下で行われる場合、所望の熱硬化性/熱可塑特性を示す架橋ポリマーを得ることができる。ポリマーネットワークは、交換反応に利用可能な、小さなサイズ(すなわち、ポリマーの主鎖の一部を形成しない)の、式(EB1)又は(EB2)のペンダントボロン酸エステル官能基を含有する。
【0287】
本発明によるポリマーは、式(EB1)又は(EB2)のペンダントボロン酸エステル官能基を含む。本発明のポリマーは、それらの側鎖形成架橋基内に、式(EB1)又は(EB2)のボロン酸エステル官能基を含む。これにより、ボロン酸エステル間の交換が可能となり、ポリマーの架橋が改善される。本発明者らは、組成物それ自体が、熱硬化性樹脂のように不溶性である場合、ボロン酸エステル間の交換反応により、架橋基の循環が可能になり、熱可塑性挙動が説明され得ると考えている。
【0288】
架橋基の数及び位置は、使用する化合物及びこれらの化合物の相対濃度に依存して様々となろう。例えば、ポリマーは、各1000モノマー単位に対して1つの架橋基を含有することができる。本発明のポリマー中の架橋基の数は、各5000単位あたり1つの架橋基から各3単位あたり1つの架橋基まで、好ましくは各2000単位あたり1つの架橋基から各6単位あたり1つの架橋基まで、より好ましくは各1000単位あたり1つの架橋基から各20単位あたり1つの架橋基まで、更により好ましくは各500単位あたり1つの架橋基から各80単位あたり1つの架橋基まで、様々となり得る。
【0289】
本発明では、モル比[モノマー(c)]:[モノマー(a)+式(Ia)又は(Ib)の化合物]は、好ましくは0.01~500の間、より好ましくは0.1~100の間、更により好ましくは1~50の間である。
【0290】
モル比[モノマー(c)]:[モノマー(a)+モノマー(b)]は、好ましくは0.01~500の間、より好ましくは0.1~100の間、更により好ましくは1~50の間である。
【0291】
モル比[式(Ia)又は(Ib)の化合物]:[モノマー(a)]は、好ましくは5~0.001の間、より好ましくは1~0.005の間、更により好ましくは0.5~0.01の間である。
【0292】
モル比[モノマー(a)]:[モノマー(b)]は、好ましくは500~0.002の間、より好ましくは100~0.01の間、更により好ましくは40~0.025の間である。
【0293】
本発明によって得ることができるネットワークの一部の例を記述する。一級アミン官能基が2つの他の官能基と反応することができる場合、一級アミン官能基は、2つの重合性基と等価である。
【0294】
本発明により、エポキシネットワークの調製が可能となる。これらのエポキシネットワークは、以下の共重合:
- ジエポキシド、ビス(二級アミン)又は一級アミンモノマー(a);及び
- 既に定義した、1つ又は複数の架橋剤、特に
○ 重合性基を含有していてもよいか、若しくは含有していなくてもよい、式(Ia)又は(Ib)の1つ或いは複数の化合物
○ ジエポキシド、ビス(二級アミン)又は一級アミン化合物の中から選択される、式(IIIa)若しくは(IIIb)、及び/又は式(IV)のモノマー
の共重合であって、
- 好ましくは、1つ又は複数のジエポキシド又はビス(二級アミン)モノマー(c)の存在下で、より詳細には、ジエポキシドモノマー(c)及びビス(二級アミン)モノマー(c)の存在下、
- 適用可能な場合、エポキシ樹脂を形成するために通常使用される架橋剤、すなわち、式(EB1)又は(EB2)のいかなるボロン酸エステル官能基も含まないポリアミン又はポリエポキシドの存在下
における共重合によって得ることができる。
【0295】
1つの例の実施形態では、エポキシネットワークは、
- ジエポキシド、ビス(二級アミン)又は一級アミンモノマー(a)
- 末端エポキシド基を含む式(Ia)又は(Ib)の化合物
- 及び/又は、末端一級アミン基若しくは二級アミン基を含む式(Ia)又は(Ib)の化合物
- 適用可能な場合、一級若しくは二級ジアミン又はトリアミンモノマー(C)
- 適用可能な場合、ジエポキシド又はトリエポキシドモノマー(c)
の共重合であって、
- 適用可能な場合、エポキシ樹脂を形成するために通常使用される架橋剤、すなわち、式(EB1)又は(EB2)のいかなるボロン酸エステル官能基も含まないポリアミン又はポリエポキシドの存在下
における共重合によって得ることができる。
【0296】
別の例の実施形態では、エポキシネットワークは、
- 二級ジアミン又はトリアミン又は一級アミンモノマー(c)
- ジエポキシド又はトリエポキシドモノマー(c)
- ジエポキシド、ビス(二級アミン)又は一級アミンモノマー(a)
- 特に、式(IIIa)若しくは(IIIb)、及び/若しくは式(IV)のジエポキシド、ビス(二級アミン)又は一級アミンモノマー(b)、並びに/又は式(Ia)若しくは(Ib)の化合物
の共重合であって、
- 適用可能な場合、エポキシ樹脂を形成するために通常使用される架橋剤、すなわち、式(EB1)又は(EB2)のいかなるボロン酸エステル官能基も含まないポリアミン又はポリエポキシドの存在下
における共重合によって得ることができる。
【0297】
このように、エポキシ樹脂の製造に通常、使用されるモノマーから始めて、定義した本発明による適合可能なモノマー(a)及び適合可能な架橋剤を添加することにより、ボロン酸エステルメタセシス反応により交換可能なペンダント連結基及び架橋基を含有するエポキシネットワークを調製することが可能である。
【0298】
本発明により、ポリウレタンネットワークの調製が可能となる。
【0299】
これらのポリウレタンネットワークは、
- ジ-アルコールモノマー(a)、
- ジ-イソシアネートモノマー(c)と、
- 既に定義されている、1つ又は複数の架橋剤、特に
○ 重合性基を含有していてもよいか、若しくは含有していなくてもよい、式(Ia)又は(Ib)の1つ或いは複数の化合物
○ジ-イソシアネート又はジ-アルコール化合物の中から選択される式(IIIa)又は(IIIb)のモノマー
○テトラアルコールの中から選択される式(IV)のモノマー
との共重合であって、
- 好ましくは、1つ又は複数のジ-アルコールモノマー(c)の存在下、
- 適用可能な場合、ポリウレタン樹脂を形成するために通常使用される架橋剤、すなわち、式(EB1)又は(EB2)のいかなるボロン酸エステル官能基も含まないポリオールの存在下
における共重合によって得ることができる。
【0300】
1つの例の実施形態では、ポリウレタンネットワークは、
- ジ-アルコールモノマー(a)、
- 末端ヒドロキシル基を含む式(Ia)又は(Ib)の化合物、
- ジ-イソシアネートモノマー(c)、
- 適用可能な場合、ジ-アルコールモノマー(c)
の共重合であって、
- 適用可能な場合、ポリウレタン樹脂を形成するために通常使用される架橋剤、すなわち、式(EB1)又は(EB2)のいかなるボロン酸エステル官能基も含まないポリオールの存在下
における共重合によって得ることができる。
【0301】
別の例の実施形態では、ポリウレタンネットワークは、
- ジ-アルコールモノマー(c)、
- ジ-イソシアネートモノマー(c)、
- ジ-アルコールモノマー(a)、
- ジオールモノマー(b)、及び/又は式(Ia)若しくは(Ib)の化合物、及び/又はテトラ-アルコールの中から選択される式(IV)のモノマー
の共重合によって得ることができる。
【0302】
このように、ポリウレタン樹脂の製造に通常使用されるモノマーから始め、定義した本発明による適合可能なモノマー(a)及び適合可能な架橋剤を添加することにより、ボロン酸エステルメタセシス反応により交換可能なペンダント連結基及び架橋基を含有するポリウレタンネットワークを調製することが可能である。
【0303】
本発明により、ポリアミドネットワークの調製が可能となる。これらのポリアミドネットワークは、
- 一級ジアミン又はジエステル又はジカルボン酸モノマー(a)、
- ジエステル又はジカルボン酸モノマー(C)、
- 一級ジアミンモノマー(c)
- 適用可能な場合、一級トリアミン又はトリエステル又はトリカルボン酸モノマー(c)と、
- 既に定義されている、1つ又は複数の架橋剤、特に
○ 重合性基を含有していてもよいか、若しくは含有していなくてもよい、式(Ia)又は(Ib)の1つ或いは複数の化合物
○ 一級ジアミン、ジエステル又はジカルボン酸化合物の中から選択される式(IIIa)又は(IIIb)のモノマー
○ 一級テトラミン又はテトラエステル又はテトラカルボン酸の中から選択される式(IV)のモノマー
との共重合によって得ることができる。
【0304】
例の実施形態では、ポリアミドネットワークは、
- 一級ジアミンモノマー(c)
- ジエステルモノマー(c)
- 一級ジアミン又はジエステルモノマー(a)
- 一級ジアミン若しくはジエステルモノマー(b)、及び/又は式(Ia)若しくは(Ib)の化合物、及び/又は一級テトラミン若しくはテトラエステルの中から選択される式(IV)のモノマー(b)
- 適用可能な場合、一級トリアミン又はトリエステルモノマー(c)
の共重合によって得ることができる。
【0305】
別の例の実施形態では、ポリアミドネットワークは、
- 一級ジアミンモノマー(c)
- ジカルボン酸モノマー(c)
- ジアミン又はジカルボン酸モノマー(a)
- 一級ジアミン若しくはジカルボン酸モノマー(b)、及び/又は式(Ia)若しくは(Ib)の化合物、及び/又は一級テトラミン若しくはテトラカルボン酸の中から選択される式(IV)のモノマー(b)
- 適用可能な場合、一級トリアミン又はトリカルボン酸モノマー(c)
の共重合によって得ることができる。
【0306】
このように、ポリアミド樹脂の製造に通常、使用されるモノマーから始め、定義した本発明による適合可能なモノマー(a)及び適合可能な架橋剤を添加することにより、ボロン酸エステルメタセシス反応により交換可能なペンダント連結基及び架橋基を含有するポリアミドネットワークを調製することが可能である。
【0307】
本発明により、ポリエステルネットワークの調製が可能となる。
【0308】
これらのポリエステルネットワークは、
- ジ-アルコール又はジエステルモノマー(a)
- ジエステルモノマー(c)
- ジ-アルコールモノマー(c)
- 適用可能な場合、トリ-アルコール又はテトラ-アルコール又はトリエステルモノマー(c)と
- 既に定義されている、1つ又は複数の架橋剤、特に
○ 重合性基を含有していてもよいか、若しくは含有していなくてもよい、式(Ia)又は(Ib)の1つ或いは複数の化合物
○ ジ-アルコール又はジエステル化合物の中から選択される式(IIIa)又は(IIIb)のモノマー
○ テトラアルコール又はテトラエステルの中から選択される式(IV)のモノマー
との共重合によって得ることができる。
【0309】
1つの例の実施形態では、ポリエステルネットワークは、
- ジオールモノマー(c)
- ジエステルモノマー(c)
- ジオールモノマー(a)
- ジ-アルコール若しくはジエステルモノマー(b)、及び/又は式(Ia)若しくは(Ib)の化合物、及び/又はテトラアルコール若しくはテトラエステルの中から選択される式(IV)のモノマー
- 適用可能な場合、トリ-アルコール又はテトラ-アルコールモノマー(c)
の共重合によって得ることができる。
【0310】
別の例の実施形態では、ポリエステルネットワークは、
- ジオールモノマー(c)
- ジエステルモノマー(c)
- ジエステルモノマー(a)
- ジ-アルコール若しくはジエステルモノマー(b)、及び/又は式(Ia)若しくは(Ib)の化合物、及び/又はテトラアルコール若しくはテトラエステルの中から選択される式(IV)のモノマー
- 適用可能な場合、トリ-アルコール又はテトラ-アルコールモノマー(c)
の共重合によって得ることができる。
【0311】
このように、ポリエステル樹脂の製造に通常、使用されるモノマーから始め、定義した本発明による適合可能なモノマー(a)及び適合可能な架橋剤を添加することにより、ボロン酸エステルメタセシス反応により交換可能なペンダント連結基及び架橋基を含有するポリエステルネットワークを調製することが可能である。
【0312】
本発明により、ビニルネットワーク(vinylic network)の調製が可能となる。これらのビニルネットワークは、
- ビニルモノマー(a)、
- ビニルモノマー(C)、
- 既に定義した1つ又は複数の架橋剤、特に
○ 重合性基を含有していてもよいか、若しくは含有していなくてもよい、式(Ia)又は(Ib)の1つ或いは複数の化合物
○ ビニル化合物の中から選択される式(IIIa)又は(IIIb)のモノマー
○ ジビニル化合物の中から選択される式(IV)のモノマー
- 適用可能な場合、いくつかのビニル結合を含み、式(EB1)又は(EB2)のいかなるボロン酸エステル官能基も含まない、慣用的な架橋剤
の共重合によって得ることができる。
【0313】
このように、ビニル樹脂の製造に通常、使用されるモノマーから始め、定義した本発明による適合可能なモノマー(a)及び適合可能な架橋剤を添加することにより、ボロン酸エステルメタセシス反応により交換可能なペンダント連結基及び架橋基を含有するビニルネットワークを調製することが可能である。
【0314】
共重合の後に得られる組成物は、ポリマーの架橋によって得られる組成物についてこれまでに定義したもの等の、遊離の一官能性ボロン酸エステルを含んでもよい。
【0315】
本発明のポリマーの物理的及び化学的特性は、使用する化合物、特に使用する前駆体モノマーに強く依存する。
【0316】
とはいえ、ポリマーはいずれも、熱可塑性ポリマーの前駆体モノマーから始めて、熱可塑性ポリマーの特性と熱硬化性樹脂の特性とを併せもつ。特に、このポリマーは、熱硬化性樹脂の様に不溶性であるが、再利用することができ、かつ/或いは、該ポリマーのガラス転移温度又は融解温度が25℃より低い場合、そのガラス転移温度又は融解温度よりも高い温度、好ましくは、Tg又はTf+10℃よりも高い温度、より好ましくはTg又はTf+20℃よりも高い温度、更により好ましくはTg又はTf+40℃より高い温度、更により好ましくはTg又はTf+80℃より高い温度で再成形され得る。
【0317】
分解後に得られる直鎖状又は分岐状ポリマーの数平均モル質量Mnは、好ましくは1500g/mol~2000000g/molの間、より好ましくは5000g/mol~500000g/molの間、更により好ましくは15000g/mol~200000g/molの間である。
【0318】
分解後に得られる直鎖状又は分岐状ポリマーの分散度D=Mw/Mnは、好ましくは1.01~15の間、より好ましくは1.10~10の間、更により好ましくは1.5~5の間である。
【0319】
これらの組成物には、ポリマーの架橋によって得られる組成物について既に定義した、遊離の分子が含まれる。
【0320】
本発明の別の目的は、既に記載されている工程による共重合方法である。
【0321】
本発明の目的は、以下の化合物の共重合方法である:
(a)重合性基を含有しない少なくとも1つのペンダントボロン酸エステル基を含む、熱可塑性ポリマーのための前駆体モノマー、
(b)ボロン酸エステルメタセシス反応によって交換可能なペンダント官能基及び架橋基を含有する架橋ポリマーのネットワークの形成を可能にする少なくとも1つのボロン酸エステル基を含む架橋剤、
〔ここで、ボロン酸エステルは、以下の式(EB1)及び(EB2)の下記ジオキサボロラン環及びジオキサボリナン環:
【0322】
【0323】
(式中、
Rx、Rw及びRvは、同一であるか又は異なり、それぞれが、水素原子若しくは炭化水素基を表すか、又は一対として一緒になって、脂肪族環若しくは芳香族環を形成し、
Ryは、炭素原子を介して共有結合によってジオキサボロラン環又はジオキサボリナン環のホウ素原子に連結されている炭化水素基である)
の中から選択される〕
(c)適用可能な場合、式(EB1)又は(EB2)のボロン酸エステル基を含まない、熱可塑性ポリマーのための前駆体であるモノマー。
【0324】
この方法によって得られる組成物は、遊離の分子を含んでいても、含んでいなくてもよい。
【0325】
重合を実施するための操作条件は、考えられる熱可塑性ポリマー(thermoplastic monomer)について通常使用される条件に対応する。
【0326】
3.本発明によるポリマー及び組成物
本発明によるポリマー及び組成物は、熱硬化特性及び熱可塑特性を示すという利点を有する。特に、本発明による組成物は、以下の特性のうちの、少なくとも1つ、より好ましくはいくつか、更により好ましくはすべてを有する:
- 熱安定性。
- ポリマーが、熱硬化性樹脂と同じくらい不溶性となり得ることを意味する、三次元ネットワーク。
- ポリマーの切れ端を再使用することができる。
- ガラス転移温度(Tg)又は融解温度(Tf)が25℃より低い場合、ガラス転移温度又は融解温度よりも高い温度、好ましくは、Tg又はTf+10℃よりも高い温度、より好ましくはTg又はTf+20℃よりも高い温度、更により好ましくはTg又はTf+40℃より高い温度、更により好ましくはTg又はTf+80℃より高い温度で再成形される。
- 一旦、冷却されると、参照ポリマーほど流動性がない。
- 化学的耐性が向上している。
- 高温で展性がある。
- 本発明のポリマーを再成形することができる。
- 材料中に存在する応力のすべて又は一部を緩和することができる。
- 物体を、これらの組成物から射出成形により製造することができる。
- 物体を、これらの組成物から押出成形により製造することができる。
- 物体を、これらの組成物から加圧成形により製造することができる。
- 物体を、これらの組成物から加熱成形により製造することができる。
- 物体を、これらの組成物から溶媒キャスト成形により製造することができる。
- これらの組成物により製造される物体は、修復することができる。
- これらの組成物により製造される物体は、溶接することができる。
- これらの組成物により製造される物体は、再利用することができる。
- 分解可能である:ポリマーの分解により、再使用することができる直鎖状又は分岐状ポリマー鎖がもたらされる。
【0327】
本発明のポリマーが溶媒、好ましくは良溶媒に浸漬された場合、本発明のポリマー、好ましくは本発明の架橋ポリマーネットワークは、とりわけ、シリンジにより射出することができるという優れた特性を好ましくは示す。本発明による架橋ポリマー組成物が液体配合物の形態にある場合、本発明による架橋ポリマー組成物、好ましくは架橋された直鎖状又は分岐状ポリマーのネットワークを形成する組成物は、とりわけ、シリンジにより射出することができるという優れた特性を好ましくは示す。架橋された直鎖状又は分岐状ポリマーネットワークの架橋度、本発明による架橋ポリマー組成物、良溶媒に浸漬した場合の本発明による架橋ポリマー組成物、並びにその架橋度に応じて、本発明による架橋ポリマー組成物は、とりわけシリンジによって射出可能である一方、溶媒、好ましくは水以外の溶媒によって膨潤した場合に、それ自体の質量を支持することができる架橋ポリマーであり、かつ30秒間、好ましくは1分間、より好ましくは2分間、更により好ましくは5分間、更により好ましくは10分間、更により好ましくは30分間、更により好ましくは1時間、更により好ましくは2時間、更により好ましくは4時間、更により好ましくは6時間、更により好ましくは8時間、更により好ましくは12時間、更により好ましくは1日間の規模で、歪みがかかることなく、破壊することのない架橋ポリマーのネットワークを形成する。
【0328】
本発明による架橋された直鎖状又は分岐状ポリマーネットワークが、液体配合物の形態、好ましくは水以外の溶媒中にある場合、それらは、それらが接触したままに放置されると、自己凝集する特性を好ましくは示す。
【0329】
本発明の架橋ポリマーネットワークが、溶媒、好ましくは良溶媒中に浸漬されると、それらは、それらが接触したままに放置されると、一緒に凝集する特性を好ましくは示す。
【0330】
- 本発明による架橋ポリマー組成物、好ましくは架橋された直鎖状又は分岐状ポリマーのネットワークを形成する液体配合物の形態にある組成物、又は
- 本発明の架橋ポリマー、好ましくは、良溶媒中に浸漬された本発明の架橋ポリマーネットワーク
の架橋度は、式(EB1)若しくは(EB2)の遊離の一官能性ボロン酸エステル、及び/又は式(Ia)の化合物、及び/又は式(Ib)の化合物、及び/又は直鎖状若しくは分岐状ポリマーP2の添加によって調節することができる。架橋度のこのような調節は、本発明による架橋ポリマー組成物を含有する配合物中への分子及び/又はポリマーの放出を可能にし得る。以下は、放出され得る分子又はポリマーの非限定例である:活性物質、タンパク質、核酸、アミノ酸、ビタミン、香味剤、触媒、化学試薬、顔料又は他の添加物。この架橋度の調節は、更に、架橋解除(uncrosslinking)を行うために実施することができる。
【0331】
本発明の架橋ポリマー、好ましくは本発明の架橋ポリマーネットワーク(本発明の組合せ物組成物を含む)は、架橋解除することができ、したがって、1,3-ジオール又は1,2-ジオール官能基を含む化合物(低分子又はポリマー)の添加により再利用することができる。この化合物は、好ましくは一官能性1,3-ジオール又は1,2-ジオールであり、より好ましくは一置換されている。本発明の架橋ポリマー、好ましくは本発明の架橋ポリマーネットワークは、架橋解除され得、したがって、加圧下、例えばオートクレーブ中の水を使用して再利用することができる。本発明の架橋ポリマー、好ましくは本発明の架橋ポリマーネットワーク(本発明の組合せ物組成物を含む)は、架橋解除することができ、したがって、ボロン酸エステル官能基を含む化合物(低分子又はポリマー)の添加により再利用することができる。好ましくは、ボロン酸エステル官能基は、1、2-ジオール又は1、3-ジオールに由来する。この化合物は、一官能性ボロン酸エステルであり、より好ましくは一置換されている。
【0332】
架橋度の調節が、本発明の架橋ポリマー、好ましくは本発明の架橋ポリマーネットワーク(本発明の組合せ物組成物を含む)の架橋解除を行うために実施される場合、加圧下、例えばオートクレーブ中、架橋密度を調節するために使用される化合物、好ましくは一官能性ボロン酸エステル、好ましくは例えばオートクレーブ中の加圧下の水、好ましくは1,3-ジオール又は1,2-ジオールは、本発明の架橋ポリマー、好ましくは本発明の架橋ポリマーネットワーク(本発明の組合せ物組成物を含む)中に存在しているボロン酸エステル架橋基と比較すると、大過剰で使用される。大過剰とは、[架橋解除を行うために、架橋密度を調節するために使用される化合物]/[ボロン酸エステル官能基を含有する架橋基]のモル比が、好ましくは50超、より好ましくは100超、より好ましくは150超、より好ましくは200超、より好ましくは500超、更により好ましくは1000超となることを理解すべきである。
【0333】
本発明による組成物は、負荷物(load)及び/又はフィラー及び/又は添加物も含むこともできる。負荷物及び/又はフィラー及び/又は添加物は、特に、当業者により通常使用されるものである。
【0334】
更に、本組成物は、混合物中、又はネットワーク中に、他の適合可能なポリマーを含むことができる。当業者は、このようなポリマーを選択する方法を知っている。
【0335】
その組成を上述した、少なくとも1つのポリマーネットワークを含むポリマーネットワーク組成物は、以下も含むことができる:1つ又は複数のポリマー、顔料、着色剤、青味剤、フィラー、プラスチフィアー(plastifier)、衝撃改質剤、繊維、難燃剤、抗酸化剤、滑沢剤、木材、ガラス及び金属。
【0336】
本発明のポリマーネットワークすべての組成物と混合することができるポリマーの中で、例としては、エラストマー、熱硬化性樹脂、熱可塑性エラストマー及び耐衝撃性ポリマーが挙げられる。
【0337】
用語「顔料」は、組成物又はポリマーネットワークに不溶性の着色粒子を指す。本発明で存在し得る顔料の中で、二酸化チタン、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、金属粒子、シリカ、金属酸化物、金属亜硫酸塩又は他の任意の無機顔料を言及することができる。言及することができる他の顔料は、フタロシアニン、アントラキノン、キナクリドン、ジオキサジン、アゾ染料、又は他の任意の有機顔料及び天然顔料(アカネ、インジゴ、ローズマダー、カルミン等)及び顔料混合物である。顔料は、配合物の組成の0.05%~70%の間を占め得る。
【0338】
用語「着色剤」は、ポリマーネットワークすべての組成物に可溶であり、かつ可視光線のすべて又は一部を吸収することができる分子を表す。
【0339】
用語「青味剤」は、紫外線を吸収し、次に、可視スペクトルの蛍光によってこのエネルギーを再発光する分子を表す。青味剤は、ある種の白さを付与するためにとりわけ使用される。
【0340】
本発明の組成物又はポリマーネットワークにおいて使用することができるフィラーの例は、シリカ、クレイ、炭酸カルシウム、カーボンブラック及びカオリンである。
【0341】
本発明の組成物又はポリマーネットワークにおいて使用することができる繊維の例は、ガラス繊維、炭素繊維、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維、アラミド繊維、ポリエチレン繊維、セルロース繊維及びナノ-セルロースである。有機繊維(リネン、麻、シサル麻、竹等)も、想定することができる。
【0342】
熱伝導性の顔料、着色剤又は繊維が、本発明の組成物又はポリマーネットワーク中に存在し得るという事実を用いて、本発明の組成物若しくはポリマーネットワークから得られる物体の加熱を容易にすることができ、その結果、以下に記述する本発明のこれらの組成物又はポリマーネットワークから得られる物品の製造、変性、再利用が可能になる。熱伝導性顔料、繊維又はフィラーの非限定例として、以下:窒化アルミニウム(AlN)、窒化ホウ素(BN)、MgSiN2、炭化ケイ素(SiC)、グラファイト、グラフェン、カーボンナノチューブ、炭素繊維、金属粉末及びそれらの組合せ(stared combination)が提示され得る。
【0343】
本発明の組成物又はポリマーネットワーク中に、照射線を吸収することが可能な顔料、着色剤又は繊維を存在させることによって、本発明のこれらの組成物又はポリマーネットワークから得られる物品の照射線源、例えばレーザーによる加熱を確実にすることができる。本発明の組成物又はポリマーネットワーク中に、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、炭素繊維、金属粉末又は磁気粒子等の導電性顔料、繊維又はフィラーを存在させることによって、本発明のこれらの組成物又はポリマーネットワークから得られる物品のジュール効果により又はマイクロ波による加熱を確実にすることができる。このような加熱手順による、以下に記述する本発明の組成物又はポリマーネットワークから得られる物品の製造、変性又は再利用が可能になり得る。導電性負荷物質もまた、静電荷が材料から逃げることを可能にするか、又は静電塗装を可能にする。
【0344】
本発明の別の目的は、本発明の組成物の調製方法である。この方法は、以下の工程を好ましくは含む:
- 以下:
・ ジオキサボロラン環若しくはジオキサボリナン環の少なくとも1個の炭素原子によってポリマーに連結している式(EB1)又は(EB2)のボロン酸エステル官能基、或いは
・ ジオキサボロラン環若しくはジオキサボリナン環のホウ素原子によってポリマーに連結している式(EB1)又は(EB2)のボロン酸エステル官能基
を有する側鎖基を有する、直鎖状又は分岐状ポリマーP1を選択する工程、
- ポリマーP1の側鎖基と反応して、ボロン酸エステルメタセシス反応により交換可能な連結基及び架橋基を含有する架橋ポリマー組成物、好ましくは架橋ネットワークを形成することが可能な式(EB1)又は(EB2)の少なくとも2つのボロン酸エステル基を有する、少なくとも1つの添加物を選択する工程、
- 溶融状態又は溶液中で、前記ポリマーP1と前記添加物を混合して、前記組成物を得る工程。
【0345】
置換基及び添加物の選択は、組成物について上で提示した説明に従って行う。既に記載した式(EB1)又は(EB2)の遊離の一官能性ボロン酸エステルを添加することができる。
【0346】
本方法は、例えば、P1の前駆体モノマー及び式(EB1)又は(EB2)のボロン酸エステル官能基を有するモノマーの、ラジカル経路による、配位による重合による、開環重合による、重付加による、又は重縮合による共重合を含む、ポリマーP1を調製するための先の工程を含むことができる。
【0347】
本方法は、式(EB1)又は(EB2)のペンダントボロン酸エステル官能基を直鎖状又は分岐状ポリマーにグラフト化する工程を含む、ポリマーP1を調製するための先の工程を含むことができる。
【0348】
本発明による別の方法は、以下の工程を好ましくは含む:
- グラフト化を可能にする官能基を有する、少なくとも1つの直鎖状又は分岐状ポリマーP1'を選択する工程
- 一方の末端に、ポリマーP1'へのその分子の共有結合を可能にする官能基、及びもう一方の末端に、ジオキサボロラン環又はジオキサボリナン環の少なくとも1個の炭素原子によって分子の残りの部分に連結している式(EB1)又は(EB2)のボロン酸エステル官能基 (A)、ジオキサボロラン環又はジオキサボリナン環のホウ素原子によって分子の残りの部分に連結している式(EB1)又は(EB2)のボロン酸エステル官能基(B) の中から選択される官能基を含む分子、並びに/又は、それらの2つの両末端に、ポリマーP1'にその分子が共有結合することを可能にする官能基を含み、これらの2つの末端の間に、式(EB1)又は(EB2)のボロン酸エステル官能基を含む分子(C)の組合せ物であって、グラフト化して、ボロン酸エステルメタセシス反応により交換可能なペンダント連結基及び架橋基を生成することが可能な組合せ物を選択する工程
- 溶融状態又は溶液中で、前記ポリマーP1'と前記組成物を混合して、前記組成物を得る工程。
【0349】
置換基及び組成物の選択は、組成物について上で提示した説明に従って行う。既に記述した式(EB1)又は(EB2)の遊離の一官能性ボロン酸エステルを添加してもよい。
【0350】
本方法は、例えば、P1'の前駆体モノマーと、ボロン酸エステル官能基を次にグラフト化することが可能な官能基を有するモノマーとの、ラジカル経路による、配位による重合による、開環重合による、重付加による、又は重縮合による共重合を含む、ポリマーP1'を調製するための先の工程を含むことができる。
【0351】
本方法は、ボロン酸エステル官能基の直鎖状又は分岐状ポリマーへのグラフト化を可能にするペンダント官能基をグラフト化する工程を含む、ポリマーP1'を調製する先の工程を含むことができる。
【0352】
本発明の別の目的は、本発明による組成物の調製方法である。本方法は、重合性官能基に適切な条件下での、記載されているモノマーの共重合を含む。重合は、好ましくは、ラジカル重合、配位による重合、開環重合、重付加又は重縮合である。
【0353】
本発明の別の目的は、本発明による組成物から得られる材料である。
【0354】
本発明の別の目的は、以下の工程を含む、本発明による材料の調製方法である:
- 本発明による組成物の調製
- そこから得られる組成物の成形。
【0355】
成形の概念はまた、例えば、完成製品の調製において、顆粒又は粉末の形態の組成物をコンパウンドする工程を含む。成形はまた、熱可塑性ポリマー又は熱硬化性ポリマーを成形するための、当業者に公知の方法によって行うこともできる。とりわけ、鋳型成形、圧縮成形、射出成形、押出成形及び加熱形成の方法を挙げることができる。材料は、完成物体の形態を有する前は、通常、顆粒又は粉末の形態にある。
【0356】
有利なことに、本発明による方法では、調製及び形成工程は、同時であってもよい。特に、上記の方法において、例えば、その成形工程中又はコンパウンド工程において、押出成形又は射出成形によって、ポリマーを官能基化及び架橋することが可能である。
【0357】
本発明の別の目的は、得られた材料を再利用する方法であって、以下の連続工程:a)機械的磨砕による材料の粉末への縮小と、b)ポリマーP1若しくはP1'(適用可能な場合はp2)のガラス転移温度(Tg)又は融解温度(Tf)が25℃より低い場合、それらのガラス転移温度又は融解温度よりも高い温度、好ましくは、Tg又はTf+10℃よりも高い温度、より好ましくはTg又はTf+20℃よりも高い温度、更により好ましくはTg又はTf+40℃より高い温度、更により好ましくはTg又はTf+80℃より高い温度で機械的応力を粒子に適用することによる、工程a)からの粒子の変性とを含む方法である。
【0358】
本発明の別の目的は、本発明による組成物を含む配合物である。
【0359】
本発明の別の目的は、ボロン酸エステルメタセシス反応により交換可能なペンダント連結基及び架橋基を有する、架橋ポリマー、好ましくは架橋ネットワークを含む組成物を形成するための、直鎖状若しくは分岐状ポリマーP1又はP1'の存在下における、上で定義したもの等の添加物、又は上で定義したもの等の組合せ物の使用である。添加物又は組合せ物の性質は、ポリマーP1又はP1'、特にその官能基構造の関数として、特に上で定義されている基準に従って選択される。
【0360】
既に記載した式(EB1)又は(EB2)の遊離の一官能性ボロン酸エステルを、本組成物に添加してもよい。
【0361】
本発明の別の目的は、本発明による添加物又は本発明による組成物をその組成物に添加することによって、前記ポリマーP1又はP1'を含む組成物(例えば油又は塗料等)のレオロジーを改変する方法である。レオロジーは、前記添加物又は組成物の濃度を選択することにより改変される。
【0362】
添加物又は組合せ物の性質は、ポリマーP1又はP1'、特にその官能基構造の関数として、特に上で定義されている基準に従って選択される。
【0363】
既に記載した式(EB1)又は(EB2)の遊離の一官能性ボロン酸エステルを、本組成物に添加してもよい。
【0364】
本発明の別の目的は、直鎖状又は分岐状ポリマー、好ましくはP1又はP1'を架橋するための組合せ物であって、前記組合せ物は、
- A+B(A及びBは、既に定義した通りである)
- A及び/又はB+C(A、B及びCは、既に定義した通りである)
- A+式(Ia)の化合物(既に定義した通りである)、又は
- B+式(Ib)の化合物(既に定義した通りである)
を含む、組合せ物の中から選択される。
【0365】
A、B及びCは、既に定義した通りである。
【0366】
これらの組合せ物はまた、式(EB1)又は(EB2)の遊離の一官能性ボロン酸エステルを含むことができる。
【実施例】
【0367】
以下の実施例は、本発明を例示するものであり、限定するものではない。
【0368】
以下の実施例は、ボロン酸エステル化合物の合成及び同定(characterization)を例示する。
【0369】
(実施例1)
ボロン酸エステルの合成、NMRによる同定の一般手順
【0370】
【0371】
ボロン酸(1当量)及びジオール(1.01当量)をジエチルエーテル(約3mL/ボロン酸1mmol)中で混合する。5分後、水(0.1mL/3mLのEt2O)を加える。すべての反応剤が完全に溶解した後、硫酸マグネシウム(0.5g/3mLのEt2O)を徐々に加え、この反応混合物を室温で24~76時間、撹拌する。次に、この反応混合物をろ過して、減圧下で濃縮する。得られた生成物をヘプタンに導入し、この混合物を室温で10分間、撹拌し、ろ過して減圧下で濃縮すると、ボロン酸エステルが白色固体又は透明な油状物として得られる。
【0372】
【0373】
【0374】
【0375】
【0376】
【0377】
【0378】
(実施例2)
ボロン酸エステルのメタセシス反応の速度検討
以下の実験は、ボロン酸エステルメタセシスが観察される条件(時間、温度、触媒)を評価することを目的とするものである。これらの実施例により、ジオキサボロラン環又はジオキサボリナン環の原子に連結している置換基、ボロン酸エステル環のサイズ、温度、反応媒体の極性、触媒の存在、ボロン酸エステルメタセシスの反応速度への影響を例示することができる。
【0379】
この反応のためにに選択した無水溶媒中のボロン酸エステルMR-Xの溶液(溶媒1gあたり0.1mmol)及びこの反応のために選択した無水溶媒中のボロン酸エステルMR-Yの溶液(溶媒1gあたり0.1mmol)を混合する。得られた溶液を一定温度で撹拌し、この混合物の様々な成分の濃度の変化をガスクロマトグラフィーによって定期的にモニタリングする。
【0380】
2.1 フェニルボロン酸エステル間のメタセシス
この実施例は、3種の溶媒:無水ヘキサン、無水クロロホルム及び無水テトラヒドロフラン中、5℃で行った。
【0381】
【0382】
無水ヘキサン中、5℃における、2つのフェニルボロン酸エステル間のメタセシスの間の、時間(横座標;分)における、様々なボロン酸エステルのモル百分率(縦座標;単位を含まない)の変化を
図4に示している。50分後、この混合物は、化合物MR02-066、MRX-002、MR02-068、MRX-010を等モル量含有することが観察される。
【0383】
無水クロロホルム中、5℃における、2つのフェニルボロン酸エステル間のメタセシスの間の、時間(横座標;分)における、様々なボロン酸エステルのモル百分率(縦座標;単位を含まない)の変化を
図5に示している。120分後、この混合物は、化合物MR02-066、MRX-002、MR02-068、MRX-010を等モル量含有することが観察される。
【0384】
無水テトラヒドロフラン中、5℃における、2つのフェニルボロン酸エステル間のメタセシスの間の、時間(横座標;分)における、様々なボロン酸エステルのモル百分率(縦座標;単位を含まない)の変化を
図6に示している。175分後、この混合物は、化合物MR02-066、MRX-002、MR02-068、MRX-010を等モル量含有することが観察される。
【0385】
2.2 フェニルボロン酸エステルの芳香族環に結合している置換基の影響を例示するための、無水クロロホルム中、5℃での試験:
図5の結果と比較した結果。
無水クロロホルム中、5℃における、2つのフェニルボロン酸エステル間のメタセシスの間の、時間(横座標;分)における、様々なボロン酸エステルのモル百分率(縦座標;単位を含まない)の変化を
図7に示している。
【0386】
【0387】
2.3 有機触媒の存在下、無水テトラヒドロフラン中、5℃でのフェニルボロン酸エステル間のメタセシス:
図6の結果と比較した結果。
注意:使用した触媒、例えば安息香酸及びトリエチルアミンは無水である。
【0388】
【0389】
1mol%の無水トリエチルアミンの存在下、無水テトラヒドロフラン中、5℃における2つのフェニルボロン酸エステル間のメタセシスの間の、時間(横座標;分)における、様々なボロン酸エステルのモル百分率(縦座標;単位を含まない)の変化を
図8に示している。
【0390】
1mol%の無水安息香酸の存在下、無水テトラヒドロフラン中、5℃における2つのフェニルボロン酸エステル間のメタセシスの間の、時間(横座標;分)における、様々なボロン酸エステルのモル百分率(縦座標;単位を含まない)の変化を
図9に示している。
【0391】
2.4 アルキルボロン酸エステル間のメタセシス
【0392】
【0393】
無水テトラヒドロフラン中、室温における、2つのアルキルボロン酸エステル間のメタセシスの間の、時間(横座標;分)における、様々なボロン酸エステルのモル百分率(縦座標;単位を含まない)の変化を
図10に示している。
【0394】
2.5 アリールジオール置換基及びアルキルジオール置換基をそれぞれ含有するボロン酸エステル間のメタセシス
【0395】
【0396】
無水テトラヒドロフラン中、室温における、アリールジオール置換基及びアルキルジオール置換基をそれぞれ含有する、ボロン酸エステル間のメタセシスの間の、時間(横座標;分)における、様々なボロン酸エステルのモル百分率(縦座標;単位を含まない)の変化を
図11に示している。
【0397】
2.6 1,2-アルキルジオール(alkydiol)置換基及び1,3-アルキルジオール置換基をそれぞれ含有するボロン酸エステル間のメタセシス
【0398】
【0399】
無水テトラヒドロフラン中、室温における、1,2-アルキルジオール置換基及び1,3-アルキルジオール置換基をそれぞれ含有するボロン酸エステル間のメタセシスの間の、時間(横座標;分)における、様々なボロン酸エステルのモル百分率(縦座標;単位を含まない)の変化を
図12に示している。
【0400】
2.7 溶媒の非存在下、及び様々な温度におけるフェニルボロン酸エステル間のメタセシス
以下の実施例は、ボロン酸エステルのメタセシスを、バルク、すなわち溶媒の非存在下、及び広い範囲の温度において行うことができることを例示している。ボロン酸エステルのバルクメタセシスは、3つの異なる温度:60℃、85℃及び150℃で行った。
【0401】
バルク中のボロン酸エステルのメタセシス反応及びガスクロマトグラフィー(GC)による速度検討の一般手順:
オーブンで乾燥し、アルゴンをパージしたシュレンクフラスコ中で、等モル量のMR-2016a及びMR-02-066を混合し、この反応混合物を不活性雰囲気下に維持し、60℃、又は85℃、又は150℃で撹拌した。
【0402】
GC分析は、Zebron-5HT「inferno」カラムを装備したShimadzuガスクロマトグラフGC-2014で、キャリアガスとしてヘリウムを用いて行った。注入は、Hamilton社製の10μLシリンジ(gastight1701)を使用して、試料体積1μLを注入することにより、手作業で行った。分析を実施する前に、装置全体を350℃まで予め加熱し、5mL/分の一定流量のキャリアガス及びスプリット比2.0で、少なくとも30分間、維持した。試料は、水素炎イオン化型検出器(FID)を用いて分析した。以下のGC方法を使用して、ボロン酸エステル間の交換反応を追跡した。T(注入/検出器)=350℃、T(カラム)=120℃、T(傾斜)=30℃/分、キャリアガスの流速は5.0mL/分及びスプリット比=2.0。清浄して乾燥した、アルゴンをパージした針を用いて試料を採取し、注入前に、少量の乾燥DCM(アルゴン下で乾燥)に加えて、各試料混合物を希釈した。
【0403】
【0404】
図13に、バルク、60℃における、2つの出発ボロン酸エステル、及び、メタセシス反応の間に形成される2つのボロン酸エステルMR-02-66及びMR-2016aのモル百分率(縦座標;単位を含まない)の変化を、時間の関数(横座標;分)としてプロットしている。
【0405】
図14に、バルク、85℃における、2つの出発ボロン酸エステル、及び、メタセシス反応の間に形成される2つのフェニルボロン酸エステルMR-02-66及びMR-2016aのモル百分率の(縦座標;単位を含まない)の変化を、時間の関数(横座標;分)としてプロットしている。
【0406】
図15に、バルク、85℃における、2つの出発ボロン酸エステル、及び、メタセシス反応の間に形成される2つのフェニルボロン酸エステルMR-02-66及びMR-2016aのモル百分率の(縦座標;単位を含まない)の変化を、時間の関数(横座標;分)としてプロットしている。
【0407】
(比較例1)
メタセシス反応を受けないボロン酸エステル;ボロン酸ピナコールエステル
【0408】
【0409】
(実施例3)
架橋剤(R1及びR2)並びに添加物A1及びC1のモノマー(M1~M3)の合成
3.1.モノマーM1の合成
以下のスキームは、モノマーM1の合成を表す。
【0410】
【0411】
3.1.1 化合物1の合成
【0412】
【0413】
2-ブロモエタノール(15g、120mmol)、DIPEA(17.1g、132mmol)、DMAP(147mg、1.2mmol)及びメタクリル酸無水物(22.2g、144mmol)を混合し(いかなる溶媒も添加しない)、室温(RT)で24時間、撹拌する。メタノール(5mL)を加え、得られた混合物を室温で更に2時間、撹拌する。酢酸エチル(50mL)及び水(50mL)を加える。得られた有機相を、0.5M HCl溶液(3x50mL)、0.5M NaOH溶液(3x50mL)及び水(1x50mL)により洗浄する。有機相を硫酸マグネシウム(MgSO4)により脱水し、ろ過して減圧下、50℃で濃縮すると、わずかに黄色の液体が18.3g得られる。1H-NMR分析により、化合物1が生成していること、及びエチレングリコールジメタクリレートが約13mol%存在していることが確認される。
1H NMR (CDCl3, 400 MHz): δ 6.17 (s, 1H), 5.62 (s, 1H), 4.44 (t, J = 6.0 Hz, 2H), 3.56 (t, J = 6.0 Hz, 2H), 1.95 (s, 3H).
【0414】
3.1.2 化合物2の合成
【0415】
【0416】
4-カルボキシフェニルボロン酸(5g、30.1mmol)及びプロパン-1,2-ジオール(2.41g、31.7mmol)をジエチルエーテル(Et2O、30mL)中で混合し、水0.1mlを加える。得られた混合物を化合物が完全に溶解するまで撹拌する。硫酸マグネシウム(5g)を加え、この懸濁液を24時間、室温で撹拌した後、ろ過する。ろ液を減圧下で濃縮すると、化合物2が白色固体として得られる(5.15g)。
1H NMR (CDCl3, 400 MHz): δ 7.97 (d, J= 8.4 Hz, 2H), 7.78 (d, J= 8.4 Hz, 2H), 4.79-4.68 (m, 1H), 4.44 (t, J = 8.4 Hz, 1H), 3.87 (d, J = 8.4 Hz, 1.6 Hz, 1H), 1.33 (d, J = 6.4 Hz, 3H).
【0417】
3.1.3 化合物3の合成
【0418】
【0419】
化合物1(5g、25.9mmol)、化合物2(6.14g、29.8mmol)及びK2CO3(10.7g、77.7mmol)を50mLの(de)N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)中で混合する。得られた混合物を70℃で5時間、撹拌する。酢酸エチル(50mL)及び水(150mL)を加え、有機相を水(3x150mL)により洗浄する。洗浄中、この混合物に300mgの塩化ナトリウム(NaCl)を加え、相分離を促進させる。有機相を硫酸マグネシウムにより脱水し、ろ過して減圧下、50℃で濃縮すると、白色固体が得られる。この白色固体を酢酸エチル50mLに溶解し、得られた溶液をHCl 0.5M(3x25mL)及び水(1x50mL)により洗浄する。有機相を硫酸マグネシウムにより脱水し、ろ過して減圧下、50℃で濃縮すると、白色固体(4.73g)が得られる。白色固体(1.15g)のフラクションを酢酸エチルに溶解する。得られた混合物を50℃まで加熱し、8.5mLのヘプタンを加える。この混合物を50℃で5分間、維持した後、-18℃の冷凍庫に入れる。16時間後、沈殿した白色固体をろ過により採集し、250mLのヘプタンで洗浄する。この手順を2回、繰り返すと、化合物3(529mg)が白色固体として得られる。
1H NMR (CDCl3, 400 MHz): δ 8.31 (s, 2H), 7.91 (s, 2H), 6.02 (s, 1H), 5.67 (s, 1H), 4.57-4.45 (m, 4H), 1.87-1.79 (m, 3H).
【0420】
3.1.4 化合物4又はモノマーM1の合成
【0421】
【0422】
化合物3(3g、10.8mmol)、プロパン-1,2-ジオール(0.86g、11.3mmol)を30mLのジエチルエーテル中で混合し、0.1mLの水を加える。得られた混合物を化合物が完全に溶解するまで撹拌する。硫酸マグネシウム(4g)を加え、この混合物を室温で24時間、撹拌した後、ろ過する。ろ液を減圧下で濃縮すると、化合物4又はモノマーM1が白色固体(3.18g)として得られる。
1H NMR (CDCl3, 400 MHz): δ 8.02 (s, 2H), 7.88 (s, 2H), 6.13 (s, 1H), 5.58 (s, 1H), 4.75-4.49 (m, 6H), 3.93 (s, 1H), 2.16 (s, 3H), 1.42 (s, 3H).
【0423】
3.2.モノマーM2の合成
以下のスキームは、モノマーM2の合成を表す。
【0424】
【0425】
3.2.1 化合物5の合成
【0426】
【0427】
ヘキサン-1,2,6-トリオール(25g、186mmol)を340mLのアセトンに溶解し、45gの硫酸マグネシウムを加える。p-トルエンスルホン酸(pTSA、2.99g、15.7mmol)を撹拌しながら徐々に加える。完全に添加した後、この反応混合物を室温で24時間、撹拌する。NaHCO3(2.66g、31.7mmol)を加え、この混合物を室温で更に3時間、撹拌する。この懸濁液をろ過して、ろ液を減圧下で濃縮すると、不均一な白色混合物が得られる。水(350mL)を加え、得られた混合物をジクロロメタン(4x200mL)により抽出する。合わせた有機相を硫酸マグネシウムにより脱水し、ろ過して減圧下で濃縮すると、化合物5(28.7g)がわずかに黄色な液体として得られる。
1H NMR (CDCl3, 400 MHz): δ 4.01-3.91 (m, 2H), 3.49 (t, J = 6.4 Hz, 2H), 3.40 (t, J = 7.2 Hz, 1H), 2.80 (s, 1H), 1.60-1.35 (m, 6H), 1.30 (s, 1H), 1.24 (s, 1H).
【0428】
3.2.2 化合物6又はモノマーM2の合成
【0429】
【0430】
化合物5(14.3g、82.2mmol)、DIPEA(11.7g、90.5mmol)、DMAP(100mg、0.82mmol)及びメタクリル酸無水物(15.2g、98.8mmol)を混合し(更なる溶媒はなんら使用しない)、室温で24時間、撹拌する。メタノール(5mL)を加え、得られた混合物を室温で更に2時間、撹拌する。ヘプタン(50mL)及び水(50mL)を加える。得られた有機相をHCl 0.5M(3x50mL)及び水(1x50mL)により洗浄する。有機相を硫酸マグネシウムにより脱水し、ろ過して減圧下、50℃で濃縮すると、モノマーM2(15.2g)がわずかに黄色な液体として得られる。
1H NMR (CDCl3, 400 MHz): δ 6.03 (s, 1H), 5.49 (s, 1H), 4.09-3.95 (m, 4H), 3.43 (t, J = 7.2 Hz, 1H), 1.88 (s, 3H), 1.68-1.28 (m, 12H).
【0431】
3.3.モノマーM3の合成
以下のスキームは、モノマーM3の合成を表す。
【0432】
【0433】
3.3.1 化合物7の合成
【0434】
【0435】
ヘキサン-1,2,6-トリオール(10g、74.5mmol)及びフェニルボロン酸(9.55g、78.3mmol)を、50mLのアセトンと0.2mLの水との混合物中で混合する。硫酸マグネシウム(20g)を加え、得られた懸濁液を室温で24時間、撹拌した後、ろ過する。ろ液を減圧下で濃縮すると、化合物7が無色液体として得られる(13.6g)。
1H NMR (CDCl3, 400 MHz): δ 7.82 (d, J = 8.0 Hz, 2 H), 7.50-7.46 (m, 1H), 7.40-7.36 (t, J = 8.0 Hz, 2H), 4.61-4.54 (m, 1H), 4.43 (dd, J = 8.8 Hz, 0.8 Hz, 1H), 3.95 (dd, J = 8.8 Hz, 2.0 Hz, 1H), 3.67 (t, J = 6.4 Hz, 2H), 1.76-1.47 (m, 6H).
【0436】
3.3.2 化合物8の合成
【0437】
【0438】
化合物7(5.0g、22.7mmol)、DIPEA(3.23g、25.0mmol)、DMAP(28mg、0.23mmol)及びメタクリル酸無水物(4.2g、27.3mmol)を混合し(追加の溶媒はない)、室温で24時間、撹拌する。メタノール(1mL)を加え、得られた混合物を室温で更に2時間、撹拌する。酢酸エチル(50mL)及び水(50mL)を加える。得られた有機相を、0.5M HCl溶液(3x50mL)、0.5M NaOH溶液(3x50mL)及び水(1x50mL)により洗浄する。有機相を硫酸マグネシウムにより脱水してろ過し、減圧(redcued pressure)下で濃縮すると、1H NMRにより検出可能な不純物がほとんどない、化合物8(3.03g)がわずかに黄色の液体として得られる。
【0439】
3.3.3 化合物9又はモノマーM3の合成
【0440】
【0441】
化合物8(700mg、3.46mmol)及びフェニルボロン酸(443mg、3.63mmol)を、20mLのジエチルエーテルと0.1mLの水との混合物中で混合する。硫酸マグネシウム(1g)を加え、得られた懸濁液を室温で5時間、撹拌した後、ろ過する。ろ液を減圧下で濃縮すると、1H NMRにより検出可能な不純物がほとんどない、モノマーM3(864mg)が速やかに結晶化するわずかに黄色の液体として得られる。
【0442】
3.4 式(Ia)の化合物:化合物10又は架橋剤R1の合成
【0443】
【0444】
1,4-フェニレンビスボロン酸(3.0g、18.1mmol)及びプロパン-1,2-ジオール(2.82g、37.1mmol)を、30mLのTHFと0.1mLの水との混合物中で混合する。硫酸マグネシウム(5g)を加え、この反応混合物を室温で24時間、撹拌し、ろ過して減圧下で濃縮すると、わずかに黄色の固体が得られる。この固体をヘプタンに入れ、得られた懸濁液を50℃で1時間、撹拌した後、ろ過する。ろ液を減圧下で濃縮すると、架橋剤R1(4.06g、ガスクロマトグラフィーにより、1,2-プロパンジオール含有量<0.7mol%)が白色固体として得られる。
1H NMR (CDCl3, 400 MHz): δ 7.82 (s, 4H), 4.77-4.69 (m, 2H), 4.46 (dd, J = 8.8 Hz, 1.2 Hz, 2H), 3.90 (dd, J = 8.8 Hz, 1.2 Hz, 2H), 1.41 (d, J = 6.4 Hz, 6H).
【0445】
3.5 式(Ia)の化合物:化合物11又は架橋剤R2の合成
【0446】
【0447】
1,4-フェニレンジボロン酸(3.0g、18.1mmol)及びブタン-1,3-ジオール(3.43g、38.0mmol)を、30mLのTHFと0.1mLの水との混合物中で混合する。硫酸マグネシウム(6g)を加え、この反応混合物を室温で24時間、撹拌し、ろ過して減圧下で濃縮すると、架橋剤R2が白色固体(3.97g、14.5mmol)として得られる。
1H NMR (THF-d8, 400 MHz): δ 7.65 p.p.m. (s, 4 H), 4.28-4.23 (m, 2 H), 4.14-4.03 (m, 4H), 2.02-1.97 (m, 2H), 1.79-1.74 (m, 2H), 1.31 (d, J = 6.4 Hz, 6H).
13C NMR (THF-d8, 100 MHz): δ 130.5, 65.7, 59.1, 32.4, 20.4.
【0448】
3.6.化合物13又は添加物A1の合成
【0449】
【0450】
化合物12は、文献(1)に従って合成した。化合物12(5.5g、23.1mmol)及びフェニルボロン酸(2.8g、23.1mmol)をトルエンに溶解して、還流条件(T=135℃)下、水を捕捉するためディーンスターク装置を用いて6時間、加熱した。その後に、この混合物を室温まで冷却し、溶媒を真空下で除去した。この残渣をエタノールに溶解し、この混合物を-5℃で保管し、その後、化合物13又は添加物A1が、黄色固体として結晶化した(m=4.8g、81%)。
1H-NMR (DMSO-d6, 400 MHz): δ 7.66 (d, J = 8 Hz, 2H), 7.51 (t, J = 7.2 Hz, 1H), 7.40 (t, J = 7.6 Hz, 2H), 7.07 (s, 2H), 4.75 (ddt, J = 8.0, 6.0, 5.6 Hz, 1H), 4.39 (dd, J = 9.6, 8.0 Hz, 1H), 4.11 (dd, J = 9.6, 5.6 Hz, 1H), 3.67 (d, J = 6 Hz, 2H).
13C-NMR (DMSO-d6, 100 MHz): δ 170.9, 134.6, 134.4, 131.5, 127.8, 74.4, 68.5, 41.3.
GC-ESI-MS: (m/z)C13H12BNO4の計算値: 257.09, 実測値: 257.
【0451】
3.7.化合物14又は添加物C1の合成
【0452】
【0453】
化合物12は、文献(1)に従って合成した。化合物12(4g、16.7mmol)及び1,4-フェニレンジボロン酸(1.38g、8.4mmol)をトルエンに溶解し、還流条件(T=135℃)下、水を捕捉するためディーンスターク装置を用いて6時間、加熱した。少量の黄色/オレンジ色残渣がフラスコに付着しつつ、白色固体沈殿物が現れた。白粉末を含むこの溶液を残渣から分離して、真空下で濃縮した。DMSO-d6中の1H-NMR分析により、完全にエステル化されている証拠が得られたが、一部がレトロ-ディールス-アルダー反応をしていただけであった。この固体を140℃で50mLのオルトジクロロベンゼン(ODCB)に溶解し、18時間、撹拌した。その後、溶媒を真空下で除去すると、化合物14又は添加物C1が、オフホワイトの固体として得られた。収率=2.5g.η=69.9%。
1H NMR (DMSO-d6, 400 MHz): δ 7.65 (s, 4H), 7.06 (s, 4H), 4.74 (ddt, J = 7.6, 6.0, 5.6 Hz, 2H), 4.38 (t, J = 8.8 Hz, 2H), 4.1 (dd, J = 9.6 Hz, 6.0 Hz, 1H), 3.67 (d, J = 5.6 Hz, 2H).
13C NMR (DMSO-d6, 400 MHz): δ 170.9, 134.6, 132.1, 74.4, 68.5, 41.3.
【0454】
(実施例4)
本発明のポリマーP1及びP2の合成、並びに比較例のポリマー
4.1.RAFT-重合によるポリマーP1の合成に関する手順の実施例(「可逆的付加-開裂連鎖移動重合」):ポリマーP1a
【0455】
【0456】
メタクリル酸メチル(MMA、1.26g、12.6mmol)、モノマーM1(1g、3.14mmol)、2-フェニル2-プロピルベンゾジチオエート(PPBDT、17.2mg、0.063mmol)及びAIBN(4.1mg、0.025mmol)を1.5mLのアニソール中で混合する。得られた溶液に室温で30分間、窒素を吹き込む。この反応混合物を窒素雰囲気下で維持しながら、16時間、65℃まで加熱する。16時間後、無水THF2mLを加え、ポリマーを、乾燥ジエチルエーテル中に沈殿させる。得られたポリマーを無水THFに再溶解し、乾燥ジエチルエーテルに2度目の沈殿をさせる。ポリマーP1a(Mn=43kg/mol、Ip=1.32)を高真空下、50℃で終夜、乾燥する。
【0457】
4.2.RAFT-重合RAFTによるポリマーポリアセタールの合成の手順の実施例:ポリマーP3a及びP3b
【0458】
【0459】
MMA(5.0g、49.9mmol)、モノマーM2(3.0g、12.5mmol)、2-フェニル2-プロピルベンゾジチオエート(PPBDT、68.0mg、0.25mmol)及びAIBN(16.4mg、0.1mmol)を5mLのアニソール中で混合する。得られた溶液に室温で30分間、窒素を吹き込む。この反応混合物を窒素雰囲気下で維持しながら、16時間、65℃まで加熱する。16時間後、無水THF5mLを加え、乾燥ジエチルエーテル中にポリマーを沈殿させる。得られたポリマーを無水THFに再溶解し、乾燥ジエチルエーテルに2度目の沈殿をさせる。ポリマーP3a(Mn=39kg/mol、Ip=1.22)を高真空下、50℃で終夜、乾燥する。
【0460】
同じ重合温度、時間及びモノマー/アニソールの初期比(体積)を使用するが、MMA/M2/PPBDT/AIBN=800/200/1/0.4(200/50/1/0.4の代わり)の初期モル比を変えると、ポリマーP3b(Mn=86kg/mol、Ip=1.53)が得られる。
【0461】
4.3.RAFT-重合によって調製された(preapred)ポリマーのジチオエステル末端鎖の脱離手順の実施例:ポリマーP3a*
ポリマーP3a(14g)を300mLの無水THFに溶解し、n-ブチルアミン(41.6mg、0.57mmol)を加える。得られた混合物を室温で24時間、撹拌した後、アクリル酸エチル(120mg、1.2mmol)を添加する。この反応混合物を室温で24時間、撹拌する。次に、ポリマーP3a*をメタノール中に沈殿させることにより回収し、ろ過した後、高真空下、50℃で終夜、乾燥する。こうして、12gのポリマーP3a*が得られる。
【0462】
4.4.ポリアセタールP3aポリマー、又はP3bを官能基化することによる、本発明のポリマーP1又はP2、すなわちP2a又はP2bの調製、及び比較例に使用するポリマーP5a(P3aから)の調製
以下のスキームは、ポリアセタールP3a又はP3bからの、ポリマーP2a又はP2b、P4a又はP4b、及びP5aの合成を示している。
【0463】
【0464】
4.4.1.ポリアセタールポリマーからポリジオールポリマーを合成する手順の実施例:ポリマーP4a及びP4b
【0465】
【0466】
ポリアセタールP3a(1.0g)をジオキサン(50mL)に溶解し、0.5mLの1M HCl溶液及び0.4mLの36質量%HCl溶液を加える。THF(3mL)を加え、この反応混合物を室温で48時間、撹拌する。この溶液を減圧下で濃縮し、ポリマーを乾燥ジエチルエーテルに沈殿させることにより単離する。得られたポリマーをTHFに再溶解し、乾燥ジエチルエーテル中に2度目の沈殿をさせる。ポリジオールポリマーP4aを高真空下、50℃で終夜、乾燥する。同じ方法であるが、ポリアセタールP3aの代わりにP3bを使用して、ポリジオールポリマーP4bを得る。
【0467】
4.4.2 ポリジオールポリマーから本発明のポリマーP1又はP2を合成する手順の実施例:ポリマーP2a及びP2b
【0468】
【0469】
フェニルボロン酸(232mg、1.9mmol)及びポリマーP4a(1.0g)を25mLの無水THF中で混合し、水(0.1mL)を加える。完全に溶解するまで、この反応混合物を室温で撹拌する。硫酸マグネシウム(4g)を加え、この反応混合物を室温で5時間、撹拌した後、ろ過する。ろ液を減圧下で濃縮する(粘ちょうな溶液)。ポリマーP2aは、この粘ちょうな溶液を乾燥ジエチルエーテルに沈殿させることにより単離し、次に、高真空下、50℃で終夜、乾燥する。同じ手順であるが、ポリジオールP4aの代わりにP4bを使用して、ポリマーP2bを得る。
【0470】
4.4.3 比較例に使用される、シリルエーテルとして保護されているそのヒドロキシル官能基を有するポリジオールポリマーの合成手順の実施例:ポリマーP5a
【0471】
【0472】
ポリマーP4a(1g)を20mLのTHFに溶解し、この反応混合物を0℃に冷却する。0℃で温度を維持しながら、トリエチルアミン(733mg、7.24mmol)を加え、次に、塩化トリメチルシラン(590mg、5.43mmol)を滴下添加する。この反応混合物を室温まで温め、室温で更に6時間、撹拌する。ろ過後、ポリマーP5aを乾燥ジエチルエーテルへの沈殿により単離し、高真空下、50℃で終夜、乾燥する。
【0473】
4.5.RAFT-重合による、本発明のポリマーP1又はP2の合成手順の実施例:ポリマーP2c、P2d、P2e及びP2f
4.5.1.モノマー3のRAFT-共重合による、本発明のポリマーP1又はP2の合成の一般手順:ポリマー2c
【0474】
【0475】
ペンダントジオキサボロランを用いるポリ(メタクリル酸メチル)の合成:ポリマー2c
MMA(1.22g、12.2mmol)、モノマーM3(880mg、3.05mmol)、2-フェニル2-プロピルベンゾジチオエート(16.7mg、0.061mmol)及びAIBN(4.0mg、0.024mmol)をアニソール(1.2mL)中に溶解した。得られた混合物に、室温で30分間、窒素を吹き込んだ後、65℃まで加熱した。この反応混合物を65℃で撹拌しながら、窒素下に維持した。16時間後、粘ちょうな油状物にTHF1mLを加え、この混合物を乾燥ジエチルエーテル(Et2O)に沈殿させた。ポリマー2cを高真空下、100℃で16時間、乾燥した。収率=1.2g、Mn=24300g/mol、D=1.18。
【0476】
4.5.2.化合物8のRAFT-共重合による、本発明のポリマーP1又はP2の合成の一般手順:ポリマー2d及びポリマーP4e
【0477】
【0478】
ペンダントジオール官能基を用いるポリ(メタクリル酸メチル)の合成:ポリマーP4c。
MMA(15g、149.8mmol)、化合物8(7.58g、37.5mmol)、2-フェニル2-プロピルベンゾジチオエート(51.0mg、0.187mmol)及びAIBN(12.3mg、0.075mmol)をアニソール(15mL)中に溶解した。得られた混合物に、室温で30分間、窒素を吹き込んだ後、65℃まで加熱した。この反応混合物を65℃で撹拌しながら、窒素下に維持した。16時間後、粘ちょうな油状物にTHF10mLを加え、この混合物を乾燥ジエチルエーテル(Et2O)に沈殿させた。収率=17.5g、全モノマー転化率:77%、Mn=71000g/mol、D=1.35。
【0479】
ペンダントジオキサボロランを用いるポリ(メタクリル酸メチル)の合成:ポリマー2d
ポリマーP4c(17g、31.9mmol、ジオール、0.274mmol鎖)をTHF(250mL)に溶解し、フェニルボロン酸(4.08g、33.5mmol)及び水(0.1mL)を加えた。5分後、MgSO4(11.5g)を加え、この混合物を室温で5時間、撹拌した。AIBN(173mg、1.06mmol)を加え、この混合物を60℃で6時間、次に室温で更に9時間、加熱した。トリフェニルホスフィン(277mg、1.06mmol)を加え、この反応混合物を40℃で更に1時間、撹拌した。この混合物を遠心分離器に8500rpmで30分間、置き、ろ過して減圧下で濃縮し、乾燥Et2Oから沈殿させた。ポリマー2dを高真空下、100℃で16時間、乾燥した。収率=14.5g、モノマー転化率からジオール/MMAの比は1/3.3。Mn=86000g/mol、D=1.40。
【0480】
【0481】
ペンダントジオール官能基を用いるポリスチレンの合成:ポリマーP4d。
スチレン(43mL、376mmol)、化合物8(7.6g、37.6mmol)及び2-フェニル2-プロピルベンゾジチオエート(102mg、0.376mmol)をアニソール(0.7mL)と混合し、室温で30分間、アルゴンを吹き込んだ。この混合物を6時間、140℃まで加熱し、試料を反応速度を追跡するために採取した。6時間後、この混合物をTHFにより希釈し、メタノール(MeOH)から沈殿させた。ポリマーをろ過して、減圧下で乾燥すると、ポリマーP4eがピンク色固体(35g、収率75%)として得られた。化合物8の転化率=85.7%、スチレンの転化率=73.1%、変換反応により得られたジオールメタクリレート/スチレンの比:1/8.5。Mn=75000g/mol、D=1.57。
【0482】
RAFT末端鎖を有していないペンダントジオール官能基を用いるポリスチレンの合成:ポリマーP4e。
1/1 THF/DMF混合物(250mL)中でポリマーP4dを溶解し、アルゴン下、室温で5時間、n-ブチルアミン(275mg、3.76mmol)と反応させた。n-ブチルアクリレート(4.8g、37.6mmol)をこの反応混合物に加え、撹拌を室温で18時間、継続した。この混合物を減圧下で濃縮し、無色のポリマーP4eがMeOH(約30g)から沈殿した。Mn=77000g/mol、D=1.60。
【0483】
ペンダントジオキサボロランを用いるポリスチレンの合成:ポリマーP2e。
ポリマーP4e(25g、23.8mmol、ペンダントジオール)をTHF(50mL)に溶解し、フェニルボロン酸(2.94g、24.1mmol)及びMgSO4(8.68g、72.4mmol)を加えた。室温で5時間後、この混合物を遠心分離器にかけ、次にろ過して、減圧下で濃縮し、乾燥Et2Oから沈殿させると、ポリマーP2eが得られた。Mn=76000g/mol、D=1.71。
【0484】
4.5.3.本発明のポリマーP1又はp2の合成の一般手順:ポリマー2f
【0485】
【0486】
ペンダントジオキサボロランを用いるポリ(メタクリル酸メチル)の合成:ポリマー2f
シクロヘキシルボロン酸(1.20g、9.8mmol)及び5.0gのポリジオールPMMA(Mnは100kg/mol、Dは1.2及びジオール官能基を有するモノマー単位は17mol%)(ポリマーP4cを調製するために使用した手順に基づいた手順に従って調製した)を25mLの無水THF中で混合し、0.1mLの水を加える。すべての化合物が完全に溶解するまで、この反応混合物を室温で撹拌する。硫酸マグネシウム(5g)を加え、この反応混合物を室温で5時間、撹拌した後、ろ過する。ろ液を減圧下で濃縮すると、粘ちょうな溶液が得られる。次に、この粘ちょうな溶液を乾燥ジエチルエーテルに沈殿させることにより、ポリマーP2fを単離し、ろ過する。続いて、ポリマーP2fを高真空下、50℃で終夜、乾燥する。収率=4g、Mn=103000g/mol、D=1.25。
【0487】
4.6.化合物13又は添加物A1を用いる、市販の高密度ポリエチレン(HDPE)の官能基化による本発明のポリマーP1又はP2の調製。
4.6.1.化合物13又は添加物A1を用いる、市販の高密度ポリエチレン(HDPE)の溶融官能基化によるP2gと命名される本発明のポリマーP1又はP2の調製。
市販の高密度ポリエチレン(HDPE)の官能基化を、滞留時間を制御するために、同方向回転コニカル軸プロファイル及び再循環流路を備えたDSM Explore回分式二軸押出成形器(容量5cm3)を使用して実施した。高密度ポリエチレン(HDPE)は、Sigma Aldrich社(428078と参照。2.16kgの場合、190℃でメルトインデックス2.2g/10分)から購入した。HDPE、化合物13又は添加物A1(6質量%)及びジクミルペルオキシド(0.3質量%)からなる乾燥ブレンドを、押出成形器に導入する前に調製した。溶融グラフト化は、窒素雰囲気下、200℃のバレル温度、100rpmの軸速度、及び10分間の滞留時間で行った。押出物を採集し、室温まで冷却した。ポリマーP2gのFTIR分析により、このポリマーは約4.5質量%の化合物13又は添加物A1を含有していることが示される。
【0488】
4.6.2.化合物13又は添加物A1を用いる、市販の高密度ポリエチレン(HDPE)の溶液官能基化による、P2i~P2lと命名される本発明のポリマーP1又はP2の調製。
2gのHDPE(Sigma Aldrich社から購入、428078と参照、メルトインデックスは、190℃、2.16kgの場合、2.2g/10分)をオルトジクロロベンゼン(ODCB)(10mL)及び撹拌子を有する試料バイアルに投入した。このバイアルに栓をして、撹拌下で140℃まで加熱し、ポリマーを溶解した。2質量%(HDPEと比較)の化合物13、又は4質量%、又は6質量%、又は8質量%、又は10質量%の添加物A1を上記の混合物に加え、すべてが溶解するまで撹拌した。次に、この混合物を160℃まで加熱した。ジtertブチルペルオキシド(2mLのODCB中、75μL)溶液を調製し、この溶液0.2mLを上記のポリマー溶液に加えて、グラフト化過程を開始した。160℃で1時間後、この反応混合物をアセトンから沈殿させた。この粗製ポリマーをアセトン中で沸騰させて、2回、ろ過し、その後、真空下で一定質量になるまで真空下で乾燥すると、ポリマーP2h、又はP2i、又はP2j、又はP2k、又はP2lが得られた。ポリマーP2h、又はP2i、又はP2j、又はP2k、又はP2lのそれぞれのFTIR分析により、このポリマーは、化合物13若しくは添加物A1を、それぞれ、約0.5質量%、又は約2.5質量%、又は約4.2質量%、又は約5.7質量%、又は約7質量%含有することが示される。
【0489】
(実施例5)
本発明によるボロン酸エステルのメタセシス反応により、交換可能なペンダント結合及び交換可能な架橋基を含有する架橋ポリマーネットワーク、並びに比較例として働く配合物の形成及び特徴付け。
5.1.1 本発明による、ポリマーP1(P1a)及びP2(P2a)からの架橋ポリマーネットワークを得る、液体配合物の実施例。
以下の実施例は、本発明による液体配合物を表し、溶液中の架橋ポリマーネットワークの形成を例示している。
【0490】
0.1gのポリマーP1aを室温で0.6mLの無水THFに溶解する。0.1gのポリマーP2aを室温で無水THFに溶解する。無水THFに溶解したポリマーを含有する2つの溶液を室温で混合し、THFで膨潤したゲル又は架橋ポリマーネットワークの形成が、混合して5分未満に観察される。
【0491】
5.1.2 ポリマーP1(P1a)及びペンダントアセタール基を含有するポリマーP3a、又はジオールP5aから得られたペンダントシリルエーテル基を含有するポリマーを含有する液体配合物の比較例
以下の比較例は、架橋反応が、ボロン酸エステルのメタセシス反応によって進行することを例示している。
【0492】
0.1gのポリマーP1aを室温で0.6mLの無水THFに溶解する。0.1gのポリマーP3aを室温で0.6mLの無水THFに溶解する。無水THFに溶解したポリマーを含有する2つの溶液を室温で混合する。室温でゲル形成は観察されず、混合後、5分経っても24時間経っても観察されない。
【0493】
0.1gのポリマーP1aを室温で0.6mLの無水THFに溶解する。0.1gのポリマーP5aを室温で0.6mLの無水THFに溶解する。無水THFに溶解したポリマーを含有する2つの溶液を室温で混合する。室温でゲル形成は観察されず、混合後、5分経っても24時間経っても観察されない。
【0494】
5.3.1 本発明による、ポリマーP1(P2a)、及び式(Ia)の化合物(架橋剤R1)からの架橋ポリマーネットワークの液体配合物の実施例
以下の実施例は液体配合物を表し、溶液中の本発明による架橋ポリマーネットワークの形成を例示している。
【0495】
0.1gのポリマーP2a及び4.5mgの架橋剤R1を密閉したガラス製バイアル中、室温で1.2mLの無水THFに溶解する。この反応混合物を50℃まで加熱する。50℃で1時間後、THFにより膨潤したゲル又は架橋ポリマーネットワークの形成が観察される。
【0496】
5.1.4 本発明による式(Ia)(架橋剤R1)の化合物、及びペンダントアセタール官能基を含有するポリマーP3a、又はジオールから得られたペンダントシリルエーテル官能基を含有するポリマーP5aを含有する液体配合物の比較例
以下の比較例は、架橋反応が、ボロン酸エステルのメタセシス反応によって進行することを例示している。
【0497】
0.1gのポリマーP3a及び4.5mgの架橋剤R1を密閉したガラス製バイアル中、室温で1.2mLの無水THFに溶解する。この反応混合物を50℃まで加熱する。50℃で1時間後、ゲル形成は観察されない。
【0498】
0.1gのポリマーP5a及び4.5mgの架橋剤R1を密閉したガラス製バイアル中、室温で1.2mLの無水THFに溶解する。この反応混合物を50℃まで加熱する。50℃で1時間後、ゲル形成は観察されない。
【0499】
5.2.固形配合物、圧縮成形による加工、架橋ポリマーネットワークの不溶性及び再利用試験
以下の実施例は、固形配合物を表し、本発明による架橋ポリマーネットワークの形成、圧縮成形によるその加工、及び架橋ポリマーネットワークを構成するポリマーの非反応性良溶媒中でのその不溶性を例示している。
【0500】
架橋ポリマーネットワークの形成、圧縮成形による加工:N1、N2、N3、N4、N5及びN6
10.0gのポリマーP2aを室温で10mLの無水THF中に溶解し、220mgの式(Ia)R1化合物を加える。この反応混合物を室温でゆっくりと30分間、撹拌した後、120℃で減圧濃縮し、次に、高真空下、120℃で3~5時間、乾燥する。得られたポリマーを粉砕して粉末にし、3~5トンの圧力下、150℃で1時間、圧縮成形する。得られた架橋ポリマーネットワークをN1と命名する。
【0501】
同じ手順であるが、ポリマーP2b(P2aの代わり)を使用して、架橋ポリマーネットワークN2を得る。
【0502】
同じ手順であるが、ポリマーP2b(P2aの代わり)を使用し、かつ100mgの式(Ia)R1化合物(220mgの代わり)を使用し、架橋ポリマーネットワークN3を得る。
【0503】
同じ手順であるが、ポリマーP2c(P2aの代わり)を使用して、架橋ポリマーネットワークN4を得る。
【0504】
同じ手順であるが、ポリマーP2d(P2aの代わり)を使用し、かつ100mgの式(Ia)R1化合物(220mgの代わり)を使用し、架橋ポリマーネットワークN5を得る。
【0505】
同じ手順であるが、ポリマーP2d(P2aの代わり)を使用して、架橋ポリマーネットワークN6を得る。
【0506】
THF中での室温での架橋ポリマーネットワークN2の溶解度試験
架橋ポリマーネットワークN2の試料を、10mLの無水THFに加え、室温で24時間、膨潤させる。この試料を秤量し、一定質量になるまで、高真空下、100℃で乾燥する(約24時間)。架橋ポリマーネットワークN2の膨潤率(SR)及び可溶率(SF)を計算する。3つの試料に対して、この実験を行い、これらの結果を以下のTable1(表2)に報告する。
【0507】
膨潤率=(膨潤した試料の質量-膨潤後の乾燥試料の質量)/(膨潤後の乾燥試料の質量)
【0508】
可溶率=(膨潤前の乾燥試料の質量-膨潤後の乾燥試料の質量)/(膨潤後の乾燥試料の質量)
【0509】
【0510】
5.3.圧縮成形/機械的試験/粉末への磨砕による加工後の架橋ポリマーネットワークの再利用
以下の実施例は、固形配合物、その機械的特徴、圧縮成形によるその加工を表しており、本発明において記載されている架橋ポリマーネットワークは、その機械特性の著しい悪化なしに、数回、再利用する適性があることを例示している。
【0511】
ダンベル型形状を有する架橋ポリマーネットワークN1から得られた試料について、引張試験器Instron5564を使用して、引張試験を行った。1.5mm/分のクロスヘッド速度で破裂するまで試料を延伸し、粉末に磨砕して、3~5トンの間の圧力下、150℃で30分間、圧縮成形により再加工した。この手順を4つの試料に対して、3回、繰り返した。
【0512】
図16は、再利用されていない架橋ポリマーネットワークN1の試料(横座標、0)、1回、再利用した架橋ポリマーネットワークN1の試料(横座標、1)、2回、再利用した架橋ポリマーネットワークN1の試料(横座標、2)、3回、再利用した架橋ポリマーネットワークN1の試料(横座標、3)の破断応力(縦座標、MPa)を表している。
【0513】
この分析により、架橋ポリマーネットワークN1の破断応力は、数回の再利用及び再加工サイクル後に、著しく低下しないことが示される。
【0514】
図17は、再利用されていない架橋ポリマーネットワークN1の試料(横座標、0)、1回、再利用した架橋ポリマーネットワークN1の試料(横座標、1)、2回、再利用した架橋ポリマーネットワークN1の試料(横座標、2)、3回、再利用した架橋ポリマーネットワークN1の試料(横座標、3)の破断伸び(縦座標、MPa)を表している。
【0515】
この分析により、架橋ポリマーネットワークN1の破断伸びは、数回の再利用及び再加工サイクル後に、著しく低下しないことが示される。
【0516】
5.4.架橋ポリマーネットワークN1及びN2のクリープ試験
以下の実施例は、圧縮成形による加工後、本発明において記載されている架橋ポリマーネットワークを再形成できることを例示している。
【0517】
架橋ポリマーネットワークN1及び架橋ポリマーネットワークN2の試料に、TA Insutruments社製のARES G2レオメーターでクリープを試験した。ディスク形状を有する架橋ポリマーネットワークN1の試料を、4つの異なる温度(160℃、150℃、140℃、130℃)で約20分間、1000Paの応力下に置いた。約20分後、応力を緩和し、この試料をそれぞれの温度で約10分間、維持した。
【0518】
ディスク形状を有する架橋ポリマーネットワークN2の試料を、160℃で約30分間、1000Paの応力下に置いた。約30分後、応力を緩和し、この試料を160℃で約30分間、維持した。
【0519】
図18は、架橋ポリマーネットワークN1の試料の、4つの温度(160℃が円;150℃が三角形;140℃が四角形;130℃が星型)の場合の、時間(横座標、分)の関数としての変形(縦座標、%)を表す。
【0520】
図19は、架橋ポリマーネットワークN2の試料の、160℃における、時間(横座標、分)での変形(縦座標、%)を表す。
【0521】
これらの実験は、架橋ポリマーネットワークN1及びN2は、それらのガラス転移温度(Tg)又は融解温度(Tf)が25℃より低い場合、それらのガラス転移温度又は融解温度(fusion)よりも高い温度、有利にはTg又はTf+10℃よりも高い温度、一層有利にはTg又はTf+20℃よりも高い温度、更に一層有利にはTg又はTf+40℃より高い温度、更に一層有利にはTg又はTf+80℃より高い温度で流動することを示す。
【0522】
これらの実験はまた、応力の緩和後、試料は、新しい平衡状態に相当する数%の恒久的な変形を呈することも示している。したがって、架橋ポリマーネットワークN1及びN2に新しい形状をもたらすことが可能である。
【0523】
5.5.架橋ポリマーネットワークN1、N2及びN3の応力緩和試験
以下の実施例は、本発明において記載されている架橋ポリマーネットワークが、それらのガラス転移温度(Tg)又は融解温度(Tf)が25℃より低い場合、それらのガラス転移温度又は融解温度よりも高い温度、有利にはTg又はTf+10℃よりも高い温度、一層有利にはTg又はTf+20℃よりも高い温度、更に一層有利にはTg又はTf+40℃より高い温度、更に一層有利にはTg又はTf+80℃より高い温度で、材料中に存在する応力を完全に又は部分的に緩和することができることを例示している。
【0524】
この応力緩和実験は、25mmの直径を有する平行平板形状を有するAres G2レオメーターで行った。レオメーターを150℃に加熱し、この温度で5分間、平衡にする。試料を2枚の板の間に置き、5分間、平衡にして、10~15Nの通常の力をかける。5分後、3%の変形が適用され、時間の関数としての応力の変化をモニタリングする。
【0525】
図20は、170℃(四角形)、150℃(円)、130℃(三角形)における、架橋ポリマーネットワークN1の試料の、時間の関数(横座標、秒間)としての、t=0における初期弾性率(縦座標、単位を含まない)によって正規化したせん断緩和弾性率を表す。
【0526】
図21は、架橋ポリマーネットワークN1(円)の試料、架橋ポリマーネットワークN2(三角形)の試料、架橋ポリマーネットワークN3(四角形)の試料の、150℃における時間の関数(横座標、秒間)としての、t=0における初期弾性率(縦座標、単位を含まない)によって正規化したせん断緩和弾性率を表す。
【0527】
これらの実験により、本発明において記載されている架橋ポリマーネットワークは、該ポリマーのガラス転移温度よりも高い温度で、材料に存在する応力を完全に又は部分的に緩和することができることを示している。
【0528】
5.6.射出成形による架橋ポリマーネットワークN2の加工
以下の実施例は、射出成形により、本発明において記載されている架橋ポリマーネットワークを加工できることを例示している。
【0529】
1gの架橋ポリマーネットワークN2を、射出成形機DSM Xploreマイクロ10cc及びダンベル型形状を有する鋳型(長さ約7cm)を使用して射出成形する。この鋳型は、射出前に200℃に加熱する。射出される架橋ポリマーネットワークN2は、室温で粉末として、射出成形機に導入する。ポリマーを200℃(5分間)に加熱し、5分間、平衡にする。射出成形は5段階:10barの圧力で2×30秒、次いで12barの圧力で2×30秒、及び除圧で進める。射出後、射出された架橋ポリマーネットワークN2を含む鋳型を200℃で1分間、保持した後、5~10分間、水系で冷却する。
【0530】
こうして、この射出成形によって調製された物体は、無水THFに不溶である(材料1gあたり、75mLの無水THF;室温で24時間、浸漬)。
【0531】
5.7.固形配合物、圧縮成形による加工の実施例:ネットワークNX1及びNX2
以下の実施例は、固形配合物を表し、本発明による架橋ポリマーネットワークの形成、圧縮成形によるその加工、及び、それらのガラス転移温度(Tg)又は融解温度(Tf)が25℃より低い場合、それらのガラス転移温度又は融解温度よりも高い温度、有利にはTg又はTf+10℃よりも高い温度、一層有利にはTg又はTf+20℃よりも高い温度、更に一層有利にはTg又はTf+40℃より高い温度、更に一層有利にはTg又はTf+80℃より高い温度で、材料中に存在する応力を完全に又は部分的に緩和することができることを例示している。
【0532】
5.7.1.架橋ポリマーネットワークの形成:NX1
ペンダントシクロヘキシルボロン酸エステル官能基(ポリマーP2f)及び架橋剤R1を含有するPMMAからの合成
2gのポリマーP2fを室温で10mLの無水THF中に溶解し、44mgの架橋剤R1(式(Ia)の化合物)を加える。この反応混合物を室温でゆっくりと30分間、撹拌した後、120℃で3時間、減圧下で濃縮する。得られたポリマーを粉砕して粉末にし、3~5トンの圧力下、150℃で1時間、圧縮成形する。得られた架橋ポリマーネットワークをNX1と呼ぶ。
【0533】
5.7.2.架橋ポリマーネットワークの形成:NX2
ペンダントフェニルボロン酸エステル官能基(ポリマーP2c)及び架橋剤R2を含有するPMMAからの合成
2gのポリマーP2cを室温で10mLの無水THF中に溶解し、44mgの架橋剤R2(式(Ia)の化合物)を加える。この反応混合物を室温でゆっくりと30分間、撹拌した後、120℃で3時間、減圧下で濃縮する。得られたポリマーを粉砕して粉末にし、3~5トンの圧力下、150℃で1時間、圧縮成形する。得られた架橋ポリマーネットワークをNX2と呼ぶ。
【0534】
5.8.架橋ポリマーネットワークNX1及びNX2の応力緩和試験
この応力緩和実験は、25mmの直径を有する平行平板形状で、ARES G2レオメーターで行った。レオメーターを150℃に加熱し、5分間、平衡にする。試料を板の間に置き、5分間、平衡にして、10~15Nの通常の力をかける。5分後、3%の変形が適用され、時間における応力の変化をモニタリングする。
【0535】
図22は、150℃(四角形)における、架橋ポリマーネットワークNX1の試料の、時間の関数(横座標、秒間)としての、t=0における初期弾性率(module)(縦座標、単位を含まない)によって正規化したせん断緩和弾性率を表す。
【0536】
図23は、150℃(円)における、架橋ポリマーネットワークNX2の試料の、時間の関数(横座標、秒間)としての、t=0における初期弾性率(縦座標、単位を含まない)によって正規化したせん断緩和弾性率を表す。
【0537】
これらの実験により、本発明において記載されている架橋ポリマーネットワークは、該ポリマーのガラス転移温度よりも高い温度で、材料に存在する応力を完全に又は部分的に緩和することができることを示している。
【0538】
5.9.固形配合物の実施例:ネットワークNY1及びNY2
以下の実施例は、2つの固形配合物を表し、本発明による架橋ポリスチレンネットワークの形成、及び、架橋ポリマーネットワークを構成するポリマーの非反応性良溶媒中でのそれらの不溶性を例示している。
【0539】
5.9.1.架橋ポリスチレンネットワークの形成:NY1
ペンダントジオキサボロラン官能基(ポリマーP2e)及び架橋剤R1を有するPStからの合成
ペンダントジオキサボロラン官能基を含むポリスチレン10g、ポリマーP2eを25mLの無水THFに溶解し、架橋剤R1(式(Ia)の化合物)(220mg)の無水THF(0.5mL)溶液を加える。ゲル形成は、室温で10~30分後に観察される。このゲルを、真空下、120℃で5時間、乾燥し、磨砕して、真空下120℃で更に16時間、更に乾燥する。得られた架橋ポリマーネットワークをNY1と呼ぶ。
【0540】
5.9.2.架橋ポリスチレンネットワークの形成:NY2
反応性押出成形による、ペンダントジオキサボロラン官能基(ポリマーP2e)及び架橋剤R1を有するPStからの合成
架橋ポリスチレンネットワークNY2の形成を、滞留時間を制御するために、同方向回転コニカル軸プロファイル及び再循環流路を備えたDSM Explore回分式二軸押出成形器(容量5cm3)を使用して実施した。ペンダントジオキサボロラン官能基、ポリマーP2e及び架橋剤R1(式(Ia)の化合物)(ポリマー2eと比べて2.2質量%)を含むポリスチレンの乾燥ブレンドを押出成形器に導入した。架橋は、窒素雰囲気下、200℃のバレル温度、100rpmの軸速度、及び6分間の滞留時間で行った。押出成形物を採集し、室温まで冷却した。得られた架橋ポリマーネットワークをNY2と呼ぶ。
【0541】
ジクロロメタン(DCM)中、室温での架橋ポリマーネットワークNY2の溶解度試験
架橋ポリマーネットワークNY2の試料を、6mLの無水ジクロロメタンに加え、室温で24時間、膨潤させる。この試料を秤量し、一定質量になるまで、高真空下、100℃で乾燥する(約24時間)。架橋ポリマーネットワークNY2の膨潤率(SR)及び可溶率(SF)を計算する。この実験は、3つの試料に対して行い、これらの結果を以下のTable2(表3)に報告する。
【0542】
膨潤率=(膨潤試料の質量-膨潤後の乾燥試料の質量)/(膨潤後の乾燥試料の質量)
可溶率=(膨潤前の乾燥試料の質量-膨潤後の乾燥試料の質量)/(膨潤後の乾燥試料の質量)
【0543】
【0544】
5.10.射出成形/機械的試験/粉末への磨砕による加工後の架橋ポリマーネットワークの再利用
以下の実施例は、固形配合物、その機械的特徴、射出成形によるその加工を表しており、本発明において記載されている架橋ポリマーネットワークは、その機械特性の著しい悪化なしに、数回、再利用する適性があることを例示している。
【0545】
DSM Xploreマイクロ10cm3射出成形機を使用して、ダンベル型形状の試料(長さ約7cm)を調製した。3gの架橋ポリマーネットワークNY1を室温で、粉末として又は小さな断片として、射出成形機に導入する。次に、この架橋ポリマーネットワークNY1を、合計で15~30秒間、予め加熱した鋳型(180℃)に12barの圧力下、200℃で射出した後、循環水を使用する(約3分間)ことにより45℃まで冷却する。
【0546】
次に、ダンベル型形状を有する架橋ポリマーネットワークNY1から得られた試料を、2kNのセルをマウントしたInstron5564引張試験機を使用して引張り試験を行った。試験片を1.5mm/分の固定クロスヘッド速度で、5連で試験した。試料を破断するまで延伸し、小さな断片に裁断して、前の段落に記述した手順に従って、射出成形により再加工した。この手順を、3回、繰り返した。ヤング率は、応力-歪み曲線の初期傾きとして決定した。
【0547】
図24は、再利用されていない架橋ポリマーネットワークNY1の試料(横座標、0)、1回、再利用した架橋ポリマーネットワークNY1の試料(横座標、1)、2回、再利用した架橋ポリマーネットワークNY1の試料(横座標、2)、3回、再利用した架橋ポリマーネットワークNY1の試料(横座標、3)の平均破断応力(縦座標、MPa)を表している。
【0548】
この分析により、架橋ポリマーネットワークNY1の破断応力は、数回の再利用及び再加工サイクル後に、著しく低下しないことが示される。
【0549】
図25は、再利用されていない架橋ポリマーネットワークNY1の試料(横座標、0)、1回、再利用した架橋ポリマーネットワークNY1の試料(横座標、1)、2回、再利用した架橋ポリマーネットワークNY1の試料(横座標、2)、3回、再利用した架橋ポリマーネットワークNY1の試料(横座標、3)の平均ヤング率(縦座標、GPa)を表している。
【0550】
この分析により、架橋ポリマーネットワークNY1のヤング率は、数回の再利用及び再加工サイクル後に、著しく低下しないことが示される。
【0551】
5.11.ペンダントジオキサボロラン官能基を有するPSt(ポリマーP2e)及びポリスチレン架橋ネットワーク(NY2)に対する環境応力亀裂
以下の実施例は、固形配合物であり、類似の化学的性質の熱可塑性ポリマーと比較して、本発明において記述した架橋ポリマーネットワークの優れた溶媒耐性及び機械特性を例示している。
【0552】
ペンダントジオキサボロラン官能基、ポリマーP2eを有するポリスチレン、及び架橋ポリスチレンネットワークNY2の環境応力亀裂をTA Instruments社製Q800を使用して、3点曲げ形状(three point bendinggeometry)で行った。3~5トンの圧力下、150℃で5分間、圧縮成形により調製した長方形の試料を使用した。それらの寸法は、長さ30mm、幅15.8mm、厚さ1.4mmとした。環境条件は、300mLのエタノール/水(9/1)の混合物を含有する、閉じたビーカー中、取り外した3点曲げ装置の低い方の2つの先端に試料を置くことにより模倣した。応力は、異なる時間間隔で、試料の中央に41gの重りを置くことにより適用した。この試料を取り除き、ペーパータオルを用いて両側を乾燥し、室温で更に20分間、放置した後、その機械耐性を試験した。そのように行うため、続いて、試料を3点曲げ装置に置き、35℃で、3N/分で、最大力18N(この機械の最大限界値)まで傾斜を設けた。
【0553】
結果を以下のTable3(表4)に報告する。
【0554】
【0555】
5.12.化合物14又は添加物C1を使用する固形配合物の実施例:ネットワークNZ1
以下の実施例は、固形配合物であり、添加物C1を使用する、本発明による架橋高密度ポリエチレンネットワークの形成を例示している。
【0556】
架橋高密度ポリエチレンネットワークNZ1の形成を、滞留時間を制御するために、同方向回転コニカル軸プロファイル及び再循環流路を備えたDSM Explore回分式二軸押出成形器(容量5cm3)を使用して実施した。HDPE、化合物14又は添加物C1(4質量%)及びジクミルペルオキシド(0.3質量%)からなる乾燥ブレンドを、押出成形器に導入する前に調製した。溶融グラフト化は、窒素雰囲気下、200℃のバレル温度、100rpmの軸速度、及び6分間の滞留時間で行った。押出成形物を採集し、室温まで冷却した。得られた架橋ポリマーネットワークをNZ1と呼ぶ。
【0557】
5.13.圧縮成形/機械的試験/粉末への磨砕による加工後の架橋ポリマーネットワークの再利用
以下の実施例は、固形配合物、その機械的特徴、圧縮成形によるその加工を示しており、本発明において記載されている架橋ポリマーネットワークが、その機械特性の著しい悪化なしに、数回、再利用する適性があることを例示している。
【0558】
圧縮成形による試料調製
HDPEのダンベル型試験片(ISO527-2タイプ5B)を、3~5トンの圧力下、200℃で5分間、架橋高密度ポリエチレンネットワークNZ1の圧縮成形により調製した。試料は、フィルム形状(厚さ1.5mm)のフレーム及びポンチカッターを使用して生成した。
【0559】
一軸引張試験は、2kNのセルをマウントしたInstron5564引張試験機を使用して、架橋高密度ポリエチレンネットワークNZ1のダンベル型試験片に対して室温で行った。試験片を10mm/分の固定クロスヘッド速度で、5連で試験した。エンジニアリング応力-歪み曲線は、σ=F/S0としてのエンジニアリング応力及びγ=Δl/l0としての歪みを定義することによる、張力F及びクロスヘッド変位Δlを測定することにより得た(式中、S0及びl0は、それぞれ、試験片の初期断面及びゲージ長さである)。ヤング率は、エンジニアリング応力-歪み曲線の初期傾きとして決定した。最終的な引張強度は、可塑-プラスチック遷移時におけるエンジニアリング応力における局所最大値として決定した。その再利用性を試験するため、架橋高密度ポリエチレンネットワークNZ1の試験片を伸張試験後に小さな断片に裁断し、前の段落に記載されている手順に従い、圧縮成形により再成形した。この手順を、3回、繰り返した。
【0560】
図26は、再利用されていない架橋ポリマーネットワークNZ1の試料(横座標、0)、1回、再利用した架橋ポリマーネットワークNZ1の試料(横座標、1)、2回、再利用した架橋ポリマーネットワークNZ1の試料(横座標、2)、3回、再利用した架橋ポリマーネットワークNZ1の試料(横座標、3)の平均引張強度(縦座標、MPa)を表す。
【0561】
この分析により、架橋ポリマーネットワークNZ1の引張強度は、数回の再利用及び再加工サイクル後に、著しく低下しないことが示される。
【0562】
図27は、再利用されていない架橋ポリマーネットワークNZ1の試料(横座標、0)、1回、再利用した架橋ポリマーネットワークNZ1の試料(横座標、1)、2回、再利用した架橋ポリマーネットワークNZ1の試料(横座標、2)、3回、再利用した架橋ポリマーネットワークNZ1の試料(横座標、3)の平均ヤング率(縦座標、GPa)を表す。
【0563】
この分析により、架橋ポリマーネットワークNZ1のヤング率は、数回の再利用及び再加工サイクル後に、著しく低下しないことが示される。
【0564】
(実施例6)
ボロン酸エステルのメタセシス反応によって交換可能なペンダント結合及び交換可能な架橋基を含有する本発明の架橋ポリマーネットワークを含有する固体組成物の化学的架橋解除/再利用。架橋ネットワークを生成するために使用したポリマーの回収
以下の実施例は、本発明の架橋ポリマーネットワークを、化学的に再利用及び/又は架橋解除することができることを例示している。
【0565】
架橋ポリマーネットワークN6及び架橋ポリマーネットワークNY2(50~250mgのポリマー、ペンダント又は架橋基内のどちらかの、n当量のボロン酸エステル官能基)の試料を無水テトラヒドロフランに入れて、1,2-プロパンジオール(50~150×n当量)を加えた。室温で終夜後、試料はすべて、完全に溶解した。得られた溶液をサイズ排除クロマトグラフィーにより分析し、ボロン酸エステルのメタセシス反応による交換可能なペンダント結合及び交換可能な架橋基を含有する架橋ポリマーネットワークを生成するために使用した直鎖状ポリマーと比較した。それらの結果を、以下のTable4(表5)に報告する。
【0566】
直鎖状前駆体、化学的架橋解除後の架橋ポリマーネットワークN6(射出成形によって一旦加工し、連続射出成形/磨砕により3回、再利用した)、及び化学的架橋解除後の架橋ポリマーネットワークNY2のGPC結果
【0567】
【0568】
この実施例は、ボロン酸エステルのメタセシス反応によって交換可能なペンダント結合及び交換可能な架橋基を含有する、本発明の架橋ポリマーネットワークが、化学的に架橋解除されて、ペンダント交換可能なボロン酸エステル結合を有するポリマーを回収することができるということを例示している。この特性は、本発明の架橋ポリマーネットワークを除去/脱離、回収、及び再利用するという強い関心をもたらす。
【0569】
(実施例7)
ボロン酸エステルのメタセシス反応によって交換可能なペンダント結合及び架橋可能な架橋基を含有する本発明の架橋ポリマーネットワーク間の接着。
以下の実施例は、ボロン酸エステルのメタセシス反応によって交換可能なペンダント結合及び交換可能な架橋基を含有する本発明の2つの架橋ポリマーネットワークを一緒に付着/接着できることを例示している。2つのポリマーネットワークで構成されるポリマーは、以下の実施例において例示されている通り、架橋PMMAネットワークN6と架橋HDPEネットワークNZ1との間で同じ性質又は異なる性質となり得る。
【0570】
架橋PMMAネットワークN6のフィルムを、3~5トンの圧力下、180℃で10分間、圧縮成形し、長さ(L)25mm、幅(W)16mm及び厚さ(h)1.5mmのスリップ片に裁断した。架橋HDPEネットワークNZ1のフィルムを3~5トンの圧力下、200℃で5分間、圧縮成形し、長さ(L)25mm、幅(W)16mm及び厚さ(h)1.5mmのスリップ片に裁断した。2つの単一ラップからなる重ねジョイントを、架橋HDPEネットワークNZ1の2つの個別のストリップ片上に架橋PMMAネットワークN6のストリップ片を1つ置くことにより調製し、両方の重なり長さl0は、1cmに等しくした。両方の重なり領域との接触が10分間、それぞれ20分間、確実となるようにするため、架橋PMMAネットワークN6のストリップ片の上部に450gの重りを置いて、重ねジョイントをオーブン中、190℃で加熱した。次に、この重りを取り去り、重ねジョイントを試験前に室温まで冷却した。重ねせん断試験は、2kNのセルをマウントしたInstron5564引張試験機を使用して、10mm/分の速度で行った。グリップ間の距離は、27mmであった。3つの重ねジョイントを調製し、各接触時間について試験した。
【0571】
図28は、架橋HDPEネットワークNZ1の2つの個別のストリップ片(明灰色)上に架橋PMMAネットワークN6(暗灰色)のストリップ片を1つ置くことにより得られる、2つの単一重ねからなる、重ねジョイントの概略図を示しており、両方の重なり長さl
0は、1cmに等しい。
【0572】
図29は、190℃で、10分間(実線)又は20分間(点線)、接着した架橋HDPEネットワークNZ1/架橋PMMAネットワークN6/架橋HDPEネットワークNZ1の重ねジョイントの重ねせん断試験の間の、位置(横座標、mm)の関数として、幅(縦座標、kN/m)により正規化された力を表している。
【0573】
この実験は、ボロン酸エステルのメタセシス反応によって交換可能なペンダント結合及び交換可能な架橋基を含有する、本発明の2つの架橋ポリマーネットワークを、一緒に付着/接着できることを例示している。
【0574】
(実施例8)
架橋ポリマーネットワークを調製するために使用される市販の熱可塑性樹脂と比較した、ボロン酸エステルのメタセシス反応によって交換可能なペンダント結合及び交換可能な架橋基を含有する、本発明の架橋ポリマーネットワークの、高温における寸法安定性及び機械特性
以下の実施例は、類似した化学性質を有する直鎖状又は分岐状熱可塑性樹脂と比較した、本発明の架橋ポリマーネットワークの、高温における、優れた寸法安定性及び機械特性を例示している。
【0575】
市販のHDPE(Sigma Aldrich社から購入、428078と参照、2.16kgの場合、190℃でのメルトインデックスは2.2g/10分)及び架橋HDPEネットワーク(この市販のHDPEから調製)、ネットワークNZ1の寸法安定性を、それらの融解温度超で比較した。市販のHDPE及び架橋ポリマーネットワークNZ1のストリップ片(長さ49mm、幅16mm及び厚さ1.5mm)を、グリップ間にそれらの上部を固定し、258gの重り(105.4kpaの応力)をそれらの下部に取り付けることにより延張クリープを施した。2つのヒートガン(1つを両側に適用し、先端から試料までの距離は同じで、約5~5.5cm)を使用して、各ストリップ片に熱を適用し、ストリップ片の温度を、ストリップ片の表面に接触している熱電対を使用してモニタリングした。ヒートガンの点火後、約10秒間、融解温度(約130℃)に達成させて、熱電対により測定される温度を、実験の残りの間、170℃~200℃の間に維持した。130℃超で、市販のHDPEのストリップ片は溶融して、約20秒後に破れた (合計で約30秒) 一方、架橋HDPEネットワークのストリップ片はNZ1であり、10分後でさえも、破れることはなく、約1.5cm伸びただけであった。
【0576】
本発明により、ビニルネットワークの調製が可能となる。これらのビニルネットワークは、共重合によって得ることができる:
【0577】
(実施例9)
ボロン酸エステルのメタセシス反応によって交換可能なペンダント結合及び交換可能な架橋基を含有する架橋ポリマーネットワークを含有する組成物の実施例(このネットワークは共重合によって得られる)
以下の2つの実施例は、ボロン酸エステルのメタセシス反応によって交換可能なペンダント結合及び交換可能な架橋基を含有する架橋ポリマーネットワークを含有する組成物を表す。これらの2つの実施例では、ポリマーネットワークは、本発明にしたがって、式(Ia)の架橋剤の存在下で、モノマーc及びモノマーaのラジカル共重合、又はモノマーc、モノマーa及びモノマーbのラジカル共重合のどちらか一方によって調製する。
【0578】
9.1.ボロン酸エステルのメタセシス反応によって交換可能なペンダント結合及び交換可能な架橋基を含有する架橋ポリマーネットワークを含有する組成物の実施例(記述したものは、本発明による、式(Ia)の架橋剤の存在下で、モノマーaとモノマーcとのラジカル共重合によって調製される)
【0579】
【0580】
モノマーa又はモノマーM3(220mg、0.763mmol)、式(Ia)の化合物又は架橋剤R1(37.6mg、0.153mmol)、メタクリル酸メチルMMA又はモノマーc(1.53g、15.27mmol)及びAIBN(2.63mg、0.016mmol)を0.4mLのアニソール中で混合し、この反応混合物に室温で10分間、窒素を吹き込む。次に、この混合物を65℃で17時間、撹拌する。こうして、本発明による架橋ポリマーネットワークが得られる。
【0581】
9.2.ボロン酸エステルのメタセシス反応によって交換可能なペンダント結合及び交換可能な架橋基を含有する架橋ポリマーネットワークを含有する組成物の実施例であり、記載されているネットワークは、本発明による、モノマーa、モノマーb及びモノマーcのラジカル共重合によって得られる。
【0582】
【0583】
モノマーa又はモノマーM3(288mg、0.99mmol)、モノマーb又はモノマーM1(318mg、0.99mmol)、メタクリル酸メチルMMA又はモノマーc(2.0g、19.9mmol)及びAIBN(3.6mg、0.022mmol)を0.9mLのアニソール中で混合し、この反応混合物に10分間、窒素を吹き込む。次に、この混合物を65℃で24時間、撹拌する。こうして、本発明による架橋ポリマーネットワークが得られる。
【0584】
参考文献:
1. S. Yu, R. Zhang, Q. Wu, T. Chen, P. Sun, Bio-inspired high-performance and recyclable cross-linked polymers. Adv. Mater. 25, 4912-4917 (2013)